日弁連新聞 第497号

安全保障法制改定法案に対する日弁連の取り組み

今通常国会で審議中の安全保障法制改定法案に対し、日弁連は、5月14日の閣議決定に際し、同法案に反対する会長声明を公表した。
今後も弁護士会と協力し、議員要請やシンポジウムを開催するなど、同法案に対する取り組みを強化していく。

 

現在、10の法律を改正する平和安全法制整備法案と新規立法である国際平和支援法案(以下併せて「本法案」)が国会において審議されている。

日弁連は、閣議決定に際し、5月14日付で「安全保障法制改定法案に反対する会長声明」を公表し、基本的人権の擁護を使命とする法律家の団体として、本法案が成立することのないよう、その違憲性を強く訴えていくことを明らかにした。これまでも憲法問題対策本部を中心に国会議員に対する要請活動を行ってきたが、6月19日には、日弁連理事が、各選挙区の国会議員に対する一斉要請活動を行う予定である。

また、本法案の問題点を広く共有するために、6月10日および7月9日に、院内集会を開催する予定である。6月の集会では、柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)と憲法問題対策本部の伊藤真副本部長を迎え、特別報告を行う。この際には、日弁連と弁護士会で集めた約23万人の閣議決定撤回を求める署名を提出する予定である。

各報道機関の世論調査では、今国会での本法案の成立について反対する意見が賛成する意見を上回っている。日弁連としては、広く市民に対し、複雑な本法案の内容をできる限り分かりやすく説明し、本法案に対する関心をさらに深めてもらうための取り組みが必要である。

その視点から、7月15日には安全保障法制に関するシンポジウム、8月8日には戦後70年に関するシンポジウムを開催する予定である。また、新聞意見広告の掲載も予定している。

さらに、各弁護士会に対しても、①会長声明の公表、②シンポジウム、街頭宣伝、署名およびパレード等の開催、③国会議員要請、④会員向け勉強会の開催を要請している。

併せて、憲法問題対策本部では、新たに街頭宣伝用のフライヤーやポケットティッシュを作成したほか、会員向けの「安全保障法制に関する会内討議資料」を作成し、各弁護士会に配布した。これまでに作成・配布してきたチラシやパンフレットとともに、ぜひ積極的に活用をお願いしたい。

 

意見広告掲載のためのカンパのお願い

日弁連では、安全保障法制に関する意見広告を新聞に掲載することを予定しており、ご賛同いただける会員の皆さまに「1口2,000円」のカンパをお願いすることになりました。

ご賛同いただける会員の皆様におかれましては、以下のとおりお振込をお願いします。

振 込 先 : 三菱東京UFJ銀行 東京公務部

  普通預金 №1008330
口座名義 : 日本弁護士連合会(ニホンベンゴシレンゴウカイ)
振込期限 : 2015年7月31日(金)

※振込の際には、必ず振込人の氏名の前に登録番号を付けてください。

 

【お問い合わせ先】
日弁連人権部人権第二課 TEL:03-3580-9941

 

第6回(最終回)報告
法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会
取りまとめ(案)を議論

2013年9月、法務大臣決定により設置された「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会」(以下、「有識者懇」)の第6回(最終回)が5月18日、開催された。

 

有識者懇は、その下に設けた国・地方自治体・福祉等分科会、企業分科会、海外展開分科会の3つの分科会の取りまとめを受け、「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会取りまとめ(案)」(以下、「取りまとめ(案)」)についての検討を行い、会議を終えた。

弁護士・日弁連のさまざまな取り組みが評価されたことは既報(本年3月号1面に関連記事)のとおりだが、取りまとめ(案)は、各分科会の検討内容ごとに、①「これまでの取組及び成果」、②「課題」、③「今後取り組むべき施策等」の3つの項目に分けて構成され、各分科会で報告・検討がなされた内容に応じてまとめられたものとなった。日弁連・弁護士会として今後取り組むべきとされた内容を概括すると以下のようになる。

自治体・福祉等の分野においては、弁護士の専門性を活用することの有用性や具体的な活動実績等を自治体等の間で共有する取り組みを実施するとされたほか、各自治体や福祉機関等に対し、個別に働き掛けを行うことや、人材養成の取り組みの実施等が期待されている。

企業の分野においては、経済団体等と協力し、企業内弁護士の有用性や具体的な実績等について情報共有しつつ、実情に配慮した会内の環境整備や実践的な研修の強化等を求められている。

海外展開の分野においては、日弁連と関係機関等が協力し、特に中小企業等の海外展開の支援のための取り組み事例を集積し整理した上で、そこから得られる知見や典型例を企業等に情報提供し、また国際業務に通じた弁護士へのアクセス改善のための仕組みの構築を検討する等の取り組みを進めるとされた。

なお、政府・法務省は、引き続きこれらの課題について、環境整備等の取り組みを続けていくとしている。

 

性犯罪の罰則に関する検討会
-現在の議論状況

法務省が設置した性犯罪の罰則に関する検討会は、第3次男女共同参画基本計画等、各方面からの指摘を踏まえ、性犯罪の罰則の在り方について検討することを目的とし、日弁連からも2人が委員として参加している。2014年10月に第1回検討会が開催され、現在までに10回の会議が行われた。以下、この間の議論を論点ごとに報告する。

 

法定刑の見直し

強姦罪と強盗罪の法定刑がアンバランスであり、強姦罪の現在の量刑が重い方にシフトしていることを理由に、刑の下限を上げるべきであるとの意見が多数述べられている。

 

構成要件

肛門性交等の性交類似行為について、強制わいせつ罪から切り出し、強姦罪と同等の刑で処罰すべきであるとの意見が多数を占めているが、性交類似行為の範囲については、限定的な立場から幅広に認める立場までさまざまである。

 

地位・関係性利用類型

従属的な立場にある者と性行為を行う類型につき、暴行・脅迫がなくても処罰する新たな構成要件を創設すべきかについては、現在児童福祉法違反で対応しているものの中には強姦罪と同等の刑で処罰すべきものもあるとして賛成する意見と、現行の準強姦・準強制わいせつ罪で対応できるとの反対する意見がある。

 

いわゆる性交同意年齢の引上げ

中学生の被害が多いので中学生までは保護すべきとの賛成意見と、中学生同士の恋愛が家裁に強制わいせつや強姦で送致されることには違和感があるなどの反対意見が出ている。

 

性犯罪の非親告罪化

支持する意見が多数である。このほか主体の拡大、暴行脅迫要件の緩和、公訴時効の撤廃等についても議論されている。

◇      ◇

性犯罪の構成要件および法定刑に関する論点は密接に関連しており、今後の検討会では論点を関連させて議論が行われる予定である。性犯罪に新たな構成要件が創設されれば、刑事弁護実務に少なからず影響を与えることになると考えられる。

詳細は、法務省ホームページに開設されている同検討会のページを参照されたい。

(司法改革調査室嘱託 高橋しず香)


 

ひまわり

福島県は本年4月、避難者意向調査を公表した。調査結果によれば、政府からの避難指示を受けずに避難した区域外避難者の46.5%が応急仮設住宅の入居期間の延長を望み、延長を要望する者のうち58.3%が「生活資金の不安」を、56%が「放射線の影響に不安」をその理由に挙げた。応急仮設住宅の入居期間延長を求める区域外避難者の声は依然として多い▼ところが、公表から間もない翌5月、福島県が、区域外避難者の住宅の無償提供を2016年度で終える方向で関係する市町村と協議をしているとの報道がなされた。このような動きは、区域外避難者の切実な願いに反するものであり、日弁連も5月28日付で無償提供を終えることに反対する会長声明を公表した▼区域外避難者が東京電力から受け取る賠償の額は、避難生活の費用に充てるに十分なものとは言えない。住宅の無償提供が打ち切られてしまえば、経済的に困窮し、帰還を余儀なくされる区域外避難者も出てくるであろう▼避難者に避難を継続するか帰還するかの選択肢を認め、いずれの選択をしてもその選択に応じた支援をするという復興政策によらなければ、避難者の「人間の復興」は果たされないのではなかろうか。

(Y・K)


 

「日弁連高齢者・障害者権利支援センター」を設置

日弁連は、1998年に高齢者・障害者の権利に関する委員会を、2009年には高齢社会対策本部を設置して、高齢者や障害者を取りまくさまざまな課題の検討や弁護士会の具体的活動の推進などに取り組んできた。

委員会と対策本部は、これまでも相互に連携・協力して活動してきたが、高齢者・障害者の権利擁護や法的支援を求めるニーズの急速な高まりという社会の動きの中で、弁護士会も、より迅速に課題に対応することが必要となってきた。そこで両組織を統合することとし、6月1日に新たに「日弁連高齢者・障害者権利支援センター」を設置した。

新センターは、これまでの両組織の活動を受け継ぎ、さらに発展させるべく活動する。10月に千葉市で開催する第58回人権擁護大会では、両組織におけるこれまでの議論の到達点を踏まえ、高齢者・障害者の新たな支援の在り方を考えるシンポジウム「『成年後見制度』から『意思決定支援制度』へ~認知症や障害のある人の自己決定権の実現を目指して~」を実施する予定である。また主として対策本部が取り組んできた「ひまわりあんしん事業」の推進や法テラスとの連携・協議、「ホームロイヤー」の普及、NPO法人「遺言・相続リーガルネットワーク」との連携などについても、引き続き取り組みを進める予定である。

高齢者や障害者の権利擁護のためには、各地の弁護士会における活動の充実・強化が何よりも重要である。両組織の統合によりマンパワーが結集され、さまざまな情報や理論的な検討状況が迅速に弁護士会に提供され、その活動が一層活性化することが期待される。新センターも、これまで以上に高齢者・障害者を取りまく課題についての検討を進め、積極的に情報を発信して、弁護士会の活動をフォローしていく予定である。

(高齢社会対策本部 事務局長 矢野和雄)


 

国際シンポジウム
知財司法の未来に向けて
知的財産高等裁判所創設10周年記念
4月20日 弁護士会館

  • 国際シンポジウム 「知財司法の未来に向けて~知的財産高等裁判所創設10周年記念~」

知財高裁は4月で創設10周年を迎えた。この間の知的財産を巡る環境のグローバル化と紛争解決における司法の役割の増大を踏まえ、今後の知財司法を展望するため、特許庁・弁護士知財ネットの共催を得てシンポジウムを開催した。海外の法曹を含む約600人の実務家が集まり、会場はほぼ満席となった。

 

各国のスタイルに合わせた模擬裁判を実施した(写真はイギリスの弁護士役)

 

5カ国による模擬裁判

前半は、村越会長、設樂隆一知財高裁所長、小松陽一郎弁護士知財ネット理事長、伊藤仁特許庁長官の挨拶に続き、昨年5月16日に知財高裁大合議部が判断した事案をもとにした架空の事件を題材に、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本の現役裁判官・弁護士による5つの模擬裁判が行われた。なお、素材となった事件は実際に世界中の裁判所に提訴されていたが、日本の知財高裁判決後、ほとんどの国で取り下げられている。

この模擬裁判の争点は、素材となった実際の事件と同様、特定の特許についてFRAND宣言(標準技術にかかる必須特許について、同技術の実施者に公平・合理的・非差別的な条件でライセンスする旨の宣言)がなされたにもかかわらず、ライセンス料が合意に至らなかった場合に、当該特許権に基づく差止請求や損害賠償請求が認められるか否かであった。参加者は異なる訴訟法、判例・実体法、そして異なる服装で行われた5つの模擬裁判に耳を傾けた。

 

現役裁判官・弁護士によるパネルディスカッション

後半は、模擬裁判を担当した5カ国の現役裁判官・弁護士による模擬裁判の解説とパネルディスカッションを実施した。差止要件についての各国の考え方の差や、500の標準特許のうち2つだけが侵害された場合の損害額算定のアプローチ方法、さらに関連問題として各国におけるロイヤリティ率算定の裁判実務など、前半の模擬裁判同様に、興味深い議論が繰り広げられた。


 

日弁連短信
日弁連に求められる発信力
─安全保障法制改定法案の問題を分かりやすく

事務次長 神田安積

現在、平和安全法制整備法案および国際平和支援法案(併せて「本法案」)が国会で審議されている。

本法案の内容は、5月14日の閣議決定によって明らかになった。しかし、憲法改正に匹敵する合計11本の法律の内容を理解することは決して容易ではない。

日弁連は、これまで集団的自衛権や安全保障法制の憲法上の問題点を明らかにしてきた。2005年・2008年の人権擁護大会における宣言、2013年・2014年・2015年の定期総会の宣言・決議、2013年3月14日付意見書などである。また、昨年7月1日の閣議決定に対して、「集団的自衛権の行使容認等に係る閣議決定に対する意見書」(9月18日)を理事会において承認した。これらの日弁連の意見は、いずれも、立憲主義、恒久平和主義および国民主権という日本国憲法の基本原理を根拠として、集団的自衛権の行使等を違憲であるとするものであり、その枠組みの中で慎重に検討を重ねてきたものである。

日弁連の意見に対しては、本年3月2日に開かれた市民会議において、「わが国の在り方に関わる重要な問題であり、オピニオンリーダーを巻き込んで議論の場を盛り上げることが必要」、「憲法問題に関する日弁連の活動は、ほとんど報道されておらず市民にも知られていない。この関心の薄さは、『法律実務に特化している』という、市民が抱く法曹像が影響しているのではないか」など、憲法や安保法制に関わる問題について、法律上の観点から分析し意見を表明することは弁護士会に期待される役割であるとの意見が相次いで述べられた。

日弁連の意見表明は、意見書や会長声明という形でなされる。しかし、法律家団体の意見という性質上、法律の専門用語を用いていることもあり、市民にとって必ずしも分かりやすい内容であると言えない。

とりわけ、いまだ市民の理解が深まらない状態にあると言われる本法案については、これまで以上に、より市民の目線に立った説明や情報発信が日弁連に対し求められる。そのために、日々の国会審議の状況を適時にキャッチし、法律家団体として法案の問題点を分かりやすく社会に発信していくことが必要である。

市民会議でいただいた意見を生かせるか、日弁連の発信力が試される大切な局面である。

(事務次長 神田安積)


 

院内学習会
より利用しやすい総合法律支援法の実現を求めて
5月14日 衆議院第二議員会館

  • より利用しやすい総合法律支援法の実現を求める学習会

今通常国会に提出された総合法律支援法の改正案は、法的援助を必要とする者の司法アクセス障害解消という基本的方向性について肯定的に受け止めることができる反面、不十分な改正に留まる点が多々存在する。DV・ストーカー等被害の現状やその救済のための活動の必要性について議論を深めるとともに、改正法案の問題点を共有するため、院内学習会を開催した(改正法案の内容に関し本年5月号1面に関連記事)。

 

冒頭、村越会長の挨拶に続き、佐藤岩夫教授(東京大学社会科学研究所)が、法社会学の観点から分析した改正法案の問題点を報告した。同教授は、あるべき総合法律支援とは、問題の早期発見・対応を可能とし、間口が広くシンプルで利用しやすいものであるべきと述べた上で、改正法案では、高齢者・障害者に対する無料法律相談制度の対象者が絞り込まれ、一定の資力がある者には相談後「負担金」を求める制度とされており、司法アクセス障害の解消に懸念が残ると指摘した。

次いで、日本司法支援センター推進本部の彦坂浩一事務局次長(東京)が、DV・ストーカー被害件数等について報告した。子どもの権利委員会の川村百合副委員長(東京)は、児童相談所に寄せられる虐待相談の実例を踏まえ、弁護士による法的支援の必要性を語った。また川村会員は、行為能力の制限や、子どもにとって必要な法的支援の多くが現在の民事法律扶助の対象外であるとの理由から、子どもが民事法律扶助制度を利用できない実情を紹介し、子どもの手続代理人の報酬を国費化するなど、子どもが使える援助の制度を創設すべきであると訴えた。

最後に、DV等被害者の支援活動に携わる平川和子氏(東京フェミニストセラピィセンター所長)が、深刻化するDV・ストーカー等被害の実態に関する報告を行い、支援活動の現場での経験から、資力要件をなくして被害者誰もが法律相談を利用しやすくするとともに、相談後のさまざまな活動をも援助の対象とすべきであるとして、総合法律支援法のさらなる改善について要望を述べた。

 

研修会
社外取締役に対する期待と「社外取締役ガイドライン」を活用した職務執行
4月21日弁護士会館

社外取締役の積極的活用が求められる中、会員がその役割を適切に果たせるよう、日弁連は2013年2月に「社外取締役ガイドライン」を策定し、本年3月には改正会社法施行に先立ち改訂した。
研修会では、弁護士が社外取締役として果たすべき役割や留意点について学習した。

 

はじめに、司法制度調査会の佐藤順哉委員(第一東京)が、ガイドライン策定から改訂までの間の会社法改正の経緯や東証が適用を開始するコーポレートガバナンス・コードの内容などについて基調報告を行った。

続いて、社外取締役の役割等に関し、パネルディスカッションを行った。

持続的な成長を目指しつつ迅速・果断に意思決定を行う「攻めのガバナンス」の構築という点において、市毛由美子会員(第二東京)は「稼ぐ力に貢献する新規ビジネスはリスクが顕在化しづらいが、合理的な経営判断には常にリスクと利益の適切な比較考量が必要。社外取締役は、そのような意思決定プロセスのモニタリングが期待されている」と指摘した。

藏本祐嗣氏(大和住銀投信投資顧問株式会社執行役員)は、投資家の立場から「似たような考えの取締役ばかりの企業に比べ、さまざまな一芸を持つ者が集まる取締役会は活性化する。弁護士は、会社内部の人間が得意にしていないことを売りにしている点で、ダイバーシティ(多様性)の要請にかなっている」との意見を寄せた。

山口利昭会員(大阪)からは「監査等委員会設置会社制度は、うまく運用されれば取締役会の権限の多くを執行者に委譲してスピード経営を実現し、企業価値向上に資する機関形態だが、取締役の指名・報酬に関する意見決定が職務とされている点、どこまで職務が果たされるか未知数。これを設置することで自動的にガバナンスが高まるわけではないことに留意すべき」との注意喚起があった。

*社外取締役ガイドラインは、日弁連ホームページ(HOME≫お知らせ≫2015年≫「社外取締役ガイドライン」を改訂しました)(3月19日付お知らせ)からご覧いただけます。

 

法律相談センター全国協議会
法律相談センターの再生のために
4月23日 弁護士会館

近年、法律相談センターの相談件数が激減しており、その活性化は喫緊の課題である。日弁連でも、日弁連公設事務所・法律相談センター内に設置した法律相談センター再生PTが、相談件数減少の原因や活性化のための方策等を調査し、提言「法律相談センターの再生のために」(再生提言)を取りまとめた。
各弁護士会の担当者が参加した本協議会では、研究者を招き、法律相談センターを活性化するための方策について意見交換等を行った。

 

再生に向けての提言

各弁護士会の担当者が一堂に会し、法律相談センターを活性化するための方策について議論した

冒頭、村越会長の挨拶に続き、日弁連公設事務所・法律相談センターの藤田哲委員長(愛知県)が協議会の趣旨を説明した。

次に、同センター法律相談センター再生PTの中隆志座長(京都)が、再生提言の三本柱である①法律相談料の障壁を解消する工夫、②専門相談の拡充とより開かれた専門相談の導入、③効果的な広報の強化について説明した。

その後、菅原郁夫教授(早稲田大学大学院法務研究科)が基調講演を行い、「価値あるサービスには対価が支払われるべき」とし、法律相談の全面無料化には否定的な立場を示しつつも、法律問題発生時の法律家へのアクセス率が若年層において著しく低いことを指摘し、「法律家へのアクセス率が特に低い若年層に限り、法律相談を無料化することは検討に値する」との見解を示した。

 

弁護士会での取り組み

続いて、各地の弁護士会での取り組みが紹介された。

法律相談料に関しては、無料相談を実施している会から、「無料化することで法律相談センターと自治体との連携をより進めることができる」との報告があり、専門相談に関しては、実施を予定している会から、専門性の担保として研修受講と一定数の受任経験を登録要件とする方向である等の報告があった。広報に関しては、「日弁連が作成している冊子等の広報ツールを活用することを検討してはどうか」との意見が述べられた。

 

第3回死刑事件弁護セミナー
我が国における効果的な死刑事件弁護の在り方とは
5月11日・12日弁護士会館

  • 第3回死刑事件弁護セミナー~アメリカ最先端事例に学ぶ有効な情状弁護~

「死刑事件弁護」が刑事弁護の重要な一分野として確立しているアメリカから3人の専門家を招き、同国における具体的な弁護実践例を学ぶとともに、被告人の精神障がいに関わる問題に焦点を当てて、我が国の死刑弁護事件における有効な情状弁護の在り方を追求するため、本セミナーを開催した。本セミナーは、ロンドンに本部を置く非営利組織インターナショナル・ジャスティス・プロジェクト(IJP)の共催を得て、今回で3回目の開催となる。

 

3人の専門家がそれぞれの経験に基づく知見を語った

前アメリカ法曹協会死刑事件弁護プロジェクト・ディレクターであり、現在も死刑事件弁護の第一線で活躍するロビン・マー弁護士は、弁護チームを編成すること、速やかに減軽事由の調査に着手することの重要性を述べた。同弁護士によれば、これらの方策は、陪審(判断者)に被告人も生きるに値する一人の人間であることを理解してもらい、共感を得るために必要な「物語」を構築する出発点となるという。

また、心的外傷性ストレス症候群に造詣が深いキャシー・ウェイランド心理学博士は、被告人の精神面の解明は、「物語」を具体的・説得的にし、犯情弁護を実現するために不可欠であるとの観点から、精神心理専門家との協働の重要性を説いた。

さらに、アダム・サーシュウェル弁護士は、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の被告人の一人を弁護し、死刑判決を回避することができた経験から、耳目を集める事件特有の困難性と、弁護団内で統一的な弁護戦略を構築することの必要性について語った。

市民である裁判員が判断する裁判員裁判において、弁護人が、被告人の生育歴や生活歴をどのように調査し、弁論にどう生かすべきか。セミナーで示された専門家の知恵と経験は、アメリカとの制度の違いを前提としても、刑事弁護一般に大変示唆に富む内容であった。

(日弁連刑事弁護センター 幹事 黒原智宏)


 

第8回企業内弁護士研修会
企業内弁護士最前線
インハウスのキャリア設計とワークライフバランス
4月23日 弁護士会館

企業内弁護士として活躍する3人の弁護士をパネリストに迎え、家庭と仕事の両立やキャリア形成などについて、報告形式の研修会を開催した。

 

まず、業務量の調整に関し、櫻井由章会員(モルガン・スタンレーMUFG証券/第一東京)は「採用面接の時点で子育てに時間を取られることを会社に伝え、理解を得ておくことが重要。日系企業では『ホウ・レン・ソウ(=報告・連絡・相談)』、外資系企業でも『ノーサプライズ』の要請がある。家庭の事情は十分に伝え、サプライズが起きないようにしなければならない」と指摘した。

山内千鶴会員(経団連/第一東京)は「子どもが発熱し、どうしても急に休むことがある。常日ごろから仕事は締切より早めに仕上げ、休んだときに同僚が資料を探しやすいよう、あらかじめ資料を整理しておくことが重要」と述べた。

産休・育休取得について、前田絵理会員(旭化成/第二東京)からは「当社では育休は最長3年取れるが、長いブランクを作ると社内クライアントである社員が離れてしまう。実際には半年から1年程度で復帰する人が多い」との報告があり、制度が充実している企業内弁護士といえども、悩みながら復帰時期を模索している実情が示された。

家事・育児の分担について、櫻井会員が「ロボット型掃除機や食洗機を導入するなどしてできる限り機械化しているが、週に数日ベビーシッターも利用している」と報告した一方、山内会員は「シッターの利用には抵抗があり、夫婦と自身の母親とでやりくりして子どもの面倒を見ている」と述べ、家庭の考え方に応じて外部サービスの利用には差があることがうかがわれた。

また、キャリア形成について、前田会員からは「企業内弁護士にとっては社内クライアントを増やすことが重要。そのために社内メールや社内報に記事を書いたり、社内セミナーを開いて講師を務めたりしている。制度がなくても、自分で発案し、可能な施策を実施していくことが重要」との指摘があった。

 

国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)
4月12日~19日 カタール・ドーハ市

コングレスは、5年に1度開催される犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議である。第13回目に当たる本会議には、約140カ国から司法大臣や検事総長を含む政府の代表、国際機関、NGO関係者、個人資格の研究者など約5000人が参加した。次回コングレス(2020年)は日本において開催される予定である。

 

日弁連からは、国際人権問題委員会の宮家俊治副委員長(第二東京)、日弁連刑事弁護センターの高平奇恵幹事(福岡県)および当職の3人が参加した。

「犯罪防止・刑事司法のより広い国連アジェンダへの統合」をテーマに掲げた本会議では、①法の支配の促進および持続可能な開発のための包括的な犯罪防止・刑事司法政策、②国際組織犯罪対策のための国際協力、③新たな形態の国際犯罪の防止・対応(サイバー犯罪、文化財の不法取引、環境犯罪等)、④犯罪防止・刑事司法強化のための市民参加、の各議題について活発な議論がなされた。会議初日には、今後、国際社会が取り組むべき犯罪防止・刑事司法分野における対策や協力の方向性を示すドーハ宣言が採択された。

会議と並行し、国連系研究機関によるワークショップや国際機関、NGO等による約200のサイドイベントが開催された。日弁連は、「公的弁護拡充に向けた取組み」と題するサイドイベントを開催し、日本において国選弁護制度が拡充された過程、その中で日弁連が果たした役割、日本における刑事司法の現状等についての情報提供を行った。現在、リーガルエイドを積極的に活用する流れが世界各国で強まっていることから、リーガルエイドに関するサイドイベントが多数開催され、日弁連のイベントもその中の一つとして注目を集めた。

(国際人権問題委員会 委員 柴垣結華)


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.100

LAWASIA(ローエイシア)
鈴木五十三会長に聞く

アジア・太平洋地域における国際法曹団体として、30余の弁護士会と弁護士団体および約1500人の法律専門家個人会員を擁するローエイシア。
その会長職を務める鈴木五十三会員(第二東京)に、執務の様子や2017年に開催予定の東京大会への意気込みなどのお話を伺いました。

(広報室長 勝野めぐみ)


 

ローエイシアの主な活動内容は

「ローエイシアの活動は参加したすべての弁護士にとって、その経験がビジネスチャンスになり得る」と語る鈴木会長

年1回3日間にわたり年次大会を、年4回程度専門カンファランスを開催しています。このほか、アジア・太平洋各地で司法制度整備支援等のための小セミナーを開催したり、ローエイシア会員弁護士会の要請に基づき、弁護士や司法の独立の脅威に対する抗議声明を適宜表明したりしています。

 

どのような組織で 運営していますか

最高意思決定機関として25カ国(法域)からの代表理事によって構成される理事会があります。会長・副会長を含む執行委員が理事会で選任され、日々の業務を担当しています。日弁連は、2003年の東京大会を契機に正式加盟して以来、日本代表理事を指名しています。2008年までは内田晴康会員(第二東京)が、以後は私が指名されています。

 

2013年10月、会長に就任されていますが、執務の様子をご紹介ください

執行委員会の8人のメンバーは、それぞれの本拠地で活躍する実務家でもあります。直接顔を合わせて行う年4回の会議のほかは、電話や電子メールなどの通信手段を駆使して意思疎通を図り、シドニーに置かれた事務局とも連携してスピーディーに業務を執行しています。会長として即断即決する場面も珍しくありません。

 

日本の弁護士がローエイシアの活動に参加するには

年次大会や専門カンファランスへの参加がまず考えられます。昨年7月には、札幌弁護士会などの共催を得て家族法と子どもの権利に関する国際会議を開催し、参加した各国の会員からも高い評価を得ました。今年は、シドニーでの年次大会のほか、弁護士賠償責任、アセアン諸国の投資法などの専門カンファランスを予定しています。

このほか、日本ローエイシア友好協会の活動に参加することも有益です。友好協会の家族法部会では、国内的に重要な問題を取り上げて定例的に研究会を開催していますし、ビジネス法部会も研究会の定例化に向けて準備中です。

 

日本の弁護士がローエイシアの活動に参加することの意義は

国際的な業務に携わる渉外弁護士とローカルの弁護士という2つのカテゴリーがあるように思われがちですが、私は、参加したすべての弁護士にとって、その経験がビジネスチャンスになり得ると考えます。日本においても、経済のグローバル化に伴い、企業はマーケットをアジア全体と捉える傾向が強いですし、ハーグ条約への加盟が象徴するように、家族法の分野で関係諸国との連携が必要となる場面が飛躍的に増大しています。ローエイシアの活動を通じ国際間のコミュニティを形成し、相互に交流と連携を図ることで、各弁護士がその経験を自己の業務拡大に役立てることが可能であると思います。

 

英語を母国語としない日本の弁護士にとって活動上のハンディキャップはありませんか

確かにローエイシアでの活動を行うに当たり、英語でのコミュニケーションは克服しなければならない重要な課題です。しかし、英語を非母国語とするアジア諸国の弁護士に共通する課題であるともいえ、国際関係における活動を行う以上、避けては通れない問題です。会員の皆さんにも積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 

団体会員としての日弁連に何を期待しますか

国際的な法制度、特に国際仲裁・調停を家族法からビジネス法に及ぶ広い分野で活用する制度設計、ルール作りについて主導的な役割を担うよう強く期待します。この目標に向けて、私も本年11月の年次大会までの任期中最善を尽くすつもりです。

 

2017年に開催が内定している東京大会への意気込みを含め、会員へのメッセージをお願いします

東京での開催は2003年以来ですが、この間、アジア・太平洋地域の法的環境は劇的に変化しました。東京大会では、この環境に応える日本の弁護士のイニシアティブの発揮が求められます。そのためにも、多くの会員の皆さん、日弁連のみならず各地の弁護士会の参加も大いに期待しています。


 

日弁連委員会めぐり76

法科大学院センター

今回の委員会めぐりは、法科大学院実務家教員への支援、法科大学院との連携、法曹養成制度の改善に向けた提言・活動などに取り組む法科大学院センターです。栃木敏明委員長(第二東京)、宇加治恭子副委員長(福岡県)、谷井智副委員長(広島)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)


 

前列:栃木委員長、後列左から宇加治副委員長、谷井副委員長

主な活動を教えてください

(栃木)よりよい法曹養成制度にするための改革提言や法科大学院志望者を増やすための活動を行ったり、ローヤリングや民事・刑事実務について研究し、その成果を情報提供するなど実務家教員への支援を行ったりしています。司法試験・予備試験の在り方に関する検討も行っており、例年司法試験の問題を分析し、今後の課題や改善提案を行うシンポジウムを開催し、関係各所からも好評を得ています。

 

実務家教員への支援の具体的内容は

(宇加治)研究対象としている「ローヤリング」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、依頼者との面接・相談・説得の技法や、交渉・調停・仲介等のADRの理論と実務を模擬体験をも取り入れて学ばせ、法律実務の基礎的技能を習得させるという、法科大学院における特徴的な科目です。また、民事実務・刑事実務研究は、実務科目の教え方や各法科大学院における取り組みを対象としています。これらの研究成果をもとに実務家教員の意見交換を実施したり、法科大学院での授業参観を企画したり、模擬裁判記録等の各種授業用教材を作成して提供するなど、地道ですが着実に取り組んでいます。

 

これまでの取り組みの成果と最近特に力を注いでいる活動は

(谷井)よりよい法曹養成制度に向けた改革提言を行い、短答式試験科目の見直しや受験回数制限の緩和の実現に結び付きました。最近は、法科大学院への志望者を増やすための広報活動に力を注いでおり、センター内にチームを立ち上げ集中的に活動しています。昨年は法科大学院出身弁護士の活動に光をあてた「弁護士になろう!!☆8人のチャレンジ☆」という小冊子を作成しました。今年は動画「弁護士になろう☆私のゲンバ☆」も制作し、好評をいただいています。

 

*「弁護士になろう☆私のゲンバ☆」は、日弁連ホームページ(HOME≫日弁連の活動≫NICHIBENREN TV)でご覧いただけます。


 

ブックセンターベストセラー
(2015年2月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 労働事件ハンドブック 2015年 第二東京弁護士会 労働問題検討委員会 編 第二東京弁護士会
2 訴訟の心得 ―円滑な進行のために― 中村 直人 著 中央経済社
3 破産申立マニュアル 第2版 東京弁護士会倒産法部会 編 商事法務
4 弁護士専門研修講座 中小企業法務の実務 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会 編 ぎょうせい
5 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
6 刑事弁護Beginners(ビギナーズ)ver.2[季刊刑事弁護増刊]
現代人文社
7 有利な心証を勝ち取る 民事訴訟遂行 佐伯 照道、天野 勝介、森本 宏、米倉 裕樹 著 清文社
8 和解交渉と条項作成の実務 ―問題の考え方と実務対応の心構え・技術・留意点― 田中 豊 著 学陽書房
9 リーガル・エクササイズ ―裁判官から見た「法と社会」「事件と人」(KINZAIバリュー叢書) 加藤 新太郎 著 きんざい
10 最高裁判所判例解説 刑事篇 平成23年度
法曹会

編集後記

総合法律支援法の改正法案に関する院内学習会を取材しました。その中で、ストーカー事案・配偶者からの暴力事案の認知件数、検挙件数がともに増加傾向にあり、昨年はいずれも法施行後最多件数であることが報告されました。これらの事案では、比較的解決しやすい初期段階で被害者が法律専門家にアクセスできることが何より必要であり、法律相談後のさまざまな活動について、費用の心配なく依頼できる仕組みづくりも大切です。改正法成立への期待と今後の課題を強く意識した機会でした。
広報室嘱託としての任期満了を目前に控え、日弁連新聞の原稿を執筆するのも最後の機会となりました。就任以来、取材・編集を通じて、日弁連の取り組む課題が実に多岐にわたることを知り、新たな発見と驚きの連続でした。今後は一読者として紙面を見守りたいと思います。(M・K)