日弁連新聞 第569号

第72回 定期総会
2021年度予算などを可決
6月11日 弁護士会館

2021年度予算が議決されたほか、「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題について引き続き積極的に取り組む宣言」が採択された。
来年の第73回定期総会は、東京都で開催することを決定した。


決算報告承認・予算議決

1.jpg2020年度の一般会計決算は、収入67億5867万円および前年度からの繰越金33億310万円に対し、48億5181万円を支出し、次年度への繰越金は52億997万円となったことが報告され、賛成多数で承認された。


2021年度の一般会計予算は、事業活動収入61億1454万円に対し、事業活動支出60億5628万円、予備費1億円などを計上し、単年度では6174万円の赤字予算となっている。


委員会費等の削減による支出減を受けて一般会費の減額を検討していること、および3年ごとに行われてきた特別会費の見直しについて前倒しを検討していることも報告され、採決の結果、賛成多数で可決された。


「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題について引き続き積極的に取り組む宣言」を採択

arrow_blue_1.gif新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題について引き続き積極的に取り組む宣言


日弁連は、2020年9月4日に採択した「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題に積極的に取り組む宣言」に基づき、法的課題の解決や人権の擁護に向けて取り組んできた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大は収束のめどが立たず、新たな問題も生じている。そこで、①新型コロナウイルス感染症の拡大により発生する新たな法的課題や人権問題の解決に向けて引き続き全力で取り組むとともに、弁護士が市民や事業者に対して法的サービスを提供し続けることができるよう、環境の整備に努めること、②国、地方自治体および各弁護士会と連携し、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する差別や偏見に関する相談を受け付ける体制を整備し、その被害救済に努めること、③新型コロナウイルス感染症の拡大に対応する法改正や国の施策について、感染防止の名の下で人権侵害を招来することのないよう注視し、問題が生じた場合には迅速かつ的確に対応し、その被害救済に努めることを宣言するものである。質疑で、ワクチン接種に関する表現についてさまざまな意見が出され、原案を一部修正の上、賛成多数で可決された。


外弁法の改正に伴う会則・規程中一部改正および規程制定を可決

弁護士および外国法事務弁護士が共に社員となる共同法人の創設を認める「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」の改正に伴い、必要な会則・規程の改正および新たな規程を制定する案が可決された。



原子力に依存しない2050年脱炭素の実現に向けての意見書

arrow_blue_1.gif原子力に依存しない2050年脱炭素の実現に向けての意見書


日弁連は6月18日、「原子力に依存しない2050年脱炭素の実現に向けての意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣等に提出した。


意見書の背景

2015年12月、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前から2℃を十分下回り、1.5℃以下に抑える努力をすることを目的とするパリ協定が採択され、日本も批准した。世界は、パリ協定の目的を達成するため、CO2排出量を2030年までに半減させ、2050年までに脱炭素を実現する方向へと動き出している。日本も昨年10月に菅首相が2050年脱炭素を宣言し、本年4月には2030年度の削減目標を2013年度比26%から46%に引き上げた。


意見書の内容

パリ協定は各国の具体的な削減義務までは定めていないが、全ての国がこの共通の目標に向けて取り組むことを前提にしている。


そのために、本意見書では、国に対し、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロ、2030年までに1990年比で50%以上削減することを法律に明記することを求めた上、目標達成のための方策として、①エネルギー効率を高め、一層の省エネルギーを推進すること、②電力供給における再生可能エネルギーの割合を2050年までに100%とすることを目指し、2030年までには50%以上とする導入目標を法律に明記し、電力システム改革を推進すること、③2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止し、天然ガス火力発電所の新増設も行わないこと、④原子力発電所もできる限り速やかに廃止すべきこと、⑤地球温暖化対策等の政策決定過程に広く市民の意見を反映させることなどを求めている。


(公害対策・環境保全委員会 委員 浅岡美恵)



夫婦同氏強制(民法750条)についての最高裁決定と会長声明

arrow_blue_1.gif最高裁判所大法廷決定を受けて、改めて民法750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを求める会長声明


6月23日、最高裁判所大法廷は、民法750条について2度目の合憲判断を示した。これを受けて日弁連は、6月25日、「最高裁判所大法廷決定を受けて、改めて民法750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを求める会長声明」を公表した。


最高裁決定の内容

民法750条については、2015年に最初の大法廷判決(多数意見は合憲、5人の裁判官による違憲の少数意見)が出されている。今回は、婚姻届不受理処分に対する不服申し立ての特別抗告審における判断であった。


多数意見は、2015年大法廷判決以降の諸事情を踏まえても「大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められない」として合憲と判断するだけの短いものだったが、4人の裁判官が意見および反対意見において憲法24条違反と判断した。これらの意見は詳細かつ明確に夫婦同氏を強制する民法750条は婚姻の自由への制約に当たると判断した点で注目に値する。


会長声明の公表

最高裁決定を受けて日弁連が公表した会長声明では、決定について、「民法750条の違憲性について実質的な検討をしていないに等しく、極めて不当である。同判決を変更して、違憲の決定を出し、人権の最後の砦としての役割を果たすべきであった」と多数意見を批判した。その上で、2015年大法廷判決と同様、多数意見や補足意見が国会での議論を促していることに触れ、「法制審議会が1996年に選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正要綱試案を答申してから既に四半世紀が経過し、様々な議論が尽くされたにもかかわらず、国会がこれらを放置してきたものであって、これ以上の議論の先延ばしは許されない」と、国に対して選択的夫婦別姓制度を導入するよう求めた。


(両性の平等に関する委員会 委員 山崎 新)



ひまわり

大仏もしくはそれに類するものを訪れる。彼らは尋常ならざるオーラを放っており、会いに行くべき存在である▼例えば、盛岡大仏は、周りの無数の句碑と前にいるファンキーな仙人像がシュールである。名古屋大仏は、全身深緑色、顔パーツは金色で、インド象を従えるエキセントリックさ。加賀のハニべ巌窟院は、地獄世界が広がる洞窟の入口上に巨大仏頭というセンセーショナルな構図▼東海市の聚楽園大仏は、赤銅色の肌と鯰ひげが渋く、金ぴかの岐阜大仏は、大きな耳たぶとOKサインが人を安心させる。青森の昭和大仏は、宝冠をかぶったブルーの姿がクールで、下諏訪の万治の石仏は、ずんぐりした岩に載った石頭が岡本太郎も絶賛の飄逸さ▼札幌の2体。広大な霊園内の頭大仏は、天頂の空いたドーム内にあり、外に突き出た頭頂部が、初夏にはラベンダーに包まれ、冬は積雪を戴く。郊外の黄金色の涅槃大仏は、お堂の上に長々と寝そべり、冬は静々と雪の毛布をまとう▼有名どころは言うに及ばず、日本各地に大仏もしくはそれに類するものは尽きない。我が大仏センサーを稼働させ、さまざまな機会にその存在を探し当てていきたい。そんな体で日本列島をにらみつつ、自由に往来できる日々を待ち望んでいる。


(R・H)



拘置所のカルテ不開示を違法とした最高裁判決について会長声明を公表

arrow_blue_1.gif東京拘置所のカルテ不開示を違法とした最高裁判所判決に関する会長声明


日弁連は6月16日、「東京拘置所のカルテ不開示を違法とした最高裁判所判決に関する会長声明」を公表し、法務大臣に提出した。


最高裁判所第三小法廷は、6月15日、東京拘置所が未決拘禁者の診療録(以下「カルテ」)を不開示とした決定を違法と認め、東京高等裁判所に審理を差し戻すとの判決を下した。


法務省は、第三者による前科チェックに濫用され、本人の社会復帰を妨げるおそれがあるとの理由から、刑事施設における診療情報は行政機関個人情報保護法45条1項の適用除外事由に当たるとして被拘禁者のカルテ開示を拒み、裁判所もその運用を追認してきた。


これに対し、本年4月8日には、大阪高等裁判所が、規制目的と規制手段の合理的な均衡を欠くとして、診療情報に同法45条1項は適用されないと初めてカルテ開示を認める判決を下していた。本判決は、同法の改正過程を丹念に検証し、診療情報はそもそも同法45条1項の対象外との結論を導いており、刑事施設においても一般社会と同様にカルテが開示されるべきことを最高裁が認めたものとして重要な意義がある。また、刑事施設内での診療にも原則として医療法等の規定が適用され、その性質は社会一般で提供される診療と異ならないと判示したことも相まって、行刑現場に多大な影響を及ぼすと思われる。


日弁連は、2009年11月18日付「徳島刑務所問題に見る刑事施設医療の問題点と改革の方向性に関する意見書」等において、カルテ開示を繰り返し求めてきた。いわゆる名古屋刑務所事件を契機とする法務省の行刑改革会議提言(2003年12月22日)も、本人または遺族に対してカルテを開示できる仕組みを作ることを明確に求めていた。以上に鑑み、日弁連は本判決の翌日に会長声明を公表し、本人が収容中か否かを問わず、速やかにカルテを開示するとともに、改めて刑事施設における医療制度の抜本的改革に取り組むよう求めた。


(人権擁護委員会 委員 松本隆行)



日弁連短信

市民のためのIT化

事務次長

民事訴訟のIT化に向けて、現在、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会(以下「部会」)における議論が大詰めを迎えつつある。日弁連は、本年2月に取りまとめられてパブリックコメント手続に付された部会の中間試案に対し、同年3月に意見書を提出した。検討項目は多岐にわたるが、裁判所へのアクセスを拡充し、審理を充実させ、適正かつ迅速な紛争解決を図るための方策の一つとして、裁判手続等のIT化を重要な課題と位置付け、これを推進すべきというのが日弁連の基本的スタンスである。


ただし、IT化を自己目的化することは許されず、①裁判の公開や直接主義等の諸原則との整合性を図ること、②セキュリティ確保やプライバシー等の保護の確立が不可欠であること、③IT弱者への配慮や支援が必要であり、支部の統廃合など司法過疎拡大は厳に慎まれるべきであること、④非弁活動の弊害を生じさせない制度設計が必要であること、⑤IT化を契機として、審理の在り方の改善を図り、運用等の改善を続けていくべきであること、⑥事件管理システムは、十分な性能を備えた利便性の高いものでなければならず、その開発・構築に当たっては、最大の利用者団体たる日弁連の意見を尊重し、不断の改善を図る必要があることを指摘している。


民事裁判手続等のIT化に関する検討ワーキンググループでは、このような視座から日弁連推薦の部会委員・幹事のバックアップを精力的に進めてきた。また、上記③については、公的機関のサポート体制との調整を図りつつ、日弁連としてもIT弱者への必要なサポートを提供するとの基本方針を定めている。オンライン申し立ての義務化の範囲がどのように定められたとしても、IT化を推進すべきとのスタンスからは、IT弱者へのサポート体制の構築が不可欠であろう。


さらに本年4月からは、民事訴訟以外の手続(家事、民事保全、執行、倒産等)のIT化に関する研究会が立ち上げられ、急ピッチでの検討が進められている。民事訴訟法が適用または準用される各種手続について、それぞれの特質に応じたIT化の在り方が幅広く議論されている。


このようにIT化のうねりは大きく急激であるが、IT化によっていかに市民のための司法を実現するかが問われているといえよう。


(事務次長 藤原靖夫)



第68回 市民会議
弁護士過疎・偏在問題および法曹志望者増加の取り組みについて議論
6月22日 弁護士会館

2021年度初回の市民会議では、①弁護士過疎・偏在問題への対策、②法曹志望者の増加に向けた取り組みを報告し、議論した。


弁護士過疎・偏在問題への対策について

八木宏樹副会長は、「名古屋宣言」(1996年5月定期総会)に基づく日弁連の取り組みや弁護士ゼロワン地域解消状況の推移などを報告し、日弁連ひまわり基金を経済的基盤とする弁護士過疎地域への法律相談センター・公設事務所の設置・運営援助、赴任弁護士・養成事務所への援助、偏在解消対策地区での開業援助などを説明した。


市民会議委員からは、日弁連のこれまでの取り組みを評価しつつ、日弁連のみがこの問題の解消を中長期的に支えることは財政的に困難であり国への予算措置を要求すべき、司法のIT化の流れの中で遠隔法律相談システムの構築などにも取り組むべきとの意見が出た。


法曹志望者の増加に向けた取り組みについて

挨拶をする荒会長神田安積副会長は、法科大学院制度創設時と比べて法曹志望者数が減少し、その中でも法科大学院志願者数が減少していること、一方で司法試験予備試験出願者数は増加していることを報告した。また、法曹コースに加え、法科大学院在学中の司法試験受験制度が2023年から導入されることを説明し、法曹志望者の増加に向けた日弁連の取り組みを紹介した。続いて、法曹養成制度改革実現本部の春名一典副本部長(兵庫県)は、兵庫県弁護士会の会員が母校を訪問し、法曹の魅力を伝える取り組みを報告した。


市民会議委員からは、法曹養成期間を短縮する法曹コースの導入は、社会人経験を含む多様な人材確保という司法制度改革の目的との矛盾を感じるという意見のほか、学生の憧れの対象となるよう弁護士の仕事が社会に貢献するものであることをさらに周知すべきとの声が上がった。


民会議委員(2021年6月22日現在)五十音順・敬称略
井田香奈子 (朝日新聞論説委員)
逢見 直人 (日本労働組合総連合会会長代行)
太田 昌克 (共同通信編集委員、早稲田大学客員教授、長崎大学客員教授、博士(政策研究))
北川 正恭 (議長・早稲田大学名誉教授)
吉柳さおり (株式会社プラチナム代表取締役、株式会社ベクトル取締役副社長)
河野 康子 (一般財団法人日本消費者協会理事、NPO法人消費者スマイル基金事務局長)
鈴木 正朝 (新潟大学大学院現代社会文化研究科・法学部教授、一般財団法人情報法制研究所理事長)
田中  良 (杉並区長)
浜野  京 (信州大学理事(特命戦略(大学経営力強化)担当)、元日本貿易振興機構理事)
村木 厚子 (副議長・元厚生労働事務次官)
湯浅  誠 (社会活動家、東京大学先端科学技術研究センター特任教授)



第22回弁護士業務改革シンポジウムの分科会プレシンポジウム
入管施設及び精神科病院に関する弁護士業務拡大に向けて~参考事例報告~
6月23日 オンライン開催

2022年開催予定の第22回弁護士業務改革シンポジウム分科会「入管施設及び精神科病院における支援活動」のプレシンポジウムを開催し、各分野の訴訟活動や成果等を報告した。


入管収容・送還に関する訴訟活動報告

①仮放免不許可処分取消訴訟(東京地裁平成30年8月28日判決)・浦城知子会員(東京)


裁判所は、仮放免すべき場合の枠組みを「人道的配慮の観点から身柄の解放を相当とする場合」と示した上で請求を認容した。成果は得たが、収容から解決まで3年2カ月を要し、迅速な救済手段の検討が必要だと述べた。


②入管職員らによる被収容者に対する暴行事件・中井雅人会員(大阪)


2020年9月に大阪地方裁判所で成立した和解では、大阪出入国在留管理局が原告に謝罪し、被収容者の人権を尊重し適正な処遇に努めることを確認した。証拠保全により監視カメラ映像を開示させ入管職員らによる暴行の状況を明らかにするなど、弁護団の訴訟活動の工夫を紹介した。


③難民の強制送還に対する国賠訴訟(名古屋高裁令和3年1月13日判決)・小川哲史会員(奈良)


難民不認定処分の異議申立棄却決定直後に強制送還され取消訴訟が不可能となった事案について、司法審査の機会を実質的に奪われないことが法律上保護された利益であると認められた価値ある先例だと述べた。


精神(科)病院における強制医療に関する訴訟活動報告

①身体拘束に関する訴訟(名古屋高裁金沢支部令和2年12月16日判決)・佐々木信夫会員(神奈川県)


原審は敗訴したが、控訴審は前日の暴力行為を理由とした身体拘束の開始は違法と判断した(上告受理申立中)。同種案件に取り組む会員に対し、精神保健福祉法上の処遇改善請求や退院請求には日弁連の委託援助が利用可能であることを呼び掛けた。


②摂食障害の女児に対する77日間身体拘束事件・北村聡子会員(東京)


協力医の確保、拘束状況を自ら再現して可視化するなどの訴訟活動上の工夫を紹介した。


*講演翌日の6月24日、東京地方裁判所で17日間の拘束を違法とする一部認容判決が言い渡された。



シンポジウム
書籍『国際水準の人権保障システムを日本に ― 個人通報制度と国内人権機関の実現を目指して』の発刊を記念して、これからのアクションプランを考える
6月15日 オンライン開催

arrow_blue_1.gifシンポジウム「書籍『国際水準の人権保障システムを日本に―個人通報制度と国内人権機関の実現を目指して』の発刊を記念して、これからのアクションプランを考える」


日本は、「女性差別撤廃条約」や「障害者権利条約」など11の国際人権条約を批准している。しかし、条約に書かれた国際基準が国内で実現されないため人権侵害を根絶できない現状がある。この状況を打破する鍵になるのが「個人通報制度」と「国内人権機関」である。これらの実現に向けたアクションプランを考えるべくシンポジウムを開催した。


基調講演

泉徳治会員(東京/元最高裁判所判事)は、第二次世界大戦の経験は、それまでの「個々の国の憲法と法律で個人の人権を保護すべき」との建前では不十分であり、個人の人権は国際的連帯の下で確保する必要性があることを教訓としたと述べた。


日本では国連や人権条約の役割について、個人の権利に直接関わることはないとの誤解がしばしばみられることを指摘し、人権保障の国際的連帯の枠組みとして①人権条約の批准、②個人通報制度の導入、③国内人権機関の設置という3本の柱が必要であると強調した。


個人通報制度と国内人権機関の実現に向けたアクションプランについて

パネルディスカッションには、浅倉むつ子氏(女性差別撤廃条約実現アクション共同代表)、崔栄繁氏(日本障害フォーラム(JDF)障害者権利条約推進委員会事務局)、半田勝久准教授(日本体育大学)、文公輝氏(NPO法人多民族共生人権教育センター事務局長)、自由権規約個人通報制度等実現委員会の大川秀史副委員長(東京)が登壇し、ジェンダー、障がい、子ども、人種差別、難民など各分野について日本が抱える課題と、個人通報制度と国内人権機関を実現するためのアクションプランを説明した。


多くの国会議員からも力強いメッセージが寄せられた。



第31回日弁連夏期消費者セミナー
コロナ禍と消費者
7月3日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif第31回日弁連夏期消費者セミナー「コロナ禍と消費者」


コロナ禍により市民の経済的困窮やそれに乗じた消費者被害が社会問題化し、さまざまなトラブルが発生している。契約責任においてコロナ禍の影響をいかに考えるべきか整理し、消費者の権利を守るために国や行政が果たすべき役割、法律家の関わり方を検討するセミナーを開催した。


消費者トラブルの現状

加藤玲子氏(独立行政法人国民生活センター)は、新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットラインや新型コロナワクチン詐欺消費者ホットラインの実施状況を報告し、注文した覚えのないマスクが届き高額請求された事例や消毒用アルコールを注文したが実在のオンラインショップを装う詐欺サイトだったなどの相談事例を報告した。低価格の「お試し」のつもりで購入した商品が定期購入だった事例やオンラインゲームの高額課金など、新しい生活様式の相談として、インターネット取引でのトラブルも増えていると分析した。


消費者被害への実務的対応

消費者問題対策委員会の本間紀子委員(東京)が、日弁連の新型コロナウイルス法律相談全国統一ダイヤルには労働問題に次いで消費者問題に関する相談が多く寄せられ、特に請求金額が高額となりがちな結婚式のキャンセルに関する相談が多かったと振り返り、この問題に関する消費者庁の検討会での議論状況を紹介した。


消費者契約の理論的問題点

田中洋教授(神戸大学大学院)が、コロナ禍を理由に事業者から役務提供がない場合や消費者がキャンセル・中途解約を申し出た場合の法的取り扱いを解説した。田中教授は、コロナ禍に起因するリスクへの対応には、法による解決よりも当事者の交渉により柔軟に解決することが望ましい場合もあり、再交渉の場面では弁護士の援助を得られることが望ましいと述べた。


コロナを巡る公法と市民生活

岩本諭教授(佐賀大学経済学部)は、国民生活安定緊急措置法や新型インフルエンザ等対策特別措置法を説明し、コロナ禍による巣ごもり需要の増加、GoToキャンペーンによる国家援助型消費経済活動の誘導などの環境変化に伴い、情報の重要性が増していると分析し、情報の質の確保と消費者教育の充実が急務と訴えた。


パネルディスカッション

講演者全員で、①マスク等の買い占め問題から浮き彫りにされた情報提供の在り方および消費者教育の重要性、②コロナ禍という不測の事態におけるキャンセル問題について議論した。



セミナー
中小企業の関心度大!弁護士として知っておきたい!
越境EC取引における各国の消費者保護・製造物責任制度
6月28日 オンライン開催

中小企業の国際業務支援に取り組んでいる会員を主な対象とし、BtoC越境EC取引における各国の消費者保護・製造物責任制度の基本について解説するオンラインセミナーを開催した。


中小企業の国際業務の法的支援に関するワーキンググループの新田裕子副座長(栃木県)をモデレーターとして、越境EC取引を行う中小企業から相談されやすい事例について、エリック・ギュスタヴ・マークス外国特別会員(第二東京/カリフォルニア州)、陳天華外国特別会員(第二東京/中華人民共和国)、マージュ・パスカル外国特別会員(第二東京/フランス)が日本語で分かりやすく解説した。


想定事例として、①インターネットショッピングで外国の消費者に服を販売したところ、返品不可としているにもかかわらず返品を求められた事例、②インターネットショッピングで外国の消費者に化粧品を販売したところ、肌荒れが生じたとのクレームが寄せられた事例、③外国の消費者を対象とするオンラインショップを開設しようとしている事例の三つが取り上げられた。参加者は、これらの事例について、米国・中国・EUの三つの法域における制度の概要や具体的なリスクについて学んだ。


セミナーには約165人が参加し、チャットによる質問が多数寄せられるなど、参加者の関心の高さがうかがわれた。



法廷内での手錠・腰縄使用問題全国経験交流集会
6月24日 オンライン開催

刑事法廷入退廷時に、被疑者・被告人に手錠・腰縄を使用しないことを求める活動について、参加した全国の会員が取り組みや課題を共有した。


2014年大阪地裁事件

人権擁護委員会手錠・腰縄問題プロジェクトチーム(以下「PT」)の川﨑真陽特別委嘱委員(大阪)は、活動本格化の契機となった2014年の大阪地方裁判所での事件を報告した。


この事件では、被告人が手錠・腰縄姿での入退廷を拒否し、弁護人もその意向に沿い出廷を拒否した。裁判所は、弁護人に出頭在廷命令を発し、応じない弁護人に3万円の過料を科した上、大阪弁護士会への処置請求をした。しかし、同会は正当な理由があるとして処置をしなかった。


日弁連の取り組み

川﨑特別委嘱委員は、2019年10月15日付「刑事法廷内における入退廷時に被疑者又は被告人に手錠・腰縄を使用しないことを求める意見書」等の日弁連の取り組みを報告した。


また、最高裁判所の見解は、戒具を施された姿を傍聴人の目に触れさせるべきではないと特に認められる場合には、傍聴人のいない所で解錠・施錠させる運用を原則とすることが相当としつつ、これができない特段の事情があるときは、入廷直前・退廷直後に法廷出入口で解錠・施錠させる等の適切な方法を取ることが相当というものであると説明した。


各地での取り組み等

大阪、栃木県、愛知県、宮崎県および福岡県の各弁護士会所属のPT委員・特別委嘱委員が、自身の経験や弁護士会の取り組みを報告した。


参加者からは、裁判官ごとに取り扱いが異なる現状があるという指摘や、予断排除はもちろん、被告人等の名誉感情や公正な裁判への不安にも関わるといった声が上がり、さらに議論を深めるべきことの重要性が確認された。


市民向け広報動画の配信

日弁連は、本年5月から「この姿 見られたくない 見たくない~法廷での手錠・腰縄姿~」を公開している。この問題を広く周知するためにもご活用いただきたい。


*動画は、icon_page.pngNICHIBENREN TV(YouTube公式動画チャンネル)でご覧いただけます。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.160

性暴力被害者へのワンストップ支援の窓口として
特定非営利活動法人性暴力救援センター・東京(SARC東京)

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性暴力救援センター・東京(SARC東京)(以下「センター」)は、性暴力・性犯罪の被害相談に24時間、365日対応する救援ダイヤルを開設し、被害者の支援活動を行っています。事務局長の松山容子氏、事務局の田辺久子氏にお話を伺いました。

(広報室嘱託 枝廣恭子)


センター発足の経緯

性暴力被害者が被害直後に相談できるワンストップ支援の窓口が必要との理念の下、まつしま病院の故佐々木靜子院長を中心に、35人の支援員と22人の協力弁護士が参加して2012年にセンターが設立されました。現在に至るまで、24時間、電話相談に対応できる体制を継続しています。


2015年に東京都と連携を開始し、2017年からは東京都の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」として活動しています。


センターの活動

45人の支援員が交替で24時間、365日待機し、電話相談を受け付けています。相談者から要望があれば面談を実施し、提携先の医療機関での受診や警察への被害申告に同行したり、専門家を紹介したりと必要な支援につなげます。相談件数は年々増加しており(2018年度4925件、2019年度5255件、2020年度6531件)、これに伴って支援員も徐々に増やし、現在は日中に3人、夜間に2人の体制で対応しています。


相談の傾向とコロナ禍による影響

相談内容は、性犯罪被害の事案にとどまらず、セクシュアルハラスメント、痴漢、ストーカー、DVなど多岐にわたります。若年層からの相談が増えていますが、その多くはインターネットが発端となった被害事案です。


男性からの相談も増加傾向にあります。相談者や相談内容の多様化に対応するため、支援員の研修に力を入れています。また、性被害相談の対応を充実させるため、市民向けの「性暴力被害者支援ガイド」に男性やLGBT被害者への対応を増補し、改訂しました。


過去の性暴力被害に関する相談も数多く寄せられます。性犯罪被害事件が報道されると、数カ月、数年前の事件であってもその経験を思い出して不安になる方や、あるいは被害に遭ったことを他人に打ち明けても良いのだとの思いになるためか、相談が増える傾向にあります。


コロナ禍の影響による相談件数の増加も見られます。被害自体の増加だけでなく、心の平衡を保っていた被害者が、生活の変化や人との接触機会の減少により精神的に不安定となり、電話してくることも多いと感じます。


センターの強みと課題

電話相談に24時間、365日対応し、夜中でも相談できることが最大の強みです。産婦人科医だけでなく、精神科医、カウンセラー等とも提携しているため、体のケアに続いて、心のケアがワンストップで受けられることも大きな特徴です。


センターが主として取り組んできた急性期(初期)の救済・支援活動は全国的に広まっています。一方、初期のケアが十分でなかった被害者には、時間を経てからの中長期的ケアが必要となります。しかし、このような支援を専門に行う機関等はなく、その整備が今後の課題です。


また、性犯罪について被害申告をしても事件として認知される件数が極めて少ないのが現状です。強制性交等は暴行・脅迫が要件となりますが、その有無が問題となるケースが多いこと、継続的な性被害を受けている場合に日時等の特定が難しいことなどがその原因と考えられます。


協力弁護士の果たす役割

センターの協力弁護士は、被害者に対する法的助言や、警察への被害申告の支援、被害者代理人としての活動を行っています。被害者は、法律の専門家から話を聞くことで、取るべき手段を自身で選択できるようになると感じます。


会員の皆様へ

性暴力被害者から相談を受けた際は、難しい状況であっても、何かできることはないか寄り添って考えてあげてください。その姿勢が被害者にとって救いになります。また、刑事弁護人の立場からも、被疑者・被告人だけでなく、性犯罪被害者が抱えるさまざまな問題を理解した上で対応していただければと思います。


現在の法律や制度には課題も多いため、被害の実態に合わせて改善を求める活動にも前向きに取り組んでいただくことに期待しています。



第63回人権擁護大会・シンポジウム(於:岡山市)にご参加を!
〜おいでんせぇ リアルでもリモートでも〜

arrow_blue_1.gif第63回人権擁護大会・シンポジウムのご案内


シンポジウム

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1分科会「精神障害のある人の尊厳の確立をめざして」
〜地域生活の実現と弁護士の役割〜
岡山シンフォニーホール


2分科会「超高齢社会における消費者被害の予防と救済を考える」
〜誰一人取り残さない社会をめざして〜
ホテルグランヴィア岡山 フェニックス


3分科会「人口減少社会を乗り越える地域再生の社会保障」
〜地域で安心して暮らすために〜
岡山市民会館


大会

2021年10月15日(金)
12時30分〜17時 岡山市民会館


特別企画

 2021年10月15日(金) 9時30分〜11時30分
 ハンセン病ドキュメンタリー
 『NAGASHIMA〜“かくり”の証言〜』上映
 岡山市民会館


日弁連最大のイベント・人権擁護大会は、本年10月14日・15日に岡山で開催されます。昨年はコロナ禍のため中止でしたので、2年ぶりの開催です。とはいうものの、いまだに収束したとは言えない新型コロナウイルス感染症のために、従来どおりの開催とはなりません。懇親会、観光企画、ゴルフはありませんし、昼食も準備できません。何とも物足りないとお感じになる方もいらっしゃることでしょう。


しかし、シンポジウムはいずれも2年がかりで準備され、満を持した充実した内容であることは間違いありません。特別企画として上映されるハンセン病ドキュメンタリー『NAGASHIMA〜“かくり”の証言〜』は、この夏完成したばかりの作品で、ハンセン病患者隔離政策の実態を目の当たりにすることができます。大会では、より良い宣言・決議をするために充実した審議が行われることは確実です。まさに、付随的なものは削ぎ落とし、人権擁護大会のコアな部分のみに集約・特化した大会になります。


また、新型コロナウイルス感染症の拡大の状況を踏まえ、シンポジウムと大会はウェブ配信を行います。事務所で、あるいは自宅で、人権擁護大会への視聴参加が可能です。人権擁護大会へあまり参加したことがない方も、これを機会に気軽な気持ちで覗いてみてはいかがでしょうか。


これまでにない、新しいスタイルの人権擁護大会になるはずです。リアルでもリモートでも構いません。岡山弁護士会会員一同、皆さまのご参加を心よりお待ちいたしております。


(岡山弁護士会 第63回日弁連人権擁護大会実行委員会事務局長 奥津晋)



ブックセンターベストセラー (2021年6月・手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター


順位 書名 著者名・編集者名 出版社名・発行元
1

携帯実務六法 2021年度版

「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム/編 東京都弁護士協同組合
2

株式会社法〔第8版〕

江頭憲治郎/著 有斐閣
3

類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ〔改訂版〕

佐々木宗啓・清水響・吉田徹・佐久間健吉・伊藤由紀子・遠藤東路・湯川克彦・阿部雅彦/編・著 青林書院
4 類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ〔改訂版〕 佐々木宗啓・清水響・吉田徹・佐久間健吉・伊藤由紀子・遠藤東路・湯川克彦・阿部雅彦/編・著 青林書院
婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編) 新装補訂版 婚姻費用養育費問題研究会/編 婚姻費用養育費問題研究会
6

エンタテインメント法実務

骨董通り法律事務所/編 弘文堂
7

法律事務職員研修「基礎講座」テキスト 2021年度

東京弁護士会弁護士業務改革委員会/編 東京弁護士会
8

離婚調停〔第4版〕

秋武憲一/著 日本加除出版
9

養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究

司法研修所/編 法曹会
10

株主総会の準備事務と議事運営〔第5版〕

森・濱田松本法律事務所/編、宮谷隆・奥山健志/著 中央経済社
Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響 荒井達也/著 日本加除出版



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eラーニング人気講座ランキング(家事編) 2021年6月~7月

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順位 講座名 時間
1 相続法改正後における遺留分侵害額請求訴訟の実務(遺留分計算シートの活用方法~提訴から証拠調べまで~) 169分
2 離婚事件実務に関する連続講座 第1回 総論~相談対応・受任から調停(調停における代理人のあり方)審判・人訴・離婚後の手続(氏の変更等) 117分
3 離婚事件実務に関する連続講座 第5回 財産分与・年金分割 97分
4 これだけは知っておきたい最新家事事件実務 171分
5 成年後見実務に関する連続講座 第1回 趣旨、成年後見開始審判の申立て 67分
6 離婚事件実務に関する連続講座 第3回 親権・監護権・面会交流・子の引渡し(審判前の保全) 109分
7 早わかり 相続法改正2~遺産分割・遺言・遺留分 46分
8 早わかり 相続法改正1~配偶者保護・特別の寄与

40分

9 相続税法の実務-具体的な事例を題材として- 115分
10 改正相続法と家裁実務~遺産分割事件を中心として~ 104分

お問い合わせ先:日弁連業務部業務第三課(TEL:03-3580-9927)