日弁連新聞 第511号

報告
法曹養成制度改革連絡協議会

7月8日、法曹養成制度改革連絡協議会第4回会議が文部科学省で開催された。同会議には、法務省、文部科学省、最高裁判所、日弁連とともに法科大学院協会が出席した。

 

会議のテーマは、①法曹人口、②法科大学院、③司法試験、④司法修習の更なる充実、⑤司法修習生に対する経済的支援の在り方、⑥法曹志望者の確保であり、各テーマに関する資料の説明と意見交換が行われた。

①法曹人口に関しては、法務省から法曹三者の人口や事件数の推移などの資料が示され、②法科大学院については、文部科学省から法科大学院改革の取り組み状況等について報告された。

③司法試験については、法務省から予備試験受験者の属性に関するデータ等の提供があった。

④司法修習の更なる充実に関しては、最高裁から主に導入修習に関する分析が報告された。

また、⑤司法修習生に対する経済的支援の在り方については、本年3月に行われた経済状況調査の結果が法務省から報告され、日弁連からは給付型の経済的支援の必要性についての意見を述べた。

⑥法曹志望者の確保については、各機関が現在行っている取り組みを紹介した上で、必要に応じた情報共有と、連携に向けた意見交換を行う方向で議論がなされた。

次回(日程未定)は、活動領域の拡大がテーマになるものと思われる。

(司法調査室嘱託 高橋しず香)

 

*同協議会の議論状況および資料等は法務省および文部科学省のホームページでご覧いただけます。

 

法曹養成制度改革連絡協議会とは

「法曹養成制度改革の更なる推進について」(2015年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)の「第6 今後の検討について」を踏まえ、「法曹養成制度改革を速やかに、かつ、着実に推進し、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の充実を図るため」、法務省および文部科学省が「行うべき取組並びに関係機関・団体に期待される取組の進捗状況等を適時に把握するとともに、これらの取組を進めるに当たって必要な連絡協議を行うための体制」として設置された。

 

改正刑訴法
全国一斉基礎研修の開催

本年5月24日、刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立し、6月3日に公布された。取調べの録音・録画制度の法制化、証拠リストの交付等の証拠開示の拡大といった複数の重要な制度改正に加え、通信傍受の拡大、協議・合意制度の導入など、証拠収集手段の多様化も盛り込まれた。改正法は公布の20日経過後から3年以内に順次施行される。本改正による実務への影響は大きく、日々の刑事弁護に当たり改正内容を押さえておくことは不可欠である。そこで、日弁連は全弁護士会に対し、全国一斉の基礎研修の開催を要請した。研修の第一弾は、改正内容の概説とともに、取調べの可視化の弁護実践を中心に据える。奮っての参加をお願いしたい。

(副会長 山口健一)

 

改正刑訴法全国一斉基礎研修(第一弾)

時 期 2016年9月から10月までの間

場 所 各弁護士会

テーマ

1改正刑訴法の解説

2改正刑訴法を前提とした弁護実践

(1)取調べの可視化と弁護実践

(2)証拠開示の拡大と弁護実践

※施行日が公布から2年以内とされている協議・合意制度、刑事免責等については、施行時期が近づいた段階で第二弾として重点的に取り上げる予定です。

※詳細は所属弁護士会にお問い合わせください。

 

 

依頼者保護制度、全会的討議へ

弁護士による依頼者からの預り金横領等(以下「横領等」)は、弁護士に対する市民の信頼を著しく損ね、ひいては弁護士自治を根底から揺るがしかねない。

日弁連では、不祥事対策の取り組みの一つとして、依頼者保護給付金制度について検討を重ねてきた。その過程で、横領等の事前防止策の強化を合わせて検討すべきとの意見を受け、預り金口座の届け出の義務化および弁護士会調査の端緒となる事由の具体化等の預り金等の取扱いに関する規程(以下「預り金規程」)改正案を提案した。

依頼者保護給付金制度については、弁護士会の法的責任の有無とは関係なく、弁護士の横領等による被害者に見舞金的金員を裁量的に給付する場合の具体的な要件・手続に関する規程案を提案し、預り金規程改正案と合わせて本年7月理事会で意見交換をした。

日弁連は、総合的不祥事対策を重要課題と位置付け、預り金規程改正案および依頼者保護給付金規程案を全会的に検討すべく、両案について弁護士会および関連委員会に意見照会を行っている(回答期限本年10月14日)。

弁護士会等における活発な議論が期待される。

(依頼者保護制度に関する検討ワーキンググループ 座長 菰田 優)

 

児童相談所における「弁護士配置」への対応について

厚労省の自治体向け説明会

6月17日に厚生労働省において「全国児童福祉主管課長等会議」が開催され、児童相談所における弁護士配置についても概要の説明がなされた。

改正児童福祉法第12条第3項にある「弁護士の配置又はこれに準ずる措置」の具体的な内容については、8月4日に開催される「全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議」において、同省から一定の方向性が示される見込みである。日弁連ではその内容をできる限り把握し、弁護士会等を通じて情報共有するよう努めたい。

 

児童相談所における勤務に関するアンケート

全会員向けに本年6月20日付で依頼した同アンケート調査に対しては、560に上る回答が寄せられた。

集計の概要は7月の理事会で報告しており、さらに、寄せられた回答のうち弁護士会への提供に同意を得られているものに限り、7月22日付で各弁護士会に対して提供している。

また、その活用方法については、各弁護士会において、関連委員会と意見交換を行うなどして検討いただくよう依頼しており、今後、これらを踏まえ、対応を進める見込みである。

 

弁護士会における児童相談所・自治体との協議状況

多くの弁護士会において児童相談所および自治体と協議が進められ、その内容が日弁連に報告されている。引き続き、各弁護士会において、10月1日の施行に向け、児童相談所および自治体と連携を進めることが期待される。

(児童相談所における弁護士配置への対応に関する WG座長 小林元治)

 

ひまわり

弁護士という仕事は、世間にどう見られているのだろう。法曹志望者の減少が指摘される昨今、そんな議論によく出くわす。その際、取り沙汰されるのが、放映中のドラマの弁護士像だ。最近では、刑事や企業法務を扱う弁護士が視聴者を惹きつけた。邪道かもしれないが、弁護士の魅力が少しでも伝われば、と期待する。

とともに、最近ある知人の言葉にはっとさせられた。「弁護士は、テレビや映画で頻繁に取り上げられる『かっこいい』仕事。その弁護士が、『仕事の魅力を伝えたい』なんて、驚き」。

なるほど。確かに、世の中、数え切れない「仕事」があり、わが家の『13歳のハローワーク』にも、500以上の仕事が並ぶ。その中で、「弁護士」の説明ぶりは、他に見劣りしない。人気ランキングでも、先日チェックしたときには50位以内に入っていた。そう考えると、私たちも、あまりジタバタしなくてよいように思えてくる。

とはいえ、世間や「13歳」が認知、評価しているということと、将来を悩む20歳を超えた若者が、「目指そう」と思える仕事かということは、同じではない。そのギャップが深まってきたことが、私たちの直面する課題なのだろう。ギャップを生むものにどこまで迫れるか。そのことが問われているのかもしれない。

(A・M)

 

家庭規則制定諮問委員会
少年審判規則改正案の内容とその問題点

先の通常国会で成立した刑事訴訟法の一部改正を契機として、最高裁は、付添人の記録閲覧権を制限できる制度の導入等を内容とする少年審判規則(以下「規則」)改正について家庭規則制定諮問委員会に諮問し、7月6日、同委員会が開催された。

 

規則改正案の内容

現行規則第7条第2項では、付添人は家庭裁判所の許可を得ることなく記録を閲覧することができる。

改正案第7条では、裁判所は、保護事件の記録等に、「閲覧させることにより人の身体若しくは財産に害を加え若しくは人を畏怖させ若しくは困惑させる行為」等がなされるおそれがある事項が記載等されていると認めるときは、付添人が閲覧する際、少年等に知らせてはならないとの条件等を付し(第3項)、その措置だけでは、上記危害行為等を防止できないおそれがあると認めるときは、当該部分の閲覧を禁じることができる(第4項)。

ただし、付添人の審判準備等に支障が生ずるおそれがあるときは、これらの措置をとることはできない(第3・4項)。

また、裁判所は、弁護士付添人が、第3項の条件に違反等したときは、弁護士会等に処置請求することができるとされている(第7項)。

 

規則改正案の問題点

改正刑訴法の規定と比べると、保護対象の人的範囲や情報の内容に限定がなく、しかも「人の名誉若しくは社会生活の平穏を著しく害する行為がなされるおそれがある」場合も制限が可能であるなど、要件が広範かつ曖昧である。最高裁は、少年審判手続では、刑事訴訟と違い、全記録が家裁に送致され閲覧対象となるため、このような制限が必要であると説明するが、不当な制限がなされる危険性は否定しえない。

諮問委員会では、弁護士委員・幹事が問題点を指摘し反対意見を述べたが、他の委員・幹事からは改正案について異論は出なかった。

今後、最高裁裁判官会議を経て制定され、本年12月までに施行の見込みである。

最高裁は、弁護士委員等の指摘はできる限り運用で対処できるよう、同指摘も踏まえた改正規則運用の解説を作成して裁判所内に周知徹底する旨、さらに施行後の運用状況について日弁連等から継続的に評価を伺いたい旨表明しており、日弁連としても改正規則の運用を注視・検証していく必要がある。

 

(子どもの権利委員会委員長 須納瀬学)

 

*諮問委員会の議論状況および資料等は、最高裁ホームページでご覧いただけます。

 

日弁連短信
弁護士自治確保への課題 ~市民や社会の信頼を維持するために~

事務次長 吉岡 毅

弁護士がその使命である人権擁護と社会正義を実現するためには、いかなる権力にも屈することなく自由独立でなければならない、ということから、「弁護士自治」が認められている。しかし、これは当然に認められるものではなく、市民や社会の信頼により支えられていることは言うまでもない。

ところが、近時、弁護士自治の基盤が掘り崩されかねない事態に直面している。

一つは、弁護士による預り金等の着服、特に、成年後見人として管理している本人の財産の横領等が依然として報告されており、弁護士全体に対する社会的な信頼が揺さぶられかねない。日弁連としては、これらの不祥事への対応策として、預り金口座の所属弁護士会への届け出の義務化等、預り金等の取り扱いに関する規律を一歩進めて不正の発生・拡大の防止を図るとともに、これらの不祥事により損害が生じた場合に被害者に見舞金を支給する制度の導入を目指しており、理事会や弁護士会において検討いただいているところである。

もう一つは、弁護士保険の加入者からの依頼に応じて日弁連・弁護士会が紹介した弁護士について、依頼者から、意向に反する事件処理等の苦情が少なからず寄せられていることである。苦情内容のすべてが真実か否かは確認していないが、これをこのまま放置すると、弁護士紹介制度のみならず、弁護士そのものに対する信頼を損ないかねない。そこで、日弁連では、紹介される弁護士の候補者について基準を設け、一定の質を維持するべく、弁護士紹介のためのモデル規則案を策定し、弁護士会においてこれに準拠した規則を制定していただくようお願いしている。

もちろん、これらの施策は会員や弁護士会にご負担をおかけするものであり、さまざまな意見があることも承知している。しかしながら、一般市民や依頼者の立場から見たとき、不祥事がなくならないにもかかわらず弁護士側が新たな対策を講じない、あるいは、弁護士保険により紹介された弁護士について深刻な苦情が出ているのに依然として同じ弁護士が紹介されている、とすれば、弁護士や弁護士会の自浄能力が疑われ、ひいては、一般市民や社会の信頼が失われるおそれもある。

以上の状況を踏まえ、これらの施策については導入のために前向きにご検討いただきたい。

(事務次長 吉岡 毅)

 

第6回
7月8日/9日 東京
日韓バーリーダーズ会議

本年度の日韓バーリーダーズ会議が東京で開催された。同会議は、1987年から毎年行われてきた両国弁護士会間の交流会を前身とし、日韓のバーリーダーズが一堂に会する会議となって今年で6回目となる。日弁連および大韓弁護士協会の執行部や日韓の各弁護士会連合会の代表等が参加し、合わせて総勢約100人による会議・交流が行われた。

 

セッションの様子

初日は韓国側一行を法テラス本部に案内した。一行は、理事長、事務局長および各事業部長から、業務内容について説明を受けた。

2日目の午前は、日韓双方の会務報告およびこれを踏まえた意見交換を行った。法曹養成制度や民事司法の在り方など、共通の課題について活発に意見が交わされた。

午後は、「刑事弁護における諸問題」および「高齢社会における弁護士の役割」について、双方から報告を行い、質疑応答を行った。

刑事弁護についてのセッションでは、日本側は、司法取引・刑事免責制度、人質司法、被疑者刑事弁護と法テラスの3つのテーマについて報告し、韓国側からは、検察官評価制度、被疑者尋問における弁護人立会権の活性化、取調べのビデオ録画、大韓弁護士協会が立法化を提案している司法支援法案等について報告があった。

日本側からは、韓国で先行している取調べの可視化や弁護人立会権について高い関心が示され、韓国側からは、日本が先行している法テラスの役割について活発な質問が寄せられた。

高齢社会についてのセッションでは、日本側は、高齢者の司法アクセス障害の改善のための日弁連の取り組みや、地域包括支援センターとの連携を中心とした福祉関係機関とのネットワークの構築について報告した。韓国側からは、成年後見制度の導入の経緯と、成年後見制度の活用度が低い理由、とりわけ専門家後見人の選任比率が低い理由等について報告があった。高齢者の問題は家族内部の問題という意識が残っている点や、急速な高齢化が進行している点など両国に共通点は多く、熱心な質疑応答が行われた。

(国際室嘱託 金 昌浩)

 

若者シンポジウム
ワタシの未来・ボクの憲法
あなたはどんな未来を描きますか
6月18日 イイノホール

  • シンポジウム「ワタシの未来・ボクの憲法 ~あなたはどんな未来を描きますか~」

選挙権年齢が18歳に引き下げられ、未来を担う若者たちに選挙権が広がった。国民主権の担い手である若者たちとともに、69年前の制定時に憲法が描いていた未来や憲法の基本理念を学び、将来、どのような未来を選択していきたいのかを議論するためシンポジウムを開催した。

 

まず、石川健治教授(東京大学法学部)が、憲法の基本理念と自民党の憲法改正草案(以下「改正草案」)について講演を行った。

憲法の基本理念については、前文等にある「信託」の理念を説明し、信託者(過去の国民)からの信託により、受託者(現在の国民)は受益者(将来の国民)に対して重い責任を負うと指摘した。そして、第97条についても、過去の国民が現在の国民に基本的人権を託しており、現在の国民は将来の国民にこれを受け渡していく責務を負っていると述べた。その上で改正草案第9条、第12条、第13条などの問題点を概説し、特に現行の「個人」を「人」に置き換えて「全て国民は、人として尊重される」とした第13条について、「個」としての人間を尊重しようとする現行憲法の精神を失わせるものだと批判した。

続いて、高校生・大学院生などの若者やその親世代をパネリストに迎え、ジャーナリストの堀潤氏をコーディネーターとして憲法改正に関するパネルディスカッションを行った。大学院生からは、現行の「公共の福祉」に代わる改正草案第13条の「公益及び公の秩序」という文言について、「個人より公益が優先される、全体のことが先に立つイメージがある」との指摘がなされた。また、高校生からは、第9条の「永久にこれを放棄する」という文言は過去の戦争体験に基づく「素敵な言葉」であり、今後も維持されるべきとの発言があった。

最後に、石川教授が、憲法改正の議論は緊急事態条項、環境権などの条項から始められる可能性があり、その議論の際には他の改正への第一歩であることを意識する必要があるとコメントした。

 

全国冤罪事件弁護団連絡協議会第25回交流会
鑑定資料の保存の法制化、鑑定資料にアクセスする権利について
鹿児島の強姦事件(2016年1月福岡高裁宮崎支部で無罪)を素材として
6月22日 弁護士会館

  • 全国冤罪事件弁護団連絡協議会第25回交流会「鑑定資料の保存の法制化、鑑定資料にアクセスする権利について―鹿児島の強姦事件(2016年1月福岡高裁宮崎支部で無罪)を素材として」

本年1月、福岡高裁宮崎支部にて、第一審の有罪判決を覆す無罪判決が出た。この事件の証拠には、被害者の膣から検出された精液を鑑定不能とする科学捜査研究所の鑑定結果があった。しかし、第二審において再鑑定が実施され、逆転無罪を勝ち得た。 一般に信用性が高いとされる科学的証拠も、捜査機関に恣意的な取り扱いをされれば、冤罪を生む道具になる。この問題について刑事弁護人としての知見を深めるべく、本事件を素材として交流会を開催した。

 

報告を行う押田茂實名誉教授

はじめに、事件の弁護団が活動報告を行った。

伊藤俊介主任弁護人(鹿児島県)は、起訴前、連日の取り調べに疲弊する被疑者を毎日接見に通って励まし続けたことや、第一審判決は被害者供述に全面的に依存していたところ、当該供述の信用性には疑問があったことなどを報告した。

西田隆二弁護人(宮崎県)は、科学捜査研究所の鑑定結果に疑問を持ち、DNA型鑑定の専門家から再鑑定を実施すべきとする意見書を出してもらったこと、これが裁判の潮目を変えて押田茂實名誉教授(日本大学/鑑定科学技術センター顧問)による再鑑定が実施され、膣内の精液は被告人とは別人のものだとする鑑定結果が得られたこと、さらに、捜査機関が鑑定時の残余資料や鑑定経過を記したメモを廃棄していたことを報告した。

野平康博弁護人(鹿児島県)は、被害者供述には体験性のある供述と体験性がない供述が混在していたことを供述心理分析の観点から報告した。

続いて、押田名誉教授が研究者の立場から報告を行った。押田名誉教授は、足利事件や東電OL事件など多くの事件で再鑑定にかかわった経験を踏まえ、捜査機関側の鑑定人のDNA型鑑定に関する技量が不十分であることや、後日の再鑑定に備える資料・記録の保存がなされていない不備を指摘した。

さらに、刑事法の研究者である徳永光教授(獨協大学)も登壇し、被告人の防御のために鑑定の機会の確保が必要であり、その前提として鑑定資料の保存が必要であると述べた。

 

シンポジウム
民法の成年年齢引下げを考える
消費者の視点から
6月25日 弁護士会館

  • シンポジウム「民法の成年年齢引下げを考える~消費者の視点から~」

選挙年齢が引き下げられた今、民法の成年年齢引下げの問題があらためてクローズアップされている。しかし、成年年齢の引下げは、未成年者取消権喪失年齢の引下げをはじめ、多くの課題を含んでおり、慎重な議論が必要である。問題点を整理し、国民的議論の喚起に資するべく、シンポジウムを開催した。

 

冒頭、消費者問題対策委員会の中村新造副委員長(第二東京)が論点整理を行い、成年年齢引下げの必要性が希薄であることや、成年年齢が引き下げられた場合、18歳・19歳の未成年者取消権が喪失するほか、養育費支払終期が繰り上げられるおそれがあり、18歳・19歳に対する児童福祉支援が後退するおそれもあると指摘した。

細川幸一教授(日本女子大学)は、成年被後見人にも選挙権は付与されているのであって、成年年齢・行為能力の有無と選挙年齢とは別に考えなければならないと指摘した。また、リボ払いの利息額が計算できないなど、消費者として必要な能力を欠く若者もいると述べ、成年年齢の引下げに当たっては、私法上の行為能力を付与するにふさわしい判断能力があるかを正面から問うべきだと発言した。

大本久美子准教授(大阪教育大学)は、現在の制度では、高校卒業後成年に達するまでの約2年間が大学や社会で多様な経験ができる重要な準備期間であるところ、成年を18歳とすれば、その準備期間が失われる上、高校3年生の中に成年と未成年が混在し、教員が生徒を指導するに当たり、親権者を介することが難しくなるなど教育現場にも混乱が生じると指摘した。

吉松恵子氏(独立行政法人国民生活センター総括主任相談員)は、18歳・19歳から寄せられる相談と20歳~22歳のそれとを比較すると、20歳~22歳の相談は、被害件数も被害金額も18歳・19歳と比べて多く、未成年者取消権の存在が、悪徳業者に対する抑止力として若年層の被害防止に貢献していると報告した。また、成年年齢が18歳に引き下げられれば、被害のピークも18歳に繰り下げられることになると警鐘を鳴らした。

 

モデル条例案から考える
地域で進める子どもの貧困対策セミナー
7月4日 弁護士会館

  • モデル条例案から考える、地域で進める子どもの貧困対策セミナー

2014年に施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」は、自治体に対し、地域の状況に応じた子どもの貧困対策の実施を求めている。公益財団法人日弁連法務研究財団の子どもの貧困対策推進モデル条例研究班(以下「研究班」)が作成したモデル条例案を題材に、子どもの貧困対策における現状の課題を明らかにするとともに、その解決に向けた政策提案を条例案として作成する際のプロセスや留意点について、セミナーを開催した。セミナーには地方議会議員、自治体職員、市民、弁護士ら約160人が参加した(共催:日弁連法務研究財団)。

 

モデル条例案

研究班が作成したモデル条例案は、子どもの貧困対策について、制度のユーザーとしての子ども・住民側の視点に立った各種施策の提案を条文に結晶化したものである。

 

報告

前半の報告では、湯澤直美教授(立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科)が、子どもの貧困の実態調査に当たっては、貧困を発見しようとする積極的な視点が欠かせず、貧困対策の実施に当たっては制度のはざまで取り残される子どもが生じないような横断的・複合的な取り組みが求められると指摘した。

栗林知絵子氏(NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長)は、モデル条例案の作成に当たって、ひとり親の実態を調査した結果、早期関与の仕組みづくり、子どもの居場所の確保、住宅支援の拡充といった課題のほか、手当の支給間隔・就学援助の後払いが家計に与える悪影響などが浮き彫りになったことを報告した。

また、紅山綾香会員(東京/前貧困問題対策本部事務局次長)は、モデル条例案の作成を通じて自治体に具体的な施策を提案することで議論が深まり、子どもの貧困対策が一層進展することを期待していると述べた。

 

パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションでは、紅山会員に加え、開元敏郎氏(神奈川県政策局政策部政策法務課長)および三浦希美会員(第二東京)がパネリストとして参加した。テーマは①自治体における政策実現手段の紹介と条例という手段を選択する際の留意点、②弁護士が条例制定支援を行った実例、③モデル条例案の自治体における受け止め方、および④モデル条例案の活かし方・可能性の4点。

モデル条例案の提案者、法制執務を担う自治体職員、および条例制定支援を行った経験を持つ弁護士というそれぞれの立場から、活発な議論が交わされた。

 

国際機関キャリア情報セミナー
法曹も国際機関でキャリアアップしよう!
6月27日 弁護士会館

  • 国際機関キャリア情報セミナー「法曹も国際機関でキャリアアップしよう!」

日弁連は、弁護士の活躍の場を国際機関に拡げるために、セミナーの実施や人事情報の提供など、国際機関への就職支援に積極的に取り組んでいる。その一環として、外務省総合外交政策局国際機関人事センター長やジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度により国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所で働く弁護士出身者を講師として招き、セミナーを開催した(共催:外務省国際機関人事センター)。

 

まず、阿部智氏(外務省総合外交政策局国際機関人事センター長)が、国際機関職員に求められる資質、待遇、国際機関職員になるための具体的方法について説明した。若手日本人弁護士が国際機関職員になるための方法としては、日本政府が実施するJPO派遣制度が、他の採用制度に比べて倍率も低く、派遣先では日本大使館からのフォローもあり有益とのアドバイスがなされた。

次に、弁護士出身であり、JPO派遣制度により本年5月からUNHCR駐日事務所で働く谷直樹氏から、弁護士が国際機関職員になることの意義や弁護士業務を続けながらの効率的なTOEFL勉強法などが語られた。また、国際機関を目指したきっかけは、日弁連が毎年開催する「国際分野で活躍するための法律家キャリアセミナー」2011年版(※)への参加であることが紹介された。参加者に対しては、国際機関での勤務経験は、国内外の法律事務所、企業、研究機関をはじめ、さまざまなキャリアパスにつながるものであり、臆せず挑戦してほしいとのエールが送られた。

最後に尾崎さくら外務事務官(外務省国際法局国際法課)が、国際刑事裁判所(ICC)が今年初めてJPO協定を日本と締結した点を踏まえ、ICCの組織や邦人職員数(2016年3月現在10人、うち法曹3人)、採用方針・応募方法などを説明した。

参加者は「法律職以外の職種でも法的思考は必要とされている」等の説明に熱心に聞き入っていた。また、「国連職員になるためにはいつの段階で何をすればよいのか」「国連職員に国際公法の知識は必須なのか」など、活発な質疑応答がなされた。

(国際室嘱託 島村洋介)

 

*JPO派遣制度の詳細については、外務省国際機関人事センターのホームページをご覧ください。

(※)本年は9月2日、3日に弁護士会館で開催します。詳細は日弁連ホームページをご覧ください。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.114

児童相談所における弁護士業務

5月27日、児童福祉法(以下「児福法」)の一部改正法が可決・成立し、全国200か所以上の児童相談所において、「弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行う」(第12条第3項)ものとされました。この規定は本年10月1日から施行されます。 今回は、児童相談所と弁護士の連携が進んでいる地域にスポットを当て、名古屋市中央児童相談所の常勤弁護士である橋本佳子会員(愛知県)と、東京都児童相談センターの協力弁護士である磯谷文明会員(東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

常勤弁護士の例
名古屋市
橋本佳子会員

橋本佳子会員

着任の経緯は

公募での採用により、2015年4月、任期付公務員として着任しました。着任前は東京で都市型公設事務所に勤務していました。

 

現在の主な業務は

一時保護や立入調査を行う緊急介入班という部署に所属しており、児童相談所職員とともに臨場して、学校・病院などの関係機関や保護者に対応しています。

また、児童相談所所長は、児童の福祉のために保護者の意思に反して児童養護施設等へ児童を入所させる承認を求める申立てを行いますが(いわゆる児福法第28条事件)、この手続代行も主要業務の一つです。

 

もともと児童福祉関連の業務経験はあったのですか

家事・少年事件でのかかわりはありましたが、児童福祉に精通していたわけではありません。

 

不安はありませんでしたか

正直、不安はありました。しかし、名古屋市の児童相談所には、従前、愛知県弁護士会の子どもの権利委員会に所属する先生方を主体とする弁護団がかかわっておられ、その先生方から、丁寧な引き継ぎをしていただきました。着任当初の数か月は、児福法第28条審判の申立てなども一緒に対応していただきましたので、安心して業務に取り組むことができました。

地元の先生方には、今もさまざまな場面でご協力いただいています。

 

常勤弁護士がいることのメリットは

何よりスピード感が違うと思っています。

名古屋市の場合、通告を受けると、早ければ1時間以内には児童相談所の職員が現場に到着して一時保護するといった迅速な対応をしています。夜間や休日の対応も珍しくありません。そういうときに弁護士が臨場できるのは、常勤ならではのことです。

また、職員との距離が近いために、早い段階から適切な対処ができると思います。

 

非常勤弁護士の例
東京都
磯谷文明会員

磯谷文明会員

児童相談所へのかかわりについて教えてください

2001年、東京都児童相談所が協力弁護士制度を創設した際、協力弁護士に就任しました。その後、2004年に非常勤弁護士制度が創設され、立川児童相談所の非常勤弁護士になりました。その後、児童相談センター(新宿区)の非常勤弁護士を務め、現在は、同センターの協力弁護士を務めています。

 

非常勤弁護士と協力弁護士の違いは

協力弁護士制度は、当初、都内の11の児童相談所のうち、中核的な存在である児童相談センターに定期的に協力弁護士を派遣して、各児童相談所が弁護士に相談したい事案を持ち寄るという制度でした。

その後、それだけでは対応しきれなくなり、11の児童相談所すべてに非常勤弁護士が勤務する体制になりました。非常勤弁護士は、月2日、児童相談所に出勤して、所内会議に参加したり、職員から寄せられる相談に対応します。もちろん、児福法第28条事件なども担当します。

非常勤弁護士の運用開始当初は、協力弁護士制度は廃止する予定でした。しかし、多数の相談に対応するためには、非常勤弁護士だけでは足りないだろうということで、協力弁護士制度も存置されました。現在、協力弁護士は、各児童相談所に2~3人配置され、非常勤弁護士のサポートをしています。裁判案件の多い児童相談所では、協力弁護士も事件を担当しています。

 

非常勤弁護士を主体とすることのメリットは

業務を担える弁護士の層を厚くできることです。

当初、非常勤弁護士に就いたのは、私を含め、この分野のベテランばかりでしたが、若手弁護士を協力弁護士とし、非常勤弁護士と連携して活動してもらうようにしたことで、若手弁護士が育ち、やがて非常勤弁護士に就任するようになり、ベテランも協力弁護士となって非常勤弁護士を支えるようにしました。このようにすることで、現在、40人弱の弁護士が児童相談所にかかわるようになっています。

今後、配置日数を増やす必要が出てきても、複数の弁護士がかかわる配置体制を作ることはできます。次世代を見据えた対応が重要だと考えています。

 

第59回人権擁護大会・シンポジウム(於:福井市)にご参加を!

  • 第59回人権擁護大会・シンポジウムのご案内

10月6日・7日、福井市で第59回人権擁護大会・シンポジウムが開催されます。当日参加も可能ですので、ぜひご参加ください。

 

福井県立恐竜博物館の野外展示

シンポジウム
2016年10月6日(木)12時30分~18時(第3分科会のみ19時まで)

●第1分科会「立憲主義と民主主義を回復するために~安保関連法と秘密保護法の適用・運用に反対し、その廃止を求めて~」

フェニックス・プラザ 大ホール

 

●第2分科会「主権者教育における弁護士・弁護士会の役割~立憲民主主義を担う「市民」が育つために~」

フェニックス・プラザ 小ホールおよび同地下大会議室

 

●第3分科会「死刑廃止と拘禁刑の改革を考える~寛容と共生の社会をめざして~」

ホテルフジタ福井 3階「ザ・グランユアーズフクイ」

 

大会
2016年10月7日(金)10時~17時福井市体育館

 

ぜひ福井にお越しください ~福井弁護士会~

本年10月、福井市で第59回日弁連人権擁護大会が開催されます。シンポジウムのテーマは立憲主義の回復、主権者教育、死刑制度の廃止を含む刑罰制度の改革です。当会会員の大会に寄せる思いは多岐、多彩ですが、歴史ある全国大会ですから、開催される以上は大会を成功裡に終わらせるとともに、全国から参加される皆さまに福井大会に参加して良かったという感動をお持ち帰りいただくべく、全会員一丸となって準備に取り組んでいます。とはいえ、当会の会員は、近年とみに増加したといっても総勢100人余りですから、十分な人員体制とはいえません。その上、福井市(人口26万人)は人権擁護大会のような全国規模の大きな催しを行うには、施設等のインフラが十分ではなく、会場の点でも不自由、ご不便をおかけすることになります。誠に心苦しい限りですが、至らぬ点は会員一同の熱意に免じてお許しをお願いいたします。

さて、当会の特色は、近年の会員増加に伴って、委員会活動が非常に盛んなことです。若手の会員の多くがはつらつとして委員会活動に取り組んでおり、入会10年前後の会員が委員長に就任して委員会を率いる例も少なくありません。活動が活発になるに従い当会の会館(テナントビル)も手狭となり、賃借スペースも増加しています。人権擁護大会の成果を踏まえて、より大きな責務を果たす弁護士会に成長することが期待されます。

ところで福井県は、明治維新以来、県勢は相対的に低下し、人口も78万人に過ぎません。しかし「幸福度・暮らしやすさ日本一」に選ばれた好環境の地で、魚介類をはじめとする食べ物も美味しい所です。福井の見所としては、海辺の断崖の東尋坊、道元禅師の曹洞宗大本山永平寺、織田信長に滅ぼされた一乗谷朝倉氏遺跡が有名ですが、最近は、「恐竜王国福井」の根幹をなす福井県立恐竜博物館(勝山市)が展示品の充実度やスケールの大きさもあって大変な人気を博しており、お勧めです。

ぜひとも多くの方が福井の人権擁護大会に参加されることを、福井弁護士会一同心よりお待ちしております。

(人権擁護大会福井大会実行委員会委員長 野村直之)

 

ブックセンターベストセラー
(2016年5月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 若手法律家のための法律相談入門 中村 真 著 学陽書房
2 相続・遺言ガイドブック 第二東京弁護士会法律相談センター運営委員会 編著 LABO
3 2015年派遣法改正と実務対応 労働事件ハンドブック2016年追補 第二東京弁護士会労働問題検討委員会 編著 LABO
4 若手弁護士のための初動対応の実務 長瀨佑志 著 レクシスネクシス・ジャパン
5 別冊ジュリストNo.227 社会保障判例百選[第5版] 岩村正彦 編 有斐閣
平成27年改正 知的財産権法文集 平成28年4月1日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
7 労働法[第十一版] 法律学講座双書 菅野和夫 著 弘文堂
8 量刑調査報告集Ⅳ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
9 会社議事録の作り方[第2版]―株主総会・取締役会・監査役会・委員会― 新・会社法実務問題シリーズ 7 森・濱田松本法律事務所 編、松井秀樹 著 中央経済社
企業法務入門テキスト―ありのままの法務 経営法友会 企業法務入門テキスト編集委員会 編著 商事法務

 

編集後記

本紙発行の2か月後には、全国すべての児童相談所への弁護士配置またはこれに準ずる措置を要請する児童福祉法改正が施行されます。

今回、名古屋と東京の児童相談所での弁護士の関与について取材しましたが、常勤弁護士の配置、非常勤弁護士・協力弁護士が複数名で連携して対応に当たる体制の構築など、既に各地の児童相談所では、弁護士がさまざまな形で活動している実績があることが分かりました。

児童相談所の虐待対応件数は、年を追うごとに1万件単位で増え続けています。弁護士が質量ともに児童相談所の業務を支える担い手となり、子どもの権利擁護に資するためには、これまで有志の弁護士の間で蓄積されてきた経験や知恵が、全国各地の弁護士に一層共有されることが期待されます。((T・O))