日弁連新聞 第493号

民事司法改革に関する最高裁との協議が始まる

昨年9月、最高裁と日弁連との間で、民事司法改革に関し、4つの部会で具体的テーマについての協議を開始した。
これまでも理事会やファックスニュース、民事司法改革推進本部ニュース等で進捗状況を報告しているが、最新の状況をまとめて報告する。

 

①「基盤整備」部会

本部会の主な協議テーマは、労働審判実施支部の拡大、非常駐支部の改善、支部機能の拡大である。過去に日弁連が実施した支部問題に関する各種アンケートの回答結果の中から、具体的な問題点を指摘する各地の声や、各地の自治体・弁護士会の決議等を最高裁に提示して議論を行った。2月に開催予定の部会では、労働審判実施支部の拡大についての議論が中心になる予定である。

 

②「証拠収集手段の拡充」部会

本部会は、文書提出命令、当事者照会制度、弁護士会照会制度等が主なテーマとなっているが、課題が多岐にわたるため双方で資料提供や実態調査をすることになっている。

③の「執行制度の拡充」部会での議論を先行させ、本部会の議論は4月以降に協議を開始する予定である。

 

③「執行制度の拡充」部会

本部会では、財産開示制度の改正や第三者照会制度の創設が主なテーマである。日弁連意見である2013年6月21日付「財産開示制度の改正及び第三者照会制度創設に向けた提言」を基礎資料として、立法事実、実効性、要件および審理方法等に関する最高裁からの質問に日弁連が回答する形で論点の整理を進めている。3月には双方において一通りの論点整理がなされる予定である。

 

④「子どもの手続代理人制度の充実」部会

本部会では、手続代理人の運用や報酬の在り方が主な協議テーマで、手続代理人制度を利用した事例を分析している。最高裁から問題提起のあった家裁調査官と手続代理人との担当職務の分担の整理や、手続代理人の資格(要件)、さらには手続代理人の選任が有用な事案の類型化の検討を行っている。今後は、報酬をめぐる制度の枠組みや家裁調査官から見た子どもの手続代理人の制度について議論する予定である。

 

名張毒ぶどう酒事件
第8次再審請求異議審棄却決定
日弁連は会長声明で高裁決定を批判

名古屋高等裁判所刑事第2部は、1月9日、名張毒ぶどう酒事件第8次再審請求の棄却決定に対する異議申立てを棄却した。

名張毒ぶどう酒事件は、1961年3月、三重県名張市で、農薬が混入されたぶどう酒を飲んだ5人が死亡し、12人が傷害を負った事件で、被告人の奥西勝氏は一審で無罪となったが、控訴審で逆転死刑判決を受け、最高裁で確定した。第7次再審請求において、2005年、再審開始決定がなされたが、その後、第2次特別抗告審で再審請求が棄却されている。

第8次再審請求審で、弁護団は、証拠提出したにもかかわらず第7次の最終審で検討されなかった毒物に関する意見書等をあらためて新証拠として提出し、棄却決定の根拠が誤りであることを実験により証明すると予告していたが、裁判所は、その実験結果も待たずに請求を棄却した。今回の異議審においても実質審理をしないまま、7か月の短い審理で、請求審裁判所の決定内容をほぼ追認する内容の棄却決定をした。

検察官の手持証拠の開示が再審開始決定の重要な端緒となる例が多い中、異議審では証拠物の閲覧の機会も与えられなかった。

日弁連は同日、「証拠が隠されたまま死刑判決が維持されていることは、正義に反し、司法に対する国民の信頼を失わせるものであり、到底容認できない」との会長声明を発表した。


 

集団的自衛権行使容認に反対する全国一斉行動
~日弁連キャラバン月間~

  • 【2014年12月20日~2015年4月まで】集団的自衛権行使容認に反対する全国一斉行動 ~日弁連キャラバン月間~

日弁連は、昨年12月下旬から本年4月末までを集団的自衛権行使容認に反対するキャラバン月間として、全国各地でシンポジウムや街頭宣伝等を実施している。本稿ではその詳細を報告する。

 

パレードの様子(上)愛知県弁護士会、(下)仙台弁護士会。仙台は、雪舞う中での実施となった。

1月17日には、仙台、愛知県、鳥取県、大分県、佐賀県の各弁護士会で、集会やパレード・街頭宣伝行動を行い、パンフレット「集団的自衛権。それは、外国のために戦争をすること。」や携帯カイロの配布等をした。2月以降にも、埼玉、千葉県、静岡県、大阪、兵庫県、和歌山等、各弁護士会での企画が実施されるほか、2月21日には横浜市の山下公園で、市民の方々や関東を中心とする全国の会員の参加を得て、1万人規模の集会を実施する。

また、4月7日には東京の弁護士会館で、これらの全国行動を総括するとともに、国会での法案審議に備える集会を予定している。

政府は、昨年7月1日、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、今春の連休前後には、関連法案を国会に上程する。報道によると、集団的自衛権を行使できるのは「他国への武力攻撃で日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由が根底から覆される明白な危険がある」という「存立事態(仮称)」と定め、武力事態対処法に明記すること、周辺事態法を廃止し、新たに「支援・協力活動法(仮称)」を制定すること、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法を制定すること等が検討されているとのことである。他方、世論は、昨年12月の衆議院総選挙後も、集団的自衛権の行使容認など、政権の安全保障政策について不支持が多い(共同通信による世論調査では、昨年11月28日には53.3%、12月15日には55.1%)。

世論を励まし強めるよう、各地での一層の取り組みが期待される。

(憲法問題対策本部 本部長代行 山岸良太)


 

育児期間中の日弁連会費等免除制度が開始!

2015年4月1日から、育児期間中の日弁連会費等免除制度が始まります(申請受付は、2015年2月2日から開始します)。

これは、育児中の男女会員に対し、育児をする子が2歳になるまでの任意の連続する6か月以内の期間における日弁連会費および特別会費を免除する制度です。免除期間中は毎月、育児の実績を記載した書類を提出してください。

申請時には、会費等免除申請書(戸籍謄本等を添付)と誓約書兼予定書を所属弁護士会にご提出ください。

詳細は、会員専用ページ(HOME≫届出・手続≫育児期間中の会費等免除)をご覧ください。

 

 

【お問い合わせ先】
日弁連人権部人権第二課
TEL:03-3580-9508

ひまわり

日弁連では、昨年12月25日、消費者庁・内閣府消費者委員会の発足5年を機に、シンポジウム「消費者庁、内閣府消費者委員会発足5年─これからの消費者行政を考える─」を開催した(3面に関連記事)▼消費者庁は、2009年、それまでの縦割りの消費者行政から、消費者の目線に立って一元的に情報を管理し、新法の企画立案をする消費者行政の司令塔としての役割を期待されて創設された。消費者委員会は、それと同時に、消費者庁とは切り離して内閣府に創設され、消費者庁を含む消費者行政全般の監視機能を担うものとされた▼この5年間、消費者委員会には、日弁連の会員も委員に就任し、特定商取引法の指定権利制に関する問題、地方消費者行政の充実強化等、さまざまな重要論点について建議や提言を表明することで、消費者行政の活性化に大きな役割を果たしてきた。こうした提言等をきっかけに議論が深まり、消費者行政の向上につながった例も少なくない▼このように、政府の委員会や審議会の委員には、必要に応じて弁護士が就任し、専門的知見を生かして、議論や政策決定に建設的な貢献をしている。法律専門職としての弁護士ならではの役割であり、今後も積極的な活動が期待される。

(A・T)


 

シンポジウム
女性弁護士と語るコーポレート・ガバナンス
~取締役会に新しい風を入れませんか~
12月22日 弁護士会館

  • 【企業関係者・弁護士対象】シンポジウム「女性弁護士と語るコーポレート・ガバナンス~取締役会に新しい風を入れませんか~」

政府の「『日本再興戦略』改訂2014」では女性役員等の登用拡大が掲げられており、これを受け日弁連と弁護士会も、女性会員の社外役員候補者名簿の作成・提供事業に向けて動きを進めている。
本シンポジウムでは、企業関係者や数多くの女性会員らの参加を得て、女性弁護士を企業の役員に登用することの有用性などについて語り合った。

 

冒頭、石田法子副会長が、女性弁護士社外役員候補者名簿の作成・提供事業に関する実施要領について報告し、候補者名簿への登載条件として、一定の弁護士登録期間や指定研修の履行等があることなどを説明した。

続くパネルディスカッションでは、北城恪太郎氏(日本アイ・ビー・エム株式会社相談役、経済同友会終身幹事)が、「女性が働きやすい会社は、男性にとっても働きやすい会社」とし、「当社では将来の幹部候補生に必ず女性を一人は入れることにしている」と述べた。大地直美氏(内閣府男女共同参画局推進課長)は、はばたく女性人材バンク(仮称/企業の役員候補となり得る女性人材情報について内閣府男女共同参画局ウェブサイトに掲載し一般公開するもので、2014年度中に開設予定)を案内した。熊谷真喜会員(第二東京/いちごグループホールディングス株式会社社外取締役)は、「日本に多くいる高い教育を受けた優秀な女性を活用すれば企業にとって必ずプラスになる」と訴え、金野志保会員(第一東京/ヤフー株式会社元社外監査役、アドバンスト・ソフト・マテリアルズ株式会社監査役、NPO法人日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク監事)は、「女性が役員になることで、社内の女性従業員に対して良いロールモデルを提供することができる」と述べた。最後に、佐貫葉子会員(第二東京/株式会社りそなホールディングス社外取締役、明治ホールディングス株式会社社外取締役)から、「現在良い風が吹いているので、せっかくのチャンスを積極的に活かしてほしい」と会場の女性会員に対しエールが送られた。

 

プリベント少額短期保険株式会社と新規協定を締結

日弁連は、2014年11月28日にプリベント少額短期保険株式会社(以下「プリベント社」という)との間において、弁護士保険(権利保護保険)に基づく弁護士紹介に関する協定を新たに締結し、2015年1月13日から運用を開始した。

 

補償範囲を拡大

これまで日弁連リーガル・アクセス・センター(LAC)が進めてきた弁護士紹介制度は、損害保険会社および共済と締結する協定の下、自動車保険等の特約として販売される弁護士保険・共済に関するものだけであり、その対象も、交通事故に起因する損害賠償請求事案等に限られていた。

これに対し、プリベント社が販売する弁護士保険は日本で初めて単独保険として販売されるものであるとともに、交通事故等の損害賠償請求事案に限らず一般の民事紛争にまで補償範囲を拡大しているのが特徴である(交通事故等の損害賠償請求事案も補償対象としているが、従前のLACの運用と異なる点がいくつかある。詳細は下表を参照)。

 

初期相談の実施

また、プリベント社の弁護士保険は、一般の民事紛争にまで補償範囲を拡大することから、被保険者が抱える問題が法的紛争か否かの判断が必ずしも容易ではないケースも多いと考えられる。そのため、弁護士会が「初期相談」を実施することになった。当面は、東京弁護士会と大阪弁護士会が試行的に初期相談窓口を設置し、担当弁護士が電話により、法的紛争か否かに関する相談および法制度に関する一般的な説明を行う。

 

今後の課題

このような保険の登場によって、より幅広い法分野での弁護士費用等にも保険が適用され、LAC制度の最重要課題の一つである費用面での司法アクセスの拡充が期待される。これらの弁護士紹介に迅速に対応するためにも、各弁護士会において、各分野に精通する弁護士の紹介体制を整備することが求められる。

 

現行LACとプリベント社の運用の異同点


現行LAC プリベント社
初期相談 なし あり(試行弁護士会のみ)
対象範囲 「偶発事故」
(交通事故等の損害賠償請求に係るもの)
「偶発事故」:現行LACと同じ
偶発事故以外の「一定の法律事件」
(欠陥住宅、遺産相続、離婚、医療過誤、金融商品など)
※適用除外は約款を参照
紹介手続 被保険者→保険会社→日弁連LAC→各弁護士会LACで名簿等から配点 現行LACと同じ
弁護士費用(対象) 法律相談料、弁護士費用等(着手金・報酬金・実費・日当・時間制報酬等) 「偶発事故」:現行LACとほぼ同じ
「一定の法律事件」:対象は着手金のみ
(免責5万円を控除後の額の50%)
弁護士費用(請求手続) 原則、保険会社への直接請求 依頼者の立替えを前提
弁護士費用(準拠) 原則、LAC「保険金支払基準」等各基準 「偶発事故」:現行LACと同じ
「一定の法律事件」:同社約款記載の"基準弁護士費用"の範囲内
書式 原則、LAC制度による統一書式 「偶発事故」:現行LACと同じ
「一定の法律事件」:プリベント社独自の書式を使用

※今後、約款の改訂等により変更になる可能性があります。ご注意ください。

 

日弁連新聞モニターの声

日弁連新聞では、毎年4月に全国から71人のモニター(任期1年)をご推薦いただき、そのご意見を紙面作りに活かしています。

本年度は、日弁連が重要課題として取り組んできた刑事司法改革に関し、法制審刑事特別部会での答申案の取りまとめがなされ、その関連記事に特に高い関心が寄せられました。また、法曹養成制度改革に関する議論状況、集団的自衛権行使容認問題を始めとする憲法問題についての記事も依然として注目されています。

4面の特集記事は広報室嘱託がタイムリーな情報発信を目指して毎号作成しています。5月号「刑事弁護フォーラム」、6月号「(座談会)非常勤裁判官に聞く」、9月号「知って得する会員サービス」などは特に人気がありました。

3面は主にシンポジウム等のイベント記事を掲載しています。多種多様なイベントから毎号5つのイベントを厳選して取り上げています。紙面の制約もありますが、リード文でイベントの意義を簡潔に説明し、なるべく具体的な議論を紹介するなど今後も工夫したいと思います。

掲載記事について、日弁連の政策関連情報のみならず、業務関連の記事をもっと取り上げてほしいとのご意見もあります。広報室としても、会員のニーズに応える紙面作りに今後とも努めていきたいと考えています。

(広報室長 勝野めぐみ)


 

日弁連短信
─中小企業の事業再生支援のために─

特定調停スキーム利用の手引きの活用を

吉岡次長

日弁連は、今般、2013年12月に策定した「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム利用の手引き」(以下「手引き①」という)を改訂するとともに、新たに「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引き」(以下「手引き②」という)を策定し、公表した。

手引き①は、2013年3月の中小企業金融円滑化法の終了により多数の中小企業の再生が課題とされていたことから、日弁連(日弁連中小企業法律支援センター)が最高裁判所、中小企業庁等と協議を重ねて策定した、簡易裁判所の特定調停手続を活用した事業再生スキームの手引書である。今回、「経営者保証に関するガイドライン」(中小企業の経営者による個人保証の課題への解決策を具体化するために策定された、中小企業、経営者および金融機関による対応についての自主的かつ自律的な準則。以下「経営者保証ガイドライン」という)の運用が2014年2月に開始されたことに伴い、特定調停手続を活用して同ガイドラインに基づく保証債務の処理が円滑に行われることをサポートすべく、主債務者たる中小企業と保証人たる経営者が一体で負債を整理する運用を促進するため、手引き①を改訂した。

また、主債務者である企業の負債処理とは別個に、保証人である経営者のみが経営者保証ガイドラインにより保証債務を処理するために特定調停手続を利用するスキームについても、最高裁判所等と協議の上で策定し、手引き②を新たに取りまとめたところである。

これらの手引きは日弁連の会員専用ページ(HOME≫書式・マニュアル≫その他弁護士業務)にも掲載しているので、会員各位にご活用いただき、中小企業の事業再生を支援していただきたいと考えている。

日弁連では今後、2月24日に福岡で「特定調停手続活用のための意見交換会in福岡県」を、3月10日に東京で「事業再生シンポジウム『特定調停スキームの活用と経営者保証ガイドラインの運用』」をそれぞれ開催する等、このスキームの周知、利用を促進すべく努めているところである。会員におかれては、ぜひ積極的に参加いただきたい。

(事務次長 吉岡 毅)


 

第2回弁護士職務の適正化に関する全国連絡協議会
12月12日弁護士会館

各弁護士会における市民窓口および紛議調停制度の実情調査やこれを踏まえた改善等に関する意見交換を行うため、第2回目となる本協議会を開催した。協議会では、市民窓口、紛議調停制度等の充実・強化を期して、参加した弁護士会の実務担当者ら約160人が活発な議論を行った。

 

協議会には、弁護士会の実務担当者ら約160人が参加した

村越会長からの挨拶に続き、まず、紛議調停制度および市民窓口について、事前に実施した各弁護士会での運用状況に関するアンケート結果の報告を踏まえ、意見交換を行った。その上で、紛議調停制度については、各弁護士会の主要規定を統一化する必要性が、市民窓口については、市民と弁護士会のコミュニケーションの窓口として、市民が弁護士会にアクセスする窓口であるという共通意識を持ち、市民窓口担当者がその立場に徹する必要性が確認された。

また、「行政における苦情処理の仕組みと弁護士会市民窓口業務への示唆」と題する講演があり、講師の大橋真由美教授(成城大学法学部)から、行政相談を通じて把握した問題のうち、行政制度および行政運営の基本に関わる苦情処理に民間の有識者の意見を反映させるための行政苦情救済推進会議等について紹介があった。その上で、苦情は制度の在り方を改善していくに当たって貴重な情報が詰まっている一種の「宝の山」であるという、今後の市民窓口業務を行うために示唆に富む指摘がなされた。

そして、市民窓口の苦情分析等から、その整備の必要性が指摘されている会員サポート制度を今回初めてテーマとして取り上げた。事前に実施したアンケートの結果を踏まえ、弁護士会から実情報告を受けて、意見交換を行った。

(弁護士職務の適正化に関する委員会  副委員長 藤井 篤)


 

第2回いじめ問題第三者機関委員・経験交流集会
12月17日弁護士会館

2013年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行されてから1年余りが経過した。同法に基づく国の「いじめの防止等のための基本的な方針」で、いじめ問題第三者機関に弁護士が関与することが想定されており、日弁連でも、自治体から弁護士会への弁護士推薦依頼に対応すべく「いじめ防止対策推進法に基づく組織に弁護士会が弁護士を推薦する場合の要件と留意事項」(推薦要件)を策定している。

本経験交流集会では、第1回に引き続き、いじめ問題第三者機関委員経験者に、遺族・被害者への配慮はどのようになされるべきかという視点の下、委員の職務を遂行する際の課題とその対応を語ってもらった。

冒頭、子どもの権利委員会いじめ問題対策PTの栁優香委員(福岡県)から、前回の経験交流集会の概要や推薦要件の報告があった。報告では、推薦要件に関し、当該学校の教職員と親族関係にある等、いじめ問題の関係者との「直接の人間関係」、当該地方公共団体の元顧問等、いじめ問題の関係者との「特別の利害関係」を有する弁護士については、原則として中立公平な第三者とは言えず、推薦要件を欠くとされた。

続くパネルディスカッションでは、いじめ問題第三者機関委員の経験を有する会員3人が、いじめ問題第三者機関をめぐる、各地の事例検討で浮かび上がった遺族への情報提供、調査報告書の事前開示等の諸課題について、自身の経験やそれに基づく教訓等を語り合った。

この中で、遺族への情報提供に関して、「生徒向けアンケートの原票は、筆跡で特定される等の問題があることから、遺族への開示はせずに、ワープロで打ち直したものを開示した」との報告がなされた。また、調査報告書の事前開示について、「遺族には事実確認や納得のため公表前に開示し、結論に至った経緯等の説明をするが、教育委員会には事実確認にとどめ、公表の際の意見形成のための時間提供程度が適当と考える」との報告がなされた。

 

自治立法に関する研修会
条例策定における弁護士の関与について
12月20日 弁護士会館

近年、地方分権の気運の高まりの中で、自治体の政策形成およびその実現のための手段として条例の役割が重要視されてきている。条例の策定に当たっては、解釈・適用の場面における問題点の検討が必要だが、従来は弁護士が条例の策定に正面から取り組むことはまれであった。そこで、立法実務に関する知識と経験を共有する機会として、研修会を実施した。
当日は任期付公務員として活躍する会員を含め、約40人の会員等が参加した。

 

冒頭、「立法における弁護士の強みと弱み」と題し、松永邦男氏(内閣法制局第一部長)が講演を行った。同氏は、「弁護士は法律の専門知識、法律的観点から関係者を説得するスキルが強み」と述べる一方、個別の紛争解決ではなく一般的なルールを策定する視点に欠ける場合もあるとして、この点についての意識の重要性を指摘した。

次に、明石市長であり、弁護士を任期付職員として採用している泉房穂会員(兵庫県)が、条例の役割と条例策定に弁護士が関与する意義について報告し、「弁護士は人の心を受け止める仕事をしていることが一番の強み」と語った。明石市では、2011年に犯罪被害者等支援条例(2013年改正)が制定され、現在、障害者コミュニケーション促進条例の制定が検討されている。

続くパネルディスカッションでは、実際に弁護士が条例策定に関与した経験を基に、具体的考察と討論を行った。流山市に勤務する帖佐直美会員(東京)は、「担当分野の先端的な法律に精通している自治体職員と、基本法に精通している弁護士職員が協働することで、適正な行政活動につなげることができる」と自治体内における弁護士の存在意義を語った。

水上貴央会員(第一東京)は、長野県飯田市における、従来例のない再生可能エネルギー条例の策定に携わった経験から、「法制執務の前段階の、条例の位置付け・構成等を含めた問題解決のための全体の制度設計こそ弁護士に向いていると思う」と実感を述べた。

 

第67期司法修習終了者対象
就職・即時独立開業に関する相談会
12月20日 弁護士会館

  • 【第67期司法修習終了予定者対象】就職・即時独立開業に関する相談会

昨年12月18日に第67期司法修習終了者の一括登録が行われ、同時点での未登録者数は550人、全体の約28%を占めた(1月16日時点の未登録者は317人、修習終了者の約16%)。
新人弁護士の就職事情が依然として厳しい状況の中、法律事務所や企業等への就職希望者や即時独立開業を検討している修習終了者を対象に相談会を実施した。

 

本相談会は、個別の就職あっせんを行うのではなく、法律事務所や企業等への就職や即時独立開業に関する情報提供と参加者からの相談に応じることを目的とするものである。

修習終了者1人に若手弁護士サポートセンターの委員・幹事が2人ずつ対応し、相談に応じた。相談内容は、従前の就職活動の状況を踏まえた就職先の探し方、履歴書や面接に関することから開業後の顧客開拓まで多岐に及んだ。

相談を担当した若手弁護士サポートセンターの山本昌平事務局長(東京)は、「面接では弁護士になりたいと思った理由や入所したい理由をしっかりアピールするのが重要。明るく元気に振る舞うことも大事」と参加者を激励した。研修・業務支援室嘱託の吉岡祥子会員(第二東京)は、「公には新人を募集していない事務所でも、採用を検討している事務所は多くある。人と人のつながりから就職先を探すことも検討してほしい」、小林哲也委員長(第二東京)は「事務所に入った後も委員会などにできるだけ出席して、視野を広く人脈をつくっていってほしい」とアドバイスした。

また、独立開業後の顧客開拓については、北條将人副委員長(横浜)から、「弁護士からの紹介だけでなく隣接他士業からの紹介というケースもあるので、勉強会への出席や積極的につながりを持つという方法もある」と経験に基づく具体的な助言があった。

 

シンポジウム
これからの消費者行政を考える
─消費者庁、内閣府消費者委員会発足から5年─
12月25日弁護士会館

  • シンポジウム「消費者庁、内閣府消費者委員会発足5年-これからの消費者行政を考える-」

2009年9月に消費者庁および内閣府消費者委員会が発足してから5年が経過した。この間、さまざまな法整備がなされるなどの成果があった一方で、消費者行政に対する監視機関である消費者委員会の消費者庁への移管問題が浮上するなど課題もまだまだ多い。本シンポジウムでは、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターのトップを招き、これまでの消費者行政を振り返るとともに、今後の課題についても議論を交わした。

 

消費者庁、消費者委員会および国民生活センターのトップから、5年間の消費者行政についての報告がなされた

冒頭、板東久美子消費者庁長官、河上正二消費者委員会委員長および松本恒雄国民生活センター理事長から、それぞれ基調報告がなされた。板東長官は、消費者庁発足からの5年間を振り返り、「特にここ2年間は、不当表示に関する課徴金制度の導入など多くの法整備がなされた」とした。河上委員長は、「委員会発足以降、15の建議、多くの提言、意見表明をしてきた」とした上で、「今後も、各省庁に対し、あるべき消費者政策像を示していきたい」と述べた。松本理事長は、「相談、商品テストなど6つの業務を遂行し、行政機関への要望、消費者への注意喚起などの機能を果たしてきた」と同センターの5年間を振り返った。

また、消費者庁の生みの親である福田康夫元首相からも挨拶があった。

続くパネルディスカッションでは、飯田秀男氏(全大阪消費者団体連絡会事務局長)が、地方消費者行政に関して、「窓口の体制強化が図られたが、人材の養成が次の課題だ」と指摘したのに対し、松本理事長は、「国民生活センターでは、地方行政職員の研修などを行い、地方消費者行政の支援を行っている」と述べた。河上委員長からは、不当表示に関する課徴金制度導入のきっかけとなった消費者委員会の答申の経緯の報告などがなされた。川口康裕氏(消費者庁次長)は、「適格消費者団体の社会における認知度をより高める努力をしていきたい」と述べ、今後の消費者行政に関する課題を確認した。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.97

司法記者に聞く 【Part1】

広報室は、日弁連の情報発信窓口として、司法記者クラブや法務省の記者クラブに所属する記者の皆さんから取材や問い合わせを受けています。しかし、実際に記者がどのような仕事をされているのか、また、日弁連や弁護士についてどのような感想を抱かれているのか、じっくりお話を伺う機会はあまりありません。本特集では、いつもと立場を替え、4人の記者に逆取材をすることにしました。
本号では、朝日新聞社の西山貴章さんと日本放送協会(NHK)の永野麻衣さんからお話を伺いました。(広報室嘱託 倉本義之)


 

経歴をお聞かせください

「捜査機関の言い分だけでなく、被告人の言い分もきちんと伝えたい」と語る永野さん

(西山)1999年に入社し、佐賀支局で、佐賀県警などを担当しました。その後、熊本支局、東京本社社会部(東京地裁、東京高裁、東京地検特捜部の担当)、アメリカ留学、大阪本社社会部を経て、2012年から、再び東京本社社会部の所属となり、現在は、最高裁を担当しています。熊本支局で担当したハンセン病問題と川辺川利水訴訟の2つの事件が特に記憶に残っています。

(永野)2006年に入局し、富山放送局で、富山県警を担当しました。その後、名古屋放送局での司法担当を経て、2012年から東京の社会部所属となりました。私も、現在、最高裁の担当です。入局1年目の富山放送局時代、氷見事件の取材を通じて、警察が判断を間違えることがあるんだと衝撃を受けたことをよく覚えています。

 

お二人とも最高裁担当とのことですが、日々の仕事の様子を教えてください

(西山)大きな判決に向けて、当事者・代理人への取材を試みたり、一審、二審の判決などの資料を読み直したりと準備を進めます。事案によっては、最高裁に、判決のもたらす意味や背景事情などを取材します。最高裁判決は、下級審のそれと比べ一般的に影響力が大きいので、判決のニュースバリューの見極めにいつも腐心しています。

(永野)私もだいたい同じですね。あとは識者からのコメントをもらうため大学の先生に取材することもあります。少しでも掘り下げた、かつ分かりやすい報道となるよう、多方面から話を聞くようにしています。また、事案に応じてどの番組枠で取り上げるべきか、ニュースバリューの見極めに苦労している点はテレビメディアの特徴と言えるかもしれません。

 

日弁連や弁護士の活動についてどのような感想をお持ちですか

刑事司法改革に関し、「日弁連には今後とも積極的に提言を続けてほしい」と話す西山さん

(西山)1年4か月間法務省担当として、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の取材をしました。率直に言って、発足した当時に期待したほどの成果とはなりませんでした。とは言え、これで終わりではありません。司法取引や取調べの録音録画にしても、まだ不確定要素のある危うい制度で、運用される中での厳しいチェックが必要です。日弁連には今後とも積極的に提言を続けてほしいと期待しています。

(永野)DVや虐待の問題に興味があるのですが、取材をする中で、手弁当で自分の時間を割いて活動されている先生方に多く接し、いつも感心しています。そういう方たちの取り組みが世間に知られるよう、また、持続的な活動となるよう、社会に訴えかけていきたいと思っています。

 

事件報道・裁判報道の難しさは

(西山)最高裁での判断内容は、争点も複雑で、一般の読者に理解してもらうのが難しいことが多いので、記事の冒頭15行に精力を注ぎます。ここで分かりやすく説明できていないと、先を読んでもらえないものですから。中学生が読んでも分かるレベルにしないといけませんが、そこがやはり苦労する点ですね。

(永野)テレビの場合、裁判報道では開廷前の廷内映像のほかには映像がないことも少なくありません。しかも、難しい事案、難しい用語も多い。新聞だったら文字を読んで理解できることでも、音声を通じての報道であるテレビだと相当噛み砕かないとなかなか理解してもらえません。裁判報道を映像と音声で、いかに分かりやすくきちんと伝えられるかというのは永遠の課題ですね。

 

刑事弁護人の取材対応について要望することは

(西山)昔と比べ、われわれも対等報道を意識するようになり、被告人の言い分を伝えるウエイトが高まっています。弁護人に対する取材はますます重要になります。ぜひ、取材に応じていただきたいと思います。

(永野)結果的に被告人の言い分や弁護方針についてお話いただけなくても、一度は弁護人と向き合って話ができれば、といつも思っています。事件に対する取材申し入れを警戒する弁護人もいらっしゃいますが、私たちは捜査機関の言い分だけでなく被告人の言い分もきちんと伝えたいのです。この点をご理解いただき、ぜひ、取材に応じていただければと思います。


 

日弁連委員会めぐり 72

国際刑事立法対策委員会

今回の委員会めぐりは、国連などの刑事法制関連条約やこれに伴う国内法の制定・改廃、これらに関連する政府間機関であるFATF(金融活動作業部会)等や日本政府の取り組みについて情報収集・検討し、日弁連の取るべき方針や行動を企画立案している、国際刑事立法対策委員会です。山下幸夫委員長(東京)と片山達事務局長(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)


 

山下委員長(左)と片山事務局長

主な活動内容を教えてください

(山下)マネー・ローンダリング対策およびテロ資金対策に関するFATFの勧告を踏まえた、国内法の改正への対応が活動の中心です。依頼者の本人特定事項の確認義務や取引記録の保存義務の関係と言えばお分かりいただけるかもしれません。他には、OECDで採択された外国公務員贈賄禁止条約関係にも対応しています。

 

弁護士に対して、依頼者の身元確認義務・取引記録の保存義務が課されることになった経緯は

(山下)FATFが2003年に採択した第3次勧告は、弁護士等の専門職に依頼者の身元確認義務、取引記録の保存義務に加え、疑わしい取引の報告義務を課すことを求めました。これを踏まえた国内法立法の際の日弁連の反対運動は一定の成果を上げ、疑わしい取引の報告義務は法案提出段階で削除されました。その上で、弁護士に対する規制は日弁連の会則に委ねられることになりました。

 

今後の課題は何ですか

(片山)国内法制定の経緯からお分かりのように、弁護士自治を守るためにも、制定した会規の下で弁護士がマネー・ローンダリングに利用されないよう注意する必要があります。不祥事が起き、弁護士への批判が高まれば、疑わしい取引の報告義務について法律上の義務を課されてしまう恐れがあります。実際、欧州各国を始めとする多くの先進国は、この報告義務を弁護士にも法律上の義務として課しています。昨年、FATFの対日相互審査を受けた法改正が行われました。来年度はこれを踏まえた規程改正に向け、広く全国の弁護士会から意見をいただくことになります。適切な規程改正を実現することが最大の課題です。ぜひ会内で議論を深めていただきたいと思います。

 

会員へのメッセージをお願いします

(片山)日弁連の規程で定めているのは、本人確認義務と記録保存義務だけではありません。依頼目的が犯罪収益の移転に関わるときは、その依頼を受けてはならないとしています。依頼を受けた後に知ったときは、目的の実現を断念するよう説得し、これに応じないときは辞任することまで求めています。お金を送金してくれれば手数料を払う、あるいは預かってくれたら手数料を払う、こういう話には注意してください。弁護士も狙われる立場になっています。


 

ブックセンターベストセラー
(2014年10月)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 訟廷日誌 合冊 2015 付・訟廷便覧 大阪弁護士協同組合出版関係委員会 編集 全国弁護士協同組合連合会
2 携帯実務六法 2014年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
3 刑事弁護Beginners(ビギナーズ) ver.2[季刊刑事弁護増刊]
現代人文社
4 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
5 訟廷日誌 分冊 2015 付・訟廷便覧 大阪弁護士協同組合出版関係委員会 編集 全国弁護士協同組合連合会
6 株式会社法 第5版 江頭憲治郎 著 有斐閣
7 証券六法 平成27年版 証券関係法令研究会 編 新日本法規出版
8 平成26年改正 知的財産権法文集 平成27年1月1日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
9 新訂第七版 法律家のための税法[民法編] 東京弁護士会 編著 第一法規出版
10 遺産分割[改訂版]リーガル・プログレッシブ・シリーズ10 上原裕之・髙山浩平・長 秀之 編著 青林書院

編集後記

阪神・淡路大震災から20年が経過した。新聞やテレビからは連日「震災の教訓を忘れてはならない」というメッセージが発信された。日弁連新聞でも1月号の特集で取り上げた。教訓を忘れず、活かす使命を帯びていることは、弁護士、弁護士会とて同じだ。
この災害により培われた経験という財産は、20年という月日の間に災害・被災者支援の領域をはるかに越えてさまざまな分野に広がった。ボランティア活動・NPO法人など、非営利活動の広がりもその一つだ。
人に目を向けてみても、阪神・淡路大震災経験者が実に幅広い分野で活躍している。この震災というつらい経験をバネとした力こそ、混迷を極める日本の希望ではないだろうか。
東日本大震災と原発事故の支援で培われ、貯まっている力が20年後、日本、そして世界に大きな影響力を与えているはずだ。若い力に期待したい。(Y・O)