日弁連新聞 第491号

2015年4月1日スタート
育児期間中の日弁連会費等免除制度はじまる

会員の仕事と家庭との両立支援策の一つとして、2015年4月1日から、育児期間中の日弁連会費等免除制度が始まる(申請受付は2015年2月2日からの予定)。
対象となる会員にはぜひ活用いただきたい。

 

1 免除の対象者・要件

免除の対象者は弁護士である会員であり、性別は問わない。免除要件は、子の育児をすること(書類の提出につき後記6参照)。

 

2 免除される会費

日本弁護士連合会会費および特別会費

 

3 会費免除の期間

育児をする子の出生日の属する月から当該子が2歳に達する日の属する月までの間における任意の連続する6か月以内の期間(多胎妊娠により2人以上の子が出生した場合にあっては9か月以内の期間)

【注意】「育児期間中の会費免除に関する規程」附則により、2015年4月1日から施行し、同年4月からの育児に適用するため、それ以前の育児期間については免除を受けることができない。

(例)子が2013年4月1日以前に生まれた場合、2015年3月31日の満了時に2歳に達するため、本制度は適用されない。

 

4 申請期限

会費等免除申請書は、子が2歳に達する日の属する月を経過したときは、提出することができない。

(例)子が2013年4月2日~同年5月1日に生まれた場合、2015年4月30日までに提出しなければならない。

 

5 申請方法

会費等免除申請書、誓約書兼育児予定書などの必要書類を所属の弁護士会に提出する。

 

6 育児の実績を記載した書類の提出

免除申請期間中、毎月、育児の実績を記載した書類を作成し、翌月末日限り、所属の弁護士会または日弁連に提出しなければならない。

【注意】提出先は所属弁護士会によって異なる。

*詳細は会員専用ページ≫HOME≫届出・手続≫育児期間中の会費等免除をご確認ください。

*問い合わせは日本弁護士連合会人権第二課(電話番号・03―3580―9508)まで。

(男女共同参画推進本部事務局次長 三浦桂子)


 

10月19日~24日
IBA東京大会

東京で開催された国際法曹協会(IBA)の年次大会には、130か国から約6300人の参加があり、期間中に約200のセッション、各種プログラムが開催された(4面に関連記事)。

 

FRAND Declaration - Is it a Gentleman’s Agreement?
(FRAND宣言は紳士協定か)
(知的財産に関するセッション)
10月21日 知的財産高等裁判所

「法の支配シンポジウム」では「表現の自由」や「司法の独立」について議論がなされた

IBA Intellectual Property and Entertainment Law Committeeによる本セッションには、設樂隆一知財高裁所長、片山英二および大野聖二両会員(共に日弁連知的財産センター委員・第一東京)、米欧豪の技術標準設定機関、製造業および弁護士事務所から合計8人をスピーカーとして迎え、必須標準特許とFRAND宣言(保有する特許を公平かつ不差別的な条件(FRAND条件)でライセンスする旨の宣言)をテーマに、パネルディスカッションを行った。全世界でアップル/サムスン事件を始め、技術標準での特許の取り扱いが大きな問題となっており、それぞれの立場から活発な意見が交わされた。設樂所長は、知財高裁2014年5月16日判決(アップル/サムスン事件)を紹介し、各国判例との比較を行った。セッション前には知財高裁の法廷を見学するツアーも開催された。

(日弁連IBA東京大会PT幹事 小野寺良文)


 

60の手習い-It is never too late to learn
(継続研修に関するセッション)
10月22日 東京国際フォーラム

IBA Bar Issues Committeeによる本セッションには、ハンガリー、スペイン、米国、ベルギー、ブラジル、コロンビア、韓国、日本の弁護士がパネリストとして参加し、各国の弁護士会における継続研修について報告がなされ、その後、問題点や学ぶべき点等についてディスカッションを行った。日本では、義務的なものは非常に限定されており、米国では州の最高裁がプログラムを組んでいるため州によって内容が異なる等々、国ごとの特色が出ていて、非常に有益なディスカッションだった。最後に、IBAの継続研修に関するモデルルールについて協議し、これを決議した。

(日弁連IBA東京大会PT幹事 大貫裕仁)


 

法の支配シンポジウム
10月24日 東京国際フォーラム

本シンポジウムは、大会最終日に登録料不要で開放され、日本の国際法学会も共催団体に加わった。

寺田逸郎最高裁長官による、法の支配の重要性や日本での司法改革を報告する挨拶に続いて、バングラディシュで逮捕や訴追を受けながらも、拷問や超法規的処刑と闘ってきたカーン弁護士にIBAの人権賞が授与された。午前の部(表現の自由)では、政府高官を批判したことにより巨額の損害賠償を請求されて破産したシンガポールの弁護士(東南アジアでは、政府批判の言論を封じる手段として巨額の名誉毀損訴訟、引き続く破産申立てがしばしば用いられてきた)や、ジンバブエの圧政の中でジャーナリストや報道を守り続ける弁護士らの報告が相次いだ。また、午後の部(司法の独立)では、法の支配における司法権の重要性や、司法権の独立が宗教的、政治的に一般に受け入れられていない中東やアジアの状況が議論された。

日本のスピーカーとしては、午前の部で森雅子参議院議員が、午後の部で上川陽子法務大臣が報告した。日本の状況に対しては、他に会場発言において特定秘密保護法の問題点が報告され、政府情報へのアクセスの重要性を訴える発言があった。

(日弁連IBA東京大会PT副座長 東澤 靖)


 


平成25年度税制改正
遺産に係る基礎控除額引き下げなど重要な点が変更

平成25年度税制改正により、相続税法および租税特別措置法の一部が改正された。これに伴い、2015年1月1日以降、遺産に係る基礎控除額が引き下げられ、合わせて他の優遇措置が加わるなど、遺産相続において、相続税の申告が必要となる対象者の範囲がこれまでと大きく異なる。会員におかれては、今後の業務の参考にしていただきたい。

 

主な改正内容(相続税)

①遺産に係る基礎控除額の引き下げ②最高税率の引上げなど税率構造の変更③税額控除のうち、未成年者控除や障害者控除の控除額の引き上げ④小規模宅地等の特例について、特例の適用対象となる宅地等の面積等の変更。

 

主な改正内容(贈与税)

①相続時精算課税について、適用対象者の範囲の拡大など適用要件の変更②暦年課税について、最高税率の引き上げや税率の緩和など税率構造の変更。

 

事業承継税制(相続税・贈与税)

適用要件の緩和や手続の簡素化など制度の適用要件等の変更。

 

*詳細は以下の国税庁ホームページを参照ください。

■相続税・贈与税・事業承継税制関連情報

https://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/index.htm

■相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/aramashi/index.htm

*日弁連会員専用ページにも掲載しています(9月30日付けお知らせ)。

HOME≫お知らせ≫2014年≫相続税等の改正について

 

ひまわり

本年8月23日、「若手弁護士カンファレンス」を開催した。全国から登録5年以内の80人の若手会員が参加し、日弁連の執行部と直接意見を交換するという初めての試みである▼開催の背景としては、日弁連の弁護士会員のうち約3分の1を第61期以降の若手会員が占める一方、その会務離れや弁護士の急激な増加により、日弁連と若手会員との距離が一層拡がっているのではないかとの懸念がある▼当日は、日弁連の若手支援策等の説明を行った後、若手会員約10人に対して日弁連の副会長が1人ないし2人と若手弁護士サポートセンター委員1人で構成する9グループに分かれ、①指導援助・OJT・研修、②経済的負担・会費、③業務拡大・他士業との関係・各種交流、④会務、の各テーマについて意見を交換した。村越会長も各グループを巡回して、議論に参加した▼少人数グループでの意見交換という形が功を奏したのか、若手会員からは、気軽に相談できる仕組みの構築や、OJTに近い研修の充実への要望等、示唆に富む有意義で率直な意見が多く出され、定期的な開催を望む声も多かった▼日弁連としては、これらの意見を整理・分析し、できることから着手したいと考えており、このカンファレンスを来年2月にも開催する予定である。(T・Y)

 

院内集会
東京電力による早期の和解受諾を求めて~原発事故被害者の一刻も早い救済を~
10月22日 参議院議員会館

  • 東京電力の早期の和解案受諾を求める院内集会

原発事故被害者の損害賠償請求問題に関し、東京電力は、本年5月以降、浪江町および飯舘村蕨平地区の集団申立案件等において、原子力損害賠償紛争解決センター(原紛センター)の和解案を相次いで拒否している。
日弁連は、東京電力による早期の和解案受諾を求め、繰り返し会長声明を公表しているが、あらためて当事者の声を広め、被害の一刻も早い救済を実現するため、本集会を開催した。

 

東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の的場美友紀委員(東京)は、基調報告で、浪江町および飯舘村蕨平地区の集団申立案件等において、賠償の増額を認めた和解案の主要部分を東京電力が「原紛センターに和解仲介を申し立てていない被害者との公平性を欠く」等として拒否したことは、原紛センターの存在意義を揺るがしかねないと警鐘を鳴らした。

浪江町下津島地区の今野秀則氏は、「帰りたいが、若者は戻ってこないだろうし、不安が先に立つ。やるせない悲しさ、寂しさから毎日悩みは尽きず、晴れることがない」と切々と語った。

弁護団員として申立てに取り組んでいる濱野泰嘉会員(東京)は、「被害実態に即した慰謝料を請求している。被害者の生活状況を仲介委員・調査官が検討した結果の和解案であるにもかかわらず、東京電力は不合理な理由で拒否している。住民には高齢者も多い。早期に解決してほしい」と訴えた。

飯舘村蕨平地区の越川幸氏は「別の地域に移住したくても費用が高額で難しい」と先の見えない避難生活の不安を訴えた。

同村の原告団長の長谷川健一氏は、「飯舘村は日本一美しい村の一つとされていた。原発の恩恵など一切なく、村は放射能の被害だけを受けている。家族が分断された苦しみ、悲しみに加え、いまだに一切賠償が行われないことから、今や申立てを検討している住民が3分の2にも上っている」と怒りをあらわにし、和解案の早期受諾を訴えた。

飯館村蕨平地区の越川幸氏は「別の地域に移住したくても費用が高額で難しい」と先の見えない避難生活の不安を訴えた。

 

シンポジウム
死刑廃止について議論の共有を
11月15日 青山学院大学

  • 死刑廃止を考える日

日弁連は、2008年から毎年「死刑廃止を考える日」(2011年までは「死刑を考える日」)を開催し、死刑の問題点について考える機会としてきた。7回目となる今年は、青山学院大学大学院法務研究科の協賛を得て、「誤判・えん罪と死刑制度」をテーマにシンポジウムを開催し、約200人が参加した。

 

死刑制度の問題点を語る袴田巖氏

冒頭、ジュリア・ロングボトム駐日英国公使から、「EU・英国は死刑に反対している。日本政府が国民と率直に対話するよう働きかけ続けたい」とのスピーチがあった。

続いて、3月に再審開始および死刑・拘置の執行停止決定がなされた袴田巖氏と姉の秀子氏が登壇した。巖氏は「国家権力が命を奪ってはならない」と死刑の根幹的問題を指摘し、秀子氏は「巖は、死刑が確定し、(拘置所の)隣人の死刑執行についてショックを受けた様子で話したころから拘禁症の反応が出始めた」と死刑確定者が置かれている過酷な状況を赤裸々に語った。 

袴田事件弁護団事務局長の小川秀世会員(静岡県)は、「本件では、ねつ造された証拠を前提に死刑判決が下されてしまった。完璧な制度や人間は存在しない以上、取り返しがつかない死刑は廃止すべき」と袴田事件の教訓を強調した。

後半のパネルディスカッションでは、米国のイノセンス・プロジェクト(雪冤支援事業)で活動した経験を持つ笹倉香奈准教授(甲南大学法学部)が、「米国では死刑事件は特別であるとして、スーパー・デュー・プロセスが認められ、手厚い手続保障がなされている」と述べた。

野呂雅之氏(朝日新聞大阪社会部「災害専門記者」・前論説委員)は、「死刑の合憲性を問われた事件の裁判員は、死刑についての議論が必要であり、情報を知りたいと話していた。裁判員経験者と手を携えて議論してみては」と提案した。

また、菊田幸一会員(第二東京・明治大学名誉教授)が、「死刑を減らすために死刑と無期の間に仮釈放のない終身刑を置くのが現実的である」と述べたのに対し、笹倉准教授は、「運動論としてはあり得るが、終身刑自体の危険性を認識して適用基準や手続保障、処遇・恩赦の在り方を検討する必要がある」と指摘した。

パネリストも務めた小川会員は、「死刑が憲法に反するのは明らか。日弁連は立法論ではなく憲法論として議論すべき」と述べた。

最後に、死刑廃止検討委員会の小川原優之事務局長(第二東京)は、「死刑廃止論者にもさまざまな考え方があるが、広く社会で議論することが必要」と結んだ。

 

日弁連短信
「奇跡の村」への勧告

兼川次長

長野県南佐久郡川上村は、レタス生産量日本一、農家一軒あたりの平均収入が2500万円を超え、「奇跡の村」と呼ばれた。

レタス栽培の海外への技術移転でも有名で、外国人技能実習制度では中国やフィリピンから多くの技能実習生を受け入れてきた。

その川上村の中国人農業技能実習生に関する人権救済申立事件で、日弁連は川上村農林業振興事業協同組合理事長、法務大臣、厚労大臣に対して勧告を出した。技能実習生はほぼ最低賃金で村のレタス産業を支えていたが、厳しい生活環境下で長時間の労働を強いられていた。送出し機関ごとに決まった色の帽子の着用を求められ、本国の送出し機関から派遣された「班長」に監視されて移動の自由を奪われた上、賃金も自由に引き出せない状態にあった。勧告はその実態を基本的な人権の侵害と認定し、それを知りながら看過した協同組合には送出し機関に対する厳しい監理や被害回復への努力などを、行政には被害実態の調査や行政指導、技能実習制度の廃止を勧告した。

事件は投書が端緒となり、委員が川上村や中国にも行って帰国者も含め技能実習生から話を聞いた。関係諸機関へも意見照会し、2年かけて勧告書をまとめた。

レタスの収穫は朝暗いうちから始まる。農家の人たちも早朝から働いており、そもそも過酷な労働である。しかし、レタス栽培の労働の過酷さは共通でも、きっとごく普通の、会えばそれぞれに良い人だろう受け入れ農家の人たちが、送出し機関による技能実習生への横暴を見て見ぬふりをし、彼らを狭く不衛生な宿舎で生活させたりしていたことが信じられない。理事会では、人間の尊厳を踏みにじっているのではないかとの発言も出た。

日弁連は技能実習制度の廃止を主張し、国際人権(自由権)規約委員会も多くの問題点を指摘している。本件には、技能実習制度は仮装した単純労働者の受け入れではないかという制度の問題点が凝縮されている。東京オリンピックの建設ラッシュに向けて制度利用の検討も始まる。早急な見直しが必要だ。

しかし、それだけでなく、努力して人作りに取り組み、農業を産業として育て上げてきた村おこしの見本のような川上村で、21世紀になってもなぜこのような人権侵害が起こるのか。その闇を見つめることも必要だと思う。

(事務次長 兼川真紀)


 

市民学習会
通信の秘密と通信傍受法を考える
11月21日 弁護士会館

  • 通信の秘密と通信傍受法を考える市民学習会

9月18日の法制審議会で「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」が法務大臣に答申された。同答申は、通信傍受の対象犯罪の範囲を拡大し、傍受の手続について、特定装置を利用することで通信事業者等の立ち会いを不要にすることなどを提言している。このような動きを踏まえ、通信傍受についての学習会を開催し、約150人の弁護士・市民が参加した。

 

冒頭の講演で、公安警察について取材を重ねてきたジャーナリストの青木理氏は、「1985年頃に町田市のアパートでの神奈川県警による盗聴が発覚し大問題となって以来、警察は盗聴を法制化しようとして、現行法の法案が提出された。もっとも、当時はマスコミや世論の反対の声が高まり、最終的には極めて要件の厳しい現行法に修正され、現在に至る」とこれまでの経緯を振り返った。

第2部のパネルディスカッションで足立昌勝氏(関東学院大学名誉教授)は、「法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会では、盗聴の範囲拡大の方針が、最終的には委員の全員一致で決まってしまったために、今後は拡大を前提とした議論になりかねない」と懸念を示した。また、実際に起きた犯罪の捜査のみならず、探索的な盗聴を認める危険性を指摘した。

パネリストである刑事法制委員会新たな刑事手続対策部会の岩村智文部会長(横浜)は、「今回の法制審議会では、通信傍受法成立時に議論がなされた点を指摘すると、『まだそんな議論をしているのか、今は時代が違う』という反論が委員から出されるような状況だった」と述べた。

日弁連の会長声明(本年7月9日公表)では、従来の補充性要件に加えて、拡大対象犯罪については、組織性の要件が加わったが、人権侵害や制度濫用についての危惧を表明し、運用を注視するとしている。

青木氏は、「答申では、対象犯罪の範囲拡大のみならず、事後的なチェック機能が不十分な点も問題だ」と今後の法制化過程への注視を呼び掛けた。

 

シンポジウム
認知症高齢者が地域で暮らすために
~名古屋高裁判決を踏まえて~
10月31日弁護士会館

  • シンポジウム「認知症高齢者が地域で暮らすために~名古屋高裁判決を踏まえて~」
本シンポの趣旨

認知症で徘徊症状のあった高齢者が列車にはねられ死亡した事故について、名古屋高裁(2014年4月24日)は夫婦の協力扶助義務(民法第752条)を根拠に、判断能力のない認知症の夫に対する監督義務(民法第714条)を妻に負わせた。この判決は配偶者のみならず長男にも責任を認めた原審(名古屋地裁判決・2013年8月9日)とともに、司法関係者のみならず介護の現場に大きな波紋を投げ掛けた。

本シンポジウムでは、医療・福祉関係者や多数の市民とともに、この判決の内容と課題について検討した。

 

事案の特徴

冒頭、高齢者・障害者の権利に関する委員会の渡辺裕介委員(熊本県)は、責任無能力者の監督義務者に関する賠償責任の概要を説明し、前掲名古屋高裁および原審の事案や判決の内容に言及した。本件では過失認定につながりやすい事実として、出入口に設置されていたセンサーの電源が切られていたという事実があった。また、他の要素として、事故に遭った高齢者の財産(相続財産)が多額であったことや、被害者である原告が大手鉄道会社という特殊事情があったことも示された。その上で問題の本質は認知症高齢者の徘徊時に起きた事故被害を誰に負担させるべきかという点にあると指摘した。

 

判決が示した課題

上山泰教授(新潟大学法学部)は、当初この判決は鉄道会社対一私人という構図から、請求した鉄道会社を批判するものが多かったが、「被害者が鉄道会社ではなく一般人だったらどうなのか」と問題提起した。他方、結果の妥当性から評価する立場もあったが「加害者が資産家でなかったらどうなのか」とも指摘した。また、高裁判決は、配偶者の協力扶助義務から民法第714条の法定監督義務を認定しているが、家庭内の義務から対外的な責任を導くことはできないのではないかと疑問を呈した。

最後に、医師や福祉関係者も交えパネルディスカッションを行い、認知症高齢者や徘徊症状といっても、その状態や傾向は個々人で異なっているので、監督者だけに責任を負わせるのは酷である、社会全体で支える必要があるなどの指摘がなされた。

 

シンポジウム
子どもの権利条約20年(はたち)になって―子どもに寄り添い子どもの声に耳を傾けて―
11月8日弁護士会館

  • シンポジウム「子どもの権利条約20年(はたち)になって-子どもに寄り添い子どもの声に耳を傾けて-」の開催について(御案内)

日本が子どもの権利条約を批准して20周年を迎えたことを踏まえ、各分野における子どもの権利状況を総括するとともに、今後の課題を探り、併せて子どもの権利の一層の進展に向けて、子どもの権利基本法制定の必要性を考えるため、本シンポジウムを開催した。

 

「具体的に法律を動かしていく人が重要」と弁護士にエールを送る荒牧教授

冒頭、荒牧重人教授(山梨学院大学大学院法務研究科)から「子どもの権利基本法はなぜ必要か」をテーマとする基調報告があり、同法の必要性、位置付け、検討を要する項目等について示唆に富んだ指摘がなされた。また、「子どもの権利基本法ができるだけでは意味がなく、具体的にその法律を動かしていく人が重要」と弁護士にエールが送られた。

次に、坪井節子会員(東京/社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長)から「居場所のない子どもに子どものシェルターを」と題して特別報告がなされた。坪井会員は、「子どもシェルターは、命の危険にさらされた目の前の子どもたちをなんとかしたいという切実な必要性から生まれたもの。子どもに寄り添い子どもの声に耳を傾けることが、課題に直面した際の一番の解決策である」と語った。また、15歳で難民として来日し、現在20歳の青年から、来日後はシェルターを生活の本拠として夜間中学に通うなど努力を重ね、夢に向かって歩んでいるとの報告がなされると、会場は水を打ったように静まり返った。

続いて、少年司法・児童福祉・子どもオンブズパーソン・子どもの意見表明権(子どもの手続代理人)・いじめ予防授業の各分野から現状や取り組みに関する報告があった。

子どもの権利委員会人権救済小委員会の安田壽朗委員長(鳥取県)からは、子どもの権利委員会で検討中の子どもの権利基本法案および議論状況の紹介があり、近く案を取りまとめるとの報告があった。

(こどもの権利委員会幹事  吉田要介)


 

シンポジウム
ビッグデータ時代の消費者の個人情報保護
10月30日弁護士会館

  • シンポジウム「ビッグデータ時代の消費者の個人情報保護」

技術の進歩に伴い、大量・多様な情報を集積することが可能になり、「ビッグデータ」との用語をしばしば目にするようになった。このビッグデータ時代の到来により、ビジネスや社会の発展が期待される一方で、プライバシー侵害、消費者に与える危険なども懸念される。本シンポジウムでは、ビッグデータ時代における個人情報保護について、国内外の動きの報告と今後の在り方について議論した。

 

パネルディスカッションでは、国内外の個人情報保護に関する議論がなされた

冒頭、新保史生教授(慶應義塾大学総合政策学部)による基調報告がなされ、EU個人データ保護指令では、EU域外への個人データの移転が許容される条件が規定されているところ、日本はこの条件を充たさず、EU加盟国から日本へ個人データを移転することは原則としてできないことが指摘されたほか、消去権(忘れられる権利)を定めたEU個人データ保護規則案が欧州議会で採択されたことの報告があった。

次に、元消費者庁消費者制度課(併任・同庁企画課個人情報保護推進室)政策企画専門官の板倉陽一郎会員(第二東京)から、内閣官房に設置された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が発表した「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」について、3つのポイント(①本人の同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入、②基本的な制度の枠組みを補完する民間の自主的な取り組みの活用、③第三者機関の体制整備等による実効性のある制度執行の確保)を中心とした解説がなされた。

パネルディスカッションでは、まず、国外の個人情報保護法制に関する議論がなされ、板倉会員からは「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱どおりの制度が実現しても、まだEU個人データ保護規則の条件を充たさない」とし、日本における個人情報保護法制の継続的改正の必要性を訴えた。

次に、国内の個人情報保護に関する議論がなされ、情報問題対策委員会の坂本団委員長(大阪)からは、「民間のみならず公的機関も監視・監督する第三者機関が必要」との指摘がなされた。


 

院内学習会
特定秘密保護法の施行をゆるさない
11月18日衆議院第二議員会館

  • 「特定秘密保護法の施行をゆるさない!」院内学習会

特定秘密保護法の施行期日が12月10日に迫っている。日弁連は、これまで国民の知る権利やプライバシーの侵害など多くの問題を抱える同法の廃止を求めて活動を続けてきたが、今般あらためて同法の有する問題点を指摘し、廃止の声を広げるため、院内学習会を開催した。

 

冒頭、村越会長が「仮に施行されても、日弁連は秘密保護法の抱える問題点を明らかにし、あきらめることなく廃止に向けた運動を続けていく」と決意を表した。続いて、秘密保護法対策本部の江藤洋一本部長代行(第一東京)が、同法について、①秘密指定できる情報の範囲が広すぎ、恣意的な指定の恐れがあること、②特定秘密を指定する行政機関から人的・財政面で完全に独立した公正な監視機関がなく、秘密指定につきチェック機能が期待できないこと、③本年10月に閣議決定された同法の施行令および運用基準によれば、不適正な特定秘密の指定に関する内部通報に当たり、通報者は特定秘密を漏らさない形での通報を強いられ、これに反すれば過失漏えい罪で処罰されるなど、重い刑罰が課せられることなどを指摘した上で、まずは同法を廃止し、あらためて法律の必要性を含めた国民的議論を行う必要性を訴えた。

次いで、出席した市民団体等関係者から、それぞれの取り組みを踏まえた発言がなされた。続いて、出席した国会議員から、「現在の法律は、政府にとって不都合な事実を隠ぺいできる仕組みを容認するものにほかならない」、「秘密保護法は、その内容自体重大な問題をはらんでいる。これを十分な議論を尽くさぬまま強行採決した挙げ句、施行日当日に(衆議院解散により)衆議院議員が存在しないというのはあってはならない事態」、「これだけ多くの問題点を抱える秘密保護法は、国会議員の不在中に性急に施行するのではなく、少なくとも施行を先送りすべき」などの批判が相次ぎ、満場の出席者は一同うなずいていた。


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.95

IBA東京大会
若手法曹向けトレーニングセッション・日弁連主催レセプション

トレーニングセッションThe Fundamentals of International Legal Business Practice国際ビジネス法律実務の基礎
10月18日東京国際フォーラム

  • 国際セミナー「国際ビジネス法律実務の基礎 -The Fundamentals of International Legal Business Practice」

国際法曹協会(IBA)年次大会の開催に先立ち、IBAと日弁連が共催で若手弁護士、司法修習生、ロースクール生を主に対象としたトレーニングセッションを開催した。


 

 

トレーニングセッションには、予想を上回る大勢の若手弁護士らが参加した

このセッションは、毎年、IBA年次大会の開会前日に、IBAと大会開催地の弁護士会が共催するものであり、IBA に参加したことがない開催国の若手弁護士らに、世界で活躍する法律実務家から最先端の実務に関する講演を聴く機会を提供し、IBAの魅力に触れてもらうことを主な目的としている。対象は日本の若手弁護士に限らないが、日本の若手弁護士に国際業務の最先端で活躍する弁護士の姿に触れ、国際的に活躍するために必要なスキルやキャリアパスなどの知見を獲得してほしいとの観点から、日弁連は、以下に紹介する5つのセッションすべてについて、内容のプランニングを担当した。

最先端の国際業務に関するセッションは、3つ行われた。「Cross-border family law」と題したセッションでは家族法で近時問題となっている分野について、「Cross-border transactions with a focus on introduction of active market in the world」と題したセッションでは、国際取引の分野で近時重要な位置を占めているヨーロッパ、南米(ブラジル)、南アジア(インド)のトレンドについて、「A quick guide to cross-border disputes」と題したセッションでは、訴訟に加えて、日本の若手弁護士らにはなじみが薄い仲裁について、それぞれの分野で活躍する法律実務家から、豊富な実例を交えて紹介がなされた。

弁護士としてのキャリアアップ等に関しては、2つのセッションが行われた。 「Skills that international lawyers need」と題したセッションでは、文字どおり、国際的に活躍するために必要なスキルについて紹介がなされ、 「Career development in international legal practice」と題したパネルディスカッションでは、国際的に活躍しているパネリストらによって「国際業務とは何なのか」「なぜ国際的な業務に従事することが重要なのか」「国際業務における成功とは何か」といった具体的なテーマについて、それぞれの経験や見解が紹介された。

今回のトレーニングセッションには、日本から約120人という予想を上回る大勢の若手弁護士らが参加し、活発な議論がなされた。このトレーニングセッションをきっかけとして、少しでも多くの若手弁護士らが国際舞台で活躍してもらえれば幸いである。

(日弁連IBA東京大会PT幹事 平澤 真)


 

日弁連主催レセプション
10月20日弁護士会館

  • IBA東京大会・日弁連主催レセプション(JFBA Reception)

IBA年次大会2日目、各国法曹関係者のネットワークの場を広く提供し、交流を促進するとともに、東アジア初の年次大会となる東京大会のホスト国弁護士会として、日弁連のプレゼンスを高めるため、本レセプションを開催した。


 

 

徳島県および高円寺の「連」による阿波踊りに会場は大いに盛り上がった

-日弁連執行部による歓迎-

1階エントランスホールで村越会長ほか日弁連執行部が、レセプションのコンセプトである「日本の祭り」に合わせて法被を着用し、来場者を出迎えた。その際、会長メッセージを記載したパンフレットを参加者に手渡した。

 

-レセプション会場-

2階のレセプション会場では、寿司や日本酒等が振る舞われた。会場内は、世界中から集まった多数の法曹であふれ返り、国際交流の場面があちこちで見られた。

途中、レセプションコンセプト「日本の祭り」のアトラクションとして、徳島県および高円寺の「連」による阿波踊りが披露された。アトラクション後半には、踊り手が舞台から降りて、会場内を練り歩き、各国法曹の参加者の間近で踊りを披露した。踊り手に誘われ一緒に踊りながらそのまま舞台に上る参加者もおり、日本の伝統芸能を堪能した様子であった。

 

-パネル展示-

1階エントランスホールにおいて「日弁連の紹介」「災害復興支援と日弁連」「死刑問題と日弁連」「憲法問題と日弁連」の各テーマで、写真と英文説明によるパネル展示が行われ、各国の参加者は熱心に見入っていた。

 

-参加した各国法曹の声-

中国から来た女性弁護士は、「他の国際会議にもよく出席しているが、これほど秩序正しく準備が整ったものには出会ったことがない。阿波踊りもとても楽しかった。日本人は細やかな気配りができるとの評価を以前から聞いていたが、実際に会場に来てみて、それを非常に実感している」と感心した様子で語った。25年間ほぼ毎回IBA大会に参加しているというイギリス人男性弁護士は、「初めて東京に来たが素晴らしい街だ。このレセプションも本当に素晴らしい」と語った。

 

-ホストコミッティ主催レセプション-

日比谷松本楼において、ホストコミッティ主催レセプションが同時開催され、村越会長から、英語による歓迎のスピーチがなされた。

(広報室嘱託 倉本義之)


 

日弁連委員会めぐり 70

日弁連刑事弁護センター

今回の委員会めぐりは、190人を超える委員・幹事を擁し、刑事弁護環境の変化に対応すべく活動している日弁連刑事弁護センターです。活動内容や今後の課題について、幣原廣委員長(第二東京)と秋田真志事務局長(副委員長併任・大阪)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 白木麗弥)


 

今年3月に裁判員本部と組織を統合したとお聞きしました

幣原委員長(左)と秋田事務局長

(秋田) 設置期限を満了した裁判員本部との統合に伴って委員会の組織改編を行い、①制度改革②刑事弁護実務研究③研修④法廷技術⑤死刑弁護⑥責任能力⑦裁判員裁判⑧量刑データベースの8つの小委員会を設置しました。

 

最近の主な取り組みをご紹介ください

(秋田) 人権擁護委員会や取調べの可視化実現本部等、関連委員会から推薦された委員も交え、接見室内の写真撮影問題や無罪判決後の勾留問題等、多くの問題を検討しています。

(幣原) 裁判員本部から引き継いだ約2300件の裁判員裁判の判決の要旨を作成し、データベース化することを計画しています。

 

今後、可視化や司法取引の導入等、刑事弁護は著しく変化します

(幣原) 新しい環境の下での弁護実践を通じ、取調べに際しどのようなアドバイスをすべきか、司法取引においてどのような活動をすべきか等の新たな課題に関する検討を重ね、その結果を各種研修、出版、経験交流会などを通じて会員にフィードバックすることを検討しています。

 

研修についてはどのような取り組みをされていますか

(秋田) 刑事弁護の質の向上が喫緊の課題です。研修の義務化は難しいとしても、すべての会員が刑事弁護に取り組むような小規模会、担い手が限られる大規模会、中堅層の育成が課題の中規模会など、各会の実情に応じた研修の在り方について検討しています。

(幣原) 刑事弁護研修等に関するワーキンググループと連携してeラーニングのコンテンツを増やし、すべての会員がトップクラスの講師陣から法廷技術を学べる体制の構築を検討しています。

 

今後の課題は

(秋田) 委員会が大所帯となった今、それぞれの小委員会が検討した成果をどう全体に反映させるべきかについて考えています。

(幣原) 弁護を受ける権利は、弁護士の弁護能力があってこそ保障されます。多様な問題に取り組む委員会の成果を、いかに会員全体に戻していくかが重要だと考えています。

 

ブックセンターベストセラー
(2014年8月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名 出版社名
1 株式会社法 第5版 江頭憲治郎 著 有斐閣
2 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
3 要件事実入門 岡口基一 著 創耕舎
4 会社法コンメンタール9 ―機関(3)§396~§430 岩原紳作 編 商事法務
5 弁護士職務便覧 ―平成26年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
6 携帯実務六法 2014年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
7 別冊ジュリストNo.221 刑法判例百選2 各論[第7版] 山口 厚・佐伯仁志 編 有斐閣
弁護士の失敗学 冷や汗が成功への鍵 髙中正彦・市川 充・川畑大輔・岸本史子・的場美友紀・菅沼篤志・奥山隆之 著 ぎょうせい
9 家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務[第2版] 片岡 武・金井繁昌・草部康司・川畑晃一 著 日本加除出版
10 国会便覧 平成26年8月新版 135版 廣済堂出版

編集後記

40の手習いで登山にはまっている。日の出前に起き出し、目的地まで電車を乗り継ぐのだが、土日早朝の新宿駅は登山スタイルに身を固めた老若男女であふれている。知らなかった世界の一端を見る思いだ。何が楽しみかと言えば、何と言っても雄大な自然の中でいただく昼食の美味しさ。起伏に富む山道は、2歩、3歩先を常に想像しながら進まなければならない。夢中になるうちに日頃は頭を離れないさまざまな悩みを忘れ、何ともすっきりした気分になるのは意外な発見だった。
先日登った大菩薩嶺からは、御嶽山の噴煙が遠くに見えた。日弁連新聞でも災害復興に力を注ぐ会員の姿を取り上げることが少なくない。紅葉の真っ盛り、楽しいはずの行楽先で被害に遭われた方に思いをはせつつ、自然の前にはひれ伏すしかない人間の弱さを思い、自然災害による被害が少しでもないように、と願った。(M・K)