日弁連新聞 第492号

臨時総会開催
12月5日 弁護士会館

会則中一部改正(外国法事務弁護士法人制度創設、会則会規等の制定改廃の公示方法及び見出し)の件など7議案が審議され、いずれも可決された。

 

会則中一部改正(外国法事務弁護士法人制度創設、会則会規等の制定改廃の公示方法及び見出し)の件(第1号議案)

昨年4月に公布された改正「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」により外国法事務弁護士のみを社員とする外国法事務弁護士法人の制度が創設されることを受けて、会則にこの新たな外国特別会員に関する1箇条の根拠規定を置いた上で、外国法事務弁護士および弁護士法人と同様に詳細は会規で定めることとするもの。併せて、会則の各条に見出しを付することや、会則会規等の制定改廃の公示方法を官報公告から日弁連ウェブサイトへの掲載に代えることを提案した。討論では賛成意見が相次ぎ、3分の2を大きく上回る賛成で可決された。

 

外国特別会員基本規程(会規第二十五号)中一部改正の件など5議案(第2号ないし第6号議案)

前掲の外国法事務弁護士法人の制度が創設されることを受けて、必要な規程の改正および新設を行うもの。採決の結果、いずれも賛成多数で可決された。

 

小規模弁護士会助成に関する規程(会規第四十号)中一部改正の件(第7号議案)

小規模弁護士会における会財政や会務負担の状況等を総合的に勘案し、基準会員(会則第95条の4第1項の規定に基づき日弁連の会費の免除を受けている会員を除いた弁護士である会員)が100人までの会に対する助成の枠組みは維持しつつ、①基準会員が100人を超え200人以下の小規模弁護士会協議会構成弁護士会(日弁連所属弁護士数の0.5%以下の会)にも年間100万円を上限に助成する、②経過措置の期間を2年間から3年間に変更する(ただし、基準会員が200人を超えた会は経過措置の対象としない)との変更を行うもの。

討論では、小規模弁護士会における財政的基盤を確立するための助成は重要であるとともに、これは各弁護士会の会務・会費負担の軽減にもつながるとして賛成する立場の意見が多く、賛成多数で可決された。

 

新年のご挨拶
日本弁護士連合会会長 村 越  進

村越会長

明けましておめでとうございます。

本年が皆さまにとって素晴らしい年となりますようお祈り申し上げます。

早いもので、昨年4月に日弁連会長に就任してから9か月が経過しました。  

私はこの間、第一に、わが国における司法の地位と役割をいかに高めるか、第二に、それを可能とする法曹三者の連携と信頼をいかに構築するか、第三に、日弁連の主張と活動をいかにして市民的な基盤と信頼に基づくものとするかを常に考え、そのことをすべてのベースに置いて政策と方針を決定し、会務を執行してまいりました。

現在、わが国の社会と司法、そして法曹・弁護士は大きな困難に直面しています。日本が、すべての国民が安心して暮らすことができる、平和で豊かな国であり続けることができるのか、司法がその役割を十分に果たし、人々の生活と権利を良く守ることができるのか、法曹・弁護士が希望に満ち、信頼される職業として存在し得るのか、今、それが問われる分岐点にあると言っても過言ではないと思います。私たちはそうした状況認識をしっかりと共有しながら、国民・市民の視点に立って、正しい方向性を追求しなければなりません。

法曹養成制度改革、司法基盤の整備、司法アクセスの改善、活動領域の拡大等、難問が山積しています。関係機関やさまざまな関係者との連携を強化し、建設的な議論を深める必要があります。

何よりも、事態を前に進める原動力は、広範な市民の日弁連に対する信頼と支持にあり、会員が日弁連の旗の下に心を一つにして取り組むその結束にこそあります。

一歩でも前進するために、改革を少しでも実現するために、会員の皆さまと力を合わせて取り組みたいと心から願っております。

本年もよろしくお願い申し上げます。


 

第12回高齢者・障がい者権利擁護の集い
関係機関の連携を
虐待対応等法的支援を中心に
11月21日 甲府市

  • 第12回「高齢者・障がい者権利擁護の集い」のご案内

第12回目の開催を迎える本集会は、高齢者や障がい者の権利擁護活動において、行政を含めた福祉関係者と弁護士とが連携して取り組む必要性が高いとの考えから、日弁連、関弁連、山梨県弁護士会、山梨県社会福祉士会、山梨県精神保健福祉士協会が主催し、山梨県が共催に加わった。
当日は、弁護士、社会福祉士等の市民を含む364人が出席した。

 

冒頭、高齢者・障害者の権利に関する委員会および高齢社会対策本部からの2014年度の活動報告に引き続き、篠本耕二准教授(西武文理大学)が、「総合的かつ包括的な援助を実践するための新たな専門職連携のかたち」と題する基調講演を行い、単なる協議会等での連携にとどまらず、それぞれの役割を超え、重なり合った統合体の一部を担うような連携が必要であると指摘した。

続いて、山梨県弁護士会の実行委員会シンポ資料集部会の若手会員6人が全国の弁護士会、都道府県および市区町村の高齢者ならびに障がい者担当部署、山梨県内の福祉関係事業所に対して行ったアンケート結果を報告した。これによると、高齢者分野はある程度連携が進んでいるが、障がい者分野では連携が進んでいない実態が明らかとなった。高齢者分野の中でも虐待対応はある程度連携が進んでいるものの、後見等開始審判における市区町村長申立てや生活保護分野でも連携が進んでいない実態が見られた。また、福祉関係者から弁護士会に対し相談体制の充実を望む声が多く寄せられた。

その後、「山梨における福祉関係機関の連携と今後のあるべき姿」と題するパネルディスカッションを行った。この中では、高齢者・障がい者に対し法的支援が必要な事項等の確認から始まり、高齢者分野では、地域包括支援センターの取り組み状況、高齢者虐待対応事業の紹介とその問題点等が、障がい者分野では、障害者自立支援協議会で障がい者の法的支援を図っている笛吹市の実践例や、福祉関係者からの相談体制の充実の必要性(山梨県弁護士会で行われている福祉担当者ほっと相談の紹介)が議論された。また、精神障がい者分野では、精神科病院において弁護士が相談会を行う意義とそのきっかけ作り、精神障がい者の権利擁護活動が遅れている理由等が議論された。

(高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長 松本成輔)


 

若手会員と日弁連執行部との意見交換会
「第2回若手弁護士カンファレンス(2/28)」参加受付中

昨年8月に開催した第1回若手弁護士カンファレンスでは、日弁連執行部が若手会員の皆さんから示唆に富む有為かつ忌憚のない意見を多数伺う機会となりました。参加者からは定期的な開催を望む声が多く寄せられたこともあり、下記のとおり第2回のカンファレンスを開催します。

活発な意見交換の場となるよう、全国の若手会員のご参加をお待ちしています。

 

日  時: 2月28日(土)午後1時~午後5時
場  所: 弁護士会館14階・17階会議室
参加対象: 第62期以降の弁護士会員(定員80人)
内  容: 第1部:全体会
第2部:グループ別意見交換会
第3部:懇談会(午後5時15分頃~)
申込締切: 2月13日(金)
※申込方法等の詳細は会員専用ホームページ(HOME≫イベント・研修情報≫2015年)をご覧ください。
お問合せ先: 日弁連業務部業務第一課
TEL:03-3580-9818

 

第67期司法修習終了者
1248人が一括登録
300人余りが就職未定の状況

2014年12月18日、二回試験に合格した修習終了者のうち1248人が日弁連に一括登録した。同日時点での未登録者数は550人であり、終了者全体の約28%を占め、前年同時期と同水準となっている。2015年1月の登録予定者や、当初より登録を予定していない人数を差し引くと、300人余りの終了者が就職未定の状況にあると推計される。

引き続き、若手弁護士サポートセンターを中心に、未登録者への採用情報提供、即時独立支援、さらには登録後のフォローアップを続けるとともに、今後の法曹養成・法曹人口の議論において、かかる就職難の状況も踏まえた検討がなされるよう働き掛けていきたい。

 


修習終了者数 登録者数 未登録者数
新60期 979 839 32
新61期 1731 1494 89
新62期 1992 1693 133
新63期 1949 1571 214
新64期 1991 1423 400
現新65期 2080 1370 546
66期 2034 1286 570
67期 1973 1248 550

※登録者数・未登録者数は各期一括登録日時点

秘密保護法の施行を前に
あらためて反対・廃止を求める立場を表明

  • 特定秘密保護法の施行をゆるさない街頭宣伝行動(チラシ配り)

特定秘密保護法が昨年12月10日に施行された。
日弁連は、これまで国民の知る権利やプライバシーの侵害など多くの問題を抱える同法の廃止を求めさまざまな活動を続けてきたが、施行を前に行った活動の状況と今後の取り組みについて報告する。

 

JR有楽町駅周辺で秘密保護法の廃止を訴える江藤本部長代行

街頭宣伝行動

昨年12月1日、JR有楽町駅周辺において、秘密保護法に反対する街頭宣伝を行った。日弁連としては秘密保護法施行前に行う最後の街頭宣伝となった。

折悪しく衆議院議員総選挙期間の直前となったため、街宣車を用意することができず、ハンドマイクを使用しての街頭宣伝となった。弁護士約20人が参加し、秘密保護法対策本部の江藤洋一本部長代行(第一東京)らが秘密保護法の廃止等を訴える演説を行い、通行者にチラシを配布した。

市民の反応を見ていると、一年前の熱気に満ちた状況と同じとまでは言えないが、依然として高い関心があるように感じられた。

残念ながら、秘密保護法は昨年12月10日に施行されたが、国民の秘密保護法に対する懸念には根強いものがある。

本部としては今後も秘密保護法の廃止を求めるとともに、政府を暴走させないための取り組みを継続的に行っていく所存である。

(秘密保護法対策本部 事務局長 齋藤 裕)

 

会長声明を公表

特定秘密保護法の施行日である昨年12月10日に、「改めて秘密保護法の廃止を求める会長声明」を公表した。日弁連は、一貫して秘密保護法の成立に反対し、その成立後も廃止を求めてきた。

同法が強行採決された2013年12月6日までに示された国民的な反対運動の熱気も、その後の集団的自衛権に関する解釈改憲など、主権者国民不在のままで、次々と国の根幹が変えられていく動きの中で分散しつつある。

秘密保護法の廃止を求める活動に引き続き取り組むとともに、情報公開制度の改正などにも尽力し、権力者による同法の濫用を許さないよう、厳しく監視し続ける必要がある。

(秘密保護法対策本部 事務局次長 武藤糾明)


 

シンポジウム
地方公共団体における弁護士の役割
11月25日 札幌弁護士会館

  • 地方公共団体における弁護士の役割に関するシンポジウムin札幌

地方公共団体における弁護士の活用事例等を紹介するため、北海道内の自治体関係者(33人)の参加を得て、本シンポジウムを開催した(共催/北海道弁連・札幌弁護士会、後援/内閣府・法務省)。昨年度から同様のシンポジウムを福岡市、仙台市および名古屋市で開催しており、今回はその第4弾となる。

 

シンポジウムには、北海道内の自治体関係者も多数参加した

第1部では、「行政クレーマー対策」および公金債権管理回収等業務の民間委託に関する内閣府の「地方公共サービス小委員会報告書」について、札幌弁護士会民事介入暴力対策委員会副委員長の林佑介会員と内閣府公共サービス改革推進室参事官補佐の渡邊知徳会員(東京)による研修を行った。

第2部では、①北海道内の各弁護士会における行政連携の実践例(【旭川】行政連携PTの立ち上げ/地域司法対策委員会の活動等、【釧路】道東一斉すずらん無料法律相談/小中学校への出前授業/地域包括支援センターとの連携、【函館】消費者、高齢者・障がい者、貧困、自殺、子どもの各分野における函館市その他関係団体等との連携・ネットワークづくり等、【札幌】弁護士不在自治体における頻回相談事業/札幌市の公金債権管理回収業務に関するメール相談事業等)について各会から報告があり、②「弁護士会との連携による公金債権管理回収等業務の委託とその成果」について大阪府河内長野市の向井一雄副市長と西片正伸産業経済部産業政策課長から、③「小規模地方公共団体における任期付職員弁護士の採用とその活用法」について三重県南伊勢町の小山巧町長と同町の任期付職員の石田美奈子会員(三重)から、それぞれ詳細な報告があった。

いずれのプログラムも、今後の地方行政や福祉の分野における弁護士の役割や弁護士会と地元自治体等との連携の在り方を考える上で大変興味深く参考になる内容であったことから、その後の意見交換会やアンケートでも、多くの参加者から「弁護士や弁護士会が身近に感じられた」「弁護士任用を検討したい」「行政連携のより一層の発展を期待する」といった前向きな意見が出された。本年1月29日には、同様のシンポジウム(第5弾)を高松市で開催する予定である。

(法律サービス展開本部自治体等連携センター 事務局長 谷垣岳人)


 

日弁連短信
コーポレートガバナンスと女性弁護士社外役員の活用

菅沼次長

平成26年会社法改正の目玉の一つはコーポレートガバナンス強化のための社外取締役設置の勧奨である。設置の強制には至らなかったものの、事業年度の末日に社外取締役を置いていない場合は株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない」とされた。日本の全公開会社・大会社にこのルールが適用されることになる。

この社外取締役の候補として注目されているのが女性だ。昨年10月のIBA東京大会の際に行われたコーポレートガバナンスに関するセミナーでも、社外役員の独立性の確保とともに女性や外国人などを登用して多様性を図ることの重要性が指摘されていた。

さらに、政府の「日本再興戦略」が女性役員登用の動きを引っ張っている。同戦略では「女性の活躍促進」を日本経済再興の鍵となる施策の一つとして位置付けており、それを受けて経済界も女性の活躍推進の自主的な取り組みを始めている。企業の女性活躍状況に関する情報開示も進められ、役員の女性比率を有価証券報告書等に記載することが義務付けられた。しかし、現状では社内で役員候補となり得る女性の人材を確保するのが困難な企業が多く、まずは社外役員として女性を登用しようということになっているようだ。

このような中で、社外役員の候補となり得る知見や能力、経験をもった女性人材情報に対するニーズが高まっている。政府はそのための人材情報提供事業として「はばたく女性人材バンク(仮称)」を始める。日弁連も同事業への協力要請を受け、女性弁護士社外役員候補者名簿の作成・提供事業を進めている。具体的な名簿は各弁護士会で作成されるが、経験年数や指定された研修の履修などの名簿登載条件を満たした女性会員につき、氏名・連絡先、経歴や主な取扱業務等の情報を提供する。既に東京三会および大阪で候補者名簿が作成され、日弁連のホームページでも紹介しているのでご覧いただきたい。

「女性の活躍」を本当に実現していくためにも、この取り組みが成功し、社外役員となった女性弁護士が十分に期待される役割を果たしてほしいと思う。また、これをきっかけに弁護士(女性に限らず)が社外役員となることの有用性が広く企業や社会に認知されていくことも期待したい。

(事務次長 菅沼友子)


 

育児期間中の日弁連会費等
免除制度が開始!

2015年4月1日から、育児期間中の日弁連会費等免除制度が始まります。

これは、育児中の男女会員に対し、育児をする子が2歳になるまでの任意の連続する6か月以内の期間における日弁連会費および特別会費を免除する制度です。免除期間中は毎月、育児の実績を記載した書類を提出してください。

申請時には、会費等免除申請書(住民票等を添付)と誓約書兼予定書を所属弁護士会にご提出ください。詳細は随時、会員専用ページ(HOME≫届出・手続≫育児期間中の会費等免除)に掲載します。

 

【お問い合わせ先】
日弁連人権部人権第二課
TEL:03-3580-9508

労働審判制度創設10周年記念シンポジウム
-労働審判制度の過去・現在・未来-
12月6日 弁護士会館

  • 労働審判制度創設10周年記念シンポジウム

2004年の労働審判法成立から2014年で10周年を迎えた。
この節目に、運用面・制度面の問題を明らかにし、よりよい労働審判制度に向けた将来の展望について議論を行うため、シンポジウムを開催した。

 

制度設計関与者を含む関係者が労働審判の課題、今後の展望などについて議論した

制度の現状

冒頭の基調報告では、品田幸男氏(最高裁事務総局行政局)が、制度導入前の労働関係民事通常訴訟の新受件数は年間2442件であったのに対し、制度導入後の2013年度には労働審判と労働関係民事通常訴訟の新受件数が6887件(うち労働審判事件は3678件)に上っていることを報告し、「労働審判制度は個別労働紛争の解決システムとして確かに定着しており、積極的に評価できる」と述べた。

続いて、労働法制委員会の藤田進太郎委員(第一東京)からは、日弁連が弁護士会・支部(計54)を対象に行ったアンケート結果が、佐藤岩夫教授(東京大学社会科学研究所)からは、2010年から2012年に実施した利用者調査の結果がそれぞれ報告された。これによれば、労働審判の第1回期日は申立てからおおむね40日以内に指定され、平均審理期間は2.4か月となっていること、労働者の約7割が迅速に手続が進められたと回答しており、結果についても約6割が満足しているとのことである。課題としては、利用者の過半数が弁護士費用を高いと感じていることが紹介された。

 

今後の展望

後半のパネルディスカッションでは、定塚誠氏(東京高裁判事)が、「労働審判の口頭主義、直接主義、証拠の一括提出主義が、いずれは民事訴訟を変えていくと思う」と語った。労働者側である労働法制委員会の鵜飼良昭委員(横浜)と使用者側である同委員会の石嵜信憲委員(第一東京)からは、労働審判員間の情報共有を図り、現場の実情に沿った労働審判制度の運用と発展に寄与させること、労働審判員として培ったノウハウを企業内での労働問題の解決に活かすことへの期待がそれぞれ述べられた。


 

司法試験シンポジウム
~司法試験の改善に向けて~
11月29日 弁護士会館

  • 司法試験シンポジウム「司法試験の改善に向けて」

2006年に開始した新司法試験について、日弁連は、適切な能力判定をするにふさわしい内容や実施方法等を検討し続けている。2015年度から短答式試験の試験科目を憲法・民法・刑法の3科目に限定する法改正がなされた今般、あらためて司法試験の在り方について議論を深めるため、シンポジウムを開催した。

 

冒頭、是木誠氏(法務省大臣官房人事課付・司法試験庶務担当)が司法試験委員会の議論状況を報告し、短答式試験の科目数が3科目に減ることで難易度の上昇等が懸念されている点について、「短答式は従前どおり法科大学院教育を踏まえた基本的事項に関する出題とすることが求められている」との認識を示した。また、法科大学院センターによる過去3年の司法試験の傾向分析結果の報告と、それらを基にした刑事訴訟法・民法の論文式試験のサンプル問題が提案された。

後半は、後藤昭教授(青山学院大学大学院法務研究科)、野澤正充教授(立教大学大学院法務研究科)、法科大学院センターの山口卓男副委員長(東京)、中山博之同副委員長(札幌)を迎えてパネルディスカッションを行った。

この中では、短答式試験について「未修者への負担が重くなりすぎないよう配慮が必要」(中山副委員長)、「短答式でも条文を配布して良いのではないか」(後藤教授)といった具体的な指摘がなされた。また、論文式試験に関しては、後藤教授が刑法の問題について、「当事者の視点から問題を出してほしいと言い続けている。検察官と弁護人の立場で議論するという問い方をするともっと実務的になる」「今のレベルで試験を実施するのであれば、刑事法も選択科目にした方が良い。今のレベルを全員に問うのは無理がある」と指摘した。論文式試験全体については、山口副委員長が「高度な議論をして学者が喜ぶような問題ではなく、道具をしっかり使いこなせる地に足のついた知識を問う水準の問題にしないと、合格者にばらつきのある現在の状態を改善できない」と言及した。

 

院内学習会
国連自由権規約委員会・
人種差別撤廃委員会の勧告を受けて
11月19日 参議院議員会館

  • 院内学習会「国連自由権規約委員会・人種差別撤廃委員会の勧告を受けて」

昨今、いわゆるヘイトスピーチが社会問題化している。国際機関からは日本に対し、規制を求める勧告が行われている。ヘイトスピーチについては、国民の多くが否定的評価をしているものの、表現の自由との関係で、規制に慎重な意見も根強い。本学習会では、これらの勧告を踏まえ日本におけるヘイトスピーチ規制の是非・在り方について議論を交わした。

 

パネルディスカッションでは、有田議員(左)と山田教授が議論を交わした

冒頭、国際人権(自由権)規約問題ワーキンググループの海渡雄一座長(第二東京)は、国連の国際人権(自由権)規約委員会が、ヘイトスピーチに関し、日本に対して差別禁止法と処罰を求める勧告を行ったことを報告した。

次に、人種差別撤廃条約に関するワーキンググループの須田洋平事務局長(東京)が、国連人種差別撤廃委員会の日本に対するヘイトスピーチに関する勧告内容について、「ヘイトスピーチ規制が抗議の表明を抑制する口実として使われてはならないとの指摘がなされつつも、ヘイトスピーチに対して、必要な場合は刑事罰をもって臨むべきだと、非常に踏み込んだ勧告をしている」と報告した。

パネルディスカッションでは、有田芳生議員(参議院/民主党・ジャーナリスト)と山田健太教授(専修大学)とで「ヘイトスピーチに対する刑事的規制と表現の自由」をテーマに議論が交わされた。有田議員は、「ヘイトスピーチにより、今もPTSDで苦しんでいる子どもたちがいる。ヘイトスピーチは暴力そのものである」とした上で、規制の方向性について、「まず人種差別撤廃基本法という刑事罰のない理念法を作り、その後、議論を進めるべき」との考えを示した。山田教授は、「ヘイトスピーチに対する方策として、規制以外に、啓発・教育や国内人権委員会による救済があるが、日本では、啓発・教育が不十分な上に、国内人権委員会が設置されていない。規制の前に、啓発・教育と国内人権委員会の設置を進めるべきだ」と述べた。


 

院内学習会
福島第一原発汚染水処理対策を考える
凍土遮水壁の問題点を中心に
11月25日 衆議院第一議員会館

福島第一原発事故における汚染水対策としての凍土(遮水)壁の問題点を理解し、あるべき廃炉へのプロセスのための実効性ある方策を議論するため、各分野の専門家を招き学習会を開催した。衆議院の解散により、国会議員本人の参加は無かったが、弁護士・メディア関係者のほか、政府や東京電力関係者も参加した。

 

凍土(遮水)壁とは、福島第一原発の事故を起こした同原発の1号機から4号機を囲むように地下30メートルまで凍結管を打ち込み、土壌を凍らせて地下水をブロックする工法であり、現在凍土壁の建設には公費が投じられている。しかし、隙間のない凍土壁が本当に運用可能なのか、なぜ凍土壁工法が採用されたのか、十分に検討されていないとの疑問も呈されている。

学習会には、報告者として、地盤工学会から小峯秀雄教授(早稲田大学/汚染水問題会長特別懇談会座長)、元地盤工学会会長の浅岡顕名誉教授(名古屋大学)、佐藤暁氏(元GE技術者/原子力コンサルタント)、鈴木達治郎教授(長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長)らを招いた。

報告者からは、凍土壁は長期間運用された実績がない工法であり、水を通さない薬剤や特殊な粘土を地中に注入するなど実績のある工法と組み合わせて対策がなされるべきだとの見解が示されたほか、ドライアップ(建屋内の汚染水の除去作業)の際の放射線防護や労働者の安全確保の問題点も指摘された。

日弁連は2014年4月25日付けの会長声明で、汚染水対策としての凍土壁建設について、海洋汚染を防止し、国際社会と国民の不安を取り除くため、凍土方式にこだわることなく、地下水の原子炉建屋内への流入を恒久遮断する措置を講じるように求めており、あらためて同工法の問題点が浮き彫りになった。

(東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部原子力PT委員 中川 亮)


 

国際司法支援連続セミナー
我が国における法整備と弁護士の役割
12月15日・弁護士会館

  • 国際司法支援連続セミナー「我が国における法の整備と弁護士の役割」

わが国の法整備の歴史から法整備支援まで、日本の弁護士の役割や今後の展望について議論を深めるため、セミナーを開催した。当日は、会場が満員になるほどの多くの会員や法科大学院生らが参加し、熱心にメモを取っていた。

 

冒頭、内田貴会員(東京/東京大学名誉教授)が、日本国内の法整備の歴史と弁護士の役割について講演した。同講演で内田会員は、明治初期に海外留学したいわゆる「エリート」が弁護士となり、地位向上を求めて働いたことを挙げ、法律の発展とともに、法律を運用する弁護士を育て、さらに将来的には立法に携わる役割としての弁護士を育てるべきではないかと述べた。

続いて、ラオスで法整備支援に携わる松尾弘教授(慶應義塾大学法科大学院法務研究科)が講演を行い、「法の支配をユビキタスに(あまねく)実現する役割として弁護士が必要」と指摘した。カンボジア王国弁護士会と日弁連の共催で開催した「アジア司法アクセス会議」(2014年2月・プノンペン)の資料によれば、カンボジアやラオスでは弁護士が少なく、ラオスでは人口10万人あたりの弁護士数はわずか2.3人である。松尾教授は、弁護士は、裁判官や検察官の役割・質・量との相互関係の中で政府と市民を媒介する役割を果たすことになると述べた。

最後の講演では、国際交流委員会の矢吹公敏委員長(東京)が、日弁連ではJICAからの委託事業としてカンボジアの法曹養成を支援しており、これまでに約860人のカンボジア弁護士が生まれたと説明した。矢吹委員長は、「アジアでは歴史上の理由などで市民社会を構築しにくいが、市民社会を構築、強化するのが弁護士の役割だ」と法整備支援の経験から指摘した。

これらの講演を踏まえて行ったパネルディスカッションでは、内田会員が、支援を受ける側の意識にも知の蓄積があり、法整備支援の結果得た知識とどう融合させていくかが興味深いと述べた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.96

阪神・淡路大震災から20年
これまでの歩みとこれからの課題

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から20年が経過しようとしています。今回は、長年災害復興支援に携わってきた災害復興支援委員会の永井幸寿前委員長(兵庫県)、中野明安委員長(第二東京)、津久井進副委員長(兵庫県)にお話を伺いました。 (広報室嘱託 小口幸人)


 

当時の状況

全壊した神戸市東灘区のマンション(兵庫県弁護士会提供)

(永井)当時は、日弁連にも弁護士会にも災害関連の委員会はありませんでしたが、震災後すぐに開催した神戸弁護士会(当時)の会員集会で、「私たち弁護士は机と六法があれば被災者支援ができる」という声が上がり、一丸となって支援に取り組みました。県内各地の弁護士が各自治体と交渉して、廊下や踊り場で法律相談を始め、相談をすればするほど相談者は増えていきました。多かったのは、借地借家の相談でした。近弁連が立ち上げた仲裁センターでの活動も特筆すべきもので、解決率は約50%に及びました。

また、大阪や東京を始め、全国から弁護士がボランティアで駆け付けました。一番多かったのは、約2000人の会員がいた隣の大阪弁護士会です。当時は線路が寸断していたのですが、何時間もかけて歩いて来てくれました。

(津久井)私は同年4月に弁護士登録しました。修習生の頃に現場に行くと、被災者の皆さんが罹災都市借地借家臨時処理法や優先借地権、優先借家権を知っていることに驚きました。逆に、「君は弁護士の卵か。じゃあ教えてやる」と言われたのを覚えています。それ位に相談の効果が草の根的に広がっていました。

(永井)もう一つの大きな動きがまちづくりです。住民と行政の調整を図るために弁護士会内にまちづくり部会ができ、他士業の方々とともに活動していた会員からの提案を基に、震災から1年8か月後に阪神・淡路まちづくり支援機構が設立されました。同機構は30のまちづくりに関与しました。

 

20年の歩み

左から津久井副委員長、永井前委員長、中野委員長

(永井)当時は大阪弁護士会から多大な支援を受けて何とか対応できましたが、他の地域で同規模の災害が発生した場合を想定すると、全国的な支援の枠組みが必要だと気付きました。 電気、ガスなどライフラインの復旧について全国から業者が支援に来ていたので、何らかの支援の枠組みがあるのだろうと調査したところ、全国規模の協定があることが分かりました。この枠組みなら災害時における弁護士会の支援に活かせると思い、弁護士会内で案を作成し、近弁連の力も借り、日弁連の「全国弁護士会災害復興の支援に関する規程」が制定されました。

2004年4月には、日弁連に災害復興支援に関する全国協議会ワーキンググループが設置され、まちづくり支援機構を全国に広げる活動で協働していた各地の弁護士が加わりました。

(中野)そのメンバーに東京から加わったのが私です。東京でも1997年頃から災害に備える動きが始まっており、私も関与していました。支援機構を全国に広げる活動の中で永井先生たちと出会い、士業連携の重要性を知り活動を継続した結果、2004年11月末に東京の災害復興まちづくり支援機構の設立に結実しました。

(永井)新潟県中越地震の発生直後、当時の梶谷剛日弁連会長の指示で、新潟県弁護士会の会員と一緒に被災地を視察しました。翌日には、同会で法律相談と民事法律扶助制度や災害時の活動に関する説明をしました。最初はあっけにとられているようでしたが、次第に一体になっていくのを感じました。

(中野)東日本大震災を経て、被災者支援活動も人権擁護活動の一つとして浸透しましたが、以前はそうではありませんでした。2005年の人権大会で災害関連の決議を採択してもらおうと運営委員会に働き掛けたとき、自然災害での被災は人権問題とは言えないのではないかと指摘されたのを思い出します。当時、組織はまだワーキンググループでしたが、復興基本法の提言のためにシンポジウムを開催し、この活動を契機に災害復興支援委員会が設置され、現在に至っています。

 

今後の課題

(中野)士業間の連携は少しずつ進んでいますが、まだまだ社会とのつながりは弱いと感じています。法律相談を受けられない方のニーズに気付くためには福祉やNPOなど、さまざまな団体と平時から関係を密にしておき、いざというときに連携できるようにしておくことが重要だと思います。

(永井)被災者支援がボランティアで当然だとされていることも課題だと思います。被災者支援活動に対し、一つの業務として適正な対価が支払われ、継続的に取り組めるようにすべきだと思います。

(津久井)東日本大震災時は、被災地に設置された法テラスやひまわり基金法律事務所が支援活動の拠点となりました。全国どの地で災害が起こっても、現場で活動する弁護士と支援者がしっかりつながり合えるよう、日弁連としても平時から連携づくりに努めたいと思います。


 

日弁連委員会めぐり 71

法律サービス展開本部

今回の委員会めぐりは、昨年2月に設置された法律サービス展開本部です。弁護士による法律サービスの一層の展開と促進を図るため、多様な活動にチャレンジする同委員会の取り組みについてお伺いしました。

(広報室嘱託 白木麗弥)


 

前列左から金子本部長代行、大貫事務局長、後列左から菊地センター長、山岸センター長、矢吹センター長

本部設置の経緯

法律サービス展開本部には、自治体等連携センター、ひまわりキャリアサポートセンター、国際業務推進センターの3つのセンターが設置されている。金子武嗣本部長代行(大阪)は、「これら行政や企業、国際の3つの分野には潜在的なニーズはありながら、従来はこれを担う弁護士と結び付けることが難しかった。このニーズを具体化し、マッチングすることで、より幅広い分野で弁護士・弁護士会が法律サービスを提供することができる」と展開本部設立の経緯を紹介するとともに、今後、展開本部の取り組みを全国規模で展開していきたいとの意気込みを語った。

 

自治体等連携センター

本センターは、国や自治体等における多様かつ専門的なニーズ(条例制定支援・包括外部監査・公金債権管理・福祉分野など)に対応し、弁護士会との連携を後押しするとともに、自治体等の内外で活躍する弁護士の拡大・支援のために設置された。「全国各地の自治体で任期付公務員の公募がされるようになってきているので、関心のある方はぜひチャレンジしてほしい」と菊地裕太郎センター長(東京)は呼び掛けた。

 

ひまわりキャリアサポートセンター

本センターは、企業のニーズに対応した弁護士の養成や採用促進等を目的として、経済同友会や経団連等の経済団体との連携を通じ、あらゆる場面で法務の強化を求める企業と企業内弁護士を結ぶ諸活動や、企業内弁護士の支援を行うべく設置された。山岸良太センター長(第二東京)は「企業内弁護士を対象とした研修やセミナー、企業向けの情報提供会などの実施に取り組んでいる」と語った。企業内弁護士が増加している状況の中で、企業と弁護士との相互理解を深め、企業内で弁護士がさらに活躍できるよう、取り組みを進めている。

 

国際業務推進センター

本センターは、海外進出を考える中小企業や日本国内で法的トラブルを抱える外国人等をはじめ、国際的な法律問題に対する支援の体制を強化するために設置された。「大都市圏の渉外系事務所だけでなく、全国でこのようなサポートができるようにするのが目標」と大貫裕仁事務局長(第二東京)は述べた。矢吹公敏センター長(東京)は「中国、東南アジア等の海外で既に150人以上の弁護士が働いており、今後海外で業務を行う弁護士と協働していきたい」と、弁護士業界の国際化を見据えた日弁連としてのサポートの必要性を訴えた。


 

ブックセンターベストセラー
(2014年9月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
2 刑事弁護Beginners(ビギナーズ)ver.2[季刊刑事弁護増刊]
現代人文社
3 株式会社法 第5版 江頭憲治郎 著 有斐閣
要件事実入門 岡口基一 著 創耕舎
5 弁護士10年目までの 相談受任力の高め方

中里妃沙子・高橋恭司・大澤一郎・大山滋郎・藤井総 著

(株)船井総合研究所法律事務所コンサルティングチーム 監修

レクシスネクシス・ジャパン
6 携帯実務六法 2014年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
7 弁護士の失敗学 冷や汗が成功への鍵 髙中正彦・市川 充・川畑大輔・岸本史子・的場美友紀・菅沼篤志・奥山隆之 編著 ぎょうせい
8 家庭裁判所における 成年後見・財産管理の実務[第2版] 片岡 武・金井繁昌・草部康司・川畑晃一 著 日本加除出版株式会社
9 交通事故における 素因減額問題 小賀野昌一・栗宗一樹・古笛恵子 編 保険毎日新聞社
弁護士・実務者のための後遺障害教本 ―整形外科領域― 宮尾益和 著 アジャスト後遺障害プロジェクト編集

編集後記

東日本大震災とともに広報に携わり、もうすぐ4年になる。この間、従前考えられてきた弁護士業務以外にも、弁護士として取り組むべき課題は増えることこそあれ、減ることはなかった。
例えば、本号特集記事(4面)で取り上げた阪神・淡路大震災における弁護士の活動は、当時(20年前)、弁護士の業務としては異例だったかもしれない。しかし、2011年に発生した東日本大震災では、多くの弁護士が復興支援に関わり、今もその取り組みが続いている。
とはいえ、すべての会員が新しい分野への問題意識を共有することは容易ではない。本号で取り上げた法律サービス展開本部のメンバーは、さまざまな分野における弁護士業務の可能性について、全国の弁護士会や会員に考えてもらいたいと語りかけている。
社会が変われば弁護士の仕事も変わる。「日弁連はこんなこともしていたのか!」と会員の皆さんが発見するきっかけとして、日弁連新聞を利用してもらえたらと思う。(R・S)