日弁連新聞 第506号

退任のご挨拶
日本弁護士連合会会長 村越 進

村越進会長

日弁連の会長職は、駅伝の走者のようなものです。前の走者から襷を受け取り、任された2年間を全力で走り切り、一秒でも良いタイムで次の走者に襷を渡すことが使命です。なすべきは2年間最善を尽くすことだけです。駅伝はチームプレーです。良い流れをつくることができれば、各走者は存分にその力を発揮し、チームの順位は確実に上がります。

山岸憲司前会長は、さまざまな困難な状況の中、荒中前事務総長とのタッグで諸課題に懸命に取り組まれ、各方面との信頼関係の構築に努め、刑事司法改革や法曹養成制度改革などの取り組みを軌道に乗せられました。その道を真っすぐに全力で走り抜けば良かった私は、本当に恵まれていました。

恵まれたと言えば、何よりも人に恵まれた2年間でした。2年間で合計26人の副会長、春名一典事務総長と合計11人の事務次長、約80人の嘱託弁護士、そして約170人の事務局職員の皆さんが、私と一緒に走ってくれました。この素晴らしいチームで仕事ができたことほど、幸せなことはありません。

最高裁との協議を踏まえた労働審判実施支部の拡大、弁護士ゼロワン支部解消の追求、法律相談センターのインターネット予約サービス「ひまわり相談ネット」の開始、民事法律扶助の拡充、法テラス・スタッフ弁護士の役割等に関する方針決定、弁護士保険の適用範囲拡大、組織内弁護士の支援、女優の武井咲さんを起用した全国統一ポスターの作成、司法・法曹記者クラブの記者との定期的な懇談会「居酒屋日弁連」の開店、小学生向け学習漫画「弁護士のひみつ」の制作協賛、若手弁護士カンファレンス・若手との意見交換会の開催、弁護士業務支援ホットライン等若手支援の強化、安保法案と秘密保護法に対する取り組み、人権救済調査室の拡充、国選付添人対象事件拡大の取り組み、国際戦略(ミッションステートメント)の策定と国際活動の強化、司法研修所弁護教官に対する経済的支援、会費の減額、研修の充実と無料化、メンタルヘルスカウンセリングサービスの開始、弁護士会に対する財政支援の大幅強化、事務次長・嘱託弁護士の増員、男女共同参画推進の見地から会長特別補佐への女性会員の登用、司法調査室の設置、正副会長・総次長の報酬増額、経費の節減等々が、このチームの具体的な成果です。

多くは、理事会のご承認を要する事項でした。会員と弁護士会のご意見を踏まえ、真剣にご審議いただいた2年間で延べ142人の理事の皆さんに、心から感謝いたします。

できなかったこと、やり残したこともたくさんあります。

理事者における女性会員増加策の検討および業務上横領等の不祥事の根絶と依頼者保護策の検討は、緒に就いたばかりです。刑事司法改革と総合法律支援の充実は、昨年の国会で法改正が実現せず今国会に継続審議となりました。そして、法曹養成制度改革・司法修習生に対する経済的支援は、今まさに胸突き八丁というところです。

日弁連の前進を心から願い、次の走者である中本和洋新会長とそのチームの走りに大いに期待し、あと1カ月、少しでも良い流れをつくって襷を渡したいと思います。

力不足で至らぬところばかりの会長でしたが、2年間のご支援、誠にありがとうございました。

 

院内意見交換会
司法修習生への給費の実現と充実した司法修習を
半数を超える国会議員からのメッセージを力に、今国会での裁判所法の改正を!
2月9日 衆議院第一議員会館

  • 司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に関する院内意見交換会

司法修習生への給費の実現を目指し、院内意見交換会を開催した(共催:東京三弁護士会、関東弁護士会連合会、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会、ビギナーズ・ネット)。
当日は、国会議員の本人出席31人、代理出席55人を含む約330人が出席した。

 

院内意見交換会では、国会議員にメッセージ集と会長声明などを手渡した

冒頭、村越会長の「修習生に対する給付型の経済的支援に関する賛同メッセージが、全国会議員の半数を超え、本日時点で371通となった。今国会で法改正を実現するため、力を合わせて取り組んでいきたい」との挨拶で開会した後、国会議員のメッセージ集と日弁連、全弁護士会、ビギナーズ・ネット、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会らの声明が、各政党を代表して出席した議員に提出された。

 

国会議員からのエール

国会議員からは、「弁護士は社会を支える重要なインフラであり、その基盤となる経済的給付は絶対に必要だ」「給費制廃止の立法事実は失われた。法曹を目指す人材に経済的負担を押し付ける状態を解消すべきだ」等のエールが寄せられた。

また、「もはや議論の段階は過ぎた。国会議員の過半数のメッセージを元に実行あるのみ」など、今国会での法改正を期する声が多く上がった。

 

後輩たちに夢を

服部咲会員(東京)は、高校から法科大学院まで机を並べ、共に司法試験に合格した友人が、経済的理由から法曹を断念したことに触れ、「貸与制を変え、後輩たちが夢を叶えられる制度にしてください」と訴えた。

 

今後に向けて

最後に、司法修習費用給費制存続緊急対策本部の新里宏二本部長代行(仙台)が、「一刻も早い法改正が必要だ。今国会で改正を実現し、次の第70期修習から給費の支給を実現しよう」と力強く訴え、本意見交換会を終えた。

 

法曹の収入等の経済状況調査にご協力ください!

現在、53期~68期を対象とした「法曹の収入等の経済状況調査」を実施しています。この調査は法務省、最高裁とも連携して実施するもので、調査の結果は、「司法修習生への経済的支援の在り方」の検討の材料に利用されます。今後の司法修習生への経済的支援にかかわる重要な調査となりますので、必ずご回答ください。

【回答期限】2016年3月28日(月)

【回答方法】①または②のいずれかの方法で回答してください。

① 郵送での回答
② Web上での回答

※Web上での回答には、各会員の事務所に郵送している調査票に記載されたIDが必要です。

【お問い合わせ】日弁連法制部法制第一課 03-3580-9958

 

平成28年度同29年度
日弁連会長選挙開票結果

平成28年度同29年度日本弁護士連合会会長選挙の投票および開票が2月5日に行われました。

2月12日の選挙管理委員会において開票結果を確定し、当選者を決定しました。

 

(当選者)
中本 和洋
(大阪弁護士会)

 

ひまわり

2月12日、本年度2回目となる全国広報担当者連絡会議を開催した。第一回会議で共有したノウハウや課題を踏まえ、各弁護士会の規模や実情に合った広報の進化を図るとともに、日弁連と各弁護士会との連携・支援を深めることが目的である▼本年度は全体会に加え、弁護士会のブロック別(規模別)協議会も開催した。弁護士会の規模により人的、経済的事情は異なるため、ブロック別協議会は参加者から好評を得ている▼各弁護士会からはテレビやラジオの広告、ラジオ番組の制作、インタビューバック、ロゴ、ゆるキャラ(グランプリへの出場も)、グッズ(広島の「カープローヤー」など)の制作、マスコミとの懇談会など、工夫を凝らした広報活動が紹介された▼以前に比べ広報に力を入れる弁護士会が増え、今では各地から面白い取り組みが紹介されるようになった。他会の活動内容を知り、刺激を受けることが広報促進の起爆剤となっているのだろう▼弁護士会の人事・予算は1年単位で組まれ、複数年にわたって継続した広報活動を行うことは容易ではない。ただ、広報の効果を短期間に測ることは難しい。中長期的な広報戦略を立て、実施することについて、今後も議論を続けることになろう。

(H・W)

 

2015年懲戒請求事案集計報告

日本弁護士連合会は、2015年(暦年)中の各弁護士会における懲戒請求事案ならびに日弁連における審査請求事案・異議申出事案および綱紀審査申出事案の概況を集計して取りまとめた。
弁護士会が2015年に懲戒手続に付した事案の総数は2681件であった。
懲戒処分の件数は97件であり、昨年と比べると4件減っているが、会員数との比では0.25%で、ここ10年間の値との間に大きな差はない。
懲戒処分を受けた弁護士からの審査請求は33件であり、2015年中に日弁連がした裁決内容は、棄却が22件、処分取消が6件、軽い処分への変更が1件であった。
弁護士会懲戒委員会の審査に関する懲戒請求者からの異議申出は43件であり、2015年中に日弁連がした決定内容は、棄却が33件、決定取消が0件、処分変更が1件であった。
弁護士会綱紀委員会の調査に関する懲戒請求者からの異議申出は1002件、綱紀審査申出は396件であった。日弁連綱紀委員会および綱紀審査会が懲戒審査相当と議決し、弁護士会に送付した事案はそれぞれ6件、4件であった。

 

  • *一事案について複数の議決・決定(例:請求理由中一部懲戒審査相当、一部不相当など)がなされたものについてはそれぞれ該当の項目に計上した。
  • *終了は、弁護士の資格喪失・死亡により終了したもの。日弁連においては、異議申出および綱紀審査申出を取り下げた場合も終了となるためここに含む。

 

表1:懲戒請求事案処理の内訳(弁護士会)

新受 既済
懲戒処分 懲戒しない 終了 懲戒審査開始件数
戒告 業務停止 退会命令 除名
1年未満 1~2年
2006 1367 31 29 4 2 3 69 1232 24 115
2007 9585 40 23 5 1 1 70 1929 30 138
2008 1596 42 13 2 2 1 60 8928 37 112
2009 1402 40 27 3 5 1 76 1140 20 132
2010 1849 43 24 5 7 1 80 1164 31 132
2011 1885 38 26 9 2 5 80 1535 21 137
2012 3898 54 17 6 2 0 79 2189 25 134
2013 3347 61 26 3 6 2 98 4432 33 177
2014 2348 55 31 6 3 6 101 2060 37 182
2015 2681 59 27 3 5 3 97 2191 54 186
  • ※日弁連による懲戒処分・決定の取消し・変更は含まれていない。
  • ※新受事案は、各弁護士会宛てになされた懲戒請求事案に弁護士会立件事案を加えた数とし、懲戒しないおよび終了事案数等は綱紀・懲戒両委員会における数とした。
  • ※2007年の新受事案が前年の7倍となったのは、光市事件の弁護団に対する懲戒請求が8095件あったため。
  • ※2012年の新受事案が前年の2倍となったのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1899件)あったこと等による。
  • ※2013年の新受事案が前年に引き続き3000件を超えたのは、一人で100件以上の懲戒請求をした事案が5例(5例の合計1701件)あったこと等による。
  • ※懲戒審査開始件数は、綱紀委員会で「懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする」とされ、懲戒委員会で審査が開始されたもの。

 

表2:審査請求事案の内訳(日弁連懲戒委員会)

新受(原処分の内訳別) 既済 未済
戒告 業務
停止
退会
命令
除名 棄却 原処分
取消
原処分
変更
却下・終了
2013 29 13 4 0 46 30 3 1 1 35 36
2014 15 11 0 1 27 28 1 4 1 34 29
2012 20 11 1 1 33 22 6 1 4 33 29
  • ※原処分取消の内訳【2013年~2015年:戒告→懲戒しない(10)】
  • ※原処分変更の内訳
    • 【2013年:業務停止1月→戒告(1)】【2014年:業務停止2月→戒告(1)、業務停止1年→業務停止10月(1)、退会命令→業務停止6月(1)、除名→業務停止2年(1)】
    • 【2015年:退会命令→業務停止2年(1)】

 

表3:異議申出事案受付の内訳(日弁連綱紀委員会)

新受 既済 未済
審査相当 棄却 却下 終了 速やかに終了せよ
2013 1590 6 1431 26 8 21 1492 312
2014 1353 5 1362 796 9 22 2194 249
2015 1002 6 896 17 5 18 942 309
  • ※2013年の新受事案のうち、同一の異議申出人による大量の異議申出事案の例が2例あり(2例の合計865件)。
  • ※2014年の新受事案のうち、同一の異議申出人による大量の異議申出事案の例が1例あり(778件)。
  • ※2015年の新受事案のうち、同一の異議申出人による大量の異議申出事案の例が1例あり(285件)。

 

表4:異議申出事案受付の内訳(日弁連懲戒委員会)

新受 既済 未済
棄却 取消 変更 却下 終了 速やかに終了せよ
2013 31 23 1 0 3 0 1 28 20
2014 40 20 8 1 0 1 4 34 26
2015 43 33 0 1 3 0 2 39 30
  • ※取消の内訳【2013~2015年:懲戒しない→戒告(9)】
  • ※変更の内訳【2014年:戒告→業務停止1月(1)】【2015年:戒告→業務停止1年(1)】

 

表5:綱紀審査申出事案処理の内訳(日弁連綱紀審査会)

新受 既済 未済
審査相当 審査不相当 却下 終了
2013 1098 4 281 19 2 306 954
2014 340 2 1076 5 3 1086 209
2015 396 4 437 17 1 459 146
  • ※2013年の新受事案のうち、同一の綱紀審査申出人による大量の綱紀審査申出事案の例が2例あり(2例の合計865件)。

 

第26回
全国付添人経験交流集会
2月6日・7日 福島県郡山市

弁護士が果たすべき役割について講演した仁藤夢乃氏

全国付添人経験交流集会は、1991年から、少年事件の付添人としての経験を共有し、会員の付添人活動を充実させることを目的として毎年開催されており、ここ数年は400人前後の会員や学者、専門家が参加している。毎回多くの、特に若い会員が積極的に参加している集会である。

全体会では、家庭などに居場所を見つけることのできない女子高生等に対し、支援や相談対応などを行っている一般社団法人Colabo代表理事の仁藤夢乃氏が、弁護士が支援や相談対応をする際に果たすべき役割について講演した。そこでは、弁護士が陥りがちな不適切な対応の具体例なども紹介され、多くの参加者から「有益であった」との感想が聞かれた。

集会では、全体会の他に、1日目・2日目にそれぞれ3つの分科会を開催することが通例となっており、今回も合計6つの分科会を開催した。基本的な付添人活動に関する初心者向けのテーマから、家庭裁判所での少年審判を経て裁判員裁判にまで至った重大事件の報告まで、幅広いテーマが取り上げられた。また、子どもの権利擁護という観点から、児童福祉法の改正問題をテーマとした分科会や、今回は、本集会が福島県で開催されたことから、「震災と子ども」と題した分科会も開かれ、東日本大震災などの大規模災害の際に、子どもが直面する特有の不利益や我々弁護士がこれに対して取るべき対応などについて議論した。

集会全体を通じて、参加者が熱心に議論し、全国から集まった多くの会員が付添人活動の知識と情熱を共有することができたものと思われる。

(子どもの権利委員会 付添人活動拡充小委員会 委員長 内田徳子)

 

日弁連消費者問題対策委員会30周年記念シンポジウム
消費者の権利の未来を考える
高齢化、情報化、国際化の進展における消費者の権利
2月6日 弁護士会館

  • 日弁連消費者問題対策委員会30周年記念シンポジウム「消費者の権利の未来を考える~高齢化、情報化、国際化の進展における消費者の権利~」

消費者問題対策委員会は1985年に設置され、昨年創設30周年を迎えた。これまでの活動を踏まえ、高齢化、情報化、国際化などの新たな課題について、消費者の権利の実現のために必要な対応などを考えるため、シンポジウムを開催した。

 

基調講演を行う松本氏

村越会長の冒頭挨拶の後、野々山宏委員長(京都)は、1989年と2009年の人権擁護大会の宣言・決議を紹介し、日弁連の活動が消費者庁・消費者委員会の設置や多くの消費者関係法の創設や改正に結びついたことを報告した。続いて、薬袋真司委員(大阪)、奥野弘幸委員(大阪)、五十嵐潤委員(第二東京)が、消費者を取り巻く新たな課題として高齢化、情報化、国際化の問題を報告した。

松本恒雄氏(国民生活センター理事長/一橋大学名誉教授)が基調講演を行い、社会の変化に伴う消費者政策を振り返り、今後の消費者政策としては、消費者庁による消費者行政の一元化の徹底に加え、市場の好循環を目指し、企業と消費者がそれぞれの役割を果たしていくことの必要性を説明した。また、消費者被害の抑止には、消費者庁などによる直接的な抑止と、違法行為による利益を吐き出させ経済的に見合わなくさせる間接的な抑止の結合が重要であり、わが国では未だ不十分な間接的な抑止制度の拡大を訴えた。

 

消費者庁等の地方移転に関する緊急シンポジウム
  • 緊急シンポジウム「消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の移転問題を考える」

元担当大臣として、移転に反対する松原議員

記念シンポジウムに引き続き、消費者庁、国民生活センター、消費者委員会の地方移転の影響や問題点を明らかにすべく緊急シンポジウムを開催した。

新井毅氏(内閣審議官/まち・ひと・しごと創生本部事務局次長)は、東京一局集中の改善策として、政府関係機関の地方移転の意義を説明した。

これに対し石戸谷豊委員(横浜)は、日常的な関係省庁等との協議・連携や緊急時における危機管理業務を行い、司令塔としての役割を果たす消費者庁の移転は、消費者行政全体の機能を低下させると、その問題点を指摘した。

続いて、三角登志美氏(熊本県環境生活部県民生活局課長補佐)と平林有里子氏(香川県小豆県民センター相談員)が登壇し、実際に地方行政に携わる立場から現場の視点で移転の弊害を語った。また、消費者庁で任期付公務員として立法作業に携わった経験のある鈴木敦士幹事(東京)は、移転となれば国会対応などに支障が生じると指摘した。

元内閣府国民生活局長の田口義明教授(名古屋経済大学)、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏(第一東京)、元新宿区長の中山弘子氏、松原仁衆議院議員(民主党)および福島瑞穂参議院議員(社民党)からも、移転に対する懸念や強い反対の意見が述べられた。

会場は椅子が不足するほどの参加者で埋められ、移転問題に対する関心の高さがうかがわれた。

 

第86回国際人権に関する研究会
LGBTの人権
1月14日 弁護士会館

  • 第86回国際人権に関する研究会「LGBTの人権」

日弁連では、国際人権諸問題に関する基礎的な調査・研究および情報交換を行うことを目的に、定期的に「国際人権に関する研究会」を開催している。
今回の研究会では、「LGBTの人権」をテーマに取り上げた。

 

研究会の前半では、柳沢正和氏(NGOヒューマンライツウォッチ東京委員会委員)が、LGBTの基本的な概念や当事者の抱えがちな問題について講演した。

LGBTは、L「レズビアン」、G「ゲイ」、B「バイセクシュアル」、T「トランスジェンダー」を意味している。性には、例えば、①「カラダの性(身体的性)」、②「ココロの性(性自認)」、③「スキになる性(性的指向)」の種類があり、この組み合わせにより、LGBTのカテゴリーが判別される。しかし、性はさらに多様であり、自分のことを上記のカテゴリーに当てはめることができない人もいるとの説明があった。

また、研究会にはLGBTの当事者も参加し、当事者が抱えがちな問題について意見交換を行った。周囲の人がLGBTの支援者であることを表明することの大切さが訴えられた。

後半では、谷口洋幸准教授(高岡法科大学)が国際人権法からみたLGBTの人々の権利について講演した。

世界には、同性間で性的な関係を持つだけで死刑になる国もあれば、パートナーシップを認めている国もあり、性に対する考え方は一様ではない。国連は、2000年代に、性的マイノリティの人権に着目し始め、自由権規約委員会や欧州人権裁判所では性的マイノリティに対する差別は国際人権条約違反と判断されるようになった。

一方、日本は、性別変更を認めるが、その条件は世界的にみても厳しく、パートナーシップについては、自治体によっては認めるところもあるが、国としては認めておらず、日本政府は、自由権規約委員会から、LGBTの人々に対する差別の禁止に関し、勧告を受けている。

谷口准教授は、国内ではいまだ裁判例の集積が少ないLGBTの人権問題についても、国際人権法では議論や判例・先例が豊富であることから、今後、国際人権法を国内の裁判などの場面で活かしていくことが必要であると強調した。

(国際人権問題委員会 委員 根ケ山裕子)

 

第18回
多重債務相談に関する全国協議会
1月23日 弁護士会館

多重債務相談に関する各種テーマについて情報を共有し、意見交換を行うために弁護士会の担当者による全国協議会を開催した。

 

協議会前半では、消費者問題に関する報告がなされた。

まず、堂野達之会員(東京)が、日弁連が最高裁、中小企業庁、金融庁と協議し2014年2月に運用が開始された「経営者保証に関するガイドライン」に基づく保証債務整理の手法としての特定調停手続につき事例を紹介しつつ概説した。

次いで、消費者問題対策委員会の吉田哲也委員(兵庫県)は、いわゆる「カジノ解禁推進法案」について、法案の特徴を解説した上で、①暴力団の資金源化、②マネーロンダリングの舞台の提供、③犯罪の発生・助長、④経済効果への疑問などの問題点を指摘した。

和田聖仁委員(東京)は、各地からのアンケート結果を基に、破産事件での同時廃止事件と管財事件の振り分け基準について報告した。

後半では、貧困問題に関する報告がなされた。

貧困問題対策本部の岩重佳治事務局員(東京)は、日本学生支援機構の奨学金制度について、まずは大学の授業料の大幅な引下げが必要であるが、奨学金自体も貸与型ではなく給付型へ、貸与型は無利子へ、返還は所得連動型へと変えるべきと訴えた。

小久保哲郎事務局次長(大阪)は、生活保護法第78条に基づく費用徴収請求権は、非免責債権であり、同法第63条に基づく費用返還請求権とは異なる性質のものであることを指摘した上、同法第78条の適用は慎重に行われなければならないと指摘した。

最後に、村上晃事務局員(長野県)は、租税債権については猶予制度、滞納処分の停止制度などの適用があり、特に猶予制度については、国税庁においても周知を図っていると報告した。

 

シンポジウム
精神保健福祉法改正に向けて
「権利擁護者」について考える
1月23日 弁護士会館

  • シンポジウム「精神保健福祉法改正に向けて ~『権利擁護者』について考える」

2013年の精神保健福祉法改正では、精神障害者に対する権利擁護者制度の導入について議論が行われた。結果、導入は見送られたものの、3年後をめどに再検討するとの経過規定が盛り込まれ、まさに今年、その時期を迎える。
日弁連では、権利擁護者制度に対する市民の理解を深め、次の法改正において同制度の導入を図るべく、本シンポジウムを開催した。

 

パネルディスカッションの様子

前半、まず、日弁連高齢者・障害者権利支援センターの福島健太委員(兵庫県)が日弁連の精神障害者に対する法的支援プロジェクトについて報告した。

続いて、田瀬憲夫幹事(福岡県)が福岡県弁護士会においていち早く導入された精神保健当番弁護士制度について、新井貴博委員(宮崎県)が宮崎県弁護士会における同制度の立ち上げ状況などについて、髙橋智美委員(札幌)が精神保健出張相談活動を活性化させた札幌弁護士会の取り組みについて、それぞれ報告した。

後半はパネルディスカッションが行われ、まず、加藤真規子氏(NPO法人こらーるたいとう代表)が、精神病院内で多発する人権侵害行為の実情について赤裸々に語った。

山本深雪氏(NPO法人大阪精神医療人権センター副代表)は、意に反して精神病院に入院させられた場合、刑事の当番弁護士制度のように遅くとも数日内に面会に来てくれる存在が必要であり、その後病状が落ち着いてからさまざまな相談を受けてくれる相手も必要であると述べ、「二種類の権利擁護者があっていいのでは」と私見を論じた。

太田順一郎医師(岡山市こころの健康センター所長)は、「権利擁護の一番の主役は本人。それをカバーしてあげる代弁者(権利擁護者)が必要」と制度への理解を示した上、精神医療審査会における審査に関し、「精神科医は主治医の診断を追認しがちであり、精神保健福祉士も医師の意見を尊重しがちである。弁護士は、医師の意見に影響されず、規定に照らした判断ができる存在であり、もっと精神医療審査会に入ってきてもらいたい」と期待を寄せた。

 

研修会
第2回 法化社会における条例づくり
~番号法と個人情報保護条例などを題材に~
1月25日 弁護士会館

  • 第2回法化社会における条例づくり~番号法と個人情報保護条例などを題材に~

近年、地方分権が強く意識され、自治体の政策実現等のため、条例の役割が増大している。そこで、条例制定における弁護士の法的専門知識の活用についての研修会を開催した。

 

基調講演では、堀部政男氏(個人情報保護委員会委員長/一橋大学名誉教授)が、プライバシー保護法制に関する世界的潮流と国内の議論状況、さらに条例制定をめぐる状況について概説した。また、条例制定への弁護士の関与の態様は、①創設提案タイプ、②審議会・委員会・研究会等参加タイプ、③立案タイプの3つがあり、かつては②のタイプが多かったが、近時はそれ以外のタイプが増えてきていると述べた。

続いて、法津サービス展開本部自治体等連携センターの湯澤晃委員(群馬)が、自治体に対するアンケート結果に基づき、相当数の自治体が条例制定の場面で弁護士の助力を必要と感じていること等を報告した。

パネルディスカッションでは、山本博史氏(千葉県環境生活部廃棄物指導課ヤード対策班副主幹)が、自治体職員としての立場から、「弁護士の紛争解決処理の経験・能力は、条例の実効性の検討や訴訟等の想定のために有用である」と述べた。

弁護士資格を有する中村さゆり氏(国立市政策経営部収納課債権管理担当課長兼行政管理部情報管理課法務担当課長)は、自治体内の法曹有資格者は、法的知識の提供にとどまらず、「自治体が外部の弁護士に助言を求めるに当たり、自治体職員と外部弁護士との意思疎通の橋渡しができる」と、その役割を指摘した。

日弁連法務研究財団の研究として子どもの貧困対策モデル条例案の研究を行っている、貧困問題対策本部の紅山綾香事務局次長(東京)は、「制度利用者側の視点を持った弁護士が条例制定に関与することで、条例をより実態に即した実効性のあるものにできると思う」と述べた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.109

東日本大震災から5年を経て

3月11日で東日本大震災から5年。今回のJFBAPRESSでは、東日本大震災の発生以来、継続して復旧・復興に尽力されている3人の会員に寄稿していただきました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 

来て、見て、知って!ふくしま

福島県弁護士会 渡邊 真也

渡邊 真也会員

「もう5年も経つんだから、(原発事故の影響などなく)普通に暮らしているんでしょう」と言われたり、反対に「福島県民はみんな避難を続けていて大変ですね」と同情されたりすることもあります。いずれも事実ではありません。福島第一原発に近い放射線量の高い一部の地域の方々は現在も避難を続けています。しかし、全部一緒に「福島県」とくくってしまうと、現状を正確に把握することは難しくなります。浜通りでも、避難区域に指定されている第一原発周辺を除けば生活圏の放射線量は低く、他県とそれほど変わりはありません。中通りも同じです。会津地方は、さらに放射線量は低いです。ですので、避難区域に指定されなかった地域のうち、特に都市部では以前とそれほど違わない生活が可能です。ただ山林の除染がされていないため、山と深い関わりをもって以前と同じように生活をすることは今もなお難しい状況です。

福島県で今困っていることはたくさんあって全部書ききれません。ただ、最初に書いたように正しく理解されないことほど困ることはありません。何もかも元どおり普段どおりの生活ではありません。しかし、実際に生活している福島県民がいます。ぜひ福島県に直接来ていただいて、人が居住していない地域、仮設住宅や復興公営住宅だけでなく、以前と変わらない生活をしているように見える地域、美しい風景も全てを見てください。

当たり前のことですが、原発事故由来の放射性物質は福島県境で止められたわけではなく、周辺の地域、首都圏、さらに遠くへも飛散したと言われています。「フクシマ」などと他とは違う何か特殊な地域のように考えないでください。福島県には人が学び、働き、生きています。

紅葉の五色沼から見た裏磐梯

昨年、北海道と京都に行く機会がありました。いずれも日本有数の観光地です。福島県も観光地がありますが、全く違いました。銀座のデパートにも行きましたが街を歩く人は大勢いました。中国や韓国の方が大勢で観光や買物をしていました。現在の福島県には中国語や韓国語で話をしている観光客はほとんどいません。私は福島県の自然や人が大好きです。外国人観光客がいないことは残念ではありますが、私は今、静かに裏磐梯や猪苗代湖などのきれいな景色を愛で、リンゴ、ナシ、モモなど自慢のみずみずしくて甘い果物を堪能し、温泉にゆっくりつかりながら、日本のみならず、世界に誇れる極めてレベルの高い、他ではプレミアがつく日本酒たちを普通の価格で楽しんで生活しています。

これまで全国のたくさんの方々に支援していただきました。この場をお借りして深く御礼申し上げます。これからも、ぜひ実際に福島県に来て、それぞれの地域や境遇に応じた支援の方策を一緒に考えていただければ幸いです。

 

震災前の生活を取り戻すまで復興は終わらない

仙台弁護士会 宇都 彰浩

宇都 彰浩会員

3月11日で東日本大震災から丸5年を迎えます。被災地では防潮堤事業等のハード事業が進められていることもあり、5年も経ったのだから復興が一段落したのではないかと言われることもあります。

しかし、現実には5年を迎える現在でも、生活の再建ができない被災者が少なくありません。特に、住まいの再建についてさまざまな問題があります。宮城県では、1月31日現在、プレハブ仮設および民間賃貸借上住宅(みなし仮設住宅)に約4万5000人もの被災者が入居しています。防災集団移転促進事業等により高台に移転し自力再建できる方や災害復興公営住宅に入居できる方は、住まいの再建の見通しが立っていますが、仮設住宅の入居者の中には恒久住宅への移転の見通しの立っていない方がいます。その原因もさまざまですが、災害復興公営住宅の入居要件、とりわけ申込時点で市町村税等の滞納のないことという要件が問題となっています。市町村税の滞納者は、経済的に困窮していることが多く、災害復興公営住宅へ入居する必要性は高いにもかかわらず、入居要件が障壁となっているのです。

また、仮設住宅の入居者の中には、防災集団移転促進事業等により高台に移転し、自宅を再建する予定であったものの、5年の間に家族構成の変化や失業等で事情が変わったり、住宅ローンを組めなくなったり、住宅建築コストの上昇で資金繰りがつかなくなったりと、再建を断念する方も少なくありません。その他、独居の高齢者で相談相手もなく、住宅再建制度についての理解が難しかったり、認知症などにより判断能力が不足したりとの理由から、住まいの再建ができない方もいます。

こうした事情から災害復興公営住宅に入居できない方や自宅を再建できない方は、民間賃貸住宅に入居せざるを得ませんが、現状では、みなし仮設の影響等もあって賃貸物件の数が少なく、希望する物件を見つけることが困難な状況にあります。

他方、仮設住宅に入居することなく、十分な修理ができないままの住宅で生活している在宅被災者と呼ばれる方も多くいます。一般に、自宅が全壊ないし半壊(自治体により大規模半壊)した被災者が利用できる制度として、被災者生活再建支援法の支援金のほかに自治体独自の被災者住宅再建事業などの補助制度がありますが、この制度を利用するには、いったん被災者が修理費用等を立て替えて支払っておく必要があったり、市町村税の滞納がないことを求められたりと、利用のためのハードルは高いのが実情です。さらに、一部損壊の場合には、わずかな義援金以外、自宅を修繕するための支援制度はほとんどありません。

以上のとおり、さまざまな理由により、住まいの再建ができない被災者が多くいます。このような被災者が住まいを再建するには、各人が抱える個別の事情に配慮したきめ細やかな支援が必要です。税金の滞納要件を設けない給付型の自宅再建支援制度の創設をはじめ、災害復興公営住宅の入居要件として、連帯保証人の確保や税金の滞納がないことを求めなくすること、り災判定が半壊でも入居できるようにすることなど、柔軟な運用改善も必要だと思います。さらに、被災者支援から生活保護をはじめとする福祉への橋渡しも必要です。

復興の目的は、街がきれいになってインフラが普及することではなく、ひとり一人の被災者が、可能な限り速やかに震災前の生活を取り戻すことにあります。東日本大震災の復興は、途半ばです。今後とも、皆さまのご協力、ご支援をお願いいたします。

 

被災自治体に赴任して

第一東京弁護士会(前岩手弁護士会)永田 毅浩

永田 毅浩会員

私は、東京で勤務弁護士をしていましたが、2013年9月から2015年8月までの2年間、岩手県山田町に任期付公務員として赴任しました。2015年10月からは、再び東京で勤務弁護士をしています。

以下では、私なりに考える(被災)自治体における弁護士の役割、(被災)自治体に赴任するメリット、被災自治体での勤務を終えた後の進路についてお話ししたいと思います。

自治体における弁護士の役割というと、まず基本はリーガルチェックになると思いますが、被災自治体、特に復興事業に関しては、リーガルチェックの重要性は極めて高くなります。私自身、地方自治法等の行政法規に精通していたわけではないので、判断に迷うことも少なくありませんでしたが、復興事業の推進という観点を基軸に検討し、回答をするよう努めました。

また、前例にとらわれることなく法に照らして意見を述べることも、任期付公務員の果たすべき役割の一つだと思います。また、機微に触れる問題についても、積極的に意見を伝えるようにしました。法的な裏付けを示した解決策を提示すれば、職員も安心して耳を傾けてくれるものです。

さらに、求められる役割としては、職員の法務能力向上のための活動があります。自治体で勤務する弁護士の多くが、職員向けの勉強会を開くなど、その法務能力の向上のために取り組んでいます。

(被災)自治体に赴任するメリットですが、やはり行政の考え方を知り、理解できるということが大きいです。外から見ているときにはいわゆるお役所仕事にしか見えなかった対応にも、実は理由があると気付くことが少なくありません。また、行政と弁護士との協働による効果は、行政が扱う分野の幅広さを考えると、計り知れないものがあります。

任期後の進路ですが、被災自治体の弁護士14人のうち、既に任期満了となった者は私の他に2人います。その2人とも培った人脈を活かして現地で開業しており、うち1人は現在、自らが赴任していた自治体の非常勤職員を務めているとのことです。その他の弁護士の進路ですが、任期を延長した者、元の事務所に戻る予定の者、より現場に近い仕事を経験したいという思いから、被災自治体(県)から被災自治体(市)へ移る者などさまざまです。

私はと言えば、赴任前から被災地支援の関係でお世話になっていた先生の事務所に就職しました。まだ行政絡みの相談は1件受けたのみですが、公務員としての経験が確実に活きていると感じます。今後、行政関係の仕事を増やしていきたいと考えています。

 

編集後記

5年前、新宿駅前の大型画面で津波の映像を見た。あのときの全身の震えを今でも鮮明に覚えている。それ以来、震災からの復旧・復興に微力ながらお手伝いさせてもらっている。
渡邊会員の寄稿では、東日本大震災の問題が語られるとき、全て「福島県」と一くくりにされているとある。これは岩手県・宮城県も同様ではないかと思う。
被災地域によって問題はさまざまであり、今後も地域にあった復旧・復興に尽力していきたいとの気持ちを新たにした。

(Y・K)