日弁連新聞 第486号

第65回定期総会
「宣言・決議の件」など13議案を可決
5月30日 仙台市

第65回定期総会を開催し、東日本大震災の被災地の復旧・復興に今後も歩みを止めず取り組むことについての宣言、および昨今の政府の動きを受け、昨年度に引き続き集団的自衛権行使容認に反対する決議を採択した。また、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会での議論状況について特別報告を行った。
なお、来年の第66回定期総会は東京都で開催される。

 

決算報告承認・予算議決

いずれの議案も賛成多数で可決された

2013年度の一般会計決算は、収入55億4962万円および前年度からの繰越金20億5387万円に対し、48億8252万円を支出し、次年度への繰越金は27億2098万円となった。

2014年度の一般会計予算は、事業活動収入56億1213万円に対し、事業活動支出55億1497万円、予備費8000万円等を予定し、単年度では116万円の黒字予算となっている。いずれも、賛成多数で承認・議決された。

 

「東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者の基本的人権を回復し、脱原発の実現を目指す宣言」を採択

東日本大震災・福島第一原発事故からの復旧・復興が基本的人権を回復するための「人間の復興」であること、その主体が被災者・原発事故被害者であることを改めて銘記し、特に次の問題に取り組む決意を宣言するもの。①災害弔慰金等の支給における震災関連死の認定に関する改善提案、②復興事業用地の円滑かつ適正な取得のための提言、③復興まちづくりへの住民意思の適正な反映確保、④被災ローン減免制度の運用改善、⑤福島第一原発事故被害の完全かつ速やかな賠償、⑥原子力推進政策の抜本的な見直し、原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求めること。

 

「重ねて集団的自衛権の行使容認に反対し、立憲主義の意義を確認する決議」を採択

昨今、政府は、安倍首相の私的懇談会である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告を受け、これまでの憲法解釈を変更する閣議決定を行おうとしている。本決議は、このような憲法の基本原理に関わる変更を国民の意思を直接問う手続を経ることなく内閣の判断で行うことは、立憲主義および徹底した恒久平和主義に反するとしてとして強く反対するもの。


 

総合法律支援
有識者検討会が報告書を提出

3月18日に第1回会議が開催された法務大臣の私的諮問機関「充実した総合法律支援を実施するための方策についての有識者検討会」は、6回の会議を経て、6月11日に報告書を取りまとめた。

 

報告書の主な内容は以下のとおりである。

一、民事法律扶助業務における①高齢者・障害者、②大規模災害の被災者、③ADR利用者に対する法的支援について

①について、資力を問わない無料法律相談を実施できる範囲を通常の利用者より拡大する方向での検討が必要であり、代理援助・書類作成援助の対象については、現在対象外である生活環境等の調整に係る法的支援も含むべき、②について、今後の大規模災害に備え、資力を問わない無料法律相談を含む法的支援を法律に予め定め、被災者に迅速に法的支援が出来る仕組みの構築が必要、③について、仲裁型ADRを扶助の対象とすることは、そのニーズが高まっているとまでは言えないため見送る。

二、DV・ストーカー等により生命・身体等の重大な法益が侵害され、その後も継続し、より深刻な被害に進展するような案件の被害者に対して、資力を問わない無料法律相談および一定の場面における給付制の代理援助制度が必要である。

三、法テラスが実施する受託業務については、他の独立行政法人との比較として厳格に過ぎるきらいがあり、その要件を緩和すべきである。

四、常勤弁護士については、公益的かつ組織的なセーフティネットとしての役割があり、一般の弁護士等と協働することを期待する。そして、常勤弁護士が十全に機能するために、その業務活動の有用性および役割等を関係機関の共通認識とし、また、その任期等について問題があることを認識し、検討することが必要である。

日弁連としては、今後、以上の取りまとめを受けた立法作業への対応が必要になると思われる。

(日本司法支援センター対応室嘱託 中澤康介)


 

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会
執行部基本方針の理事会承認と特別部会の議論状況

6月理事会で、特別部会の取りまとめにあたっての執行部の基本方針が承認された。その後、6月23日および30日に特別部会が開催され、取りまとめに向けた議論が行われている。

 

6月17・18日の理事会に執行部が提出した基本方針案は、①全事件全過程の可視化を目指し、通信傍受の安易な拡大に反対する等の姿勢で特別部会の審議に臨むこと②日弁連の方針が取りまとめ案に最大限反映されるよう努力を尽くすこと③特別部会の採決においては執行部の判断により態度表明をすること④今後の改革への取組継続―を内容とするもの。

これに対し、理事から、最終取りまとめに対しては個別採決を求め、一括採決となった場合には最終取りまとめ案全体に反対すべきとの修正案が提出されたが、審議の結果、理事修正案は否決され、執行部提案が賛成多数で可決された。

6月23日に開催された特別部会では、取調べの全過程の録音録画を義務付けるのは、裁判員裁判対象事件および検察独自捜査事件とする法務省事務当局試案が提示された。

同日の部会には、日弁連推薦の宮崎委員・小坂井幹事が連名で、対象事件を全事件とし警察については段階的実施とする甲案、対象事件を法定合議事件とし刑事訴訟規則198条の4をベースとした努力義務等の制度化を内容とする乙案を提示し、議論が行われた。

6月30日の特別部会では、法務省事務当局から最終取りまとめの案が提示された。取調べの録音録画の対象事件については、日弁連推薦委員の提案のうち特に乙案の採否について議論されたが、捜査機関側委員および研究者委員の一部から、乙案に対して批判的な意見が相次いで主張された。

日弁連推薦委員および有識者委員からは、努力義務規定と、将来的な全事件の可視化の方向性を示す観点での制度化を求める意見が相次いだ。

部会長は、事務当局に対し、これらの議論を踏まえて必要な箇所を修正することを指示し、次回7月9日の特別部会で議論した上で、可能であれば次回に最終取りまとめを行いたいとの意向を示した。

(事務次長 兼川真紀)


*理事会審議については日弁連速報(FAXニュース)340号、特別部会は同341号、342号参照。

特別部会資料は会員専用ページ〉会務情報からご覧になれます。

 

若手弁護士と日弁連執行部との意見交換会
「若手弁護士カンファレンス(8/23)」参加受付中

日弁連の会員数は、現在、35,000人を超え、このうち約9,500人が登録5年未満の若手の方々です。そこで、日弁連執行部が、若手会員の方々から会務活動や日弁連に対する意見などを直接お伺いする機会として、下記のとおりカンファレンスを開催することとしました。忌憚のない意見交換の場となるよう、ぜひ全国の若手会員の方々のご参加をお待ちしています。

 

日時:8月23日(土)午後1時~午後5時

場所:弁護士会館2階講堂「クレオ」および17階会議室

参加対象:現行62期以降の弁護士会員(定員80人)

内容:第1部 全体会
第2部 グループ別懇談会
第3部 懇親会(午後5時15分頃~)

申込締切:8月8日(金)

※申込方法等の詳細は会員専用ホームページをご覧ください。

お問合せ先:日弁連業務部業務第一課
TEL 03-3580-9332

 

ひまわり

思い立って3年前、大学院に行った。今や学内では、連絡も資料の配付もメールだ。講義の方法論も進化し、グループワークが充実している。確率と統計は必須アイテムだ。こんな授業が当たり前の若い期の人たちに弁護士会の研修は物足りないのではないか▼学問も進歩していた。経済学は世代交代で、今は誰もがマンキューの教科書を使う。「法と経済学」は法学よりは経済学寄りの学問で、法律実務家としてはそう何でも需要供給曲線で考えられてもと思いながらも、予算と税制による政策誘導の出発点は市場分析=立法事実だということを思い知らされもした▼ADRも制度として研究されており、その知見は実務に取り入れられるべきだと思った。取引先の違法とビジネスが受ける関係は、直接の因果関係が見えなくても統計的な相関があれば訴訟で使えるかもと夢想した▼多くの公務員が国内留学してきていたが、彼らが学問の進歩を仕事に生かそうと努力する姿は清々しかった。正直言って成績は悪かったが刺激的な日々だった▼組織とも国際化とも無縁にひとりでこつこつ仕事をしていると見えなくなるものもある。世の中は変わっているのになかなか自分は更新されないことも問題だ。時には自分を疑いつつ、大きな視野でものを考えたい。(M・K)

 

“English for Lawyers 会話編”配信始まる!!

日弁連とテンプル大学が共同制作したeラーニング連続講座、「English for Lawyers 会話編」(全4回)の配信が総合研修サイトにおいて始まった。

 

本連続講座は、英語による渉外案件の取扱いや、国際会議への参加経験が少ない会員にとって、渉外実務の取扱い・国際会議参加の第一歩となることを狙いとしており、国際会議への参加、外国人弁護士からの情報収集、外国人依頼者に対する法律相談、在日・在外企業クライアントとの電話会議等、想定されるシチュエーションごとに典型的な会話例を取り上げている。

各講座は3つのダイアローグ(対話)から構成され、それぞれ、日本人弁護士と外国人弁護士(またはクライアント)間の会話が英語字幕付きで流れ、ダイアローグの前後には、重要な英語フレーズ、使い方のポイントが解説される。解説後、再び同じダイアローグが字幕なしで流れるため、各自の理解度をチェックすることができる。

テーマとして家族法、労働法、販売店契約等、多くの会員になじみのある分野を設定しており、受任の際の会話、コンフリクトチェックや報酬基準について説明する際の会話など、法律実務に必須と思われる会話例をふんだんに紹介している。会話はネイティブスピーカーの自然な速度でなされており、英語上級者にも有用な講座となっている。また、ダイアローグの日本語訳がダウンロード可能で、補助教材と併せて利用することにより、英語初級者にも十分対応できる内容となっている。本連続講座を利用して、国際業務への扉を開けよう。

(国際室嘱託 竹内千春)


 

第42回市民会議
憲法問題と再審事件の現状と課題について議論
5月20日 弁護士会館

今回は、集団的自衛権の行使容認問題および再審事件に対する日弁連の取組について議論した。

 

集団的自衛権の行使容認に関する憲法解釈の変更について

冒頭、憲法問題対策本部の伊藤真副本部長(東京)が、昨年度に引き続き今年度もこの問題に関する決議案を定期総会で採択予定であることなど日弁連の取組状況と、これらの活動が、法律家団体として憲法の価値をいかに守っていくか、即ち現在の憲法に適合する形で国の政治が行われるべきであるとの考えに力点を置いて行われるものであることを説明した。

これに関し、湯浅委員からは、「集団的自衛権に関する問題は、賛成派・反対派の立場を超えた議論の場を設定すること自体が難しい。日弁連にはこのような場を設け、市民が自ら問題点を考えるための素材を提供してほしい」との期待が示された。中川委員からは、「日弁連の意見には安全保障に対する政策論の検討が不足しているように思う。解釈の変更が許されないという理由が『憲法上許されない』というだけでは説得力に欠け、市民に受け入れられにくいのではないか」との問題提起がされたのに対し、清原委員からは、「強制加入団体である弁護士会が、法律家団体として、不変・不倒の価値であるべき立憲主義の観点から論点をまとめたということには意義がある」との意見が述べられた。

 

日弁連の再審支援事件の成果と現状について

はじめに、人権擁護委員会第一部会の泉澤章部会長(東京)が、再審事件への支援は普遍的な人権擁護活動として弁護士会に課せられた最大の使命であるとの基本的な認識に立ったうえで、日弁連における再審支援の取組の歴史と成果等について説明した。

これに対し、委員からは、「捜査機関がどのような証拠を保有するかを弁護人が知り得ないというのは驚き。再審請求段階で被告人の無罪に結びつく決定的な証拠の存在が判明することも大きな問題だ」との感想が相次ぎ、日弁連の取組に対するエールが送られた。

 

市民会議委員(2014年5月20日現在)

  • 長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
  • 北川正恭(議長・早稲田大学公共経営大学院教授)
  • 清原慶子(三鷹市長)
  • 古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
  • ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  • 中川英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
  • 松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
  • 湯浅 誠(社会活動家、法政大学現代福祉学部教授)
  • 豊 秀一(副議長・朝日新聞東京本社社会部次長)
    (以上、50音順)

シンポジウム
生殖医療技術に関する法制化を考える
6月9日 日比谷図書文化館

  • 生殖医療シンポジウム~生殖医療技術に関する法制化を考える~

日弁連は、これまで生殖医療技術、とりわけ第三者の関わる生殖医療技術に対する法規制の在り方について提言を行ってきたが、現在、自民党内PTを中心に、生殖医療技術に関する法制化の具体的な動きが見られる。本シンポジウムではAID(非配偶者間人工授精)で出生した当事者を交え、子の出自を知る権利の保障を中心に活発な議論を行い、あるべき法制について検討した。

 

基調講演を行った医師の加藤英明氏は、骨髄バンクの登録を契機に自分がAIDにより出生したことを知った。両親の不妊治療の担当医に遺伝上の父について直接尋ねてみたところ、「僕が直接会って確かめたから大丈夫。健康上も問題ない」としか説明を受けられなかったという。加藤氏によれば、これまで、両親は子に対してAIDにより生まれたことを告知しない方がよいとされてきた。そのため、子がAIDにより生まれたことを知るのは、例えば離婚や病気という家族の危機に瀕した時など想定外の機会が多いとのことだ。

後半はパネルディスカッションを行った。加藤氏は、「子は、AIDで生まれることに同意していない。だからこそ生まれた後にそのことを納得できるだけの説明が必要」と告知の重要性を説いた。同じくAIDで生まれた石塚幸子氏(第三者の関わる生殖医療技術を考える会)は、「現状では子も親もAIDについて相談できる場所がない」と問題点を語った。

自民党案では、子の出自を知る権利の保障や遺伝上の父の情報管理について定めがない。さらに、代理出産の一部容認、胚移植容認など、さまざまな不妊治療を受けたい者の視点を中心に置き、抑制的な姿勢に欠けるものとなっている。人権擁護委員会生殖医療法に関するPTの平原興座長(埼玉)は、「生殖医療について十分な議論が国民間でなされていない。拙速な法制化を避けるべき」として、国民の間での議論の重要性を指摘した。

 

日弁連短信
「事務次長」って?

大貫次長

 

日弁連には、事務総長の下、5人の弁護士事務次長と1人の事務局事務次長がいる。会長や事務総長については、一般的にどのようなことをやっているかイメージできると思うが、事務次長となると「?」だと思われる。事務次長の仕事って?

日弁連の事務局職制第2条(事務次長の職務)に「事務次長は、各種委員会、調査室、広報室、国際室等の事務の連絡、調整及び事務局の監督を掌り、事務総長の指示を受けて対外的事務を処理する」との規定がある。あらためて読むと、なるほどよくまとまっている。説明としては、これで十分ではあるが、それでは記事にならないので、以下少々具体的に。ちなみに、毎月の理事会対応や毎週の正副会長会、総次長会議、その他執行部の定例会議は除く。

まずは、委員会関係。各事務次長が担当する委員会の数が多いのと他のイベントの予定も盛りだくさんなので、なかなか担当委員会にフルで出席することは困難である。よって、執行部からなんらかのお願いがあるときに少しだけ出席して「○○についてお願いします」とか「△△については再検討願います」等お願いすることが多い。お願いレベルの強弱によっては、委員会の先生方から「次長はわれわれの壁になるのか!」とお叱りを受けることもある。

次に、各室関係。各室は執行部直属の組織で嘱託弁護士で構成されている。日弁連が抱えている諸々の課題について執行部を直接支える重要な組織である。室毎に担当事務次長がつく。会務のスムースな執行のためには室と執行部を繋ぐ事務次長の仕事は極めて重要である。

さらに、事務局関係。もろもろの決裁や相談のために、まことに捕まりにくい事務次長を「訪問」「待ち伏せ」「追い回し」等々あらゆる手段を尽くす手練れの事務局メンバー。申し訳ない、ご苦労様、畏れいりましたという錯綜した気持ちで、謹んでお話をうかがい、決裁させていただく。

そして対外的事務。最高裁、法務省、衆参議員会館を中心に動き回る。特定案件対応の際は、毎日しかも一日複数回議員会館に赴き議員に要請を行う事もある。

振り返ってみると、毎日が、特急列車で移動するような日々だったような気がする。本年6月末で特急の終着駅に着く。その後、何処に旅立つのか…酒でも飲みながら各駅停車のホームで考えよう。

(事務次長 大貫裕仁)


 

新事務次長紹介

 

6月30日をもって、大貫裕仁事務次長(第二東京)が退任し、後任には、戸田綾美事務次長(第二東京)が就任した。

 

戸田 綾美(第二東京・43期)

松本 敏幸氏

 

3月まで第二東京弁護士会の副会長をしておりましたが、このたび日弁連のために務めさせていただくこととなりました。皆様のご教示をいただきつつ、精一杯務めたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


 

第26回 司法シンポジウム・プレシンポジウム
いま司法は国民の期待にこたえているか
~我が国の民事司法の現状と課題~
6月20日よみうりホール

  • 第26回司法シンポジウム・プレシンポジウム 「いま司法は国民の期待にこたえているか~我が国の民事司法の現状と課題~」

我が国の司法制度改革は、裁判員制度など、刑事分野では一定の改革が実現した一方、民事分野では改革が進んでいない。本年9月20日に開催の司法シンポジウムに先立ち、700人を超える参加者を得てプレシンポジウムを開催し、各界から招いたパネリストに民事司法の現状と課題、改革の方向性と視点について語ってもらった。

 

民事司法改革への期待を語る村尾氏

冒頭のオープニングメッセージで、村尾信尚氏(ニュースキャスター・関西学院大学大学院教授)は、「民事司法の問題については、専門家同士の議論から、国民を巻き込んだかたちで一歩次元の高いフェイズに移行していくことを望んでいる」と述べた。その後、片山善博氏(慶應義塾大学法学部教授)、柴山昌彦氏(衆議院議員・弁護士)、冨山和彦氏(経済同友会副代表幹事)、河野康子氏(全国消費者団体連絡会事務局長)、新谷信幸氏(日本労働組合総連合会総合労働局長)、山本和彦氏(一橋大学大学院法学研究科教授)、日弁連民事司法改革推進本部の中本和洋本部長代行(大阪)が登壇し、各人の活躍する分野における民事司法の現状と課題について議論した。

河野氏は、「消費者側は通常客観証拠が乏しいので、裁判所が事業者の手元にある証拠をなかば強制的に取り出せるようにすべき」と述べた。新谷氏は、「労働審判は行政のあっせん等に比べ解決率が高い」と評価しつつも、「取り扱う支部がほとんどないことは問題」と指摘した。冨山氏は、「医療界がユーザー志向となったのに対し、民事司法の世界は供給側の論理から必ずしも脱却していない」と述べた。

昨年1月に経済団体、労働組合、消費者団体、学識経験者らを委員として設立された民事司法を利用しやすくする懇談会の議長でもある片山氏からは、「現在でも、裁判所の物的・人的資源が足りない」等、同懇談会最終報告書の紹介がなされた。中本本部長代行からは、提訴手数料の低・定額化、執行制度の改善など、日弁連のさまざまな提言が紹介された。

柴山氏は、「消費者団体訴訟制度など、不十分かもしれないが進んでいるものもある」と述べ、山本氏は、「司法が社会の重要なインフラであることに比べ、予算が少なすぎる」と指摘した。


 

シンポジウム
表示・広告の一般法 ―景品表示法

その活用法とよりよい改正を考える
6月11日 弁護士会館

  • 表示・広告の一般法―景表法 その活用法とよりよい改正を考えるシンポジウム

改正景品表示法(景表法)が6月6日に成立し、10日には内閣府消費者委員会が課徴金制度導入に関する答申をまとめるなど、社会問題にもなった外食メニューの不当表示問題をきっかけに、景表法が大きく変わろうとしている。
景品表示法に期待される役割を再認識し、あるべき法制を検討するとともに、改正法で導入に関する検討規定が設けられた課徴金制度の実現を目指して、本シンポジウムを開催した。

 

景表法の概要

冒頭、片桐一幸氏(消費者庁表示対策課長)から、景表法の概要と、代表的な処分例が紹介され、その中でマンガの懸賞企画において当選者数を偽った例や、ホテル等で提供するメニュー表示を偽った例など、広く報道された事例にも言及された。続いて、日弁連消費者問題対策委員会の増田朋記委員(京都)から、適格消費者団体による差止請求制度の概要や事例が紹介された。景表法に基づく差止請求が24件認められており、中には弁護士法人が、弁護士費用について「格安」と表示した例も含まれていることが指摘された。

 

各団体の取組と景表法の課題

次に、景表法を活用して不当表示是正に積極的に取り組んでいる適格消費者団体など合計9団体から、各団体の取組が紹介された。紹介された事例には、健康食品や小顔矯正施術、LTEなど携帯電話の通信速度に関するもの、美肌・脱毛に関する表示など、日常生活で頻繁に目にする表示・広告が多数含まれており、社会に不当表示が溢れている実態と、景表法の身近さがあらためて浮き彫りになった。また、各団体からは、「不当表示をやり得にしないためには、不当に得た利益を吐き出させるための課徴金制度がぜひとも必要」との指摘があった。

最後に、「よりよい景表法を目指して」と題し、課徴金制度導入の重要性と法改正のポイントが指摘された。秋の臨時国会には法案提出の可能性があることから、各団体に対し、法改正に向けたさらなる情報交換と連携して立法活動を行うことが呼びかけられ、閉会した。


 

学習会
司法修習生への給費の実現と充実した司法修習を
6月17日 衆議院第二議員会館

  • 司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に関する学習会

貸与制の下での司法修習も3期目となり、数々の弊害の存在が明らかになってきた。本年4月、公明党から司法修習生に対する経済的支援の充実を求める内容が盛り込まれた提言が出されるなどの動きが出てきたのもその現れである。このような中、司法修習生への給費実現にさらなる理解を求めるため、学習会を開催した。

 

冒頭、村越会長から挨拶があった。会期末にもかかわらず、14人の議員本人の出席および40人の代理出席があり、力強い応援演説が続いた。日弁連や弁護士会、ビギナーズ・ネットの活動を受けて貸与制反対へと考えが変わった等、これまでの取組が着実に実を結びつつあることをうかがわせる発言が印象的だった。

続いて東北大学法科大学院修了生の小田嶋一樹氏らから、志願者が激減している法科大学院の状況などについて切実な実態が語られた。貸与制を経験した司法修習費用給費制存続緊急対策本部の清田美喜委員(福岡県)からは、常に経済的負担と将来への返済の不安を気にしながらの修習であったことなど、貸与制の与える影響の大きさが語られた。これに対し、給費制世代である原和良会員(東京)からは、給費制によって法曹として育てられたという想いが、依頼者のため、社会的弱者のために力を尽くそうという姿勢への原動力となっていることなどが語られた。

最後に、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会の大塚敏夫氏、清水鳩子氏から、「これまでの活動が実を結びつつある。成果を勝ち取るまで闘い続けよう」という熱いメッセージが述べられ、これを受けて同本部の新里宏二本部長代行(仙台)、釜井英法事務局長(東京)から、「必ず勝つ!という意気込みで運動を継続していこう」という総括がなされ、盛況のうちに閉会した。

(司法修習費用給費制存続緊急対策本部委員 高木士郎)


 

共謀罪創設反対を求める院内学習会
あらためて共謀罪にNOを
6月3日 衆議院第二議員会館

  • 共謀罪創設反対を求める院内学習会

2000年に日本政府が国連越境組織犯罪防止条約に署名して以降、政府は共謀罪に係る法案を提出しては廃案となる状況を重ねてきた。高まる共謀罪法案成立の危険にストップをかけようと、院内学習会を開催した。

 

広範に共謀罪成立のおそれ

基調報告では、共謀罪法案対策本部の山下幸夫事務局長(東京)が、共謀罪法案には立法事実がないこと、処罰を早期化することは近代刑法を根底から覆しかねない問題であること、共謀罪の証拠収集方法として通信傍受、会話傍受などの捜査が幅広く認められうることなど、共謀罪の問題点を指摘した。山下事務局長は、現在の自民党政権の下では、いつ法案が提出されてもおかしくない状況にあり、法案の内容によっては財産犯を含め600以上もの犯罪に共謀罪が定められうるとして、現在の状況に警鐘を鳴らした。

 

条約批准のために共謀罪創設は不要

続く講演では、共謀罪法案対策本部の海渡雄一副本部長(第二東京)が、国連越境組織犯罪防止条約と共謀罪創設との関係について、「同じ条約を批准している他の国では、新たな立法を行うことなくこの条約を批准しているところも多い。条約の批准に共謀罪の創設が必ずしも必要なわけではない」として、条約の批准のために共謀罪立法が不可欠との政府の説明を否定し、共謀罪立法が不要であることを強調した。

既に成立している特定秘密保護法では共謀罪が新設され、処罰対象となっているが、これが施行されると、例えば、新聞記者が新兵器開発の情報を耳にし、データを入手するため取材に行くことを社内で決めた時点で逮捕される可能性もあるとのことだ。

参加議員からも、共謀罪法案の危険性をできるだけ分かりやすく具体的に知らせて世論を喚起しようと積極的な意見が出され、活発な意見交換が行われた。

 

アジア弁護士会会長会議 POLA
6月10日~12日 ニュージーランド

ニュージーランド・ウェリントンで開催された第25回アジア弁護士会会長会議(POLA)に、日弁連代表として田邊護副会長、浅岡美恵副会長が出席した。

 

決算報告承認・予算議決

ニュージーランドローソサエティ会長のクリス・ムーア氏(左)と記念品を交換する田邊(中)、浅岡(右)両副会長

POLAはアジアの弁護士会長間の国際交流・協力のための非政治的な会議として、日弁連と大韓辯護士協会の共同提唱のもと1990年に設立された。年1回の大会を加盟弁護士会が持ち回りで開催し、日弁連は第1回、第10回(1999年)と昨年の過去3回ホスト国を務めている。ニュージーランドでの開催は第12回大会以来の2度目である。節目となる第25回の今大会は、13弁護士会と4国際法曹団体から40人を超える参加者が集い、法務長官クリス・フィンレイソン氏の「法の支配」をテーマにした開会挨拶で幕を開けた。

大会中、「人権と法の支配」と題するセッションが行われ、日弁連からは、田邊副会長が、東日本大震災・福島原発事故発生から3年を経た現在までの日弁連の被災者・被害者支援、復興へ向けた取組状況等について発表した。また、浅岡副会長から、昨年のPOLA東京大会で日弁連が提案した「弁護士・弁護士会の公益活動に関するPOLAメンバー間の情報収集・共有のパイロット制度」実施結果の分析、今後の活用法等について説明し、質疑応答が行われた。

会長会議では、公益活動情報パイロット制度の意義を評価する発言があったほか、近時懸念が高まる秘匿特権の制限について各国状況を比較しつつ意見交換がなされ、秘匿特権は適正な司法手続を実現することを通じて社会全体の利益に資するゆえ重要であること、その制限は許されるべきではないとの意見が確認された。

2009年竣工の最高裁判所法廷見学、伝統的な趣きの議会大ホールでのディナー、国立博物館の見学等、駆け足ながら同国の風物にも触れることができ、有益な交流の機会であった。

(国際室嘱託 相馬 卓)


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.90

IBA東京大会
グローバルな法律実務を自分のものに!
本年10月に迫ったIBA東京大会に参加しよう

 

本年10月19日から24日までの約1週間にわたりIBA(国際法曹協会)年次大会が東京で開催されます(於:東京国際フォーラム)。IBAは、150か国以上の弁護士会が参加する世界最大の国際法曹団体であり、その加入団体の規模を考えれば、日本において年次大会が開催されることは、これが今世紀最後と考えられるほど、日本の弁護士にとって歴史的な催しとなります。本稿ではその一部をご紹介します。
(国際活動に関する協議会IBA東京大会PT副座長 東澤 靖)

 

全世界6000人を超える法律家との交流とネットワーク
昨年の年次大会開会式の様子

IBA年次大会には、近年、世界中から6000人を超える法律家が参加する。さまざまな地域の法律家に出会い、新しいネットワークを築く大きなチャンスだ。日弁連は、このようなチャンスを後押しするための一大イベントとして、10月20日(月)に弁護士会館において2000人参加可能なレセプションを開催する。同時刻に日比谷公園内において開催されるホスト・コミッティの催し(於:日比谷松本楼)と併せて、付近一帯は全世界の弁護士で埋め尽くされることになる。

 

大小200を超える多彩なテーマのセッション

IBA東京大会の最大の利点は、大小200もの同時並行的に開催されるセッションに参加できることだ。数百人規模のショーケース(代表的シンポジウム)から、IBAの100を超える部門や委員会が企画するパネルまで規模も多種多様、テーマも国際ビジネスのみならず、各国の民事・刑事の法律実務、法律家に影響を持つ国際法や国際政治、そして人権・環境・消費者問題など、最先端の多彩なものになっている。(プログラムはIBAの東京大会特設ページ(英語)に掲載【http://www.ibanet.org/Conferences/Tokyo2014.aspx】)

参加者は、そのセッションでの議論に参加し、最先端の法律実務と情報に触れることができる。日本に居ながらにしての留学とも言えるだろう。

 

日本からの参加者に数々の利点

日本からの参加者にとっての悩みは、すべての会議が英語で行われることと、登録費用の高さだ。日弁連はIBAと協議を重ね、1割ほどのセッションに同時通訳を配置した(別表参照)。また、登録費用については、8月1日までに登録すれば早期割引制度が利用できる。

さらに、東京大会のセッションでどのようなテーマが取り上げられるのか、その一端を、連続セミナーを開催して会員やメディアに公表している(7月25日(金)および9月上旬に開催予定。いずれも午後6時~)。

詳細については、ぜひ日弁連の特設ホームページを参照いただきたい。(日弁連ホームページトップ>IBA東京大会特設ページ【http://www.nichibenren.or.jp/IBA-Tokyo2014.html】)

 


◆同時通訳対象セッションの一部ご紹介

開催日時 タイトル
10月20日(月)
09:30-12:30
Three Mile Island, Chernobyl, Fukushima: lessons learnt and being learned(仮訳:スリーマイル島、チェルノブイリ、福島:過去の教訓・現在の学び)
10月20日(月)
14:30-17:30
How do you do corporate social responsibility in Asia?(仮訳:アジアにおける企業の社会的責任とは?)
10月21日(火)
09:30-12:30
Hot topics in arbitration(仮訳:仲裁における注目のトピック)
10月21日(火)
09:30-12:30
The verdict on 20 years of international criminal justice - national accountability for the past and international accountability for the present(仮訳:20年にわたる国際刑事司法の評決-過去に対する国家の責任と現代における国際社会の責任)
10月22日(水)
09:30-12:30
IBA SHOWCASE: Climate change justice and human rights - Presidential Task Force findings and recommendations for legal and institutional reforms(仮訳:気候変動の法と人権-法・制度改革のためIBA会長タスクフォース調査結果と提言)
10月24日(金)
10:00-17:00
Rule of Law Symposium(法の支配シンポジウム)
◆午前の部テーマ:表現の自由/◆午後の部テーマ:司法の独立

※同時通訳対象セッション等については、日弁連IBA東京大会特設ホームページに一覧を掲載していますので、ご参照ください。(IBA東京大会特設ページ>内容)

 

日弁連主催レセプション「JFBA Reception」

日弁連では、大会期間中の10月20日(月)午後6時から午後8時に、「JFBA Reception」と称して日弁連主催のレセプションを開催します。日弁連は、過去のIBA年次大会においても、「Japan Night」と称してダブリンやボストンにおいてレセプションを主催し、各国の弁護士数百人を集めて大好評を博しました。今回は、それをはるかに上回る大規模なレセプションとなる予定で、世界各国から2000人程度の弁護士の参加を想定しています。本レセプションはIBA大会自体には参加登録をしていなくても、弁護士であればどなたでも参加いただけます。

会場は弁護士会館です。日弁連が誇る弁護士会館を世界の弁護士に披露する意味合いも込めて、講堂「クレオ」や1階エントランスホール部分を含めた弁護士会館の一部を開放する形で行います。

ゲストの方々に日本の文化を肌で感じてもらうため、サブテーマを「日本の祭」とし、メインイベントでは阿波踊りのライブを見ていただくことを予定しています。その他、日本の歌の披露等も検討しており、もちろん日本食も堪能いただく予定です。

この「JFBA Reception」は、まさに日本の弁護士がホスト役となって、世界各国の弁護士に対して「おもてなし」を提供する絶好の機会となります。私自身、こうしたレセプションでの各国弁護士との交流を通じて、世界の弁護士の考え方・潮流等を多く学ぶことができ、その後の具体的な案件等において、IBAで知り合った海外弁護士と協働する機会もあり、IBAにおける交流の価値を実感しています。ぜひ奮ってご参加いただきますようよろしくお願いします。 

(国際活動に関する協議会IBA東京大会PT幹事 梅津英明)


 

2013年IBAボストン大会参加報告

2013年10月6日から10月11日まで、米国ボストンで開催されたIBA年次大会に参加しました。50年以上も続く大会ということもあり、世界中から先進国のみならず、いわゆる発展途上国出身者も含め、過去最大の6000人以上の法律家が参加しました。 

私は、人身売買についてのショーケースセッション、若手法曹家やIBA年次大会に初めて参加するメンバーを対象とするミーティング、各国の女性弁護士パネリストによる各国での女性への人権侵害例や女性が司法サービスを利用する制度およびその内容についての報告、ハーバードロースクールとの共催である「今後の法曹像」に関するセッションなど、さまざまなセッションに参加しました。

こうしたセッションを通じて各国の弁護士との交流を深めることができたことは大きな収穫でした。その後の業務においても、IBAで出会った方々とのネットワークを生かして、クライアントの海外展開へのリーガルアドバイスを具体的に求めることができました。

また、各国の法的な問題について触れ、他国にも、わが国と共通の問題があることを学ぶことができました。日本国内では未だ取り上げられていない問題でも、国際化に伴い、今後日本でも増加しうる問題(例えば、移民に関わる問題等)について、各国の法律家の問題意識や議論を知ることができたことは、大きなメリットであったと思います。大会で触れた他国の問題意識・取組を、自身の弁護士業務の中でも、国際的な業務であるか否かに関わらず、今後役立てていきたいと考えています。

(福岡県弁護士会会員 服部倫子)


 

ブックセンターベストセラー
(2014年3月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 会社法コンメンタール14 ―持分会社(1)§§575~613 神田秀樹 編 商事法務
2 会社法コンメンタール2 ―設立(2)§§32~103 山下友信 編 商事法務
3 破産・民事再生の実務[第3版]破産編 東京地裁破産再生実務研究会 編著 きんざい
4 実践 訴訟戦術 ―弁護士はみんな悩んでいる― 東京弁護士会春秋会 編 民事法研究会
5 破産・民事再生の実務[第3版]民事再生・個人再生編 東京地裁破産再生実務研究会 編著 きんざい
6 民事訴訟における事実認定 ―契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)― 司法研修所 編 法曹会
7 ジュリスト増刊 実務に効く 労働判例精選 - 有斐閣
8 新版 家庭裁判所における 遺産分割・遺留分の実務 片岡 武/菅野眞一 編著 日本加除出版
9 新労働事件実務マニュアル(第3版) 東京弁護士会労働法制特別委員会 編著 ぎょうせい
10 実務裁判例 交通事故における過失割合 ―自動車事故及び消滅時効、評価損等の諸問題 伊藤秀城 著 日本加除出版

編集後記

この原稿を執筆している今、4年に一度のサッカーの祭典、ワールドカップブラジル大会の真っ只中である。熱心なサッカーファンという訳でもないのだが、朝早くからテレビに釘付け、世界のトップ選手が繰り広げる華麗なプレーに魅了されている。子どもたちが選手らに憧れを抱くのもなるほど頷ける。生来の才能だけではこの場には来られまい。強靱な精神力と地道な研鑽の積み重ねの賜物であろう。
などと考えているうちに、強い気持ちと地道な自己研鑽が必要であるという点は弁護士業務に共通することに気がついた。日々研鑽を怠らず、依頼された事件に誠実に取り組む。そのことが司法に対する国民の信頼感を高め、基本的人権の擁護と社会正義の実現に資するという信念を持つことが必要だ。そのような仕事ぶりは、子どもたちが憧れる未来の姿として映るに違いない。(M・K)