日弁連新聞 第501号

安保法制改定法の適用・運用に反対し、廃止・改正に向けた新たな取り組みへ

参議院で審議されていた安保法制改定法案は、9月17日、参議院の特別委員会で採決が強行され、同月19日未明に参議院本会議で採決された。

日弁連は、法案採決を受け、同日、「安全保障法制改定法案の採決に抗議する会長声明」を公表し、今回の採決が「立憲民主主義国家としての我が国の歴史に大きな汚点を残したもの」であるとして強く抗議するとともに、「改正された各法律及び国際平和支援法の適用・運用に反対し、さらにはその廃止・改正に向けた取組を行う」決意を表明した。

今回改正等された法律は、その内容が憲法に反していることに加え、参議院地方公聴会の結果が特別委員会に報告されないまま採決が強行されるなど、手続においても重大な問題が存している。

日弁連と全国の弁護士会は、憲法の基本理念である立憲主義ならびに基本原理である恒久平和主義および国民主権を堅持する立場から、広く国民および国会議員に対して、安保法制改定法案の憲法上の問題点を訴えてきた。

また、元最高裁長官を含む最高裁判事経験者、歴代の内閣法制局長官や多くの憲法学者から憲法違反の指摘がなされ、世論調査でも今国会での成立に反対する意見が多数を占めていた。

そして、全国各地で行われた安保法制改定法案に反対する集会やデモは、民主主義の危機への抗議の意思表明であるとともに、立憲主義や恒久平和主義が国民の間に着実に根付いていたことを示したものといえる。

日弁連は、国会審議を通じてさらに明らかになった憲法上の問題点と手続上の問題点を広く国民と共有し、全国の弁護士会とともに、この法律の適用・運用に反対し、廃止・改正に向けて取り組む所存である。

(憲法問題対策本部 事務局長 川上詩朗)

 

意見広告掲載のためのカンパについて

安保法制反対に関する意見広告を新聞に掲載するに当たり、カンパにご協力いただき、ありがとうございました。8月31日をもって受付を終了しましたが、多くの会員の皆さまにご協力いただき、読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞に意見広告を掲載することができました。

今後とも、日弁連の活動にご支援・ご協力賜りますようお願いいたします。

*詳細は会員専用ページに掲載しています。

 

10月1日インターネット予約サービス
「ひまわり相談ネット」運用開始

弁護士会の法律相談センターのインターネット予約サービス「ひまわり相談ネット」がスタートした。ウェブ上で各地の弁護士会の法律相談センターに予約を申し込むことができるサービスであり、法律相談へのアクセス改善と需要の開拓が期待される。

 

法律相談センターの再生に向けて

「ひまわり相談ネット」のトップページ

ひまわり相談ネット」のトップページ

日弁連では、全国統一ナビダイヤル「ひまわりお悩み110番」の導入(2013年3月)など、法律相談センターの活性化に向けさまざまな取り組みを実施している。

本年5月には、日弁連公設事務所・法律相談センターが相談件数減少の要因を分析し、対策について検討した成果として「法律相談センターの再生のために」と題する提言を取りまとめた。本サービスの導入は対策の柱の1つとして取り上げられたものである。

 

働く人や若年層からのアクセスを期待

本サービスは、PCやスマートフォンから、いつでも予約申込みが可能であるため、電話をかけるのを躊躇していた人や日中は仕事で電話ができない人、インターネットを多く利用する若年層への需要の開拓が期待される。なお、本サービスは、あくまでも予約の申込受付を行うものであり、弁護士会からの連絡により予約が完了する。

 

サービス周知のための広報活動も強化

本サービスは、日弁連のホームページからもアクセスが可能であり、運用開始に併せ、法律相談に関する情報をより充実させていくことにしている。今後も、各弁護士会と協力しながら、サービス周知のための広報活動を強化していく。

 

少年法の適用年齢引下げについて自民党成年年齢に関する特命委員会が提言

9月10日、自民党の成年年齢に関する特命委員会が提言を取りまとめた。提言では、公職選挙法の選挙年齢が18歳以上とされたこと等を踏まえ、「国法上の統一性や分かりやすさ」といった観点から、少年法の適用年齢も18歳未満に引き下げるのが適当とされている。

しかし、各法律の年齢区分は、その立法目的や保護法益により個別に定められるべきである。少年法の適用年齢は、少年の社会からの逸脱行動にどのように対応するのが立ち直りや再犯防止に有効か、という観点で判断される必要がある。

現行少年法は、全事件を家庭裁判所に送致し、調査官や少年鑑別所による科学的な調査・鑑別の結果を踏まえ、少年に最も相応しい処遇を決する手続を採用している。このようなきめ細かな手続が、生育環境や資質・能力にハンディを抱える18歳・19歳を含む非行少年の更生に有効に機能してきたのであり、現時点で適用年齢を見直すべき理由はない。

今回の提言を受け、日弁連では、同日付で「少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明」を公表した。また、すべての弁護士会および弁護士会連合会からも、反対の会長・理事長声明が発出されている。

さらに、少年院・少年鑑別所の元所長など、少年矯正の現場で少年たちと接してきた関係者や、110人を超える多くの刑事法・少年法研究者からも、適用年齢引下げに反対する旨の意見が表明されている。

今後、この問題は与党間で協議されることが予想される。日弁連としては、非行に及ぶ18歳・19歳の実情等を踏まえ、年齢引下げの問題性について広く社会の理解が得られるよう、より一層の取り組みを進めていく。

(子どもの権利委員会少年法・裁判員対策チーム座長 山﨑健一)

 

司法試験に1850人が合格

9月8日、平成27年の司法試験の合格発表があり、1850人が合格した。受験者は8016人(昨年から1人増)、合格率は23.1%。また、予備試験を経た合格者は186人だった。受験者数と合格者数の推移は別表のとおりである。

本年は、司法試験法の一部改正(2014年10月1日施行)で、受験期間5年間に受験可能回数3回という制限が廃止されてから初めての試験であり、受験回数4回目の者も受験できた(なお、来年は、受験回数5回目の者も受験可能になる)。

また、短答式試験科目についても変更が行われ、公法系科目(憲法、行政法)、民事系科目(民法、商法、民事訴訟法)、刑事系科目(刑法、刑事訴訟法)の実質7科目から、憲法、民法、刑法の3科目に変更されている。

 

会長談話を公表

日弁連は、合格発表の当日に会長談話を公表した。

まず、日弁連が、市民にとって身近で使いやすい司法を実現すべく、弁護士の活動領域の拡大、法曹養成制度の改革等に取り組んでいること、司法試験合格者数については、2012年3月、現実の法的需要や新人弁護士に対するOJT等の実務的な訓練に対応する必要があることなどから、まずは1500人に減じて急激な増員ペースを緩和すべきと提言したことに触れた。また、本年6月、政府の法曹養成制度改革推進会議が、当面の司法試験合格者数を、質の確保を前提としつつ「1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るとしたことに言及した。

その上で、法曹養成制度の現状や推進会議決定の方向性を踏まえれば、合格者は「すみやかに1500人にするべきである」との見解を表明した。

 

司法試験合格者数の推移(受験者数は、新司法試験のみ)

H21
(2009)
H22
(2010)
H23
(2011)
H24
(2012)
H25
(2013)
H26
(2014)
H27
(2015)
受験者数 7392 8163 8765 8387 7653 8015 8016
合格者数
※( )はうち、旧試験合格者数
2135(92) 2133(59) 2069(6) 2102 2049 1810 1850

リーガル・アクセス・センター
新たな弁護士保険が発売されます

新商品に関する協定を締結

日弁連のリーガル・アクセス・センター(LAC)協定保険会社である損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下、「損保ジャパン日本興亜」)が、新たな弁護士保険(権利保護保険)商品を発売することに伴い、日弁連は、8月19日付で同社の新商品に関する追加協定を締結した。本年12月1日からLAC制度を通じた弁護士紹介等の運用を開始する。この新商品は、企業等を契約者とする団体向け保険の特約で、団体の構成員が加入することとなり、個人への販売は現在のところ予定されていない。

 

一般民事の紛争が補償対象~免責金額や依頼者負担も

新商品の特徴は、被害事故、借地または借家、離婚調停、遺産分割調停、人格権侵害、労働(ただし、オプション)といった、一般民事に関する法的紛争を補償対象としている点である。同様の弁護士保険は、既に、プリベント少額短期保険株式会社が販売しているが、大手損害保険会社である損保ジャパン日本興亜が、これまでの交通事故等に加えて、補償対象を拡大した弁護士保険を販売することは、司法アクセスの拡充に向けて大きな意義がある。

法律相談料には免責金額(1000円)、着手金・報酬金等には自己負担割合(10%)がある点が、交通事故等を対象とした従来の弁護士保険とは異なるため、約款等を事前に確認する必要がある。

現行LAC取扱商品と新商品の運用に関する異同点は別表のとおりである。

 

弁護士紹介態勢の強化が必要

対象範囲が一般民事に関する法的紛争に広がるため、現在に比べて紹介件数が飛躍的に増加することが見込まれる。

各弁護士会において、各分野に精通する弁護士の紹介態勢を強化することが求められる。

(事務次長 吉岡 毅)

*同梱の日弁連リーガル・アクセス・センターニュースでも本件について掲載しています。ご参照ください。

 

【別表】現行LACと損保ジャパン日本興亜の新商品の運用に関する異同点
現行LAC 損保ジャパン日本興亜の新商品
契約形態 法人契約もあるが、主として個人契約 企業等を契約者とする団体契約で、団体の構成員が加入
初期相談 なし なし
対象範囲 「偶発事故」
(交通事故等の損害賠償請求に係るもの)
「被害事故」、「借地・借家」、「遺産分割調停」、「離婚調停」、「人格権侵害」に係るトラブル
※オプションとして「労働」に関するトラブルも補償
紹介手続 被保険者→保険会社→日弁連LAC→各弁護士会LACで名簿等から配点 現行LACと同じ
支払対象となる弁護士費用 法律相談料、
弁護士費用等(着手金・報酬金・実費・日当・時間制報酬等)
法律相談費用
免責金額:1,000円
弁護士委任費用
自己負担割合:10%
保険金の請求手続 原則、保険会社への直接請求 依頼者からの立替払いのケースと直接払いのケースがある
支払基準 原則、LAC「保険金支払基準」等各基準 同社の”弁護士費用の保険金支払基準(内規)”の範囲内
※内規は担当弁護士に開示可能
書式 原則、LAC制度による統一書式 新商品に関しては、損保ジャパン日本興亜独自の書式を使用

日弁連短信
弁護士保険の拡大と課題
司法アクセスの改善と信頼性の向上のために

高校生たちは、さまざまな工夫を凝らした主張、立証を展開した

本紙でも紹介しているとおり、日弁連が協定を結んでいる損害保険ジャパン日本興亜株式会社が主な一般民事事件を対象とする新たな弁護士保険を販売し、12月1日から日弁連リーガル・アクセス・センター(LAC)を通じた弁護士紹介が開始される。このような広範囲の事件を対象とする弁護士保険の発売はプリベント少額短期保険株式会社に続いて二例目で、大手損保会社としては初めてとなる。

弁護士保険は、2000年に日弁連と損保会社2社が協定を結び、販売が開始されるとともに弁護士紹介の運用が始まった。その後は拡大の一途をたどり、現在協定を結ぶ保険会社、共済組合(以下、「協定保険会社等」)は13社に上るほか、2013年度の協定保険会社等の保険販売数は約2090万件、LACの弁護士紹介等の取扱数は約2万3000件に達する。

これにより、従前手薄と言われていた中間所得層についても弁護士費用等に関する経済的なサポートが前進し、特に、比較的少額の賠償請求などでも弁護士が利用しやすくなって市民の司法アクセスの改善、権利保護に寄与している。

他方、弁護士紹介等の取扱数の増加に伴い、クレーム等も増大している。あくまでも協定保険会社等を通じてのものだが、その多くは担当弁護士の態度や処理懈怠等、事件処理の在り方に関するもので、これらについては、今後の対象拡大を見据えて改善方策を検討しているところである。

また、近時、一部の弁護士により、特にタイムチャージ方式による報酬制度を悪用して訴訟を遅延させ、あるいは不要な上訴をするなど、不当に高額な報酬請求をする案件が増加している、との報道がなされている。日弁連としては、前述のとおり、弁護士保険の普及は弁護士利用を促進し、市民の権利保護に貢献しているという点で意義は大きいと考えるが、報道のような事態が生じているとすれば問題であり、実情を把握するため、情報収集を行っている。

10月16日に岡山で開催する業革シンポ第7分科会では、弁護士保険の対象拡大と報酬の適正化、中小企業向け保険の検討等をテーマとして議論が行われ、提言がなされる予定である。

日弁連としては、今後とも、弁護士保険の普及を図りつつ、生起する課題に適切に対処して一層の信頼性の向上に努め、市民の司法アクセスの改善に尽力していきたい。

(事務次長 吉岡 毅)

 

第47回市民会議
法教育の推進・司法アクセス改善に向けた取り組み等について議論
9月14日 弁護士会館

今回の市民会議では、法教育や弁護士志望者増加に向けた取り組み、法律相談センターのインターネット予約サービスをはじめとする司法アクセス改善のための取り組みについて報告し、今後の方策を議論した。

 

法教育に関する取り組み

市民のための法教育委員会の額田みさ子副委員長(第二東京)が、日弁連が高校生模擬裁判選手権を開催していること、各弁護士会では出張授業等の施策を実施していることを報告した。

模擬裁判選手権については、委員から、素晴らしい取り組みであるとの意見が相次いだ。他方、松永委員からは、教育用ビデオを制作して全国の学校に配布するなど、法教育を広く行き渡らせるように、さらに方策を検討してほしいとの意見が寄せられた。また、北川議長からは、模擬裁判選手権が次回で第10回を迎えるに当たり、法教育を飛躍的に広げていくという意味でも新たな取り組みを期待するとの発言があった。

 

弁護士志望者増加に向けた取り組み

法科大学院センターの椛嶋裕之副委員長(東京)が、昨今の法曹志望者減少への対策として、弁護士の魅力を発信する冊子やPR動画を制作し、メディアへの働きかけ等を推進している旨を報告した。

長見委員は、日弁連が制作した動画は、とてもよい内容なのでぜひ周知に力を入れてほしいと発言した。また、井田委員は、日弁連の活動等を通じ、徐々に人気回復を図ることは可能であると述べ、地道な活動の継続に期待を寄せた。

 

司法アクセス改善に向けた取り組み

長田正寛副会長が、10月1日から、弁護士会法律相談センターのインターネット予約サービス「ひまわり相談ネット」の運用を開始することについて報告した。また、日弁連リーガル・アクセス・センターの伊藤明彦事務局長(東京)は弁護士保険制度について、日本司法支援センター対応室の高橋太郎室長(東京)は法テラスの民事法律扶助の予算拡充について説明した。

松永委員は、インターネット予約サービスの開始について評価するとした上で、今後の課題として、相談日時の忘れや急なキャンセルを防ぐための工夫が必要であると発言した。

 

市民会議委員(2015年9月14日現在)(五十音順)

  • 井田香奈子(副議長・朝日新聞東京本社オピニオン編集部次長)
  •  
  • 長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
  •  
  • 北川正恭(議長・早稲田大学名誉教授)
  •  
  • 清原慶子(三鷹市長)
  •  
  • 古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
  •  
  • ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  •  
  • 中川英彦(前京都大学大学院教授)
  •  
  • 松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
  •  
  • 湯浅 誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

新事務次長紹介

9月30日をもって、兼川真紀事務次長(東京)が退任し、後任には、道あゆみ事務次長(東京)が就任した。

国会議員の参加を得て、多くの参加者が会場を埋め尽くした

 

道 あゆみ (東京・47期)

 

兼川真紀前事務次長の後を受け、就任いたしました。折しも立憲主義や司法の在り方がそこここで問われ、時代が転機を迎えつつあると感じます。弁護士会がいかに時代の要請に応え、役割を果たすべきか。曇りなき思いでそのことを考えながら、微力を尽くしたいと存じます。

 

院内学習会
原発事故賠償責任の上限設定と原子力事業者への経済的優遇策を問う
8月31日 衆議院第二議員会館

  • 院内学習会「これでいいの?!原発事故賠償制限、原子力事業への経済的優遇策」

原発事故による事業者の賠償責任に上限が設けられようとしている。原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)改正の問題点と、原子力事業の維持・継続を支援する経済的優遇措置の不合理さを明らかにするため、院内学習会を開催した。

 

原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会で、原発事故の賠償制度に関わる国の役割および事業者の責任範囲をめぐる検討が行われ、原子力事業者の損害賠償額に上限を設ける制度の導入の是非が議論されている。

これに対し、渡辺淑彦会員(福島県)は、コミュニティの崩壊、関連死、賠償格差などを例に挙げ、事業者の無過失無限責任が定められている現行法でも十分な賠償が実現していない状況を赤裸々に語った。その上で、仮に事業者の有限責任を導入する場合には、国家補償が必要になるが、「国は残りを補償するのか。国民にその覚悟はあるのか」と法改正の問題点を厳しく指摘した。

高橋洋教授(都留文科大学文学部)は、2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」について、重要なベースロード電源とされている原発がハイリスク・ハイコストであることは諸外国で早くから認識されている上、1990年ごろから、先進国では原発の設備容量が増えていないこと、政府が一部のコストを都合よく組み合わせてコスト試算をしていることを指摘し、本来廃炉が予定されている原発を例外的に継続稼働した上で、さらに新設まで必要とする計画は非現実的だと批判した。

大島堅一教授(立命館大学国際関係学部)は、政府が原子力事業者にだけさまざまな経済的優遇策を検討・実施していること自体が、原子力が自由経済の下で成立しないことを示している。原発のリスクとコストを示さずに、原子力への支援コストを国民に負担させようとしていると述べ、その是非についての国民的議論を呼びかけた。

 

シンポジウム
コーポレート・ガバナンスとダイバーシティ
9月4日 日比谷コンベンションホール

  • 【弁護士・企業関係者対象】シンポジウム「コーポレート・ガバナンスとダイバーシティ」

8月28日、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が成立し、政府は、女性の活躍推進に向けポジティブ・アクションに踏み出した。日弁連も、内閣府からの要請を受け、昨年度から女性弁護士社外役員候補者名簿の作成・提供を開始している。
女性弁護士を社外役員に登用することの意義について、企業関係者の理解を深め、さらなる登用促進を図るため、シンポジウムを開催した(共催:東京三弁護士会、大阪弁護士会)。

 

武川恵子内閣府男女共同参画局長の挨拶の後、橘・フクシマ・咲江氏(G&S Global Advisors Inc.代表取締役社長)が登壇し、自身の米国ならびに日本企業での取締役経験を踏まえて、取締役会におけるダイバーシティの重要性を報告した。

続いて、男女共同参画推進本部の市毛由美子事務局員(第二東京)が、既に7弁護士会で作成・提供が始まっている女性弁護士社外役員候補者名簿について説明を行った。各種データの分析からも、女性の人材活用が企業のパフォーマンスに良い影響を与えることが明らかになっている旨を報告した。

パネルディスカッションでは、高山与志子氏(ジェイ・ユーラス・アイアール株式会社マネージングディレクター、取締役)が、機関投資家の意識調査・分析を行う立場から「企業を取り巻く環境が、複雑で急速に変化する中、均質な取締役会、組織というのは大きなリスクとなっている。投資家は、取締役会の多様性、特にジェンダーの多様性を重視している」と発言した。

また、牛島信会員(第二東京)が、「女性が取締役会に参画し、経営戦略、人事戦略の策定に関与することで、社内全体の女性活躍の可能性が高まる」と発言した。

奥宮京子会員(第一東京)は、「管理職にふさわしい人、しっかり仕事をする人は男女問わずいるにもかかわらず、女性というだけで排除するのは不合理で、企業にとっても損失である。ジェンダーダイバーシティの意義は、そのような不合理、損失を解消することにあると思う」と指摘した。

 

シンポジウム
子どもを育てるのに暴力は必要ですか
体罰等の根絶と子どもがのびる育て方
9月5日 弁護士会館

  • シンポジウム「子どもを育てるのに暴力は必要ですか ―体罰等の根絶と子どもがのびる育て方―」

子どもに対する体罰・虐待は今なお後を絶たない。日弁連では、その根絶を求めるべく、本年3月19日付で、「子どもに対する体罰及びその他の残虐な又は品位を傷つける形態の罰の根絶を求める意見書」を取りまとめた。本意見書を踏まえ、暴力に頼らない子どものしつけ・教育の方法について市民とともに学びを深めるため、シンポジウムを開催した(共催:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)。

 

「ぜひ体罰の全面禁止を実現してほしい」と訴える明橋医師

はじめに、子どもの権利委員会の森保道幹事(愛媛)が、意見書の骨子について報告した。

続いて、書籍「子育てハッピーアドバイス」シリーズの著者でもある心療内科医の明橋大二氏が講演を行った。明橋医師は、自身の経験や国内外の統計結果を踏まえ、「問題行動を起こす子どもには、必ずと言っていいほど体罰を受けた経験がある。ルールとは人を大切に思う心からくるもの。体罰を受け、心の土台となる自己肯定感を十分にはぐくめなかった子どもは、自分を大切に思えない結果、他人もまた大切な存在と認識できなくなる。ぜひ体罰の全面禁止を実現してほしい」と訴えた。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンからは、養育者に対する支援プログラム「ポジティブ・ディシプリン」について紹介があった。

同プログラムでは、参加した親たちに、「子どもが20歳になった時、どういう人間に育っていてほしいか」をまず考えさせ、各人に長期的な目標を設定させた上で、子育てにおいて日々直面するさまざまな課題への向き合い方を伝えている。長期的な視野が開けることで、多くの親たちが、子育てには、叩くよりも、怒鳴るよりも、より良い方法があることを学んでいるという。

体罰が有用だと誤解している大人たちは今なお少なくない。そんな大人たちの誤解を解くためには、何よりもまず、正しい知識を広めることが重要だということが、本シンポジウムを通じて確認された。

 

シンポジウム
消費者のための“消費者契約法改正”に向けて
専門調査会「中間取りまとめ」とあるべき法改正を考える
8月27日 弁護士会館

  • シンポジウム「消費者のための“消費者契約法改正”に向けて-専門調査会「中間取りまとめ」とあるべき法改正を考える-

2014年、内閣総理大臣は、消費者契約法について、社会経済状況への対応等の観点からの見直しを内閣府消費者委員会に諮問した。本年8月7日、同委員会消費者契約法専門調査会(以下、「調査会」)は、消費者契約法の見直しに関する「中間取りまとめ」を発表した。
中間取りまとめの概要紹介とともに、重要論点やあるべき法改正の方向性を考えるため、シンポジウムを開催した。

 

中間取りまとめの概要報告

調査会委員から、取りまとめの概要が報告された。

丸山絵美子教授(名古屋大学大学院法学研究科)は、「勧誘」要件の在り方、「重要事項」の適用範囲など、契約締結過程の論点を中心に、調査会での議論を紹介した。井田雅貴会員(大分県/特定非営利活動法人大分県消費者問題ネットワーク理事長)は、不当条項の類型の追加、「平均的な損害の額」の立証責任など、契約条項に関する論点を中心に報告した。

 

検討と評価

消費者問題対策委員会の志部淳之介委員(京都)は、今般、有志による意見書を作成したことを紹介した上、中間取りまとめについて「社会経済情勢の変化に必ずしも対応しているとは言い難い」と、改善の余地があることを指摘した。

 

相談現場から

調査会委員の増田悦子氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会専務理事)は、現行消費者契約法の「重要事項」に動機が含まれていないことによる解決困難な事例などを紹介した上で、「消費者契約法が消費者自身や消費生活センターで有効に活用できるようになることを願っている」と語った。

磯辺浩一氏(特定非営利活動法人消費者機構日本専務理事)は、「現在事業者から過剰な懸念が示されているが、契約の取消対象は、不実告知と消費者に誤認を生む勧誘による契約に限られ、問題となるケースは限定的である。丁寧な説明で、事業者の理解を得ていくことが必要」と訴えた。

日弁連は、今後も真に消費者のための消費者契約法改正を実現するため、さらなる取り組みを続けていく。

 

ACLA/CCBEとの三極会議
8月29日・30日 弁護士会館

8月29日、30日の両日、弁護士会館において、三極会議を開催した。
三極会議は、日弁連、中華全国律師協会(ACLA)、欧州弁護士会評議会(CCBE)の三者による会議で、各法曹団体が毎年持ち回りで開催する。

 

参加者による熱心な議論が行われた

今年のテーマは、1)法律業務の国際展開と対応できる人材の育成等の弁護士会による支援、2)男性法曹と女性法曹の収入格差や、女性の執行部比率増加の課題を含む法曹界におけるジェンダー平等、3)OECD(経済協力開発機構)のBEPS(税源浸食と利益移転)行動計画により課されようとしているタックス・プランニングに関する報告義務と、弁護士の守秘義務との抵触についてであった。

各法曹団体それぞれの視点からのプレゼンテーションの後、三者が議論した。議論の過程では、弁護士共通の倫理規範を論じる中で、弁護士が社会において果たす役割などについても熱心かつ率直な議論が交わされ、三者の法曹団体による会合ならではの意義が感じられた。

今年は、日弁連がホスト国を務めた。ホスト国は、議論テーマの選定、論点整理メモの作成、各団体によるプレゼンテーション準備の進捗管理、および当日の会議運営を行う。

今回日弁連は、前例に倣い通訳を導入したものの、進行および会長、副会長、総長の挨拶も英語に徹底し、日弁連組織の「国際化」の第一歩として、使用言語の英語化にも力を入れた。執行部も中盤にはゲストとともに英語で談笑する姿が見られ、三者の友好を互いに確認しての会議終了となった。

(国際室長 大村恵実)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.104

全国弁護士協同組合連合会の取り組み
保釈保証書発行事業の運用状況

全国には、弁護士会の区分におおむね比例して47の単位弁護士協同組合(以下、「単協」)があります。これら単協を構成員とする協同組合の連合会が、全国弁護士協同組合連合会(以下、「全弁協」)です。
2013年7月、全弁協は、担当弁護人の申込みに基づき保証書の発行を行う、保釈保証書発行事業を開始しました。この制度の創設の経緯や、内容・利用手順などについて、森誠一理事長(第二東京)、宮嵜良一副理事長(愛知県)、大砂裕幸専務理事(大阪)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)

 

制度創設の経緯は

左から大砂専務理事、森理事長、宮嵜副理事長

日弁連が、現金を用意せずに保釈決定が得られる韓国の制度を調査したことをきっかけに、法務研究財団で研究が行われ、日弁連刑事弁護センターなどでさらに検討がなされた結果、このような制度をぜひ全弁協で担ってほしい、と提言されたのが始まりです。弁護人個人のリスクなしに、資力の乏しい被告人にも平等に保釈の機会を与えようということで、日弁連刑事弁護センターの委員や若手弁護士にも議論に参加してもらい、使いやすい制度を考えました。

日弁連の協力の下で制度を立ち上げるという形でしたので、裁判所や検察庁からも、スムーズに賛同してもらい、協力が得られました。

 

保証限度額や保証料を教えてください

保証限度額は300万円で、それ以下であれば任意の金額を設定できます。保証料は保証金額の2%です。また、保証金額の10%相当額を自己負担金として預託してもらいます。この自己負担金は、保証書が裁判所から全弁協に返還された後、弁護人宛てに全額返還されます。

 

利用手順は

事前審査の後に本申込み、というのが基本的な流れです。まず、弁護人から所属単協に対し、事前申込書と保証委託者の収入・資産に関する資料等を提出してもらいます。単協は全弁協に申込みを取り次ぎ、全弁協で審査を行い、結果を弁護人に連絡します。その後、裁判所が、保釈および保釈保証書による代納を許可すると、全弁協は、保証委託者による保釈保証委託契約申込書の差し入れ、保証料・自己負担金の支払いを確認し、保証書を発行します。

 

審査に要する時間は

資料が揃っていれば、通常半日程度で審査が完了します。利用者からは、予想以上に迅速だったと好評です。ただ、慎重な判断を要する事案は再審査に回付し、審査委員に問い合わせるなどして個別判断を行いますので、審査に数日かかることもあります。

 

審査基準は

基準そのものは非公開ですが、基本的には、例えば300万円の申込みの場合は、保釈保証金が没取になった時に、10%の自己負担金を除く270万円の支払いが可能なだけの収入・資産があるかという観点から、収入・勤続年数・債務の有無などを考慮して判断します。資産がなく、収入ベースで判断する場合、収入から生活費を除いた上で、毎月数万円の支払いができるかを確認しています。一人ではそれだけの資力がない場合にも、夫婦や親子の収入を合算すれば資力が認められる場合、保証委託者を2人以上にしてもらって審査を通すこともあります。300万円の申込みでも、200万円なら審査を通せるという場合、申込額を下げてもらうこともあります。広く利用してもらうために作った制度ですので、なるべく審査を通す方向で運用しています。

 

運用状況は

2013年7月に、6つの単協で運用を開始し、その後も順次、準備の整った単協から運用に入っています。現在は、準備中の旭川を除き、すべての単協で利用できます。

2013年度は9カ月間で250件、2014年度は501件の保証書を発行しました。まだ認知度が低いのが悩みですが、各弁護士会の刑事弁護委員会からも周知していただき、利用件数は着実に伸びています。

 

没取事案は発生していますか

少数ですが、残念ながら発生しており、求償しています。自分の財産が懸かっているからこそ逃亡はしないだろう、というのが制度の基本的な建て付けですので、求償は制度の根幹だと考えています。

また、将来的には、没取事案を分析し、弁護士に役立つ情報として提供することも検討しています。

 

その他の取扱事業を教えてください

弁護士日誌や訟廷日誌・弁護士業務便覧の制作や、弁護士賠償責任保険など各種保険の取り扱い、全国の単協が推薦する特産品のあっせん販売、クレジットカードの発行など、多岐にわたります。

 

会員へのメッセージをお願いします

大多数の弁護士は、単協の組合員ですが、全弁協をよく知らない方が多いのが実情です。「弁護士の仕事と暮らしのサポーター」としてさまざまな取り組みを進めていますので、もっと活用いただきたいと思います。また、全弁協の制度は単協の組合員でないと利用できませんので、未加入の方は、ぜひご加入ください。

 

日弁連委員会めぐり79

全面的国選付添人制度実現本部

今回の委員会めぐりは、全面的国選付添人制度実現本部です。昨年実現した、国選付添人対象事件の拡大に向けた活動や、今後の課題などについて、向井諭本部長代行(札幌)、須納瀬学副本部長(東京)、戸田洋平事務局長(京都)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)

 

本部設置の経緯は

左から戸田事務局長、向井本部長代行、須納瀬副本部長

(須納瀬)日弁連は従前、子どもの権利委員会を中心に、国選付添人制度の設立・拡大を目指してきました。2000年の少年法改正で国選付添人制度が導入されましたが、対象事件は検察官関与決定がなされた事件に限定されていました。2007年改正で重大事件までは対象拡大されたものの、さらなる拡大を求め、同年11月の人権擁護大会で「全面的な国選付添人制度の実現を求める決議」を採択、翌2008年には臨時総会で「少年・刑事財政基金」を創設しました。2009年、被疑者国選対象拡大の流れもあり、全弁護士会をあげてこの問題に取り組むため、当本部が設置されました。
身体拘束事件全件への対象拡大、少年や保護者の選任請求権付与を求め活動しています。

 

昨年の対象事件拡大に向けた活動について教えてください

(向井)昨年の少年法改正で、対象事件が被疑者国選対象事件と同一範囲の長期3年を超える懲役・禁錮の罪の事件まで拡大されました。
これに向けては、全国の対応態勢整備と付添人の質の確保、立法のための世論喚起や議員への働きかけが必要でした。そこで、弁護士会の理事者によるブロック戦略会議を弁護士会連合会単位で毎年開催し、全国の対応態勢の確認やシンポジウム開催の呼びかけ、各地での議員要請の働きかけを行いました。また、各地での付添人研修実施のため、講師派遣にも注力してきました。

 

現在の取り組みや今後の課題を教えてください

(戸田)対象事件は拡大されましたが、少年や保護者による選任の請求権は認められておらず、裁判所の裁量にとどまっています。選任率のチェックや不選任事件の分析を行い、選任率を高めるための取り組みを行っています。また、被疑者国選の対象は、既に勾留全事件に拡大される方向ですので、国選付添人についても対象事件のさらなる拡大を求める活動をしています。少年法適用年齢引下げの動きに反対する運動も行っています。

 

会員へのメッセージをお願いします

(向井)少年事件は、修習時に経験しづらいこともあり、敬遠されがちですが、弁護士の関わり方次第で、少年は短期間のうちに劇的に変わることもあり、やり甲斐のある事件です。ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。質の高い付添人活動の一件一件が、少年の更生に資すると同時に、国選付添人の必要性を示す基礎となり、選任率の上昇や制度の拡大につながっていきます。

 

ブックセンターベストセラー
(2015年7月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 判例による不貞慰謝料請求の実務 中里和伸 著 LABO
2 量刑調査報告集4 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
3 家事事件・人事訴訟事件の実務~家事事件手続法の趣旨を踏まえて~ 東京家事事件研究会 編 法曹会
4 サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル 清水陽平 著 弘文堂
5 取締役ガイドブック[全訂第3版] 経営法友会 会社法研究会 編 商事法務
6 相続関係事件の実務―寄与分・特別受益、遺留分、税務処理―弁護士専門研修講座 東京弁護士会 弁護士研修センター運営委員会 編 ぎょうせい
7 民事保全の実務[第3版増補版](上) 八木一洋・関述之 編著 きんざい
8 民事保全の実務[第3版増補版](下) 八木一洋・関述之 編著 きんざい
9 事例からみる訴額算定の手引[三訂版] 小川英明・宗宮英俊・佐藤裕義 共編 新日本法規出版
10 役員の法律知識がよくわかる!取締役になったら「初めに」読む本 福崎剛志 著 すばる舎
システム開発紛争ハンドブック―発注から運用までの実務対応 松島淳也・伊藤雅浩 著 レクシスネクシス・ジャパン
別冊商事法務 No.397 立案担当者による 平成26年改正会社法関係法務省令の解説 坂本三郎・辰巳郁・渡辺邦広 編著 商事法務

編集後記

9月10日、台風18号の影響による豪雨で鬼怒川の堤防が決壊し、茨城県常総市などが甚大な浸水被害を受けた。いまだに多くの方が避難を余儀なくされている。被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げたい。
鬼怒川は、暴れ川である。「鬼が怒る川」から「鬼怒川」となったという説もあるようだが、人工物では、自然の脅威に太刀打ちできないことがあらためて分かった。
自分の周りで起こっていない災害は他人事になりがちだが、河川は日本中にある。近くの堤防が決壊すれば、その被害は自分に降りかかってくる。近くに河川がないから安心ということではない。大雨と同時に竜巻が起こる可能性もある。
災害への対応は、日ごろの準備が大事である。周りにどんな危険があるのか、あらためてハザードマップなどで確認しておく必要があると痛感した。
(Y・K)