日弁連新聞 第505号

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臨時総会開催に向けて

法曹養成制度改革をめぐり、会員から会則に基づく臨時総会招集請求があり、来る3月11日(金)午後2時から弁護士会館クレオで臨時総会が開催されることになった。この総会で日弁連の今後の法曹養成制度に関する取り組み方針が審議されることとなったため、執行部は、日弁連の「法曹人口政策に関する提言(2012年3月15日理事会決議)」と「法科大学院制度の改善に関する具体的提言(同年7月13日理事会決議)」に基づき、法曹養成制度改革に関する当面の方針をまとめ、1月理事会ではその内容について審議がなされた。この結果、賛成76票・反対4票・棄権4票の圧倒的多数で執行部提出議案が支持・承認され、臨時総会に提出されることが決定した。なお、招集請求者の提案にかかる議案も理事会に提出され、臨時総会に付議されることとなった。

 

村越会長からの挨拶

1月理事会での採決に当たり、村越会長から概要以下のとおりの挨拶がなされた。

◇      ◇

これまで日弁連は、「法曹人口政策に関する提言」に基づき、「まず1500人」を主張し、社会の理解を得るべく全力で取り組んできました。その結果、3000人を目標とする閣議決定は見直され、ようやく2015年6月30日の法曹養成制度改革推進会議決定に、「当面1500人程度」という表現が入りました。日弁連の粘り強い活動の成果と言ってもよいのではないかと思います。
今は、「まず1500人」を早期に実現すべく総力をあげるときです。1500人を実現した上で、その先については、提言に従い、しっかりと検証して論拠を示し、より一層説得力のある主張を展開することが求められます。
もし、今、「可及的速やかに1000人以下」との主張を日弁連が始めたら、理解を示してくれた多くの人々の信頼を喪失し、孤立することにもなりかねません。
社会の信頼を失い孤立してしまったら、日弁連は、交渉能力を失い、司法試験合格者1500人の実現も遠のくことでしょう。
法曹養成制度改革は、関係者全員が市民のため、法の支配の実現のため真摯に取り組んでいる課題であり、その実現には、社会の支持と、立場と利害・見解を異にする多くの関係機関等との誠実な協議や合意が必要不可欠です。
今、何よりも日弁連に求められているのは、結束して取り組むことなのです。
臨時総会では、弁護士の誇りと矜恃を大切に、社会に向けて日弁連の見識と結束を力強く発信し、市民のために働く日弁連に対する評価と信頼を高めなければなりません。
執行部提出議案に対するご理解・ご支持を心からお願いいたします。

 

日弁連執行部提出議案

法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議(案)(抜粋)

(前略)今日、法曹養成制度改革は、この合意を確かなものとし、その実現を目指す新たな段階を迎えた。
このときに当たり、当連合会は、改めて、法曹の役割や活動の魅力を広く社会に発信するとともに、法曹養成制度に対する信頼を回復し、多様で有為な人材が法曹を目指し、質の高い法曹が広く社会の様々な分野で活躍する状況となるよう全力を尽くさなければならない。
そのために、当連合会は、上記2つの当連合会提言(※)に基づき、関係諸機関、諸団体と協力し、推進会議決定の積極的な内容の具体化を始めとして、法曹養成制度の全過程にわたる改革を進めるとともに、緊急の課題として、以下の事項を可及的速やかに実現するために、全国の会員・弁護士会と力を合わせて取り組む。

1 まず、司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること。
2 法科大学院の規模を適正化し、教育の質を向上させ、法科大学院生の多様性の確保と経済的・時間的負担の軽減を図るとともに、予備試験について、経済的な事情等により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得の途を確保するとの制度趣旨を踏まえた運用とすること。
3 司法修習をより充実させるとともに、経済的事情によって法曹への道を断念する者が生じることなく、かつ、司法修習生が安心して修習に専念しうるよう、給付型の経済的支援として、給費の実現・修習手当の創設を行うこと。

(決議案全文はお手元の臨時総会議案書をご覧ください)

(※)「法曹人口政策に関する提言」(2012年3月15日理事会決議)及び「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」(同年7月13日理事会決議)

 

最高裁協議「基盤整備」部会に関する報告
労働審判実施支部の拡大、一部の裁判官非常駐支部・家裁出張所の運用改善が実現

日弁連では、2014年9月から最高裁との間で、民事司法改革に関する協議を開始し、4つの部会を設置した上で議論を行ってきた。このうち「基盤整備」部会では、労働審判の実施支部の拡大や裁判官非常駐支部の運用改善等について検討を行ってきたところ、1月15日の最高裁協議(親会)において、最高裁から最終的な回答を受け、一定の成果を得て終了した。その内容は次のとおり。

○2017年4月から①静岡地裁浜松支部、②長野地裁松本支部、③広島地裁福山支部において労働審判の取り扱いを開始すべく準備を開始する。
○2016年4月から松江地家裁出雲支部に支部長を置いて常駐化させる。
○2016年4月から①静岡地家裁掛川支部、②神戸地家裁柏原支部、③高松地家裁観音寺支部において、裁判官のてん補回数を増加させる方向での準備を開始する。
○2016年4月から①さいたま家裁飯能出張所、②岡山家裁玉島出張所において、裁判官のてん補回数を増加させる方向での準備を開始する。

この回答を受け、日弁連では、本年1月18日付で会長声明を公表し、今回の最高裁の対応を歓迎・評価しつつ、各支部の事件処理状況や利用者の声等に基づき見直しを求めていくとし、裁判所の人的物的体制の整備およびそれに伴う司法予算のさらなる拡充の必要性を指摘した。
民事司法の基盤整備に関する多様な課題について、日弁連と最高裁が協議したのは今回が初めてのことであり、それ自体画期的である。
しかしながら、今回の協議による前進を踏まえても、前記会長声明で指摘したように多くの課題が残されている。日弁連では、最高裁と真摯な協議を重ねることの重要性を確認しつつ、各地の弁護士会および弁護士会連合会とともに、今後も必要な取り組みを全力で続けていきたい。

(前事務次長 谷 英樹)

 

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会における議論状況

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会は、昨年11月、12月に3回の会議を開催し、諮問案別紙要綱(骨子)について1巡目の議論を終了した。1月20日の第4回会議では、2巡目の議論を開始した。

 

第4回会議では、要綱(骨子)第一、第二、第四、第五および第六の論点について2巡目の議論を行った。
第四の「強姦の罪等の非親告罪化」については、非親告罪化することで、被害者に捜査・公判の負担がかかるのではないかとの懸念が示されたが、被害者のプライバシー保護は親告罪であることによって図られるべきものではないとの意見等、非親告罪化に賛成する意見が多数であった。
第一の「強姦の罪の改正」については、強姦罪で処罰される行為の範囲拡大と強姦罪の法定刑の下限引き上げにより、現在強制わいせつ罪で処罰されている行為の一部を強姦罪に引き上げた上、さらに法定刑をも引き上げることとなり、二重の重罰化になるとの指摘があったほか、拡大される範囲について、口淫や挿入させる行為は、子どもが被害者となる事案がほとんどであり、未成年者保護として規定すべきではないかとの意見が述べられたが、要綱(骨子)どおりに構成要件を拡大し、法定刑の下限を5年に引き上げるべきであるとの意見が多数を占めた。準強姦の罪、強姦等致死傷の罪についても、要綱(骨子)どおりに法定刑を引き上げるべきであるとの意見が多数であった。
対象行為が要綱(骨子)どおりに現行強制わいせつ罪で処罰されている行為の一部を強姦と同等の刑で処罰することになった場合には、現在の「強姦」という罪名が姦淫行為のみを指すことから、罪名を変更する必要があるとの指摘がなされていたところ、事務当局から「強制性交等」という罪名案が提起された。なお、「性交等」の内容については、構成要件の明確性の観点から、条文に具体的行為を書き込むことが相当であるとの意見が多数であった。
第5回会議は3月25日に予定されており、要綱(骨子)第三の「監護者であることによる影響力を利用したわいせつな行為又は性交等に係る罪の新設」、第七の「強盗強姦及び同致死の罪並びに強盗強姦未遂罪の改正」の論点について2巡目の議論が行われる予定である。

(司法調査室嘱託 高橋しず香)

*同部会での議論状況および資料等は法務省ホームページにおいて確認することができる。

 

LAC全国責任者連絡会議
1月15日 弁護士会館

交通事故を対象とするものに加え、一般民事事件を対象とする弁護士保険が販売されたことを踏まえ、弁護士保険の現状や問題意識を共有し、各地の実情を把握することを通じて、弁護士紹介態勢の一層の充実を図るために連絡会議を開催した。弁護士会の責任者等90人以上が初めて一堂に会し、充実した議論を行った。

 

新商品を概説

弁護士会の責任者等が一堂に会した

日弁連リーガル・アクセス・センターの伊藤明彦事務局長(東京)は、弁護士保険における一般民事事件への適用範囲拡大の動きについて説明し、プリベント少額短期保険(株)および損害保険ジャパン日本興亜(株)の保険商品を概説した。
両者とも従来の弁護士保険と異なり、免責金額や待機期間が設定されていることから、弁護士費用等について依頼者に十分な説明を行う必要があることが指摘された。

 

弁護士会の態勢強化を要請

LAC制度を信頼あるものとするためには、弁護士会の態勢強化が必要不可欠であることから、池内稚利委員(信頼向上PT座長/第一東京)は弁護士会に対し、①名簿推薦システムの構築、②システムインフラの確立、③保険会社との定期的意見交換、④研修ツールの充実と活用、⑤クレーム情報の集約と情報共有への対応を依頼した。
また、加納小百合委員(報酬PT座長/東京)は、LAC案件についてのトラブル対応や報酬計算に関する照会対応のため、法律相談センター運営委員会にLAC部会を設立した埼玉弁護士会の取り組みを紹介した。
続いて、藤本卓司副会長が、弁護士紹介態勢の充実のため、LAC紹介名簿に関するモデル規則私案を示し、名簿登録要件や事件の紹介を受けた弁護士の果たすべき事項、名簿登録の拒否事由等を定めることを提案した。
さらに、小池康弘委員(大阪)が、大阪弁護士会における、LAC協定保険会社の実務担当者との意見交換会の取り組みについて報告し、この意見交換会が、保険会社と弁護士会の信頼関係構築、LAC制度の発展に寄与していること等、その重要性を指摘した。

 

日弁連短信
日本弁護士連合会業務継続計画

春名一典事務総長

日弁連は、首都直下地震(M7.3、千代田区最大震度6強)を想定した業務継続計画(BCP=Business Continuity Plan)を策定しました。その目的は、会員・職員等の安全を確保しつつ、弁護士・弁護士会の責務を果たすことを念頭に、日弁連の災害対策業務ならびに弁護士および弁護士会の指導・連絡・監督等の重要業務が滞りなく遂行されることにあります。
霞が関の弁護士会館は新耐震基準を満たしており、倒・崩壊しないと考えていますが、損傷状況や周囲の被災・治安状況によっては一部使用ができなくなる可能性もあります。
電気、ガス、水道など社会的インフラが一定期間使用できないことを想定して、①非常用発電機用重油1800L連続運転7.7時間分(これ以上保管するには、ガソリンスタンド並みの設置基準が課されます)②飲料水③ビスケット・アルファ米・即席みそ汁④毛布⑤災害用トイレ⑥マスク⑦軍手などを備蓄しています。システムについては、サーバに異常がなく、非常用発電機が作動する限り利用は可能です。
勤務時間外に大規模地震が発生した場合、職員の参集については、居住地を10㎞圏内、10㎞~20㎞圏内、20㎞圏外に分けて参集時間・日を定めています。業務については、「非常時優先業務」「優先再開業務」「休止業務」に3分類しています。非常時優先業務担当者のうち最優先参集要員が12時間以内に会館に到着し、徐々に参集する職員が、前記業務分類に従って業務を再開します。特に、ホームページなどで安否確認情報、会長声明の公表、支援制度の周知などの情報が提供できる体制を早期に構築します。
対応組織としては、日弁連会館災害対策チームと弁護士会館全体を対象とする弁護士会館災害対策本部が設置されており、両者は連携を図ります。全国弁護士会災害復興の支援に関する規程に基づく活動は、日弁連災害対策本部が担当します。
大事なことは、BCPも実際に機能しなければ意味がないということです。そのためには、平時からこのBCPの更新、周知、研修、訓練を重ねる必要があります。会員各位にもご理解とご協力をお願いします。

(事務総長 春名一典)

 

第4回
全国給費制問題代表者会議
12月18日 弁護士会館

全国の弁護士会の給費制問題に関する委員会の担当者や執行部等が集まり、「全国給費制問題代表者会議」を開催した。

 

冒頭、村越進会長が、「推進会議決定を受け、今後は日弁連から具体的な制度を示し、修習手当の創設に向けた法改正につなげたい」と意気込みを語った。
その後、司法修習費用給費制存続緊急対策本部の新里宏二本部長代行(仙台)から、会議当日の時点で342人の国会議員から賛同メッセージが寄せられている状況の報告と、引き続き過半数の国会議員からのメッセージ獲得に向けて力を結集してほしいとの要請があった。
また、弁護士会からは、各地の国会議員の反応等について報告があり、今後の取り組みについて意見交換を行った。
さらに、ビギナーズ・ネットの萱野唯代表(第二東京)からは、院内集会において修習辞退者の声を発表したり、最高裁や法務省に対し早期の裁判所法改正の申し入れを行ったりした旨の活動報告があった。
最後に、釜井英法事務局長(東京)が、2月9日に院内意見交換会を開催し、国会議員や社会に対して問題提起を続けることなど、今後の活動方針の説明を行い、全弁護士会、ビギナーズ・ネット、市民連絡会が一致団結して早期に司法修習生への修習手当を実現する裁判所法の改正に向けて活動を続けていくことを確認した。

*なお、1月20日現在、半数を超える国会議員から賛同メッセージが得られている。

 

日弁連新聞モニターの声

日弁連広報キャラクタージャフバくん

日弁連新聞では、毎年4月に全弁護士会から71人のモニター(任期1年)をご推薦いただき、そのご意見を紙面作りに活かしています。
本年度も多岐にわたる記事を掲載してまいりましたが、法曹養成制度改革に関する議論状況や、安全保障法制改定法案、刑事法制関連の記事には昨年度に引き続き高い関心が寄せられました。
また、会費減額や育児期間中の会費免除など、会員にとって極めて身近な問題に関する記事にも高い関心が寄せられました。現在の弁護士を取り巻く環境を反映していると考えられます。
さらに、2年に一度開催される弁護士業務改革シンポジウムについて、大きく紙面を割き、詳細な記事を掲載したところ、おおむね好意的なご意見をいただきました。
4面の特集記事は、広報室嘱託がタイムリーな情報発信を目指して毎号作成しています。4月号「(児童養護施設)光の子どもの家」、8月号「(東京都立多摩総合精神保健福祉センター)依存症回復への取り組み」、10月号「(全国弁護士協同組合連合会の取り組み)保釈保証書発行事業の運用状況」などは、特に高い評価をいただきました。
3面は主にシンポジウム等のイベント記事を取り上げて掲載しています。イベント内容を詳細に記載してほしいとのご意見をいただくことが多いのですが、1つのイベントの内容を充実させるか、より多くのイベントをご紹介すべきかは悩ましいところです。
広報室としても、今後とも会員のニーズに応える紙面作りに努めていきたいと考えています。

(広報室嘱託 渡邊寛一)

 

新事務次長紹介

近藤健太事務次長

 

1月31日付で、谷英樹事務次長(大阪)が退任し、後任には、近藤健太事務次長(東京)が就任した。

 

近藤 健太(東京・48期)

弁護士登録20年目という節目の年に事務次長に就任いたしました。この20年で弁護士、そして弁護士会を取り巻く環境は目まぐるしく変化してきたと思います。まだまだ不勉強ではありますが、今一度初心に立ち返り、業務に邁進する所存です。

 

ワークルール教育シンポジウム
労働者・若者が生き生きとはたらくために弁護士会ができること
1月12日 弁護士会館

  • ワークルール教育シンポジウム-労働者・若者が生き生きとはたらくために弁護士会ができること-

近年、「ブラックバイト」、「ブラック企業」の存在が問題化し、労働者が自ら身を守るため、働くことに関するルールを学ぶことの必要性が高まっている。
若者を中心とした労働現場における実態、高校・大学といった教育現場や弁護士会での取り組みを把握した上で、今後のワークルール教育の取り組みと実践について検討すべく、シンポジウムを開催した。

 

第1部では、大学、高校、労働組合のそれぞれの立場から、ワークルール教育の必要性とその実践について講演があった。
上西充子教授(法政大学キャリアデザイン学部)は、大学生を対象に行われたアンケート調査の結果、アルバイトをしている大学生の約60%が違法不当な扱いを受けているにもかかわらず、その半数近くが、上司や雇用主との人間関係を悪化させたくないことなどから、何の対処もしていないと報告した。
成田恭子氏(神奈川県高等学校教職員組合副委員長)は、大学生の直面している違法不当な扱いは高校生にも内在しているものの、アルバイトが禁止されている学校では生徒が教員に相談しづらく、また、労働法の知識が十分とは言えない教員も多いため適切なアドバイスが難しいことなどの実態を説明した。
神部紅氏(首都圏青年ユニオン委員長)は、ブラックバイトや企業におけるノルマの強要やそれを達成できない場合の制裁等の実例を紹介した。
第2部では、労働法制委員会の和田一郎副委員長(第一東京)および水口洋介副委員長(第二東京)も加わり、パネルディスカッションを行った。
パネリストからは、ワークルール教育は企業にとってもコンプライアンス等の観点から重要であるとの指摘がなされたほか、労働法に関する知識の付与だけでなく、蓄積された事例を踏まえて現実に労働者が悩んでいる問題を解決し、権利を実現していくことが重要であるとの意見も出された。また、弁護士会に対しては、教育機関、労働組合、労働基準監督署との橋渡し役となり、協働関係を築き、並走していくことを期待するとの意見が出された。

 

シンポジウム
製品事故被害者は救済されているか?
製造物責任法施行20年の歩みと課題
12月22日 弁護士会館

  • シンポジウム「製品事故被害者は救済されているか?~製造物責任法施行20年の歩みと課題~」

PL法(製造物責任法)は、施行から20年を迎えた。製品事故においては、欠陥を責任原因とする判断が定着しつつある一方、推定規定や証拠開示措置がないために、被害救済の現場では今なお被害者側の立証負担が重い。
この20年の歩みを総括し、PL訴訟実務のさらなる発展に向けて課題を抽出すべく、シンポジウムを開催した。

 

パネルディスカッションの様子

前半は、3人の登壇者による基調報告を行った。
消費者問題対策委員会の浅岡美恵幹事(京都)は、PL法が、日弁連が消費者団体と連携して立法に取り組んだ初めてのケースであることなど、PL法制定の経緯について報告した。
菅聡一郎委員(大阪)は、PL紛争の現状について、製造物性や因果関係・損害など主要な論点ごとに裁判例を整理しつつ報告した。
加藤新太郎教授(中央大学大学院法務研究科/第一東京)は、裁判官として取り扱ったPL訴訟の処理について報告するとともに、原告・被告代理人に求められる役割についても詳述した。
後半はパネルディスカッションを行い、浅岡幹事は、家電製品に起因する火災事例については、ほぼ欠陥が認定されるようになったと述べ、PL法の成果に一定の評価を与えた。
中村雅人幹事(東京)は、明瞭な証拠が存在するにもかかわらず、裁判官が証拠に基づかない考察を割り込ませた結果、欠陥が認定されなかった裁判事例を紹介し、どの裁判所に係属しても適切な判断が下されるよう、日本でも製品の適正な使用を前提に、製品に欠陥が存在したと推定し、被害者が欠陥の存在を証明せずとも加害者に責任を負わせる推定規定を導入すべきだと言及した。
また、加藤教授は、化学物質過敏症がまだ新知見であったころに健康被害を否定した裁判事例に関し、裁判所は新知見を前提とした責任を認めることを抑制する傾向があり、原告代理人としては、その点を踏まえて、被害者の使用直後の症状や当時の認識などについて、さまざまな角度から具体的立証をすることが重要であると意見を述べた。

 

第2回
自治立法に関する研修会
12月19日 弁護士会館

弁護士が住民の福祉向上と法の支配の拡充のために、条例制定にいかにかかわるかをテーマに、講義とパネルディスカッションを行った。

 

本研修会は、2014年12月20日に開催した「自治立法に関する研修会」の成果を踏まえ、開催したものである。
はじめに、「条例制定の面白さと難しさ~弁護士の出番~」と題して、宇那木正寛准教授(鹿児島大学法文学部法政策学科)が講義を行った。
岡山市職員として条例制定にかかわった経験等も踏まえ、弁護士が関与し得る場面やかかわり方を具体的に想起しながら、条例制定における苦労や醍醐味について熱く語った。
続いて、北村喜宣教授(上智大学法科大学院)が、「『沈黙は何を語るのか?』~法律における条例規定の意味の変遷~」と題して講義を行った。
地方分権の時代において、憲法の下で実現されるべき国と自治体の適切な役割分担にかんがみれば、法律における条例規定の欠缺は条例の否定と解すべきではなく、むしろ地域特性に即した柔軟な条例制定を認めたものと解すべきとして、条例の可能性の広がりに期待を込めた。
最後に、「条例制定に関与した弁護士の実体験から」というテーマで、自治体等連携センター条例部会の幸田雅治部会長(第二東京)がコーディネーターを務め、岩本安昭会員(大阪)および森岡誠会員(第二東京)をパネリストに迎えてパネルディスカッションを行った。
自治体外部の弁護士、自治体の顧問弁護士、地方議会・政党に対するアドバイザーとして条例制定に関与した立場から、それぞれの実体験を基に、自治体各部署の行政課題を法的観点から整理する場合や既存条例を法律の改正に対応させる場合など、具体的な場面ごとに必要とされる素養や知識について、活発に議論を交わした。

 

家事法制シンポジウム
相続関連紛争の解決はいかにあるべきか
12月12日 弁護士会館

  • 家事法制シンポジウム「相続紛争の解決はいかにあるべきか」

法制審議会民法(相続関係)部会(以下「法制審」)では、2015年4月から、相続実体法制見直しの議論を行っている。現在の相続関連紛争や裁判手続の実情を踏まえ、手続法の改正も含めた幅広い観点からの検討が求められる。そこで、本年度の家事法制シンポジウムでは、遺産分割およびこれに関連する紛争とその解決手続の現状を検証し、相続関連紛争の適正・迅速な解決に資する法制度・法運用について議論を行った。

 

第1部では家事法制委員会の藤原道子副委員長(第二東京)と増田勝久委員(大阪)が基調報告を行い、遺産分割事件は家裁における家事事件の手続、遺留分減殺請求事件は地裁における訴訟手続、と紛争解決手続が分断され、当事者に不満が生じている実情に触れた上、法制審において両事件を一回的に解決するための方策について検討が進められていること等を報告した。
第2部のパネルディスカッションでは、具体的事例を基に立法論を含めた意見交換を行った。
相続により当然に分割され遺産分割の対象とならないとされる可分債権の扱いについて、笠井正俊教授(京都大学大学院法学研究科)は「実務上の要請を踏まえ、預金だけは対象に取り込む立法があってもよい」と私見を論じた。
遺産分割事件と遺留分減殺請求事件の一回的解決の方策については、加藤祐司副委員長(第一東京)が、遺留分減殺請求事件を家裁に移管し、遺産分割事件については遺留分減殺請求の訴訟事件の附帯処分として解決する立法的方策につき言及した。また、西山英昭氏(元家庭裁判所調停委員)は、複雑事案であっても、代理人弁護士の熱意の下、一回的解決を果たした経験があると事例紹介を行った。
近藤ルミ子会員(第一東京)は、元裁判官の立場から、相続関連紛争における裁判官の指揮の重要性を強調した。

*法制審民法(相続関係)部会の議論状況および資料等は法務省ホームページにおいて確認することができる。

 

オープニング・オブ・リーガルイヤー
1月11日 シンガポール

シンガポールの最高裁判所が、2016年の裁判所業務の開始を祝して開催した式典(オープニング・オブ・リーガルイヤー)に、日弁連代表として鈴木克昌副会長が参加した。
アジアで存在感を増す同国法曹の現状を視察するとともに、昨年6月に日弁連とシンガポール弁護士会との間で友好協定が締結されたことを受け、今回の訪問となった。

 

シンガポールの最高裁判所

式典では、法曹三者の代表が、シンガポール建国50周年に当たる昨年を振り返り、所信表明を行った。
司法長官からは、犯罪を生みださない社会の実現に向けた取り組みとして、一定の軽微な犯罪に関する社会内処遇命令の活用や、罪を犯した若年層や加害者家族のサポート等が紹介された。また、刑事手続に対する信頼確保のための試みとしては、取調べ録画の試行や裁判の迅速化、手持ち証拠の開示の拡大案が紹介された。
弁護士会会長からは、昨年逝去したリー・クアンユー元首相が実現した法の支配の徹底を引き継ぎ、刑事事件について、扶助制度(弁護士会が若手弁護士を雇用してプロボノの刑事事件に当たらせる仕組み。法律事務所からの寄付や政府の補助で運営されている)の拡大による司法アクセスの拡充に加え、弁護士へのより早期のアクセスを実現していくことが表明された。
最高裁判所長官からは、次の50年に向けた重点項目の一つとして、昨年開設された国際商事裁判所(SICC:クロスボーダー商事訴訟事件が国際裁判官によって審理される)等を活用して、法律サービスに関するアジア地域のハブたる地位を強化することが挙げられた。
シンガポールの法曹関係者の間では、同式典での所信表明は毎年注目を集めており、その全文はインターネット上で公表されている。
今回の訪問は、日弁連とシンガポール弁護士会との友好関係の強化・発展に向けた取り組みについての協議も目的の一つであり、両会の有益な交流の機会となった。
(国際室長 山神麻子)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.108

住宅リフォーム・紛争処理支援センターの取り組み

昨年明らかになったマンション等の基礎ぐい工事問題。住宅に関するトラブルは多岐にわたります。
そこで今回は、住宅紛争の迅速、適正な解決を図るため、住宅相談、住宅紛争処理への支援などを行っている公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター(以下「支援センター」)を訪ね、佐々木宏理事長、後藤隆之専務理事からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 

支援センターの役割や主な活動は

佐々木理事長(右)と後藤専務理事

支援センターは、2000年に住宅品質確保法に基づき、「住宅紛争処理支援センター」として国土交通大臣の指定を受けました。住宅相談や住宅紛争処理への支援など、幅広い業務を行っています。また、消費者が安心してリフォームを行える健全なリフォーム市場の環境整備にも取り組んでいます。
具体的な活動としては、電話相談、専門家相談、住宅紛争審査会における裁判外紛争処理(ADR)への支援などが挙げられます。

 

電話相談とは

無料の電話相談窓口「住まいるダイヤル」(0570―016―100)を設け、全国から住宅に関する電話相談を受けています。消費者等からの、住宅の取得やリフォームなどのトラブルに関し、相談内容に応じて、専門家相談や紛争処理手続を紹介しています。
対応する相談員は、実務経験を有する一級建築士で、専門的な知見をもとに助言を行っています。
新規採用時には1カ月程度の研修(OJTを含む)を受ける必要があるほか、定期的に外部講師による研修、各種セミナー、相談員相互の意見交換等により能力の向上に努めています。なお、弁護士も常駐しており、必要に応じて相談員に法的助言を行える体制を整えています。
相談者は、消費者が8割を超えていますが、消費生活センターや地方公共団体からの相談も1割弱あります。毎日150~200件程度の相談があり、件数は毎年増加していますので、体制の強化が必要だと考えています。
また、2010年度からは、リフォームの見積が妥当かどうか不安であるとの相談に対応するため、希望に応じて、契約前に相談者から見積書などの送付を受け、電話で助言や情報提供を行っています。

 

「住まいるダイヤル」相談ブースの様子

専門家相談とは

電話相談後、より専門的な相談が必要な相談者のため、2010年4月から弁護士会と連携し、弁護士と建築士がペアになって、相談者と対面相談を行う「専門家相談」を始めました。2011年11月にはすべての弁護士会との間で連携体制が整いました。専門家相談は原則として無料で、担当弁護士が必要と認めた場合には、3回まで利用可能となっています。
この専門家相談は、住宅品質確保法に基づく「建設住宅性能評価書」の交付を受けた住宅、住宅瑕疵担保履行法に基づく住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅などが対象であり、初年度の利用件数は600件程度でしたが、2012年度からは1000件を超え、2014年度には1806件と、増加し続けています。利用者からは、弁護士と建築士の双方が同席して相談に応じるワンストップ体制が高く評価されています。

 

住宅紛争審査会における裁判外紛争処理(ADR)とは

支援センターは、全国の弁護士会が行っている住宅紛争審査会によるADRの推奨、紹介をしています。同ADRは、前述の評価住宅および保険付き住宅の契約当事者(取得者・供給者)を対象に、住宅に関する紛争について迅速な解決が図られるようにしたもので、弁護士と一級建築士等の建築専門家が、紛争処理委員として、公正・中立の立場で紛争の解決に当たっています。紛争処理委員が現場を見に行くことも多く、柔軟な解決が可能です。また、審理期間も平均6.6カ月と迅速な解決が図られています。申請手数料は一律1万円で、原則として、それ以外の費用はかかりません。支援センターは、住宅紛争審査会に対する紛争処理業務に必要な費用の助成だけでなく、住宅紛争処理の参考となる技術関連資料や判例の情報提供、終結した紛争処理事件の事例集の提供などの支援を行っています。

 

弁護士会との連携

支援センターと弁護士会とは、前述以外にもさまざまな連携をしています。例えば、住宅紛争審査会の紛争処理委員等に対する研修、住宅紛争審査会や日弁連等との連絡調整、住宅取得者等に対する紛争処理や専門家相談の仕組み等の周知、手続の紹介などを行っています。
昨年発覚した、マンション等の基礎ぐい工事問題に関しては、国土交通省からの要請を受けて、住まいるダイヤルの体制を増強し、消費者からの相談に対応しています。法律相談が必要なものについては、弁護士会と連携し、弁護士会の相談窓口を紹介しています。

 

弁護士に対するメッセージをお願いします

紛争処理委員に限らず多くの弁護士に支援センターの活動内容を知ってもらい、活用してもらいたいと思います。今後も、日弁連や弁護士会と意見交換しながら、よりよい制度を作っていきたいと考えています。

 

日弁連委員会めぐり 83

弁護士倫理委員会

今回の委員会めぐりは、倫理研修のテキストとしておなじみの「解説『弁護士職務基本規程』第2版」の制作を担った弁護士倫理委員会です。
髙中正彦委員長(東京)、植田正男副委員長(福岡県)、山口健一副委員長(第二東京)、溝口敬人副委員長(東京)、大川康平副委員長(第一東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

前列左から山口副委員長、髙中委員長、植田副委員長、後列左から溝口副委員長、大川副委員長

委員会設置の経緯は

2001年4月、弁護士職務基本規程を見直して改正案を策定し会長に答申すること、弁護士倫理の一層の向上に資する方策を検討することを目的として設置されました。

 

主な活動内容を教えてください

現在、「解説『弁護士職務基本規程』第2版」の改訂作業を行っています。第2版の発刊後、弁護士倫理に関する注目すべき判例や懲戒議決等が多数出されていますので、これらを踏まえた解説書とすべく、2016年度中の刊行を目指して作業しています。
また、並行して、弁護士職務基本規程そのものの改正についても検討を進めています。規程制定から10年以上が経ちましたが、この間の弁護士人口の増加や職域拡大・海外展開等の活発化によって、従来想定されなかった弁護士倫理上の諸問題が発生しています。それらに適切に対応できる規程にしなければなりません。
さらに、懲戒処分事例の検索・閲覧システムを会員専用ホームページ内に設置することも検討しています。

 

規程改正に向けた検討作業の行程は

法科大学院の法曹倫理担当教員、日弁連や弁護士会の各種委員会等を対象にアンケートを実施し、検討すべき問題について情報集約を行いました。
その上で、昨年、意見交換会を実施し、守秘義務・利益相反・組織内弁護士などに関する弁護士倫理の問題について議論を行いました。
弁護士倫理は、学者と実務家がコラボする学問分野でもありますので、学者の先生方にも知恵をお借りしつつ検討を進めています。

 

会員へのメッセージをお願いします

弁護士倫理というと、ともすれば「制約」と捉えられてしまう側面もあるかもしれません。しかし、職業倫理があることによって、依頼者の利益が正しく守られ、国民からの信頼が高まり、他業種との関係でも差別化が図られます。また、ときに弁護士自らの身を守る術としても働きます。
弁護士として、法律実務に精通していることはもちろん大事ですが、それと同じくらい倫理を重視し、実践していただきたいと願っています。

 

ブックセンターベストセラー
(2015年11月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 弁護士専門研修講座 交通事故の法律相談と事件処理[民事交通事故訴訟の実務Ⅲ] 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会 編 ぎょうせい
2 最高裁判所判例解説 民事篇 平成24年度(上)
(1月~2月分)
法曹会 編 法曹会
3 最高裁判所判例解説 民事篇 平成24年度(下)
(3月~12月分)
法曹会 編 法曹会
4 判例による不貞慰謝料請求の実務 中里和伸 著 LABO
5 弁護士の周辺学 実務のための税務・会計・登記・戸籍の基礎知識 髙中正彦・市川 充・堀川裕美・西田弥代・関 理秀 編著 ぎょうせい
6 別冊ジュリストNo.226 民事訴訟法判例百選[第5版] 高橋宏志・高田裕成・畑 瑞穂 編 有斐閣
7 新版 ガイドブック 弁護士報酬 吉原省三・片岡義広 編著 商事法務
8 量刑調査報告集Ⅳ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
9 訴訟の技能 ―会社訴訟・知財訴訟の現場から 門口正人・末吉 亙・中村直人・佐藤久文 著 商事法務
10 簡易算定表だけでは解決できない 養育費・婚姻費用算定事例集 森 公任・森元みのり 編著 新日本法規出版

 

編集後記

日弁連制作のポスターが全国各地で掲出された。女優の武井咲さんを起用したもので、日弁連として初めての試みだ。
早速、掲出されている様子を見るため街に出た。訪れたのは小さな郵便局と地下鉄駅構内のデジタルサイネージ。郵便局では、たくさんの掲示物に囲まれていたが、背景の緑と洋服の青、そして武井さんの自然な表情が相まって爽やかさが際立っていた。デジタルサイネージは、15秒程度の短い間だが、明るく美しい画像で強い印象を与えていた。
もっとも、ポスターの制作は最終目標ではない。今後も、弁護士への信頼・親近感といったイメージを、継続的に訴えかけていくことが重要だ。ポスターを有効活用し、弁護士・弁護士会のイメージアップのため何ができるかを考え続けていきたい。

(T・S)

*既にデジタルサイネージ・ショッピングモールでの掲出は終了。郵便局での掲出は本年2月28日まで。