日弁連新聞 第519号
臨時総会開催
「依頼者見舞金制度に関する規程制定の件」など8議案を可決
3月3日 弁護士会館
臨時総会が開催され、「依頼者見舞金制度に関する規程制定の件」など8議案について、6時間以上にわたり熱心な質疑討論が行われた。
預り金等の取扱いに関する規程中 一部改正を可決
日弁連が従前から取り組んできた総合的な不祥事対策を更に一歩進めるべく、不祥事予防策として2013年5月に定めた預り金等の取扱いに関する規程を強化するもの。預り金口座に関し、口座名義に預り金口座であることを明示する文字の使用や口座を特定する事項の所属弁護士会への届け出を義務付けること等の改正につき、賛成多数で可決された。
依頼者見舞金制度に関する規程制定を可決
前記の総合的な不祥事対策強化の一環として、予防策にもかかわらず発生した不祥事に対する事後的な対応策として依頼者見舞金制度を創設するもの。制度の概要は、弁護士の横領により損害を被った依頼者等に見舞金を支給すること、支給額を対象被害者1人当たり上限500万円・加害弁護士1人当たり上限2,000万円の範囲内で会長の裁量により決定すること、見舞金は一般会費を財源とし年間支給総額は1億円を超えない額を目安とすること等である。
討論では、一部の加害弁護士のために一般会費を用いるべきではない等の反対意見、市民の信頼を維持し弁護士自治を守るためにも見舞金制度は必要であるなどの賛成意見が述べられ、採決の結果、賛成多数で可決された(賛成9,848票、反対2,699票、棄権88票)。
少年・刑事財政基金のための特別会費徴収の件中一部改正、法律援助基金のための特別会費徴収の件中一部改正をいずれも可決
本年5月をもって終了する少年・刑事財政基金および法律援助基金のための特別会費につき、徴収期間を2020年5月まで延長するとともに、少年・刑事財政基金のための特別会費の徴収額を2018年5月までは現行の月額3,300円、2018年6月以降は月額1,900円に減額し、法律援助基金のための特別会費の徴収額を2017年6月以降は月額900円に減額するものであり、いずれも3分の2以上の賛成で可決された。
会則中一部改正 (会長の選挙)、会長選挙規程中一部改正をいずれも可決
会長選挙について、会員の意思を的確かつ合理的に反映し、活発で時代に即した選挙制度を実現すべく関連規定を整備するもの。候補者の死亡等に伴う投票日の延期、選挙運動用ウェブサイト等の情報通信手段の運用緩和などにつき、いずれも賛成多数(会則については3分の2以上の賛成)で可決された。
裁判所の処置請求に対する取扱規程中一部改正を可決
2016年12月の刑事訴訟法等の一部改正および少年審判規則の一部改正で処置請求の主体・対象が追加されたことに伴い、従前の取扱規程に必要な改正を加えるものであり、賛成多数で可決された。
会則中一部改正 (総会の定足数)を可決
会則中に総会の定足数に関する定めを新設し、総会の議事・議決の定足数として5,000個以上の議決権を有する弁護士会または弁護士会員の出席があることを求めるもの。
討論では、招集請求の制度を無意味なものとするとの懸念や定足数を定数ではなく総会員数に対する割合で定めるべきなどの意見が述べられたが、採決の結果、3分の2以上の賛成で可決された(賛成9,814票、反対2,179票、棄権37票)。
街かど相談会+ Café
ひまわり法律相談プロジェクト
3月4日 東京ソラマチ®
- 「ひまわり法律相談プロジェクト」推進のための無料法律相談会
日弁連は、全国の法律相談センターの予約窓口につながる統一ダイヤル「ひまわりお悩み110番」およびインターネットで法律相談センターの予約申し込みができる「ひまわり相談ネット」を運営している。
これらのサービスと全国の法律相談センターの存在を知ってもらうため、昨年に引き続き、無料法律相談会(以下「相談会」)を開催した。
「全国一斉同時開催」と「街に出よう!」をコンセプトとした今年度は、全国35弁護士会がプロジェクトに賛同してイベントを実施し、いずれの相談会も盛況となった。街に出ての相談会を開催した弁護士会は25会、3月4日の開催は24会に上った。
東京ソラマチ®(東京スカイツリーに併設する複合商業施設)で開催した相談会(共催:東京三弁護士会)は、特段の事前広報を行わなかったにもかかわらず、2,000部用意した武井咲さんのクリアファイルおよびメモ帳をすべて配布しきるほど、道行く人の注目を集めた。また、東京弁護士会の発案で用意されたドリップ式コーヒーの集客効果も絶大であった。
相談件数は、22件と昨年(38件)より少なかったが、エスカレーターを利用する人々の眼下にカフェ形式のオープンスペースを設け、飲み物を用意し、大きな看板を設置したことで、多くの人がイベント会場に注目し、相談件数、グッズ配布数以上の広報効果を生んだと思われる。
まだまだ改善すべき課題もあるが、弁護士が街へ出て行う相談会や広報活動は、弁護士と接点を持たない市民へのアピールとして、非常に有益であることを実感した。
(日弁連公設事務所・法律相談センター 広報PT座長 上椙裕章)
児童虐待対応における司法関与に関する児童福祉法等改正案
政府は、本年3月7日、児童虐待対応における司法関与の強化等を盛り込んだ「児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出した。成立すると公布から1年以内に施行される予定である。
〜改正案の主なポイント〜
一時保護に対する司法審査
児童相談所等による一時保護が、親権者等の意に反して2か月を超える場合、家裁の承認を得なければならない。
保護者指導への司法関与
①施設入所等の措置の承認を求める児童福祉法第28条申し立てがあった場合に、家裁が都道府県に対して保護者指導を勧告でき、都道府県は保護者指導の結果を家裁に報告する。
②申し立てが却下となる場合でも、家裁が都道府県に対して保護者指導を勧告できる。
③前記①②の場合において、家裁は勧告した旨を保護者に通知する。
接近禁止命令の対象範囲の拡大
現行では、親権者等の意に反する施設入所等の場合に限って接近禁止命令を行うことができるとしているが、一時保護中や親権者等の同意がある場合も含める。
日弁連では、本年1月に取りまとめた意見書において、司法関与を導入する際に検討すべき体制整備、要件、手続きなどの課題を指摘している。本改正案については、一時保護への司法審査の導入などの方向性は支持できる一方、一時保護の延長についての要件が明確になっていないなど懸念が残る点もあり、国会での審議など今後の動きを注視していく必要がある。
(事務次長 近藤健太)
平成28年熊本地震義捐金のご報告
2016年4月に発生した平成28年熊本地震から1年が経過しました。被災された皆さまに謹んでお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興・復旧を心よりお祈り申し上げます。
日弁連では、2016年4月20日からホームページなどで義捐金へのご協力をお願いしてきました。皆さまからお寄せいただきました義捐金の総額は9,624,088円(集計期間:2016年4月20日〜2017年2月28日)です。多くの会員の皆さまと弁護士会からご支援をいただき、ありがとうございました。
これらの義捐金は、熊本県弁護士会における無料法律相談実施にかかる費用、支援弁護士会への補助金など、被災者支援活動に関する費用に充てています。
今後とも、日弁連の災害復興支援活動にご理解・ご協力を賜りますようお願いいたします。
2017年度役員紹介
3月10日に開催された代議員会(本人出席304人、代理出席240人)において、2017年度役員が選出された。就任に当たり、13人の副会長の抱負と理事および監事の氏名を紹介する。
渕上 玲子(東京・35期)
[出身]長崎県
[抱負]法曹養成、研修、市民会議などを主に、司法修習、法科大学院、男女共同参画、総合法律支援本部などを副で担当します。副会長の皆さんとともに、会長を支えて会務に全力で取り組みます。
澤野 正明(第一東京・37期)
[出身]北海道
[抱負]財務・経理、会館問題、司法制度調査会、外弁関係、弁護士会照会制度、法務研究財団などを担当します。会長を補佐して会務に励みます。
伊東 卓(第二東京・40期)
[出身]神奈川県
[抱負]弁護士倫理、弁護士職務の適正化、弁護士業務改革、法律サービス展開本部、組織内弁護士の諸制度の整備に関するWGなどを担当します。気持ちを新たにして、さまざまな意見に真摯に耳を傾け、会長を補佐して職務を全うします。
三井 義廣(静岡県・32期)
[出身]静岡県
[抱負]民事介入暴力対策、犯罪被害者支援、弁護士業務妨害対策、業際・非弁問題等対策本部などを担当します。日弁連の活動は多様化、専門化していますが、常に市民の目線で考えることを忘れずに取り組んで行きたいと思います。
和田 光弘(新潟県・33期)
[出身]新潟県
[抱負]リーガル・アクセス・センターを中心に、民事裁判手続、労働法制、刑事法制、それに国際人権問題などを担当します。1年間、中本会長を補佐し、日弁連のために、精一杯自分に与えられた役割を果たしたいと思います。
小原 正敏(大阪・31期)
[出身]京都府
[抱負]国際関係(国際交流・国際活動・国際戦略会議・国際業務推進・中小企業の海外展開支援)、知的財産、ADRなどを担当します。グローバル化の中で、日弁連が社会と会員の要請に応えられるよう、会長を補佐して頑張ります。
小川 達雄(京都・34期)
[出身]京都府
[抱負]刑事弁護センター、総合法律支援本部、弁護士任官等推進センターなどを担当します。「市民の司法」というべき頼りがいのある司法、利用しやすい司法の実現を目指し、会長を補佐して全力を尽くします。
池田 桂子(愛知県・35期)
[出身]愛知県
[抱負]主に高齢者・障害者権利支援センター、若手弁護士サポートセンター、広報、倒産法制、自治体等連携などを担当します。会内外の声に耳を傾け、司法の役割を着実に拡充するように精一杯努めます。熟議と実行、頑張ります。
吉岡 康祐(岡山・42期)
[出身]岡山県
[抱負]共謀罪法案対策本部、司法修習、市民のための法教育、人権擁護大会、公害対策・環境保全などを担当します。人権擁護と社会正義の実現(憲法価値の実現)のため、アクセル全開で、かつ、楽しく取り組んで行きます。
加藤 裕(沖縄・44期)
[出身]岡山県
[抱負]情報問題、秘密保護法、子どもの権利、貧困問題、消費者問題などを担当します。弁護士が人権擁護と社会正義の実現に邁進できる環境づくりに努め、一人一人が大切にされる社会に向けて日弁連が貢献できるよう尽力します。
小野寺友宏(仙台・44期)
[出身]岩手県
[抱負]災害復興支援、民事司法改革推進本部、裁判官制度改革・地域司法計画推進本部、日弁連公設事務所・法律相談センターなどを担当します。被災地出身の副会長として災害復興支援に尽力するとともに、会長を補佐し日弁連のために精一杯頑張ります。
田村 智幸(札幌・42期)
[出身]北海道
[抱負]法科大学院、給費制存続、憲法問題、死刑廃止検討、全国冤罪事件、両性、男女共同参画などを担当します。討論を大切にしつつ、課題の解決に力強く臨み、政策・提言の実現に寄与します。
小泉 武嗣(高知・42期)
[出身]高知県
[抱負]人権擁護、家事法制、国選弁護本部、中小企業法律支援センター、小規模弁護士会協議会などを担当します。会長を補佐して、弁護士自治の堅持と諸課題解決のために全力で取り組みます。
理事
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監事
- 大井 暁(東京)
- 阪本 智宏(第一東京)
- 荒川 誠司(茨城県)
- 浜垣 真也(京都)
- 内田 典夫(三重)
弁護士任官者の紹介
4月1日付で次の会員が裁判官に任官した。
矢向 孝子氏
58期(第二東京弁護士会)
司法修習終了後、外国法共同事業・ジョーンズ・デイ法律事務所に勤務。
〈初任地 東京高裁〉
今城 智徳氏
63期(大阪弁護士会)
司法修習終了後、きっかわ法律事務所に勤務。
〈初任地 神戸地裁〉
会員向け講習会
使える!法律扶助制度〜活用のノウハウ〜
2月28日 弁護士会館
日弁連では、民事法律扶助制度の拡充に向けた取り組みの一つとして、会員向けの講習会を開催している。8回目となる今回は、法テラス・民事法律扶助制度の概要と利用の注意点などをテーマに取り上げた。また、委託援助制度に関する講習も併せて実施した。
民事法律扶助制度
法テラス本部民事法律扶助第一課長の杉岡麻子会員(東京)が、法テラスと民事法律扶助制度について概説した。代理援助では弁護士費用や実費が給付ではなく立替えであることなど、利用者に対する丁寧な説明が求められること、公金で運営される事業であることから、報告書の提出を適時適切に行っていただく必要があることなど、あらためて注意を促した。
亀井時子会員(東京)は、民事法律扶助制度の利用時の注意点について詳説した上で、要件を満たす場合には、償還猶予や免除制度の積極的な利用を促してほしいと呼び掛けた。また、失業時の借金の整理に親身に対応してくれた、歩行困難な高齢者のために出張相談をしてくれたなど、利用者から感謝の声が寄せられていることを報告した。
委託援助制度
日弁連の日本司法支援センター対応室の髙橋太郎室長(東京)が、人権救済の観点から弁護士費用等の援助を行う法律援助事業を法テラスに委託して行っていることを説明した。また、近時の制度改定については、会員専用ページで最新情報を確認の上、適切に対応してほしいと呼び掛けた。
総合法律支援法の一部改正
総合法律支援本部の内田正之本部長代行(仙台)は、2016年5月に成立した総合法律支援法の一部を改正する法律により、認知能力の不十分な高齢者・障がい者が、福祉関係者等の支援者を介して、資力を問わない法律相談を受けられる仕組みなどができたこと、DV・ストーカー・児童虐待等について、資力を問わない法律相談が制度化されたことなどを報告した。
*民事法律扶助制度・委託援助制度の書式・マニュアル等は会員専用ページ(HOME≫書式・マニュアル)でご覧いただけます。
日弁連短信
原発事故損害賠償を支える弁護士の活動〜原紛センターの5年〜
原子力損害賠償紛争解決センター(以下「原紛センター」)をご存じでしょうか。2011年3月に発生した福島原子力発電所事故に起因する被災者等の損害賠償の和解を仲介する専門行政ADR機関です。2011年8月に設置され、以来約2万2,000件の和解仲介申し立てを受け、約1万6,000件の和解を成立させています(本年3月現在)。
事故後、10万人を超える避難者が生活の本拠や仕事を離れざるを得なかったことによる損害、事故による風評被害や間接被害に基づく損害など、大量かつ多種多様の損害賠償紛争が予想され、それらを迅速かつ実効的に解決することが求められました。日弁連は、検討チームを設け、政府に働き掛けて、事故から5か月後の8月の設置にこぎ着けました。当時立法を待ついとまがなく、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の紛争解決機能を拡充する形で設置されました。私も、発足時から2014年3月まで事務局である和解仲介室次長を務めました。
損害賠償のADRですから、実務の中核を担うのは弁護士です。和解を仲介する仲介委員、それを補佐する調査官のほとんどは弁護士によって構成されています。特に、調査官は、事件記録の検討、当事者との連絡や簡単な事情聴取、口頭審理の補助、和解契約書の作成に従事しており、原紛センターの日常業務を支えています。本年3月現在約180人の若手を中心とする弁護士および法曹有資格者が在籍しています。一日6時間弱、原紛センターで勤務していますが、多くの調査官が弁護士業務と掛け持ちです。いわば「柔軟な常勤的非常勤」といってよいでしょう。このような勤務形態は、多くの弁護士を短期間に集めるために有効な方策です。
2016年8月で発足から5年が経ちました。設置当初は、増え続ける申し立てに人員態勢が追い付かず、危機的な状況もありましたが、現在では申し立て件数も落ち着いてきているようです。
このほかにも、原子力損害賠償は、被災者を代理する弁護士、賠償義務者である東京電力を代理する弁護士を含め、立場は違うとはいえ、全国の数多くの弁護士によって支えられています。
2016年度は災害の多い年でした。4月の事務総長就任直後に郷里でもある熊本の地震に遭遇しました。熊本地震でも、地元の熊本県弁護士会を含め、多くの弁護士が法律相談やADRに従事し、復興を支えています。会員の皆さまには、ぜひこのような弁護士の活動を知っていただきたいと思います。
(事務総長 出井直樹)
シンポジウム
ニッポン一億総活躍?介護とどう向き合うか
ジェンダーの視点から
3月4日 弁護士会館
- シンポジウム ニッポン一億総活躍?介護とどう向き合うか
2016年6月、政府は「ニッポン一億総活躍プラン」(以下「プラン」)を閣議決定した。プランは「介護離職ゼロ」を含む目標を掲げ「女性活躍」を強調している。一方で、介護は性別役割分担意識の影響を強く受け、従来から多くを女性が担ってきた。
この現状において、プランにおける女性活躍とは何を意味するのか、介護離職ゼロ政策は日本の女性の働き方・生き方にどのような影響を及ぼすのか、実態に即して検証すべく、シンポジウムを開催した。
まず、両性の平等に関する委員会の寺本佳代委員(広島)が基調報告を行い、介護の主たる担い手は、家庭においても介護労働現場においても女性であるところ、介護に関する社会保障制度の欠陥が、さまざまな側面から女性の貧困につながっていると報告した。また、介護労働従事者の賞与込み賃金について、産業計賃金と比較すると月額約10万円も低く抑えられていることを指摘し、プランが目指す月額平均1万円相当の改善では不十分であり、介護人材の確保・定着のためには、より大幅な賃金アップが必須であることなどを報告した。
続いて、緒方桂子教授(南山大学法学部)が基調講演を行った。緒方教授は、介護労働従事者の多くが非正規雇用であるために、雇止めに対する恐怖から、休暇の取得など労働者に認められた諸権利の行使に後ろ向きになっていると実情を指摘し、介護労働従事者の雇用保障の重要性を訴えた。
横田祐氏(全国福祉保育労働組合)は、アンケート結果を基に、現在の介護報酬では、介護サービス事業者の多くが、労働条件・環境の改善はおろか、人材確保・定着すら十分に図れない状況にあることや、介護労働従事者が、低賃金・長時間労働を強いられて疲弊し、半数以上が仕事を辞めたいと思いながら労働していることなど、現場の実態について報告し、介護保険制度の拡充が急務であると力説した。
介護をめぐる問題に国民全体が向き合ってこそ、真の女性活躍実現が達成されることが浮き彫りとなった。
いわゆる共謀罪に関する法案の上程に反対する院内学習会・市民集会
いわゆる共謀罪に関する法案(以下「同法案」)の問題点を議論・周知等するため、院内学習会および市民集会を開催した。
3月1日 院内学習会(衆議院第二議員会館)
まず、共謀罪法案対策本部の海渡雄一副本部長(第二東京)が基調報告を行い、予備や未遂の段階では処罰されない犯罪が多数存在するにもかかわらず、これらの前段階で処罰する同法案は、刑法体系を根底から覆すものであると指摘した。
次に、篠田博之氏(日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長)が、同法案は表現の自由のみならず、内心の自由をも侵害するものであると述べた。
また、田近正樹氏(一般社団法人日本雑誌協会人権・言論特別委員会委員長)は、同法案により、表現者の表現はもちろん、一般市民の活動全般が規制の対象となり得ると、その危険性について訴えた。
院内学習会には、約130人が出席した(うち国会議員の本人出席17人、代理出席5人)。
◇ ◇
日弁連は、3月16日にも参議院議員会館で院内学習会を開催し、あらためて同法案の問題点等について共有した(出席者約100人、うち国会議員の本人出席21人、代理出席7人)。
3月14日 市民集会(弁護士会館)
まず、青木理氏(フリージャーナリスト)が講演し、同法案は市民への日常的監視の道を開くものであると語った。髙山佳奈子教授(京都大学大学院法学研究科)は、161人の刑事法研究者が同法案に反対していることなどを報告した。
その後、青木氏および髙山教授がパネルディスカッションを行い、共謀罪の十分な運用制御の難しさなどの問題を浮き彫りにしながら議論を展開した。
出席した国会議員からも、廃案に向けた意気込みが語られた。
◇
政府は本年3月21日、同法案を閣議決定した。日弁連は3月31日付で、同法案の危険性を市民に対して訴えかけ、同法案が廃案になるように全力で取り組む旨の会長声明を公表した。
シンポジウム
グローバル化時代の独占禁止法審査手続
3月2日 弁護士会館
- シンポジウム グローバル化時代の独占禁止法審査手続
事業者の経済活動や企業形態がグローバル化・多様化・複雑化するなか、独占禁止法の審査手続も見直される必要がある。事業者の防御権確保に焦点を当て、今後の審査手続における手続保障の在り方について検討すべく、シンポジウムを開催した。
シンポジウムでは、国会議員、全国中小企業団体中央会および在日米国商工会議所からも、防御権確保に向けてコメントが寄せられ、充実した議論が行われた。
基調報告
阿達雅志参議院議員が基調報告を行い、先進諸国における審査手続では、任意事情聴取への弁護士の立ち会いが認められ、かつ多くの国で依頼者・弁護士間の通信の秘密が保障されているが、わが国は両権利とも認められておらず、国際的に立ち遅れた状況にあると説明した。
公正取引委員会報告書案について
本年1月に公表された公正取引委員会の「独占禁止法研究会報告書(案)」(以下「報告書案」)につき、各見地から意見が述べられた。
小畑良晴氏(日本経済団体連合会経済基盤本部長)は、事業者の立場から、弁護士との通信の秘密が保障されれば、事業者は弁護士に相談しやすくなり、違反行為の表面化および減免申請の促進が図られるとして、審査手続における弁護士の立ち会いなどを認め、供述調書への依存から脱却すべきであると述べた。
中川丈久教授(神戸大学大学院法学研究科)は、行政法学者の立場から、現行法体系上、明確な規定がないものの、弁護士との通信の秘密は一定程度配慮されているため、報告書案における、弁護士との通信秘密が一切認められていないかのような表現は適切ではないと述べた。
依頼者と弁護士の通信秘密保護制度の確立に関するWGの多田敏明委員(第二東京)は、弁護士の立場から、米国実務における取り扱いを紹介しつつ、通信の秘密が守られ、依頼者からすべての情報を得てこそ、防御が可能となると述べた。
パネルディスカッション
前記4人の登壇者がパネルディスカッションを展開し、事業者の防御権を確保するに当たって考え得る課題について議論した。
事業再生シンポジウム
特定調停による事業再生の多様な展開
2月23日 弁護士会館
- 事業再生シンポジウム 特定調停による事業再生の多様な展開
中小事業者の再生だけでなく円滑な廃業・清算のニーズが高まっている昨今の流れを受け、日弁連は最高裁等の関係機関と協議し、新たに廃業支援型の「特定調停スキーム」の運用を開始した。
シンポジウムでは、廃業支援型特定調停スキーム(以下「廃業支援型スキーム」)の解説・事例の紹介とともに、廃業支援における弁護士の役割等について議論を行った。
冒頭、経済産業省中小企業庁事業環境部の小林浩史金融課長が挨拶し、廃業支援型スキームの利用は中小企業の活性化に寄与するものであり、活用が期待されると語った。
廃業支援型スキームの始動
日弁連が本年1月に策定・公表した「事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き」を踏まえ、日弁連中小企業法律支援センターの石川貴康委員(千葉県)が、特定調停を利用した3つの手続き(①金融円滑化法終了への対応策としてのスキーム、②経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としてのスキーム、③事業者の廃業・清算を支援する手法としてのスキーム)の概要を説明した。
また、髙井章光事務局長(第二東京)らが、廃業支援型スキームの策定の経緯や手続きの進め方について概説し、経営者の経済的更生を図りながら会社を柔軟かつ早期に清算できる同スキームの利用を促した。
再生型スキーム
再生型特定調停の各地での利用例が報告された。会社は第二会社方式により新会社の下で再生させ、経営者は経営者保証に関するガイドラインに基づき保証債務を整理した事例など、再生型特定調停の多様な利用法が紹介された。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、廃業支援型、再生型の双方を含む特定調停の利用に関し、手続きの選び方、金融機関への説明の時期や内容、金融機関との事前調整、経営者保証に関するガイドラインの適用対象などを議論し、事業再生の在り方について理解を深めた。
◇
*日弁連ホームページでは、本シンポジウムでの配付資料を掲載しているほか、当日の様子をYouTubeで配信しています。
また、「事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き」も掲載しています。
ぜひご覧ください。
連続シンポジウム
地域で防ごう 消費者被害 in東京
2月25日 弁護士会館
- 連続シンポジウム 地域で防ごう 消費者被害 in東京
高齢者の消費者被害、特殊詐欺被害が急増している。今後さらに高齢化が進む中、これらの被害の予防と救済のための仕組みを作り、実践することが求められている。その取り組みの一つとして、高齢者福祉や消費者問題に関わる団体や機関が連携するシンポジウムを全国で行うこととし、第1回目を東京で開催した。
まず、河上正二教授(東京大学大学院法学政治学研究科/内閣府消費者委員会委員長)が基調講演を行った。高齢者の消費者被害の背景に、認知力低下や生活等への不安のほか、社会的孤立があると述べ、地域のネットワーク構築の重要性を指摘した。そして、2014年の消費者安全法改正で設けられた消費者安全確保地域協議会を活用し、地域全体で情報共有や福祉部門との連携を図りつつ高齢者の見守りを行うことが被害防止に資すると述べた。
続いて、消費者問題対策委員会の薬袋真司副委員長(大阪)が基調報告を行った。高齢者がトラブルに巻き込まれる要因を概説し、訪問販売や電話勧誘を端緒とする被害の防止に効果的なツールとして、各地の訪問販売お断りステッカーや迷惑電話対策装置を紹介した。
さらに、公益社団法人全国消費生活相談員協会の待鳥三津子氏が被害実態の報告を行った。高齢者が訪問販売で原野商法の被害を受けた事案について報告した上、消費生活センターと地域包括支援センターが連携して高齢者を見守り支援する必要があると指摘した。
シンポジウム後半では、警視庁、消費者庁、世田谷区、全国地域婦人団体連絡協議会、社会福祉法人全国社会福祉協議会、日本退職者連合、一般社団法人全国消費者団体連絡会、東京三弁護士会の各代表者等が登壇し、それぞれの消費者被害予防等の取り組みについて報告した。
最後に、東京シンポジウム実行委員会の拝師徳彦委員長(千葉県)が、消費者被害予防の取り組みに関し、地域ネットワークの構築・拡充、シンポジウムの開催、各種ツールの配布・普及など10の項目を挙げ、全国各地での実践を呼び掛けた。
【新企画】はじめてみませんか? eラーニング
今月から、日弁連新聞に、日弁連総合研修サイト(以下「総合研修サイト」)に掲載中のeラーニングについて、視聴者ランキングを掲載することになりました。今月は、2016年12月から2017年2月までに視聴された講座のベストテンを掲載します。来月以降、さまざまな切り口で集計したランキングを掲載します。ご期待ください。
ところで、総合研修サイトを利用してeラーニングを視聴したことがありますか?
eラーニングは日弁連ウェブサイトの会員専用ページから総合研修サイトにアクセスして視聴することができますが、まだ一度も視聴したことのない会員もいらっしゃるようです。2016年7月から日弁連の研修が原則無料化されたことに伴い、eラーニングの受講料も無料になりましたので、まずは一度、アクセスしてみてはいかがでしょうか。
総合研修サイトには、現在約300のeラーニングが掲載されています。インターネットに接続可能な環境であれば、事務所や自宅など、お好きな場所で、24時間いつでも視聴可能です。また、パソコンはもちろんのこと、iPhoneやiPadを用いて視聴することもできます。
講座はいくつかのチャプターに分かれていますので、必要な部分のみ視聴することもできますし、最大2倍速再生も可能ですので、短時間で効率良く視聴することもできます。
各種分野の講座を視聴して研鑽を積むといった利用はもちろん、普段扱わない分野の法律相談を急きょ受けることになったときにもお役に立ちます。
総合研修サイトをぜひご利用ください。
(研修・業務支援室)
ラーニング人気講座ランキング 2016年12月~2017年2月
日弁連会員専用ページからアクセス https://kenshu.nichibenren.or.jp/
順位 | 講座名 | 時間 |
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1 | LAC制度について-具体的事案をもとに実践演習を行う | 109分 |
2 | LACの制度の概要と対応のポイント(2016年度) | 83分 |
3 | 交通事故の実務に関する連続講座 第1回 交通事故をめぐる保険と損害賠償 | 148分 |
4 | 交通事故の実務に関する連続講座 第2回 損害総論、積極損害及び消極損害 | 150分 |
5 | 交通事故の実務に関する連続講座 第3回 慰謝料、物損及びADR等の諸手続 | 58分 |
6 | 交通事故の実務に関する連続講座 第5回 ケーススタディー(死亡及び後遺症事例)と資料の活用方法(赤い本・青本) | 39分 |
7 | 交通事故の実務に関する連続講座 第4回 過失相殺・好意同乗・素因減額・損益相殺 | 146分 |
8 | 【コンパクトシリーズ】戸籍の仕組み・読み方の基本 | 30分 |
9 | 【コンパクトシリーズ】接見の基本 | 34分 |
10 | あきらめない債権回収 | 162分 |
お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)
ブックセンターベストセラー
(2017年1月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター
順位 | 書名 | 著者名・編者名 | 出版社名 |
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1 | 模範六法2017 平成29年版 | 判例六法編修委員会 | 三省堂 |
2 | 有斐閣判例六法 Professional 平成29年版 | 山下友信・中田裕康・山口 厚・長谷部恭男 編集代表 | 有斐閣 |
3 | 民事執行実務の論点[裁判実務シリーズ10] | 竹田光広 編著 | 商事法務 |
4 | 簡易裁判所における交通損害賠償訴訟事件の審理・判決に関する研究 |
司法研修所 編 |
法曹会 |
5 | 最高裁判所判例解説 刑事篇 平成26年度 | 法曹会 編 | 法曹会 |
6 | 企業不動産法 | 小澤英明 著 | 商事法務 |
7 | Q&A 交通事故加害者の賠償実務―被害者からの過剰請求対応― | 弁護士法人愛知総合法律事務所 編 | 第一法規 |
8 | 量刑調査報告集Ⅳ | 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 | 第一東京弁護士会 |
9 | 弁護士の経験学―事件処理・事務所運営・人生設計の実践知― | 髙中正彦・山下善久・太田秀哉・山中尚邦・山田正記・市川 充 編著 | ぎょうせい |
10 | 交通関係訴訟の実務[裁判実務シリーズ9] | 森冨義明・村主隆行 編著 | 商事法務 |