日弁連新聞 第502号

第58回人権擁護大会開催
10月1日・2日 千葉市

  • 第58回人権擁護大会・シンポジウムのご案内

10月2日、千葉市において、第58回人権擁護大会を開催した。約1100人の会員が参加し、「総合的な意思決定支援に関する制度整備を求める宣言」、「全ての女性が貧困から解放され、性別により不利益を受けることなく働き生活できる労働条件、労働環境の整備を求める決議」、および「福島第一原子力発電所事故の被災者を救済し、被害回復を進めるための決議」を採択した。
大会前日には、これに関連して3つのシンポジウムを開催し、計約2100人の会員・市民の参加を得た。次回大会は福井市で開催される(2面に各シンポジウムの記事)。

 

意思決定支援に関する宣言

約1100人の会員が参加し、3つの宣言・決議を採択した

2014年に批准した障害者の権利に関する条約第12条の下、障がい者らの意思決定を支援する法制度等の総合的な制度整備が求められていることを踏まえ、①国及び地方自治体は、意思決定支援の制度設計と、実施体制の整備を進めるべきこと、②国は、意思決定支援の理念に基づく運用改善等を求められている現行成年後見制度について、当事者や関係諸団体と十分に協議の上、早期に具体的制度設計を行うべきであることを提言した。

 

女性の貧困・労働に関する決議

全ての女性が、人間らしい生活を営むに足る労働条件、労働環境を享受すべく、①国及び地方自治体は、客観的な職務評価基準を整え、同一価値労働同一賃金の原則が確保される措置を早急に構築すること、②国は、男女労働者が家事・育児・介護等の家族的責任を分担できるような措置を講じるとともに、労働時間の上限時間等を1日及び週単位で設定すること、③国及び地方自治体は、主たる男性稼ぎ手とその妻子で構成された世帯を標準モデルとする制度設計を見直し、多様な家族の形態に応じた制度への変革、所得の再分配機能の強化をすること、④国は、積極的差別是正措置を義務付ける法律を策定することなどを決議した。

 

原発事故の被災者救済などに関する決議

福島第一原発事故(以下、「本件事故」)の被災者らの健康と生活を守り、被害回復を進めるため、①国は、定期的かつ継続的な健康診断を無償で行うなどの健康被害への対応、生活再建のための施策を行うべき、②国は、汚染水増加と漏出防止のための恒久的遮水壁の速やかな構築とともに、汚染水対策に従事する労働者の被ばくを最小化する視点での工程の見直しなどの対策を行うべき、③国は、本件事故に由来する放射性物質による汚染廃棄物の指定につき、基準を現在の8000ベクレル毎キログラムから相当程度引き下げるとともに、処理方針策定に当たっては、十分な情報公開と住民参加を尽くすべきとの決議を行った。

 

特別報告と特別講演

今大会では、「憲法問題に関する件」等、3本の特別報告を行った。
これに併せ、石川健治教授(東京大学)が特別講演を行い、「安保法制改定法成立のプロセスには国民の多くが疑問を持っている。賛成派も立憲主義という大事なものを失った。これを取り戻すための時間的余裕はそう長くない」と訴えた。

 

12/4臨時総会開催へ

12月4日(金)午後1時から、弁護士会館クレオにおいて、以下の議案審議のため臨時総会が開催される。多数の会員の参加による充実した審議をお願いしたい。

 

会則中一部改正 (第九十五条及び第九十五の二・会費減額及び会館維持運営資金変更)の件

2016年4月以降、弁護士会員の一般会費を、月額1万4000円から1万2400円(司法修習終了後2年未満の者については、月額7000円から6200円)に減額し、一般会費からの会館特別会計への繰入額を、月額1500円から800円に引き下げることなどを提案するもの。

 

債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第九十三号)中一部改正の件

2011年4月1日に施行された債務整理事件処理の規律を定める規程は、最長5年の時限的な規程であり、2016年3月末日までの「理事会で定める日」をもって失効するところ(附則第3項)、近年の過払金返還請求事件数の推移等の諸事情に鑑み、同項を改正し、その有効期限をさらに5年間延長できるようにすることを提案するもの。

 

依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程(会規第九十五号)中一部改正の件

2014年11月27日に公布された犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律は、事業者に対して、体制整備の努力義務を拡充することを求め、政省令等による顧客管理措置の厳格化及び継続的な顧客管理などを定めている。これに伴い、依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程の改正を提案するもの。

 

その他の議案

2014年6月の行政不服審査法の全部改正に伴い、資格審査手続規程及び懲戒手続に関する規程、その他関連規程について、除斥事由等の規定ぶりをそろえるなどの提案を行うもの。
外国法事務弁護士法人制度創設に係る外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部改正に伴う会規(外国特別会員関係)の整備に関する規程等について形式的な平仄、体裁等の見直しを行うことを提案するもの。

 

無戸籍者問題に関する法務省との協力体制について

上川大臣との面会の様子

9月29日、村越会長は、出生届が出されず戸籍がないまま暮らしている「無戸籍」の人たちの問題について、上川陽子法務大臣(当時)と会談した。

上川大臣は、国民としての社会的基盤が与えられず、人間の尊厳に関わる重大な問題であるとして、就任当初から、無戸籍者問題に強い関心を持ち、本年5月には、「無戸籍者ゼロタスクフォース」を立ち上げるなど、省庁間を超えた取り組みを行ってきた。その一環として、法務省から日弁連に対しても、本問題への取り組みについて協力依頼がなされたものである。

会談において、村越会長は、上川大臣に対し、本年11月をめどに全国的な相談体制の構築を進めており、11月11日にその周知を兼ねて、全国一斉の電話相談「全国一斉無戸籍ホットライン」を実施する予定であることを説明した。

これに対し、上川大臣は、前記ホットラインを法務省が後援し、また、法務省が把握している無戸籍者に対して、可能な範囲でホットラインを案内するとともに、全国の法務局および市区町村にもチラシを置くことなど、周知に協力する意向を示した。

今回の協力体制を契機として、日弁連と法務省、また、各弁護士会と各法務局が連携を深め、無戸籍者ゼロを目指して、その救済に取り組んでいく所存である。

(子どもの権利委員会 委員長 羽倉佐知子)

 

ひまわり

弁護士はなかなかストレスの多い職業だ。いつも紛争に関わっており、対立する当事者の渦中にあって、激しい感情的な葛藤にさらされることも多い▼仕事が長時間にわたり、休む時間が十分とれないこともある。家事や育児と仕事との両立も容易でないことも多い。短い休息時間で、心身のリフレッシュをするために、さまざまな工夫をしている会員も多いことだろう▼心の健康を保つには、日ごろから、心の不調に気付き、サポートしあえる人間関係をつくることも大切だ。しかし、弁護士はひとりで仕事をすることも多く、悩みを人に話しにくいこともある▼今回、日弁連では、会員のメンタルヘルスの維持のために、メンタルヘルスカウンセリングサービスを開始した。会員は、電話で無料カウンセリングサービスを受けられるほか、各地のカウンセリングルームで対面でのカウンセリングを受けることが出来る。ウェブによる相談サービスも用意されている。カウンセリングは、臨床心理士など専門のカウンセラーが担当する▼本格的な心の不調になる前に、このようなカウンセリングを上手に利用して、会員が心の健康を維持し、本来の力を発揮して、存分に活動されることを願っている。

(A・T)

 

人権擁護大会シンポジウム
10月1日 千葉市

第1分科会

女性と労働
貧困を克服し、男女ともに人間らしく豊かに生活するために

女性差別撤廃条約批准、男女雇用機会均等法制定から30年、北京宣言から20年が経過した。この間、女性非正規労働者が急増している。性別、雇用形態による差別に加え、固定化された性別役割分担意識のため、家事・育児等を担う女性労働者が、長時間労働を余儀なくされる正社員として働き続けることが難しく、働く女性の貧困を助長している。本分科会では、女性が直面する格差と貧困を克服するための方策について議論した。

 

基調講演・特別講演

基調講演を行う竹信教授

ジャーナリストの竹信三恵子教授(和光大学)が基調講演を行い、「家事・育児・介護を担う働き手を標準労働者像としてとらえることが働く女性を貧困から脱出させる第一歩」と訴えた。

続いて、杉田明子会員(栃木県)が、多様な働き方を支えるオランダの制度等について調査報告を行った。さらに、国連女性差別撤廃委員会委員長を務める林陽子会員(第二東京)が特別講演を行い、男女の賃金格差、女性の政治参加などで遅れが見られる日本の現状を指摘した上、世界標準でのジェンダー平等を実現すべく、弁護士会の活動に期待を寄せた。

 

当事者からの報告

企業の立場から、三宅香氏(イオンリテール株式会社執行役員)が特別講演を行い、女性が活躍する企業には、保育園併設などの「制度」、女性の意見を聞くなどの「企業文化」、女性自身の「意識」の3つが必要と語った。

続いて労働者の立場から、宮下浩子氏(NPO法人マタニティハラスメント対策ネットワーク理事・VTR出演)がマタハラを理由とする離職の現状、派遣労働者の宇山洋美氏(仮称)が派遣労働者から見た派遣法改正の問題点、London氏(仮称、フリーター全般労働組合執行委員)が不当解雇体験と労働組合による援助活動につき報告した。

また、支援者の立場から、山屋理恵氏(NPO法人インクルいわて理事長)が、母子家庭に「就業・生活・子育て」の支援をワンストップで提供する「包括的就労支援」の取り組みを報告した。

仁藤夢乃氏(女子高校生サポートセンターColabo代表)は、居場所を失い夜の街をさまよう女子高生に対するサポート活動について報告した。

 

パネルディスカッション

安藤哲也氏(NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事)は、イクメンの次は「イクボス(部下らのワークライフバランス、キャリアなどを考慮し応援しつつ、組織の業績も上げ、自らの仕事と私生活を楽しめる上司)」が必要と指摘した。また、中嶋祥子氏(東京公務公共一般労働組合中央執行委員長)は、非正規公務員の劣悪な就業環境につき、実例を基に改善を訴えた。

藤原千沙准教授(法政大学)は、多様な働き方が広がる中で貧困・格差を解消するには、すべての労働者に「生活できる賃金」(年間労働時間1800時間で賃金と税・社会保障を合わせて親1人子1人が暮らせる保障)が必要と訴えた。最後に、山田省三教授(中央大学法科大学院)は、「非正規に対する差別は女性に対する間接差別」といった平等法理等の再検討の必要性を指摘した。

 

第2分科会

「成年後見制度」から「意思決定支援制度」へ
認知症や障害のある人の自己決定権の実現を目指して

日本が2014年1月に批准した障害者権利条約(以下、「条約」)第12条は、障がい者が健常者と平等の法的能力を享有することを認めるとともに、その法的能力の行使に当たり必要な支援が得られるよう、条約締結国に措置を講じるよう義務付けている。
しかし、日本には、代理・代行型の成年後見制度があるのみで、障がい者自身の意思決定を支援する法制度がない。諸外国の取り組みにも学びつつ、条約に沿った法制度の構築へとつなげるべく、シンポジウムを開催した。

 

公務員試験や仕事の内容、将来の夢などについて語る明石氏

まず、自閉症と知的障害をもちながら川崎市職員として夢見ヶ崎動物公園で勤務する明石徹之氏が講演を行い、公務員試験や仕事の内容、将来の夢などについて自らの言葉で語った。

続いて、井上雅人会員(大阪)が、意思決定支援が不足している日本の現状について報告した。

川島聡准教授(岡山理科大学)は、条約第12条を詳説し、日本の後見制度は国連で批判を受ける可能性があると指摘した。

松隈知栄子会員(愛知県)は、支援者がチームを作って障がい者の希望を実現すべく活動するサウスオーストラリア州の支援制度について、水島俊彦会員(東京)は、意思決定能力を欠く者が特定の意思決定を行う場面において、本人意思に最大限配慮するイギリスの支援制度について、それぞれ調査報告を行った。

また、兵庫県西宮市の重度の心身障害者支援センター青葉園での取り組みなど、日本国内で少しずつ広がりを見せる意思決定支援についても紹介された。

パネルディスカッションでは、石川恒氏(障害者支援施設かりいほ施設長)が、生活支援の経験を踏まえ、本人を人生の主役にする支援は必ず本人の意思決定支援に行きつく、成年後見人による代理・代行という枠組みは本人にとって適切ではないとの意見を述べた。桐原尚之氏(全国「精神病」者集団運営委員)は、障がい者本人の立場から、精神障がい者の行為は不合理なものと決め付けることなく、本人の声に寄り添うことが必要であると訴えた。

また、佐々木育子会員(奈良)は、分科会実行委員会の意見として、期間や役割を限定した小さな成年後見の制度を設けるなど、本人の意思決定支援を優先する法制度を設けるべきと提言した。

 

第3分科会

放射能とたたかう
健康被害・汚染水・汚染廃棄物

2011年に発生した福島第一原発事故から4年半が経過したが、多くの被災者が避難生活を余儀なくされ、事故の収束にはほど遠い状況である。
日弁連は、2013年、2014年の人権擁護大会で福島第一原発事故の問題を取り上げ、議論を重ねてきたが、今年も放射線被ばくによる健康被害、汚染水、放射性廃棄物という極めて重要なテーマについてシンポジウムを開催した。

 

健康管理と医療体制

「健康管理と医療体制」について講演等が行われた第1部の模様

第1部では、坪倉正治医師(南相馬市立総合病院・東京大学医科学研究所)が、現在、相双地区の住民で、体内からセシウムを検出する人はほとんどおらず、現状の生活において身体に放射性物質を取り組むリスクはおよそないと報告した上で、「原発事故の被害は、放射線の影響だけではなく、初期避難によるもの、生活環境によるものなどさまざまな要因が大きく影響している」と指摘した。

津田敏秀教授(岡山大学大学院環境生命科学研究科)は、放射線による人体影響に関する正確な情報共有が図られておらず、低コストで容易に行える対策すら取られていない現状を批判した。

 

汚染水問題

第2部では、冒頭、米村俊彦会員(横浜)が、「汚染水処理対策の現状」と題して、福島第一原子力発電所の視察を報告し、保管されている汚染水を今後どのように処理するのかが大きな課題であると語った。

パネルディスカッションでは、佐藤暁氏(原子力コンサルタント/元GEの原発技術者)が、政府と東電による廃炉に向けてのロードマップは、多くの作業者を高線量などの危険な環境に置く工法を選択しており、軌道修正が必要であると述べた。

また、浅岡顕名誉教授(名古屋大学/元地盤工学会会長)は、現在計画されている仮設の凍土壁では対策として不十分であり、工法として確立している方法を採るべきであると強調した。

 

放射性物質に汚染された廃棄物

第3部では、山口仁会員(千葉県)が、日弁連が本年7月16日付けで指定廃棄物の指定基準の緩和には問題があるとする意見書を公表したことを報告した。

続いて関口鉄夫氏(元滋賀大学非常勤講師/専門・環境科学)は、指定廃棄物最終処分場候補地を調査したところ、安全面や環境面に問題がある立地であったことを指摘した。

栃木県塩谷町の見形和久町長は、昨年、町内の国有林の一部が指定廃棄物最終処分場の詳細調査候補地として突如選定されたが、先日の北関東・東北豪雨により土砂崩れなどの大きな被害が出ている地域であり、候補地として適切ではないと訴えた。

宮城県加美町の猪股洋文町長は、「ずさんな選定による候補地の押し付けや、新たな被害が生じるような最終処分場の建設には断固反対する」とのビデオメッセージを寄せた。

 

シンポジウム
国際人権の視点から日本の家族法を考える
憲法と条約に沿った民法改正へ
9月15日 弁護士会館

  • シンポジウム「国際人権の視点から日本の家族法を考える~憲法と条約に沿った民法改正へ~」

最高裁は、選択的夫婦別姓を認めていない民法第750条と女性のみに6カ月の再婚禁止期間を定める民法第733条の違憲性・女性差別撤廃条約違反を問う訴訟について、本年2月に大法廷への回付を決定し、11月4日、弁論期日を開廷する。この機に、家族法における差別的規定の撤廃を後押しすべく、国際人権の視点から家族法規定の在り方を問い直すシンポジウムを開催した。

 

夫婦別姓訴訟判決における国際人権法解釈の問題点を指摘する林陽子会員

国連女性差別撤廃委員会委員長を務める林陽子会員(第二東京)が登壇し、夫婦別姓訴訟の一審・二審判決は、姓の変更が個人のアイデンティティに関わる重大な人権侵害となることや、条約締結により国は積極的差別是正措置を講じるよう義務付けられていることを正しく理解していない、と両判決の国際人権法解釈の問題点を指摘した。

続いて、訴訟代理人の立場から、榊原富士子会員(東京)が夫婦別姓訴訟について、作花知志会員(岡山)が再婚禁止期間違憲訴訟について、それぞれ審理の状況などを報告した。

その後のパネルディスカッションでは、国際法の研究者である横田洋三氏(公益財団法人人権教育啓発推進センター理事長/法務省特別顧問)が「最高裁は、条約が民法その他の法律よりも優先する法規範であるとする憲法第98条第2項の通説的見解を認めている。一方で、日本では、国際人権条約に違反する国内法がそのまま生きており、このことが国際法とのギャップを生んでいる」と指摘した。

坂本洋子氏(NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク理事長)は、日本政府が国連の人権機関から繰り返し民法の差別的規定を改正するよう勧告を受けているにもかかわらず、政治的にはむしろ後退がみられることを指摘した。

川村明会員(第二東京)は、国際法曹協会(IBA)元会長として各国を視察した経験を踏まえ、国際社会では、女性の経済的解放が社会改革を促進しているときに、日本では古色蒼然たる家族観念に女性を閉じ込めておくべきか否かを最高裁で争っており、時代錯誤であるなどと、日本社会・経済のさらなる発展のためにも、家族法における差別的規定の撤廃が重要だと訴えた。

 

取調べの可視化を求める市民集会
3%から100%へ
全事件可視化へのはじめの一歩
9月15日 弁護士会館

  • 取調べの可視化を求める市民集会「3%から100%へ~全事件可視化へのはじめの一歩~」

取調べの録音・録画の義務付けを含む刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(以下、「刑訴法改正法案」)が先の通常国会に提出された。通常国会では成立に至らなかったが、成立すれば、取調べの可視化が法制化されることになる。もっとも、対象は裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件における身体拘束後の被疑者の取調べに限られている。

 

冒頭、村越会長は、「刑訴法改正法案をできるだけ早く成立させ、3年後の見直しの際には、全事件を可視化の対象とすべきである」と訴えた。

 

えん罪事件から

爪ケア事件えん罪被害者の上田里美氏は、取調べの際、警察官と押し問答が続いたことに触れ、「ひとりぼっちで戦わなければならなかった。可視化が実現すれば心強くなる」と可視化の重要性を語った。

志布志事件えん罪被害者の藤山忠氏は、取調官に、「鉛筆を目の前にまで持ってきて脅され、認めたら罰金で済むと言われた」と過酷な取調べ、自白強要の体験を語り、「3%でも一歩前進だが、3%から100%にもっていきたい」と今後の決意を語った。

美濃加茂市長事件弁護人の郷原信郎会員(第一東京)は、「えん罪事件を生まないためには、被疑者だけではなく、参考人取調べにも可視化が必要である」と対象の拡大を訴えた。

 

パネルディスカッション「大きな改革への『第一歩』として」

法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」委員(当時)で映画監督の周防正行氏は、まずは一部の事件でも全過程の録音・録画を法律で定めることが重要と考え、法制審議会の最終取りまとめに同意したと、その経緯を語った。

郷原会員は、録音機器は容易に準備できるから、録音だけでもすぐに全事件で開始すべきであると提案した。

日弁連は、今後も全事件可視化に向けて運動を行っていく。

 

日本政策投資銀行&日弁連共催セミナー
女性起業家のためのリーガル実践講座
法人設立・創業時の法務
9月28日 大手町フィナンシャルシティ

  • 日本政策投資銀行共催:「女性起業家のためのリーガル実践講座」

日本経済の閉塞感を打破すべく、現在、創業の重要性があらためて認識されている。特に、女性ならではの観点で事業を展開する「女性起業家」に対し、社会の関心が相当高まっている。
日弁連も、創業支援に積極的に取り組んでおり、その一環として、昨年から、日本政策投資銀行女性起業サポートセンターとの共催で、女性起業家に向けた、ビジネスを法律面からサポートすることを目的としたセミナーを年4回開催している。

 

第1部では、日弁連中小企業法律支援センターの樽本哲事務局次長(第一東京)が、法人設立・創業時の法務について、基礎編・応用編に分けてセミナーを行った。平日にもかかわらず多数集まった参加者は、「そもそも法人にすべきなのか」というところから、事業の適法性や許認可に至るまで、創業時に気を付けるべき点に注意深く耳を傾けていた。

また、中小企業のための「ひまわりほっとダイヤル」の紹介も行われ、悩まず早めに弁護士に相談することが重要であるとの指摘がなされた。

セミナー後は、活発な質疑応答がなされた。起業後、許認可の問題でつまずいていた参加者から、「早く弁護士に相談しておくべきだった」という声が上がった。

第2部の法律相談会には、セミナー参加者のうち13人からの相談があった。

相談者は、素晴らしいアイデアを持っているものの、法律面で不安を抱えており、弁護士の支援の必要性があらためて感じられた。

残り3回のセミナーでは、事業維持・発展にかかわる法律問題を取り上げ、引き続き女性起業家を支援していく予定である。

(日弁連中小企業法律支援センター委員 杉浦智彦)

 

第6回
人権関連委員会委員長会議
9月30日 千葉市

本会議は、日弁連の人権関連の委員会・ワーキンググループ(以下、「WG」)の代表者が「人権のための行動宣言」に掲げられている諸課題への取り組み状況を確認し、縦割りになりがちな委員会・WGの活動について情報を共有して意見交換を行い、日弁連の人権擁護活動を推進することを目的としている。2010年から人権擁護大会の日程に合わせて開催しており、今年は会長以下執行部も含め64人が出席した。

 

当日は、昨年10月に策定・公表した「人権のための行動宣言2014」に掲げられている人権諸課題の各委員会・WGの取り組み状況についての報告のほか、「矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律」制定への取り組みについての刑事拘禁制度改革実現本部の報告をはじめ、具体的な取り組みについて報告があった。

また、国際人権問題委員会による、国連人権機関からの勧告のフォローアップ(履行・実現)に関する取り組みと課題についての報告、憲法問題対策本部による、安全保障に関する立法と憲法状況に関する1年間の取り組みについての報告があった。

さらに、今年は、出席者の発言の機会を増やすために一部の時間帯で分科会を開催し、各分科会で時間が不足するほどの活発な議論、意見交換が行われた。第1分科会は「成人年齢の18歳への引き下げ」をテーマに、主に主権者教育に当たっての課題について議論した。第2分科会は「日弁連とNGO・NPO等の関連団体等との連携」をテーマに、他団体との連携基準の在り方について各委員会・WGの実例を踏まえて議論した。第3分科会は「差別と表現(ヘイトスピーチを中心として)」をテーマに、差別的表現と表現の自由の関係、新たな法的規制の是非等について議論した。

(人権行動宣言推進会議 事務局長 秋山 淳)

 

国際交流の取り組み

日弁連では、世界中のさまざまな法律関係の団体や学術機関等と積極的に情報交換・交流している。本稿では、9月25日から27日に開催されたアジア弁護士会会長会議(POLA)と10月4日から9日に開催された国際法曹協会(IBA)の年次総会の模様を報告する。

 

POLA インド・ゴア

アジア太平洋地域の弁護士会会長が一堂に集い、開催されたPOLA

アジア太平洋地域の弁護士会会長が一堂に集うPOLAが開催され、日弁連からは齋藤拓生副会長が出席した。そこでは、「会長会議」のほか、5つの「ワーキングセッション(報告・討論会)」が行なわれた。そのテーマは、弁護士や司法制度の根幹に関わる「弁護士・依頼者間の秘匿特権への侵害」、「法曹の独立性への挑戦」、「司法権の独立を擁護するための弁護士会の役割」のほか、現在各国でさまざまな取り組みがなされている「ビジネスと人権」、日弁連が積極的に推進している中小企業の海外展開に関する「中小企業のための効果的な国際紛争解決制度」であった。これらは、各国弁護士会共通の問題や国境を越えた地域経済共通の問題であり、各国弁護士会が連携して対応すべきもの、との発言が相次いだ。日弁連としても「法の支配」をアジア太平洋地域で実現していくため、また中小企業の海外展開を支援していくため、各国弁護士会と協働・連携して積極的に取り組む必要があると思われた。

(国際室嘱託 島村洋介)

 

IBA年次大会 オーストリア・ウィーン

世界最大の国際法曹団体であるIBAの年次大会がウィーンで開催され、135以上の国々から約6000人が参加した。期間中は、ビジネス法、人権、公益活動、弁護士業務等の幅広い分野のセッションと数多くのレセプションが実施され、参加者の研鑽や交流が活発に行われた。

日弁連代表団は各種会議出席のほか、海外の弁護士会、在墺日本国大使館、在ウィーン国際機関日本政府代表部およびウィーン所在の国際機関との間で意見交換等を行った。また、10月6日には、「国境を越える法律実務における弁護士と依頼者の通信秘密保護制度について」をテーマに朝食会を開催した。国際室の大村恵実室長(東京)がモデレーターを務め、海外の弁護士会とIBAからスピーカーを招き議論を行った。法律実務の国際化が進む中、当該テーマは海外でも関心が高く、約80人の参加を得た。

近時IBAでは「ビジネスと人権」をはじめとする先進的な議論が展開されており、本大会中、アナン前国連事務総長をスピーカーに迎えた「ビジネスと人権」に関するセッションが人気を集めていた。また、理事会では「弁護士会のためのビジネスと人権ガイダンス」が採択された。

日弁連としては、国際的なプレゼンスをさらに高めるべく、議論に積極的に参加し、IBA内の意思決定プロセスに、より主体的に参画していく必要があると考える。

(国際室嘱託 蔵元左近)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.105

法の日週間記念行事
「法の日」フェスタ
法を身近に感じてみよう
10月3日 弁護士会館

  • ~映画『WINDS OF GOD』の上映とトークイベントを行います~第56回「法の日」週間記念行事 法の日フェスタ

今年の法の日週間記念行事は、今年の5月に他界された今井雅之さんが原作・脚本・主演を務められた映画「WINDS OF GOD」の上映と、森永卓郎さん(獨協大学教授・経済アナリスト)、憲法問題対策本部の伊藤真副本部長(東京)、俳優でもある野元学二会員(第二東京・俳優名「ノモガクジ」。舞台『THE WINDS OF GOD~零のかなたへ』、英語版映画『THE WINDS OF GOD -KAMIKAZE-』に出演)によるトークイベントを開催しました。
参加者からは大変有意義だったとの感想が多数寄せられ、憲法や平和の重要性を考える機会となりました。

(広報室嘱託 神田友輔)

 

映画「WINDS OF GOD」

漫才師の田代と金太は、交通事故に遭い、1945年8月1日にタイムスリップする。特攻隊員の体に入れ替わった2人は、戦争という大義の前に自らの命をささげる神風特攻の仲間と触れ合い、疑問を感じつつも特攻隊員として零戦に乗り込む。当時の若者たちの思い、特攻に送り出す上官の葛藤など、戦争の悲惨さと理不尽さを考えさせる作品であった。

 

トークイベント「戦後70年今こそ憲法・平和を考えよう」

「平和に向けて、ガンジー同様、不服従の姿勢で行動していく」と語る森永さん

森永卓郎さん、伊藤真副本部長(以下、「伊藤会員」)、野元学二会員によるトークイベントを行った。

森永さんは、「父が特攻隊員であり、戦争が終わるのがあと1カ月遅ければ自分は存在しなかった」と語り、「戦争は絶対に反対」と訴えた。また、「当時は本音と建前が葛藤していたと思う。建前では国のために命を投げ出すことを当然としながら、本音では誰も死にたくないと思っていたはず。今の若者の多くが、自分たちは戦争と関係がなく、自衛隊員だけが影響を受けると言うが、そんなことはない。戦争では、弱い人、若い人、女性、権力側にない人がひどい目に遭う。この映画が描いたのはそういったことだと思う」と感想を述べた。

伊藤会員は、「軍は若者の情熱や思いを利用した。純粋な思いを持った人たちが犠牲になった。戦争は、年寄りが決めて、オヤジが命令して、若者が犠牲になる」と戦争の実態を語った。

野元会員は、「この映画は特攻隊、限られた時間、自分が死ぬことが分かっている極限の状況下で、人がどのように生きていくのかを描いている。今井さんは一人一人に、それを考えてほしかったのではないか」と語った。

憲法制定の目的と第9条の関係を分かりやすく説明する伊藤会員

 

憲法との向き合い方

日弁連は、安保法制改定法案につき、憲法上の問題点を訴え強く反対してきたが、9月19日、同法案は参議院本会議で採決された。

伊藤会員は、「憲法は前文で、日本中に自由のもたらす恵沢を確保することと、『政府』の行為によって再び戦争の惨禍が起こらないようにすることという2つの目的を謳っている。その上で第9条は、自衛戦争を含むすべての戦争を禁止している」と憲法制定の目的と第9条の関係を分かりやすく説明した。

森永さんは、近年、「個人を基礎とする世界観から国家を基礎とする世界観へ」と、戦前と同じ変化が見られると危機感を示した。

野元会員は、「おかしいものはおかしいと言わないといけない。改定するのであれば、憲法改正の手続をとるべき」と述べた。

 

平和に向けて

「平和に対する感謝を忘れたとき、戦前と同じ状況になるのでは」と危機感を示す野元会員

伊藤会員は、先の国会審議で、国会の内と外で全く異なる光景が見られたことを指摘し、「国会の外には希望がある。主権者として、一人一人が考えて行動することが大切」と述べた。

野元会員は、「今井さんは舞台『THE WINDS OF GOD』の最後で“no more war”と叫び、平和に対する強い思いを伝えていた。平和に対する感謝を忘れたとき、戦前と同じ状況になるのでは」と危機感を示した。

森永さんは、「インドのガンジーは『非暴力・無抵抗』で活動してきたと習ったが、原文は『非暴力・不服従』だった。平和に向けて、ガンジー同様、不服従の姿勢で行動していく」と語った。

 

日弁連委員会めぐり80

財務委員会

今回の委員会めぐりは、日弁連の財政上の問題に関し、執行部の諮問機関としての役割を果たしている財務委員会です。関本隆史委員長(東京)、神﨑浩昭副委員長(第一東京)、早稲田祐美子副委員長(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

主な活動を教えてください

左から、関本委員長、早稲田副委員長、神﨑副委員長

日弁連が抱えるさまざまな財政上の問題に関して、執行部からの意見照会に対する答申書や意見書の提出を行っています。委員会の開催回数そのものは決して多くありませんが、案件によっては、意見書の取りまとめにかなりの労力を費やしています。

 

どのような方が委員を務めているのですか

財務・財政上の問題についての理解が必要であることから、弁護士会の財務委員会経験者や財務担当副会長経験者であることが多いです。

 

今年度はどのような意見を出したのですか

執行部が検討を進めている、日弁連会費の減額・研修の無料化などに関して意見照会を受け、委員会としての意見を取りまとめました。会費の減額は、昨年度からの懸案事項で、重い事案でしたので、丁寧に検討を進めました。結論としては、会費減額・研修無料化ともに賛成の意見ですが、執行部に対し、今後より一層の会費減額を検討していくべきとの意見を表明しています。

 

会員へのメッセージをお願いします

会員であれば、誰もが毎月の会費の支払いについて意識していると思います。一方で、自分が支払った会費がどこでどのように使われているかは、よく知られていないのが実情です。会員の皆さんには、何よりもまず、日弁連の財務状況について興味を持っていただきたいと思います。定期総会の予算・決算報告資料などにも、ぜひ目を通してみてください。

昨今の会員数の増加に伴い、日弁連の財務規模は、かなり大きなものになっています。それをどう運営していくかは、会員一人一人が注視していくべき問題です。会員の皆さんの積極的な関与が、よりよい日弁連財政を作り上げることにつながります。

 

ブックセンターベストセラー
(2015年8月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 民法(債権関係)改正法案の概要 潮見佳男 著 きんざい
2 弁護士の周辺学 実務のための税務・会計・登記・戸籍の基礎知識 髙中正彦・市川 充・堀川裕美・西田弥代・関 理秀 編著 ぎょうせい
3 判例による 不貞慰謝料請求の実務 中里和伸 著 LABO
4 弁護士職務便覧 ―平成27年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
5 秘密保持・競業避止・引抜きの法律相談 最新青林法律相談2 髙谷知佐子・上村哲史 著 青林書院
6 国会便覧 平成27年8月新版 138版   シュハリ・イニシアティブ
7 サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル 清水陽平 著 弘文堂
8 量刑調査報告集4 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
9 証拠保全の実務[新版] 森冨義明・東海林 保 編著 きんざい
10 家事事件・人事訴訟事件の実務 ~家事事件手続法の趣旨を踏まえて~ 東京家事事件研究会 編 法曹会

編集後記

10月1日から法律相談センターのインターネット予約サービス「ひまわり相談ネット」の運用が始まりました。電話せずに予約申込ができ、また、スマートフォンからもアクセスできることから、より法律相談を利用しやすい環境が整ったと言えそうです。
先日、スマートフォンで美容院を探す機会がありました。予約はもちろん、美容師の情報や得意なカットが写真付きで見られ、予約時間帯も30分ごとに選べることに驚きました。美容業界もネット予約のお客様が増えているそうです。
法律相談は、人に知られたくないものも多いでしょうから、ネット予約の需要は非常に高いと思われます。まずは、ひまわり相談ネットの普及に努めるとともに、折を見て、さらなる改善の検討も必要です。弁護士へのアクセスを容易にする努力に終わりはない、とあらためて感じました。

(Y・O)