日弁連新聞 第499号

法曹養成制度改革推進会議決定
法曹養成制度改革の更なる推進について

6月30日、関係6閣僚から構成される政府の法曹養成制度改革推進会議(以下、「推進会議」)は、「法曹養成制度改革の更なる推進について」を決定した。
日弁連は、同日付で会長声明を公表し、司法の一翼を担うものとして、この改革案を踏まえ、関係諸機関、諸団体と連携して法曹養成制度の改革に全力を尽くすことを表明した。

 

「法曹養成制度改革の更なる推進について」は、政府の法曹養成制度検討会議が2013年6月26日の取りまとめで指摘した、司法試験合格率の低迷、法曹養成課程における経済的・時間的負担、修習終了後の就職難を原因とする法曹志望者の激減という状況を食い止め、質・量ともに豊かな法曹を輩出しなければならない、という危機意識のもと、同年9月から23回にわたって開催された法曹養成制度改革顧問会議における議論や、関係機関、団体の意見を踏まえてなされたものである。

 

司法試験合格者数の減員と法科大学院の改革

この間、日弁連としては、2012年の「法曹人口政策に関する提言」、「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」に基づき、①司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要等を検証しつつ対処していく、②これを前提として法科大学院の統廃合と定員の大幅な削減を行って教育の質を向上させ、司法試験の合格率を上昇させる、③予備試験については制度趣旨を踏まえた運用をする、④給費の実現等の司法修習生ヘの経済的支援を含む法曹養成課程における経済的負担を軽減する、という諸事項を相互に関連した一つの基本方針と位置付け、最大限の取り組みを進めてきた。

今回の推進会議決定は、全体として必ずしも十分なものとは言えず、また、今後の課題として積み残されているものもあるが、司法試験合格者としては、当面1500人程度とし、必要な取り組みを進める、法科大学院については、2018年度までを集中改革期間とし、すべての法科大学院において累積合格率7割以上を目指すとともに、修了までの経済的・時間的負担の軽減を図る、とするなど、一定の改革案も示された。

 

司法修習生への経済的支援の在り方も検討

また、推進会議決定には、「司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討する」との文言も盛り込まれた。司法修習生の経済的負担の重さが法曹志願者の減少の一因になっているとの指摘もあることから、日弁連は、司法修習生に対する給費の実現・修習手当の創設を求めて活動してきた。今後、司法修習生の経済的負担の軽減に向け、前向きな議論が開始されることが望まれる。

日弁連としては、司法の一翼を担うものとして、社会の隅々にまで法の支配を実現するべく、質・量ともに豊かな法曹を輩出するため、この決定を法曹養成制度改革の第一歩として、関係諸機関、諸団体と連携してその実現や今後の課題の検討等、法曹養成制度の改革に全力を尽くすとともに、法科大学院や司法修習における教育の充実や経済的支援の実現にも取り組む所存である。

 

(事務次長 吉岡 毅・戸田綾美)


 

安全保障法制改定法案の不成立に向けて

7月16日、衆議院本会議において、安全保障法制改定法案の採決が強行され、可決された。
日弁連は、本法案の違憲性や問題点について、国会議員や多くの市民と理解を共有し、法案が成立することのないよう、7月9日に院内学習会を、同15日にシンポジウムを開催した。

 

  • 日弁連院内学習会「安全保障法制」を問うpart2
  • シンポジウム「安全保障法制の問題点を考える 」
院内学習会「安全保障法制を問う」

安全保障法制の問題点等について語る浅田次郎氏

6月10日に続き、7月9日に衆議院第二議員会館において安全保障法制の問題点に関する院内学習会を開催した。

村越会長の開会挨拶の後、長谷部恭男教授(早稲田大学大学院法務研究科)が講演を行い、本法案が違憲であり、砂川判決が集団的自衛権行使の論拠とならないことを詳説した。

次いで、元最高裁判事の那須弘平会員(第二東京)が登壇し、「憲法前文は不戦を誓う約束の言葉、平和を願う祈りの言葉、戦争による悲劇に対する謝罪と懺悔の文章だ。国会では、このことを前提に、常識ある判断をしてほしい」と訴えた。

院内学習会には、岡田克也民主党代表、柿沢未途維新の党幹事長、志位和夫日本共産党委員長、吉田忠智社民党党首、主濱了生活の党副代表をはじめとする35人もの国会議員が出席し、村越会長が各党の代表者らに請願署名を手渡した。

岡田克也民主党代表は、「存立危機事態については、答弁者によって答弁が違う。それだけ『存立危機事態』という概念が曖昧である。もっとしっかり議論して、国民に法案のおかしさを理解してもらいたい。この状況を変えるのは国民一人一人の力だ。一緒になって戦っていきたい」と、決意を表明した。

 

シンポジウム「安全保障法制の問題点を考える」

衆議院特別委員会で採決が強行された当日の7月15日、東京三弁護士会、関東弁護士会連合会の共催を得て弁護士会館でシンポジウムを開催した。

村越会長による「憲法違反の法案は何時間審議しようとも憲法違反である。採決の強行は民意を踏みにじるものであり、断固抗議する」との発言を皮切りに、半田滋氏(東京新聞論説委員兼編集委員)は、「まさに戦争法案というべき法案が今日採決された。日本の国柄が大きく変わってしまう」と危惧を示し、井筒高雄氏(元陸上自衛隊・レンジャー隊員)は、「一内閣が日本の在り方を根本から変えて良いのか。自衛隊員の命が政治の道具にされてしまう」と政府の姿勢を批判した。また、山口宏弥氏(JAL不当解雇撤回原告団パイロット団長)、岡田武夫氏(日本カトリック司教協議会会長東京教区大司教)、住江憲勇氏(全国保険医団体連合会会長)、菅原文子氏(「辺野古基金」共同代表/農業生産法人取締役)も相次いで登壇し、法案への反対意見を表明した。

最後に登壇した浅田次郎氏(日本ペンクラブ会長)は、「安倍首相はなぜ、国民の了解を得る前にアメリカと約束したのか。順序がおかしい。これは国民に対する侮辱だ」と発言し、政府・与党の姿勢を批判した。

 

今後も取り組みを継続・強化

日弁連は、7月16日の理事会において、「安全保障法制改定法案に反対し、衆議院本会議における採決の強行に抗議する理事会決議」を採択し、本法案が成立することのないよう、今後も引き続き、国民と共に全力を挙げて取り組むことを明らかにした。

また、8月8日には、弁護士会館で戦後70年記念シンポジウムを、8月26日には、参議院議員会館で院内学習会、日比谷野外音楽堂(東京都千代田区)で集会・パレードを行う予定である。

今後も、国会議員に対する働きかけを継続・強化するとともに、市民に向けたより分かりやすい発信に努めていきたい。


 

「標的型攻撃メール」にご注意ください

日本年金機構から大量の個人情報が漏えいする事件が発生し、その後も同種事件が発生しています。これらの漏えい事件は、「標的型攻撃メール」によって引き起こされています。

会員および関係者の皆さまは、以下の点に特にご注意ください。

  • ①ウイルス対策ソフトを機能させていないコンピュータやシステムを使わない。
  • ②件名や内容が不自然なメールは、添付ファイルを開いたり、URLをクリックしない。心当たりのある者からのメールであっても、メール送信の事実があるか電話等で確認する。
  • ③もし、添付ファイルを開いたり、URLをクリックしてしまったときは、LANケーブルを抜く等して外部との通信を遮断し、当該コンピュータ等の利用を停止する。

*詳細は会員専用ページをご確認ください(6月12日付お知らせ)。
HOME≫お知らせ≫2015年≫弁護士情報セキュリティに関する注意喚起(「標的型攻撃メール」への対策について)

 

ひまわり

日弁連中小企業法律支援センター(以下、「中小企業法律支援センター」)では、中小企業による弁護士利用を推進するため、各地の弁護士会とともに、ひまわりほっとダイヤルの運営や全国一斉無料法律相談等に加え、各地で中小企業関連団体との意見交換会(通称「全国キャラバン」)を開催している▼全国キャラバンでは、弁護士会と地域の商工会議所等の中小企業関連団体との連携を推進するため、関連団体等の参加を得て、弁護士会の中小企業支援活動の紹介や意見交換が行われ、終了後には懇親会が開かれている。これまでに、計16カ所で実施され、中小企業関連団体関係者、弁護士を含め、延べ1000人以上が参加している▼いずれの開催地でも、関連団体等から弁護士・弁護士会に対して忌憚のない率直な意見が寄せられ、今後の中小企業支援の在り方について熱い議論がなされており、これを契機に、弁護士会と地元関連団体との協力関係が前進し、弁護士会の中小企業支援活動も活発化している▼中小企業法律支援センターでは、これからも全国キャラバンの開催を推進していくが、今後は、個々の弁護士と中小企業との出会いをいかに増やしていくかが課題であり、そのような観点からの検討が必要である。

(T・Y)


 

日弁連・シンガポール弁護士会共同セミナー報告
友好協定締結と日本の弁護士の活躍
6月22日 シンガポール

日弁連とシンガポール弁護士会は、シンガポール弁護士会で友好協定を締結し、村越会長とThio Shen Yi会長が協定書を交わした。また、両弁護士会は共同セミナー「Globalisation of Legal Practices - An Asian Perspectives」(法律サービスのグローバル化-アジアの視点)を開催し、多くの参加者を得た。

 

友好協定調印式記念品交換の様子

シンガポールには、近年のグローバル化に伴い、多くの日本企業がビジネスを展開し、3万人以上の邦人が居住している。こうした日本企業や邦人が契約や紛争等の問題を解決する際に、日本の弁護士がさまざまな局面において大きな役割を果たしていくことが強く期待されている。

近年、シンガポールにオフィスを構える大手法律事務所も増え、現在では6つの日系法律事務所が進出するなど、40人以上の日本の弁護士が活動している。また、法務省による調査研究委託事業に基づき、弁護士(法律サービス展開本部国際業務推進センターの幹事)が現地日本企業・在留邦人の活動や法的支援のニーズ調査を行っている。

セミナーは、シンガポールにおける日本の弁護士のリーガルサービスをテーマの一つに取り上げ、両国の弁護士の効果的な連携の在り方等について意見交換することを目的に開催された。

村越会長およびYi会長の挨拶に続き、第1セッションでは、弁護士の国際化の推進、そのための弁護士会の役割、外国弁護士規制の在り方・調和などについて討議し、会場からは弁護士のプロボノ活動の重要性などの意見が出された。

第2セッションでは、アジアで拡大しつつある国際仲裁について、シンガポールにおける国際仲裁の成功の意義、日本の国際仲裁の現状と課題、両国の弁護士の協力の必要性について討議した。

村越会長とYi会長との間で両弁護士会の友好協定が締結されたことで、両国の弁護士の友好の未来に橋頭堡が築かれたと言える。シンガポールおよび東南アジアでの日本の弁護士のさらなる活躍に期待したい。

(法律サービス展開本部国際業務 推進センターセンター長 矢吹公敏)


 

シンポジウム
民法(債権関係)改正と今後の消費者保護法制
6月26日 弁護士会館

  • シンポジウム「民法(債権関係)改正と今後の消費者保護法制」

民法(債権関係)改正法案が今通常国会に提出された。本法案につき、法制審議会の中間論点整理や中間試案に盛り込まれていたものの立法に至らなかった論点を含めて確認することで、今後の消費者保護立法の在り方や解釈論への影響を検討すべく、シンポジウムを開催した。

 

まず、鹿野菜穂子教授(慶應義塾大学法科大学院/法制審議会民法(債権関係)部会幹事)が基調講演を行い、消費者概念の民法への取り込みや契約締結過程における情報提供義務、暴利行為、惹起型錯誤など立法に至らなかった論点について審議過程を報告した。鹿野教授は、本法案における保証規定の改正・約款規定の新設について、従前より消費者保護へ前進したと評価する一方、消費者保護の拡充という点からはなお課題が残ると指摘した。

次に、消費者問題対策委員会の辰巳裕規副委員長(兵庫県)が基調報告を行い、日弁連が法制審議会に4人の委員・幹事を送り出し、全99回に及んだ同部会で多数の意見表明を行った結果、約款規定の立法化などの成果を獲得したことを報告した。

続くパネルディスカッションでは、活発な意見交換が行われた。

高須順一法制審議会民法(債権関係)部会幹事(東京/司法制度調査会委員)は、改正法案が事業用貸金の保証につき公正証書による保証意思表示を求めていることについて、保証人となろうとする人の慎重な判断を促す点では評価できるものの、公証役場でのやり取りがどれだけ内容を伴うか、今後われわれ実務家が注視していかなければならない、と注意喚起した。鹿野教授は、「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」が公正証書による保証意思表示の対象外となった点に触れ、「事業に現に従事」という語句の射程範囲に留意する必要があると指摘した。

消費者問題対策委員会の山本健司委員(大阪/内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会委員)は、今般の消費者契約法改正の中で暴利行為規定の立法化を実現する必要があると指摘した。日弁連は、今後もさらなる消費者保護法制の拡充のため取り組みを続けていく。

 

日弁連短信
国際戦略会議始動―弁護士と弁護士会の国際化

事務次長 兼川真紀

法曹人口問題と並ぶ法曹養成制度改革のもう一つの柱は「法曹有資格者の活動領域の拡大」である。日弁連でも2013年度に自治体等、企業、海外展開の各分野における弁護士の活動領域の拡大をサポートするための法律サービス展開本部を設置している。

海外展開は先進的な活動をしてきた諸団体と連携しながら「国際業務推進センター」が中心となって担う。「中小企業の海外展開業務の法的支援に関するワーキンググループ」は、弁護士紹介制度を拡充しつつある。

日本企業の99%は中小企業で、その数は385万社。アジアに展開する企業は4万社を超える。グローバルな世界は中小企業にも国内にとどまることを許さない。市町村役場も中小企業の海外展開を支援する。

しかし、そのような企業も日常的に弁護士に相談しているわけではない。大企業は、大手法律事務所に依頼しているし、そうでなくても商社が事実上の相談相手となっている場合もあるだろうが、それは一部の話だ。海外分野を切り拓いた先達には頭が下がるが、国内問題に限らず、海外展開についても、ごく普通の会社がごく普通の弁護士にごく普通に相談することができて初めて国際化だと思う。

若手には国際機関での勤務や、途上国での法整備支援を志す人も多い。外国法事務弁護士の登録手続の透明化も検討されているが、日本の弁護士が外国で働きたいという要望も強い。今後、大規模事務所でなくても現地で日本企業にアドバイスできるような支援を日弁連に望む人も増えていくだろう。訴訟実務はドメスティックでも法的サービスは国境を越えていく。

日弁連は、海外展開支援だけでなく、国際的な人権活動、国際室が担当する留学支援、キャリアセミナーなどでも成果をあげてきたが、人材育成、関係省庁との連携等やるべきことはまだまだたくさんある。

4月、「国際戦略会議」が発足した。業務支援、国際法曹団体との関係、国際人権分野をはじめ多岐にわたる諸課題に継続的に取り組み、より一層の国際化を目指すのが目的である。年度内には将来的なビジョンを明確化し、実現への行程を具体化するミッションステートメントを策定する方針である。日弁連市民会議等でも国際化への関心は高い。昨年のIBA東京大会の成功も記憶に新しい。始動した国際戦略会議を大きく育てていきたい。

(事務次長 兼川真紀)


 

シンポジウム
いま、教育に何が求められているのか?
6月30日 弁護士会館

  • シンポジウム「いま、教育に何が求められているのか?」

道徳科目の教科化や教員免許制度の改革など、現在、さまざまな側面から教育制度改革が進められている。本シンポジウムでは、特に教科書検定・採択の問題を取り上げ、今後の改革の在り方について考えた。

 

重松清氏講演「言葉の力」

作家の重松清氏が講演を行った。重松氏は、子どもの問題を扱った小説を多く執筆し、教科書にも採用されている。講演の中で重松氏は、自らの体験を語った上で、大人の目を見て話せない子どもには、大人は背中から受けとめ、「言葉の力」で守ることができると語った。そして、「小説は、子どもたちに『大丈夫だよ』と言ってあげられるものであり、そのような小説を書きたいと考えている」と語った。

 

教科書検定・採択の問題点

教育法制改正問題対策ワーキンググループ(以下、「WG」)の小林善亮委員(埼玉)が、2014年に改定された教科書検定基準と検定審査要項は、国による過度の教育介入であり、子どもの学習権を侵害する恐れがある。教科書の採択においては、子どもの学習権を中心に考え、教師および学校の意思を十分に尊重するべきであると述べた。

パネルディスカッションでは、坪井節子会員(東京/文京区教育委員会委員)から、文京区では採択予定の教科書を取り寄せ、各学校に貸し出し、教職員から意見を収集した上で採択しているとの報告があった。また、道徳教育の教科化については、特定の価値を教えるものであり疑問があると述べた。

さらに、WG委員で現役の高校教師でもある神内聡委員(東京)は、今の教育現場には、外国籍の子どもが増えており、日本独特の道徳観・教育観を優越的な立場で教えることが懸念されるとし、政府が進めるグローバル化との整合性が取れないと指摘した。また、「教育は、子どもを幸せにしていくための大事なツールなのに、今、子どもの格差や貧困が原因で学習権が脅かされている」と格差・貧困対策の重要性を強調した。

 

刑事施設視察委員会
弁護士委員全国連絡会議
7月13日 弁護士会館

日弁連は、市民参加による社会に開かれた刑務所を目指し、全国の刑事施設視察委員会の活動を充実させ、各施設の運用改善を図るために、弁護士委員による連絡会議を開催している。
本会議は、年2回開催されており、今回は今年度の第1回目である。

 

全国の刑事施設視察委員会の弁護士委員が一堂に会し、委員会の活動状況や課題を共有した

はじめに、刑事拘禁制度改革実現本部の海渡雄一本部長代行(第二東京)から新任の視察委員に対し、視察委員会の活動および委員の視点等についてオリエンテーションを行った。委員会への施設職員の立会いについては、施設への質問等の場面では参加が望ましいが、独自の議事に際しては、立会いを避けることや委員会宛の提案箱の鍵の管理は委員会が行うことなど提案書の提出や委員会と被収容者の面会の秘密を守ることが重要であることを説明した。また、委員会の活動を被収容者に周知するために委員会ニュースを発行することが効果的であると紹介した。

同本部の下林秀人事務局長代行(東京/元府中刑務所視察委員会委員長)は、府中刑務所視察委員会が実施したアンケートについて報告した。同委員会では、アンケート結果を分析し、意見書を取りまとめ刑務所長に提出するとともに、視察委員会ニュースを発行し、被収容者に結果を公開した。また、対象とした被収容者約2000人のうち1963人から回答を得られたことについて質問があり、回答と集計をし易くするよう工夫したことが報告された。さらに、内容が非常によくできているので全国の刑事施設でも同じ内容のアンケートを実施し、結果を施設ごとに比較してはどうか等の意見が寄せられた。

上本忠雄事務局次長(第二東京)は、東京矯正管区内の刑務所の被収容者の動作要領の改定状況について報告した。軍隊式の行進が復活しているとの情報に接したことから各地の動作要領について情報公開請求するなどした結果、腕の振りの角度や速度を定めて軍隊式行進を実施している例が明らかになっている。会場からは、各地の刑務所でも情報公開を求めてみるべきとの声が上がった。


 

シンポジウム
再犯防止プログラムの現在
7月13日 弁護士会館

  • シンポジウム「再犯防止プログラムの現在」

刑事施設への入所者数は2007年以降、漸減する一方、出所後2年以内に刑事施設に再び入所する者の割合は約2割前後で推移しており、再犯防止が喫緊の課題となっている。
再犯防止プログラムの現状や効果的なプログラムの在り方についてシンポジウムを開催した。

 

特別改善指導について

大橋哲法務省矯正局総務課長は、再犯防止プログラムの現状について講演した。薬物依存、性犯罪など更生と社会復帰が難しい事情を抱える受刑者に対しては、薬物依存離脱、暴力団離脱、性犯罪再犯防止、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全および就労支援の6つの特別改善指導が行われており、性犯罪再犯防止指導については、その効果を統計的に検証していることを報告した。さらに、今後は、プログラムの充実を図るとともに、他の機関等と連携し、就労支援などを総合的に実施することが課題であると締めくくった。

 

より効果的なプログラムの運用に向けて

藤岡淳子教授(大阪大学大学院)は、欧米の研究結果等に基づき、犯罪から離脱するためには、「決意」(転機)が不可欠であるが、それだけでは不十分であり、人としての主体性を保つために、施設内のプログラムだけではなく、施設から社会に移行するための支援も必要であると指摘した。

(株)大林組の社員で、島根あさひ社会復帰促進センター社会復帰支援員でもある毛利真弓氏(臨床心理士)は、同センターで行われている「回復共同体」プログラムについて報告した。同プログラムは、「意図的に作り上げたコミュニティ」の中で、責任と役割を果たしつつ、社会の中での考え方や行動を学ぶことを目的とするものであると説明し、同プログラムの参加経験がある元受刑者は、「参加するうち、深く自分を見つめ直すようになった」と、プログラムの意義を語った。


 

勉強会
死刑の存廃と終身刑について考える
6月16日 弁護士会館

日弁連は、死刑のない社会が望ましいことを見据え、死刑廃止についての全社会的議論を求めている。この議論の過程で登場する論点の一つが、代替刑としての終身刑導入である。
そこで、死刑の存廃と終身刑導入の課題について、石塚伸一教授(龍谷大学大学院法務研究科)を招いて勉強会を開催した。

 

海外の動向

石塚教授は、海外の動向について、次のように説明した。

ヨーロッパではEUの全加盟国が死刑を廃止している。EU未加盟国の中でも、ベラルーシを除いて死刑はない。仮釈放のない終身刑(絶対的終身刑)と仮釈放のある終身刑(相対的終身刑)のどちらを最高刑とすべきかについて議論がされている。

ノルウェーでは、有期刑が最高刑となっているが、保安処分としての不定期拘禁も存在しており、2011年7月に発生したテロ事件では、有期刑の後、保安処分としての拘禁を行うか否かが議論されている。

アメリカでは現在も多くの州が死刑制度を存置しているが、死刑判決や死刑執行件数は減少している。減少理由の一つとして、絶対的終身刑の導入が挙げられている。

 

日本の動向

日本では、死刑と無期懲役の確定判決件数が2000年から2007年にかけて急増していたが、その後は減少している。しかし、刑事施設内の無期刑受刑者は、仮釈放の厳格運用もあり、この10年で500人ほど増加し、2013年末で1843人に及んでいる。

 

終身刑の導入について

死刑の代替刑としての終身刑導入については、一生自由を剥奪する終身刑は死刑よりも残酷ではないかという意見や、終身刑を導入したら本当に死刑は減るのか、廃止につながるのかといった意見、死刑廃止への過程で終身刑導入が必要という意見や裁判員裁判の下であれば弁論次第で死刑は減少するという意見など、さまざまな立場からの意見が紹介された。

 

院内学習会
奨学金制度の現状と課題
あるべき学費と奨学金制度を考える
6月16日 衆議院第二議員会館

  • 奨学金制度の現状と課題―あるべき学費と奨学金制度に関する院内学習会

奨学金問題に対する社会的関心が高まり、制度改革に向けた議論が活発化しているが、制度や運用の在り方とともに、返済に苦しむ当事者の実態は、十分に知られているとは言い難い。
 そこで、学費と奨学金制度の実態を明らかにするため、院内学習会を開催した。

 

奨学金制度の実態

大内裕和教授(中京大学)が、奨学金問題の現状と課題について基調報告を行った。大内教授によれば、現在、日本学生支援機構(機構)の有利子奨学金貸与人数は、無利子奨学金の2倍を超え、1000万円以上の奨学金債務を抱える学生も珍しくない。若年労働者の非正規化が進んだ結果、就職しても返済するのに十分な収入を得られないため、必然的に延滞者が増えるという。また、延滞者の83%が年収300万円以下であることを指摘し、「返さないのでは無く、返せないのである」と説明した。

さらに、近時、学生や支援者が奨学金問題対策全国会議等の団体を結成し、相談支援活動や改革提言に取り組み始めた。機構でも、延滞金賦課率の引き下げ、返還猶予期限の延長など制度改善がなされたが、利用者への周知など運用面での課題も大きいとのことである。

 

求められる奨学金制度改革

貧困問題対策本部の岩重佳治事務局員(東京)が、3月19日付の「給付型奨学金制度の早急な導入と拡充、貸与型奨学金における適切な所得連動型返済制度の創設及び返済困難者に対する柔軟な対応を求める意見書」に基づき、あるべき学費と奨学金制度について報告した。岩重事務局員は、日本の高額な学費は教育の機会の不平等を生み出しており、教育を受ける権利の保障と教育の受益者は社会全体であるという視点から、最終的には高等教育の無償化が必要であると指摘した。その上で、奨学金については、給付型奨学金の早急な導入が必要であるが、当面の改革として、貸与型奨学金につき、返済の負担を所得に応じて変動させる所得連動型返済制度を創設すべきとした。また、返済困難者に対する救済制度について、利用期間の制限や延滞者に対する利用制限を撤廃し、併せて制度の周知徹底を図るべきであると訴えた。

*同梱の貧困問題対策本部ニュースでも院内学習会の記事を掲載しているのでご参照ください。

(貧困問題対策本部事務局次長 紅山綾香)


 

院内学習会
カジノ解禁について考える
6月24日 衆議院第二議員会館

  • 院内集会「カジノ解禁について考える」

カジノを一定の条件の下に合法化することを推進する「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(カジノ解禁推進法案)。同法案は一度廃案となったが、懸念事項に具体的な対策が練られることなく、4月28日に国会に再提出された。カジノ解禁による弊害や問題について議論を深め、問題意識を共有するため、院内学習会を開催した。

 

精神科医の野末浩之医師がギャンブル依存症の現状について報告した。野末医師によれば、パチンコ産業等の影響で、日本には、諸外国に比して多数のギャンブル依存症患者が存在しているという。また、青少年に対するギャンブル依存症予防対策がほとんど取られていないこと、臨床医のギャンブル依存症治療に対する熱意が薄いことも指摘した。

福島瑞穂参議院議員(社民党)は、カジノのほか競馬や競輪も、刑法第186条第2項の賭博場開帳図利罪の構成要件に該当するが、競馬などの公営ギャンブルは、収益を税金として使用することから違法性が阻却されていることを紹介し、「ビジネスで行うカジノがなぜ違法性が阻却されるのか、法律的には説明できない」と強調した。

井上善雄会員(大阪)は、カジノが公認されたとしても違法な賭博、ノミ行為、闇カジノが無くなることはなく、犯罪が増えることはあっても減ることはないと指摘した。また、カジノの収益金などをギャンブル依存症対策や犯罪対策に使うとするカジノ解禁推進派の主張に対しては、ギャンブル収益を依存症等の対策に充てれば、公営ギャンブルでさえ採算は取れない。推進派の主張は詭弁にすぎないとし、カジノ解禁によるメリットはないと訴えた。

多重債務問題検討ワーキンググループの新里宏二座長(仙台)は、各地でカジノ誘致撤回が相次いでいることを指摘し、カジノ解禁に対抗する大きな反対の流れができていると述べ、集会を締めくくった。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.102

東京都立多摩総合精神保健福祉センター
依存症回復への取り組み

一部執行猶予制度の施行開始を控え、薬物依存症者の処遇・再犯防止が大きな関心事となっています。そこで今回は、依存症に対する相談事業を実施している東京都立多摩総合精神保健福祉センター(以下、「多摩総」)を訪ね、広報援助課の野崎伸次課長、宮﨑洋一係長、谷合知子係長からお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)


 

左から野崎課長、宮﨑係長、谷合係長

センターの主な業務は

精神保健福祉センターは、各都道府県と政令指定都市に設置されており、全国69カ所にあります。

多摩総では、①地域住民の心の健康づくり、②心の病気を抱えた人に対する支援、③東京多摩地域の精神保健福祉活動への支援・協力を行っています。

 

依存症本人への初期対応は

対応の第一次的な窓口になるのは、「こころの電話相談」です。ここでは、薬物のみならず、対人関係や心の病気に悩んでいる人から、年間1万件以上の電話を受けています。

電話相談の中で、各種依存症や思春期・青年期特有の問題(適応障害や引きこもりなど)を覚知した場合、定例日に実施している個別の面接相談を案内します。

面接相談の結果、医療機関や支援施設などを紹介するケースもあれば、多摩総のプログラムを案内することもあります。

 

面接相談を受けるのは本人ですか

相談者の過半数は家族で、一番多いのは母親からの相談です。本人からの相談は3割ほどです。

 

依存症=薬物だけではないのですね

多摩総の場合、一番多いのは薬物関連、中でも覚せい剤ですが、次にアルコール・ギャンブルの順です。そのほかにも、性依存、盗癖など、依存の対象はさまざまです。

 

依存症本人に対するプログラムとは

多摩総では、薬物を含む各種依存症を抱えた人に向けて、無料で参加できるTAMARPP(タマープ)という再発予防プログラムを実施しています。これは、せりがや覚せい剤再乱用防止プログラムSMARPP(スマープ)を基に作成したプログラムで、依存症回復の初期支援に焦点を当てています。

週1回2時間ほど、10~15人の参加者が、専用のテキストを用いながら、グループワーク形式で再発の危険信号などについて学びます。ダルクのスタッフも同席し、経験談などを伝えてくれています。参加者は30代が最も多く、8割以上が男性です。なお、参加者には、他の参加者に関する情報の秘密保持など、グループ参加に関するルールを説明し、書面で同意を得ています。

プログラムは、1クール約4か月で進めていますが、依存症回復までの道のりには個人差がありますし、同じ内容を繰り返し学ぶことで理解が深まりますので、数年間参加する人もいます。

 

家族向けのプログラムもあるそうですね

手作りの看板。TAMARPPの開催時はこの看板を入り口に掲げている

家族教室も、週1回実施しており、こちらも無料で参加できます。依存症の正しい知識・家族の対応等についての講義を行うほか、月1回グループワークを行います。2か月で1クールですが、同じテーマでも講師によって話す内容が異なりますので、1~2年の継続参加を勧めています。毎回20~40人ほどが参加しており、母親の参加が一番多いです。

 

薬物を使用している人も受け入れているのですか

多摩総は、取締機関ではないので、本人から薬物再使用の話が出ても、原則として警察には通報しません。正直に薬物使用を伝えてくれたことをねぎらい、連続使用にならないための工夫を検討していきます。

 

他機関の紹介とは

必要に応じて医療機関の紹介を行います。薬物依存の治療を行っている医療機関が少ないので苦慮しています。

TAMARPP参加をきっかけとして、ダルク等回復支援施設や自助グループにつながっていく場合もあります。このような、薬物を止め続けていくための取り組みへのサポート、橋渡し的機能を大切に考えています。

 

弁護士へのメッセージをお聞かせください

センターの立場上、本人や家族からお話を伺うことが前提になりますので、弁護士さんには、本人または家族をセンターに案内・紹介いただくようお願いしたいです。

センターは地域によって職員体制や実施している事業内容が異なりますが、情報が集まりやすい場所です。当該地域で、その方に一番適した医療機関・支援施設等を探すためのお手伝いができます。ぜひご活用いただきたいと思います。


 

日弁連委員会めぐり78

国、地方公共団体等による弁護士任用促進に関するワーキンググループ

今回の委員会めぐりは、国、地方公共団体等による弁護士任用促進に関するワーキンググループ(以下、「WG」)です。
WGの活動について、菊地裕太郎座長(東京)、谷垣岳人副座長(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 神田友輔)


 

菊地座長(左)と谷垣副座長

WG設置の経緯は

(菊地)日弁連は、国、地方公共団体等(以下、「自治体等」)による弁護士の任用拡大を求め、さまざまな活動を行っており、任期付公務員等の募集は次第に増加しています。他方、募集に十分応えられていない事態も一部生じています。会員の皆さまに積極的に応募いただくため、また、求人側の窓口となるため、2014年8月にWGを設置しました。

 

活動内容を教えてください

(谷垣)自治体等からは、年間約90件の募集があります。WGでは、法律サービス展開本部自治体等連携センターと協力して、公務員の募集情報等を掲載した会員向けのメールマガジン「任期付公務員等キャリア・マガジン」を発行し、最新の募集情報等を提供しています。

 

新しい取り組みを始めたそうですね

(菊地)多くの自治体等では内定から採用までの期間が短く、事件の引き継ぎが容易でないことが、応募への障壁となっています。円滑な事件の引き継ぎのため、応募者や内定者を勤務開始までの間受け入れ、手持ち事件の引き継ぎや新件の共同受任等を行う法律事務所が必要です。また、地方公共団体で勤務している弁護士の6割が任期終了後の進路に不安を持っていることがアンケートから明らかになりました。  そこで、任用希望者や任用終了者の受け入れなどの支援を行う自治体内弁護士等任用支援事務所(以下、「支援事務所」)の募集を始めました。

 

今後の課題を教えてください

(谷垣)この支援事務所に対する経済的支援の実施も現在検討しています。

また、今後も自治体等からの募集が増えることが予想されますので、会員の皆さまに対する情報提供が一層重要になってくると思います。

 

会員に向けてのメッセージをお願いします

(菊地)多くの会員に任期付公務員へ応募していただきたく、支援事務所の募集を始めました。自治体等でキャリアを積んだ弁護士の採用は、法律事務所にとってもメリットが大きいはずです。ぜひ支援事務所への応募についてもご検討ください。

 

*支援事務所についての詳細は、日弁連ホームページ(「任用支援事務所」で検索)をご覧ください。


 

ブックセンターベストセラー
(2015年5月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 株式会社法 第6版 江頭憲治郎 著 有斐閣
2 民法(債権関係)改正法案新旧対照条文 商事法務 編 商事法務
3 新・株主総会ガイドライン[第2版] 東京弁護士会会社法部 編 商事法務
4 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
5 ローヤリング労働事件 山川隆一・浅井隆・井上幸夫 他著 労働開発研究会
6 商業登記ハンドブック[第3版] 松井信憲 著 商事法務
7 破産管財の手引[第2版] 中山孝雄・金澤秀樹 編 きんざい
8 責任能力弁護の手引き GENJIN刑事弁護シリーズ16 日本弁護士連合会刑事弁護センター 編 現代人文社
9 弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書 原和良 監修・弁護士業務研究所 著 レクシスネクシス・ジャパン
10 離婚判例ガイド[第3版] 二宮周平・榊原富士子 著 有斐閣

編集後記

雑誌TIME米国版は6月8日号の表紙で死刑制度の終焉を取り上げた。
ジョージ・ケイン准教授(西コネティカット州立大学)は、6月16日に開催されたシンポジウム「福岡事件を通して死刑事件を考える」で、雑誌の表紙で取り上げられるほど米国では死刑廃止に向けた気運が高まっていると紹介し、その要因の一つとして、被害者遺族との協力を挙げた。
コネティカット州の運動は、えん罪被害を受けた人だけではなく、被害者遺族等が共に議会にアプローチしており、被害者遺族団体は死刑廃止運動の最も強力なサポーターになっているという。
死刑事件は時間がかかり過ぎ、遺族を苦しませ続ける。遺族にとっても良い制度ではない、というケイン准教授の話は、死刑が抱える問題の複雑さと、死刑制度廃止の可能性を感じさせるものだった。
(Y・O)