日弁連新聞 第515号

第27回司法シンポジウム
いま、司法が果たすべき役割とは
法の支配の確立をめざして
11月5日 弁護士会館

  • 第27回司法シンポジウム「いま、司法が果たすべき役割とは ―法の支配の確立をめざして―」

昨年来、夫婦の在り方に関する最高裁判決などに関連して、憲法や司法に対する社会的な関心が高まってきている。
約400人の参加(弁護士会とのテレビ会議接続による参加者を含む)を得た今回の司法シンポジウムでは、この時代背景を踏まえ、立憲主義や法の支配の視点から、あらためて司法が果たすべき役割について議論を交わした。

 

シンポジウムでは、司法が果たすべき役割について議論を交わした

第1部 権利の実現に果たす司法の役割

前半では、「訴訟が社会を変える」と題し、裁判所の判断が立法や行政を動かし社会変革の契機となった事例を検討した。

はじめに、過去30年間の裁判例から、ハンセン病に関する訴訟、成年被後見人選挙権に関する訴訟など、権利の実現に寄与した36の裁判例が報告された。

また、過労死・過労自殺に関する訴訟の当事者である寺西笑子氏(全国過労死を考える家族の会代表)、セクシュアル・マイノリティに関する訴訟の当事者である永田雅司氏(NPO法人動くゲイとレズビアンの会《アカー》会員)が登壇し、訴訟提起を決意した理由、社会の偏見等に対する訴訟上の戦略、判決が自らや社会に与えた影響などを語った。

後半では、「地域で弁護士が輪を広げる」と題し、弁護士が行政その他の諸機関と連携して全国各地で進めている、権利実現に向けた取り組みを検討した。その先進的な例として、竹内俊一会員(岡山/岡山高齢者・障がい者権利擁護ネットワーク懇談会代表)から、岡山県で構築されてきた司法的ネットワーク(通称「ネット懇」)の活動内容等が紹介された。

第1部にコメンテーターとして参加した吉岡すずか客員教授(桐蔭横浜大学大学院法務研究科)は、弁護士の積極的なかかわりが、司法による権利の実現や市民の司法アクセスに寄与していると述べ、弁護士の役割を高く評価した。

 

第2部 憲法の番人としての司法の役割

まず、近時の非嫡出子国籍法訴訟、選択的夫婦別姓訴訟の判決の分析結果等に基づき、我が国の憲法判断が以前より積極的になされるようになったものの、立法府など政治部門への配慮も根強く残されているとの報告がなされた。

次に、金澤孝准教授(早稲田大学法学学術院)が、米国における違憲審査権の行使状況やその歴史的背景を概説した。

続いて、「法の支配の確立のために」と題し、金澤准教授と見平典准教授(京都大学大学院人間・環境学研究科)が討論を行った。金澤准教授は、積極的な違憲審査のためには、国民による憲法の理解を核とする「憲法文化」が必要であると指摘した。見平准教授は、司法政治学の立場から、政治的資源(裁判所を政治的攻撃から守る政治集団)などの種々の資源の必要性を述べ、弁護士は有力な政治的資源となり得ると指摘した。

 

第3部 司法に対する理解と信頼を築くために

パネルディスカッションでは、青井未帆教授(学習院大学大学院法務研究科)、伊藤真会員(東京/伊藤塾塾長)、井戸謙一会員(滋賀)、見平准教授が、国民の司法に対する理解と信頼等に関する討論を行った。

青井教授は、立憲主義の維持のために「裁判所は然るべきときに然るべき判断をしてほしい」と、司法が果たす役割に期待を寄せた。伊藤会員は、「弁護士は積極的に人権問題を裁判所に訴えるべき」と述べ、弁護士が市民と裁判所をつなぐ役割を担うべきと主張した。井戸会員は、元裁判官の立場から、司法や裁判官が職責を全うするためにも「個々の裁判官に関心を持ち、評価し、支えてほしい」と市民に対する要望を述べた。

 

第51回市民会議
男女共同参画および依頼者保護制度の取り組みについて議論
11月9日 弁護士会館

今年度2回目の市民会議では、①日弁連における男女共同参画の取り組み、特に女性弁護士社外役員候補者名簿の提供事業について、②弁護士不祥事対策として、目下、日弁連内で議論中の依頼者保護制度(預り金管理会規の強化、依頼者見舞金制度《仮称》)について、現在の取り組み状況を報告し、議論を行った。

 

男女共同参画の取り組み

中村隆副会長が日弁連における男女共同参画の推進状況の概要について、男女共同参画推進本部の設置、基本計画の策定、育児期間中の会費等免除制度の導入等に触れつつ報告した。また、男女共同参画推進本部の市毛由美子事務局員(第二東京)からは、女性社外役員の登用を検討している企業に向けて、弁護士会が候補者名簿作成に取り組んでいること、約300社が女性弁護士役員を登用していること等を紹介した。

委員からは、裁判官、検察官に比べて、弁護士の女性比率が伸び悩んでいることについて懸念が示され、女性弁護士を増やす取り組みに期待するなどの意見が出された。また、理事者等の女性割合増加のためには、数値目標や達成期限設置が重要であるとの指摘がなされた。

 

依頼者保護制度の取り組み

早稲田祐美子副会長が、弁護士不祥事の根絶を目指す総合的対策について概説し、特に依頼者保護制度(「預り金等の取扱いに関する規程」の改正、依頼者見舞金制度《仮称》の創設)についての検討状況を詳説した。

委員からは、弁護士不祥事は一部の弁護士の問題にとどまらず、弁護士全体の信用性にかかわる重要な問題として、全弁護士が緊張感を共有して取り組むべき課題であるとの意見が述べられた。また、制度設計に際しては、依頼者や市民目線での検討が必要であること、弁護士への信頼維持のためには、不祥事予防に真剣に取り組む姿勢が重要であることなどの指摘があった。

 

市民会議委員 (2016年11月9日現在)(五十音順)    

井田香奈子(副議長・朝日新聞東京本社オピニオン編集部次長)

長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)

北川正恭(議長・早稲田大学名誉教授)

清原慶子(三鷹市長)

神津里季生(日本労働組合総連合会会長)

ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

中川英彦(元京都大学法学研究科教授)

松永真理(テルモ株式会社社外取締役)

村木厚子(前厚生労働事務次官)

湯浅誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

最高裁判所裁判官候補者の募集について

最高裁判所裁判官のうち、2018年1月1日に木内道祥裁判官(大阪弁護士会出身)が定年退官を迎える予定です。

そこで、日弁連では後任候補者の推薦手続を進めています。下記会員専用ページに掲載している「日本弁護士連合会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考に関する運用基準」や「最高裁判所裁判官候補者の推薦基準」等を確認の上、同ページ掲載の履歴書を2017年4月4日(火)までに弁護士会連合会を通して、または直接日弁連の最高裁判所裁判官推薦諮問委員会にご提出ください。

また、会員が候補者を推薦するには、50人以上の会員の推薦が必要となります。応募に当たっては、推薦者50人の署名・捺印とともに、推薦届もご提出ください。

 

*詳細は会員専用ページをご確認ください(11月24日付お知らせ)。

HOME≫お知らせ≫2016年≫icon_page.png最高裁判所裁判官候補者の募集について

 

ひまわり

臨時国会で「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習生法)と「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」(入管法)が成立した。いずれも、日弁連が以前から取り組んできた課題である。両法とも附帯決議等で一定の成果は得たものの、未解決の課題が残されている。

技能実習生法は、同制度が技能実習という本来の目的と離れ、実態は非熟練労働者の労働力不足解消の手段とされているという構造的問題を解決するには至らなかった。また、技能実習生側の職場選択の自由もごく限られた場合にしか認められなかった。

技能実習生に関しては、これまでも人権救済申立がなされているが、彼らに対する人権侵害が引き続き発生しないか危惧される。

入管法については、罰則規定が新設されたり、在留資格取消事由が拡大しており、庇護申請者を含む日本に入国・在留しようとする外国人やこれを支援する者に対して不当な影響が生じないか、改正規定の運用を注視していかなければならない。

両法は、法制度の問題が、立場の弱い外国人に降り掛かってくるという点において類似の特徴を持っている。今後も、制度の改善に尽力していかなければならない。

(Y・I)

 

院内学習会
福島事故後の原子力事故損害賠償制度の在り方
事業者の賠償責任有限化論を軸に
10月14日 衆議院第二議員会館

  • 院内学習会「福島事故後の原子力事故損害賠償制度の在り方-事業者の賠償責任有限化論を軸に-」

原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」)は、原子力事業者に無過失・無限責任を課すとともに、政府が必要な援助を行うと定めている。しかし、原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会(以下「専門部会」)では、2015年5月から、今後の事故の賠償制度の在り方について、事業者の賠償責任の有限化を軸に、国との役割分担を議論している。
議論の取りまとめを前に、被害者保護の観点から、損害賠償制度のあるべき姿をあらためて問い直すべく、院内学習会を開催した。

 

本間照光名誉教授

まず、東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の浅岡美恵副本部長(京都)が、事業の予見可能性確保のために責任を有限化してほしいという事業者からの要請や新規原発立地への資金調達に障害が生じるとする政策的必要論を背景に、専門部会において、有限責任論と無限責任論の両者について、論点や考え方の再整理が行われていることを報告した。

次に、大島堅一教授(立命館大学国際関係学部)が、事業者の責任を有限化すると、責任限度額を超えた損害が国の負担になり、事業者にとって事業リスクが小さくなることを詳説した。大島教授は、現行の議論は原発稼働ありきで行われているが、事業者が事故リスクを含めた原発の事業リスクを正しく認識して原発の要否を判断できるような制度設計が必要だと指摘した。

本間照光名誉教授(青山学院大学)は、現在の専門部会の議論は被害者保護を目的とする原賠法の目的に逆行した見直し論になっていると指摘し、法の目的に立ち返り、被害を繰り返さないことを目指した議論の出直しが必要だと訴えた。

会場には、代理出席を含め約30人の国会議員の出席があり、議員からも、原発稼働は許されない、国会においても、このような議論を正していかなければならないとの発言があった。

また、消費者団体等からも、納得しがたい国民負担を課そうとする有限化論に対する疑問の声が多数寄せられた。

 

院内学習会
長期避難者の住宅支援制度の充実に向けて
それぞれの選択を尊重した施策の重要性
10月26日 衆議院第一議員会館

  • 院内学習会「長期避難者の住宅支援制度の充実に向けて~それぞれの選択を尊重した施策の重要性~」

福島第一原子力発電所の事故から5年を経過した。国および福島県は2017年3月末で避難等対象区域外からの避難者への住宅支援施策を打ち切る方針を示しているが、報道によれば、これに該当する避難者は3万人を超える。

避難者それぞれの選択を尊重した施策の重要性を確認するとともに、あるべき長期避難者の住宅支援制度を考えるため、院内学習会を開催した。

当日は、国会議員33人(本人16人、代理17人)を含む会場に入りきれないほど多数の参加者を得て、熱気に包まれた。

 

基調報告

関東弁護士会連合会東日本大震災災害対策本部の葦名ゆき事務局次長(静岡県)は、同連合会が、本年7月に原発事故避難者を対象に実施した無料相談「一斉電話相談ウィーク」について報告し、全国各地から相談が寄せられたが、住居に関する相談が全体の67%を占めていたと指摘した。

東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の二宮淳悟委員(新潟県/災害復興支援委員会委員)は、鳥取県が2019年3月まで県営住宅等を無償提供する独自の施策を行っていることなどを紹介した上で、住宅支援施策を打ち切り、帰還を余儀なくするのは、避難者の自己決定権を尊重していないことの表れだと言及した。

 

当事者からの訴え

福島県郡山市から2人の子どもと大阪に母子避難をしている森松明希子氏は、帰還できないのは被ばくの問題があるからであり、現実を直視してほしい、住宅支援が打ち切られれば経済的にさらに困窮することになるので、住宅という安心を与えてほしいと切実な状況を訴えた。

 

国会議員から

荒井聰衆議院議員(民進党)が、住宅支援施策の打ち切りは、定住、移動、帰還などを自らの意思で行えるよう支援すべきとしている子ども・被災者支援法の趣旨に反すると指摘した。また、岩渕友参議院議員(共産党)は、住居の問題は人権問題であり、国会質問を通して打ち切りを阻止したいと決意を述べた。

 

院内学習会
カジノ解禁について考える
11月10日 参議院議員会館

  • 院内学習会「カジノ解禁について考える」

カジノ合法化を推進する「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」は、2013年に国会提出されたものの、2014年、日弁連をはじめとする多数の反対の声を受け、いったんは廃案となった。2015年、この法案は国会に再提出されたものの、ほとんど審議されずにいたが、今国会で審議入りしている(12月1日現在)。
日本でカジノを解禁した場合に生じる問題・弊害について、あらためて問題意識を共有すべく、院内学習会を開催した。

 

鳥畑与一教授

前半、鳥畑与一教授(静岡大学)が、世界各国の実例に基づくカジノの経済効果の検証報告を行った。

鳥畑教授は、カジノを合法とする米国でも、依存症患者の増大や多重債務問題等の社会的コストを考慮し、複数の州の住民投票で建設が否決されたことを報告した。また、カジノ市場は既に飽和状態にあるところ、日本が新規参入しても経営に失敗する見込みが高いことや、賛成派が依拠する収益試算額が、マカオ最大級のカジノの売り上げの4倍にも及ぶ極めて過大な試算であることを指摘した。

後半、成見暁子会員(宮崎県)は、本年9月の九州弁護士会連合会定期大会で「ギャンブル依存症のない社会をめざす宣言」を満場一致で採択したことを報告し、依存症のリスクを詳説した。ギャンブル依存症は誰しもが罹患する可能性のある精神疾患で、いったん発症すれば完治は難しい。成見会員は、身近なギャンブル環境などが発症の要因になると指摘し、国内には既に536万人ものギャンブル依存症者がいると推計されるところ、さらにカジノを導入すれば、国家・社会に大きな損害を与えると訴えた。

出席者からも、近年、日本文化や伝統が多くの外国人を惹きつけ、年間2000万人を超える外国人観光客を迎え入れているところ、カジノ建設に頼らずとも観光立国は実現できる、との指摘があった。

 

シンポジウム
よりよい地方自治の実現を目指して
自治体と弁護士会の連携の実践
10月26日 弁護士会館

  • シンポジウム「よりよい地方自治の実現を目指して~自治体と弁護士会の連携の実践~」

日弁連では、自治体の多様なニーズに積極的かつ的確に対応するため、自治体と各弁護士会の連携を促進する活動を行っている。
自治体と弁護士会との連携の在り方について相互理解を深めるべく、自治体職員と会員約250人の参加を得て、シンポジウムを開催した。

 

第1部では、大貫裕之教授(中央大学大学院法務研究科)が、基調講演「自治体職員が身につけておきたい法務能力~成功例と失敗例から学ぶ~」を行った。大貫教授は、自治体職員が、所管事務に関する法令に関し、気軽に相談できる専門家を確保しておく環境づくりが重要であり、弁護士による対応が期待されると指摘した。

第2部では、自治体と弁護士会との連携について7つの実践例が紹介された。

横須賀市では、身寄りのない一人暮らしの高齢者と協力葬儀社との間で死後事務についての委任契約を締結し、葬儀、納骨などを履行するエンディングプラン・サポート事業を行っている。事業の利用に当たっては、所得・資産などの条件が課されるが、条件を満たさない高齢者についても、市が問題点を整理した上で弁護士会への引き継ぎを行っていることが紹介された。

また、千葉市では、弁護士会が法律アドバイザーを2か月ごとに2人ずつ選任し、市の相談員からの相談や、DV被害者からの相談等に対応する、法律アドバイザー制度を運営していることが紹介された。

第3部では、改正行政不服審査法下での実務対応について、千葉県、横浜市、さいたま市および新潟市の職員・会員をパネリストとしたパネルディスカッションを行った。審理員の担い手については、非常勤特別職として採用された弁護士が担っていることや、標準審理期間の設定などについて、各自治体で運用に違いがあることがアンケート結果も踏まえて報告された。

 

シンポジウム
消費者被害救済のあり方
新時代の幕開け
新制度の活用を特定認定を目指す適格消費者団体と一緒に考えよう
10月22日 中央大学駿河台記念館

  • シンポジウム「消費者被害救済のあり方 新時代の幕開け~新制度の活用を特定認定を目指す適格消費者団体と一緒に考えよう~」

本年10月1日、消費者裁判手続特例法(以下「特例法」)が施行された。特例法は、従来の民事訴訟とは異なる画期的な訴訟制度を設けており、これまで泣き寝入りすることが多かった少額被害の消費者への被害回復が期待される。当該新制度の実効的活用と、そのための課題克服について議論を行うべく、シンポジウムを開催した。

 

消費者問題対策委員会の大高友一幹事(大阪)が、新制度では、特定適格消費者団体(以下「特定適格団体」)が、被害消費者からの授権を得ずに事業者を提訴でき(一段階目)、消費者は、特定適格団体が事業者に勝訴するなどして賠償を受けられる見込みが立ってから手続参加ができる(二段階目)という、二段階型の訴訟制度の概要を説明した。

続いて、志部淳之介委員(京都)が、米国クラスアクション制度の調査結果を報告し、被害者参加を呼び掛けるための通知・公告制度に関する相違点などを説明した。

河上正二教授(東京大学/内閣府消費者委員会委員長)は、新制度が実効的に機能するためには行政が特定適格団体を下支えすることが重要であり、警察が保有する被害者情報を消費者庁経由で特定適格団体に提供するような官民連携を検討すべきであると提言した。

パネルディスカッションでは、消費者機構日本(COJ)の磯辺浩一専務理事が、COJが特定適格団体としての認定を申請中であること、被害回復という新たな活動を担うには法律専門家の協力が不可欠であり、そのための体制を構築中であることなどを報告した。

また、消費者支援機構関西(KC’s)の西島秀向理事・事務局長は、KC’sも認定申請に向けて準備を進めていること、特定適格団体から消費者に届く通知文のサンプルを消費者らに示したところ、「分かりにくい」「詐欺ではないかと疑う」といった厳しい意見が寄せられたことを報告し、新制度の下で消費者から多くの参加が得られるよう工夫していきたいと述べた。

消費者庁の担当者や全国の消費者団体からも、新制度への強い期待が示された。

 

シンポジウム
進化するコーポレート・ガバナンス
経営戦略としてのボード・ダイバーシティ
11月9日 弁護士会館

  • 【弁護士・企業関係者対象】シンポジウム「進化するコーポレート・ガバナンス~経営戦略としてのボード・ダイバーシティ~」

コーポレート・ガバナンスとダイバーシティについての有識者を迎え、国内外のデータに基づいて企業戦略としてのボード・ダイバーシティを検証するシンポジウムを開催した。
シンポジウムでは、弁護士会が内閣府男女共同参画局の協力要請を受けて実施している女性社外役員候補者名簿の提供事業についても紹介した。

 

小林いずみ氏(公益社団法人経済同友会副代表幹事ほか)がボード・ダイバーシティについて基調報告を行った。小林氏は、組織には異なる価値観を持った者が集まっており、この多様性がイノベーションを生み出すことにつながると述べた。

次に、複数企業の社外取締役を兼務している男女共同参画推進本部の市毛由美子事務局員(第二東京)が、女性弁護士社外役員候補者名簿提供事業について説明した。市毛事務局員は、取締役の責任にかかわる経営判断の原則の適用の場面で、弁護士の能力が生かせると述べ、名簿の活用を呼び掛けた。

続いて行われたパネルディスカッションでは、吉田晴乃氏(経団連審議員会副議長ほか)が、ダイバーシティの実現には、「働き方改革」が必要であり、そのためには、ありとあらゆる技術革新を利用してほしいと述べた。

村上由美子氏(OECD東京センター所長)は、日本企業における女性取締役の割合は2015年で3%と世界的にも低水準であり、2020年までに10%を目指すためには欧州での実績などを踏まえてクオータ制導入についても議論する意義があると述べた。

松本晃氏(カルビー株式会社代表取締役会長兼CEO)は、男女に能力差はなく、取締役や執行役員は男女半々にする必要があると指摘した。

相澤光江会員(東京/オカモト株式会社社外取締役ほか)は、数々の企業の管財人等を務めた経験から、企業における危機管理・成長確保の両面において、男性と異なる感性・視点を持つ有能な女性取締役の存在は有用であり、さらなる増加を期待すると述べた。

 

ジョン・クリステンセン氏来日記念講演
パナマ文書問題
不平等社会の克服に向けて、国際的な税逃れの実態と対策を考える
10月26日 弁護士会館

  • ジョン・クリステンセン氏来日記念講演「パナマ文書問題~不平等社会の克服に向けて、国際的な税逃れの実態と対策を考える」の開催について

パナマ文書の流出により、世界各国の首脳陣や富裕層・大企業などが、パナマなどのタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用して税逃れや財産隠しをしている実態が暴露された。
財源不足を理由に各種社会保障の削減が進む中、税逃れの抜け道を残せば、格差と貧困はさらに拡大し、生存権の保障すら脅かされる。そこで、この問題の実態と対策について知見を深めるべく、国際的な市民団体「タックス・ジャスティス・ネットワーク」代表のジョン・クリステンセン氏による来日記念公演を開催した。

 

クリステンセン氏は、タックス・ヘイブンには、二つの大きな問題があると指摘した。

一つは、多国籍企業の租税回避の問題である。多国籍企業は、各国法の弱点を突き、オフショアの取引(実際の取引国とは別の国で取引を記録するもの)を行って、商品の生産国や消費国における課税を回避し、利益を国外に動かしている。IMFによれば、これによりOECD加盟国では5090.2億ドル、発展途上国では2127億ドルもの税収が失われているという。

もう一つの問題は、オフショアの機密性が経済犯罪を誘発することである。企業にとって、タックス・ヘイブンは、税逃れができること以上に、取引の秘密が守られるという魅力がある。しかも、そこには、不正な租税回避を企業に推奨する、法律・会計・税務の専門家が多く所在し、彼らは守秘義務を盾に不正の実態を明かさずにいる。

クリステンセン氏は、多国籍企業らが、税負担を回避しながら社会経済の枠組みを利用するのは「経済的なただ乗り」であり、結果、所得の再分配効率が著しく下がって、本来市民が受けられるべき利益が損なわれ、民主主義への信頼すらも損なわれると指摘した。

そして、多国籍企業による国別報告書の完全開示など、税の透明性を高め、法人税の実効性を回復するための4つの方策を提言し、G7・G20の加盟国である日本こそが、この問題に積極的に取り組むべきであると訴えた。

 

刑死者慰霊祭
9月18日 東京都新宿区

旧東京監獄・市ヶ谷刑務所刑場跡(現在の東京都新宿区富久町児童遊園の一角)に、刑死者慰霊塔がある。
慰霊塔の建立以来、毎年日弁連と地元町内会が共催してきた刑死者慰霊祭。本年も日弁連関係者と地域住民合わせて約20人が出席して執り行われた。

 

弁護士有志の呼び掛けで建立された慰霊塔

刑死者慰霊塔は、1964年7月、この地にあった刑場で刑死した290余名の霊を慰めるため弁護士有志の呼び掛けで建立された。慰霊塔に刻まれた「日本弁護士連合会」などの文字は、円山田作日弁連元会長の書によるものである。

先述の290余名の刑死者には、大逆事件で死刑を執行された12人も含まれている。大逆事件とは、1910年、明治天皇の殺害を企てたとして26人がいわゆる大逆罪で大審院に起訴された事件である。わずか1か月程度の審理で有罪判決が下され、1911年1月、幸徳秋水ら12人がこの地で死刑執行された。戦後の研究により、大逆事件は社会主義運動の弱体化等を企図した政治的な事件であり、その多くはえん罪であったと言われている。

刑死者慰霊祭では、はじめに富久中町会の会長が開会を宣言した。続いて、日弁連を代表して川上明彦常務理事(愛知県)が挨拶し、地域の方々が長年にわたって慰霊塔を守り、慰霊祭を開催し続けていることに深い感謝の念を表した。また、大逆事件は、共謀罪や死刑制度など現在の日弁連の活動等ともかかわる問題であり、今なお弁護士に教訓を突き付け続けていると述べた。

慰霊祭終了後には、近隣の集会場で恒例のお清めの会が開かれた。地域住民からは慰霊塔の維持管理にまつわる話や過去の慰霊祭の思い出話などもあり、慰霊塔・慰霊祭が日弁連と地域住民との交流の仲立ちとなっている様子がうかがわれた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.117

木澤最高裁判事を訪ねて

本年7月19日付で就任した木澤克之最高裁判事を訪ね、今後の抱負などを伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 

木澤最高裁判事

弁護士を目指した動機は

大学で法律学を学んだ以上、その知識を生かせる仕事に就きたいと考えました。当初から弁護士を志望していたわけではありません。司法修習を通じ、法曹三者の中で依頼者に最も近いところで、リーガルサービスを直接提供できることに魅力を感じ、弁護士になることを決めました。実家が商売をしており、中小企業等の経営において法律知識を持つことの重要性を痛感していたのも動機の一つです。

 

弁護士時代の仕事や活動の内容は

企業法務や著作権関連の事件に多く携わってきました。事件処理に当たっては、依頼者からじっくり話を伺い信頼関係を構築すること、依頼者との「共同作業」を通して事件を解決することを心掛けてきました。

また、弁護士5年目からは母校の立教大学で非常勤講師に就任し、法曹を目指す学生のための民法ゼミを受け持ちました。その後は、司法研修所の民事弁護教官や法科大学院の教授を務め、後進の指導に尽力しました。

 

弁護士経験のなかで最高裁判事の職務に生かせる点は

弁護士として依頼者と向き合ってきた経験は、当事者の心裏に迫り、主張の真意を理解する際に生かせるのではないかと感じています。

主張を正確に理解した上で、最も妥当な結論がどこにあるかを見極めなければならないと考えています。

 

最高裁判事の職務に就かれての感想は

最高裁に係属する事件は毎年1万1000件前後。3つの各小法廷でそれぞれ4000件近い事件を担当しています。担当する全事件の訴訟記録に目を通すのは、想像していた以上に大変な作業です。

弁護士は一方の当事者の代理人であり、その立場から解決の糸口を探りますが、裁判官は、双方にとって中立な立場から判断を下さなければなりません。私の好きな言葉として、キリスト教の宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズの生き方を表現した「道を伝えて己を伝えず」という言葉があります。この言葉のように、判断を下す際には、己にとらわれず、常に公正・公平でありたいと考えています。

 

最高裁判事として意識されていることは

最高裁は、最終判断を任されているだけではなく、判例の統一や憲法判断の役割も担っています。そのため、最高裁の判決が実務に与える影響は非常に大きく、極めて重大な責任を負っていることは言うまでもありません。

現代社会の変化のスピードは速く、価値観も日々変化しています。社会の動きを敏感に捉えつつ、公正、中立な判断のためには、価値を何に置くべきかを常に意識しています。

最高裁では、以前に比べて判決文に平易な表現を使用するようになってきています。また、私が所属している第一小法廷では、民事事件についても判決理由の要領を告げる試みを行っています。

これは、司法も、国民からの信頼と理解が必須であり、それを獲得するためには、「より分かりやすい」司法が実現されなければならないからです。

裁判員制度等をはじめとする司法制度改革が、裁判所の取り組みにも変化をもたらしたと言えるのではないでしょうか。

 

弁護士会に期待すること

法律や規則を改正するに当たっては、弁護士会の適時の意見表明が期待されています。裁判官会議でもその内容に注目しているところです。国民にとって法制度がより良いものになるよう、弁護士会と今後も相互に協力し、協議していきたいと思います。

 

余暇の過ごし方を教えてください

就任してからは執務室から出る機会が少なく、運動不足になりがちです。できるだけ意識的に歩くようにしています。少し落ち着いたら、趣味の歌舞伎鑑賞も再開したいですね。

 

木澤克之最高裁判事のプロフィール

1974年 立教大学法学部卒業

1975年 司法修習生

1977年 弁護士登録(東京弁護士会)

1981年 東京弁護士会人権擁護委員会副委員長

1982年 立教大学法学部非常勤講師

1988年・1992年 東京弁護士会弁護士研修委員会副委員長

1994年 東京弁護士会司法修習委員会副委員長

1995年 東京弁護士会人事委員会副委員長

2000年 司法研修所民事弁護教官

2004年 日本弁護士連合会司法修習委員会委員

2004年 東京弁護士会司法修習委員会委員長

2004年 立教大学法科大学院教授

2008年 東京弁護士会人事委員会委員長

2016年 最高裁判所判事

 

日弁連委員会めぐり 89

若手弁護士の会務活動への参画の在り方検討WG

今回の委員会めぐりは、若手弁護士の会務活動への参画の在り方検討ワーキンググループ(以下「WG」)です。日弁連および弁護士会の会務運営に当たり、弁護士登録後5年程度までの若手会員の意見を反映し、会務に参加してもらうための課題や対策などを検討するために2016年1月に設置されました。
奥国範座長(東京)と大嶋一生事務局長(札幌)らにお話を伺いました。

(広報室嘱託 渡邊寛一)

 

奥座長、大嶋事務局長のほか、6人の委員にインタビューに応じていただいた

主な活動内容は

委員のほとんどが60期台の若手会員です。経歴や所属弁護士会の規模、会務活動に対する考え方が異なるメンバーが集まり、これまでに6回開催された全体会議では、活発かつ率直な意見交換がなされました。本年7月には、中・小規模弁護士会の実情を知るため、奈良で合宿をし、奈良弁護士会の活動状況を視察しました。

年内には、WGの活動の集大成として、若手の会務活動についてまとめた提言を行う予定です。

 

 

提言の内容は

提言の冒頭には、若手会員による会務活動への参画の現状と評価について記載する予定です。若手会員は、いまや会務活動の重要かつ中心的な役割を担っていると評価できます。もっとも、会務への積極性については、若手会員間にも隔たりがあり、会務活動の公平な分担の実現が課題です。若手会員が会務活動に主体的かつ積極的に参画し、活躍しやすい環境を整備することが必要です。

そこで、提言では、若手会員の声と弁護士会での具体的な施策例を紹介する予定です。例えば、会務活動に関する情報提供が十分でなく、弁護士会や委員会が何をやっているのかが分かりにくいという若手会員からの声があります。これを受け、ウェブサイトなどで活動内容を詳しく紹介する、委員会活動に関する説明会を実施するなどの施策例を紹介することを考えています。

また、業務と会務との両立が難しいとの声に対しては、会務運営を効率化する施策例などを提案できればと思います。

 

会員へのメッセージをお願いします

WGは、若手会員が会務活動を担うことの意義、ひいては弁護士自治の意義とその目的について考え、議論を重ねました。提言は、今後のあるべき弁護士の姿を提案するものです。ベテラン・中堅・若手を問わず、すべての会員の皆さまに読んでいただきたいと思います。

 

ブックセンターベストセラー
(2016年9月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 交通関係訴訟の実務[裁判実務シリーズ9] 森冨義明・村主隆行 編著 商事法務
2 事例に学ぶ 交通事故事件入門―事件対応の思考と実務 交通事故事件研究会 編 民事法研究会
3 立証の実務―証拠収集とその活用の手引― 改訂版 群馬弁護士会 編 ぎょうせい
4 弁護士の格差―富の二極化が進む弁護士ムラの今[別冊宝島] 宝島社
5 別冊ジュリスト No.229 会社法判例百選[第3版] 岩原紳作・神作裕之・藤田友敬 編 有斐閣
6

工業所有権(産業財産権)法令集[第60版]

発明推進協会 編 発明推進協会
7 民事裁判の要領―裁判官の視点から― 門口正人 著 青林書院
8 相続・遺言ガイドブック 第二東京弁護士会法律相談センター運営委員会 編著 LABO
9 実務に活かすQ&A 平成28年改正刑事訴訟法等のポイント 小坂井久・青木和子・宮村啓太 編著 新日本法規出版
10 我妻・有泉コンメンタール民法[第4版]―総則・物権・債権― 我妻 榮・有泉 亨・清水 誠・田山輝明 著 日本評論社

 

編集後記

10月に弁護士登録14年目に突入しました。気持ちは若手のつもりでも周囲からは中堅と扱われることも多くなりました。

本号の若手弁護士の会務活動への参画の在り方検討WGの取材で、若手の委員から、「頼りになる先輩が会務に参画し、自分たちを引っ張っていってほしい」という意見を聞きました。

事務所の経営でも中核を担うことの多い中堅弁護士の悩みは尽きません。しかし、若手から頼りにされ、必要とされるうちが花と考え、日々の業務にまい進するしかないと決意を新たにしました。

今年一杯で広報室嘱託の任務を終えます。嘱託業務と法律業務との両立の難しさを実感した一年でした。嘱託業務を通じての経験は、今後の弁護士業務にも生かせると確信しています。広報室を離れても、一会員として日弁連や弁護士会などの広報活動に役立つことを実践していきたいと思います。(H・W)