日弁連新聞 第514号

第59回 人権擁護大会開催
10月6日・7日 福井市

 

10月7日、福井市において、第59回人権擁護大会を開催した。延べ約1200人の会員が参加し、「憲法の恒久平和主義を堅持し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言」、「あるべき主権者教育の推進を求める宣言」、および「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。
大会前日には、これに関連して3つのシンポジウムを開催し、計1783人の会員・市民の参加を得た。次回大会は滋賀県で開催される。

 

憲法の恒久平和主義を堅持し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言

会場の様子。延べ約1200人の会員が参加した

安保法制が本年3月に施行され、今ほど、立憲主義、民主主義、恒久平和主義という憲法的価値の真価が問われているときはない。基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士からなる日弁連には、この憲法的価値を回復し実現する責務がある。
安保法制の立法化の過程では、これに反対する広汎な世論が形成され、各界各層の市民が、自発的かつ主体的に言論、集会等の行動を通じて政治過程に参加し、民主主義の大きな発露があった。民主主義を担う市民とともに、立憲主義国家が破壊され、再び戦争の破局へと向かうことが決してないよう、憲法の恒久平和主義を堅持し、損なわれた立憲主義と民主主義を回復するために、日弁連が全力を挙げることを宣言した。

 

 

あるべき主権者教育の推進を求める宣言 ―民主的な社会を担う資質を育むために―

いわゆる「18歳選挙権」の実現に伴い、国に対し、①学習において、立憲主義や法の基本的な価値、価値観の異なる他者との理性的な議論習得の重視、②教師の教育的裁量の尊重および弁護士を中心とした外部専門家の積極的な活用、③学校内外における子どもたちの政治的活動に対する過度の制限の見直し、といった取り組みの強化を提言した。
同時に、日弁連自身も、果たすべき役割の重要性を自覚し、弁護士学校派遣プロジェクトの推進、教育現場との協働、会内外での啓発活動等の実践を継続し、民主的で開かれた社会を次世代へ引き継ぐべく全力を尽くすことを宣言した。

 

死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言

第54回人権擁護大会(2011年)で死刑のない社会が望ましいことを見据えて採択した「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑制度についての全社会的議論を呼びかける宣言」も踏まえ、国に対し、①刑罰制度の改革(懲役刑と禁錮刑を拘禁刑として一元化すること等)、②死刑制度とその代替刑(国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開催される2020年までに、死刑制度の廃止を目指し、その代替刑を検討すること)、③受刑者の再犯防止・社会復帰のための法制度(仮釈放要件を客観化し、その判断を適正かつ公平に行うため、地方更生保護委員会の独立性を強化して構成を見直すこと等)について、刑罰制度全体を、罪を犯した人の真の改善更生と社会復帰を志向するものへと改革するよう求めた。また、日弁連は、その実現のために全力を尽くすことを宣言した。

 

事業活動報告と特別報告

東住吉事件等の再審支援や平成28年熊本地震に対する支援など、2015年度下期から2016年度上期までの人権擁護活動について報告した。
また、少年法の適用年齢引下げに関する件について特別報告を行った。

 

 

修習手当の創設を求める院内意見交換会
     実現させる この秋に
10月11日 衆議院第一議員会館

  • 修習手当の創設を求める院内意見交換会

 

司法修習生への修習手当の早期実現を目指し、院内意見交換会を開催した。
当日は、国会議員の本人出席29人、代理出席73人を含む約300人が出席した。

 

冒頭、中本会長が挨拶し、「修習手当が必要との認識が広まり、国会議員の賛同メッセージも427通に達した。国会議員の協力の下、裁判所法の改正・予算の獲得という高いハードルを乗り越え、修習手当を実現したい」と述べた。

 

国会議員からのエール

宮﨑政久衆議院議員(自民党)、吉田宣弘衆議院議員(公明党)、逢坂誠二衆議院議員(民進党)、畑野君枝衆議院議員(共産党)、河野正美衆議院議員(維新の会)、福島みずほ参議院議員(社民党)が各党を代表して意見を述べた。与野党を問わず、「三権の一翼を担う人材の育成に国家がコストを掛けることは当然だ」「しっかり予算を獲得して早く修習手当を実現しよう」などの声が上がった。

また、出席した国会議員からも、「骨太の方針に初めて『司法修習生』という言葉が入った。この機を逃さず、法改正と予算獲得のため超党派で頑張りたい」などのエールが寄せられた。

 

当事者の声

奨学金等で既に多額の借金を抱えていることに加えて、さらに貸与制で借金総額が増えていく不安について、司法試験合格者は、「貧困問題に取り組むため弁護士を目指したが、貸与制ではそのような活動は難しい」と述べ、安心して法曹を目指すため修習手当を創設してほしいと訴えた。

 

今後に向けて

最後に、司法修習費用給費制存続緊急対策本部の新里宏二本部長代行(仙台)が、「6割の国会議員に賛同をいただいた。修習手当を実現し、国や市民のために頑張りたいと考えている若者たちを支えよう」と力強く訴えた。

 

 

 

第7回 人権関連委員会委員長会議
10月5日 福井市

本会議は、日弁連の人権関連の委員会・ワーキンググループ(以下「WG」)の代表者が「人権のための行動宣言2014」に掲げられている人権諸課題への各委員会・WGの取り組み状況を確認し、情報を共有して意見交換を行い、日弁連の人権擁護活動を推進することを目的としている。例年、人権擁護大会に合わせて開催され、今年は45の委員会・WGの代表者と日弁連執行部の計61人が出席した。

 

会議当日は、人権諸課題への各委員会・WGの取り組み状況についての事務局からの報告のほか、憲法問題対策本部から憲法問題についての報告、総合法律支援本部から法律援助事業の公費化に向けた取り組みについての報告が行われた。
また、3つの分科会に分かれての議論・意見交換も行われた。
第1分科会では「災害被災者に対する人権擁護」をテーマに、大規模災害時に生じる多様な人権問題への日弁連・弁護士会の対応について議論した。第2分科会では「ヘイトスピーチ対策法制定を踏まえた具体的取り組み」をテーマに、法律制定後の具体的な取り組み方法について議論した。第3分科会では「人権活動と行政との連携」をテーマに、行政との具体的な連携方法について議論した。各分科会とも、予定の時間を超過して熱心な議論・意見交換が行われた。

(人権行動宣言推進会議 事務局長 秋山 淳)

 

ひまわり

10月に入っても東京はなかなか秋の気配がしなかった。日弁連執行部は、秋には恒例のロードに出る。人権擁護大会、ブロック大会のほかに国際会議も入る。会務の懸案も山積みだ。1年で最も慌ただしい時期かもしれない。

 

10月14日、鳥取市で開催された中国地方弁護士大会に参加した。今年は大会前日から鳥取入りし、前夜懇親会の代わりに行われた中国地方5弁護士会の若手と日弁連執行部の意見交換(若手カンファレンス)、当日午前中のシンポジウムに引き続き、午後には大会が行われ、5本の宣言・決議が採択された。

地元会である鳥取県弁護士会は、60人余りと函館弁護士会に次いで全国で2番目に会員数が少ない弁護士会である。大田原俊輔会長、河本充弘実行委員長はじめ会員の方々は、人によっては一人二役も三役もこなして、大会の準備・運営に当たられたと想像する。最後の懇親会では、弁護士会会員全員による「ふるさと」の大合唱、最後は会場も一緒になって歌い上げ、大会を締めくくった。全員参加の手作り感あふれる素晴らしい大会であった。

東京に帰ると、ひんやりとさわやかな空気であった。本格的な秋だ。(*翌週鳥取地方を震度6弱の地震が襲った。被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。)

(N・I)

 

人権擁護大会シンポジウム
10月6日 福井市

第1分科会

 

立憲主義と民主主義を回復するために

 安保法制と秘密保護法の適用・運用に反対し、その廃止を求めて

 

日弁連は、平和安全法制整備法および国際平和支援法(以下「安保法制」)が、憲法の基本理念である立憲主義ならびに基本原理である基本的人権の尊重、国民主権および恒久平和主義に違反すると訴えてきたが、安保法制は2015年9月に成立し、本年3月29日に施行された。
これを機に、あらためて立憲主義、民主主義および恒久平和主義への理解を深めるべくシンポジウムを開催した。

 

活動報告

憲法問題対策本部の山岸良太本部長代行(第二東京)は、全国の弁護士会が一致団結して安保法制に反対しているのは、弁護士会が過去の戦争を止めることができなかった歴史的教訓に基づくものであると述べ、日弁連が、集団的自衛権の撤回・廃止を求め、会長声明・意見書を公表するとともに、集会・パレードなど、さまざまな場面で市民と広く連携して行動してきたことを報告した。また、憲法に反する法律は施行されても「違憲」であることに変わりなく、今後も安保法制の廃止を求めて活動していく決意を表した。 第1分科会実行委員会の金ヶ崎絵美委員(第二東京)は、各弁護士会における活動をスライドを用いて紹介し、市民を含め約6000人の参加を得た集会など、各地で積極的な取り組みが続いていることを報告した。

 

岸井成格氏

基調講演

岸井成格氏(毎日新聞社特別編集委員)が、秘密保護法・日米新ガイドライン・安保法制は、戦争が起こることを前提に整備・策定されていると指摘し、権力の腐敗や暴走を発見して、報道していくことがメディアの役割であると訴えた。

 

中東の現状
  武力行使がもたらしているもの

フリージャーナリストの西谷文和氏は、イラク、シリアの現状を写真・動画で紹介した。空爆の残酷さがほとんど公表されていないことや、一般市民が犠牲になり、憎悪が憎悪を呼ぶ結果になっていることを指摘し、テロリストを武力で排除するよりもむしろ人道支援、経済支援こそ和平につながると提言した。

 

パネルディスカッション

山田博文名誉教授(群馬大学)は、グローバリゼーションが進み、経済分野における各国間の結び付きが強くなっている現状では、経済大国間で戦火を交えることはあり得ないと経済学の視点から指摘した。

植野妙実子教授(中央大学)は、憲法訴訟や集会などの地道な活動によって、政府に憲法を守らせる社会をつくっていかなければならないと訴えた。

奥本京子教授(大阪女学院大学)は、平和維持活動は軍隊や警察が行うものと考えられているが、東南アジア、中東などでは、非武装の一般市民が非暴力による調停・和解での平和維持活動を成功させており、これは憲法9条を実践する上で参考になると語った。

 


 

第2分科会

 

主権者教育における弁護士・弁護士会の役割

 立憲民主主義を担う「市民」が育つために

 

選挙権年齢の18歳以上への引き下げに伴い、高等学校における必修科目「公共(仮称)」の新設など、主権者教育の実施に向けた動きが急速に進んでいる。
主権者教育が目指すべき理念、その理念を実践するための教育現場と弁護士との協働・連携の在り方などを議論するため、シンポジウムを開催した。

 

ゲオルグ・ヴァイセノ教授

基調講演・基調報告

宍戸常寿教授(東京大学法学部)が基調講演を行い、「主権」や「主権者」の意義を説明し、生徒たちの理解能力等に応じた主権者教育が必要と述べた。また、弁護士は教材作成・教育指導・教師等への助言など主権者教育の多くの場面で役割を果たし得ると指摘した。

第2分科会実行委員会の金昌浩副委員長(第二東京)は、視察を行ったドイツ・イギリスの政治教育の状況を報告した。

また、ゲオルグ・ヴァイセノ教授(カールスルーエ教育大学)が政治教育の在り方に関する講演を行った。ドイツの政治教育では、「ボイテルスバッハ・コンセンサス」(見解の強制の禁止等の教員に対する指針)により非党派性が確立されたこと、生徒が政治問題を自ら考え判断するよう求められていること等が紹介された。

 

提案授業

二丹田雄一教諭(福井県立勝山高等学校)による提案授業では、模擬議会を開催し、「死刑制度廃止法案」を審議した。生徒たちは、死刑廃止派と存置派とに分かれ、弁護士の助言を受けながら、関連資料の分析、抽出した根拠データを基にした立論、意見陳述・質疑応答等の白熱した討論を行った。

続いて、森川禎彦教諭(福井市明道中学校)による提案授業の様子が放映された。弁護士による創作劇「アリとキリギリス」を用い、民主主義の限界や立憲主義の必要性を理解させる授業が展開された。

 

特別報告・基調報告

橋本康弘教授(福井大学学術研究院教育・人文社会系部門)が特別報告を行った。新学習指導要領の議論状況を概説し、「公共(仮称)」という新科目は、主権者に必要な基本的素養、すなわち課題について多様な視点から考察し議論する力の養成に資すると期待を示した。

市民のための法教育委員会の村松剛事務局長(神奈川県)らは、法教育・弁護士学校派遣・プレシンポジウムに関する各地の弁護士会の活動状況を報告した。

 

パネルディスカッション

講演や提案授業を踏まえ、主権者教育の方法・弁護士関与の意義・子どもたちの学習環境等について討論を行った。

二丹田教諭は、法的思考力を備える弁護士が授業に関与したことで、生徒たちがより論理的な思考に基づき、明確な意思決定ができたと述べた。宍戸教授も、提案授業中の創作劇は生徒たちに「生きた立憲主義」を伝えるものであったと高く評価した。また、杉浦真理教諭(立命館宇治高等学校)は、教師の教育的裁量が尊重される必要があると訴え、その実現のための弁護士の活動に大きな期待を寄せた。

 


 

第3分科会

 

死刑廃止と拘禁刑の改革を考える

 寛容と共生の社会をめざして

 

1980年代に死刑確定者について再審が開始され無罪となった4事件や、2014年の袴田事件再審開始決定は、誤判・えん罪によりかけがえのない命が奪われかねない現実を突きつけた。また、現在、先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)の中で、死刑を存置し、国家として統一して執行しているのは日本のみとなっている。これらの現状を踏まえ、死刑廃止の議論を深めるとともに、代替刑を含めた刑罰制度の改革について考えるため、シンポジウムを開催した。

 

オープニング

まず、2014年3月に再審開始および死刑・拘置の執行停止決定がなされた袴田巖氏の姉である袴田秀子氏が登壇した。他の死刑囚の死刑執行に強い恐怖を感じ、心を病んでしまった巖氏の現状を紹介し、死刑の残虐性を訴えた。

また、ティム・ヒッチンズ駐日英国大使らからもビデオメッセージが寄せられた。

 

日本の刑罰の現状と課題

毛利真弓特任助教(広島国際大学心理臨床センター)が、刑務所で臨床心理士として勤務した経験を踏まえ、日本の刑務所の現状と変わるべき方向性について講演した。日本の刑務所では、刑務所内処遇が長くなればなるほど、囚人間で知識や感情などを共有し、所内の特殊な規則や文化等になじんでしまい、より犯罪傾向が進んでしまうと報告した。

 

米国の死刑廃止の現状

笹倉香奈教授(甲南大学法学部)が、米国では、刑事事件のえん罪支援を行う団体(イノセンス団体)などの活動で、多くのえん罪事件が発見され、刑事司法が大きく変革したと述べた。また、その影響の一つとして不可逆的な刑罰である死刑への疑念が生じ、死刑制度が衰退したと言及した。

 

世界的な死刑廃止と拘禁刑改革の流れ

ウィリアム・A・シャバス教授(ミドルセックス大学)が、西半球で死刑が執行されているのは米国のみだが、同国でも近い将来、連邦最高裁で、死刑について違憲判決が出ることが予想されると述べた。また、死刑による犯罪抑止力について、問題とすべきは、その絶対的有無ではなく、長期の拘禁刑と比較して高い効果があるかどうかであると主張した。

 

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッション
  死刑廃止と刑罰制度 全体の改革の展望

漆原良夫衆議院議員(公明党)が、誤判が避けられない以上、死刑制度は廃止すべきであるものの、被害者の思いを無視してはならないと述べた。
また、井田香奈子氏(朝日新聞オピニオン編集部次長)は、死刑については取材も容易ではなく、存廃について悩んできたが、国家権力により人の命を奪うことは許されるべきではないと述べた。

 

 

いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する市民集会
9月29日 弁護士会館

  •  「いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する市民集会」
本年8月以降、政府が従来の共謀罪法案を修正し、名称も変更した新たな法案の提出を検討しているとの報道がなされている。
共謀罪法案の問題点を共有し、議論を深めるため、市民集会を開催した。

 

まず、共謀罪法案対策本部の海渡雄一副本部長(第二東京)と山下幸夫事務局長(東京)が基調報告を行った。海渡副本部長は、600以上の犯罪に共謀罪を認めれば犯罪構成要件の人権保障機能が破壊されると述べた。山下事務局長は、名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変更しても、従来の共謀罪と本質的な違いはないと指摘した。また、新法案が適用対象を「組織犯罪集団」とし、処罰条件に「準備行為」を求めても、処罰対象は限定されないことを説明し、法案提出の阻止を呼び掛けた。

続いて、フリージャーナリストの青木理氏が講演を行った。特定秘密保護法・通信傍受法・安保法制などの「武器」が警察・自衛隊等に次々与えられてきたなか、さらに共謀罪という「武器」が与えられようとしていることに強い危機感を覚えると述べた。

また、逢坂誠二衆議院議員(民進党)は「名称を変えても共謀罪法案に変わりはない。テロ防止に名を借りた共謀罪を許すことはできない」と、畑野君枝衆議院議員(共産党)は「共謀罪法案を提出させないよう努力したい」とそれぞれ発言した。

パネルディスカッションでは、海渡副本部長が、現行刑法でも内乱・外患などの犯罪には予備・陰謀罪が設けられていること、テロ防止のための特別法も整備されていること等を指摘し、「テロ対策」という法案の名目には根拠がないと述べた。青木氏は、共謀罪が成立すれば、捜査当局が団体・組織の監視を強め、密室や電話での「謀議」を盗聴・傍受することになると指摘した。そして、通信傍受法も対象犯罪が拡大され、室内盗聴も可能とされるなど、さらなる強化が避けられないとの危惧を示した。

 

 

国際セミナー 日露共同セミナー
ロシア法務の最前線
10月11日 弁護士会館

  • 国際セミナー「日露共同セミナー ~ロシア法務の最前線~」
日弁連は、2014年10月に国際法曹協会(IBA)東京大会が開催された際、ロシア連邦弁護士連合会との間で友好協定を締結した。今回、協定締結後初のセミナーを共同開催した。
(共催:独立行政法人日本貿易振興機構《JETRO》、日本仲裁人協会《JAA》、外国人ローヤリングネットワーク《LNF》)

 

ロシア側は、ロシア連邦弁護士連合会からユーリー・ピリペンコ会長(ほか12人)が来日し、来賓として、駐日ロシア連邦大使館からミハイル・セルゲエーフ総領事が、駐日ロシア連邦通商代表部からセルゲイ・エゴロフ首席代表が参加した。また、日本側は、共催団体のJAAから川村明理事長(IBA元会長/第二東京)が、JETROから海外調査部主幹(ロシア・CIS)の梅津哲也氏が参加し講演等を行った。

セミナーは、午前中に会員向けのクローズド・セッションにて「日露の法曹及び法律サービスの将来」「ロシアの家族法」という非ビジネス系のテーマを、午後に一般公開のオープン・セッションにて「ロシア仲裁制度と紛争解決に関する近時の改正」「法的観点から見たロシアでのビジネス(法律面における日露間の協力関係の発展)」というビジネス系のテーマを取り上げ、日英同時通訳を利用して活発な議論が交わされた。

今回のセミナーの一つの特徴として、特に、午後のセッションにおいて、ビジネス系のテーマを正面から取り上げたことで、広く一般企業関係者等からの参加を得られた点が挙げられる。近時のロシアへの関心の高さを反映してか、参加者数は約130人と当初の想定を大幅に上回り、申込受付を打ち切らざるを得ないほどの盛況となった。

(国際交流委員会 ロシアチーム長 小川晶露)

 

ACLA/CCBEとの三極会議
9月9日−11日 フランス・ボルドー

日弁連、中華全国律師協会(ACLA)、および欧州弁護士会評議会(CCBE)の情報・意見交換の場としての三極会議(第11回)が本年も開催された。
日弁連からは石原真二副会長、斉藤芳朗副会長ほか2人が参加した。

 

会議の様子

今年は、ホストのCCBEがテーマを選定し、議論を行った。テーマは、1)法曹に対する認識と法曹の広報・利用促進、2)法曹・法律サービスにおける(破壊的)技術革新、3)規制を受けない法律サービスの提供者とABS(非弁護士による事務所所有)、4)司法アクセスと弁護士へのアクセスなど。

2)のテーマでは、CCBEから、米国で誕生したオンライン法律文書作成サービスが、本年9月にフランスで運用開始されたことが報告された。その上で、人工知能(AI)など法律サービスにおける技術革新により、伝統的な弁護士業務の方法は大きく影響を受けるだろうと、切迫した危機感が示された。また、技術革新への対応策として、いかに市民に法曹への認識を高め、その利用を促していくかも議論された。

ACLAからは、社会正義実現への貢献や広報の工夫により弁護士のイメージが向上している状況が報告された。

法律サービス分野における技術革新の状況は、それぞれ異なるものの、三者ともにその危機感を共有し、今後も情報収集を図っていく必要性が確認された。

また、近時の取り組み報告として、日弁連からは、災害復興支援の取り組みを紹介した。CCBEからは、ヨーロッパでの難民・移民問題に対する司法支援の取り組みが報告され、法曹による司法支援の重要性が強調された。

(国際室嘱託 皆川涼子)

 

ひまわりほっと法律相談会
中小企業を弁護士が応援します!

  • ひまわりほっと法律相談会-中小企業を弁護士が応援します!-

今年も、中小企業に関する無料法律相談会とこれに伴うシンポジウム等が、9月16日を中心に全国一斉で行われた。

 

日弁連では、2010年4月から、中小企業に対して組織的かつ全国的に法的サービスの提供を行うため、全国52の弁護士会とともに「ひまわりほっとダイヤル」を開設し、本年7月末までに、累計3万3473件の相談を実施している。

2008年からは、全国の弁護士会との共催で、中小企業に関する全国一斉無料法律相談会およびシンポジウム・講演会・セミナーなどを開催している。この相談会は、中小企業事業者の法的サービスへのアクセスを改善し、さらなる法的ニーズを発掘することを目的として、中小企業庁をはじめとする中小企業支援機関および各地の商工団体などと連携して開催しているものである。

当日は、各地で、農業・林業・卸売業・小売業・サービス業・運輸業など、さまざまな業種の事業者から、損害賠償や契約・取引に関する事項、事業再建、会社経営、知的財産に関する事項など、多岐にわたる内容の相談がなされた。

また、シンポジウム等も、起業から事業承継まで、中小企業が直面する種々の問題について各弁護士会でテーマを定めて開催し、福岡県弁護士会では147人が、愛知県弁護士会では100人が参加するなどの成果を得た。東京会場における講演会の様子をひまわりほっとダイヤルのウェブサイトに掲載する予定である。ぜひ多くの方にご覧いただきたい。

日弁連では、今後も、中小企業分野への弁護士業務の一層の拡充を図るべく、法律相談会・シンポジウムなどを開催していく予定である。

(日弁連中小企業法律支援センター 副本部長 酒井俊皓)

 

第3回 男女共同参画推進担当委員連絡会議
9月27日 弁護士会館

日弁連は、2007年6月に会長を本部長とする男女共同参画推進本部(以下「推進本部」)を設置し、2008年3月に日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画(以下「基本計画」)を、2013年3月に第二次基本計画をそれぞれ策定した。基本計画はいずれも5か年計画で、日弁連の男女共同参画実現のために必要な事項に関する基本的目標と、その間に取り組むべき具体的施策を定めている(*)。本会議では、日弁連の各委員会における男女共同参画推進担当委員(以下「担当委員」)が集まり、共同参画の現状報告と目標・施策の達成に向けての意見交換などを行った。

 

まず、高橋美恵子教授(大阪大学大学院言語文化研究科)が、スウェーデンにおけるワーク・ライフ・バランスについて講演を行った。スウェーデンでは、男女とも家庭(私的)生活とのバランスを取りながら働けるよう、国家レベルで手厚い保障をしており、具体的には、父親にも育児休業の権利を認める有給育児休業制度や、子が8歳に達するまで労働時間を75%まで短縮可能とする労働時間短縮制度などを実施していることを紹介した。また、日本においても、男女ともにバランスの取れた働き方が選択できる社会を実現するために、一人一人が自立・自律した上で、互いに支え合い共生することが重要であると指摘した。

次に、グループディスカッションが行われ、日弁連の各委員会における女性委員の割合が、2013年当時から十分に増加しておらず、目標値である15%に届いていないことを踏まえ、目標達成に向けて意見交換を行った(日弁連の特別委員会での女性委員の割合は14%)。担当委員からは、委員会出席を容易にするためにインターネット電話サービスを利用して出席できる環境を整えるべき、そもそも弁護士会全体として女性会員を増やすために育児期間中の会費免除制度を拡充すべき等の意見が出された。

最後に推進本部の可児康則事務局長(愛知県)は、本会議での議論結果を、第二次基本計画の実現と第三次基本計画の策定に生かしていきたいと総括した。

 ◇           ◇

*日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画は、日弁連のホームページでご覧いただけます。

 

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.116
  第57回「法の日」週間記念行事「法の日」フェスタ

 

首都圏でもし大震災が起きたら?!
〜法を身近に感じてみよう〜
10月1日 弁護士会館

  • ~首都圏でもし大震災が起きたら?!~第57回「法の日」週間記念行事 法の日フェスタ

阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして本年4月の平成28年熊本地震。さらに10月21日には、鳥取県中部を震源とするM6.6の地震が起きました。地震列島たるわが国では、首都直下地震も、いつ起きてもおかしくありません。震災に直面した時、自らと家族の身を守るにはどうしたらよいか、また震災に法はどう役立つのか。
こうしたテーマについて、市民の皆さまに広く理解を深めていただく機会とすべく、今年度の法の日(毎年10月1日)は、「首都圏でもし大震災が起きたら?!」をテーマに、講演とトークイベントを開催しました。(共催:最高裁判所、法務省・最高検察庁)

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

冒頭、中本会長が開会挨拶を行い、日弁連が、本年4月の熊本地震を受けて、直ちに対策本部を立ち上げたこと、熊本県弁護士会を中心として、これまでに6000件を超える無料の電話法律相談に対応していることなどを報告し、本イベントを各自の防災対策の見直しに役立ててほしいと呼び掛けました。

 

国崎信江氏。講演では、固定観念にとらわれない災害対策を示した

講演「首都直下地震に備える防災対策」

イベント前半は、国崎信江氏(危機管理教育研究所代表・危機管理アドバイザー)が講ました。国崎氏は、災害に対し、科学的なアプローチを行い、実験結果を基にした実効的な対策を提唱して、テレビ・雑誌などで活躍しています。

 

命を守る知識

国崎氏はまず、「知っていることで守られる命、知らないことで奪われる命があります」と述べ、震災について正しい知識を持つことの重要性を説きました。
その一例として、戸建てとマンションでは、求められる防災対策が根本的に異なることを指摘しました。お風呂の残り湯を排水せずためておくと断水時に役立つ、とよく言われますが、マンションの場合、大規模地震が起こると、縦横に張り巡らされた配管に亀裂が生じる可能性があり、そこに水を流せば、漏水となってしまいます。そのため、マンションでは、残り湯をためてはならず、配管の損傷の有無の確認が終わるまで、一滴も水は流してはならないとのことです。
また、同じマンションでも、低層階と高層階では揺れ方が全く異なり、とっさに取るべき行動にも違いが出てくると指摘しました。

 

子どもへの防災教育

学校での防災訓練では、「地震が来たら机の下にもぐりなさい」と教育されることが多いですが、いざ地震が起きたとき、机がひっくり返ってしまい、もぐる机がないことも多いそうです。国崎氏は、「ダンゴムシのポーズⓒ(頭を抱えつつ四つん這いになる姿勢)」を実演し、状況に応じて身を守れるよう、日ごろから意識付けをしておかなければならないと説きました。

 

固定観念にとらわれない対策

このほか、普段から家庭内に果物の買い置きをしておけば、災害時の水分補給にも役立つ、大人用の紙おむつは簡易トイレの代替になる等、さまざまなアイデアも示されました。
国崎氏は、防災用品以外にも選択肢はあるので、いったん固定観念を捨てて、普段の生活を見直してみてほしいと参加者に呼び掛けました。

 

トークイベントの様子

トークイベント「首都圏でもし大震災が起きたら?!」

後半のトークイベントでは、金子愛会員(熊本県)が、熊本地震で自宅・事務所ともに被害を受けた経験を報告しました。金子会員は、地震で冷蔵庫が倒れ、保存していた食糧が食べられなくなったことや、修繕の順番待ちのため、今なお自宅の窓枠がゆがんだままになっており、台風の日にも窓を閉められずにいることなどを語りました。今も被災地では不便な暮らしが続いています。

 

災害を具体的にイメージして

国崎氏は、被災時に家族が安全に落ち合えるよう、待ち合わせの時間や場所について、細かなルール設定をしておくことが重要と指摘しました。災害時の避難場所は花火大会の会場のように大混雑するので、「○○小学校」とだけ約束しておくのでは足りず、「○○小学校の校庭の鉄棒の横に午前○時、午後○時に待ち合わせ。20分経っても来なかったら、安全な場所で待機し、次の予定時刻に再待ち合わせ」など、細かに決めておく必要があるそうです。

 

災害時に頼れる弁護士

中野明安会員(災害復興支援委員会前委員長・第二東京)は、災害復興支援活動に携わる弁護士の立場から、災害時に弁護士がよろず相談を受け付けて、被災者支援の一助となっていることなどを説明しました。
また、法律と防災の接点についての一例として、借家におけるネジ穴の原状回復義務についても説明しました。エアコンのビス跡は原状回復不要とされる一方、地震対策のために冷蔵庫等を固定したネジ穴は原状回復が必要とされるのが一般的です。中野会員は、現在、このネジ穴を、まず都営住宅で原状回復不要な通常損耗と認めてほしいと東京都に要望しており、社会実践を通して、法律家の立場から防災対策を進めたい、と力強く語りました。

 

 

続・ご異見拝聴 (1)

北川 正恭 日弁連市民会議議長

 

有識者から弁護士・弁護士会に対してのご意見をお聴きする「ご異見拝聴」。1984年から1988年まで全20回掲載された同連載が、約30年ぶりに「続・ご異見拝聴」として本号から復活します!

第1回目は、衆議院議員、三重県知事を歴任され、現在は早稲田大学名誉教授および同大学マニフェスト研究所顧問であり、2011年2月から日弁連の市民会議議長を務めていただいている北川正恭氏にお話を伺いました。

(広報室嘱託 渡邉 寛一)

 

北川正恭議長

市民会議議長就任の経緯

1990年代に、立法・行政・司法の3つの改革を一緒に行っていこうという政治改革運動が起きました。この頃、衆議院議員、次いで三重県知事を務めていた私は、この3つの改革のうち、司法に関する制度改革(司法制度改革)―特に法科大学院の制度設計に携わりました。また、三重県知事時代には、地方にも法の支配を行き渡らせたいという考えの下、論陣を張りました。国会議員・県知事として司法制度改革にかかわってきたこれらの経験がご縁で日弁連からお声掛けいただき、議長に就任しました。

 

地方自治と弁護士の活用

2000年に機関委任事務が廃止されたことで、地方自治体は自己決定権が拡充した一方、自らの判断と責任の範囲も拡大しました。このように、自己決定・自己責任がより求められるようになることで、地方自治体では、個々の問題について専門家の判断を仰ぐ必要性が高まっています。
そのような中、法律の専門家としての知見を有する弁護士を公務員として任用することは大変意義のあることだと思います。弁護士の皆さんには、どんどん公務員に就任し、活躍していただきたいと思います。

法教育について

選挙権年齢が引き下げられた今、社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)が求められていると思います。これまでの偏差値偏重の教育では、受験に必要ではない科目がおざなりにされ、例えば、立憲主義について教わるような時間はなかったと思います。
まさに今、教育は変革の過渡期にあります。教育を根本から見直すべきときだと考えています。

 

弁護士、弁護士会および日弁連への期待とご意見

弁護士には、その資質を生かして法の支配が行き渡る多方面の分野で活躍していただきたいと思います。特に公平・公正ということがどのようなことであるかを理解している弁護士は、政治家にも向いているのではないでしょうか。弁護士会や日弁連には、そのような弁護士の活動をバックアップする役割を担っていただきたいと思います。

 

 

ブックセンターベストセラー
(2016年7月・六法、手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 若手法律家のための法律相談入門 中村 真 著  学陽書房
2 損害保険の法律相談Ⅰ〈自動車保険〉最新青林法律相談12 伊藤文夫・丸山一朗・末次弘明 編著 青林書院
3 インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル 第2版 中澤佑一 著 中央経済社
実務 相続関係訴訟―遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル

田村洋三・小圷眞史 編著、

北野俊光・雨宮則夫・秋武憲一・浅香紀久雄・松本光一郎 著

日本加除出版
相続・遺言ガイドブック 第二東京弁護士会法律相談センター運営委員会 編著 LABO
6 労働相談実践マニュアルVer.7 ―改正派遣法、パート法対応 障害者雇用、公務員関係を新設 日本労働弁護団 著 日本労働弁護団
7 最新 プロバイダ責任制限法判例集 プロバイダ責任制限法実務研究会 編 LABO
8 弁護士職務便覧 ―平成28年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
労働法[第十一版]法律学講座双書 菅野和夫 著 弘文堂
10 弁護士会照会制度[第5版]活用マニュアルと事例集[CD−ROM付] 東京弁護士会調査室 編 商事法務

 

編集後記

法の日週間記念行事における国崎氏の講演の中で、《家具は、地震発生からおよそ4秒で動き出し、その4秒後には倒れてしまう。対して人は、揺れ始めてから3秒たたないと地震に気が付かない》という指摘があった。となると、私たちは、地震に気が付いてから数秒以内に家具が倒壊してこない場所に身を置かなければならない。無論、とっさにできることはごくわずかだ。とすれば、事前の防災対策こそ重要ということになる。

災害時、私たち弁護士が果たし得る役割が多方面にわたることは、過去の震災経験からよく理解している。しかし、その役割を果たすためには、まず何より、私たち自身が、震災を生き延びなければならない。
地震列島のわが国では、安全と言える場所はどこにもない。法律事務所や自宅の地震対策が十分か、ぜひ、一人でも多くの方々に見直しをお願いしたい。

(T・O)