日弁連新聞 第563号

「新型コロナウイルスと偏見・差別・プライバシー侵害ホットライン」を実施

arrow_blue_1.gif人権週間における「新型コロナウイルスと偏見・差別・プライバシー侵害ホットライン」を実施します


2020年12月の人権週間期間中に、「新型コロナウイルスと偏見・差別・プライバシー侵害ホットライン」を実施した。4日・5日に電話相談を行い、4日から10日まではメールでも相談を受け付けた。電話相談は31件、メール相談は3件であった。


相談内容としては、「医療機関の検査の遅れから新型コロナウイルス感染の疑いが払拭されず不利益取り扱いを受けている」「感染が広がっていると報じられている場所に行ったというだけで出社停止になったり仕事がキャンセルされた」「クラスターが発生した場所に日頃行っていたというだけで、周りから繰り返し『コロナがうつる』などと言われている」など、いずれも深刻な悩みが寄せられた。


混乱し自責の念を持っている相談者の話を丁寧に聞き、自己責任ではなく差別者に非があることを明確に伝えることで、相談者が落ち着く様子がうかがえた。偏見・差別等に関する法律相談や人権相談の体制を充実させることの重要性を改めて認識することとなった。


ホットラインの概略は2月15日にオンラインで開催する人権イベント・シンポジウム「新型コロナウイルスと人権」で報告する。これに加えて、偏見・差別が生まれる原因を分析し、差別を予防し、被害者の効果的救済を図るための課題について、国際人権、公衆衛生、心理学の学者によるディスカッションを行う予定である。「人権の危機」を克服するためのステップとしていきたい。


(人権擁護委員会 委員長 川上詩朗)



「送り付け商法(ネガティブ・オプション)の全面的な禁止を求める意見書」を公表

arrow_blue_1.gif送り付け商法(ネガティブ・オプション)の全面的な禁止を求める意見書


日弁連は、2020年12月17日付で「送り付け商法(ネガティブ・オプション)の全面的な禁止を求める意見書」を取りまとめた。


取りまとめに至る経緯

消費者が注文していない商品を、販売業者が一方的に送り付けて対価や連絡を要求する行為は「送り付け商法(ネガティブ・オプション)」と呼ばれるが、現行の特定商取引法には禁止規定がない。


新型コロナウイルス感染拡大の下で、注文した覚えのないマスクや消毒液、不審物等を一方的に送り付けられたという相談が相次いだため、2020年4月、届いた物品の取り扱いについて、消費者庁から国民向けの注意喚起がなされた。


また、同年8月に取りまとめられた「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」の報告書においても、送り付け商法に対する制度的措置の必要性が指摘された。


意見書は、このような状況下における悪質商法の被害を防止すべく、諸外国の法制度を参考に、送り付け商法の全面的な禁止を求める法改正を提言したものである。


意見書の内容

意見書では、特定商取引法59条1項を次のとおり改正するよう求めた。


送り付け商法の禁止を明記し、行政処分の対象とすべきこと。


送り付け商法により商品を送付された名宛人は、これを贈与品とみなすことができ、対価の支払義務、保管・返還義務および損害賠償義務等一切の義務を負わない旨を明記すべきこと。仮に、販売業者が、送り付け商法ではなく誤送付だったことを立証した場合は、自らの費用負担で返還を請求できるが、請求できるのは当該商品の現存している限りである旨を規定すべきこと。


(消費者問題対策委員会 副委員長 小林由紀)



「実効的な発信者情報開示請求のための法改正等を求める意見書」を公表

arrow_blue_1.gif実効的な発信者情報開示請求のための法改正等を求める意見書


日弁連は、2020年12月18日付で「実効的な発信者情報開示請求のための法改正等を求める意見書」を取りまとめた。


意見書は、国に対し、①特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の「特定電気通信による」および「情報の流通によって」の要件の撤廃、(権利侵害が)「明らかであるとき」の要件の撤廃および開示の要件の見直し、②同法4条1項の発信者情報を定める省令において開示の対象となる「発信者情報」の、限定列挙から例示列挙への変更、③会社法933条1項1号の定める外国会社登記における代表者登記義務の履行を徹底させる運用、④特定電気通信役務提供者に2020年改正後の電気通信事業法により国内における代表者または代理人(以下「国内代表者等」)が置かれる場合の国内代表者等に対する訴状等の送達を認める運用をそれぞれ求めるものである。


発信者情報開示の在り方については、総務省が2020年4月に「発信者情報開示の在り方に関する研究会」を設置し、検討してきた。この間、5月には、SNS上での誹謗中傷を原因とする、いわゆるリアリティ番組の出演者の自死報道も話題となった。研究会での議論を受け、「発信者情報」の対象が省令・解釈等により一部広げられるほか、新たな裁判手続の創設が検討されている。


意見書では、日弁連の従来の意見書等を踏まえ、発信者情報開示の実体要件の撤廃等および発信者情報の例示列挙化のほか、外国事業者のサービスにおける誹謗中傷等が特に問題となっている現状を踏まえ、外国会社等への実効性を確保すべく、登記義務の履行徹底と国内代表者等への訴状送達について意見を述べている。


(消費者問題対策委員会 副委員長 板倉陽一郎)



荒会長らが福島第一原子力発電所などを視察
12月25日 福島県

日弁連の荒中会長と副会長7人が、東日本大震災から間もなく10年となる東京電力福島第一原子力発電所などを視察した。日弁連執行部の視察は3回目となるが、バスを降りて1〜4号機の原子炉建屋を視察したのは、今回が初めてである。


廃炉資料館と福島第一原発

1.jpg朝早くいわきを出発した一行は、最初に、富岡町にある東京電力廃炉資料館を訪れ、原発事故当時の対応や廃炉作業の進捗などについて説明を受けた。続いて視察用バスで富岡町の帰還困難区域に入り、その先の福島第一原発に向かった。原発構内に到着後、管理棟で線量計を渡され、原子炉建屋外観俯瞰エリアで降車した。1〜4号機の原子炉建屋から約100メートルの高台にある俯瞰エリアで、水蒸気爆発により鉄骨がむき出しになったままの1号機原子炉建屋などを目にした一行は、廃炉までの道のりの長さを改めて実感した。


中間貯蔵施設

2.jpg次に大熊町にある中間貯蔵工事情報センターを訪れ、環境省の職員から説明を受けた後、視察バスで、中間貯蔵施設のうちの除染土等の受入・分別施設と土壌貯蔵施設を視察した。中間貯蔵施設は大熊町と双葉町にまたがる帰還困難区域にあり、全体面積は1600ヘクタール(東京ドームの340倍)で、民有地が79%を占めている。避難を余儀なくされた住民らが、除染土処理のために土地を提供した事実に、一同胸が痛んだ。


福島県の会員らと意見交換

その後、廃炉資料館に戻り、福島県弁護士会の槇裕康会長および小林素会員と、被災者らの現状や時効特例の再延長などについて意見交換を行った。荒会長からは、復興が進んでいない現状に、住民に寄り添った支援を継続するとの強い決意表明がなされた。


(副会長 狩野節子)



ひまわり

73期の新人弁護士1200人余りが登録を行った。弁護士としての門出を心より祝福申し上げる▼73期修習はコロナ禍という混乱の中、先例のない対応を迫られた。地域によっては、修習の根幹である、生の事件を扱う貴重な機会となる実務修習が自宅学修に切り替えられ、課題やeラーニングで代替された。多様な分野を学修する機会となる選択型実務修習も、全国プログラムや自己開拓プログラムが中止され、分野別実務修習の補完の機会とされた。和光で予定されていた集合修習は、オンラインで行われた。独り立ちする直前に、同期の仲間と悩みや不安を共有したり、志気を高め合ったりする機会を得られたのかと憂慮する▼未曽有の事態の中で最善の修習が行われたことは間違いない。ただ、例年よりも不安な気持ちで実務家としてスタートを切った者がいることは想像に難くない。所属事務所等でOJTの機会は得られるであろうが、新人研修の補充等の目配りも必要となろう▼74期は導入修習からオンラインで実施されることとなった。面識のない者の間でのオンライン利用は、さらに工夫が必要となろう。昨年同様、実務修習も変則的な実施となる可能性が高い。実のある修習実現のため、法曹三者のより一層の連携が求められる。


(M・S)



全国一斉生活保護ホットラインを実施
コロナ禍の影響か相談件数が増加

arrow_blue_1.gif2020年12月10日に「全国一斉生活保護ホットライン」を実施します


2020年12月10日、全国48の弁護士会(東京三会は共同実施)で「全国一斉生活保護ホットライン」を実施した。相談件数は1月29日時点の集計で694件と、昨年より100件近く増加した。


今回は、やはりコロナ禍の影響と思われる相談が目立ったことが特徴的であった。


福祉事務所の不適切な対応に関する相談も数多く見られた。コロナ禍により生活を破壊される人が増加する中で、生活保護制度の活用がますます重要となり、厚生労働省もウェブサイトで生活保護の権利性を明らかにするようになった。にもかかわらず、コロナで大変なのは皆同じなどとして生活保護の申請自体を断念させようとする、典型的な水際作戦について相談が寄せられた。


加えて、従来と同様「借金があると生活保護は利用できない」「家賃が高いと生活保護を利用できない」と誤った説明をするなど、福祉事務所の対応が明らかに違法、あるいは違法の可能性が高いと思われる相談もいまだに多く寄せられた。これは由々しき事態であると言わざるを得ない。


また、生活の厳しさや不安を訴える相談が多く寄せられたのも例年どおりであった。


日弁連としては、今後も相談を続け、生活保護法についての意見表明などを適時適切に行っていきたい。


(貧困問題対策本部 委員 長坂貴之)



日弁連短信

新型コロナウイルスに立ち向かう日弁連

新型コロナウイルスと人権

3.png今年度の日弁連は、ひたすら新型コロナウイルスの対応に追われております。人権擁護委員会を担当していたので、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に設置されている「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」の会議を傍聴させていただき、病院、学校など風評被害に遭われた方々のお話を直接お伺いする機会がありました。被害の深刻さ、マスコミの報道の在り方、心ない誹謗・中傷にどのように対応すべきかを考えさせられました。そのような中でも、被害に遭われた方々を支援し、声援を送る方々がたくさんいらっしゃることには救われる思いがしました。


この会議で日弁連は「新型コロナウイルス法律相談全国統一ダイヤル」などの取り組みを報告したほか、前記ワーキンググループで報告された事例を類型化し、類型ごとに法的評価、法的対応、相談先を整理し、偏見・差別等に対しどのように対応すればよいかについて説明しました。詳細はicon_page.png内閣官房ウェブサイトにて公開されておりますのでそちらをご覧ください。


日弁連は、人権擁護委員会をはじめ貧困問題対策本部、国際人権問題委員会、家事法制委員会など(たくさんあるので、私が担当した委員会を主に挙げさせていただきました)さまざまな委員会が新型コロナウイルスと闘っている人々を支援するための活動に取り組んでおります。本年2月15日には人権イベント・シンポジウム「新型コロナウイルスと人権―差別・偏見のない社会を目指して」をオンライン開催し、各委員会の取り組みをご報告させていただきます。中止せざるを得なかった今年度の人権擁護大会に代わるイベントです。


退任のご挨拶

本年1月末日をもって事務次長を退任しました。もっとも人権イベントをはじめ継続する案件があるので、歴代の事務次長同様しばらくは日弁連に来る機会が多くなりそうです。


緊急事態宣言が出され先の読めない不安はありますが、新型コロナウイルスに立ち向かい人々の暮らしや幸せを守るため


「見せましょう、日弁連会員全員の底力を!」


2年間ありがとうございました。


(前事務次長 永塚良知)



日弁連新聞モニターの声

日弁連新聞では、毎年4月に全弁護士会から71人のモニター(任期1年)を推薦いただき、そのご意見を紙面作りの参考にしています。今年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、5月号と6月号を休刊、8月号から10月号までを2面構成としてお届けしました。新型コロナウイルス関連の記事については、時勢に応じた記事であると好意的なご意見をいただきました。また、4月号の公営住宅の連帯保証人・保証人に関する意見書や、8月号の民事裁判手続等IT化研究会報告書に対する意見書、9月号の破産者等に関する情報の拡散を防止する措置を求める意見書の記事に高い関心が寄せられ、取調べの可視化フォーラムに関する記事では「可視化の意義を再認識できた」、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインに関する記事では「ガイドラインの存在を知ることができた」とのご意見が寄せられました。


4面の「JFBA PRESS」は、広報室嘱託がタイムリーな情報発信を目指し特集記事を掲載しています。7月号の治療的司法研究センター、11月号の国民生活センター、12月号の中小企業再生支援全国本部を取材した記事は、いずれも高い評価をいただきました。


3面は、日弁連の取り組みを知っていただくことに重点を置き、直近に開催されたイベントの中から全体のバランスを考えて掲載しています。今年度は新型コロナウイルスの影響でイベントの中止やオンライン開催による写真不足など、これまでにない事情もあり紙面構成に苦労しましたが、モニターの皆さまの温かい言葉に励まされました。今後も会員のニーズにお応えできる、分かりやすい紙面作りに努めます。


(広報室嘱託 本多基記)



司法試験に1450人が合格

1月20日、2020年の司法試験の合格発表があり、1450人が合格した。受験者数は3703人で、昨年から763人減となっている。


単年合格率は4年連続の上昇で39・16%であった。予備試験合格の資格に基づく受験者数は423人、合格者は378人である。


司法試験の合格者数は、2016年以後、1500人台で推移してきたところ、2020年は、2019年の合格者数1502人から52人の減少となっている。近年の推移に鑑みれば、1500人への減員がほぼ達成されたと言える状況にあることから、日弁連では、2020年7月に法曹人口検証本部を設置し、1500人への減員達成後の将来的な法曹人口について検証を開始している。


なお、法科大学院を修了し最初の試験で合格した人の割合が初めて5割を超えた。


また、合格者のうち、女性は367人で、全体の25・31%であった。


日弁連では、合格発表に合わせて「arrow_blue_1.gif令和2年司法試験最終合格発表に関する会長談話」を公表している。



新事務次長紹介

永塚良知事務次長(第一東京)が退任し、後任には、2月1日付で松田由貴事務次長(第一東京)が就任した。


松田 由貴(まつだ・ゆき)(第一東京・58期)

4.pngコロナ禍に伴い、日本、そして世界が抱える各種問題の内容や重要度が様変わりし、現在も刻一刻と変化しています。弁護士や弁護士会などが事態を迅速かつ的確に把握し、社会の信頼を得つつ、さまざまな課題に取り組むことができるよう、尽力いたします。





第63回人権擁護大会シンポジウム
第1分科会実行委員会による
「精神科への入院経験を有する方々への実態アンケート調査」報告会
12月24日 オンライン開催

日弁連では、第63回人権擁護大会シンポジウム第1分科会「精神障害のある人の尊厳の確立をめざして〜地域生活の実現と弁護士の役割〜」の開催に当たり、精神科への入院経験を有する多くの当事者の声を聞くために、患者会、家族会等183団体・個人の協力を得てアンケート調査を実施し、762人から回答を得た(2020年9月4日現在)。今回の報告会では、アンケート調査結果をもとに精神科医療に係る法政策のあるべき姿を議論した。


第63回人権擁護大会シンポジウム第1分科会実行委員会の八尋光秀委員長(福岡県)は、日本ではこれまで精神科病院の不祥事として、数多くの人権侵害事例が報告されてきたにもかかわらず、公的検証や実態調査が実施されていない点を問題視し、本アンケート調査の意義を説いた。


柳原由以委員(東京)と山口亮委員(京都)はアンケート結果の概要を報告した。入院経験があると回答した720人のうち、入院中に悲しい、つらい、悔しい体験をしたと回答した人が588人にのぼり、「入院の長期化により社会との隔絶を痛切に感じ、社会復帰できるか不安になった」「入院したことで人生が変わってしまった」との回答があったことを紹介した。また、全体の43%超が入院について納得できなかったことがあると回答し、「強制入院等によって自己決定権が奪われた」「閉鎖病棟や隔離室により自由が奪われた」「医師から十分な説明なく拘束された」との回答が多かったと切実な現状を訴えた。


池原毅和委員長(第二東京)は、医療や治療というと無批判に受け入れられるが、アンケート結果は実際に被害が発生していることを明示しており、批判の目を向ける必要があると述べた。その上で、強制入院制度がなくならない限り精神障害のある人の尊厳が確保された社会を実現することはできず、精神科医療におけるインフォームド・コンセント法理の適用や強制入院制度により損なわれた尊厳回復のための法制度創設が必要であると強調した。



犯罪被害者支援委員会設置20周年記念シンポジウム
〜あたりまえの被害者支援へ、20年とこれから〜
12月23日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif犯罪被害者支援委員会設置20周年記念シンポジウム-あたりまえの被害者支援へ、20年とこれから-


1999年に日弁連が「犯罪被害者に対する総合的支援に関する提言」を公表し、犯罪被害者対策委員会(現:犯罪被害者支援委員会)を設置して犯罪被害者支援活動に取り組み始めてから20年が経過した。この間の犯罪被害者支援活動を振り返り、今後の被害者支援の在り方を考えるべくシンポジウムを開催した。


5.jpgこの20年の犯罪被害者支援をめぐる日弁連の取り組みが紹介された後、2017年の人権擁護大会で採択された「犯罪被害者の誰もが等しく充実した支援を受けられる社会の実現を目指す決議」(以下「決議」)とその後の動きに関する報告が行われた。武内大徳副委員長(神奈川県)は、犯罪被害者の損害回復の実効性を確保するために必要な措置をとることなど、決議で国や地方公共団体に求めた5つの施策の概要を説明した。北條正崇委員(奈良)は、各地の弁護士会でさまざまな取り組みを行った結果、本日までに25の都道府県で犯罪被害者等支援条例の制定に至ったこと、弁護士が条例制定過程に関わることで、より犯罪被害者等のニーズに合う条例を制定できることを紹介した。また吉澤尚美事務局委員(和歌山)は、性犯罪・性暴力被害者のための病院拠点型ワンストップ支援センターの負担が過大であることを指摘し、病院拠点型センターを都道府県に最低1か所設立して全面的な財政支援を行うなど、国がより積極的な施策を進めるべきと述べた。


パネルディスカッションで歴代の委員長は、「犯罪被害者支援が特殊な活動ではなく一般的な弁護士業務になった」とこの20年間を振り返り、今後も決議の趣旨の実現を軸に、さらに充実した被害者支援を目指し活動していくべきであると強調した。



家事法制シンポジウム
養育費履行確保制度の課題と展望
12月19日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif家事法制シンポジウム「養育費履行確保制度の課題と展望」の開催について


厚生労働省の2016年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、離婚による母子世帯のうち、現在も養育費を受給している世帯は24・3%にとどまり、受給したことがない世帯は56・0%にのぼる(2016年11月1日現在)。本シンポジウムでは、養育費の履行確保に焦点を当て議論した。


棚村政行教授(早稲田大学法学学術院)は基調報告で、養育費の履行を確保するための自治体・国の対応と諸外国の取り組みを紹介した。家事法制委員会の小泉朋子委員(長崎県)は、弁護士に対するアンケートの集計結果を報告した。小泉委員は、サンプル数が非常に限定的ではあるものの、家庭裁判所の履行勧告や間接強制が活用されたケースでは養育費の支払いがなされた場合があると指摘した。


パネルディスカッションでは、二本松利忠会員(京都/元裁判官)が、養育費は履行期間が長期にわたり、その間に当事者の状況が変化し得るため、単純な金銭債権と同様の議論では問題を解消できないとして、任意かつ継続的な履行を実現するには当事者の事情を踏まえた制度が必要だと説いた。家事法制委員会の田中真由美委員(熊本県)も、現在の履行勧告・命令や民事執行制度は、義務者が職を転々としたり、ドメスティックバイオレンス(DV)がある事案などで十分に機能しないため、子どものためという視点から適切な制度を検討すべきと指摘した。


赤石千衣子氏(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)は、女性のひとり親は仕事と子育てに忙しく、DVなどから義務者との関わりに恐怖を抱くことも多いため、養育費履行確保制度は簡便で安全でなければならないと訴えた。


棚村教授は、養育費の問題は子どもの生存権、教育権、発達権等の権利保障の観点から捉えられるべきであって、未来の主権者の保護育成につながる重要な政策課題として位置付けられなければならないと力を込めた。



シンポジウム
子どもの権利条約と国内人権機関
〜日本の子どもの人権保障のために〜
12月7日 オンライン開催

arrow_blue_1.gifシンポジウム「子どもの権利条約と国内人権機関~日本の子どもの人権保障のために~」


日本は、国連子どもの権利委員会から、国内人権機関(人権の促進および擁護のための国家機関)を設置するよう勧告を受けているが、実現には至っていない。子どもの権利の実現という側面から国内人権機関の必要性を検討するシンポジウムを開催した。


基調講演

半田勝久准教授(日本体育大学体育学部/世田谷区子どもの人権擁護委員)は、子どもからの苦情を調査し権利侵害を解決する子どもオンブズパーソンについて、世田谷区子どもの人権擁護機関「せたホッと」の取り組みを紹介し、独立した監視機関であることや公正さを担保するための制度、手法を解説した。


基調報告

奥山眞紀子氏(一般社団法人日本子ども虐待防止学会理事長)は、虐待、いじめ、性被害など日本の子どもの権利侵害の現状を説明した上で、子どもの権利保障の基盤となる「子ども基本法」の制定が必要だと訴えた。


報告

大谷美紀子会員(東京/国連子どもの権利委員会委員)は、子どもの権利を十分に実現するには人権侵害を事後的に救済する裁判では足りず、人権侵害が生じない社会にしなければならないと論じ、そのためには専門家による独立した監視機関である子どもコミッショナーが必要だと語った。


国内人権機関実現委員会の近藤剛委員長(岡山)は、各国の国内人権機関の活動を紹介し、子どもとの対話・子どもの意見表明を重視する活動などについて報告した。


パネルディスカッション

登壇者からは、「子どもの生活圏である自治体で子どもに寄り添い個別事案の解決を図る子どもオンブズパーソンだけでなく、政府の政策に意見を述べる国レベルの子どもコミッショナーも必要である」「将来を担う子どもの人権を保障するため子どもコミッショナーを早期に実現し、障がい者など他分野の国内人権機関の設置にもつなげたい」などの意見が挙がった。



高校生模擬裁判選手権オンライン
12月19日 オンライン開催

日弁連は、2020年8月に開催予定であった第14回高校生模擬裁判選手権を新型コロナウイルスの感染拡大状況からやむなく中止し、番外編としてオンラインを利用した形式で開催した。参加校の生徒たちが一堂に会することはできず、開催までの弁護士の支援も制限があった一方で、従前は行われていなかった地域をまたいでの対戦や感想戦など新たな試みもあった。


参加した16校は4つのグループに分かれてグループ内で対戦した。例年とは異なり、被告人質問は被告人役、検察官役、弁護人役もすべて弁護士が実演して生徒たちは補充質問のみを行い、証人尋問は実演せずに尋問調書を活用する方法を採った。生徒たちは当日まで検察側・弁護側いずれの立場となるかを知らされずに両方の立場で準備を行い、当日になって指定された立場で論告または弁論を行った。


今回の課題事案は、被告人が友人の男性を路上に転倒させ全治約1か月の傷害を負わせた事案である。被告人は、被害者に首をつかまれて怖くなり反射的に払いのけたと述べており、争点は正当防衛の成否であった。


生徒たちは、被告人の首筋に残る直径1センチメートル程度の内出血の発生機序、被告人や証人の供述の信用性などについて、プレゼンテーションソフトや模造紙で準備した図などを用いながら、検察官役・弁護人役がそれぞれの立場で事実と論理を組み立てた説得的な主張を展開した。


感想戦では、他校の生徒が行った補充質問の意図を質問したり、当日指定された立場とは異なる立場で準備していた資料を画面上で披露するなど、参加校の生徒同士の打ち解けた交流が行われた。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.155

地域の子どもを地域で見守り育てる
特定非営利活動法人
豊島子どもWAKUWAKUネットワーク

6.jpgNPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(以下「WAKUWAKU」)は、子ども食堂の先駆的存在として全国に子ども食堂を広げ、現在は「遊び」「学び」「暮らし」にわたる幅広い支援を展開しています。理事長の栗林知絵子氏、理事の松宮徹郎会員(東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 白石裕美子)




設立の経緯・活動内容

(栗林)WAKUWAKUではさまざまな活動を行っていますが、最初から明確な計画があったわけではありません。目の前で困っている子どもを何とかしたいという思いで必要な支援をするうちに、自然に活動が広がっていきました。


設立のきっかけは、2011年の夏、中学3年生の男の子から「高校に行けないかも」と打ち明けられたことです。一人親世帯の彼は、経済的理由で都立高校にしか進学できないが、学校の授業も理解できないと言うのです。私は、彼の高校に行きたいという希望を諦めさせたくなくて、とっさに「一緒に勉強しよう」と言い、それから毎日私の自宅で一緒に食事をして勉強をしました。その際、地域の人に受験費用のカンパを募り、このカンパを元に、地域で子どものために緩くつながる団体、WAKUWAKUを設立しました。


2013年には子ども食堂を開設しました。いつも一人で食事をする子どもが他人と一緒に食事をすることで生き生きとした表情に変わるのを見て、子どもを孤立させないための居場所づくりが重要だと実感し、子ども食堂を全国に広げる活動に力を注ぎました。


そのほか、子どもが自然の中で自由に遊べるプレーパーク、育児経験のあるボランティアが家庭訪問して家事等を手伝いながら乳幼児の親や妊婦の悩みを聞くホームスタート、保護者のニーズに応じて柔軟に子どもの宿泊対応をするWAKUWAKUホーム、主に小学校と高校に入学する子どものための入学応援給付金、支援者と直接会って食料を受け取ることで地域とのつながりを作るフードパントリーなどの活動を行っています。


現在、新型コロナの影響により子ども食堂は休止していますが、一斉休校の間、給食に代わる食材を配布するフードサポートプロジェクトを実施しました。また、家庭訪問してプレゼントを届けることで子どもの名前と顔を覚えて見守りを行う「地域がつながるプロジェクト」も始めました。


法律家としての関与

(松宮)私は弁護士になる前は高校教師だったため、子どもに関わる取り組みをしたいと別の無料学習支援団体に参加した際、栗林さんと出会いました。そして、WAKUWAKUをNPO法人化する際に理事に就任し、支援活動に参加するだけでなく、認定NPO法人の申請、規約や個人情報保護基本方針の策定など法的なサポートも行っています。


(栗林)新しい活動や企業等からの援助の申し入れについても相談していますし、いざという時に身近に相談できる法律家がいることはとてもありがたく、安心して子どもの支援を続けるには不可欠な存在です。


地域で支援する重要性

(栗林)子どもの貧困対策として行政もさまざまな経済的支援を行っていますが、支援を必要とする人がたどり着けていないのが現状です。困っているから助けてほしいと声を上げることは想像以上に勇気が要るのです。その背景には育児は親の責任という固定観念があります。


WAKUWAKUの活動の原点は「おせっかい」です。一見根本的解決にはならないように思われる細やかな支援でも、一人で抱え込まず人に頼って良いんだよというメッセージが伝われば、そこから公的支援につなげることが可能になります。子どもの貧困を解決するためには、地域住民を巻き込んだ支援活動を広げて、社会の認識を「地域全体で子どもを支えるのが当然」に変えていくことが必要なのです。


弁護士へのメッセージ

(松宮)活動の中で事件として受任するケースもありますし、NPO法人の組織運営に必要な法的知識やさまざまなスキルを磨くこともできます。また、次々に考え出される新しい支援に法的な問題がないかを検討するのも非常に刺激的で、弁護士としてこのような活動に関与することに多くのやりがいを感じています。


(栗林)食事や進学など貧困の悩みを誰にも相談できずに孤立する子どもがいること、地域の大人とつながって支援を受けることで救われる子どもがいることを知ってください。そして、地域で子どもを見守り育てる活動にぜひ関心を持って、参加してください。



日弁連で働く弁護士たち❻
日本司法支援センター対応室

7.jpg日本司法支援センター対応室(以下「対応室)は、日本司法支援センター(以下「法テラス」)の設立に伴って設置され、嘱託弁護士5人が在籍しています。今回は、鶴森雄二室長(第二東京)、中澤康介嘱託(第二東京)、牛島貴史嘱託(東京)、三上早紀嘱託(東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 田中和人)



日弁連と法テラスのパイプ役を担う

総合法律支援法は、民事・刑事を問わず、全国で法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を受けられる社会の実現を目指し、その中核として法テラスを位置付けています。


対応室は、制度が適正に運用されるよう、総合法律支援本部や関連委員会、法テラスと連携して、日弁連として取り組むべき課題に対応しています。


市民と会員に利用しやすい制度にするために

対応室では、法テラスをより利用しやすくするため、さまざまな取り組みを行っています。


日弁連では、民事法律扶助制度について、利用者の償還免除等の対象拡大や、業務量の負担に見合う適正な立替基準の実現に力を入れています。


また、民事法律扶助制度や国選弁護制度等でカバーされない分野については、日弁連が弁護士費用等を援助する事業を行い、その業務を法テラスに委託しており(日弁連委託援助事業。以下「委託援助」)、対応室がその運用対応を担当しています。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、日弁連では、電話等による法律相談も援助事業の対象とする運用変更なども行いました。委託援助については、会員向けに「法テラス委託援助業務利用の手引」を作成し、日弁連会員専用サイトに掲載していますので、ぜひご活用ください。


このほか、対応室は、スタッフ弁護士および養成事務所の確保・支援のための各種方策の検討や司法過疎地域の調査などにも関わっています。近年はスタッフ弁護士志望者が減少傾向にあり、人材の確保や支援にも取り組んでいます。


司法アクセスの拡充を支える

対応室の業務は、細かな作業や難しい調整なども少なくありません。しかし、その一つ一つの取り組みは、経済面や能力、環境などを理由に法的支援が届かずに困っている市民の方々のよりよい生活につながっていくものです。そこには日常の弁護士業務とは異なったやりがいや喜びがあります。


業務量調査にご協力ください

日弁連では、民事法律扶助制度における立替基準の適正化のために、民事法律扶助を利用した離婚関連事件に関する業務量調査を行っています。会員の皆さまのご協力をお願いいたします。



ブックセンターベストセラー
(2020年12月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編集者名 出版社名・発行元
1

模範六法2021 令和3年版

判例六法編修委員会/編 三省堂
2 有斐閣判例六法 Professional 令和3年版 長谷部恭男・佐伯仁志・酒巻 匡・大村敦志/編集代表 有斐閣
3 一問一答 令和2年改正個人情報保護法 佐脇紀代志/編著 商事法務
4 新注釈民放(5) 大村敦志・道垣内弘人・山本敬三/編集代表 有斐閣
5 要件事実マニュアル 第2巻〔第6版〕 岡口基一/著 ぎょうせい
6 携帯実務六法 2020年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム/編 東京都弁護士協同組合
7 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)新装補訂版 婚姻費用養育費問題研究会/編 婚姻費用養育費問題研究会
8 要件事実マニュアル 第1巻〔第6版〕 岡口基一/著 ぎょうせい
9 養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究 司法研修所/編 法曹会
10 一問一答 令和元年改正会社法 竹林俊憲/編著 商事法務


日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(刑事編) 2020年10月~11月

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順位 講座名 時間
1 交通事故刑事弁護士費用保険について 22分
2 刑事弁護のひやりはっと 142分
3 【コンパクトシリーズ】控訴審弁護(刑事)の基本 23分
4 刑事弁護の基礎(公判弁護編) 132分
裁判員裁判法廷技術研修 152分
6 あきらめない情状弁護 165分
7 専門家証人の尋問テクニックを学ぼう!―SBS(揺さぶられっ子症候群)の法廷実践から技術を読み解く― 117分
8 必見!裁判員裁判 AtoZ 203分
9 【コンパクトシリーズ】接見の基本 34分
【コンパクトシリーズ】保釈の基本 25分

お問い合わせ先:日弁連業務部業務第三課(TEL:03-3580-9902)