日弁連新聞 第510号

第67回定期総会
「宣言・決議の件」など6議案を可決
5月27日 旭川市

旭川市で初めて開催された第67回定期総会では、2016年度の予算が議決されたほか、「東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者の基本的人権の回復への支援を継続し、脱原発を目指す宣言」および「安保法制に反対し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言」が採択された。
また、来年の第68回定期総会は東京都で開催することを決定した。

 

決算報告承認・予算議決

いずれの議案も賛成多数で可決された

2015年度の一般会計決算は、収入57億9598万円および前年度からの繰越金33億7247万円に対し、51億2550万円を支出し、次年度への繰越金は40億4295万円となった。
2016年度の一般会計予算は、事業活動収入53億3114万円に対し、事業活動支出57億3783万円、予備費1億円などを計上し、単年度では5億2269万円の赤字予算となっている。いずれも賛成多数で承認・可決された。

 

「東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者の基本的人権の回復への支援を継続し、脱原発を目指す宣言」を採択

①被災者の生活再建の支援の充実、②震災関連死の認定審査の公平かつ適正な実施、③東京電力への被害の実情に即した必要かつ十分な賠償の要求と国への良好な生活環境の確保および健康維持のための支援策実施の要求、④原子力事業者の無過失・無限責任の堅持、⑤脱原発を求めるもの。討論では、本宣言に賛成する意見が相次ぎ、採決の結果、賛成多数で可決された。

 

「安保法制に反対し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言」を採択

安保法制の適用・運用に反対し、その廃止・改正を求めることを通じて立憲主義および民主主義を回復するため市民とともに取り組む決意を示すもの。採決の結果、賛成多数で可決された。

 

特別報告(平成28年熊本地震対応)

岩渕健彦副会長から、日弁連の熊本地震対応について特別報告があった。会長声明の公表、熊本県知事・熊本市長との面談を含む被災地訪問、無料電話相談の実施などを報告し、今後も被災者および被災地弁護士会への協力を惜しまないと言及した。

 

刑事訴訟法等の一部を改正する法律の施行に向けて

先の通常国会で、取調べの可視化の義務付けを含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」)が成立し、一部施行された。今後、証拠開示制度の拡充、弁護人による援助の充実化等は本年12月までに、被疑者国選弁護制度の勾留全件への拡大、刑事免責を含む司法取引制度は2018年6月までに、裁判員裁判や検察独自捜査事件の取調べの全過程の録音・録画制度の実施、通信傍受の拡大は2019年6月までに実施される。

この間、改正法の成立に関しては、会内でもさまざまな意見があったが、日弁連は、刑事司法改革を一歩進めるものだと評価し、成立を求めた。

今後は、新しい法律の下で、被疑者・被告人のための刑事弁護をいかに実践するかが課題となる。一方では、その危険性も指摘されている通信傍受については、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されることを注視するとともに、司法取引については、その危険性に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないような弁護実践が必要となる。

特に取調べの全過程の録音・録画制度の導入に関しては、改正法を前提にした弁護活動が求められる。

具体的には、改正法施行前でも、多くの事件について可視化を実施するとの最高検の依命通知を前提にした可視化申し入れ、自白強要等への抗議、録画媒体の実質証拠化についての対応、公判前整理手続での対応等について、弁護実践を行うことが必要になる。

このため、日弁連では、刑事関係の委員会の協力を得てテキストを作成し、講師を派遣し、すべての弁護士会における研修を企画している。具体的な実施方法や時期については、決定次第周知していく。

(副会長 山口健一)

 

*詳細は日弁連ホームページ(HOME≫日弁連・弁護士について≫出版物のご案内≫パンフレット等≫パンフレット「刑事訴訟法等が改正されました」 )をご覧ください。

 

総合法律支援法の一部を改正する法律の施行に向けて
熊本地震被災者に対する法的支援については7月1日からの施行が決定

先の通常国会で成立した総合法律支援法の一部を改正する法律は本年6月3日に公布され、公布から2年以内に施行される。

本改正法では、大規模災害被災者(発災日に政令で定める地区に住所、居所、営業所又は事務所を有していた国民等)を対象に、生活の再建に当たり必要な法律相談を、発災から1年の範囲内で実施する規定が新設された。なお、本年4月に発生した平成28年熊本地震の被災者に対する法的支援を実施するため、大規模災害被災者支援については、他の部分に先行して本年7月1日に施行された。

また、本改正法のうち、認知機能が不十分であるために自己の権利の実現が妨げられているおそれがある者(特定援助対象者)の法的支援の充実、ならびにストーカー、DVおよび児童虐待を現に受けている疑いがあると認められる者(特定侵害行為の被害者)の法律相談制度の在り方については、①特定援助対象者や特定侵害行為の被害者に対する法律相談援助について、対象者の該当性判断や費用負担を求める基準、負担額を定めるに当たって、利用者が躊躇することのないようにする、②特定援助対象者の代理援助の対象となる行政不服申立手続の範囲について柔軟に解釈するとともに、行政機関への申請行為にも拡大する、③被害者等の行政機関との交渉等の場面における弁護士費用の援助や未成年者である犯罪被害者への費用償還を要しない援助の必要性について引き続き検討する、などとする附帯決議が衆議院および参議院の各法務委員会において可決されている。

日弁連としても、充実した援助がなされるよう、運用実施に当たっては、附帯決議の趣旨も踏まえて検討するよう関係機関と協議するとともに、弁護士会や関連委員会と連携して態勢整備を進めていく予定である。

(日本司法支援センター対応室長 高橋太郎)

  

児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に向けて
児童相談所における「弁護士配置」への対応

本年5月27日に児童福祉法が改正され、「都道府県(注:児童相談所を設置する市等を含む)は、児童相談所が前項に規定する業務のうち法律に関する専門的な知識経験を必要とするものを適切かつ円滑に行うことの重要性に鑑み、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする」との規定が設けられた(第12条第3項)。この規定は本年10月1日から施行される。

前記改正を受けて、本年6月9日付で、日弁連から弁護士会に対し、早急に対応いただきたいこととして、これまでの児童相談所と弁護士との連携状況の把握や、児童相談所および自治体との協議の実施、日弁連への状況報告、アンケートの回答協力等について依頼をし、その旨6月の理事会においても要請を行った。

弁護士会におかれては、引き続き児童相談所および自治体との間で積極的に協議を実施していただくよう重ねてお願いしたい。

今後、「弁護士の配置又はこれに準ずる措置」の具体的内容については、厚生労働省の施行通知等によって明らかになる見込みであり、日弁連として情報を把握した際には、弁護士会に対して情報提供を行っていきたい。

また、全会員向けに本年6月20日付で依頼した「児童相談所における勤務に関するアンケート」に対する回答は、弁護士配置の効果的実現のために活用させていただくことを検討している。

(児童相談所における弁護士配置への対応に関するWG座長 小林元治)

 

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会における議論状況

本年5月25日、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会第6回会議が開催され、実父から性虐待を受けた被害当事者、児童相談所等で勤務経験のある専門家、加害者臨床研究を行っている研究者の3人からヒアリングが行われた。

また、6月16日には第7回会議が開催された。事務当局から諮問案別紙要綱(骨子)修正案が示され、その修正部分および修正後の要綱(骨子)全体について審議が行われた。

修正部分は、要綱(骨子)第一および第三の表現ぶりの修正と第四の強姦の罪等の非親告罪化に関する時間的な適用範囲についての追記である。委員・幹事からはさまざまな意見が述べられたが、全体としては修正後の要綱(骨子)に賛成する発言が大勢を占めた。

審議終了後は、修正後の要綱(骨子)を同部会の取りまとめとすることについて採決が行われ、賛成多数で可決された。今後は法制審議会の総会においてこの取りまとめが報告され、承認されれば法務大臣に答申されることとなる。

上記取りまとめに対し、日弁連では現在、理事会で意見書案を審議している。意見書案は、新たに強姦罪の対象とされる肛門性交および口腔性交について法定刑の下限を3年にとどめるべき、性交等について被監護者の意思に反することを構成要件上明らかにすべき、との意見を述べるものである。

これに対し、被害者の立場から、性交と肛門性交および口腔性交の侵襲性は異ならないとの意見ならびに監護者からの性被害に遭っている児童は意思に反することを表明するのが困難であるとの意見が出され、また、刑事弁護の立場から、強姦罪の法定刑の下限を3年から5年に引き上げること自体に反対する意見などが出された。意見書提出の是非を含め、7月理事会でも引き続き議論を行う予定である。

(司法調査室嘱託 高橋しず香)

 

*同部会での議論状況および資料等は法務省ホームページでご覧いただけます。

 

法制審議会民法(相続関係)部会における議論状況

法制審議会民法(相続関係)部会は、2015年4月から本年6月までに計13回の部会を開催し、相続法の改正を議論している。日弁連は、委員と幹事計3人を部会に推薦するとともに、関連委員会委員からなるバックアップ会議を設置し、検討を続けている。検討課題は以下のとおり多岐にわたる。

(1)生存配偶者の居住権の短期的、長期的保護制度の創設。長期居住権に関して、その要件・対抗要件・評価方法など。

(2)遺産分割に関する見直しとして、①配偶者の相続分について、被相続人の財産の婚姻後増加額に着目した具体的相続分の加算もしくは婚姻後一定期間経過を要件とする配偶者の法定相続分の引き上げ、②可分債権を遺産分割の対象とすることと、対象とした場合の法定相続分に応じた権利行使の可否、具体的相続分との調整など、③一部分割の要件、特別受益・寄与分の扱いなど。

(3)遺言制度の見直しとして、①自筆証書遺言の方式緩和、②遺言保管制度の創設、③相続させる旨の遺言等による権利承継および可分債務の承継に関する規定の整備、④遺言執行者の権限の明確化など。

(4)遺留分制度に関し、①減殺請求の効果の金銭債権化と法的性格の見直し、②遺留分算定方法について算定の基礎となる相続人に対する贈与の期間の制限、遺留分減殺請求と遺産分割との調整。

(5)相続人以外の者の貢献を考慮するための制度の創設。要件につき、2親等内の親族の特別の寄与とするか、請求権者を限定せずに無償の労務提供による特別の寄与とするか。

部会はこれまでの検討結果を中間試案にまとめ、7月上旬から意見募集を開始する見通し。本件は会員の関心も高いと思われ、バックアップ会議では適宜、会員への情報提供に努める予定である。

(法制審議会民法(相続関係)部会バックアップ会議副座長 吉田容子)

 

*同部会での議論状況および資料等は法務省ホームページでご覧いただけます。

 

院内学習会
被災者の生活再建支援制度の抜本的改善に向けて
5月17日 衆議院第二議員会館

  • 院内学習会「被災者の生活再建支援制度の抜本的改善に向けて」

東日本大震災および福島第一原子力発電所事故における被災者の生活再建を前進させるために、また、平成28年熊本地震における被災者の今後の復興に取り組むためにも、被災者生活再建支援法の抜本的な見直しは喫緊の課題である。
同法が抱える課題等について理解を深め、立法措置を促す一助となるよう、院内学習会を開催した。

 

金子愛会員(熊本県)から熊本地震の現況報告とさらなる支援要請がなされた後、新里宏二会員(仙台)が、東日本大震災から5年以上たった時点でもトイレの修理ができていない事例など、在宅被災者の過酷な生活状況を報告するとともに、被災者台帳に基づいた被災者支援センターの一括管理による生活再建支援構想(災害ケアマネージメント構想)を紹介した。

伊藤健哉氏(一般社団法人チーム王冠代表)は、在宅被災者に対するインタビュー映像を紹介し、在宅被災者が自治体の支援から取り残されている窮状を訴えた。また、同法人が仙台弁護士会と連携し、在宅被災者を戸別訪問する中で見えてきた問題点として、支援格差、情報格差、修繕費用の不足、被災者の孤立、生活不安、健康不安等を報告した。

災害復興支援委員会の津久井進副委員長(当時)(兵庫県)は、本年2月19日付で日弁連が公表した「被災者の生活再建支援制度の抜本的な改善を求める意見書」に基づき、被災者一人ひとりを対象とする生活再建支援制度の必要性を強調した。

本院内学習会に出席した国会議員(本人出席16人、代理出席20人)からは、生活再建支援制度の改善の必要性に賛同する発言が相次いだ。

(災害復興支援委員会 前副委員長 山谷澄雄)

 

 

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間に関する民法改正を求める院内集会
5月19日 参議院議員会館

  • 夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間に関する民法改正を求める院内集会

2015年12月、最高裁は、夫婦同氏を定める民法第750条は合憲、女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条については100日を超える部分のみ違憲、その余は合憲とする判断を下した。日本が女性差別撤廃条約を批准して30年、今なお、これらの民法規定による女性差別の問題は解決していない。差別解消へ向け、一歩でも歩みを進めるべく、院内集会を開催した。

 

まず、山口智美准教授(モンタナ州立大学社会学・人類学部)は、夫婦同氏を維持する立場の活動について報告した。次に、高橋和之名誉教授(東京大学/第二東京)は、先の最高裁判決が、夫婦同氏の強制は人格権・平等権・婚姻の自由を制約しないと判断したことについて、人権制限を認めた上で正当化根拠に論及すべきだったと指摘し、「国民が最も知りたがっていた点について判断しなかった」と批判した。

夫婦別姓訴訟弁護団の一員である中川武隆会員(第二東京)は、今回の合憲判断は、婚外子相続分に関し、個人の尊重・諸外国のすう勢・批准した条約の内容・国連人権機関による指摘を理由に違憲との判断を下した2013年9月の決定との理論的整合性を欠くと論じた。また、坂本洋子氏(NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク理事長)は、国連人権機関から日本に対し、再婚禁止期間規定の撤廃勧告が繰り返されている状況につき報告した。

集会には、多くの国会議員が出席し(本人出席16人、代理出席9人)、応援メッセージを寄せた。

若狭勝衆議院議員(自民党)は、議員の間でも別氏許容派が増えつつあり、改正に向け多くの国民の声を結集する必要があると訴えた。枝野幸男衆議院議員(民進党)は、「初当選のころからこの問題の解決を公約に掲げている。当たり前のことが当たり前に通る世の中にしたい」と改正に向けた決意を語った。

 

*院内集会後の6月1日、女性の再婚禁止期間を100日間に短縮する改正法が可決・成立した。日弁連は、今後も再婚禁止期間の廃止を求めるとともに、選択的夫婦別氏制度の導入を求めていく。

 

司法修習過程における経済的支援〜「骨太の方針」に〜

司法修習費用給費制存続緊急対策本部では、2014年12月から、司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に向けて過半数の国会議員からの賛同を得るべく、メッセージ獲得運動を展開している。

全国の弁護士会、ビギナーズ・ネット等と連携した継続的な取り組みの結果、全国会議員717人のうち、本年6月1日時点で391人の議員から応援のメッセージを得ており、賛同の輪が広がっている。

各方面においてこの問題への理解が深まり、本年5月24日に公表された自由民主党政務調査会・司法制度調査会の中間提言では、「司法修習過程における経済的支援を拡充・強化する必要がある」と言及されるに至った。

また、本年6月2日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2016」(いわゆる「骨太の方針2016」)にも、「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化」という文言が盛り込まれた。

今後、日弁連はこのような動きを足掛かりに、修習手当の創設に向けた裁判所法の改正につなげるべく、ビギナーズ・ネット、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会等と協力の上、引き続き全力で取り組んでいく。

 

第25回憲法記念行事シンポジウム
日本の平和主義
5月14日 弁護士会館

  • 第25回憲法記念行事シンポジウム「日本の平和主義」

日本国憲法は、国民が「恒久の平和」を念願し、「国際平和を誠実に希求」すると規定するが、世界では、国家間の紛争やテロが絶えない。新安保法制が施行されたまさに今、憲法の平和主義について考察し、私たちが目指すべき平和やその実現を探るべく、シンポジウムを開催した。(共催:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)

 

基調講演を行う佐々木教授

第一部では、佐々木寛教授(日本平和学会・前会長/新潟国際情報大学国際学部)が基調講演を行った。

佐々木教授は、戦後の日本人が、先の悲惨な戦争体験から、戦争はこりごりだという強い思いを抱き、この感情に根差して平和主義を維持してきたこと、他方で、昨今、戦争を知らない世代が反歴史主義的思考を持ち始めたこと、その思考が時の政権にも見られることを、自民党の憲法改正草案を踏まえつつ詳説した。

また、「武力に頼った外科的オペレーションは限界を迎えている」と武力強化を図る新安保法制を批判し、「構造的暴力を少しずつ取り除く取り組みこそ、確実な根のある平和を作り出す」と指摘した。

第二部ではパネルディスカッションが行われた。

愛敬浩二教授(名古屋大学大学院法学研究科)は、憲法第9条という規範と現実との矛盾について、「事実と規範が違うときに、事実に合わせようという考え方は誤り」と述べ、戦後の日本国民が憲法第9条を使って日本政府やアメリカ政府が武装を進めようとするのに歯止めをかけてきたことを指摘し、「事実に即して理想を変えるより、事実を少しでも理想から離さないようにすることが重要」と説いた。

また、横湯園子元教授(北海道大学/中央大学)は、父親が社会主義活動家であったために治安維持法下で母親とともに身を隠す日々が続いたり、爆弾を搭載した米軍機とニアミスしたりした強烈な戦争体験に触れ、新安保法制に対し強い危機感を示すとともに、平和に向けた活動の重要性を訴えた。

 

自治体任期付公務員任用セミナー
5月18日 弁護士会館ほか

弁護士の任期付公務員は特にこの数年増加し、自治体、弁護士、司法修習生および法科大学院生の関心を集めている。そこで、自治体で任期付職員として活躍している方から、その活動内容を紹介いただくとともに、弁護士を対象とした任期付職員の採用を考えている自治体から、採用の意図および採用後の職務内容等の説明を受けるセミナーを東京、大阪、愛知および福岡で開催した。

 

東京会場では、自治体で任期付職員として活躍中の3人が活動内容を紹介した。その業務範囲は多岐にわたり、庁内職員からの業務に関する法律相談、自治体が当事者となる訴訟の指定代理人のほか、職員全体の基礎的法務能力向上のための研修講師等を担っているとの説明がなされた。また、自治体の業務は市民の生活の隅々に及び、任期付公務員として得た知識・経験は、任期後に一般民事業務を行う上でも有用であるとの感想も述べられた。

続いて、弁護士の任期付職員の採用を予定している自治体として、兵庫県明石市と東京都西東京市から採用の意図および採用後の職務内容の説明がなされた。

弁護士でもある泉房穂明石市長からは、明石市では現在7人の弁護士職員が採用され、弁護士としての専門性を生かした行政サービスの提供により、弁護士職員に対する評価は、他の職員のみならず市民の間でも高まっていることの説明があった。来年には、5人程度の採用を検討しているとのことである。

また、2016年10月1日付で初めて弁護士の任期付職員を採用する予定の西東京市の中尾根職員課長は、地方分権による市の役割の向上や制度改革に備えるため、弁護士職員を採用することで、政策立案能力をはじめとした専門的能力の向上を目指したいと期待を寄せた。

 

法律相談センター全国協議会
法律相談センターの将来像を考える
5月30日弁護士会館

弁護士会の法律相談センター担当者と日弁連公設事務所・法律相談センター委員による全国協議会を開催し、法律相談センターの現状と在り方について協議を行った。

 

全体会の前半では、菅原郁夫教授(早稲田大学大学院法務研究科)が、日弁連が実施した法律相談や法律相談センター(以下「センター」)に対する認識・評価等に関する市民アンケートの結果を分析し、法律トラブルやセンター利用の経験の有無が市民の認識等に及ぼす影響について説明した。

まず、広報については、一般向けの料金・場所などの基本情報とは異なり、トラブル経験者向けには相談担当者の専門性などセンターのメリットを示すことが有効との視点が示された。また、相談料については、現状の金額は割高だが料金の支払自体に抵抗はないとのトラブル経験者やセンター利用経験者の回答を指摘し、初回無料相談による誘引と次回以降の相談料の低額化などの工夫が必要と指摘した。

後半では、全体会に先立ち開催された分科会の報告と討論が行われた。

広報について議論した第一分科会からは、ネット予約やグッズ作成などさまざまな取り組みが紹介され、続いて、武井咲さんを起用した日弁連のポスターに関する意見交換も行われた。

専門相談を議論した第二分科会からは、各弁護士会における導入状況等が報告された。離婚・相続等の専門相談を導入した弁護士会からは、研修の充実やベテランと若手の共同相談の実施など、相談の質の担保に努力しているとの説明があった。

センターの役割を議論した第三分科会からは、充足率や利用頻度の高いセンターにおける相談料の低額化、自治体と連携した広報等の工夫が報告された。

 

「実務家弁護士による公開シンポジウム
住民訴訟制度と新行政不服審査法を考える
5月28日 主婦会館プラザエフ

  • 住民訴訟制度と新行政不服審査法を考える~実務家弁護士による公開シンポジウム~

本年4月から新行政不服審査法が施行されたこと、住民訴訟制度に関し、総務省の地方制度調査会が長などの軽過失を免責する方向で答申したことを踏まえ、新行政不服審査法を市民に活用してもらうとともに住民訴訟制度改正についての問題意識を共有するため、シンポジウムを開催した。

 

委員による寸劇

寸劇の様子(弁護士への相談場面)

新行政不服審査制度および住民訴訟制度の理解に役立てるため、行政訴訟センター委員が以下2つの題材を用いた寸劇を行った。

1つ目は、生活保護申請が認められなかった者からの相談事案で、弁護士が新行政不服審査制度の説明をするもの。2つ目は、市長が建設会社の社長に、受注済みの公共工事の契約金の増額と引き換えに、政治献金を行うよう持ち掛けた、という情報を入手した住民からの相談事案で、弁護士が住民訴訟制度について説明するもの。

寸劇の後、阿部泰隆委員(兵庫県/神戸大学名誉教授)が各制度の概要と問題点などについて解説した。

 

具体的事件を基にした考察

新行政不服審査制度に関して、日置雅晴会員(第二東京)が建築紛争をめぐる不服審査について、大井琢会員(沖縄)が生活保護分野における不服審査について、それぞれ報告した。両会員ともに、不服審査制度は、原告適格を広めに認めるなど行政訴訟ほど要件が厳密ではない上、コストもかからず利用しやすい制度であるとの点で同一の見解を示した。

住民訴訟制度については、窪田之喜会員(第二東京)が東京都檜原村の住民訴訟に関する報告を行った。檜原村事件は住民訴訟で認められた長の責任が、議会の議決で放棄された実例である。住民訴訟は住民自治を実現する重要な制度であり、判決で認められた責任を議会で減免できてしまうのは、住民自治の根底を覆しかねないと懸念を示した。

 

パネルディスカッション―市民への認知を目指して

前記の報告を踏まえ、畠田健治副委員長(大阪)をコーディネーターとして、阿部委員、日置会員、大井会員に首長経験のある山下真会員(大阪/前奈良県生駒市長)を加え、パネルディスカッションを行った。より利用しやすくなった行政不服審査制度の今後の問題点として、審理員の中立性の確保が挙げられ、弁護士が第三者的立場から審理員として参加することに期待が寄せられた。

住民訴訟制度については、長などの立場と住民の立場の双方から意見が出されたが、いずれの立場からも、長などの軽過失を免責する方向での答申は、住民自治を骨抜きにしかねず見直されるべきとの見解で一致した。

(行政訴訟センター 副委員長 辻本雄一)

 

 

シンポジウム
少年法の成人年齢引下げ問題を考える
犯罪社会学、脳科学・精神医学の観点から
6月6日弁護士会館

  • 少年法の成人年齢引下げに関するシンポジウム~犯罪社会学、脳科学・精神医学の観点から~

選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法の成立に伴い、少年法の成人年齢引下げの是非が社会的にも注目を集めている。日弁連では既に成人年齢の引下げについて反対を表明している。 今回、犯罪社会学、脳科学および精神医学の観点から、少年法の成人年齢引下げの問題点について考えるべく、シンポジウムを開催した。当日は、100人を超す参加者が集まり会場は熱気に包まれた。

 

小林元治副会長は、開会挨拶の中で、現行制度における少年院等での矯正教育は、再犯防止に効果を上げており、刑事政策上も高い評価を得ていると述べた。その上で、仮に少年法の成人年齢が18歳未満に引き下げられると、現在少年法の適用を受けている者の5割が、少年法の手続から外され、十分な処遇を受けることのないまま社会に戻され、18歳・19歳の再犯リスクがかえって高まるとして、成人年齢引下げに強く反対する日弁連の意見を明確に示した。

土井隆義教授(筑波大学人文社会系)は、犯罪社会学の観点から見解を述べ、そもそも10代後半や20代前半の者による一般刑法犯は2003年以降激減しており、成人年齢引下げによる一般予防効果は認めがたいと指摘した。また、再非行少年数も減少している点に触れ、これは、従来からの矯正教育の成果であり、特別予防効果に関しても、疑問を投げ掛けた。

八木淳子講師(岩手医科大学神経精神科学講座)は、脳科学・精神医学の観点から意見を述べた。その中で、10~25歳は脳の可塑性等により脳神経発達・精神発達が極めて不安定・不均衡な時期であることを紹介し、その上で非行・犯罪後の保護的教育を実施する矯正教育機関の整備に当たっては、この視点が不可欠と指摘した。また、25歳前後までは治療効果や更生可能性が高いことから、刑事処分にとどまらず治療や支援を受けられる仕組みの整備も必要と言及した。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.113

会員向け研修の無料化とさらなる充実に向けた取り組み

本年7月から、日弁連が提供するライブ実務研修およびeラーニングが原則無料となりました。
研修の無料化とさらなる充実に向けた取り組みについて、研修委員会の川上明彦委員長(愛知県)、日弁連総合研修センター(以下「センター」)の菰田優センター長(第一東京)、研修・業務支援室の吉岡祥子室長(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 

センター、研修委員会、研修・業務支援室、それぞれの役割は

インタビューの様子

2013年6月、研修をより機動的かつ実践的に運営するため、執行部直轄の実務機関であるセンターを設置し、従来の日弁連研修センターを研修委員会に改組しました。センターは研修の企画立案やその管理・運営を、研修委員会は研修の調査・研究のほか、会長からの諮問への答申等を行っています。両者へ事務作業等のサポートを行っているのが研修・業務支援室です。

三者は、緊密な連携を図り、研修事業の充実に努めています。

 

研修の目的

研修の実施には2つの目的があります。

1つ目は、弁護士に求められるプロフェッション性、すなわち、高い専門性・公益性・倫理性を確保することにより、市民の信頼を獲得・維持するという対外的要請に基づくもの。

2つ目は、会員に対するサービスという対内的要請に基づくもの。

これら2つの要請を充たすために、良質な研修の実施が不可欠であり、その提供に向けて鋭意検討を重ねています。

 

日弁連が提供する研修

日弁連では、倫理研修、新規登録弁護士研修、夏期研修、ライブ実務研修、eラーニング、ツアー研修など、さまざまな研修を実施しています。また、総合研修サイトの運営、研修DVDの貸し出し、研修情報の提供も行っています。

 

ツアー研修

川上委員長

ツアー研修では、2013年から全国8ブロックを2年間かけて回りました。1年目は相続、2年目は民事裁判をテーマとし、開催地の地裁裁判官にも1時間程度の講義を担当いただきました。2015年度は、開催地の希望に応じたテーマで研修を実施しました。また、講義終了後には、各地の実情を把握するため意見交換会も実施しています。意見交換会で出された意見や要望は、研修制度の改善に役立てています。例えば、ライブ実務研修などをDVD化し弁護士会などに貸し出す「研修DVD貸出制度」は、「ライブ実務研修当日に、会場が確保できないことや参加者の都合がつかないことがある」との中小規模弁護士会の意見を踏まえ始まったものです。

 

特色ある研修を教えてください

若手会員の声に応えて新しく制作したeラーニング講座「コンパクトシリーズ」が挙げられます。

弁護士業務に必要な基本的かつ重要な知識をわずか30分程度で学ぶことができるのが特徴で、「不動産登記の基本」「商業登記の基本」「戸籍の仕組み・読み方の基本」「内容証明の基本」「職務上請求の基本~戸籍、住民票の写し等の取得~」「弁護士会照会の基本」「弁護士報酬の基本」を公開しています。

eラーニングは、パソコンのほか、iPhoneやiPadからもアクセス可能で、いつでも、どこでも気軽に受講できます。若手会員だけではなくベテラン会員にとっても有益な内容ではないかと思います。

 

研修の無料化

会員がより多くの研修を手軽に受講できるよう、本年7月からライブ実務研修およびeラーニングを原則無料化しました。

ライブ実務研修は、東京会場で実施した研修を全国の弁護士会に同時配信するもので、法改正や最新のトピックスをフォローしています。

eラーニングの講座数は280以上にのぼります。豊富な資料や書式がPDFで掲載されていますので、ダウンロードして利用することもできます。ぜひご活用いただきたいと思います。

 

菰田センター長

今後の取り組みは

今後は、全国研修担当者会議を通じて、日弁連と弁護士会との連携を深め、弁護士会が提供する研修の充実に結び付けられればと期待しています。

 

会員へのメッセージをお願いします

本号に同梱の日弁連eラーニング「研修ステップアップガイド」(*)をぜひご参照ください。日弁連が提供するeラーニングの全体像をコンパクトに整理して掲載しています。今後も、さらに利用しやすく充実した研修を提供していきますので、より多くの会員の皆さまに受講いただき、スキルアップの一助にしてほしいと願っています。

 

*「研修ステップアップガイド」は、会員にのみ同梱しています。
*総合研修サイトは、会員専用ページの右側のバナーをクリックすることでアクセスすることができます。

 

日弁連委員会めぐり 87

民事裁判手続に関する委員会

今回の委員会めぐりは、民事裁判手続の運用改善を目指して活動している民事裁判手続に関する委員会です。阿多博文委員長(大阪)、永島賢也副委員長(東京)、市野澤要治副委員長(第一東京)、日下部真治副委員長(第二東京)、関戸麦副委員長(第二東京)、後藤裕前副委員長(福岡県)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 佐内俊之)

 

前列左から後藤前副委員長、阿多委員長、市野澤副委員長、後列左から日下部副委員長、永島副委員長、関戸副委員長

委員会の沿革や任務は

民事訴訟法改正に関連する諸問題の検討・対応のために設置されていた「民事訴訟法等改正問題検討委員会」と「民事訴訟法の運用に関する協議会」を統合する形で、2003年に設置されました。

民事訴訟法改正にかかわる対応を引き継ぐとともに、民事訴訟法、民事執行法など民事裁判手続全般に関する法制度の調査・研究、最高裁との協議等を主な任務としています。

 

具体的な活動内容は

最高裁民事局との協議を定期的に開催しています。この協議会では、民事訴訟手続の運用に関する具体的なテーマをその都度設定し、各地の裁判所における実情に踏み込んだ積極的な意見交換を行っています。

また、年1回のライブ実務研修の開催も重要な活動であり、現役裁判官を招聘して、民事訴訟手続を題材とした講演やパネルディスカッションを行っています。代理人の訴訟活動や裁判所の審理過程などについて裁判官の視点や問題意識が浮き彫りになるよう入念な準備をしています。

 

活動上の注意や工夫は

民事裁判手続の運用改善への対応においては、理論一辺倒を避けること、情報発信だけにとどめないことに注意しています。

例えば、最高裁との協議では、メンバーを固定せずにできるだけ多くの委員が参加できるようにして、各地の民事裁判手続の実情や各弁護士会の声を反映させるための工夫をしています。また、2015年以降、各地の弁護士会と意見交換会を実施しています。これまで岡山・埼玉・愛媛の各弁護士会との意見交換を行いましたが、今後も他の弁護士会を順次訪問していきたいと考えています。

 

会員へのメッセージをお願いします

当委員会は民事裁判手続に関する会員向けの情報を積極的に発信しています。

今年度のライブ実務研修については、2017年2月16日に「訴訟手続における裁判所と代理人との認識のズレについて~その原因と回避方法について~」(仮題)のテーマでの開催が決まり、既に準備を進めています。また、「民事裁判問題ニュース」でも、活動状況等をお知らせしています。

ぜひこれら当委員会の発信する情報をご活用ください。

 

ブックセンターベストセラー
(2016年4月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 ジュリスト臨時増刊 No.1492 平成27年度重要判例解説   有斐閣
2 相続・遺言ガイドブック 第二東京弁護士会 法律相談センター運営委員会 編著 LABO
3 発信者情報開示請求の手引─インターネット上の名誉毀損・誹謗中傷等対策─ 電子商取引問題研究会 編 民事法研究会
4 刑事弁護人のための隠語・俗語・実務用語辞典 下村忠利 著 現代人文社
5 若手弁護士のための初動対応の実務 長瀨佑志 著 レクシスネクシス・ジャパン
6 労働法[第十一版]法律学講座双書 菅野和夫 著 弘文堂
7 経営支配権をめぐる法律実務―解説・書式等とケーススタディ― 二木康晴・平井貴之 著 新日本法規出版
8 法律事務職員研修「基礎講座」テキスト2016年度 東京弁護士会弁護士業務改革委員会 東京弁護士会
9 弁護士会照会制度[第5版]活用マニュアルと事例集[CD−ROM付] 東京弁護士会調査室 編 商事法務
10 ベンチャー経営を支える法務ハンドブック~起業・資本政策・ファイナンス・労務管理・IPO法務を弁護士が解説~ 橘 大地 著 レクシスネクシス・ジャパン

 

編集後記

事件の処理に当たり、戸籍の読み方や保存期間について悩んだことがある。既に書店の営業は終わっており、インターネット上の情報では結論を得られず、非常に困った覚えがある。

本号の研修に関する取材で、eラーニングのコンパクトシリーズに「戸籍の仕組み・読み方の基本」があることを知り、早速視聴してみた。実務的な基本知識が約30分に集約されており、資料も充実している。当時、これを確認していればすぐに疑問が解消したのではないかと感じた。

目の前の仕事に追われる日々の中では、自己研鑽は後回しになりがちである。しかし、効率的な情報収集と地道なスキルアップに努めなければ、目まぐるしい社会の変化や法改正には適応できない。今回の取材で研修制度の充実ぶりを知り、これを利用しない手はないと思った。

広報室でも、会員の業務に資する会内情報の提供に引き続き努めていきたい。

(Y・K)