日弁連新聞 第498号

第66回定期総会開催
会長選挙規程の一部改正など7議案を可決
5月29日 東京都千代田区

不在者投票の最長実施時間の延長、電子メールによる選挙運動の解禁などを内容とする日弁連会長選挙規程(会規第十九号)中一部改正案が可決された。また、昨今の政府の動きを受けて、「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」を採択した。
来年の第67回定期総会は北海道旭川市で開催することを決定した。

 

決算報告承認・予算議決

いずれの議案も賛成多数で可決された

2014年度の一般会計決算は、収入56億9331万円および前年度からの繰越金27億2098万円に対し、50億4182万円を支出し、次年度への繰越金は33億7247万円となった。

2015年度の一般会計予算は、事業活動収入56億3767万円に対し、事業活動支出56億3711万円、予備費8000万円などを計上し、単年度では9544万円の赤字予算となっている。いずれも賛成多数で承認・可決された。

 

日弁連会長選挙規程中一部改正を可決

本改正は、日弁連会長選挙の投票率が近年低下してきている現状に照らし、候補者の有効で活発な選挙運動を可能にすること、選挙人(会員)の投票行為の利便性を向上させること等を目的とする。主な改正点は以下のとおり。

①不在者投票の最長実施時間の延長(120分から180分へ)
②郵便投票の送付手段への信書便の追加
③再投票における規定の読み替え
④選挙公報の掲載内容の見直し
⑤候補者私設のウェブサイトによる選挙運動の解禁
(ただし、候補者からの発信のみに限定し、閲覧者による書き込み等は禁止される。)
⑥電子メールによる選挙運動の解禁
⑦形式的な体裁の見直し

討論では、主として投票行為の利便性向上の観点から本改正に賛成する意見が述べられたほか、「公正な選挙が確保される運用にすること」を要望する意見も出された。採決の結果、賛成多数で可決された。

 

「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」を採択

集団的自衛権の行使等を容認し自衛隊を海外に派遣して他国軍隊の武力行使を支援する活動等を認める、今般の安全保障法制等を改変する法案に強く反対するとともに、平和と人権、そして立憲主義を守る活動に国民と共に全力を挙げて取り組むとするものである。

討論では、賛成する意見が相次ぎ、採決の結果、賛成多数で可決された。

 

院内意見交換会
司法修習生への給費の実現と充実した司法修習を
6月3日 衆議院第一議員会館

  • 司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に関する院内意見交換会

司法修習生への給費の実現・修習手当の創設のための立法化を目指して、自由民主党、公明党、民主党、維新の党、日本共産党、社会民主党、次世代の党の7党から要職にある国会議員を招き、本年2度目となる院内意見交換会を開催した(共催:東京三弁護士会、関東弁護士会連合会、ビギナーズ・ネット、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会)。当日は、国会議員の本人出席47人、秘書代理出席80人を含む約390人が出席し、賛同メッセージが136通寄せられるなど、過去最大規模の賛同を得ての開催となった。

 

意見交換会は過去最大規模の参加を得ての開催となった

冒頭挨拶で、村越会長は「若者の法曹離れを克服し、経済的な事情に関係なく有為な人材が法曹を目指すことができるようにするために、給費の実現や修習手当など修習生に対する経済的支援が不可欠。皆さんと力を合わせて全力を尽くしたい」と述べ、あらためて修習生に対する経済的支援の実現を求める決意を表した。

 

当事者が語る貸与制の実態

中禮啓文会員(東京)は貸与制経験者として貸与制下の修習の実態について、「修習期間は1年間と短く、より充実した修習生活を送らなければならないが、生活費のために裁判所の許可を得てアルバイトをする人がいる。アルバイトに時間を取られて思うように修習に取り組めないという悪影響が出ている」と語り、参加者は切実な声に耳を傾けた。

 

国会議員からも激励の声が相次ぐ

続いて、本人出席の国会議員のうち40人から激励の声が寄せられた。「経済的事情によって法曹の道を断念する若者が増えているのは事実であり遺憾」「三権の一翼を担う司法の柱そのものの弱体化につながっている」「修習費用を司法インフラの費用として国が負担するのは当然」「経済的支援について、司法予算全体の拡大と共に働き掛けていく」など、力強いエールとともに、修習生に対する経済的支援のための立法化に向けた声が次々と寄せられた。

 

裁判所法の改正

最後に、司法修習費用給費制存続緊急対策本部の新里宏二本部長代行(仙台)が「今の法曹養成制度は危機的な状況。このままでは法曹が育たないという問題意識は既に議員の皆さまとも共有できている」「秋の国会で裁判所法の改正が議論になると思っている。頑張っていこう」と力強く述べた。

 

第24回憲法記念行事
今、あらためて「個人の尊重(憲法13条)」を考える
5月30日 弁護士会館

  • 第24回憲法記念行事シンポジウム「今、あらためて『個人の尊重』(憲法13条)を考える~『国益』や『国の名誉』の名のもとに何が起こっているのか」

安全保障法制改定法案が国会で審議されている。例年以上に憲法への関心が高まっている中、東京三弁護士会と共催で憲法記念行事を開催した。来場した多くの市民は安全保障法制やヘイトスピーチに関する有識者の意見に熱心に耳を傾けた。

 

冒頭、村越会長は「個人の尊重こそが、恒久平和と人権保障を最大の使命とする日本国憲法の根本。国益、国の名誉を優先すべきという風潮がまん延しつつあるが、これらの事象にどう対応していくべきかを皆さんと共に考えていきたい」と呼び掛けた。

 

集団的自衛権の立法化が意味するもの

第一部の講演では、集団的自衛権の立法化と秘密保護法施行問題を取り上げた。講師の青井未帆教授(憲法学者/学習院大学法科大学院)は「憲法改正の手続きを経ずに憲法を改正するに等しい状況が作り出されようとしている。日米ガイドラインの改定には国会の承認すら必要なく、法律の制定は両議院の過半数の賛成で足りる。これで憲法改正と同じような効果を生じさせるのであればそれは下克上。立憲主義、すなわち憲法によって政治を縛ろうというプロジェクトが壊れる危険性をはらんでいる」と述べ、問題点を指摘した。

 

社会で今何が起こっているのか

第二部は、繰り返されるヘイトスピーチと慰安婦報道に端を発した元新聞記者へのバッシングという2つの問題を取り上げ、青井教授のほか、田中伸尚氏(ノンフィクション作家)、青木理氏(ジャーナリスト)、師岡康子会員(東京)を迎え、パネルディスカッションを行った。売国奴、非国民という言葉が個人やメディアを攻撃する言葉として使用されることについては、他者の立場や価値観を尊重できないという社会的風潮があることが指摘され、あらためて憲法が定める個人を尊重することの大切さを確認するとともに、他の人々とも積極的に向き合い、不断の努力を続けることの重要性を確認した。

 

ひまわり

日弁連ホームページに、子ども向けページがあるのをご存じだろうか。ただ今、その内容を充実させるべく、リニューアル作業を進めている▼同ページには「ルールってな~に?」というコンテンツがある。ここでは、教室でのルール作りを題材にしつつ、法律を制定する際には国民の代表者が十分に話し合いを行った上で、多数決により決定がなされるという間接民主制の根幹を分かりやすく説明している▼しかし、いまの国会はどうだろう。議論の状況を見ていると、「皆が十分に話し合って問題の所在をよく理解する」という必須の前提過程が抜け落ちているように思われてならない。数の論理がすべてであるなら、国会議員を選ぶまでもなく、国民全員が法案の賛否を投じるボタンでも持てば良いことになる。それでは弊害があるからこそ間接民主制が採られているはずだ▼今通常国会での公職選挙法改正の結果、来年の参議院選挙から、18歳以上が選挙権を持つようになる。子どもページの読者や法教育の授業を受けた子どもたちも、近い将来、一票を投じることになる。次の世代が投じる一票は、間接民主制の根幹を実現すべく機能するだろうか。そうあってくれることを、切に願う。

(T・O)


 

院内勉強会
「安全保障法制」を問う
6月10日 衆議院第二議員会館

  • 日弁連院内集会「安全保障法制」を問う

与野党の国会議員30人を含む約190人の参加を得て開催した本勉強会では、安全保障法制改定法案の問題点について活発な意見交換を行った。
また、本勉強会では、全国の弁護士会と協力して集めた26万筆以上の請願署名を出席議員に手渡した。この請願署名は、国会議員を通じて、衆参両議院議長に提出された。

 

冒頭、村越会長が安全保障法制改定法案の廃案を目指す決意を表明した。

 

与党議員からも疑問の声

村越会長は、本法案の廃案を目指す決意を表明した

蓮舫議員(民主党)は、「憲法審査会において中谷防衛大臣は、『安全保障に憲法を合わせる』と答弁した。立憲主義を踏みにじる本法案は、絶対に廃案にしなければならない」と述べた。

また、与党から唯一出席した村上誠一郎議員(自民党)は、「時の政府の恣意によって憲法を曲げてしまうわけにはいかない。これは、決して一部の政治家だけで決めて良い問題ではないはずだ。国民一人一人が自分のこととして考えなければならない」と、参加者に対し、さらなる議論・世論の喚起を求めた。

 

現場判断で武器使用が可能

柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)は特別講演を行い、「本法案では、自衛官が、国会承認も閣議決定もなく、現場判断で武器等の防護のために武器を使用することが許されている。しかし、自衛隊が米艦艇を守るために武器を使用するというのは、相手国から見れば、戦闘行為にほかならない。遠い外洋上、現場判断で放たれた一発の銃弾が、日本国内への攻撃につながる」と本法案の危険性を指摘した。

続いて、憲法問題対策本部の伊藤真副本部長(東京)が、日弁連および全国すべての弁護士会・弁護士会連合会で集団的自衛権行使の容認に反対する声明等を公表していることなどを報告し、参加者らは本法案が成立することがないよう、今後も総力を挙げて取り組む決意をあらためて共有した。


 

第46回市民会議
日弁連の国際活動への取り組み等について議論
6月10日 弁護士会館

日弁連の国際活動への取り組みと選挙権年齢の18歳への引き下げによって生じる法律上の問題点について議論し、5月29日開催の定期総会で採択した「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」の内容を報告した。

 

日弁連の国際活動への取り組みについて

大村恵実国際室長(東京)が、国際人権活動、国際交流活動、国際協力活動、人材育成への取り組みおよび国際業務推進活動という5つの側面から日弁連の取り組み状況を報告した。その中でも、海外への事業展開を目指す中小企業向け支援弁護士紹介制度の運用を含む国際業務推進活動をリーガルアクセス拡充に資する取り組みと位置付けて重視していること、本年4月から日弁連に国際戦略会議を設置し、執行部を中心にポリシーを持って国際活動に取り組む体制としたことが説明された。

これに対し、中川委員は、「海外展開を目指す日本企業にとって、リーガルサービスへのアクセスは諸外国と比べてもまだまだ不十分。正しい現状認識と目標設定、それに向けた戦略的な活動が必要」と指摘し、フット委員は、法曹養成の一環である法科大学院において国際教育を重視すべきであると提言した。

 

選挙権年齢の18歳への引き下げで生じる法律上の問題点について

子どもの権利委員会の斎藤義房幹事(東京)が、選挙権年齢を18歳に引き下げる公職選挙法の改正について、民主主義社会の発展・成熟に資するため積極評価に値するとしつつ、民法における成年年齢や少年法の適用年齢の引き下げが議論されていることについては、立法目的や保護法益に照らし個別に判断されるべきであって、民法の成年年齢引き下げについては条件整備が必要であり、少年法の適用年齢引き下げについては反対であるとの日弁連の意見を説明した。

これに対し井田委員は、選挙権の付与と少年法の年齢区分とは別問題であり、「権利」と「義務」という観点で議論すべきでないという日弁連の意見に賛同の意を表し、このような視点を説得的に訴え国民に浸透させることが肝要と述べた。また、北川委員は、現行少年法に基づく保護を受けた非行少年の再犯率が極端に低いという実証的な調査結果を重視すべきであると指摘し、行き過ぎた厳罰化への転換に警鐘を鳴らした。


 

市民会議委員(2015年6月10日現在)(五十音順)

  • 井田 香奈子(副議長・朝日新聞東京本社論説委員)
  • 長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
  • 北川正恭(議長・早稲田大学名誉教授)
  • 清原慶子(三鷹市長)
  • 古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
  • ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  • 中川英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
  • 松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
  • 湯浅 誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

弁護士市長との意見交換会
6月10日 弁護士会館

近年、行政連携の重要性はますます高まり、地方公共団体の職員として活躍する弁護士も増えている。この点は、法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会でも国・地方自治体・福祉等分科会においても議論された。さらなる連携等が期待される中、弁護士市長との意見交換会を開催した。

 

全国弁護士市長会から、栃木市の鈴木俊美市長、高槻市の濱田剛史市長、明石市の泉房穂市長、山陽小野田市の白井博文市長、直方市の壬生隆明市長の5人の市長を招き、法務省、日本司法支援センター、日本弁護士政治連盟も交えて意見交換会を開催した。

村越会長の「使いやすい司法の実現という点で行政との連携や、自治体内弁護士を増やしていくことが重要」という挨拶を皮切りに、日弁連からは、大阪弁護士会が作成した弁護士活用メニューである「行政連携のお品書き」を例に、弁護士会における行政連携への取り組みをはじめ、地方公共団体における自治体内弁護士の活動状況等を報告した。また、改正行政不服審査法の審理員制度についても説明した。

参加いただいた市長からは、「自治体の日常業務では、法的な知識、いわゆるリーガルマインドは絶対に必要」など、自治体内弁護士の重要性を指摘する意見が相次ぎ、さらなる自治体内弁護士の増加への期待が寄せられた。

 

日弁連短信
司法修習生が経済的に安心して修習に専念できる環境を

事務次長 戸田綾美

司法修習生に対する給費の実現・修習手当の創設について、日弁連では、司法修習費用給費制存続緊急対策本部などが中心になって、これまでもさまざまな取り組みをしてきています。

現在、司法修習生が修習資金の貸与を受けると修習期間中に約300万円の債務を負うことになります。また、修習が始まる前に、大学や法科大学院での奨学金の債務を負っている司法修習生も約半数に上り、奨学金の平均額は356万円に上ります。両方を合わせると600万円を超える債務を負っている司法修習生が少なくないのです。司法修習生からは、経済的な不安から、必要な書籍が買えないとか、安心して修習に専念できないという意見も聞かれます。修習の貸与金の返済に対する不安から、修習を辞退する司法試験合格者も出てきているようです。法曹志望者が減少の一途をたどっている現在、経済的事情によって法曹への道を諦めることがないように、司法修習生に対する給付型の経済的支援が必要です。

去る6月3日に行われた「司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に関する院内意見交換会」には、390人に及ぶ多数の参加がありました。これまでにいただいた国会議員からの賛同メッセージは205通に上ります。院内意見交換会に出席または賛同メッセージをいただいた議員は333人になりました。この問題が新聞の社説等でも取り上げられるなど、社会における理解が次第に広がってきていることを感じます。

今般、法曹養成制度改革推進会議の決定にも、「司法修習生に対する経済的支援の在り方について検討する」という内容が入りました。これに当たっては、関係する各機関にご理解・ご協力をいただいたことに感謝しています。

今後、司法修習生に対する経済的支援について検討していくに当たっては、なおさまざまな課題に取り組む必要があります。司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため、また、法曹志願者が経済的な理由で法曹への道を断念することがないよう、司法修習生に対する給費の実現・修習手当の創設に向けて、日弁連は一層の努力をしていかなければなりません。弁護士会および会員の皆様にも、一層のご理解とご協力をお願いしたいと思います。

(事務次長 戸田綾美)


 

講演会
米国における刑事司法制度
司法取引の実態と弁護人からみた問題点
5月22日 弁護士会館

捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引)の導入を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が今通常国会で審議入りしている。弁護実践においては引き込みの危険性に留意し、新たな誤判原因とならないような対応が必要なところである。
米国から刑事弁護実務に精通するジェフ・アダチ弁護士を招き、米国の司法取引の実情について講演会を開催した。

 

司法取引に依存する米国

ジェフ・アダチ氏

アダチ弁護士は日系3世、2001年からサンフランシスコ公設弁護人事務所の所長(公選)を務めている。同事務所には93人の弁護士と60人のサポートスタッフが所属しており、毎年2万人以上の事件処理数を誇っている。

アダチ弁護士によれば、米国では全刑事事件の95%が司法取引で処理され、取引が成立すれば公判審理を受けずに一定の量刑が下され事件は終了しており、良くも悪くもこの制度に依存しているという。

 

司法取引の問題点

アダチ弁護士は、米国における刑事事件処理の実態を踏まえ、司法取引の問題点について次のように語った。まず、最大の問題点である共犯者による引き込みについては、米国では頻繁に起きており、誤った情報に基づいて訴追される例も散見されるとのことである。取引が成立すれば被告人は結果を確実に予測できるので、実際には罪を認めていなくても取引を受け入れることがある。取引に応じなかった場合、検察官が公判で不当に重い刑罰を求刑することもあるという。

さらに、このほかの問題点として、保釈金を支払えない貧困者を取り巻く問題、すなわち保釈を希望するが、保釈金が支払えないため、早期の釈放を求めて取引に応じる現象が起きていることなどを指摘した。

続いて行われた討議では法律案と関連づけた熱心な意見交換がなされ、質疑応答では引き込みの危険性を懸念した立場からの質問があった。

 

第2回全国外国人関連部会・委員会連絡協議会
5月21日 弁護士会館

日本には200万人を超える外国人が居住し、その法的アクセスの充実は弁護士、弁護士会が取り組むべき課題である。また、外国人技能実習制度を悪用しての人権侵害など、新たな問題も生起している。
そこで、各地の実践例を学び課題を共有し、外国人の権利救済の実効化に向けた取り組みを進めるため、2013年12月に引き続き、連絡協議会を開催した。協議会には、全国の弁護士会・弁護士会連合会の関連委員会の委員95人が参加し、活発な意見交換を行った。

 

全国の弁護士会・弁護士会連合会の委員が一堂に会し、活発な意見交換を行った

冒頭、人権擁護委員会の市川正司委員長(第一東京)はじめ担当委員から、入管法改正案への反対活動、難民認定制度をめぐる動向、法務省入国管理局との定期協議、ヘイトスピーチ問題に関する取り組み状況が報告された。

全体ディスカッションでは、まず、各地の弁護士会等による外国人法律相談体制の拡充に向けた取り組みが報告された。「電話予約の段階から多言語対応としている」「スカイプを利用した相談会を実施した」「市町村・マスコミに対するアピールを目的として、初回相談に限り無料とした」「摘発強化月間で被収容者が多い6月と10月に、入国管理局支局への出張相談を実施した」など、実践的な取り組みが多数報告された。

続いて、入管事件、渉外家事事件についての事例が報告された。入管事件については、退去強制令書発付処分取消請求訴訟に関し、退去強制令書発付処分を受けた時点でまだ小学生であった事案では、従前、子どもが勝訴することは困難な傾向にあった。しかし、2010年ころからは勝訴する例も現れるようになったとの興味深い状況について報告がなされた。

その後、外国人技能実習生の問題について、劣悪な住環境で、低賃金・長時間労働を余儀なくされている実習生の生活・労働実態の報告がなされ、出席者は、構造的な問題を抱える同実習制度を即時廃止する必要性について、あらためて認識を共有した。


 

院内学習会
労働者派遣法・労働時間法制の規制緩和について考える
6月4日 衆議院第二議員会館

  • 労働者派遣法・労働時間法制の規制緩和について考える院内学習会

派遣労働の永続化や非正規雇用の拡大につながりかねない内容を含む「労働者派遣法改正案」および「高度プロフェッショナル制度」の創設や企画業務型裁量労働制の対象範囲拡大を盛り込んだ「労働基準法等の一部改正案」が今通常国会に上程されている。これらの改正法案の問題点や労働法制の在り方について理解を深めるため、院内学習会を開催した。

 

日弁連の取り組み状況を報告

貧困問題対策本部の房安強委員(鳥取県)が、労働者派遣法や労働時間規制を緩和する労働基準法の改正に反対する意見書・会長声明を公表し、改正内容とその問題点を分かりやすく示した市民向けパンフレットを制作・配布したりするなど、この問題に対する日弁連の取り組み状況を報告した。次いで塩見卓也事務局員(京都)が、本年10月施行の改正労働者派遣法が創設する「直接雇用申込みみなし規定」の概要と、これを過去の裁判例に当てはめた場合の分析結果を報告した。今国会で審議中の労働者派遣法改正案が成立すれば、本来、「みなし規定」で雇用契約上の地位が認められるなど救済可能な事案が大幅に減少することを指摘した。

 

労働法制の規制緩和が意味するもの

これらの報告の後、西谷敏氏(大阪市立大学名誉教授)が基調報告を行った。西谷氏は、今国会に上程されている改正法案の問題点を解説した上で、今般の労働法制規制緩和は、専ら労働生産性向上を目指す経済界の要求に基づくものであり、対立的な概念であるディーセント・ワークの実現という要請が政策決定過程で全く反映されていないことを重視すべきであると指摘した。

最後に、東芝・過労うつ病労災・解雇裁判の原告として勝訴判決を得た重光由美氏や、事務系派遣における「専門業務偽装」の事例で雇い止めにあい、期間の定めのない従業員としての地位確認を求める裁判を起こした原告本人からの報告を受け、満場の参加者は改正法案の問題点をあらためて共有した。

 

国際機関キャリア情報セミナー
法曹も国際機関でキャリアアップしよう!!
6月4日 弁護士会館

  • 国際機関キャリア情報セミナー「法曹も国際機関でキャリアアップしよう!!」

日弁連は、国際機関における弁護士の活躍の場を広げるため、セミナーの実施や人事情報の提供など国際機関への就職支援に積極的に取り組んでいる。
その取り組みの一環として、外務省総合外交政策局国際機関人事センターとの共催を得て、同センターの阿部智センター長を講師に迎えてキャリア情報セミナーを開催した。

 

はじめに、阿部センター長から、法曹が国際機関で活躍するためのキャリアパス、必要な準備やスキル、応募方法等に関する説明があった。

同センター長によれば、国連機関で働く方法は大きく分けて3つある。

1つ目は、公募に直接応募する方法である。UN Careersなど国連の就職サイトのほか、外務省国際機関人事センターのウェブ上に、国際機関職員の募集が随時公開されているので、特定のポストに直接応募することができる。なお、応募には修士号以上が必要である。

2つ目は、国連事務局が若手職員を採用するために年一度実施するYPP(国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム)試験である。合格した者は2年間の勤務の後、勤務中の成績が優秀であれば引き続き採用される。

3つ目は、日本政府が実施する国際機関への派遣制度(JPO派遣制度)である。正規職員として将来にわたって働くことを志望する35歳以下の日本人を対象としており、1974年から現在までの派遣実績は累計で約1400人に及ぶ。原則2年間の派遣期間中に将来にわたって国際機関の正規職員として勤務していくために必要な知識・経験を積む機会を提供するのが同制度の目的である。JPO派遣制度の応募には修士の学歴が必須であり(法科大学院の法務博士号もこれに含まれる)、選考では、職歴、英語力、志望理由とこれまでの取り組みや活動内容が重視されている。年に数人の弁護士がこの制度を利用して国際機関に勤務しているが、そのためには法律知識は当然として、それ以外の多様な能力が求められるという。同制度について、会場からは多くの質問が寄せられた。

さらに、国際的な業務に取り組んでいる事務所に勤務している弁護士からの応募が多いこと、国連職員の給与は、レベルやポストごとにインターネット上でも公開されているが、優秀な職員を採用するため原則として国連加盟国のどの公務員の給与水準より高く設定されていることなどの説明があり、参加者は熱心に聞き入っていた。

 

国際室レポート
国際法曹協会(IBA)中間大会
5月20日~23日 チェコ共和国・プラハ

国際法曹協会(IBA)の中間大会がチェコ共和国・プラハで4日間にわたって開催された。大会に参加した国際室嘱託の島村洋介会員(第二東京)が大会の模様を報告する。

 

IBAは1947年に設立された世界各国の弁護士会および個人弁護士が加入する、各国弁護士会相互間の情報交換の推進等のための世界最大の国際法曹団体である。2014年時点で5万5000人以上の個人会員と、200を超える弁護士会が加盟している。日弁連は1951年にIBAに加盟し、2014年の年次大会は東京で開催された。

今回の大会にはイギリス、フランス、ドイツなど欧州主要国の弁護士会からの参加者が多かった。しかし、日本、韓国、モンゴル、マレーシアなどのアジア諸国やアフリカ諸国の弁護士会からも多数参加しており、「法」という共通言語を持った各国の弁護士が一堂に集い、そこで各国共通の課題を議論し合う様子は、世界最大の国際法曹団体にふさわしい光景であった。

大会では「弁護士会における国際業務の意義」、「マレーシアにおける反テロ法による司法危機の現状」、「ビジネスと人権」、「非弁護士組織による弁護士業務参入への対応」など、弁護士会の活動にとって重要なテーマについての議論がなされたが、個人的に印象深かったのは、チェコ弁護士会およびリトアニア弁護士会との交流である。

チェコ弁護士会は1968年の「プラハの春」、1989年の「ビロード革命」と激動の時代を経て今日に至っている。中世の面影が色濃く残るプラハの街にふさわしく、18世紀に建築された建物が今でも弁護士会館として利用されているが、その壁面にはビロード革命で民主化のため立ち上がった人々を顕彰するモニュメントが埋め込まれている。

一方、リトアニア弁護士会は日弁連と今後友好関係を深めていきたいとのことで会議の合間に二国間会合を行ったのだが、お会いした同会の事務総長は神奈川大学で3カ月ほど労働法などの研究をしたことのあるとても親日的な方であり、今後の交流を約束しあうことができた。

主要各国との交流はもちろん重要だが、チェコやリトアニアといったなかなか接する機会のない国々と十分に交流を深めていくことが、遠回りなようで実は弁護士の国際活動・業務の推進にはとても重要なのだろうとあらためて感じた。

(国際室嘱託 島村洋介)


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.101

女性差別撤廃委員会(CEDAW)
林陽子委員長に聞く

女性差別撤廃条約の実施に関する進捗状況を検討し、必要な勧告等を行うため、同条約に基づき設置された女性差別撤廃委員会。本年2月、ジュネーブ国連欧州本部で開催された同委員会において、林陽子会員(第二東京)が委員長に選出されました。
林委員長に委員長選出の経緯や女性差別の撤廃に向けて日本が抱える問題点などについてお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)


 

初めて日本の弁護士が委員長に選出された経緯を教えてください

「当事者と共に歩むことができるという弁護士の特権を生かし、身近なところにある差別の撤廃に取り組んでいただきたい」と語る林委員長

国連には多様な地域からの代表選出という点を重視する文化があり、当委員会の委員長は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、そして冷戦の名残で「西側」、「東側」の合計5つの地域グループから順に選出するという慣行になっています。

したがって、今年からの2年間は10年ぶりにアジアグループから委員長を出すことは前から決まっておりました。アジアから6人の委員がおり、能力、お人柄ともに優れた候補者がほかにもいました。しかし、国連はここ数年来、条約機関の強化という方針を打ち出しており、人権機関が強い勧告を出すためには委員が政府から独立していることが重要だとして、政府関係者ではなく、政府から独立した委員を委員長に選出すべきとの意見が大勢を占めました。

私は、政府から独立した立場であることに加えて、2008年から当委員会の委員を務めており、2013年から2014年までは最も重要な作業部会であるといわれる個人通報作業部会の部会長を務めてきました。このような実績が評価され、全会一致で委員長に選出されました。

 

日本に対する勧告の内容は

日本が女性差別撤廃条約に批准したのは1985年で、今年は批准30年という節目の年になります。日本に対する勧告は2009年が最後で、次の審査は来年2月に予定されています。

前回の勧告では、特に重要な問題として2つの問題を挙げています。第一の事項は、民法(家族法)の改正です。 選択的夫婦別姓の導入、再婚禁止期間の廃止、婚姻適齢を男女共に18歳にすること、嫡出でない子とその母に対する差別(戸籍の続柄記載を含む)の撤廃を求めています。

第二の事項は「ポジティブアクション」の導入です。学界を含む社会のあらゆる場に女性の参画を進める、ということですが、これを推進するために、具体的な期限と数値目標を定めた事実上の平等を達成するための措置を要請しています。

 

次回審査で特に重視される点は

来年2月の審査の際には、2009年勧告の実施状況が問われます。婚外子の相続差別が撤廃されたことは歓迎されるでしょう。しかし、他の問題は未解決であり、その中でも特に、現在、最高裁大法廷で係属している選択的夫婦別姓と再婚禁止期間をめぐる裁判の動向に注目しています。

また、積極的差別是正措置の実施状況にも注目しています。第二東京弁護士会では、昨年10月の臨時総会の決議を経て理事者の中に女性のクォータ制を導入しましたが、こういった取り組みがもっとなされても良いと思います。公職選挙だけでも、世界100カ国以上でジェンダー・クォータ制が導入されています。

 

日本の動きはどのように見られていますか

政府には人権を守り、推進する「意思」が必要で、そのリーダーシップを発揮すべきというのが国連の考え方です。選択的夫婦別姓についても日本政府は世論の動向をみるとしていますが、そうではなくて、政府としての政治的意思が必要なはずです。条約機関の勧告を真剣に受け止め、政府としてのアクションをとってほしいと思います。

この2点の勧告だけでなく、今年は1995年に北京で開催された世界女性会議から20年ということで、世界中でこの20年間の女性差別撤廃に関する成果の検証・評価が始まっています。20年前は、日本の衆議院における女性議員の割合は3%でした。今は9%なので、増えたとはいえ、たった6%です。格差は縮んではいるものの、その進展は小さい状況です。社会の中に広がる貧困や格差も、この20年の間に起こった新しい問題として取り組みを進めなければなりません。

 

会員へのメッセージをお願いします

国連に対する日本の拠出金割合は近年減少しているとはいえ、世界第2位です。しかし、国連職員の中の日本人の数は慢性的に不足しています。若い世代にはぜひ国際機関の職員として活躍することを選択肢の一つにしてほしいと思います。

また、日本の弁護士には普段関与している事件から見えてくる差別の問題を声に出していく責任があると思います。当事者と共に歩むことができるという弁護士の特権を生かし、身近なところにある差別の撤廃に取り組んでいただきたいと思います。また、法廷では、もっと国際人権法を援用し、世界水準での議論を実践してほしいと思います。


 

日弁連委員会めぐり77

接見交通権確立実行委員会

今回の委員会めぐりは、接見交通権の確立を実現すべく活動している接見交通権確立実行委員会です。小川光郎委員長(横浜)と赤松範夫副委員長(兵庫県)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 大藏隆子)


 

小川委員長(左)と赤松副委員長

委員会設置の経緯は

(赤松)接見交通については、かつて「一般的指定」という運用が行われ、弁護人は検察から交付される「具体的指定書」を持参しなければ接見ができませんでした。憲法に基づき刑訴法第39条第1項が規定されていたのに、原則と例外とが法の規定とは完全に逆転していたのです。当委員会は、このような状況を打破するため、全国各地で提起されていた国賠訴訟への検討・協力を行うべく、1983年に設置されました。

 

主な活動内容を教えてください

(小川)全国で提起されている国賠訴訟への理論面および弁護実践面における対応策を検討しています。また、法務省と継続的な協議も行っており、これらの活動を通じて、自由な接見交通の確立を目指しています。

 

接見をめぐって新たな問題が生じていますね

(赤松)接見の可否自体の争いは収束傾向にあるのですが、一方で、新たな問題が噴出しています。一つには、捜査機関が接見内容に関する取調べを行い、供述調書化するという問題です。このような取調べを受けると、被疑者・被告人は弁護人と自由に相談することをためらうようになってしまいます。また、再審請求に関連する接見妨害の問題もあります。死刑囚が再審請求の準備のために弁護人と接見する際、看守の立合いを求められたり、時間的制約を受けたりする例があります。さらに最近では、接見時の写真撮影や、接見室内への録音・録画媒体の持込みの可否について、全国各地で争いになっています。こうした新たな問題に対して、ときに他の関連委員会とも連携を図りつつ、対応を検討しています。

 

会員へのメッセージをお願いします

(小川)捜査機関による接見妨害は、今なお少なくありません。われわれの先達が勝ち取ってきた接見交通権を形骸化させないためにも、捜査機関の横暴に妥協することは許されません。
当委員会には、これまでに蓄積してきたさまざまな情報があります。会員の皆さんが、接見交通権に関して悩む場面があれば、ぜひ当委員会にご相談いただければと思います。


 

ブックセンターベストセラー
(2015年4月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 ジュリスト臨時増刊 No.1479 平成26年度重要判例解説
有斐閣
2 破産管財の手引[第2版] 中山孝雄 金澤秀樹 編 きんざい
3 新・株主総会ガイドライン[第2版] 東京弁護士会会社法部 編 商事法務
4 平成26年改正 知的財産権法文集 平成27年4月1日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
5 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
6 株式会社法 第6版 江頭憲治郎 著 有斐閣
7 平成26年改正会社法対応 内部統制システム構築の実務 中村直人・山田和彦・後藤晃輔 著 商事法務
8 「会社法」法令集[第11版] 中央経済社 編 中央経済社
9 織込版 会社法関係法令全条文[全訂版] 商事法務 編 商事法務
弁護士が弁護士のために説く 債権法改正 東京弁護士会法友全期会債権法改正特別委員会 編著 第一法規出版

編集後記

どうにも日本がおかしい。といっても政治の世界ではなく、自然界の話である。
5月29日に発生した口永良部島の噴火では、全島民避難という事態にまで至った。浅間山や箱根山でも火山活動が高まっている。少しさかのぼる昨年9月には、御嶽山が噴火し、50人を超える方が犠牲になったこともいまだ記憶に新しい。
首都直下地震や南海トラフ地震の心配もある。いてもたってもいられず、わが家の防災備品を点検し直した。水・非常食とも保存期限はまだまだ先で、ラジオやライトも不具合無く作動し、一安心した。
日弁連では、災害復興の支援活動に取り組んでいるが、いざというときに活動ができるよう、個々の弁護士が日ごろから防災意識を持つことも重要だと思う。今一度、自宅や職場の防災備品の再点検をしてみてはいかがだろうか。(Y・K)