日弁連新聞 第513号

10月1日
改正児童福祉法弁護士配置規定が施行

本年5月27日に「児童福祉法等の一部を改正する法律」(以下「改正児童福祉法」)が成立し、全国すべての児童相談所への弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うとする同法第12条第3項の規定は、本年10月1日に施行された。

 

日弁連は、6月9日付で弁護士会に対し、児童相談所・自治体との協議の実施など、早急に対応いただきたいことなどについて依頼を行った。また、6月20日付で全会員向けに「児童相談所における勤務に関するアンケート」を実施した。急な依頼にもかかわらず、弁護士会や多数の会員から協力をいただき、あらためて感謝を申し上げたい。

厚生労働省では、8月4日に児童相談所および自治体向けに説明会が行われた。また、9月29日付で「児童相談所運営指針」の改訂が公表された。「弁護士の配置又はこれに準ずる措置」の詳細は、厚生労働省のホームページに掲載されている同運営指針を参照されたい。

(児童相談所における弁護士配置への対応に関するWG座長 小林元治)

 

児童相談所の常勤・非常勤職員への応募に際して

会員専用ページに参考資料を掲載しているので、参照されたい。

HOME≫求人・求職情報≫icon_page.png児童相談所の職員への応募について

 

第29回
LAWASIA年次大会報告
8月12日〜15日 スリランカ・コロンボ

8月12日から15日まで、スリランカのコロンボでLAWASIA(ローエイシア)の設立50周年を記念する年次大会が開催された。
日弁連は、執行部から幸寺覚副会長、出井直樹事務総長が参加した。また、山岸憲司LAWASIA東京大会2017組織委員会委員長(東京)をはじめ、多数の同委員会委員が参加し、来年の東京大会に向けたプロモーションを行った。

 

理事会の様子

理事会では、2014年以来議論を重ねてきた「弁護士の秘匿特権に関する決議」案、昨年からの継続議題である「安全の脅威に関する弁護士会の役割に関する決議」案が、いずれも日弁連の意見をほぼ尊重する内容で承認された。

これらの決議に共通する点は、濫用的租税回避行為の防止、反マネーロンダリング、反テロリズムなどを目的とする政府による情報収集の要請とのせめぎ合いの場面においても、法の支配と人権保障の根幹を担う弁護士・弁護士会の独立を堅持する立場を明らかにしていることである。

他方、理事会の直前にオーストラリア弁護士連合会から、外弁規制緩和促進を視座とする「地域における外国弁護士と国境を越えた法律実務の規制に関する指導原則決議」案が提出されたが、日弁連、香港律師會等が自国の外国弁護士規制の状況を踏まえた懸念を指摘した結果、同議案は採決されず審議継続となった。

また、理事会では、高谷知佐子会員(第二東京)が昨年に引き続き定員6人の執行委員への当選を果たしたほか、東京弁護士会のLAWASIA団体加入が承認された。

人権からビジネスまで約30コマの多岐にわたる全体・分科セッション、LAWASIA人権セクションの発足、創造性豊かな現地のアトラクション、来年の東京大会PRの和太鼓、日本酒振舞い、茶道お点前等々、盛りだくさんの4日間だった。

(国際室副室長 相馬 卓)

 

司法試験に1583人が合格

9月6日、2016年の司法試験の合格発表があり、1583人が合格した。受験者は6899人、合格率は22.9%。また、予備試験を経た合格者は235人だった。受験者数と合格者数の推移は別表のとおりである。

司法試験法の一部改正(2014年10月1日施行)で、受験期間5年間に受験可能回数3回という制限が廃止されてから2回目の試験であり、本年からは受験回数5回目の者も受験できるようになった。

 

会長談話を公表

日弁連は、合格発表の当日に会長談話を公表した。

会長談話では、まず、日弁連が、市民にとってより身近で利用しやすく、頼りがいのある司法を実現するため、司法基盤の整備、司法アクセスの拡充、弁護士の活動領域の拡大とともに、法の支配の担い手として社会の様々な要請に応えることができる質の高い法曹を養成すべく、法曹養成制度の改革に取り組んできたこと、現実の法的需要や新人弁護士に対するOJT等の実務的な訓練に対応する必要性から、急激な法曹人口の増員ペースを緩和すべく、司法試験合格者数については、まずは早期に年間1500人とすることを提言したことに触れた。

また、昨年6月、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」に基づき、当面の司法試験合格者数に関して、質の確保を前提としつつ「1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るものとし、関係機関・団体との連絡協議を行うため、昨年12月から法曹養成制度改革連絡協議会を開催していることに言及した。

その上で、本年の合格者数は、「法曹人口の増員ペースが一定程度緩和されたと言うことができ、この流れに沿って早期に1500人にすることが期待される」との見解を表明した。

 

司法試験合格者数の推移(受験者数は、新司法試験のみ)

H22
(2010)
H23
(2011)
H24
(2012)
H25
(2013)
H26
(2014)
H27
(2015)
H28
(2016)
受験者数 8163 8765 8387 7653 8015 8016 6899
合格者数
※( )はうち、旧試験合格者数
2133(59) 2069(6) 2102 2049 1810 1850 1583

 

ひまわり

「検事が作文した調書が裁判のベースになるのが一番の問題点だ」。大阪での可視化シンポでこう発言したのは元厚労事務次官の村木厚子さんである。弁護士であれば、おそらくその発言の真意をすぐに理解できるであろう。

それでは、「(法制審における裁判所や検察庁の主張に対して)そうじゃないんじゃないかという突っ込みが、弁護士会側から迫力のある形でできていない」という発言はどうだろう。村木さんが日弁連の市民会議で発言した言葉である。

村木さんは続けて言う。「要は、運用の監視ができていないのかなと。ものすごく運用の監視って大事になるので、それは日弁連の役割じゃないかなと思います」。

弁護士会は法律家団体としてさまざまな提言を行い、立法過程にも関与している。しかし、成立を求める法律の立法事実となるデータを的確に集約してきたか。問題点を指摘した法律の運用実態を丹念に検証してきたか。法制審において、いわば外から日弁連を見た村木さんの指摘である。私たちはその発言の真意を虚心坦懐に受け止める必要がある。

村木さんが有識者委員として関与した改正刑訴法の一部がまもなく施行される。施行3年後の見直しに向けた弁護士会の取り組みが有識者委員の期待を裏切るものであってはならない。

(A・K)

 

日本司法支援センター
スタッフ弁護士全国経験交流会
9月9日 弁護士会館

法テラス設立から10周年を迎えた現在、スタッフ弁護士の数は200人を超えている。全国のスタッフ弁護士が一堂に会し、各地における活動について報告等を行い、経験を共有した。

 

法テラス東京法律事務所からは、福祉・医療関係の職員に対して電話情報提供サービス(ホットライン)を行っていることが報告された。このホットラインには、「押し入れから大量の干し椎茸が出てきたのですが…」といった消費者被害に関する相談や後見制度の利用を検討する必要がある相談が寄せられ、自治体との連携のきっかけになっている。

法テラス滋賀法律事務所からは、厚生労働省の補助事業である障がい者の芸術活動支援モデル事業に関与していることが報告された。スタッフ弁護士は、年3回の会議に参加するとともに、障がい者の作品の権利保護(所有権、著作権等)に関して講演するなどの活動を行っている。

法テラス香川法律事務所からは、刑事系司法ソーシャルワークの活動が報告された。具体的な活動の一つに、高松刑務所における仮釈放予定者に対する法テラスについての講話がある。仮釈放予定者に対し、気軽に相談できる場所があることを示すことで、再犯防止につなげることを目的としている。

法テラス福岡法律事務所からは、刑事施設被収容者の司法アクセスを改善するための取り組みが報告された。被収容者が訴訟を提起された際、刑事施設が出廷を許可しない場合もあり、被収容者の裁判を受ける権利が侵害されているとの問題提起がなされた。

さらに、スタッフ弁護士経験者が退任後の活動を紹介した。中澤康介会員(第二東京)は、スタッフ弁護士時代に行政や福祉と連携して仕事をした経験が高齢者にかかわる事件を扱う場合等に強みになっていると話し、スタッフ弁護士として誇りをもって業務に当たってほしいと参加者へのエールを送った。

 

裁判員裁判法廷技術研修
8月8日〜10日 弁護士会館

弁護術は奥義ではない。それは技術である。そして、その技術は習得できるのである。(キース・エヴァンス)

刑事裁判の法廷技術を習得する3日間の研修を今夏、東京で開催した。全国各地から参加した受講生は56人。受講生は、模擬記録を題材に、冒頭陳述、主尋問、反対尋問、最終弁論の実演を3日間繰り返した。

受講生は、実演ごとにその場で日弁連の講師から技術に関する講評を受け、さらに別室で録画された自分の実演を見せられる。大抵の場合、画面に映る自分の姿を見て衝撃を受ける。研修のコンセプトは「まずは実際にやってみる」、そして失敗を重ねて学ぶ。それを3日間繰り返す。

講師も気が抜けない。講師は、各受講生に対する講評の際に自ら技術の「処方せん」をやって見せる必要がある。講師も常に試される。

最終日には、検察官側と弁護人側に分かれて複数の証人を尋問する実践的な交互尋問のセッションもあった。研修後の受講生アンケートでは、3日間に実施した全セッションの平均評価が4.9(5段階評価)。交互尋問のセッションは、受講生全員が「5」の満点を付けた。役に立つ研修であることは間違いない。アンケートに記載された受講生のコメントを紹介する。「実演での失敗を通して学べるので、本当に心に残り、身に付く研修となった」「講師のレベルの高さに感動した」「本当に来て良かったです。『法廷弁護技術』を読み直し、復習します」。刑事裁判の法廷に立つ弁護士は絶対に受けるべき研修である。

次回の法廷技術研修は、12月1日から3日まで、北海道札幌市で行う。

(日弁連刑事弁護センター 幹事 遠藤直也)

 

裁判員裁判法廷技術研修(札幌)申込受付中!

日程:2016年12月1日(木)〜3日(土)【10月31日(月)締切】
場所:札幌弁護士会館
対象:会員のみ(定員32人/事前申込必須)※傍聴参加可
費用:無料(8GB以上のSDHCカードを持参)

*詳細は会員専用ページをご覧ください。

お問い合わせ先:日弁連法制部法制第二課(TEL:03-3580-9876)

 

日弁連短信
平成28年熊本地震を受けて
災害対策本部の設置と支援活動

事務次長 近藤健太

本年4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方を震央とする地震が発生しました。これは「前震」とされ、4月16日には「本震」が発生しています。

前震発災時の報道を受け、日弁連はその日のうちに「熊本地震災害対策本部」を設置しました。翌15日には第1回災害対策本部会議を開催し、緊急会長談話を公表しました。

4月21日には、担当副会長らが熊本を訪問するとともに、熊本県弁護士会会員を対象とした災害時の初動対応・法律相談等に関する勉強会を実施しました。

その後、5月2日には中本会長も出井直樹事務総長らとともに熊本に視察に赴き、蒲島郁夫熊本県知事や大西一史熊本市長と面談しました。

 

法律相談

熊本県弁護士会では、4月25日から電話による無料法律相談を開始し、5月3日からは東京三弁護士会に、さらに5月13日からは大阪弁護士会、福岡県弁護士会にも電話を転送し、土日祝日の相談も開始し(現在は熊本県弁護士会のみ平日1回線)、累計相談件数は9月初旬に6000件を超えました。日弁連は既にホームページ上(HOME≫日弁連の活動≫人権擁護活動≫震災復興支援―原発事故≫平成28年熊本地震の支援活動)で第一次分析結果(下図参照)を公表していますが、今後も多角的な分析を進めていきます。

 

日弁連の提言

4月18日、日弁連は、訴訟手続の遂行に関する要望書を最高裁に提出するとともに、「総合法律支援法の一部を改正する法律案の早期成立と、熊本地震への適用を求める緊急声明」を公表し、5月9日には「平成28年熊本地震に関し義援金差押禁止措置等を求める緊急会長声明」を公表しました。その後、これらは実務の運用改善や立法へとつながっています。

また、5月20日には「生活保護世帯が受給する義援金の収入認定に関する緊急会長声明」「平成28年熊本地震における震災関連死の審査に関する会長声明」を相次いで公表しました。

 

自然災害債務整理ガイドライン

本年4月1日から、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の運用が開始されました。これは、被災者が、破産や民事再生などの法的手続によらず自由財産を残したまま住宅ローン等の全部または一部の減免を受けることができる制度であり、実効性のある活用が期待されています。

災害はいつどこで発生するか分かりません。今後も日弁連は災害の発生に備え、必要な活動を推進していきます。

(事務次長 近藤健太)

 

【熊本地震無料法律相談・相談類型別の割合(第1次分析結果より)】

【熊本地震無料法律相談・相談類型別の割合(第1次分析結果より)】

 

第6回
法科大学院担当委員会連絡協議会
9月3日 弁護士会館

日弁連では2011年から、法科大学院の支援のため、各弁護士会の活動や法科大学院との連携等について、情報を共有し意見交換等を行う、法科大学院担当委員会連絡協議会を開催している。
第6回目となる今回は、テーマを法曹志望者増加に絞り、各地の取り組み等を報告した。

 

協議会の様子。各地の取り組み等について報告がなされた。

日弁連の活動報告

法科大学院センターの内村涼子幹事(東京)は、本年9月に日弁連のホームページをリニューアルし、弁護士を目指す学生向けのページ「弁護士になろう!」を開設したことなどを紹介した。

 

各地の取り組み

静岡県における取り組みとして、弁護士会有志が高校生に対して、法曹の仕事の内容や魅力を紹介するガイダンスを行ったことが報告された。

また、大阪弁護士会の取り組みとして、2015年度から、法曹養成・法科大学院協力センターに志望者拡大部会を設置したことが報告された。同部会のメンバーが関西の9大学の法律相談部を訪問し、学生に直接法曹の魅力を伝える活動を実施したことが紹介された。

 

法科大学院協会から

北居功教授(慶應義塾大学法科大学院)が、法科大学院協会が主催している全国キャラバン「ロースクールへ行こう!2016☆列島縦断☆ロースクール説明会&懇談会」の実施状況について報告した。キャラバンでは、法科大学院の授業の紹介や法科大学院出身の法曹と参加者との懇談会などが行われている。既に東京・名古屋で開催され、今後も本年10月19日に北海道大学、同29日に神戸大学梅田インテリジェントラボラトリなど、全国各地で実施される予定である。

 

今後に向けて

最後に、宇加治恭子副委員長(福岡県)は、法曹界の発展のためには、有為な人材を確保し、養成していくことが不可欠であり、各地の状況に応じた施策を工夫して実施してほしい、と述べた。

 

第7回 環境法に関する法科大学院サマースクール
上智大学四谷キャンパス 9月10日/11日

  • 【9/10~9/11開催】第7回環境法に関するサマースクール

日弁連は、2010年から「環境法に関する法科大学院サマースクール」を開催し、環境法に関する知識・経験の共有を図っている。
今夏は上智大学法科大学院と共催で、法科大学院生、弁護士、研究者、自治体や企業の環境部門担当者などを対象として、環境法の分野で著名な学者・弁護士を講師として、「公共事業と環境」「日本の環境判例と国際法」を含む8つのプログラムを実施した。
本稿では、名古屋新幹線騒音公害事件を取り上げたプログラムについて紹介する

 

高木輝雄会員(愛知県/講師)はまず、名古屋新幹線騒音公害事件の訴訟経過を詳説した。

この訴訟は、沿線住民が国鉄に対し、騒音・振動の差し止めと慰謝料を求めて提訴したものであるが、名古屋地裁に専門部が立ち上げられ、複数回の現場検証、学者・新幹線運転手の証人尋問など、丁寧な審理が行われた。それにとどまらず、被害者が、各方面に対して熱心に訴えたことにより、国をも真剣な議論に巻き込み、行政基準の設置にもつなげることができた。

訴訟は、最終的に、和解協定書の締結によって決着したが、それから30年が経った今もなお、沿線住民は、和解条項に従い、JR東海とさらなる環境改善に向けた定期協議を続けている。

また、公害問題解決のためには、住民が、加害者のみならず国や自治体に対しても要請を積み重ねること、そして引き続き状況を注視していくことが重要だと指摘した。

さらに、高木会員は、本年9月23日に第1回期日を迎えたばかりのリニア新幹線工事認可処分取消請求訴訟について報告し、「四大公害訴訟以来、被害住民の熱意ある取り組みが国や企業に公害・環境対策を進めさせてきたが、今なお、多くの公害・環境問題がある。これらに対する住民の問題提起を、法曹としてしっかり受け止めたい」と熱く語った。

 

改正刑訴法全国一斉
基礎研修を各地で実施中

本年6月3日に刑事訴訟法等の一部を改正する法律が公布された。
本改正による実務への影響は大きく、日々の刑事弁護に当たり改正内容を押さえることは不可欠である。そこで、9月7日の沖縄を皮切りに、本年9月から11月にかけて52のすべての弁護士会において基礎研修の実施が予定されている(日程などの詳細は所属弁護士会にご確認ください)。

 

研修の実施に当たっては、日弁連刑事弁護センターの改正刑訴法PTにおいて、全国共通のテキストを作成した。テキストには、改正の概要と実務のポイントを網羅的にまとめた上、参考資料・書式集を添付している。また、研修担当講師向けの特別研修も行い、講師の養成にも取り組んできた。

研修はおおむね3時間枠で、3部構成となっている。第1部では公布後6か月以内に施行される制度を中心とした改正刑訴法の概要について、第2部では公判前整理手続請求権と証拠一覧表交付制度の利用について、第3部では公布後3年以内に施行される取調べの全過程の録音・録画制度に関し、施行までの間の可視化を見据えた弁護実践について、それぞれ解説する。

改正刑訴法には、①裁量保釈判断に当たっての考慮事情の明文化、②証拠開示制度の拡充、③弁護人による援助の充実化(弁護人の選任に係る事項の教示義務・被疑者国選弁護制度の拡大)、④取調べの全過程の録音・録画制度など、弁護人が被疑者・被告人の防御権の充実のために活用し得る制度が多数盛り込まれた。一方、協議・合意制度、刑事免責制度など、弁護人が留意すべき制度も導入された。

協議・合意制度、刑事免責制度については、公布後2年以内の施行とされており、施行時期が近づいた段階で、あらためて研修の実施を各弁護士会に依頼する予定である。

(副会長 山口健一)

 

2016年度
子どもの権利委員会夏季合宿
消費者の視点から
8月23日/24日 弁護士会館

子どもの権利委員会
2016年度第2回全体委員会

子どもの権利委員会(以下「委員会」)は、委員・幹事以外の会員等にも参加を募り、2日間にわたる夏季合宿を開催した。その冒頭のプログラムとして全体委員会を開催した。

 

全体委員会では、子どもの権利に関わる諸問題について、状況報告や今後の対応方針等の審議を行った。

審議事項のうち「少年法をめぐる諸問題」では、主に少年法の成人年齢引き下げの問題が議論された。法務省に設置された「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」(*)において日弁連が少年法の成人年齢引き下げに反対の意見を述べたことが報告されるとともに、この問題に関して開催が予定されている全国各地のシンポジウム等が紹介された。

また、「子どもの福祉に関する検討」の審議では、厚生労働省に本年7月「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」(*)が設置されたこと、さらに、「いじめ問題への対応」の審議では、「いじめ防止対策推進法」が施行後3年目を迎え、文部科学省に設置された「いじめ防止対策協議会」(*)において、いじめ防止対策の見直し作業が急ピッチで進むこと等が報告され、積極的に対応していくことが確認された。

そのほか「全面的な国選付添人制度に向けて」「子どもの手続代理人」「子どもに対する法律援助事業」など、多数の幅広い審議事項に関して活発な議論が繰り広げられた。

*勉強会等の議論状況は、それぞれ法務省・文部科学省・厚生労働省のホームページからご覧いただけます。

 

夏季合宿第4企画
子どもの手続代理人制度の現状と課題

子どもの手続代理人は、手続主体たる子どもの意思表明を行いやすくするという点でも、家庭裁判所の子どもの意思を把握する精度を向上させるという点でも存在意義があり、幅広い活用が期待される。
しかし、具体的な活用場面が十分に知られておらず、活用が進まない原因にもなっている。そこで、本年度の夏季合宿では、手続代理人を務めた会員が事例報告を行い、経験を共有した。

 

手続代理人による事例報告
~子の監護者指定等調停事件に長男・長女が利害関係参加するに当たり、代理人選任された事案~

子どもの意見を裁判所に報告するため、子どもとの面談調査を行った。面談の結果、子どもの意思決定に監護親が影響を与えていることがうかがわれたため、裁判所に対し、子どもの意見に加え、代理人の意見も報告すべきか悩んだが、子どもの代理人という立場に鑑み、子どもの意見のみを報告した。

 

~子が離婚調停期日への直接参加・意見表明を行うに当たり、代理人選任された事案~

子どもの思いを両親に伝えるための意見書作成をサポートし、子どもと代理人の連名で意見書を提出した。子どもの意見を一定程度調停条項に反映させることができたほか、子ども自身が、両親の離婚について自分の気持ちを整理でき、さらには、母子関係を改善させる契機にもなった。

 

~親権者変更調停事件・同審判事件において、私選代理人を務めた事案(日弁連法律援助事業「子どもに対する法律援助」利用)~

子どもの生活安定に向け、進学準備や保険証の確保など、さまざまな調整活動を行った。

子どもの利益を最優先に考慮し、親身に相談にのることで、両親への信頼をなくした子どもの支えとなった。

 

今後の課題
~手続代理人報酬の公費化を目指して~

子ども代理人制度に関する検討チームの池田清貴座長(東京)は、家事事件手続法では、代理人報酬の支払義務は、国選代理人であっても、原則として子どもに課されており、代理人活用を妨げる一因となっていることを説明した。その上で、代理人選任事例を増やすことで、その有用性への認識を広げ、国費化につなげていこうと呼び掛けた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.115

中小企業海外展開支援弁護士紹介制度にご注目ください!

日弁連は中小企業の海外展開(外国貿易・海外進出等)を支援するため、2012年5月から中小企業海外展開支援弁護士紹介制度(以下「本制度」)を運営しています。本制度は、当初5都府県に限られていた対象地域を徐々に拡大し、今年から、11の地域(すべての高裁所在地と神奈川県・京都府・新潟県)を対象とする正規事業となりました。
中小企業の海外展開業務の法的支援に関するワーキンググループの武藤佳昭座長(東京)から、本制度の内容・利用状況・課題などについてお話を伺いました。

(広報室嘱託 佐内俊之)

 

世界を目指す中小企業とともに

武藤佳昭座長

制度の具体的内容

本制度は、連携団体(日本貿易振興機構《ジェトロ》、東京商工会議所、日本政策金融公庫および国際協力銀行)などから紹介を受けた中小企業の申し込みに応じて支援弁護士を紹介し、これらの中小企業が海外展開を目指すに当たり法律相談等の法的支援を行うものです。

渉外事業では国内事業以上に予防法務(契約書の作成・チェック、法的リスク軽減・トラブル防止等のアドバイス)や紛争の初期対応が重要です。そこで、本制度を通じて、中小企業の弁護士へのアクセスを確保し、その海外展開を適時・適切に支援することを目指しています。

支援弁護士としての登録には、原則として3年以上の国際的な企業法務・取引法務の経験が必要です。支援弁護士が担う業務の専門性に鑑み、本制度の信頼性維持のため比較的厳しい要件を定めています。

また、支援弁護士の報酬は、初回30分までの相談料を無料とし、その後は相談・執務等に要した時間30分ごとに1万円(税抜、10時間まで)と定額化しました。弁護士報酬の予測可能性を確保し、中小企業が気軽に弁護士に依頼できるようにしています。

 

利用状況

本制度の利用件数は累計193件に上っています(2016年8月末現在)。

利用した中小企業の所在地は別図のとおりです。都市部が多いものの、千葉県・兵庫県・岐阜県・静岡県など、まだ対象地域に含まれていない地域からも相当数の利用があり、全国各地で潜在的なニーズがうかがわれます。

相談内容は、契約書の作成・チェックが約66%を占め、海外展開前の計画査定等や現地でのトラブル等への助言がそれぞれ10~15%程度を占めています。

実際の利用事例でも、初めて輸出取引に臨む製造会社が海外の企業から契約書作成を求められ、わずか3時間余りの所要時間と6万円の弁護士報酬で英文契約書を準備することができたという例のように、取引規模を踏まえた相応の負担で海外展開に必要な法的サポートを受けられた事例が数多く見られます。

 

【相談企業所在地】

今後の課題~会員に対するバックアップ

現時点では、中小企業の海外進出の勢いに比べると、利用件数はそれほど伸びていないように見受けられます。中小企業のニーズを適切に拾い上げるためには、対象地域の拡大が必須です。会員へのバックアップを充実させ、全国各地で支援弁護士となる会員を増やしていく必要があると考えています。

現在のところ、相談が多い4か国(中国・タイ・インドネシア・ベトナム)について「eラーニング」を提供しています。数時間の視聴で、その国の法制度の概要や実務上の留意点を十分理解できるプログラムです。

また、2014年8月には「国別アドバイザー弁護士制度」を開始しました。特定国の駐在経験があり現地の法令等に精通する会員をアドバイザーとし、支援弁護士が特定国の知識を必要とするときに質問できる制度です(現在は中国・韓国・ベトナムなど7か国に対応)。

今後も、これらの研修プログラムや支援弁護士に対する援助をさらに充実させ、強力にバックアップしていく予定です。

 

会員へのメッセージ

中小企業の海外展開は想像以上に進んでいます。地方の小さな会社の経営者が、コツコツ学んだ英語を駆使して海外に打って出ようとしています。法律の専門家として、これらの中小企業に力を貸すこと、力を貸すべく努力することは弁護士の責務であるとも思います。

全国各地の中小企業が弁護士の支援を必要としています。世界を目指す中小企業を支援したい、そのための努力を惜しまないという意志があり、登録要件を満たされる会員は、ぜひ支援弁護士としての登録をご検討ください。所属の弁護士会が対象地域に含まれていなくとも、まずは弁護士会で何らかの活動を立ち上げるなど、中小企業に対する海外展開支援の普及に力を貸してください。

一方で、本制度や渉外業務に興味関心のない会員もいるかもしれません。そのような会員でも、本制度の意義、ひいては日弁連や弁護士会が組織として本制度を支える意義を理解し、温かく見守ってください。

 

日弁連委員会めぐり 88

裁判迅速化法問題対策委員会

今回の委員会めぐりは、公正・適正かつ充実した手続の下で迅速に裁判が行われることを目指して活動している裁判迅速化法問題対策委員会です。三浦邦俊委員長(福岡県)、正木みどり副委員長(大阪)、井上裕介事務局長(愛知県)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 渡邊寛一)

 

左から正木副委員長、三浦委員長、井上事務局長

主な活動内容は

最高裁は、2003年7月に公布・施行された「裁判の迅速化に関する法律」(以下「迅速化法」)に基づく検証のため、「裁判の迅速化に係る検証に関する検討会」を設置し、2年ごとに検証結果を公表しています(裁判の迅速化に係る検証報告書。以下「報告書」)。また、最高裁は当初から、迅速化法について「裁判の迅速化は、充実した手続を実施すること並びに制度及び体制の整備を図ることにより行われるものとした上、そのための施策等に関する国等の責務を明らかにする基盤整備法としての性格を有している」と位置付け、「長期化要因の妥当性等を継続的に検証するとともに、それを解消するために必要な施策について検討していく」としています。

当委員会は、検討会に参加する弁護士委員2人のバックアップおよび検討会の傍聴、検証の基礎資料となる全国各地の実情調査へのオブザーバー参加、最高裁との意見交換、報告書に対する日弁連意見書案の作成等を行っています。また、迅速化法第5条が日弁連の責務とする、国民による弁護士の利用を容易にするための態勢整備も活動目的の一つです。

 

これまでの活動と今後の活動予定は

第4回目までの報告書では統計データ等に基づき、主として司法固有の領域における裁判の長期化要因の分析報告がなされていました。第5回目では社会・経済的背景や国民の意識といった裁判手続外の社会的要因にまで視野を広げた検討がなされました。直近の第6回報告書(2015年7月公表)では、これまでの検証結果をフォローアップするため、民事・家事の分野について、全国の複数の裁判所および弁護士会への実情調査を行い、その分析を行っています。

迅速化法は、施行後10年経過時に、迅速化検証の必要性およびその在り方の再検討を求めていましたが、2014年1月、政府(法務省)に検討会が設置され、基盤整備を進めるという迅速化法の基本的枠組みの必要性・重要性が再確認され、最高裁の検討会による検証とその結果の公表は、今後も継続されるべきとされました。

当委員会では、これまでの報告書およびそれに対する日弁連の意見を活かし、今後は、裁判の充実・適正・迅速化と基盤整備に向け、実際に抜本的かつ具体的な措置が行われるよう、最高裁と協議し、日弁連の問題意識を反映させる働き掛けを続けていきたいと考えています。

 

会員へのメッセージをお願いします

報告書は最高裁ホームページに掲載されています。現在の裁判実務はこの報告書の問題意識にのっとって運用されているといえます。また、日弁連の意見書は日弁連ホームページで公表しています。ぜひこれらをご一読いただき、裁判業務への対応や委員会活動の参考にしてほしいと思います。

 

ブックセンターベストセラー
(2016年8月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 民事裁判の要領 ―裁判官の視点から― 門口正人 著  青林書院
2 弁護士職務便覧 ―平成28年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
3 国会便覧 平成28年8月新版 140版 シュハリ・イニシアティブ
4 交通関係訴訟の実務[裁判実務シリーズ9] 森冨義明・村主隆行 編著 商事法務
5 インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル 第2版 中澤佑一 著 中央経済社
6

金融商品取引法コンメンタール[第1巻]

定義・開示制度 第1条~第27条の35

神田秀樹・黒沼悦郎・松尾直彦 編著 商事法務
7 相続・遺言ガイドブック 第二東京弁護士会法律相談センター運営委員会 編著 LABO
別冊判例タイムズNo.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
9 弁護士・事務職員のための法律事務所の確定申告入門―会計処理から税務調査対応まで― 横田 寛 著 日本加除出版
10 簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集 森 公任・森元みのり 編著 新日本法規出版

 

編集後記

受験を控えた小学生の娘の勉強を見る機会がある。「敬語」「空間図形」「天体」「憲法」…次々と新しい知識を学び、身に付け、活用していく様子に感嘆する。

我が身を振り返ると、弁護士となり14年。慣れはしたものの、無難に仕事を進めることに意識が向かい、新しいチャレンジを避けるようになってしまっている。

今回の取材では、全国の中小企業のオーナーが海外展開にチャレンジしていること、弁護士がその力になれる仕組みが既にあることを知った。そして、渉外業務といえども、基本的な英語力と弁護士が通常備える法律の知識さえあれば誰でも実務能力を習得できると聞き、何だか明るく、視界が開けたような気分になった。

今後も、弁護士に求められていること、とりわけ一見困難でも努力次第でできることを積極的に紹介していきたい。また、自分自身も新たにチャレンジできることを探してみたい。(T・S)