日弁連新聞 第489号

法制審民法(債権関係)部会
要綱仮案決定を受けて

 

8月26日の法制審議会民法(債権関係)部会で要綱仮案が決定された。ただし、約款については目次に明記されたものの、その内容は留保され継続審議となっている。来年2月に要綱化、通常国会への法案提出が予想される。

 

個人保証

極度額の定めのない個人の根保証は一般的に無効とする。また、事業のための貸金等債務の個人保証は、保証人が経営者(役員、主要株主、個人たる主債務者の配偶者・共同経営者)である場合を除き、公正証書による保証意思の確認を効力要件として義務付ける。

 

消滅時効

短期消滅時効制度を廃止し、権利を行使できる時(客観的起算点)から10年の時効期間に加え、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年という時効期間を設定する。

 

法定利率

改正時は3%とし3年ごとに見直す変動制とする。これに伴い中間利息控除も見直し、損害賠償請求権発生時の法定利率による。

 

債務不履行責任(損害賠償)

契約(債務の発生原因)および取引上の社会通念に照らした帰責事由が損害賠償の要件とされ、従来の過失責任主義とは異質なものとして整理する。

 

解除

債務者の帰責事由を要件としない。催告解除について軽微な債務不履行では解除を認めない。一方で、催告をしても契約目的達成の見込みがないことが明らかなときは、無催告の解除を認める。

 

危険負担

債権者主義を定める民法534条を削除。効果を反対債務の当然消滅構成から履行拒絶権構成に改める。

 

瑕疵担保

契約の内容に不適合な給付をした場合の契約責任として構成する。物の瑕疵についても代金減額請求権を新たに設ける。

 

債権者代位権・詐害行為取消権

訴訟を提起した債権者に、債務者に対する訴訟告知を義務付ける。また、詐害行為の成立要件について破産法との平仄を意識した具体的な規律を設ける。

 

債権譲渡

債権譲渡禁止特約の効力を制限し、特約があっても譲渡当事者間での債権移転効を奪えないと構成する。

 

相殺

差押えと相殺に関する無制限説を明文化し、さらにその拡張を図る。

 

要物性の見直し

使用貸借、寄託を諾成契約に改める。また、消費貸借については要物性の要件を緩和し、書面による合意での契約成立を認める。

(法制審議会民法(債権関係)部会幹事 高須順一)


 

第26回 司法シンポジウム
民事裁判と家庭裁判所の抱える課題と改革の道筋
9月20日弁護士会館

  • 第26回司法シンポジウム「市民にとって本当に身近で利用しやすい司法とは-民事裁判と家庭裁判所の現場から-」

民事裁判が利用しにくいとの市民の不満は未だ解消されず、家事事件の急増に家庭裁判所が対応できていないとの不満が会員や市民から噴出している。約800人の参加を得て開催した本シンポジウムでは、民事裁判と家庭裁判所が抱える課題の整理とそれを克服するための改革提言、さらにはこれを実現するための道筋について、議論が交わされた。

 

 

■第1部 民事裁判を利用しやすくするために■

800人もの参加者で会場は熱気につつまれた

村越会長の挨拶に引き続き開催した第1部の冒頭に、長期の審理期間や低額な損害賠償額、不十分な執行制度など、会員アンケートや各種統計等から浮き彫りになった民事裁判の課題が報告された。引き続き、これらの課題について、三屋裕子氏(元公益財団法人日本バレーボール協会理事)、元東京高裁部総括判事の藤村啓会員(東京)を迎え、今回の調査・分析に当たった運営委員会委員とともにパネルディスカッションを行った。この中で、司法アクセスの改善、裁判官の増員、名誉毀損等の事案における抑止的損害賠償制度の導入、財産開示制度の実効性強化などさまざまな改革提言がなされた。三屋氏からは、「弁護士の専門分野を明示してほしい」との要望が示され、藤村会員からは、現行制度の活用による課題克服について示唆があった。

 

■第2部 いま家庭裁判所に求められる役割と機能の充実■

調停利用者や会員等に対するアンケートから、人的物的施設の不足や行政等、他機関との連携が不十分であるといった家庭裁判所が抱える課題の報告がなされた。これらの課題に対しては、裁判官等の増員、夜間・休日調停の実施、調停委員の評価制度の導入など、多くの改革提言がなされた。また、オーストラリアの現地調査を踏まえ、調停前の親ガイダンス(子の利益を最優先に考える思考を学ぶ機会や情報の提供)の実施、多種多様な面会交流センターの創設などの提言があった。引き続き、元東京家裁所長代行の近藤ルミ子会員(第一東京)、二宮周平教授(立命館大学)、山口恵美子氏(公益社団法人家庭問題情報センター常務理事、元家裁調査官)、金澄道子会員(東京)を迎えてパネルディスカッションを行った。金澄会員は、「裁判官の増員など、結局は司法予算の問題」と指摘した。近藤会員からは、「裁判所でも調停委員に対する研修を実施し、スキルの向上に努めている」と報告された一方、山口氏からは、「調停委員の対人関係スキルをより向上させる必要がある」との意見が出された。また、二宮教授は、「親ガイダンスは不可欠」と強調した。明石市長の泉房穂会員(兵庫県)もコメンテーターとして登壇し、「弁護士会が面会交流センターを自ら開設するなど提言の実現に向けて動くべき」と述べた。

 

■第3部 改革提言を実現する道筋■

元最高裁判事の泉徳治会員(東京)、片山善博氏(慶應義塾大学法学部教授、元鳥取県知事)、井田香奈子氏(朝日新聞論説委員・司法担当)が登壇し、第1部・第2部の改革提言を実現する道筋を議論した。

司法予算増額に向け、井田氏は「利用者のニーズ調査結果を有権者の声として国会に届ける」、泉会員は「ビジュアルなパンフレットなどを作成して活用する」、片山氏は「国会議員は自治体の声には耳を傾けるので、自治体の実践例などをアピールする」とそれぞれ提案した。

 

村越会長が岩手・広島の被災現場を視察
復興施策について首長らと議論

村越進会長は、9月1日に岩手県内を、9月4日には広島県広島市で8月20日未明に発生した豪雨による土砂災害の被災現場をそれぞれ視察した。

 

枡田岩手弁護士会会長(左手前)、戸羽市長(左奥)らと面談する村越会長(右から3人目)

岩手の被災地を訪問

岩手では、県内の津波被害の復旧状況などを視察するとともに、いわて三陸ひまわり基金法律事務所(陸前高田市)および法テラス気仙を訪問した。

いわて三陸ひまわり基金法律事務所では、所長の在間文康会員から、市の委託で実施している仮設住宅での法律相談などの活動状況について説明を受けた。

また、陸前高田市では、戸羽太市長と懇談し、同市長から、震災後に法律相談の需要が高まったこと、仮設住宅での法律相談が被災者のニーズに沿ったものであることなどの説明を受け、復興事業用地確保のための法整備の必要性について意見交換した。

(事務次長 谷 英樹)


 

広島市の豪雨被災現場を視察

被災現場視察の様子(左から内田副会長、村越会長、舩木広島弁護士会会長)

広島では、広島弁護士会災害対策本部(本部長・舩木孝和会長)の案内で、同市安佐南区のボランティアセンターを視察し、同センターの運営状況、活動内容、被災者からの要望などの説明を受けた。

避難所となっている梅林小学校を訪問した際には、村越会長は「1週間ならなんとか我慢できる、でも2週間となると、とても疲れてきた」などの被災者の生の声に膝をついて熱心に耳を傾けた。

また、同区八木地域の被災現場を歩いて視察。土砂災害の凄惨さに視察メンバー一同が言葉を失った。

視察後、広島弁護士会館において、同会会員との意見交換会を行った。村越会長から激励と、日弁連としてもできる限りの支援を行うとの発言があった。

さらに、村越会長は、広島県庁で湯﨑英彦広島県知事と、広島市役所で松井一實広島市長と懇談し、避難所等の環境改善策、復興施策等について熱心に議論した。

(災害復興支援委員会委員長 中野明安)


 

司法試験に1810人が合格

9月9日、司法試験の合格発表があり、1810人が合格した。受験者は8015人(昨年から362人増)、合格率は22.6%。また、予備試験を経た最終合格者は163人だった。受験者数と合格者数の推移は別表のとおりである。

日弁連は、2012年3月に「合格者数をまず1500人にまで減員」し、その動向を検証するよう提言している。これを踏まえ、合格発表の当日に、来年以降の合格者を速やかに適正な数まで減少させることについて広く社会の理解を求める旨の会長談話を発表した。(2面に関連記事

 

司法試験合格率等の推移


H20(2008) H21(2009) H22(2010) H23(2011) H24(2012) H25(2013) H26(2014)
受験者数 6261 7392 8163 8765 8387 7653 8015
合格者数 2065 2043 2074 2063 2102 2049 1810
合格率
(対受験者数)
33.0% 27.6% 25.4% 23.5% 25.1% 26.8% 22.6%

 

第13回国選弁護シンポジウム
さらに一歩を!逮捕からの充実した弁護
9月12日名古屋市

  • 第13回国選弁護シンポジウム「さらに一歩を!逮捕からの充実した弁護」

法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の取りまとめを受け、被疑者国選弁護制度の全勾留事件への拡大が現実味を帯びてきた。逮捕段階の弁護活動への注目が高まる中、逮捕段階からの公的弁護制度の導入や、弁護の質に直結するテーマについて、活発な議論が交わされた。

 

冒頭、村越会長から、被疑者国選弁護の全勾留事件への拡大を来年の通常国会で実現させ、逮捕段階からの公的弁護制度の実現に向け一丸となって取り組んでいきたい、と意気込みが語られた。

 

量刑DBの利用

600人を超える参加者が集い、活発な議論を交わした

第1部では、日弁連量刑データベース(DB)が紹介され、最高裁量刑検索システムの問題点が指摘された。また、データを踏まえた量刑傾向が議論された。犯情で刑の大枠が決まり一般情状を調整要素とする司法研究(司法研修所編)について、城下裕二教授(北海道大学)と元裁判官の波床昌則会員(和歌山)から、犯情は上限を画する限度にとどまり、下限は画さないとする消極的責任主義が妥当であるとの指摘がなされた。

日弁連量刑DBを用いた分析も報告され、殺人既遂・殺人未遂・強盗致傷・現住建造物等放火の4つの罪については、執行猶予率が上昇しているとの報告がなされた。

 

面会時の写真撮影

第2部では、藏冨恒彦会員(愛知県)から、面会室でのカメラ等の使用に関する問題状況と日弁連の取り組みが紹介され、この問題をめぐる議論状況が報告された。また、写真撮影に関する「稲村・半田国賠」の原告である稲村蓉子会員(佐賀県)から、写真撮影後の刑務官とのやりとりと対応の詳細が報告された。

 

英国の公的弁護制度

第3部では、「逮捕段階の公的弁護制度を構想する~英国調査を踏まえて~」と題し、英国の制度が紹介された。英国では、被疑者が指名した法律事務所の弁護士が派遣され、その者が弁護人となる制度が採られている。資力要件のない法律扶助制度が存在し、弁護士がつく事件のうち、99%が法律扶助を利用している。弁護人が接見に来るまでは原則として取調べができない制度になっており、電話接見も認められている。

前田裕司会員(東京)は、「法制審で、捜査機関に、被疑者に対して弁護士会等を指定して弁護人選任ができる旨を告知する義務が定められることになった。告知の中身をどう充実させていくかが重要」と、今後の課題を指摘した。


 

第43回市民会議
刑事司法改革・法曹養成制度
改革の現状と課題について議論
9月2日弁護士会館

今回は、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の答申案を受けた今後の対応および法曹養成制度改革の現状と課題について議論した。なお、豊秀一副議長が退任、新たに井田香奈子氏(朝日新聞論説委員)が委員に就任し、副議長に選任された。

 

さらなる法改正につながる弁護実践を~刑事司法改革

冒頭、日弁連から、特別部会が取りまとめた答申案と会長声明の内容を説明した。そのうえで、今後の法案化作業への対応と同時に、弁護実践の充実が重要であり、新たな制度および実務運用に対する体制を整えるという日弁連の方針を説明した。

これに関し、古賀委員、井田委員は、答申案について、先送りされた論点も多く十分とは言えないとの率直な感想を示しつつも、一定事件につき全過程の録音・録画が実現する見込みとなったことは評価できるとし、日弁連に対し、さらなる法改正につながる前向きな取り組みへの期待を表した。

中川委員が、いわゆる司法取引について、オープンではない場で、誰しもが犯罪者として引き込まれる危険性があることを指摘したのに対し、日弁連は、引き込まれた者の弁護活動につき十分な対応態勢の構築に努める旨を述べた。

 

法曹養成制度改革の現状と課題

はじめに、日弁連から、法科大学院入学者の推移、司法試験・予備試験の受験状況および第66期司法修習生の登録状況等を説明した。

中川委員は、「新しい法曹像がいかにあるべきかが現在の議論には欠けている。国民が法律という社会的インフラを活用する橋渡しとなる専門家を作り出すという視点を日弁連が打ち出すべき」との意見を述べた。その他の委員も、弁護士の活動領域拡大に向けた日弁連の近時の取り組みを評価する一方、その成果を積極的にアピールすることで若者に法曹へのチャレンジを促すよう、日弁連に対するエールを送った。

 

市民会議委員(2014年9月25日現在)(50音順)
井田 香奈子(副議長・朝日新聞東京本社論説委員)
長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
北川正恭(議長・早稲田大学公共経営大学院教授)
清原慶子(三鷹市長)
古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
湯浅 誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)

 

平成26年司法試験
最終合格発表を受けて
ー日弁連の法曹養成の取組ー

日弁連は、市民に身近で使いやすい司法を実現するため、司法基盤の整備や司法過疎の解消等、司法アクセスの改善に取り組んできた。また、社会のニーズに対応するため、企業や自治体等の組織内や国際関係等、弁護士の活動領域の拡大に積極的に取り組んでいる。これらの実現には、質量ともに豊かな法曹の存在が不可欠である。

そこで、日弁連では法曹養成を最重点課題の1つとし、司法試験合格者数、法科大学院の定員削減、予備試験問題、法曹養成過程における経済的支援を一体として検討し、法曹養成制度そのものの改革に取り組んでいる。

司法試験合格者数については、法的サービスの需要拡大に対応して、新人弁護士に対するOJTを実施し、質の高い法曹を養成するという観点から、まずは1500人まで減少させて法曹人口の急激な増員ペースを緩和すべきであると提言している。今年の合格者数は、昨年より239人減少してはいるものの増員ペースの緩和は限定的であり、来年以降の合格者を速やかに適正な数まで減少させることが望ましい。

日弁連としては、今後も関係機関と協力し、社会の期待に応える法曹を養成するための制度改革に積極的に取り組んでいきたい。

(事務次長 吉岡 毅)

1面に関連記事


 

日弁連短信
消費者保護の規制を緩和する法改正の動きに対応して

戸田次長

最近、消費者の権利を保護する観点から設けられてきたさまざまな法規制を緩和する法改正が議論され、成立が目指されている。それぞれの法改正には、経済の活性化などの目的があるものの、一方で消費者を保護する観点からの検討も求められているため、日弁連では、消費者問題対策委員会などの関連委員会を中心に対応に努めている。

商品先物取引においては、消費者被害を防ぐため、顧客の要請によらない訪問や電話勧誘などの不招請勧誘が禁止されているが、これを一定の要件の下に緩和する商品先物取引法施行規則の改正案が政府から公表された。

商品先物取引では、長年、取引による深刻な被害が発生し、被害の解消が進まなかったことから、不招請勧誘の禁止規定が導入された経過があり、日弁連では、不招請勧誘の禁止の緩和によって、被害が再び増加する恐れがあるとして、前記の改正案に反対する意見を表明している。

また、食品表示の分野では、食品等の機能性表示についての規制を緩和する案が政府から公表されている。これまでは、栄養機能食品や特定保健用食品に限られていた機能性表示を、その他の食品についても、一定の要件の下に表示できるようにするというものである。安全性・機能性についての根拠に関する情報などを販売前に届け出るにとどまるので、安全性や品質などが確保されるかどうかが懸念されており、日弁連では、パブリックコメントで反対の意見を表明した。

さらに、カジノを含む統合型リゾートの設置を推進する法案が議論されている。統合型リゾートとは、カジノ施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設などの複合的な観光施設をいい、区域の観光および地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものとされている。

日弁連は、去る9月13日に、「カジノ解禁推進法案について考える」と題したシンポジウムを開催した。同シンポジウムにおいて、日本では、世界各国と比べてギャンブル依存症の発症率が高く、カジノの解禁によってギャンブル依存症や、ギャンブルによる多重債務者の増加が懸念されるとの報告がなされた。

経済の活性化は重要な政策目的ではあるが、一方で消費者の権利を保護するための規制も必要なものであり、日弁連でも、さらなる検討と対応が求められている。

(事務次長 戸田綾美)


 

シンポジウム
国際基準に反する秘密保護法
9月19日参議院議員会館

  • シンポジウム「秘密保護法と国民の知る権利―オープン・ガバメントを目指して―」

日弁連は、9月19日付けで、まずは特定秘密保護法を廃止し、制度の必要性や内容について、あらためて国民的な議論を行うべきであるとする意見書を取りまとめた。
今回は、5月に引き続き、元米国国家安全保障会議(NSC)スタッフでツワネ原則の策定にも関わったモートン・ハルペリン氏を再び招いてシンポジウムを開催し、約200人が参加した。

 

冒頭の講演において、ハルペリン氏は、日本政府に対し、オープン・ガバメント・パートナーシップ(OGP)への加入を強く要請した。

OGPは、透明で開かれた政府を目指し、各国政府と市民によって構成される国際的なネットワークであり、政府と市民が協力してワークプランを立て、その実行の進捗状況を点検する等の活動を行っており、米国、英国をはじめ64か国が参加している。

ここ数年、世界は知る権利を重視する立場から、いわゆる国家機密も含め、政府が持つ情報へのアクセス権を認めることを標準と考えるようになっており、ハルペリン氏は「日本は世界から孤立している」と述べた。

さらに、日本の秘密保護法は、慎重な議論を経ず、性急に成立するなど、世界の原則から逸脱していると指摘した。

続いて行われたパネルディスカッションでは、海渡雄一秘密保護法対策本部副本部長からのOGPに日本が参加することにより、秘密保護法の見直しが可能かという問いに対し、ハルペリン氏は、日本政府の参加後に政府の透明性を高めるためのワークプランを策定することになるが、その際に秘密保護法の見直しを含めて検討することができるのではないかと今後の展望を語った。

 

シンポジウム
質の高い通訳確保のために
法廷通訳の立法化を
9月6日弁護士会館

  • 法廷通訳シンポジウム「ただしく伝わっていますか?あなたの尋問~裁判員裁判時代の通訳人と弁護人の協働のために~」

刑事手続、特に公判中心主義が徹底してきた裁判員裁判においては、日本語を解さない被告人の権利保障のために適切な通訳が欠かせない。本シンポジウムは、テレビ会議による出席者も含め、約300人の参加者を得て、国内外の法廷通訳制度について意見交換し、よりよい法廷通訳の在り方を議論した。

 

会場からあふれるほど多くの参加者が熱心に耳を傾けた

冒頭、寺田有美子会員(大阪)が、昨年7月に公表した「法廷通訳についての立法提案に関する意見書」に関する基調報告を行った。同意見書では、通訳人の能力確保のための資格・名簿制度、継続的研修制度の創設のほか、現状では裁判所の裁量とされている報酬の規定化や誤訳防止のための複数選任の原則化などを提言した。その後に行ったアンケートでは、通訳人の26%が過去の通訳について、審理内容に影響すると思われる問題があったと回答し、研修や事前準備の必要性を挙げたという。

海外調査報告では、録音により通訳の正確性を担保しているという韓国の運用、資格制度が導入され、通訳試験に受かった者を登録し、司法や行政機関は、その登録者から依頼を行っているという英国の実例が紹介された。

パネルディスカッションでは、水野真木子教授(金城学院大学文学部)が、通訳人の語学力の欠如による初歩的なミスのほかにも、緊張状態が長時間続くことによる疲労からのミスや、ニュアンスの異なる言葉の選択が現場で問題になっていることを指摘した。一方、弁護士も誤訳を招かないため、尋問する際に時制や事実の前後関係を明確にすべきとのアドバイスがあった。

松島幸三会員(岡山)は、通訳人とのやり取りがうまくいかなかったために、被告人が諦めて罪を認めてしまった事例を紹介した。法廷通訳の経験を持つ丁海玉氏は「疲労によるミスの防止には、複数選任が有効だが、その場合、拘束時間に関係なく裁判所が報酬の半分しか支払わないことがある」として、複数選任における課題を提示した。岩瀬徹会員(第二東京・元東京高裁判事)は、「誤訳は避けては通れない問題だからこそ、通訳人の複数選任等、誤訳に対処するためのシステムが必要」として、質の高い通訳確保のための立法の必要性を訴えた。

 

IBA東京大会・連続セミナー第3回「国際仲裁と国際刑事」
IBA東京大会開催迫る!
9月4日 弁護士会館

  • 【IBA東京大会企画】連続セミナー第3回「国際仲裁と国際刑事」

IBA(国際法曹協会)年次大会の開催がいよいよ今月に迫っている。会員にIBA東京大会をより身近に感じ、存分に活用していただくため、大会で取り上げられるテーマについて解説する連続セミナーも最終回を迎えた。

 

国際仲裁

前IBA仲裁委員会副委員長の手塚裕之会員(第一東京)から、国際仲裁に関して、IBAの活動の紹介、特にIBA仲裁委員会の組織構成や活動実績等が紹介され、IBA東京大会での仲裁関係セッションの案内がなされた。

IBA仲裁委員会の活動実績としては、同委員会が策定したIBA証拠規則やコンフリクトガイドラインが、国際仲裁実務に一定の影響を及ぼしていることを指摘した上で、「IBA東京大会では、新コンフリクトガイドラインがお披露目となる予定であり、最新の知識が得られる絶好の機会」とアピールした。

 

国際刑事

日弁連IBA東京大会PT副座長の片山達会員(第二東京)から、外国公務員贈賄防止に関する解説とIBA東京大会でのセッションの案内がなされた。

片山会員は、日本が批准しているOECD(経済協力開発機構)外国公務員贈賄防止条約について、OECDが批准国の条約実施状況の審査をする中、「日本に関しては、不正競争防止法による摘発事例が3件しかないことが問題視されている」と指摘した。

その上で、片山会員は、「IBA東京大会では、各国の参加者が、外国公務員贈賄防止に関する自国の動きを報告し合うセッションがあり、情報交換ができる有益な機会」と、多くの会員の参加を訴えた。

同PT幹事の林千夏会員(東京)からは、IBA東京大会における刑事法分野のセッション、とりわけ風俗営業とドラッグが、他国では非犯罪化傾向にあることに触れた上で、性風俗と法規制に関するセッションも開催されることを紹介した。

魅力あるセッションが多数開催されるIBA東京大会に、ぜひ皆さまの参加をお願いしたい。

*IBA東京大会は、今月19日から24日まで開催されます。東京大会の詳細等は、IBAのホームページをご覧ください(http://www.ibanet.org/Conferences/Tokyo2014.aspx)。

 

シンポジウム
災害関連死を考える
教訓を活かすために
9月2日 弁護士会館

  • シンポジウム「災害関連死を考える」

東日本大震災による災害関連死は本年3月現在、3089人に達している。また、災害関連死と認定されると災害弔慰金が支給されるが、その認定審査の問題点も指摘されている。
本シンポジウムでは、医療・福祉・法律の各分野の専門家が、災害関連死に関する実情と課題について議論を交わした。

 

南相馬市の現況と復興について講演する桜井勝延南相馬市長

冒頭、桜井勝延南相馬市長が「南相馬市の現況と復興に向けて」と題する基調講演を行った。桜井市長は、「震災前に比べ人口が約1万4000人減少しているにもかかわらず、避難生活の長期化が要因で、要支援・要介護認定者が増加している」とし、仮設住宅での生活の過酷さを訴えた。次に、元南相馬市立総合病院医師の原澤慶太郎氏とNPO法人さぽーとセンターぴあ代表理事の青田由幸氏が、それぞれの取り組みについて基調報告を行った。

原澤氏は、南相馬市内の老人介護施設における高齢者の死亡率が、避難前に比べて2.7倍に増加したとの調査結果を紹介したほか、避難生活における死亡リスクの要因にも言及した。障がい者支援に取り組む青田氏は、避難できずに自宅に残された者の多くが高齢者や障がい者等であるとし、災害時要援護者支援充実の必要性を訴えた。

その後、原澤氏、青田氏に加え、元宮古ひまわり基金法律事務所長・前山田町災害弔慰金支給審査委員会副委員長の小口幸人会員(第二東京)が登壇し、災害弔慰金制度の問題点等について議論を交わした。

青田氏は、「お金欲しさと思われるのが嫌で災害弔慰金を申請しない人が多い」と指摘し、これを受け原澤氏は、「申請率を上げるには、医療・福祉・法律のワンストップサービスの存在が必要」と提言した。

小口会員は、認定が地域によりばらつきがあることなど災害関連死の認定審査に関する問題点を指摘し、「国は、災害関連死の案件を全国的に集計・分析し、公表すべきだ」と運用改善に向けた提言を行った。

 

シンポジウム
今こそ作ろう!
“使える消費者契約法”
8月27日 弁護士会館

  • シンポジウム「今こそ作ろう!“使える消費者契約法”-改正の動向と日弁連の提言-」

本年3月から消費者庁に「消費者契約法の運用状況に関する検討会」が設置され、8月には内閣総理大臣から内閣府消費者委員会に消費者契約法の見直しに関する諮問がなされた。こうした中、シンポジウム「今こそ作ろう!“使える消費者契約法”ー改正の動向と日弁連の提言ー」を開催し、消費者契約法の改正のあるべき方向性について議論した。

 

平成13年の施行以降、消費者契約法は相談現場や裁判手続における消費者の武器として活用されてきた。しかし、その一方で、使い勝手が悪い、法規範が少なく具体的な事案の解決が大幅に解釈に委ねられる等の問題点が指摘されている。

こうした現状を踏まえ、基調報告において山本健司消費者問題対策委員会副委員長(大阪)は本年7月に公表した「消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)」を紹介し、「『使える消費者契約法にする』という観点からの改正が必要」と述べた。

基調報告を受けて行われたパネルディスカッションにおいて、増田悦子氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会専務理事)からは、消費者契約法の適用範囲や不当勧誘行為規制に関する問題事例について報告があった。また、磯辺浩一氏(特定非営利活動法人消費者機構日本専務理事)からは、不当条項規制に関する問題事例について報告があった。

こうした問題事例について、平尾嘉晃消費者問題対策委員会委員(京都)からは、立法による解決が急務であるとの指摘がなされた。

最後に、総括コメントとして、沖野眞巳教授(東京大学大学院法学政治学研究科)から、現在、法制審議会で審議が行われている民法(債権法)改正で手当てされなかった部分は、消費者契約法の改正による保護を検討すべきとの指摘がなされた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.93

説明責任を果たし、企業の信頼と持続可能性の回復を
企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン

2010年7月、日弁連が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を作成してから4年が経過し、実務ではすでに定着しているとの評価がなされています。また、近時は、新たな動きも見られるようです。
今回は、弁護士業務改革委員会・企業の社会的責任と内部統制に関するプロジェクトチーム(PT)座長の齊藤誠会員(東京)にお話を伺いました。
(広報室嘱託 倉本義之)


 

 

「ぜひガイドライン全文をご一読いただきたい」と語る齊藤誠PT座長

―あらためて、ガイドライン策定の経緯について、お聞かせください

ある第三者委員会の調査を批判する新聞記事が掲載されたことがきっかけです。当時は、調査結果に首を傾げてしまうような第三者委員会も散見されました。

このままでは第三者委員会のみならず、その活動に関わる弁護士に対する社会の信用が低下してしまうとの危惧から、ガイドライン策定の動きが始まりました。

 

―ガイドラインでは、第三者委員会の目的をどのようなものとしているのですか

「すべてのステークホルダー(利害関係者)のために調査を実施し、その結果をステークホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復すること」(第1部 基本原則)を目的としています。

 

―すべてのステークホルダーのために存在するのですね

調査を依頼した企業の経営陣のためだけに存在するのではないということです。例えば、現在の経営陣に不利な事実も調査報告書に記載することをガイドラインは求めています。

 

―経営陣に不利な事実を記載することは、依頼企業の経営陣にとっては抵抗があるのでは

そうです。ガイドラインの存在意義はまさにここにあります。「日弁連が策定したガイドラインでそのように定めている」と説明すれば、経営陣も一応の理解は示すでしょうから。ガイドラインのはしがきで、「依頼企業等からの独立性を貫き断固たる姿勢をもって厳正な調査を実施するための『盾』として、本ガイドラインが活用されることが望まれる」としているのはこのことを指しています。

 

―ガイドラインの概要を教えてください

まず、第三者委員会の独立性・中立性を確保するための規定を置いています。例えば、顧問弁護士など企業の利害関係者は委員に就任できないとしていますし、調査報告書は提出前に事前に企業に開示しないこととしています。

また、不祥事の原因をしっかりと究明することが必要ですので、調査対象は不祥事の事実関係に加え、不祥事に至る経緯、動機、背景や企業風土等にも及びます。

さらに、調査の実効性を確保するため、第三者委員会は、受任に際し、企業に対して、資料等へのアクセスの保障や調査への優先的な協力を従業員に指示する業務命令をすることなどを求めるものとしています。

そのほか、調査報告書の開示の指針(開示先の範囲、開示時期等)に関して、調査が進んだ後ではなく、受任に際して取り決めることとしています。それほど分量があるものではないので、全文をぜひ一度ご覧いただければと思います。

また、弁護士業務改革委員会が発行した解説本(「『企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン』の解説」商事法務)もありますので、興味のある方はお手に取ってみてください。

*第三者委員会ガイドラインは、日弁連ホームページでご確認いただけます。
(HOME≫日弁連の活動≫会長声明・意見書等≫意見書等≫year≫2010年≫企業等不祥事におけるガイドライン

 

―ガイドライン策定後の実務での利用状況は

東京証券取引所が、第三者委員会はガイドラインに沿って運営されていることが望ましいとしていることもあり、多くの調査報告書がこのガイドラインに準拠することを明記しています。

しかし、ガイドラインに準拠するとしながら内容が伴っていない調査報告書が見受けられることから、2014年4月2日、ガイドライン策定に関与した弁護士が中心となり、「第三者委員会報告書格付け委員会」を立ち上げました。ただし、日弁連の委員会ではなく、あくまで会員の私的な活動です。

同委員会では、第三者委員会の調査報告書を格付けし、その結果を公表します。これにより、第三者委員会による調査と調査報告書の作成に規律をもたらし、ひいては第三者委員会の活動に対する社会やステークホルダーからの信頼性を高めることを狙っています。すでに、いくつか格付け結果を公表しています。同委員会のホームページをご覧ください。

 

日弁連委員会めぐり 68

消費者問題対策委員会

今回の委員会めぐりは、多数の委員・幹事を擁し、非常に広範な分野について、16もの部会・PTを設置して活動している消費者問題対策委員会です。野々山宏委員長(京都)と国府泰道前委員長(大阪)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)


 

消費者問題対策委員会設置のいきさつを教えてください

野々山委員長(左)と国府前委員長

(野々山) クレジット・サラ金による多重債務問題、豊田商事事件やネズミ講などの消費者被害が多発したことを受け、消費者被害の予防・救済、消費者保護のための諸課題に関する調査研究を行うための組織として、1985年9月に設置されました。この9月でちょうど30年目に入るということで、20周年のときに出版したキーワード式消費者法事典を改訂・出版する予定です。

 

委員会の活動の特徴は

(国府) とにかく幅広い分野を扱っているのが特徴です。消費者契約法、電子商取引・通信ネットワーク、金融サービス、割販法や特商法、多重債務、独禁法、PL法や欠陥住宅、さらには食品の安全など、分野ごとに部会を設置することで、幅広い問題に対応しています。その一方で、消費者行政部会や違法収益吐き出し部会、包括消費者法部会など、分野をまたいだ部会やPTを設置することで、部会での活動を委員会全体の成果に結び付ける工夫をしています。「消費者問題ニュース」の発行も重要な活動の1つで、ニュース・出版部会が担っています。

このように取り扱い分野が広いため、シンポジウムの開催数も毎年15回前後に及び、意見書も毎年20本前後公表し続けています。

 

最近特に力を入れている活動について教えてください

(野々山) 政府が進めているいわゆる「カジノ解禁推進法案」に関する活動があります。政府は、カジノに限らず経済の活性化を重視しており、規制緩和を推し進めようとしています。消費者保護も経済活性化の足かせだと思っているようですが、それは誤解です。健全な経済発展は、適正な消費者保護がなければ成り立ちません。逆風が吹いている時期だからこそ、国民生活を守るためにも、この委員会の活動は重要だと考えています。

 

若手会員へメッセージをお願いします

(国府) 消費者問題は、ネット被害や高齢者被害など、新たな問題がどんどん出てくる分野です。若手の弁護士が活躍しやすい分野ですので、若手会員の皆さんも、もっと積極的に取り組んでほしいと思います。

 

ブックセンターベストセラー
(2014年6月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名 出版社名
1 携帯実務六法 2014年度版 「携帯実務六法」 編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
2 事例で考える 民事事実認定 司法研修所 編 法曹会
3 詳説 後遺障害 ―等級認定と逸失利益算定の実務― 北河隆之・八島宏平・川谷良太郎 著 創耕舎
4 ライブ争点整理 林 道晴・太田秀哉 編 有斐閣
5 判例からみた 遺留分減殺請求の法務・税務・登記 永石一郎 著 中央経済社
6 新基本法コンメンタール 借地借家法 借地非訟事件手続に関する法改正に対応[別冊法学セミナーNo.230] 田山輝明・澤野順彦・野澤正充 編 日本評論社
実践 契約書チェックマニュアル[改訂2版]現代産業選書 飛翔法律事務所 (編) 経済産業調査会
8 絶望の裁判所[講談社現代新書] 瀬木 比呂志 著 講談社
9 初心者でもわかる! LawL ゆいの英文契約書入門 安保智勇 編著 第一法規出版
10 外国人事件ビギナーズ 大谷美紀子・山口元一・渡邉彰吾・指宿昭一+大阪恭子 著 現代人文社
クレジット・サラ金処理の手引 [5訂版補訂] 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編著 LABO
これで安心! 地域ユニオン(合同労組)への対処法 廣上精一・三上安雄・大山圭介・根本義尚 著 民事法研究会
破産管財の手引[増補版] 東京地裁破産実務研究所会 著 きんざい

編集後記

第13回国選弁護シンポジウムは、27年前の第1回シンポジウム開催地である名古屋で開かれました。
その間に、当番弁護士制度が始まり、国選の対象は被告人から被疑者へ拡大され、さらに全勾留事件に広がろうとしています。
その一方で、証拠保全等のために面会室内で写真撮影をすることは、拘置所等から妨害されており、弁護人等が各地で国賠訴訟を提起するなど対立しています。
外部交通の限界については議論もあるようですが、不当な接見妨害に、弁護人が萎縮するようなことがあれば、接見交通権は後退し、適正な弁護活動が行えなくなる恐れがあります。
先輩方が、当番弁護士制度を導入し、国の制度を変えてきたように、あるいは、一般的指定書を廃止させたように、我々は不断の努力を怠らず、さらに一歩を進めていかなければなりません。そんな歴史に根ざした想いを抱かせる、素晴らしいシンポジウムでした。(Y・O)