日弁連新聞 第500号

「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」衆議院で可決

被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付けをはじめとする「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」は、8月5日の衆議院法務委員会で一部修正の上、附帯決議も含めて可決後、7日の衆議院本会議で可決された。

 

衆議院法務委員会では、法案審議を4項目(「取調べの可視化関係」「合意・協議制度関係」「証拠開示・保釈関係」「傍受制度関係」)に分け、項目ごとに政府質疑→参考人質疑→政府質疑が行われ、約70時間に及ぶ審議がなされた。

日弁連は、この間、可視化の拡大に向けての見直し、捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引)や通信傍受についての慎重な運用、再審における証拠開示の検討等についての附帯決議を求めてきたが、衆議院法務委員会では、8月4日に自民党・公明党・民主党・維新の党による修正案がまとまり、8月5日に可決されるに至った。

修正案は、法文において、司法取引に関して①考慮事情としての犯罪の関連性の程度の明記と②協議への弁護人の常時関与、通信傍受に関して③通信の当事者に対する通知事項の追加④国会報告事項の追加、附則における検討条項として⑤可視化の見直しの趣旨を立証の担保と取調べの適正な実施とし、捜査上の支障その他の弊害を留意事項とすること⑥改正部分についての検討⑦再審請求審における証拠開示・起訴状における被害者の氏名秘匿措置、証人等の保護措置―等が追加されている。

附帯決議では、①可視化に関して全事件での録音・録画の努力義務②勾留・保釈の判断において否認や黙秘を過度に評価して不当に不利益な扱いをしないこと③再審請求において必要に応じて事実取調べをすること等が決議された。また、通信傍受に関しては、傍受記録の再生に当たり、捜査に従事しない警察官が指導に当たることで適正性を確保することが答弁において確認された。

法案成立後、日弁連としては、新たな刑事司法制度における弁護実践に向けて、研修等の取り組みを積極的に行っていく。

 

500号によせて
事務総長 春名一典

事務総長 春名一典

1974年2月1日に第1号が発行された日弁連新聞は、本号をもって、第500号を迎えました。

第1号には「会長直接選挙制を可決」、第100号(1982年5月1日号)には「重大な人権侵害の危険 刑事施設法案、留置施設法案」、第200号(1990年9月1日号)には「法制審議会 民訴法全面改正の検討を開始」、第300号(1999年1月1日号)には「法律事務所法人化問題に関する基本方針承認」、第400号(2007年5月1日号)には「少年法『改正』法案衆院通過 問題点は与党案で大幅修正 引き続き参院で審議を」という記事が掲載されています。

ところで、2014年の一般紙の発行部数は約4200万部と言われていますが、2005年以降減少の一途をたどっているようです。インターネットニュースの普及が大きな理由のようですが、「若者の活字離れ」で片付けられない問題もあると思います。

他方、本紙の発行部数は会員分約3万6500部、裁判所、検察庁、国会議員等配布分を合わせると約4万部であり、会員の増加に伴い発行部数が減少することはありませんが、一般紙をめぐる状況は本紙も無縁ではありません。

日弁連では、インターネットを使った広報活動、情報発信にも力を入れていますが、会員の皆様の元に正確な情報を確実に伝えるために、紙媒体による情報発信も継続しています。日々、大量の情報が提供される中で、「日弁連新聞」のように整理された情報が一覧性をもって提供できる紙媒体での広報も重要だと考えています。もちろん会員によっては「紙」を望まない方もいるでしょうから、今後の広報の在り方全体を見直す中での検討が必要です。

また、記事の選択や内容の検討については、広報担当副会長と事務総次長、広報室・広報課が毎月会議を開催し、限られた紙面の範囲で、何について情報発信するのか、会員はどのような情報を求めているのか等々を念頭において編集しています。これからも、目先のことだけにとらわれず、弁護士・弁護士会の使命を実現するという大きな視点を大切にして、会内外から信頼される新聞を目指します。

第1号「発刊のことば」で、当時の和島岩吉会長は「日弁連と各弁護士会、日弁連と会員間の連けい協力に資する広報活動」の画期的強化を説かれています。会内合意形成が容易でない課題が山積する今も、日弁連広報の原点として受け止めたいと思います。

 

戦後70年の今を戦前にしないために

  • 今を戦前にしないために~戦後70年記念シンポジウム~
  • 日弁連院内学習会「安全保障法制」を問うpart3
  • 安保法案廃案へ!立憲主義を守り抜く大集会&パレード~法曹・学者・学生・市民総結集!~

戦争終結から70年の節目を迎える今こそ、市民とともに、過去の歴史に向き合い、安全保障法制改定法案の違憲、廃案を訴えるため、8月8日に「今を戦前にしないために」と題したシンポジウムを、8月26日には3回目となる院内学習会、合同記者会見および大集会・パレードを実施した。

 

約300人の法曹および学者が安全保障法制改定法案に反対する決意を表明した

戦後70年記念シンポジウム

村越会長の挨拶に続き、加藤陽子教授(東京大学)が登壇し、日本が先の戦争を回避できなかった歴史的背景を考察する講演を行った。

座談会では、山崎拓元自民党副総裁が「日本の領土・領海・領空を守るためならば、今の専守防衛政策で対応できる。国際的脅威とは何かが十分に議論されていない」と今国会における政府・与党の姿勢を批判した。加藤教授は、戦後の世界が戦前の反省の上に築かれたものであることを忘れてはならないと指摘した。南野森教授(九州大学)は「本法案が通れば戦死者が出る」と危機感を表した上、「我々は、戦前の民衆と違い、フルスペックの言論の自由を持っている」と、市民が声を上げることの重要性を訴えた。村尾信尚氏(関西学院大学教授・ニュースキャスター)もまた「私たちの国の行方を選んでいくのは私たち自身」と発言し、一人一人が委縮せずに発信していかなければならないと呼びかけた。

 

院内学習会「安全保障法制を問う」

村越会長の挨拶に続き、最上敏樹教授(早稲田大学政治経済学術院)が登壇し、国際法の観点から、集団的自衛権を認めることにさまざまな法的問題点があることを指摘した。また、菅直人元首相(民主党)をはじめとする多数の出席議員からも、廃案を目指し引き続き全力を投じるとの強い決意が示された。

 

法曹・学者合同記者会見、日比谷野音大集会、パレード

村越会長、日弁連の歴代会長、元最高裁判事、元内閣法制局長官、憲法学者など法曹および学者約300人が弁護士会館で合同記者会見を行い、村越会長および学者の会代表の廣渡清吾名誉教授(東京大学)をはじめ20人が、安全保障法制改定法案に反対する決意など、メッセージを述べた。

会見後は、日比谷野外音楽堂で「安保法案廃案へ!立憲主義を守り抜く大集会&パレード~法曹・学者・学生・市民総結集!~」を開催した。村越会長の「安保法案は立憲主義に反し憲法違反であるという声が、大きく盛り上がっている」という発言に続き、廣渡名誉教授が、政権は民主主義と立憲主義に大きな挑戦を試みようとしている、憲法学者の大多数、歴代内閣法制局長官、日弁連、弁護士会が異口同音にこの法案は違憲だと言っており、今回の法案を廃案にしなければならないと訴えた。続いて、宮﨑礼壹氏(元内閣法制局長官・法政大学法科大学院教授)、石川健治教授(東京大学)、町田ひろみ氏(安保関連法案に反対するママの会) 、奥田愛基氏(SEALDs)、山岸憲司前日弁連会長(東京)らがリレートークを行った。大集会とパレードには約4000人が参加し、法案の違憲、廃案を訴えた。

合同記者会見をはじめ、当日の模様は、マスコミにも多く取り上げられ、大きな反響を呼んだ。


 

ひまわり

職業に組み込まれたDNAがあるような気がする。警察官の正義感。洋服屋さんはスーツの品定め。弁護士は何だろうか▼人権保障のために手続を重んじる。正確さを目指すと文章が長くなる。きちんと主張すれば結果に頓着しないというのは、判決するのは裁判所だからか▼日弁連が10年間求め続けた取調べの可視化の法制化が参議院で審議中だ。ここまでの粘り強い運動に敬意を表する。3年間の法制審議会特別部会の議論にも深く関与した▼法案には捜査方法の多様化も盛り込まれた。供述依存からの脱却を目指しているとはいえ、批判の大きいところで、厳正な運用が不可欠である▼日弁連は理事会での激論を経て全体として法案に賛成した。多くのステークホルダーの一致が難しければ、利害を調整しながら少しずつ前進するしかない▼百点でなければゼロでいいというのは、筋を通せば後は判決にお任せというDNAに近いのではないか。批判されても何とか形をつける政治家のDNAとは違うかもしれない▼弁護士には適時適切に和解するDNAもある。組織内や公務員など新たなDNAを持つ弁護士も現れている。司法の一翼を担うものとして弁護士会は立法にも責任を持つ立場になってきた。その場面でのDNAもそろそろ獲得したい。

(M・K)


 

会員に対する支援の充実強化
会費減額・研修無料化・メンタルヘルス相談サービスの導入へ

本年度、日弁連執行部は、会員・弁護士会への支援の充実強化を図っている。ここでは、具体的な検討が進んでいる3つの会員支援策について紹介する。

 

会費の減額

一般会計の決算において、繰越金が多額となっていることなどから、2016年4月以降、一般会費を1600円引き下げ、月額1万2400円とすることが検討されている。

弁護士過疎・偏在対策のための特別会費(現在は月額600円徴収)については、2016年3月をもって徴収を終えるため、一般会費が減額されれば、2016年4月以降の会費の負担額は、月額合計2200円減となる。

一般会費の減額につき、弁護士会および関連委員会への意見照会の結果を踏まえ、今後、さらに検討を行っていく。

 

研修受講料の無料化

2016年7月から、日弁連が実施するeラーニングとライブ実務研修の研修受講料が原則無料化される。

無料化に向けて、2015年10月以降、研修パスポートの料金が段階的に値下げされる。価格やスケジュール等は、別表のとおりであるが、詳細は、会員専用ページやファックスニュース等でご覧いただきたい。

 

メンタルヘルス相談10月1日スタート

10月1日から会員向けのメンタルヘルス相談窓口「日弁連メンタルヘルスカウンセリング」を開始する。

弁護士の仕事はさまざまなストレスが伴うことから、心身の疲れや不調を感じたときには、ひとりで抱え込まず、早めに相談できるようにするのが目的。詳細はパンフレット(10月号の日弁連新聞に同梱予定)や会員専用ページ等で案内するのでぜひ活用いただきたい。

 

研修パスポートの値下げスケジュール


 

性犯罪の罰則に関する検討会
取りまとめ報告書を公表

法務省の性犯罪の罰則に関する検討会(2014年10月設置)は、2015年8月6日の第12回の会議をもって検討を終了し、取りまとめ報告書(報告書)を公表した。

検討会では、性犯罪の法定刑の見直し、強姦罪における暴行・脅迫要件の緩和、性犯罪の非親告罪化、性犯罪に関する公訴時効の撤廃又は停止等の現行法の見直しのほか、強姦罪の主体等の拡大、性交類似行為や地位・関係性を利用した性的行為の処罰規定の創設等の新たな犯罪構成要件を定めることなど、多岐にわたる論点について検討された。

報告書は、各論点について、各委員の意見を客観的にまとめた内容となっており、ある程度のコンセンサスが得られた論点については、どの意見が多数であったかについても言及されている。

今後は、報告書を踏まえ、今秋の法制審議会に法改正などが諮問される見込みである。

日弁連では、本報告書を受け、8月7日付で、今後とも性犯罪をめぐる課題について真摯に取り組んでいくとする会長談話を公表した。

◇    ◇

 

*報告書は、法務省ホームページに開設されている同検討会のページからご覧になれます。

 

協力依頼 マイナンバー制度
やむを得ない理由で住所地以外に居住している依頼者等に、通知カード送付先登録申請に関する周知徹底を

本年10月5日に、いわゆるマイナンバー法が施行される。これに伴い、マイナンバーが記載された通知カードが市区町村から住民票上の住所(住所地)に世帯ごとに簡易書留で送付される。

もっとも、やむを得ない理由により住所地において通知カードを受け取ることができない方(①東日本大震災の被災者で住所地以外の居所に避難している方、②DV・ストーカー行為等・児童虐待等の被害者で住所地以外の居所に移動している方、③一人暮らしで、長期間、医療機関・施設等に入院・入所している方等)に限り、住民票のある市区町村に対して居所情報を登録申請すれば、実際の居所(避難先・入院先等)において通知カードを受け取ることができる。

ただし、申請期間は本年8月24日(月)から9月25日(金)の1カ月間である。居所情報の登録を申請せずに、住所地に通知カードが届いた場合、個人番号が漏えいして不正に用いられる恐れがあると認められるときは、市区町村への請求により個人番号は変更でき、また、個人番号のみでは公的手続ができないとされているが、可能な限り、本人が直接通知カードを受け取ることが望ましいものと思われる。

日弁連では、弁護士会に対し、(1)会員に対して制度概要資料を配布する、(2)ホームページに案内を掲載する等により、上記①~③に該当する依頼者等への周知の協力を依頼した。

会員におかれては、このような依頼者等がいる場合には、制度概要資料を総務省ホームページからダウンロードして渡すなど、周知へのご協力をお願いしたい。

 

子どもの手続代理人制度
役割と制度の利用が有用な事案の類型を取りまとめ

昨年以降、日弁連は最高裁との間で民事司法改革についての協議を続けてきたが、このたび、家事事件における「子どもの手続代理人制度」に関して、その役割や有用な活動類型についての認識を共有するに至った。
日弁連では、その結果を「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」と題する書面として取りまとめたので概要を報告する。

 

この書面では、子どもの手続代理人の役割を、①子どものための主張・立証活動、②情報提供や相談に乗ることを通じて、子どもの手続に関する意思形成を援助すること、③子どもの利益に適う合意による解決の促進、④不適切な養育等に関する対応の4つに整理した。

そして、本制度の利用が有用な事案の類型としては、上記役割に鑑み、(a)子どもの言動が対応者や場面によって異なると思われる事案、(b)子どもの意思に反した結論が見込まれるなど、子どもに対する踏み込んだ情報提供や相談に乗ることが必要と思われる事案、(c)子どもの利益に適う合意による解決を促進するために子どもの立場からの提案が有益であると思われる事案等を挙げている。

日弁連は、この書面を各弁護士会に送付し、会員への周知を依頼するとともに会員専用ページにも掲載した。また、最高裁から各家庭裁判所に対しても、日弁連から各弁護士会に周知されたことを通知している。

このように、本書面の内容については、裁判所とも認識を共通にしており、今後の子どもの手続代理人選任の要否の判断や活動の指針になるものと位置付けられるであろう。これを基に、各弁護士会において家庭裁判所との協議を進めるとともに、各会員においても代理人選任を求めるなど、同制度の積極的な活用が期待される。

(子どもの権利委員会事務局次長 池田清貴)


 

院内学習会
少年法の適用年齢引下げに反対
8月4日 衆議院第二議員会館

  • 少年法の適用年齢引下げに関する院内学習会

少年法が危機を迎えている。本年6月に選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が成立したことから、自由民主党は、国法体系を統一するという理由で、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げようとしている。
日弁連は、法律の適用年齢を考えるに当たっては、法律ごとに個別具体的に検討すべきであり、また、少年法は少年の保護育成・再犯防止に大きな役割を果たしているとして、引下げに反対している。
現場を中心に多方面からの反対の声を届けるため、院内学習会を開催した。

 

国会議員の参加を得て、多くの参加者が会場を埋め尽くした

冒頭、平山秀生副会長は、引下げ理由が国法体系の統一とされる点について、旧少年法の適用年齢は18歳未満で、当時から民法と一致していなかったことを指摘した。また、少子高齢化や大学進学率の上昇により親に扶養されている青少年が増加し、以前に比べ青少年の自立・成熟は遅れていると述べた。

家庭裁判所調査官を35年間務めた伊藤由紀夫氏は、少年事件は全事件数・凶悪事件数の両面で減少しており、その減少ペースは人口減少の割合を上回っていると説明した上で、全件送致主義によりすべての少年が調査官と関わりを持つことの重要性を訴えた。

八田次郎氏(元小田原少年院長)は、少年院に収容される少年のうち、実父母に保護されている少年の割合は31.7%にとどまっており、併せて、家庭の貧困率が高まっていることや、少年の多くが身体的虐待を受けていることなどから、少年法が最後の健全育成の機会になっていることを強調した。

さらに、実際に少年法によって救われた「元少年たち」の声が報告された後、武内謙治准教授(九州大学大学院法学研究院)は、年長少年による非行は不起訴率の高い罪(窃盗・横領・傷害)が多いことを指摘した。そして、少年法が適用されなくなった場合、その多くは起訴猶予か罰金刑で終わることになり、非行の背後にある問題が放置されることによって、再犯につながる危険性があるという点から適用年齢引下げに警鐘を鳴らした。


 

高校生模擬裁判選手権
8月1日 東京・大阪・福井・香川

  • 第9回高校生模擬裁判選手権を開催します!

今年で第9回を迎えた高校生模擬裁判選手権が全国4都市で開催され、熱戦が繰り広げられた(参加校数合計24校。共催:最高裁、法務省、検察庁ほか)。
今年の優勝・準優勝校は別表のとおりである。本稿では関東大会の模様を紹介する。

 

高校生たちは、さまざまな工夫を凝らした主張、立証を展開した

課題事案

今年の関東大会は、第1回から8連覇中であった湘南白百合学園高等学校が予選で敗退するなど、レベルの高さを裏付ける大会となった。

課題事案は、母親が生後7カ月の長女を殺害したという殺人被告事件。ハンドタオルを用いて窒息死させたのか、それとも寝かし付けようと布団を押さえたところ死亡させてしまったのかが争点となった。

裁判は、実際の法廷を使い、各校が、検察側・弁護側に立場を替えて二試合ずつ行う。裁判長役は弁護士が務め、審査は弁護士、裁判官、検察官のほか、学者や報道関係者が行った。

 

工夫を凝らした法廷活動

通常の刑事裁判と同じく、冒頭陳述に続き、目撃者に対する証人尋問と被告人質問、最後に論告弁論が行われた。

高校生たちは、尋問のために、拡大した現場図面、犯行再現のためのハンドタオルやぬいぐるみを用意したり、論告や弁論のために模造紙に主張やキーワードを書いてアピールしたりするなど、工夫を凝らした主張、立証を展開した。

講評では、東京地検の築雅子検事が、目撃証人に対する尋問について、「見た角度、距離、明るさ、飲酒の程度、布団の状態を具体的に尋ねており、また、犯人であれば普通こういうことをしていたのではないか、という点にも着目していた」と感想を述べ、東京地裁の大川隆男判事からも、「一問一答で事実を聞くという基本がしっかり備わっていることに驚いた」と感嘆の声が上がった。

 

高校生の声

裁判を終えた高校生からは、「事実と自分の主張を結び付けるのが難しかった」「自分と友達では、ものの見方が違ったりして議論するのが面白かった」「不利な事実をどう説明するか、事実と事実をどう結び付けて説明するかを考えることができて良い経験になった」という感想とともに、支援弁護士への感謝の声が寄せられた。


 

【別表】第9回大会における各会場の優勝校および準優勝校

 

【関東大会(東京)】

優 勝:静岡県立浜松北高等学校(静岡)
準優勝:法政大学女子高等学校(神奈川)

 

【関西大会(大阪)】

優 勝:京都教育大学附属高等学校(京都)
準優勝:同志社香里高等学校(大阪)

 

【中部・北陸大会(福井)】

優 勝:金沢大学附属高等学校(石川)
福井県立勝山高等学校(福井)
※同点優勝

 

【四国大会(香川)】

優 勝:徳島県立城東高等学校(徳島)
準優勝:高松市立高松第一高等学校(香川)

 

シンポジウム
これからの独禁法対応
7月28日 弁護士会館

本年4月1日に改正法が施行されるなど、独占禁止法(以下、「独禁法」)は、大きな変革期を迎えている。
本シンポジウムでは、審査手続や抗告訴訟に関する実務と流通・取引慣行ガイドラインの見直しなど最新の動向について解説し、今後のあるべき独禁法対応について知見を深めた。

 

審査手続の実務と論点

独占禁止法改正問題ワーキンググループの矢吹公敏委員(東京)は、審査手続の実務とポイントについて説明し、行政手続か犯則調査かを見極めて対応することが重要であると述べた。また、今後の課題として、弁護士と依頼者との通信秘密保護制度、取調べの録音録画、代理人の立会いの実現などを挙げた。

及川勝氏(全国中小企業団体中央会政策推進部長)は、立入検査の際に弁護士の立会いができることを知らなかったなどの中小企業からの声を紹介し、独禁法問題に対応できる弁護士を中小企業に紹介できる体制構築等が今後の課題になると指摘した。

多田敏明委員(第二東京)は、犯則調査においては、黙秘権が認められるが、公正取引委員会にはその旨の告知義務がないことを指摘し、今後の改正の必要性を訴えた。

 

抗告訴訟の実務と論点

向宣明事務局長(第一東京)は、不服審査の変更点を説明した上で、変更後も不利益処分の適法性について公正取引委員会が主張立証責任を負っていることは変わっていないと指摘した。

 

流通・取引慣行ガイドラインの改正

平山賢太郎委員(第二東京)は、流通・取引慣行ガイドラインが3月に改正され、独禁法違反の判断基準が明確になったが、さらに、現在、一定の基準を満たせば規制の対象外となる範囲(セーフハーバー)に関する問題が検討されていることを報告した。

渡邉新矢委員(第二東京)は、ケーススタディーとして、ブランド間競争など3つの代表的な事例を紹介し、独禁法違反となるポイントなどを説明した。

 

セミナー
法科大学院教育と企業内法務
7月24日 中央大学市ヶ谷キャンパス

  • 法科大学院教育と企業内法務

企業における弁護士や法科大学院修了生の活躍が広がりつつある中、弁護士等の採用に対する企業側の関心も徐々に高まってきている。そこで、企業内法務に要するスキル・マインドの涵養、企業が求める人材の養成を目的とした先進的な法科大学院の取り組みを共有し、企業ニーズに対応できる法曹養成の展開への礎とするため、セミナーを開催した。

 

企業法務の要諦

北博行氏(経営法友会評議員)は、企業法務には、①ヒトとモノを区別する力、②5W1Hで把握し伝える力、③行政、民事、刑事の視点で見る力、④リスクマネージメントが必要であると述べ、法曹養成の一課程である法科大学院で学ぶことの意義について指摘した。

 

各法科大学院の取り組み

慶應義塾大学法科大学院では、企業内法務担当者の養成を目的とする科目を開講し、法務部長経験者や企業内弁護士を講師として招聘している。

中央大学法科大学院では、企業内法務・企業内弁護士のイメージ・現実、役割・重要性などの修得を目的としたロールプレイング科目を開講し、神戸大学法科大学院では、2014年秋から現・元法務部長による「実例を用いた体験談」を中心とした科目を開講するなど、通常の授業とは異なる法的紛争の多面性を紹介し、学生の興味を引く工夫をしているとの報告がなされた。

他方、岡山大学法科大学院では、「弁護士研修センター」を設立し、組織内弁護士向けに研修会や研究会を開催している旨の報告があった。

 

経営法友会、企業内弁護士からの報告

経営法友会運営委員の守田達也氏(双日株式会社法務部長)からは、企業法務の知識や経験を共有するために、会員向け研修の基本テキストとして、企業内法務についての入門的な書籍を今年12月をめどに完成させる予定であることが紹介された。

木内秀行会員(横浜/(株)JVCケンウッド執行役員待遇 法務・知財部長兼法務部長)は、企業法務では、六法の基礎知識が必要であり、基本科目の修得の上で、法科大学院によるリカレント教育などを充実させていくことが重要であると語った。

このセミナーには、約100人の企業関係者および法科大学院関係者が参加しており、企業内法務への関心の高さが窺われ、企業分野への活動領域のなお一層の拡大が期待される。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.103

日弁連新聞創刊500号特集
歴代広報室長座談会

右から神会員、田中会員、生田会員、倉本嘱託

1974年2月の創刊から41年。日弁連新聞は、本号をもって500号を迎えました。
そこで、歴代広報室長の中から、神洋明会員(第一東京)、田中早苗会員(第一東京)、生田康介会員(東京)を招き、当時の取り組みや現在の活動に対するご意見を伺いました。

(広報室嘱託 倉本義之)


 

当時を振り返って

当時の取り組みを教えてください

地元メディアとのパイプがある弁護士会と連携できれば、より効果的な情報発信ができると語る神会員

(神)NHKの「ドラマ人間模様 新・事件“断崖の眺め”」という大岡昇平さんの小説をもとにした法廷ドラマの法律監修を行いました。脚本のチェックや法廷での振る舞いなどの演技指導を行ったのですが、夜中の3時、4時までスタジオでの収録に立ち会ったことを覚えています。当時は、予算も少なく大がかりな広報活動は行えませんでしたが、日弁連の監修というクレジットも付きましたし、弁護士を理解してもらう良い取り組みになったと思います。

子ども向けのパンフレットも制作しました。社会科の授業で活用してもらえるよう、社会科教員の全国研修会に持ち込んだこともあります。他には、竹下景子さんに出演していただき、30分もののPR映画を制作しました。

(田中)新会館の竣工に向けて、弁護士会館の講堂の名称を公募しました。幅広い年齢層から多数の応募をいただき、現在の「クレオ」という名称が決まりました。竣工記念式典には、竹下景子さん、映画監督の山田洋次さん、アナウンサーの大沢悠里さんなど審査員をお招きし、表彰イベントを実施しました。

社会科見学を始めたのもそのころです。旧会館は狭く、受け入れができなかったのですが、新会館に移ってからは、弁護士の話を聞くツアーなどを企画しました。

リスナーからの相談に答えるラジオ番組への出演やNHK朝の連続テレビ小説「ひまわり」の脚本のチェックなども行いました。

 

「笑っていいとも」に出演されていましたね

子ども向けの広報にしっかり取り組むことは、日弁連の社会的役割と語る田中会員

(田中)当時、民事介入暴力対策委員会が映画「ミンボーの女」の制作に協力し、プレミア試写会を実施することになったのですが、主役の宮本信子さんを囲む女弁護士というグラビア撮影に加わったのがきっかけでした。番組スタッフに声がけいただき、週1回で9カ月間、出演することになりました。

出演に際しては、広報室会議で検討いただき、日弁連の広告塔として頑張ってきなさいと、快く送り出していただきました。番組ではタレントさんからの法律相談コーナーを担当しましたが、女性の権利110番など日弁連の活動を告知することもありました。

(生田)最初の任期中は、司法制度改革審議会の意見書が出された時期でしたので、日弁連の掲げる施策をマスコミにPRする活動が求められました。そこで、これまで委員会ごとに実施していた記者会見を広報室主催に改め、週1回定例化するなどの取り組みを行いました。

会員向けのメルマガを開始したのも最初の室長時代でした。ホームページの更新情報を会員にいち早く紹介しようというのがきっかけです。ウェブサイトの利活用がメジャーになり始めたころで、ホームページの充実に力を入れました。

2回目の室長を務めていたときに東日本大震災が発生しました。あれだけ大きな災害はこれまで経験がありませんので、手探りではありましたが、会の内外に情報を発信し続けました。震災翌日の混乱の中、会長談話を起案し発信したことは記憶に残っています。

原発事故の問題では、公害対策・環境保全委員会で積み重ねられてきた意見がありましたので、当時の海渡雄一事務総長(第二東京)を中心に記者向けのレクチャーを実施し、分かりやすく情報を発信することができました。また、阪神・淡路大震災や中越地震などへの対応時に培った弁護士会の災害に対する法的ノウハウや被災地で行った無料法律相談の分析結果などを次々とリリースしました。

 

現在の日弁連広報について

弁護士のイメージアップを目的とした市民向けの活動を強化しています

広報方針をきちんと定めて戦略がぶれないようにすることが重要と語る生田会員

(生田)新しい試みとして、イメージ広告を実施することは良いと思いますが、効果検証が必要です。広告には、第三者の客観的な視点が入りません。どんなに上手な表現を連ねても、その信頼性には限界があります。むしろ、震災対応、再審事件、人権擁護活動など、弁護士・弁護士会の具体的な活動を記事として取り上げてもらう方が、効果が上がると思います。

(神)今はインターネットで情報を得る時代なので、スマートフォンなどを活用した情報提供にも力点を置くべきだと思います。

 

マスコミとの連携強化のため、記者との定期的な懇親会(居酒屋日弁連)を開催しています

(田中)以前に比べ、弁護士会とマスコミとの関係はより良いものになっていると思います。今後も、連携強化への取り組みを継続していただきたいと思います。

(生田)「居酒屋日弁連」は良い取り組みだと思います。もっとも、懇親会を開催するだけでは不十分です。参加した記者の方たちとの信頼関係・人間関係を構築して個別に情報交換することが重要だと思います。

 

「全国広報担当者連絡会議」を開催し、弁護士会との連携強化にも力を入れています

(生田)弁護士会からは、日弁連がどんな広報を行っているのか見えづらいので、会内広報も大切です。

弁護士会に出向き、各地の取り組みや意見などを「日弁連新聞」などで紹介することも重要だと思います。

(神)弁護士会には、地元メディアとのパイプがあります。日弁連は中央のメディアに情報発信すると同時に、それを地方でも発信するといった連携ができれば、より大きな広報効果が期待できます。

 

子ども向けの広報にも力を入れています

(生田)気の長い話にはなりますが、法教育は非常に大切です。選挙権年齢が18歳に引き下げられますので、より一層重要性が増すでしょう。日弁連ホームページにある「子どもページ」の充実や、年間千数百人の生徒さんが来会する社会科見学は引き続き頑張っていただきたいと思います。

(田中)子ども向けの広報にしっかりと取り組むことは、日弁連の社会的役割だと思います。社会科見学の関係では、裁判所には法廷見学等があり、法務省には赤れんがの史料展示室があるのに対し、弁護士会には何もありません。大きな夢かもしれませんが、弁護士会館の中に模擬法廷を設置してはどうでしょうか。模擬法廷があれば、社会科見学の希望も増えると思います。裁判員裁判など、会員向け研修にも活用できますし、大学の講義に貸し出すといったこともできるのではないでしょうか。

(神)各地の弁護士会では、弁護士が学校に出向く出張授業を実施しています。日弁連で、授業に用いる資料のフォーマットを作成するなどの支援ができれば、弁護士会との連携という点でも非常に有益ではないでしょうか。

 

中長期的な戦略を策定することも検討しています。今後の日弁連の広報について、どうお考えですか

(田中)中長期戦略を策定するには、弁護士人口、男女比率なども含めた社会的環境の変化を見極める必要があると思います。情報技術の面でも、将来は、文字ではなく映像による情報発信が主流となる可能性もあります。昔以上に変化がスピーディになっていますので、その見極めは大変かもしれませんね。

(生田)他士業や公益団体の広報活動についてのリサーチも必要だと思います。企業向けなのか、市民向けの情報なのか等々、ターゲットを見据えた検討も必要でしょう。広報方針をきちんと定めて戦略がぶれないようにすることが重要だと思います。

(神)私の時代は広報予算が極めて少なかったのですが、最近はかなり増えました。予算の原資は会費です。会員も有益だと思える予算の使い方が重要でしょうね。


 

座談会参加者(敬称略)

神 洋明(第一東京)

1983年6月1日~広報室嘱託
1984年4月1日~1986年9月30日実質的に室長業務を行う者(当時は事務総長が広報室長を兼務)

田中 早苗(第一東京)

1992年10月1日~広報室嘱託
1996年4月1日~1997年5月31日実質的に室長業務を行う者、1997年6月1日~1998年3月31日広報室長

生田 康介(東京)

2001年4月1日~広報室嘱託
2005年1月1日~2007年3月31日広報室長
2010年11月1日~広報室嘱託(再任)
2011年1月1日~2013年3月31日広報室長

 

編集後記

記念すべき500号という節目を迎えた本号は、歴代の広報室長による座談会を行い、各時代における活動を振り返っていただくとともに、今後の日弁連広報に対する期待を語っていただきました。
日弁連は、一昨年度から、市民向けの広報活動の充実強化を会務執行方針の重要課題として掲げ、予算を大幅に増額するとともに、マスコミ対応の強化等、効果的な情報発信に努めています。その結果、日弁連の活動に関する新聞記事掲載件数も飛躍的に伸び、日弁連のプレゼンスは高まっています。
弁護士が身近で頼りになることを多くの市民に理解してもらうため、また、日弁連の意見を適時に、かつ分かりやすく伝えていくため、これからも広報室一同工夫を重ねていきたいと思います。
(T・O)