日弁連新聞 第504号

最終コーナーを迎えて
村越執行部ラストスパート!

会長室でインタビューに応じる村越会長

新年明けましておめでとうございます。本年が皆さまにとって素晴らしい年となりますようお祈りいたします。

 

会務に当たり大切にしてきたことは

早いもので、私の日弁連会長任期もあと3カ月となりました。
会長就任以来、この困難な時期に日弁連はどうあるべきか、ということを常に考えてきました。私にとってのキーワードは3つです。
一つ目は、「信頼関係」です。日弁連とさまざまなステークホルダーとは、当然に互いの立場や見解が異なりますが、そうであるからこそ、各方面との信頼関係を築くことを何よりも大切にしなければなりません。信頼関係のないところで何を話しても、分かり合えないし、聞いてすらもらえないのです。
二つ目は、「社会の支持」です。日弁連の政策と活動について、言いたいことを言えばそれで良いといった独りよがりに陥ることなく、社会の理解と支持を得られるよう最大限の努力をしなければなりません。言い換えれば、日弁連の政策と活動を市民的な基盤を有するものにする必要があるということです。
三つ目は、「結束」です。山積する難問に立ち向かうためには、会員と弁護士会と日弁連とが心と力を一つにして取り組むことが必要不可欠です。内部の論争に明け暮れているようでは、何事も実現はしないのです。
これまで、以上の3点を肝に銘じてやってきました。

 

もっとも力を入れてきた課題は

日弁連が、膨大な人・時間・労力を費やして取り組んできたのが法曹養成制度改革です。ご承知のとおり、昨年6月30日に法曹養成制度改革推進会議決定が取りまとめられました。この決定の積極的な内容の具体化を進めることで、これまでの日弁連の提言を実現する可能性が生まれます。
司法試験合格者を1500人とすることを基軸に、法科大学院改革、司法試験・予備試験の改善、司法修習の充実と修習生に対する経済的支援を一体として進めることが必要です。
同時に、司法アクセスの改善、活動領域の拡大、若手支援と法曹の魅力の発信に取り組み、法曹志願者減を克服し、力強い司法を創らねばなりません。
大きな困難はありますが、可能性を現実のものとするため、全国の会員・弁護士会と力を合わせ、一致結束して取り組みたいと考えています。

 

会務執行方針の第1として「身近で使いやすい司法の実現」を掲げていますね

司法の一翼を担う日弁連にとって、市民に身近で使いやすい司法を実現することが最大の責務であると思います。課題はたくさんありますが、司法基盤の整備と司法アクセスの改善を進めることを重視して取り組んできました。

 

司法基盤の整備に関する取り組みの状況は

一昨年の9月から、最高裁と、主として裁判所支部の充実について協議を開始しました。
このような協議が行われることは画期的なことであり、何よりも信頼関係を大切にして、真剣かつ真摯に協議に臨みました。
私たちと同様に、真剣かつ真摯に対応してくれた最高裁には本当に感謝しています。
間もなく、一定の結論を得ることができるものと期待しています。

 

司法アクセスの改善に向けた取り組みの状況は

まず、日弁連・弁護士会として、自分たちでできることについては最大限の努力をしなければなりません。
第1は、弁護士過疎、ゼロワン支部の解消です。昨年7月、松江地裁西郷支部管内の隠岐の島町に隠岐ひまわり基金法律事務所を開設し、いったん全国のゼロワン支部が解消しました。しかし同年9月、岡山地裁新見支部が再びワンになってしまいました。ゼロワン支部の解消は引き続きの課題です。
第2は、法律相談の活性化です。昨年10月、全国各地の弁護士会の法律相談センターに予約を申し込むことができる24時間インターネット予約サービス「ひまわり相談ネット」の運用を開始しました。市民に活用され、弁護士会の法律相談がより利用しやすく充実したものとなることを期待しています。

 

法律や制度の改革・整備も必要ですね

資力の乏しい方が弁護士に相談し司法を利用しやすくするために、民事法律扶助の拡充が必要です。総合法律支援法の改正や予算の増額を求めています。民事法律扶助の拡充に関しては、一昨年8月、日本司法支援センターとの間で、原則としてADR手続も援助対象とする運用が確認され、ADR申立手続費用が立替払いされることになりました。
現在、高齢者・障がい者、DV・ストーカー等の被害者、大災害の被災者に対する援助を手厚くし、そうした人たちがより利用しやすい法律扶助等とするための総合法律支援法の改正案が国会に提出されています。日弁連が目指してきた方向に沿うものであり、本年の通常国会で何としても法改正を実現し、利用の促進とさらなる制度の拡充を目指したいと考えています。
また、昨年10月、日弁連が協定を締結している大手損保会社が、交通事故に基づく損害賠償請求だけでなく、被害事故、人格権侵害、借地・借家、遺産分割調停、離婚調停および労働(オプション)に関する法的トラブルも補償対象とする新しい権利保護保険(弁護士保険)の販売を始めました。日弁連は、昨年12月、同社との協定に基づき弁護士の紹介を開始しました。この保険が活用されることにより、市民の、弁護士と司法へのアクセスが飛躍的に改善されることが期待されます。同時に、日弁連・弁護士会として質の高い法的サービスを提供するための工夫と努力が一層必要になります。

 

広報活動も強化されましたね

問題を抱えていても弁護士に相談できていない方がたくさんいます。弁護士会が法律相談を行っていることを知らない方もたくさんいます。広報活動には、そうした状況を改善し、弁護士に気軽に相談してもらえるようにするという目的があります。
また、現在、法曹を目指す若者が激減しています。弁護士の仕事や役割について広報しその魅力を発信することで、たくさんの有為な人材に法曹を目指してもらうことも、広報に込めた思いです。効果の検証が難しく、費用対効果を常に意識しなければなりませんが、本年は女優の武井咲さんを起用したポスターを制作し、弁護士会のご協力の下、全国に掲出します。
さらに、「弁護士のひみつ」という小学生向け学習漫画の制作に協賛し、全国の小学校と公立図書館に寄贈することも企画しています。

 

弁護士の活動に拡がりが見られますね

ここ数年、企業内弁護士が毎年200人以上増えています。10年前は、約100人でしたが、現在は1500人を超えました。
一昨年、会長に就任して間もなく、初めて日弁連執行部と日本組織内弁護士協会(JILA)役員との意見交換・懇談の機会を持ちました。現在も継続して開催しています。日弁連は、「企業内弁護士を支援する」というスタンスで、JILAとの連携を深め、研修や課題の研究・解決などの面で協力関係を強化する必要があります。
地方公共団体で常勤の任期付公務員として仕事をする法曹有資格者(残念ながら、弁護士登録をされていない方が存するため、こういう言い方にならざるを得ません)も100人を超えました。任期付公務員は着実に増えていますが、経験年数などの条件が合わず、応募がない例もあります。
日弁連として、ニーズに応えるために、任期付公務員を支援・養成する法律事務所制度の運用を始めました。

 

国際的な分野での拡がりは

昨年6月にシンガポールに行き、日弁連とシンガポール弁護士会の友好協定を締結しました。ここ数年、シンガポールで働く日本人弁護士は激増しています。
今年のシンガポールのThe Opening of the Legal Yearには、初めて日弁連代表として鈴木克昌副会長が参加します。
法務省、外務省、JETRO、JICAとも連携し、日弁連として、海外で活躍する弁護士に対しどういう支援ができるのか検討を進めたいと思います。
2017年には東京でローエイシアと若手法曹国際協会(AIJA)の年次大会が開催されますので、日弁連と弁護士の国際化は一層進むものと思われます。

 

安保法案反対の運動にも注力されましたね

日弁連は、政党でも、政治団体でも、運動団体でもありません。強制加入制の法律家団体であり、政治的には不偏不党、中立です。
しかし、基本的人権の擁護を最大の使命とする法律家団体としての立場と領域において、日本国憲法の基本理念である立憲主義についてだけは、ものを言わざるを得ないと考え、その一点で一致して取り組みました。
今後も、地に足の着いた憲法・法律の研究や意見表明が大切になると思います。ご理解いただければ幸いです。

 

若手の意見も大切にされていますね

60期代が会員の4割を超えました。彼らが次代の日弁連の担い手です。若手の支援を考える上で、また今後の日弁連を考える上で、若手会員の意見を聞くことは不可欠です。
昨年度2回、若手カンファレンスを開催し、全国から62期以降の会員に集まってもらいました。本年度も3回若手会員との意見交換を行い、中部弁連大会・四国弁連大会の前夜に名古屋と松山で開催された両弁連主催の若手カンファレンスに、日弁連執行部が出席しました。
正直、刺激的でスリリングでしたが、大変に有意義でした。出された意見のうち、いくつかは実行に移しました。若手の意見を反映し、若手がこれからの日弁連を担えるシステムを引き続き検討したいと思います。

 

他に力を入れたことは

会員と弁護士会に対する支援の強化です。
会員については、2016年4月からの会費の減額、研修の充実と2016年7月からの研修無料化、メンタルヘルスカウンセリング事業などを実施・開始しました。
弁護士会については、小規模弁護士会に対する助成対象の拡大、日弁連の要請で開催(共催)してもらったシンポジウム等に対する支援、広報・法律相談・若手支援に対する補助等、財政的な支援を大幅に強化しました。
昨年12月の臨時総会で会費減額をご承認いただきましたが、これにより日弁連の収入が、減額しなかった場合に比べ、年間9億円ほど減少します。経費の節減に努めつつ、必要な事業・活動にはメリハリをつけて予算措置を講じていきます。

 

思い出深いことは何ですか

もう終わったかのような質問ですね。
何と言っても1回1回の理事会における議論です。
私としては、ここが日弁連の意思を決定する実質的な最高機関であり、会内民主主義が発露される場であると考え、可能な限りの情報を共有し時間をかけて丁寧な議論を行ってきたつもりです。必要に応じ、理事会を3日間開催したことも、夜8時過ぎまで審議したこともありました。
法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の取りまとめに対する日弁連の対応方針を決める理事会は、とても厳しい議論になりました。2014年の4、5、6月3回の理事会で合計約8時間ご審議いただき、最後は挙手で採決しました。
意見は分かれましたが、議論を尽くし、会内民主主義はしっかりと機能したと思います。就任直後の不慣れな時期でもあり、法制審特別部会の有識者委員の皆さんとしっかり連携しながら、会内のご理解を得て、社会に向けて責任ある判断と決定をしなければならないという、とても厳しく苦しい経験でした。真剣にご審議いただいた理事の皆さんに心から感謝しています。

 

会員へのメッセージをお願いします

日弁連執行部は、日々、日弁連の掲げる政策課題や国会等で審議・検討されている立法・諸制度などについて、最高裁や法務省をはじめとする諸官庁、政党・国会議員、各種団体等と折衝し、協議しています。
そこで得た膨大な情報のうち、必要なものを可能な限りリアルタイムで会員に提供し共有していきたいと考えています。
媒体は、この日弁連新聞やファックスニュース、メールマガジンなどになります。ぜひ、これらにお目通しいただきたいと思います。
事実認識を可能な限り共有した上で、日弁連の進むべき道について積極的にご議論いただければ誠に幸いです。よろしくお願いいたします。

(インタビュアー・広報室長 佐熊真紀子)

 

臨時総会開催
12月4日 弁護士会館

会則中一部改正(第九十五条及び第九十五条の二・会費減額及び会館維持運営資金変更)の件など13議案が審議され、いずれも賛成多数で可決された。

 

会則中一部改正(第九十五条及び第九十五条の二・会費減額及び会館維持運営資金変更)の件など5議案(第1号ないし第5号議案)

いずれの議案も賛成多数で可決された

一般会計の繰越金額が約33億7000万円に及んでいることなどを勘案し、2016年4月以降、①弁護士会員の一般会費を、月額1万4000円から1万2400円(司法修習終了後2年未満の者については、月額7000円から6200円)に減額し、②一般会費から会館特別会計への繰入額を、月額1500円から800円に引き下げ、③弁護士会員以外の会員の会費についても、それぞれ減額するとともに、これを踏まえて、平成28年度4・5月分暫定予算につき補正を行うことを提案するもの。
討論では、会費減額の方針については賛成の意見が相次いだが、減額の幅について意見が分かれた。また、次年度以降も引き続き検討を求める意見もあった。
採決の結果、いずれも賛成多数で可決された。

 

債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第九十三号)中一部改正の件(第6号議案)

本規程は、最長5年の時限的な規程であり、2016年3月末日までの「理事会で定める日」をもって失効するところ、近年の過払金返還請求事件数の推移等の諸事情に鑑み、有効期限をさらに5年間延長することを提案するもの。
採決の結果、賛成多数で可決された。

 

依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程(会規第九十五号)中一部改正の件(第7号議案)

2014年の「犯罪による収益の移転防止に関する法律」改正(2016年10月1日施行)を受け、日弁連はこれまでも弁護士自治の下、依頼者の本人特定事項の確認および記録の保存等について自主規定に定めていることから、本規程の改正を提案するもの。
討論では、賛成・反対双方の立場から議論が交わされた後、賛成多数で可決された。
なお、改正法の下でも弁護士に通報義務は課されない。

 

その他の議案

資格審査手続規程(会規第二十一号)中一部改正の件など4議案(第8号ないし第11号議案)、外国法事務弁護士法人制度創設に係る外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部改正に伴う会規(外国特別会員関係)の整備に関する規程(会規第百一号)中一部改正の件など2議案(第12号及び第13号議案)のいずれについても、賛成多数で可決された。

 

3/11臨時総会開催へ

12月7日に会員から臨時総会の招集請求があったことを受け、12月17日の理事会で、本年3月11日(金)午後2時から、弁護士会館クレオにて、法曹養成制度に関する件を会議の目的たる事項とする臨時総会を開催することが審議され、承認された。
なお、議案書は2月上旬に会員に郵送される予定。

 

第68期司法修習終了者
1131人が一括登録
250人余りが就職未定の状況

12月17日、二回試験に合格した修習終了者のうち1131人が日弁連に一括登録した。同日時点での未登録者数は468人であり、終了者全体の約26.5%を占め、前年同時期と同水準となっている。2016年1月の登録予定者や、当初より登録を予定していない人数を差し引くと、250人余りの終了者が就職未定の状況にあると推計される。
引き続き、若手弁護士サポートセンターを中心に、未登録者への採用情報提供、即時独立支援、さらには登録後のフォローアップを続けるとともに、今後の法曹養成・法曹人口の議論において、かかる就職難の状況も踏まえた検討がなされるよう働きかけていきたい。

 

修習終了者数 登録者数 未登録者数
新61期 1731 1494 89
新62期 1992 1693 133
新63期 1949 1571 214
新64期 1991 1423 400
現新65期 2080 1370 546
66期 2034 1286 570
67期 1973 1248 550
68期 1766 1131 468

※登録者数・未登録者数は各期一括登録日時点

新事務次長紹介

二川裕之事務次長

 

1月1日付で、二川裕之事務次長(横浜)が就任した。

 

二川 裕之(横浜・46期)

会名変更のため、「横浜」弁護士会として最初で最後の次長就任となります。日弁連歴が浅いので1つずつ勉強しながら、「ミッション!パッション!ハイテンション!!」(齋藤孝明治大学文学部教授の言葉をお借りしました)の気持ちをもって会務に精励する所存です。今後ともご指導・ご協力をよろしくお願いします。

 

第48回市民会議
法曹有資格者の活動領域の拡大等について議論
12月7日 弁護士会館

今回の市民会議は、古賀伸明委員が退任され、神津里季生委員、村木厚子委員を新委員として迎えた。法曹有資格者の活動領域の拡大について議論したほか、日弁連に対する率直なご意見を伺った。

 

法曹有資格者の活動領域の拡大について

鈴木克昌副会長が、自治体や企業で働く弁護士の増加状況、関与する分野の拡がりを報告した後、法の支配を拡げるために組織内弁護士の増加は必要だが、弁護士法第1条の理念に沿った資質と誇りをいかに維持するかが課題、と説明した。
活動領域については、神津委員から労働分野、特に労働教育、中川委員から国際法務、村木委員から中央官庁の業務におけるニーズの高さが指摘された。
また、活動領域拡大を支えるための法曹養成については、神津委員から、今般の法曹養成関連の議論と司法制度改革の原点との乖離につき懸念が示されたほか、中川委員からも、国際法務分野に通じた弁護士育成が急務であること、将来を見据えた目的的人材育成の観点が必要との厳しい指摘がなされた。
さらに村木委員からは、組織内弁護士の概念、役割について整理すべき時期にあるとの指摘がなされた。

 

日弁連に求めること

委員からは、法教育、貧困問題へのさらなる取り組みを期待する意見が寄せられた。
村木委員からは、法制審での経験を踏まえ、日弁連は刑事司法制度の運用監視の役割を適切に果たすべき、法制度策定の場面でも信頼されるカウンターパートとして活躍すべきとの指摘がなされた。
井田副議長は、日弁連には市民の利益を守るシンクタンクの役割を果たしてほしいと期待を寄せた。
中川委員からは、弁護士の利用者である市民の立場から意見を述べる市民会議の立ち位置を確認した上、弁護士業務の効率化、専門領域の明確化、弁護士の高齢化対策は、日弁連に検討を促したい課題と訴えた。
最後に北川議長は、法の支配こそが拡大すべき対象であり、「活動領域」拡大は世間の誤解を生むネーミングではないかと疑問を呈した上で、法の支配の基礎となる法教育への取り組みが極めて重要な課題となる、と締めくくった。

 

市民会議委員(2015年12月7日現在)(五十音順)

  • 井田香奈子(副議長・朝日新聞東京本社オピニオン編集部次長)
  •  
  • 長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
  •  
  • 北川正恭(議長・早稲田大学名誉教授)
  •  
  • 清原慶子(三鷹市長)
  •  
  • 神津里季生(日本労働組合総連合会会長)
  •  
  • ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  •  
  • 中川英彦(元京都大学法学研究科教授)
  •  
  • 松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
  •  
  • 村木厚子(前厚生労働事務次官)
  •  
  • 湯浅 誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

ちょっと待った!年齢引下げ
少年法の適用年齢引下げに反対するシンポジウム
11月24日 弁護士会館

  • ちょっと待った!年齢引下げ~少年法の適用年齢引下げに反対するシンポジウム~

基調講演を行う浜井教授

法務省が省内に設置した「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」において、少年法の適用年齢を満18歳未満に引き下げることについて議論が開始された。この点について、日弁連とすべての弁護士会および弁護士会連合会は、会長・理事長声明を発出し、引下げに反対している。
この反対の声をさらに広げるため、115人の参加者を集めシンポジウムを開催した。

 

冒頭、平山秀生副会長は挨拶の中で、18歳・19歳が少年法の適用から外れた場合、その多くは不起訴処分や罰金刑を受けるのみで教育的処遇はなされず、再犯リスク増加につながる恐れがある、と適用年齢引下げの問題点を指摘した。
浜井浩一教授(龍谷大学法務研究科)は基調講演で、世論が持つイメージとは異なり、少年非行は少子化を上回るペースで減少していることをデータで示した上、現行の少年法が採る「全件送致主義」は、日本特有の制度であり、これにより、軽微な犯罪も見過ごさず、非行を芽のうちに摘み取ることの効果が大きいと指摘した。
家庭裁判所調査官を35年間務めた伊藤由紀夫氏は、18歳は高校を卒業し社会に出る時期で、新しい環境に対応できなくなる少年が多い。そういう少年たちが再犯に及ばないための方策を考えていくことが重要で、それが調査官の仕事だと語った。
八田次郎氏(元小田原少年院長)は、少年院に収容される少年は、母子家庭の者が約4割、高校中退・中卒者が約6割と、厳しい境遇にある者が多いと紹介し、少年院での教育の必要性を述べた。
非行と向き合う親たちの会からの参加者は、少年院送致の事実をはじめは受け入れられなかったが、退院後の我が子の更生した姿に感銘を受けた、とその体験を語った。
また、「元少年」の女性からは、「人生の中で自分を認め信じてくれた大人は調査官が初めてだった。裏切ってはいけないと思った」と、現行少年法の意義を訴えた。

 

司法試験の更なる改善に向けて
司法試験シンポジウム
12月5日 弁護士会館

  • 司法試験シンポジウム「司法試験の改善に向けて」

法曹への登竜門である司法試験に関し、その内容や実施方法の在り方について討議を行うべく、法科大学院協会との共催でシンポジウムを開催した。

 

平成27年司法試験等に関する報告

冒頭、法科大学院センターの作業チームによる本年度の司法試験の出題傾向分析結果の報告と、それらを基にした民事訴訟法、刑法の論文式試験サンプル問題の提案がなされた。
民事訴訟法(民事系)は、当事者対立構造的な視点や具体的事実に着目させる問題が良いとして、平成26年試験をベースにサンプル問題が提案された。
また刑法(刑事系)は、平成25年試験をベースに、受験生が十分に検討する時間を得られるよう論点の数を絞るとともに、検察官の立場から解答する問題として新たな出題方式の提案がなされた。
その後、片桐武幹事(第一東京/法曹養成対策室嘱託)が、日本の司法試験との比較材料として韓国の弁護士試験を紹介した。
なお、平成27年試験において発生した考査委員による出題内容漏えい事案に関し、三澤英嗣幹事(東京/法曹養成対策室長)から、今回の事案発生を受けて法務省に設置された「司法試験出題内容漏えい問題に関する原因究明・再発防止検討ワーキングチーム」で、同種事案の再発防止のため、対策が検討されている旨の報告があった。

 

パネルディスカッション

後半は、松下淳一教授(東京大学大学院法学政治学研究科(民事訴訟法)/法科大学院協会事務局長)、伊東研祐教授(慶應義塾大学大学院法務研究科(刑法))、永野剛志会員(第二東京/前司法研修所民事弁護上席教官)、設楽あづさ会員(埼玉/前司法研修所刑事弁護上席教官)を迎えてパネルディスカッションを行った。
パネリストからは司法試験の難易度について、累積合格率が7割程度となるような問題を作成すれば良いのではないか、短答式については、上位2割程度は満点で良いのではないかとの提案がなされたほか、法科大学院自身がどのような試験問題が適切なのか提案し、試験問題の蓄積をしていくことがより良い試験問題の作成につながるとの指摘があった。
また、司法試験が実務家登用のための試験であることから、事案から証拠を見つけ出す問題の導入などの提案もなされた。

 

遺言・相続全国一斉相談会実施報告

  • 【11月16日限定!】「遺言・相続全国一斉相談会」を実施します

日弁連は、11月16日、弁護士会、信金中央金庫および特定非営利活動法人遺言・相続リーガルネットワーク(以下、「遺言・相続リーガルネットワーク」)と共催し、「遺言・相続全国一斉相談会」を実施した。
今回の相談会は、これまで毎年4月15日(よい遺言の日)に開催していた全国一斉電話相談とは異なり、①主催者に信金中央金庫および遺言・相続リーガルネットワークが加わったこと、②無料電話相談だけではなく信用金庫における無料面談相談も実施したこと、③電話相談および面談相談の担当者に、日弁連による事前研修会の受講を義務付けたことが特徴である。特に、遺言・相続をめぐる法的ニーズを弁護士につなげるべく、市民と日常生活において強いつながりを有する信金中央金庫に主催者となっていただいたことは、大変大きな意義があったものといえる。
また、遺言・相続リーガルネットワークは、日弁連の法的サービス企画推進センター遺言信託プロジェクトチーム(2008年、日弁連弁護士業務総合推進センターから改称。2006年12月から2010年5月まで設置)の設立趣旨を実践すべく設立された団体だが、今回の企画を実現するに当たっては、信金中央金庫とのパイプ役を果たしていただいた。
相談会の実施は、初の試みということで、市民への周知期間が短かかったにもかかわらず、相談件数は、電話相談が643件、全国138の信用金庫で開催した面談相談が679件、合計1322件にも上った。
相談会の企画・実施にかかわられた皆さまには、日弁連・弁護士会での協議や体制整備、信金中央金庫との協議や広報等につき、多大な協力をいただいた。この場を借りて御礼を申し上げる。

*同梱の日弁連高齢者・障害者権利支援センターニュースでも本件について掲載しています。ご参照ください。

(日弁連高齢者・障害者 権利支援センター委員 村林俊行)

 

第5回日韓バーリーダーズ会議
12月11日/12日
韓国・ソウル

本年度の日韓バーリーダーズ会議が韓国のソウルで開催された。1987年から毎年行われてきた両国弁護士会間の交流会を前身とし、日韓のバーリーダーズが一堂に会する会議となって今回で5回目となる。日弁連執行部や弁護士会連合会の代表等40人が訪韓し、日韓合わせて総勢約100人による会議および交流が行われた。

 

セッション1の「隣接士業の業務範囲の境界」では、両国における弁理士、司法書士(韓国では「法務士」)等による職域拡大の動きや対応が報告された。日本からは、法改正の具体的な動きに対して迅速に対応するべく、業際・非弁・非弁提携問題等対策本部において法の支配の観点から慎重に検討していることなどが紹介され、韓国からは、積極的なロビー活動を行う一方で、法的サービスの質を高め競争力の向上を目指す取り組みとして、最先端の知的財産セミナーを開催し、専門分野登録制度を活用していることなどが紹介された。
セッション2の「若手弁護士の能力向上・職域拡大」では、若手会員の割合が飛躍的に大きくなる中、その能力向上や活動領域の拡大のために、就職支援、海外インターンシップ、国際会議参加支援等に、両会ともに取り組んでいることが報告された。そのほか、日本からは、研修の無料化、開業支援、海外ロースクール推薦留学、中小企業の海外展開サポート研修等が、韓国からは、法務部(日本の法務省に相当)および世界韓人弁護士会(全世界の韓国系弁護士などの会)の協力により2014年に設立された海外進出アカデミーが、150人ほどの若手弁護士に対して国際法務に関する半年間にわたる講義を行ったことなどが紹介された。いずれの取り組みについても、双方参加者から熱心な質疑が行われ、この問題に対する両会の関心の深さがあらためて感じられた。

(国際室長 山神麻子)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.107

マタハラ問題に最前線で取り組む弁護士
圷由美子会員インタビュー

2014年10月23日の最高裁判決を契機に、一気に社会的認知が進んだマタニティハラスメント(マタハラ)問題。この問題の解決に注力する団体に「マタハラNet」(以下、「Net」)があります。
今回は、立ち上げ当初からその活動をサポートしてこられた圷由美子会員(東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

そもそも、マタハラとは?

「『すべての人が人間らしく安心して働き続けられる社会』の実現を目指していきたい」と語る圷会員

マタハラは、①妊娠・出産などを理由とする事業主による不利益取扱い、②上司や同僚による嫌がらせ=ハラスメント、という2つの側面をもつ問題です。①は男女雇用機会均等法(以下、「均等法」)第9条第3項などにより禁止されていますが、②は明文規定がなく、民法上の不法行為ないし職場環境配慮義務違反たる債務不履行などとして処理されます。②はまさに今、事業主に対し、上司らによるハラスメントを含め、防止措置義務を課す方向で立法化が進んでいます。

 

最高裁判決のインパクトは大きかったですね

最高裁判決では、妊娠を「契機とする」不利益取扱い(降格)を原則違法とし、実質、事業主側に立証責任を転換する規範を定立した点が画期的でした。
Netでは、判決直前・当日に交流会(兼記者会見)を開催し、翌日に外国人記者クラブで声明発表を行うことで、日本のマタハラの実情を国内外に発信しました。代理人の下中奈美会員、鈴木泰輔会員には、この間の惜しみない連携に大変感謝しています。

 

Net立ち上げの経緯は

育休中、地元で、妊娠などを機に退職させられたママたちに出会い、世論喚起をしなければと思い立ちました。育休明けの仕事初め、ある組織の女性リーダー研修にて、その旨発信したところ、メディアに声をかけられ、当事者を募ることとなりました。そして、各担当弁護士の紹介により出会ったのが、後にNet代表となる小酒部さやかさんを含む当事者3人でした。仲立人となってお引き合わせすると、彼女たちは、体験共有だけでなく、マタハラ被害者のための関連情報の発信源になろうと意気投合し、Net発足となりました。不思議な巡り合わせですが、私も一個人としてのサポートを決めました。

 

Netの活動内容は

「安心して妊娠、出産、子育てしながら働き続けられる社会の実現」のため、関連情報提供のほか、交流会開催、マタハラ防止への提言などを行っています。

 

サポート弁護士として関与していますね

立ち上げ当初は、団体の信用度を高めるという意味で弁護士の関与が重要でした。厚労省に8335通の署名を提出したときも、自分が同行することで、より真摯に対応いただけたと思います。併せて行った記者会見は、メディアに大々的に取り上げられ、これが、マタハラ問題の世論喚起の契機となり、2014年の流行語トップテンへ、そして、米国国務長官による、代表小酒部さんの「世界の勇気ある女性賞」受賞へと展開しました。
2015年3月には「マタハラ白書(抜粋版)」の監修弁護士として、前述②を含む独自の定義付けなどを発表する形で問題提起をしました。ただ、同年6月のNPO法人化の際には理事就任のお話もいただきましたが、辞退いたしました。被害の当事者を中心とする団体である点に意義があると考えたからです。Netが生の声を発信し、自分は距離を置いて客観性を担保しつつ発信する。そうした多面的アプローチが重要と考えました。

 

NPO化後、弁護士はどのような形で関わっていますか

Netに寄せられる相談のうち、弁護士が関与すべきものに、メールや面談で回答しています。同じ事務所所属の弁護士などにも手伝ってもらっています。併せて、日本労働弁護団の無料ホットラインなども案内してもらっています。

 

今後の展開は

立法・行政・司法の三方すべてに働きかけ、抜本的解決を後押ししたいです。立法面では、事業主にマタハラ防止措置義務を課す均等法などの改正が必要ですし、行政面では、雇用均等室における十分な当事者対応と厳正な行政指導の徹底が不可欠です。司法では、受任事件の訴訟活動を通じ、最高裁判断の浸透の一翼を担いたいです。
なお、今後も引き続き、マクドナルド訴訟以来のモットーである「すべての人が人間らしく安心して働き続けられる社会」の実現を目指していきたいです。マタハラ問題はその風穴という位置付けです。

 

会員へのメッセージをお願いします

マタハラ撲滅の取り組みは始まったばかり。相談を受けた際には、ぜひ積極的に傾聴いただき、併せて、当事者にしか分かち合えない共感の場として、Netのご案内をお願いします。また、会社側で活動される会員の皆さまには、未然防止とともに、法制度にのっとった適切な対処をお願いします。
さらに、立法や行政への働きかけという点では、弁護士会にも一層のご尽力をお願いする次第です。

 

日弁連委員会めぐり 82

日弁連高齢者・障害者権利支援センター

今回の委員会めぐりは、昨年6月に発足した日弁連高齢者・障害者権利支援センターです。寺垣琢生センター長(鳥取県)、青木佳史事務局長(大阪)、矢野和雄事務局次長(愛知県)、松隈知栄子事務局次長(愛知県)、八杖友一事務局次長(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 

前列左から、寺垣センター長、青木事務局長、後列左から、矢野事務局次長、松隈事務局次長、八杖事務局次長

センター設置の経緯は

(寺垣)日弁連は1998年に高齢者・障害者の権利に関する委員会を、2009年に高齢社会対策本部をそれぞれ設置し、高齢者・障がい者の問題について相互に連携・協力し、検討してきました。今般、高齢者・障がい者の課題が複雑化してきたことに加え、委員が重複しているなどの理由から、体制を強化・合理化し、より迅速かつ総合的・多面的な活動を行うため、両組織を統合し、当センターが設置されました。

 

主な活動内容を教えてください

(矢野)両組織のこれまでの活動を受け継いでいますが、高齢社会対策本部の活動を受け継ぐ活動として、日弁連と弁護士会の共催で高齢者支援の拠点となる地域包括支援センターとの連携事業や法テラスの司法ソーシャルワークに関し、法テラスとの連携に取り組んでいます。これらの活動は、高齢者・障がい者のための相談体制の充実につながっています。また、各弁護士会に設置されている高齢者・障害者支援センターの活性化のために全国各地で権利擁護の集いを開催しています。

(八杖)超高齢社会において弁護士会が対応すべき事業を「ひまわりあんしん事業」と名付け、全国の弁護士会で推進しています。これに止まらず、今後は地域包括支援センターでの相談など、積極的に高齢者・障がい者にアウトリーチしていく活動を予定しています。

 

弁護士後見人による不祥事に対しては

(青木)弁護士後見人の不祥事は、非常に大きな問題であり、その信頼確保は喫緊の課題です。オン・ザ・ジョブ・トレーニングの充実など、後見人に対するさまざまな支援体制を整備したいと考えています。

(松隈)裁判所に提出する後見人推薦名簿作成に当たっては、研修を充実させ、質の高い弁護士を推薦する制度を整備していきたいと思っています。

 

今後の課題は

(青木)財政的な面で高齢者・障がい者への福祉サービスの切り下げが行われていますが、センターの所管があまりにも広範で、十分な検討が出来ていません。今後、検討を進め、タイムリーに意見書を出していきたいと考えています。

 

(矢野)弁護士会によって高齢者・障がい者の問題への取り組みに温度差があるので、ぜひ関心をもって取り組んでいただきたいと思います。

 

会員へのメッセージをお願いします

(寺垣)福祉分野の問題に対する取り組みは、福祉側は法律問題として、弁護士側は福祉問題として、お互い敬遠しています。協同して取り組みやすい体制を構築していこうと思っていますので、ぜひ、多くの会員の皆さまに興味を持っていただきたいと思います。高齢者・障がい者、福祉事業従事者からも、多くの弁護士の参加が期待されています。

 

ブックセンターベストセラー
(2015年10月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 会社法入門 新版 岩波新書1554 神田秀樹 著 岩波書店
2 弁護士の周辺学 実務のための税務・会計・登記・戸籍の基礎知識 髙中正彦・市川 充・堀川裕美・西田弥代・関 理秀 編著 ぎょうせい
3 訴訟の技能 ―会社訴訟・知財訴訟の現場から 門口正人・末吉 亙・中村直人・佐藤久文 著 商事法務
4 判例による 不貞慰謝料請求の実務 中里和伸 著 LABO
5 簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集

森 公任・森元みのり 編著

新日本法規出版
6 法律家のためのITマニュアル[新訂版] 日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会 編著 第一法規
7 弁護士報酬基準等書式集[改訂2版] 弁護士報酬基準書式研究会 編 東京都弁護士協同組合
8 デジタル証拠の法律実務 Q&A 高橋郁夫・梶谷 篤・吉峯耕平・荒木哲郎・岡 徹哉・永井徳人 編 日本加除出版
9 論点解説 マイナンバー法と企業実務 宇賀克也・水町雅子・磯村 建 共著 日本法令
受任につながる相続相談の技法 高橋恭司 著 学陽書房

 

編集後記

広報室では、弁護士全体のイメージを向上させるため、女優の武井咲さんを起用したポスターとクリアファイルを制作しました。本紙がお手元に届くころには各弁護士会にポスターが届いている予定ですので、ぜひ出来映えをご確認ください。
さて、私事ですが、本号をもって広報室を離れることになりました。広報室では、弁護士のイメージを向上させるためにどうしたら良いか、活発に議論を重ねてきました。このポスターは、その答えの一つになり得ると思います。
もし出来映えを見て「なかなか良いものができた」と思っていただけたなら、一人でも多くの市民の目に触れるよう、ポスター掲示にご協力ください。
私も一会員として、ポスターを持って関係機関や窓口を回り、会話のきっかけにするとともに、ポスター掲示を依頼しようと楽しみにしています。(Y・O)