日弁連新聞 第487号

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会
答申案を取りまとめ

法制審新時代の刑事司法制度特別部会は、7月9日、第30回会議において、「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果(案)」(答申案)を全会一致で取りまとめた。答申案は、秋の法制審の総会を経て法務大臣に答申され、改正法案は、来年の通常国会に上程される予定だ。

 

答申案は、取調べの録音録画制度を裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件を対象として法制度化すること等を内容とする。

有識者委員5人および弁護士委員らが、6月30日に示された取りまとめ案に対し、対象を全事件とする方向性を明記するよう求めていたが、答申案においては、録音録画制度について見直し規定が置かれ、制度の対象外の事件についても積極的に録音録画を行い、見直しに当たっては、制度自体の運用状況のみならず検察等における実務上の運用、公判における供述の任意性・信用性の立証状況をも対象とするとされた。弁護士委員は、答申の理念を実現する覚悟とともに取りまとめ案を了承したいとした。

このほか、被疑者国選弁護制度の勾留全件への拡大、証拠開示制度の拡大、公判前整理手続請求権の新設、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明記等が決まった。また、通信傍受については対象犯罪が拡大し、捜査・公判協力型協議・合意制度等のいわゆる司法取引制度が導入されることとなった。

特別部会への対応については、6月の理事会で2日にわたって審議され、理事会では基本方針が決議された。弁護士委員は、この基本方針に沿って会議に臨み、3年にわたる審議を終えた。

日弁連は、取りまとめに当たり、全ての弁護士が新たな制度の下で、その理念に則った弁護実践を行うことを期待し、今後も冤罪を生まない刑事司法制度の構築を目指して全力を尽くすとの会長声明を発表した。

答申案は、可視化の対象犯罪が限定的で例外規定があること、通信傍受の拡大等の問題もある。また、今後は、答申案の法制化に当たっての対応、可視化が法制化されない部分や司法取引における弁護実践の在り方の検討なども重要となる。

(事務次長 兼川真紀)


*特別部会については日弁連速報(FAXニュース)343号参照。特別部会資料は会員専用ページ≫会務情報から、会長声明はトップページ≫会長声明・意見書等からご覧になれます。

 

集団的自衛権行使容認問題
閣議決定撤回と法改正阻止のために世論喚起を

日本に対する武力攻撃がないのに武力行使をすることを容認する7月1日の閣議決定に対し、日弁連は、同日、これに抗議し撤回を求める会長声明を発表した。7月17日には、日弁連正副会長および全52弁護士会の会長を先頭にパレードを行い、閣議決定撤回と法改正阻止を訴えた。

 

街頭宣伝とパレードを実施

パレードには多くの弁護士、市民が参加した

パレードには、約350人の弁護士と、戦争をさせない1000人委員会メンバーなど市民約150人が参加し、日比谷公園から旧銀座日航ホテル前を経て数寄屋橋先まで外堀通りを1時間弱練り歩いた。2台の街宣車によるアナウンスやシュプレヒコール、横断幕やのぼり旗で、閣議決定撤回、関連法改正反対、戦争参加反対、平和的生存権擁護を訴えた。日弁連では、パンフレットに加え、解説文入りのうちわやティッシュペーパーを制作し、全国で活用できるようにしている。パレード当日に有楽町で行った街頭宣伝では、これらの物を道行く人に配布してアピールした。

 

今後の課題と日弁連の取組予定

閣議決定後の世論調査によると、閣議決定への反対が半数を超え、内閣支持率が5割を切った。自衛隊法、武力攻撃事態法、国民保護法、NSC法、周辺事態法、PKO法などの改正法提案は、来年春の統一地方選挙以降とされている。閣議決定や法改正の問題点について、法律専門家として検討し、広く人々に分かりやすい形で情報提供して、世論を維持拡大することが今後の課題である。

8月27日には、弁護士会館クレオで、夏休み親子憲法セミナー「池上彰さんと一緒に考えよう そうだったのか! 憲法そして平和」を中学生向けに開催する。ザ・ニュースペーパーによる憲法コント「コミカル憲法くん」と、「LET‘S挑戦!憲法クイズ」、「池上さんちの家族会議」により、憲法を考える(定員500人・要事前申込)。

また、10月8日には日比谷野外音楽堂での集会およびパレードの実施も検討している。

さらに、憲法問題対策本部は、会内資料「集団的自衛権Q&A」を制作している(会員専用ページに掲載)。全80頁余で、国際法の基礎や問題とされている事例を含め54問について解説している。会内勉強会や市民との勉強会等で積極的に活用いただきたい。

(憲法問題対策本部事務局長 上柳敏郎)


 

第4回
日韓バーリーダーズ会議
7月11日・12日 沖縄県

本年度の日韓バーリーダーズ会議が沖縄県で開催された。同会議は、1987年から毎年行われてきた日韓両国の弁護士会間の交流会を前身とし、日韓のバーリーダーズが一堂に会する形態の会議に発展してから今年で4回目となる。日韓両国法曹の長期間にわたる安定した友好関係を象徴する国際会議であり、大韓弁護士協会から54人が来日し、昨年に引き続き、日韓合わせて総勢100名超が参加する大規模な会議となった。

 

日韓双方から活発な議論が交わされた

日韓両国法曹の互いの活動に対する関心は非常に高く、会議の冒頭になされた両会の会務報告の段階から、活発な質疑が飛び交った。

セッション1「家族法制度」では、子どもの手続代理人制度および国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)について議論され、ハーグ条約に関しては、実施法の条項数に違いがあるものの(日本は153条、韓国は17条)多くの課題が共通していることが確認された。

セッション2「環境問題と弁護士」では、日本側からは、アスベスト問題および湿地保全について、韓国側からは、四大河川再生事業および送電塔や原子力発電所をめぐる紛争事件について報告がなされた。

セッション3「弁護士の責任と依頼者保護」では、日本側からは、依頼者保護制度に関する現状と検討状況が、韓国側からは、法務法人(日本の弁護士法人に類似した法人)構成員の責任に関する議論状況が報告された。

いずれのセッションにおいても、日韓双方から最先端の有益な報告がなされるとともに活発な質疑応答が交わされ、密度が濃く実りのある会議であった。また、日韓双方で友好協定を結んでいる地方弁護士会同士が13組にも上るなど、歴代の日韓法曹が築き上げてきた良好な関係が再確認され、さらなる友好協力関係の発展につながる実に有意義な3日間であった。

(国際室嘱託 八木哲彦)


 

ひまわり

7月19日は「女性大臣の日」。1960年のこの日、第一次池田勇人内閣が発足し、中山マサ衆議院議員が厚生大臣として入閣した。日本初の女性大臣の誕生だ。60年代後半は男女平等が社会問題として盛んに取り上げられ、男女雇用機会均等法の制定への大きな潮流となるなど、女性の社会進出が注目を浴びた時代であった▼時は2014年。政府は、2010年に閣議決定した「第三次男女共同参画基本計画」に基づき、2020年までにあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が30%になることを目標に掲げ、日弁連にも政府目標の達成に向け、具体的な中間目標を設定して取り組むよう要請している▼日弁連の実情はどうか。2007年には推進本部を設け、昨年策定した第二次基本計画を踏まえ、政府目標をも視野に入れた5年間の取組の最中である。しかし、女性会員の割合は全会員の17%余り、法科大学院生に占める女性の割合もいまだ3割弱にとどまる▼そんな中、今年度の日弁連執行部は副会長13人中3人、弁護士事務次長は5人中過半数の3人を女性が占め、各担当分野で活躍している。広報室員としてその姿を間近で見ていると、今後日弁連での男女共同参画の意識はますます高まるだろうと確信するこの頃である。(M・K)

 

会員向け勉強会
弁護士業務に忍び寄る新たなリスク
~マネー・ローンダリングに巻き込まれないための過去の事例の研究
7月25日弁護士会館

  • 会員向け勉強会「弁護士業務に忍び寄る新たなリスク~マネー・ローンダリングに巻き込まれないための過去の事例の研究」

日弁連では、「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程」および同規則を2013年3月1日から施行し、会員に対して、依頼者の本人特定事項の確認等を義務付けているが、規程等に関する会員からの質問が多数寄せられている。
そこで、会員がマネー・ローンダリングに巻き込まれることがないよう、会員向け勉強会を開催し、規程等を解説するとともに、具体的事例に即した検討を行った。

 

規程等の内容を解説

冒頭、日弁連国際刑事立法対策委員会委員の森徹会員(東京)から、法律事務に関連して、金員や有価証券その他の資産の管理行為がなされる場合などに、本人特定事項の確認が必要となることや弁護士報酬の前受け・裁判所への予納金として金員を受け取ったときなどは、本人確認の除外事由となることなど規程等の内容が解説された。

 

事例に即して具体的に検討

金融活動作業部会(FATF:マネー・ローンダリング等からグローバル金融システムを保護するための施策を策定・推進する独立の政府間機関)は、2013年6月、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に対する法律専門家の脆弱性について」と題する報告書を公開した。同報告書では、世界28か国において過去5年間に法律家がマネー・ローンダリング等に関与した123件の事例が報告されている。

この報告書に基づき、同委員会委員の大橋宏一郎会員(第二東京)が、報告書に掲げられた事例の検討を行った。大橋会員は、法的サービスを提供することなく弁護士の依頼者用口座を使用させた事例や金融犯罪に関与した公職者が会社を介して外国で高額物件を購入した事例などを紹介し、それぞれの事例について、「依頼者が法律業務を行うことを求めることなく報酬を支払う用意がある」、「依頼者が公的な地位にあるが、その特徴から考えて普通でない私的ビジネスも行っている」といったマネー・ローンダリングが疑われる特徴を挙げ、会員が注意すべきポイントを指摘した。

 

法制審議会民法(債権関係)部会
要綱仮案に向けた審議状況

法制審民法(債権関係)部会では、8月に改正に関する要綱仮案を部会決定すべく審議が進められているが、実務上注目される点に関する7月22日現在の案は、左記のとおりである。
要綱仮案の部会決定後、来年の法制審の総会での承認を経て改正法案が提出される見込みである。

 

個人保証

個人の根保証には、貸金等債務に限定せずに、極度額規制を及ぼす(元本確定事由の規定の適用範囲については検討中)。公正証書によって保証意思を確認しなければ、事業のための貸金等債務の個人保証は無効とする。ただし、経営者(役員、主要株主、主債務者の共同経営者と事業に従事する配偶者)については、公証人による保証意思の確認を不要とする。個人保証人の責任制限規定の創設は見送る。

 

消滅時効

短期消滅時効制度は廃止し、権利を行使できる時(客観的起算点)から10年の時効期間に加え、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年の時効期間を設定する。生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、客観的起算点からの時効期間を20年とする特則を設ける。

 

法定利率

市中の金利水準の動向をある程度反映した変動性による法定利率(当初は3%として3年ごとに見直し)に改め、中間利息控除についても、損害賠償請求権発生時の法定利率を用いる。

 

解除

債務不履行時に契約当事者を契約関係から解放する制度と理解し、債務者の帰責事由を要件とせず、軽微な債務不履行は催告解除も認めない。

 

危険負担

反対債務が当然消滅するとの規律を改め、反対債務の履行を拒み得ると構成。

 

瑕疵担保

契約の内容に不適合な給付をした場合の契約責任として構成。

 

約款規制

約款(定型条項)が契約の内容となるための要件、不意打ち条項や不当条項の規制、約款の変更の要件を明文化することを検討中。

 

暴利行為

暴利行為を無効とする判例法理の明文化を検討中。

 

債権譲渡の対抗要件

債権譲渡登記に一元化などの新たな規律は見送る。

(法制審議会民法(債権関係)部会幹事 深山雅也)


 

日弁連短信
高度で専門的な法的能力と豊かな人間性の基礎を育む法曹養成制度の構築を

春名事務総長

 

日弁連は、2012年3月15日に「法曹人口政策に関する提言」を、同年7月13日に「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」をそれぞれ公表した。

この2つの提言の中にある①司法試験合格者をまず1500人にまで減員②法科大学院の定員・入学者数の大幅削減③予備試験の制度趣旨を踏まえた運用④法曹養成課程における経済的支援という4つの課題は一体として検討されなければならない。この方針に基づいて日弁連執行部は対外的な働き掛けを行ってきた。

自民党からは、「力強い司法を築く」「体質を強化すべく」「司法試験合格者数は1500人程度を目指す」と提言があり、公明党からは「プロセスとしての法曹養成制度の立て直し」「まずは1800人程度」「法曹養成課程の経済的支援」の提案があった。また、政府の法曹養成制度検討会議も3000人の閣議決定を「現実性を欠く」として撤回し、顧問会議でもこれ以上の合格者数拡大回避で意見が一致した。有力法科大学院6校からは予備試験について提言があった。日弁連は法科大学院協会とも対話を重ねている。文科省も法科大学院の統廃合と教育力の向上に取り組んでいる。

本年度司法試験合格者数が何人になるかは重要な問題である。しかし、露骨な数の議論は社会的には受け入れられない。このことは政党への働き掛けの際に多くの議員から指摘されたことである。

数を減らすだけでは司法の縮小傾向を再び生み出すことにつながる。司法制度改革の理念を実現するにふさわしい高度で専門的な法的能力と豊かな人間性の基礎を育む法曹養成制度を構築し、法曹としての出発点を質量共に充実させねばならない。

(事務総長 春名一典)


 

国連自由権規約委員会
第6回日本政府報告書審査総括所見を公表
秘密保護法、ヘイトスピーチにも言及

国連の自由権規約委員会は、7月24日、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対して、7月15日、16日に行われた審査を踏まえ、総括所見を発表した。日弁連は、委員会と日本政府の間で建設的で有益な対話が実現されるよう、同委員会へのレポート提出や、6月18日には、国会議員や関連省庁、NGO団体等から多数の出席者を得て院内学習会を開催したほか、審査に代表団を派遣し、NGOの立場からスピーチを行う等の活動を行った。

 

総括所見において委員会は、2008年の審査から今回までに、過去の多くの勧告が実行されていないことは遺憾であるとした。

積極的側面として、婚外子差別規定を改めた国籍法と民法の改正、障害者の権利条約の批准、男女共同参画基本計画と男女平等基本計画等が評価されている。

条約上の権利侵害の回復のための制度的な措置として、個人通報制度について定めた第一選択議定書の批准(6項)と、パリ原則に適合する独立した国内人権機関の設立(7項)を検討するよう再度勧告した。

個別的課題として、19項目にわたり勧告した。死刑廃止の検討と改善(13項)、いわゆる従軍慰安婦に関する立法的・行政的措置の検討(14項)、外国人技能実習制度の見直し(16項)、代用監獄制度の廃止ないし改善および取調べに関する立法措置(18項)については、勧告と同時に1年以内のフォローアップ項目に指定した。

今回新たに、特定秘密保護法(23項)について秘密指定の対象となる情報が曖昧かつ広汎であることや罰則による萎縮効果に懸念を表明したほか、福島原子力災害の問題(24項)、ヘイトスピーチ(12項)、ムスリムに対する警察職員の広範な監視活動(20項)などを取り上げた。

このほか、ジェンダーの平等等(8、9、10項)、性的思考に基づく差別(11項)、人身取引(15項)、精神病院への非自発的入院(17項)、難民問題(19項)、新興宗教の強制改宗問題(21項)、公共の福祉概念による基本的人権の制限(22項)、子どもへの体罰(25項)、先住民の権利(26項)について具体的に勧告した。

 

第57回人権擁護大会シンポジウム第1分科会プレシンポジウム
福島事故後の原発訴訟における司法判断のあり方
大飯原発判決をもとに
7月4日弁護士会館

  • 第57回人権擁護大会シンポジウム第1分科会プレシンポジウム「福島事故後の原発訴訟における司法判断のあり方-大飯原発判決をもとに- 」

本年5月21日、福井地裁は関西電力に対し、大飯原発3号機および4号機の原子炉の運転を差し止める旨の判決を言い渡した。同判決は今後の司法判断に影響を与えることが予想される。そこで、10月2日に開催する人権擁護大会シンポジウムに先立ち、本プレシンポジウムを開催し、福島原発事故後の原発訴訟の審理の在り方について議論した。

 

安全基準と危惧感説について講演する古川会員

冒頭、第57回人権擁護大会シンポジウム第1分科会実行委員会事務局次長の中野宏典会員(山梨県)、同事務局長代行の笠原一浩会員(福井)、同委員の中村多美子会員(大分県)より基調報告がなされた。中野会員は、これまでの司法判断に関し、「原発訴訟のリーディングケースである伊方最高裁判決で立証責任の転換がなされたものの、その後の訴訟では、被告行政庁の主張・立証が安易に認められてしまっていた」とした。笠原会員は、大飯原発判決に関して、「判決で『人格権が極めて広汎に奪われるという事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべき』とした点は、『深刻な災害が万が一にも起こらないよう』と判示した伊方最高裁判決の趣旨を的確に理解したもの」と評価した。中村会員は、一定の蓋然性以下の危険性(残余リスク)は甘受されなければならないとしたドイツの司法判断を紹介した上で、「ドイツでは、福島原発事故後、この司法判断のような考え方は終焉したとの議論が多い」と海外調査の報告をした。

その後、古川元晴会員(東京)が講演を行い、刑事上の理論である危惧感説について、「民事、行政等の分野にも通用する法理論である」とした上で、「危惧感説に依った安全基準の再構築が不可欠である」とした。

最後に、同分科会実行委員会副委員長の岩淵正明会員(金沢)が講演を行い、原発差止訴訟のあるべき新たな判断枠組みについて、「立証命題を従来の具体的危険性から具体的危険の可能性(危険の発生が否定できない)として再構築する必要がある」としたほか、証明度の軽減等の提言を行った。


 

シンポジウム
司法におけるジェンダー・バイアス
性暴力被害の実態と刑事裁判の在り方
6月21日 弁護士会館

  • 司法におけるジェンダー・バイアス~性暴力被害の実態と刑事裁判の在り方~

性暴力被害を受けた女性に対し、司法関係者がジェンダー・バイアス(性に基づく差別的な評価や扱い)に基づく対応をすることは、二次被害を与え司法に対する市民の信頼を損なうことにつながりかねない。
本シンポジウムでは、性暴力被害の実態に詳しい専門家からの報告を踏まえ、性暴力事件の捜査・刑事裁判の在り方について検討した。

 

俗説と現実のギャップ

吉田容子会員(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)は、基調報告の中で、性暴力被害に関する俗説(いわゆる「強姦神話」)と実態とのギャップを指摘した。例えば、実態調査によれば、被害者の選定理由として「挑発的服装」と答えたのは8%にとどまる一方、「おとなしそうに見えた」が4分の1を上回る。「強姦は女性側の挑発的な服装や行動が誘因となる」という俗説とのギャップの一例だ。同じく基調報告を行った宮地尚子教授(一橋大学大学院社会学研究科)は、「突発的な攻撃に対して、一般的には逃げるか戦うかが自然な反応と考えられているが、動物でも人間でも、びっくりするとまず身が固まったりすくんだりするもの」として、性暴力を受けた女性被害者の行動における思い込みについて語った。

 

思い込みが司法をゆがめる

このような思い込みは正しい事実認定を阻むものとなり得る。後半のパネルディスカッションで、角田由紀子会員(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)は、痴漢行為が争われた小田急電鉄事件で「被害者がその気になれば」嘘を簡単につけるかのように裁判官が述べているのは被害の実態について正しい認識が不足するためと指摘した。牧野雅子氏(京都大学アジア研究教育ユニット研究員)も、性犯罪の動機を安易に「性欲」と決めつけ、なぜ性「暴力」と呼ばれるかに目を向けずに司法手続が完結することの問題を指摘した。宮村啓太会員(第二東京)は、刑事弁護の視点から、性犯罪の被害の実態を弁護人が正確に理解することが必要であり、加害者の更生にも資すると述べた。


 

任期付公務員登用セミナー
7月18日 弁護士会

  • 『任期付公務員登用セミナー』開催の御案内

近年、弁護士を職員として採用する地方自治体が増加しているが、応募は必ずしも多くはない。そこで、弁護士のキャリアの1つである自治体勤務弁護士をより深く知ってもらうため、地方自治体の職員として活躍している会員等にその活動内容等を紹介していただくとともに、任期付公務員の募集を行っている地方自治体の首長に、弁護士採用の狙いを説明していただいた。

 

任期付公務員の活動紹介

元東京都町田市総務部法制課法務担当課長の秋山一弘会員(第二東京)のコーディネートの下、千葉県銚子市総務市民部総務課法務専門官である湯浅恭吉会員(東京)、元会員で現東京都多摩市総務部副参事である船崎まみ氏、岩手県山田町用地課法務専門監である永田毅浩会員(岩手)から講演がなされた。

湯浅会員は、「自治体が提示した枠の中だけの活動で満足することなく、枠を超えた新たな役割を提案できることが理想」と述べ、船崎氏は、「行政に対する不当要求者との折衝に関して、弁護士業務で培った交渉のノウハウを職員に伝授したところ、非常に感謝された」と語った。被災自治体に勤務する永田会員は、「職員と一緒に悩みながらチームとして復興事業を進めていることにやりがいを感じている」と述べた。

 

地方自治体のプレゼンテーション

宮崎県小林市の肥後正弘市長がパワーポイントを使い、プレゼンテーションを行った。肥後市長は、豊かな自然など小林市の魅力を紹介した上で、「行政の法的課題への対応、職員の法務能力の向上、法令遵守体制の確立等のため、小林市に弁護士の力が是非とも必要であり、皆様の応募をお待ちしております」と熱く語った。

 

*現在、任期付公務員に関心をお持ちの会員を対象に、希望する業務内容や勤務条件等についてのアンケートを実施しています。会員専用ページ≫求人・求職情報≫任期付公務員等のご案内から、キャリア・マガジンにご登録の上ご回答ください。

 

第25回夏期消費者セミナー
美容医療と消費者被害
―被害の背景と救済の方策を考える―
7月12日愛知県弁護士会

  • 第25回日本弁護士連合会 夏期消費者セミナー「美容医療と消費者被害―被害の背景と救済の方策を考える―」

美容医療に関するトラブルは、近年増加しており、施術後の効果、施術後の不調(合併症)のような医療的な問題のほか、不当に高額な金額、強引な勧誘などの消費者問題や、広告における不当表示など、論点も多岐にわたる。
本セミナーでは、これらのトラブルを引き起こす美容医療に特有な背景や実情について、美容外科の医師からの報告を踏まえて議論した(消費者問題ニュース161号にも報告記事を掲載予定)。

 

基調講演では、西山真一郎氏(医師・公益社団法人日本美容医療協会常任理事)から、美容医療、特に美容外科が患者の悩みを解消することを目指すものであり、悩みを増やすのであれば存在意義がないとの指摘がなされた。その上で、現在問題となっている包茎手術、脱毛等を例に、同協会がホームページ上で問題のある美容医療について広報活動を行っていることや、厚労省との間で美容医療と広告の問題で協議していることが紹介された。

また、手嶋豊教授(神戸大学大学院法学研究科)から、美容医療をめぐる法的課題について、患者の生命・健康に対する当該医療行為の必要性が大きくなく、依拠すべき医学準則を立てにくいという美容医療の特性を踏まえて、医療技術上の過誤における過失(義務違反)の特定が困難である反面、説明義務において説明すべき範囲が拡大・加重されること等について述べられた。

パネルディスカッションでは、井上大輔氏(厚生労働省医政局総務課薬事情報専門官)と田邊利奈氏(中日新聞記者)を交えて、美容医療を受けるきっかけとしてホームページも含めた広告が重要な役割を果たしていることや、厚労省が医療機関のホームページによる広告を原則として規制していない理由が、ホームページを広告として規制することで、患者にとって重要な医療情報を医療機関が提供することも規制するおそれがあるためであること、美容医療について取り組むときに、学会誌などで美容医療の特集を組んでいるときがあるのでそれを見ると標準的術式が分かるのではないかといった具体的な被害回復のための方策などが議論された。

(消費者問題対策委員会副委員長 岡田 崇)


 

ACLA/CCBEとの三極会議
6月22日-23日 中国・青島

日弁連、中華全国律師協会(ACLA)および欧州弁護士会評議会(CCBE)による経験交流の場として2005年から行われている三極会議が開催され、日弁連からは村越進会長、田中浩三副会長ほか2人が参加した。

 

参加者による熱心な議論が行われた

活動報告では、ACLAから弁護士ゼロ県の減少(2013年の1年間で174県から30県まで減少)や、約6000万円の国家予算を投じて実施された国際業務に関する研修について、CCBEから本年12月10日に予定されている第1回欧州法律家の日(法の支配と弁護士の役割を再認識する日)について紹介された。

「ネット社会における弁護士倫理・行動規範」のセッションでは、ACLAから、弁護士がネット上で受任事件に関し不適切な意見を述べたり、一般から意見や行動を募ったりすることは、裁判所の判断に影響を与え、司法の独立・公正、社会の安定を害するおそれがあるとして、自律規範に規制を設ける方向で検討中との報告があった。日弁連からは、秘密保持義務違反や職務基本規程上の廉潔・品位保持義務違反に該当する場合に限り規制されていることを説明した。CCBEからは、政府による電子機器を用いた大規模な情報収集により依頼者が弁護士との相談内容を秘密にする権利が害されている現状や、法執行機関への信頼の回復のため秘匿特権を尊重するようEU諸機関に求めた声明が紹介された。その他、懲戒処分の公開の有無や弁護士評価の方法等、市民が弁護士を選ぶ際に参考となるべき情報についても各会の状況が紹介された。また、ACLAおよびCCBEより、今後の取り組みの一案として研修交流の実施が提案された。

晩餐会では、白酒による乾杯(文字通り杯を干す)が繰り返し行われ、来年の日本での再会を約して2日間の日程を終えた。

(国際室嘱託 山神麻子)


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.91

弁護士による出張授業
弁護士をもっと身近に
新潟県私立北越高等学校

 

現在、日弁連では、各地の弁護士会の状況を踏まえて、弁護士学校派遣システムの在り方を検討するため、新潟県弁護士会、滋賀弁護士会および富山県弁護士会と共同で、試験的にパイロット事業を実施しています。
今回は、新潟県私立北越高校で行われた村田有生会員(新潟県弁護士会学校へ行こう委員会委員)による出張授業を取材しました。
(広報室嘱託 倉本義之)


 

今回の出張授業の目的

授業前、企画を担当した教師に、2年生約400人全員が参加した今回の出張授業の目的について尋ねたところ、「生徒に弁護士の仕事がどのようなものかを理解してもらい、将来の選択肢の幅を広げることのほか、特にスポーツコースの生徒に、高校時代、部活動に打ち込み、その後弁護士になった(村田会員の)経験を知ってもらうことにある」と語った。

 

村田会員による出張授業

自らの経験を語る村田会員
高校時代・進路選択

高校時代野球部に所属していた村田会員が、早朝5時からの朝練に始まり、夜は11時まで練習に明け暮れる生活の中、授業に集中したことで成績を維持した経験から、「とにかく授業に集中することが大事」と強調すると、生徒は皆真剣に聞き入り、メモを取っていた。

次に、進路選択について、「興味のある分野を発見し、それがどこで学べるかを調べることが大事」とし、周りに流されずに自分自身に向き合い考えることが重要であると説いた。

 

弁護士になるまで

大学入学後、村田会員は、法学部に進学したという理由で、友人らから法律問題の相談をされるようになったという。「これがきっかけで、法律を学ぶ面白さに目覚め、法律を使って人の役に立ちたいと思うようになった」と弁護士を志した理由を明かした。

その後、法科大学院への進学、司法試験、1年間の司法修習を経ての二回試験等、弁護士になるまでの過程の説明を詳細にしたところ、生徒はその大変さに驚いた様子であった。

 

弁護士の仕事

次に、民事事件、刑事事件、少年事件、行政事件への関与をはじめとして、弁護士がさまざまな場面で活動していることを説明した。なぜ悪いことをした人を擁護する必要があるのか、という生徒からの刑事弁護に関する率直な疑問に対しては、「万が一にも誤って無実の人を処罰することがあってはならない。そのために弁護士が無実を主張する人を弁護することが必要となる」などと語った。


 

生徒へメッセージ
生徒たちは村田会員の授業に熱心に聞き入っていた

最後に、村田会員は、「皆さんにあって、私にないものは『可能性』。若いころはいろいろな可能性がある。しかし、そのためには努力を惜しんではいけない。勉強にしても、部活動にしてもなんでも全力で取り組むこと。中途半端にやっていいことはない。全力でやれば得られるものもある」と生徒に向けて熱いメッセージを送り、生徒は熱心に聞き入っていた。

 

生徒の感想

授業を受けた生徒に対するアンケートでは、部活動に全力で取り組みながらも授業に集中して成績を維持した点について、「自分はこれくらいしかできないと決めつけてはいけないと思った」などの感想があった。また、弁護士の仕事に関しては、「テレビドラマやニュースでしか見聞きしたことがない職業で、どのような仕事をしているかよく知らなかった。今回詳しく知ることができ良い経験になった」、「自分は前々から加害者の弁護をなぜするのかと思っていたが、今日その理由が分かった」などの感想が寄せられた。

 

出張授業を終えて

法曹を目指す前は教員志望だったという村田会員は、出張授業について、「生徒に分かりやすい授業となるよう、構成・内容を練り上げて、実際に授業をするという一連の流れは、普段の業務では体験できないもの」と語り、「出張授業を通じて、弁護士という存在をもっと身近に感じてもらうことは、弁護士にとっても、生徒にとっても意味があることなので、多くの会員に積極的に関与してもらいたい」と会員に向けてメッセージを送った。


 

日弁連委員会めぐり 66

弁護士学校派遣制度検討ワーキンググループ

今回の委員会めぐりは弁護士学校派遣制度検討WGです。今月号のジャフバプレスで取り上げた派遣授業の実施等の取り組みについて、金子武嗣座長(大阪)、池田桂子事務局長(愛知県)にお話を伺いました。

(広報室嘱託:白木麗弥)

三方良しの弁護士派遣

金子座長(左)と池田事務局長

本WGは2012年11月に発足し、各弁護士会で行われている法教育、消費者教育等の活動をさらに広げ、全国の学校に弁護士を派遣し、今年度末には法に関する全般的な出張授業等を行う制度の方策を提言することを目指して活動している。発足来、試行的に三弁護士会でパイロット事業を行い、昨年度は高校を中心に派遣授業を行ってきたが、今では学校側の要望に応じて中学校にも活動範囲を広げている。パイロット事業実施会の一つである富山県では、今年度67校への派遣を予定しているそうだ。講師の派遣がさぞ難しいのではとお聞きしたところ、「富山県では多くの会員が講師派遣のための研修に参加したのです」と金子座長。派遣授業は生徒からも好評で、答えのない問いをみんなで考える貴重な機会として先生からも大変喜ばれているようである。

「学校派遣は派遣された弁護士自身にもよい効果があるようです。また、子どもたちが弁護士を身近に知る機会につながります」と、意外な二次効果を池田事務局長が教えてくれた。

生徒にとっては、生身の弁護士に会い、「大変そうだけどかっこいい」、「意外と話しやすい」ととらえ方が変わることが多く、弁護士自身にも職務へのモチベーションアップにつながっているようなのだ。まさに三方良し。

 

学校へ行こう!

授業のテーマは進路選択、消費者教育や憲法問題など複数の選択肢から学校側が選択する。今は憲法問題がタイムリーで希望が多いそうだ。教材については、人権擁護委員会、市民のための法教育委員会、子どもの権利委員会等の各委員会から派遣された委員間で、作成のノウハウを共有している。テーマに関する解説だけでなく、生徒からは弁護士の仕事について尋ねられるので、派遣された弁護士が弁護士全体の「広告塔」の役割を担うことになる。「弁護士が学校に行けば生徒が変わる。先生が変わる。学校が変わる。社会が変わる。だからこそ、学校に行こう!」金子座長と池田事務局長は熱いメッセージを届けてくれた。皆さんも一度は学校に足を運んでみてはいかがだろうか。


 

ブックセンターベストセラー
(2014年4月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 ジュリスト臨時増刊 No.1466 平成25年度重要判例解説 - 有斐閣
2 無罪請負人 ―刑事弁護とは何か?[角川oneテーマ21 D-18] 弘中 惇一郎 著 角川書店
3 インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル 中澤佑一 著 中央経済社
4 クレジット・サラ金処理の手引 [5訂版補訂] 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編著 LABO
5 実践 契約書チェックマニュアル[改訂2版]現代産業選書 飛翔法律事務所 (編)著 経済産業調査会
6 絶望の裁判所[講談社現代新書] 瀬木 比呂志 著 講談社
平成25年改正 知的財産権法文集 平成26年4月1日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
8 解決のための 交通事故チェックリスト 宮尾一郎 著 かもがわ出版
9 破産・民事再生の実務[第3版]破産編 東京地裁破産再生実務研究会 編著 きんざい
10 超実践 債権保全・回収バイブル ―基本のマインドと緊急時のアクション 北島敬之・淵邊善彦 著 レクシスネクシス・ジャパン

編集後記

本号では掲載には至らなかったが、6月6日に行われた弁護士会照会制度全国審査担当者連絡協議会を取材した。
協議会では回答拒否事例の分析や各会における対応等が報告された。23条照会は、会員であれば誰でも利用する制度であるが、回答が得られないこともままある。そのような状況を改善し、制度を適正に運用するために各地でさまざまなご苦労をされていることをあらためて知った。
ところで、預金差押え時の支店の特定は、多くの弁護士が抱えている悩みの一つである。大阪弁護士会では、一定の制限はあっても新たに大手都市銀行との全店照会が可能となり、預金のある支店名や預金残高等の回答を受けられるようになったとのことである。粘り強い協議の成果だと思う。全国の他の弁護士会や他の金融機関への拡大に期待したい。(Y・O)