日弁連新聞 第485号

法制審刑事特別部会
「事務当局試案」を公表

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の議論が大詰めを迎えている。「事務当局試案」が公表され、4月30日には取調べの録音・録画について集中的な議論が行われた。5月理事会では、2時間にわたる意見交換を行った。特別部会は、7月に見込まれる答申案の取りまとめに向けて、6月に3回の開催が予定されている。

 

事務当局試案の概要

取調べの録音・録画制度について、事務当局試案では、「制度設計に関するたたき台」での「捜査機関の裁量に任せる案」は削除され、対象事件を裁判員制度対象事件とするA案と、A案に加え全身柄事件における検察官取調べとするB案に整理されている。被疑者の供述拒絶、被疑者や親族の身体・財産への加害・畏怖・困惑のおそれにより十分な供述ができないときや事件が指定暴力団の構成員による犯罪に係るものであるとき等が録音・録画の例外とされている。

通信傍受については、対象犯罪が新たに追加されているが、これには現行法上の傍受の要件に加えて、役割分担があることを求める組織性の要件が追加され、会話傍受については、事務当局試案からは削除されている。

被疑者国選弁護制度の身体拘束者全員への拡大、公判前整理手続における証拠一覧表の開示、類型証拠の拡大等の証拠開示制度の充実も制度案となっている。

 

特別部会における議論状況

特別部会での議論は一致を見ていない。弁護士委員は少なくとも工程を示しての全件全過程の可視化を主張し、警察推薦委員はA案、検察推薦委員はA案に加え現在試行中の録音・録画を本格実施へ運用を変更するとした。裁判所推薦委員は任意性判断には録音・録画媒体が必要となるだろうという運用の見通しを述べる一方で明確な意見を表明していない。3月の特別部会に意見を出した5人の有識者委員はいずれもB案では狭すぎると述べているが、研究者委員がA案とB案で検察官と司法警察員で調書の取り扱いが異なることについて難色を示していることに関しては、学者としての何らかの提案をしてほしいと注文をつけている。

一方で、宮崎誠委員(弁護士)は、可視化の制度導入を目指して始まった特別部会で、可視化が狭い範囲にとどまっているのに対し、通信傍受の範囲が広がることは問題だと指摘した。

 

今後のスケジュール

5月理事会では、「新しい捜査手法の拡大をも含めた一括採決に応じるべきではない」、「可視化についてA案は確保されているのだから、個別採決を求めるべき」などの発言があり、これに対しては、法制審のテーブルについている以上、責任をもって取りまとめするべきだとの説明がなされた。

6月には、特別部会での議論を踏まえて試案の修正版が提示される。日弁連は、6月理事会での討議後、意見を集約する予定だ。

(事務次長 兼川真紀)


*詳細は日弁連速報(ファクスニュース)、会員専用ページ(HOME ≫ 会務情報 ≫ 重要課題の動き ≫ 新時代の刑事司法制度特別部会の動き)でご覧になれます。

 

第23回 憲法記念行事
集団的自衛権は日本にとって必要か?
5月24日 弁護士会館

5月15日、安倍首相は、安保法制懇の報告書を受け、限定的な集団的自衛権行使は許されるという考え方について、今後さらに研究を進めるとし、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、閣議決定を行うとする「基本的方向性」を示した。
日弁連は、同月3日、67回目の憲法記念日に当たっての会長談話において、集団的自衛権の行使容認という憲法解釈の変更が、国民の中で十分に議論されることなく政府の判断で行われることは、立憲主義に反するとの立場を表明し、「基本的方向性」発表後の同月16日にも、重ねて政府の憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に強く反対する旨の会長声明を公表している。
東京三弁護士会と共催した本シンポジウムでは、国防の専門家も招き、肯定否定の両立場から、集団的自衛権について徹底討論をした。

 

  • 第23回憲法記念行事シンポジウム 「集団的自衛権は日本にとって必要か」

基調報告を行う伊藤会員

冒頭、日弁連憲法問題対策本部の伊藤真副本部長(東京)から、「日本国憲法における憲法九条の位置づけ」と題する基調報告が行われた。伊藤副本部長は、「集団的自衛権の行使は、自衛権発動のための3要件の1つである日本への急迫・不正の侵害を欠くため、解釈により認めることは困難である」とした。

続いて、柳澤協二氏(元内閣官房副長官補・国際地政学研究所理事長)、川上高司教授(拓殖大学海外事情研究所所長)、シンクタンク「新外交イニシアティブ」事務局長の猿田佐世会員(第二東京)による討論が行われた。

柳澤氏は、「首相は集団的自衛権の行使により抑止力が高まるとするが、反面、行使容認により中国からのミサイル攻撃などのリスクもある」とし、「慎重に議論する必要がある」と述べた。

川上教授は、自身が集団的自衛権行使肯定の立場であるとしつつも、「国の在り方を大きく変えるものであるので、主権者たる国民に憲法改正を問うべき」とし、「閣議決定で解釈変更を行うことは問題である」と述べた。

猿田会員は、「自民党は、権力ではなく国民に憲法尊重義務を課す憲法改正草案など、国のかたちを大きく変えようとしており、その流れの1つとして、今回の集団的自衛権の行使容認の議論があることを忘れてはいけない」と指摘した。

なお、当日は約450人の参加を得る大盛況であった。


 

村越会長被災地を訪問

村越進会長は、5月12日、福島県浪江町(二本松市内の仮庁舎)と同県川内村を訪問し、川内村内をはじめ被災地を視察するとともに、地元自治体の長らと懇談した。この訪問には、田邊護副会長、春名一典事務総長らが同行した。

 

川内村で除染による廃棄物の仮置き場を視察する村越会長(右)と春名総長

浪江町では二本松市内にある仮庁舎を訪問して、馬場有町長らと懇談した。浪江町は津波の被害を受けたうえに、原発事故により現在も県内外に2万人以上が避難している。町長からは、これらの状況について説明があり、そのうえで、町民による原子力損害賠償紛争解決センターへの集団申立てで示されている和解案の実現への協力、中間指針の見直しと最終指針の策定に向けた提言の継続などを求める協力要請書が手渡された。

川内村では遠藤雄幸村長らと懇談し、村として帰還に向けた取り組みを進めていること、その一方で、帰還促進のためにはインフラの復旧、整備、特に医療や教育の充実が必要であることなど多くの課題が残されていることなどの説明を受けた。

また、同村職員の案内で、除染作業の様子や、除染による廃棄物の仮置き場の状況、公共施設の整備状況などを視察した。とりわけ、仮置き場の大量の廃棄物は今後の復旧作業の膨大さを物語っていた。

今回の被災地訪問は村越執行部となって初めてのものであり、主に原発事故の被害状況を視察することを目的としたものであった。原発事故によりいまなお多数の被害者が避難を強いられているが、被災地の現状と、損害の回復・復興のためにはまだまだ多くのなすべきことが残っていることを実感することができた。この訪問の成果を、被害者の完全な救済と復興支援の取り組みに活かしていくことが求められている。

(事務次長 谷 英樹)


 

ひまわり

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の事務当局試案が公表された▼裁判員裁判事件のみを録音・録画対象とするA案とこれに全身柄事件の検察官取調べを加えるB案が示された。当初、制度設計に関するたたき台にあった捜査機関の裁量に委ねる案は試案では削除されている▼日弁連は一貫して全事件全過程の録画を求めており、有識者委員5人も段階的にせよ原則として全事件を対象にすべきであるとの意見を表明している▼被疑者国選の拡充や証拠一覧表交付などあるものの、特別部会設置の経緯に鑑みると、可視化が限定的なのに通信傍受の対象事件が拡大するのは問題だ▼例外なしの全事件対象を貫き譲歩するべきでないというのも筋だが、展望もなく原則を貫いた結果何も得られなければ本末転倒である▼日弁連が取調べの可視化実現WGを設置した2003年以来の運動が過度に供述に依存した取調べに固執する警察・検察の扉をこじ開けたとも評価できる▼6月か7月には取りまとめが行われる見通しだが、最終的には政治的決断が必要だと思う。刑事司法の近代的改革はすべての弁護士の悲願だ。弁護士会においても集中的に議論し、理事会では、「大きな」議論をした上で方針が決定されることを期待したい。(K・H)

 

6月18日から
改正少年法
国選付添人対象事件の拡大に伴う運用変更

本年4月に成立した改正少年法により、6月18日から、国選付添人制度の対象事件が被疑者国選対象事件と同一の範囲まで拡大される。これに伴い、日弁連、最高裁家庭局、法テラス本部で協議し、被疑者国選弁護人から国選付添人への移行の流れに関するモデル案(改訂版)を取りまとめた。

 

このモデル案を踏まえて各弁護士会、家庭裁判所、法テラス地方事務所間の協議により具体的な手続を定めることになるので、会員におかれては、各弁護士会から提供される情報を確認いただきたい。

6月18日以降の重要な注意点は、次のとおりである。

 

一 被疑者国選弁護人は、まず国選付添人の選任を求めること

モデル案(改訂版)では、家庭裁判所は観護措置決定の当日または翌日には、国選付添人の選任の要否の判断を行う。それまでの間、被疑者国選弁護人であった弁護士は、特に必要がある場合(観護措置決定に対する異議申立てを行う場合等)を除き、付添人選任届を提出することなく、国選付添人選任を求める。

 

二 予め「要望書」と「申入書」を提出すること

国選付添人の選任を求めるためには、あらかじめ法テラス地方事務所に対して自らを国選付添人候補として指名通知するよう求める「要望書」を、家裁に対して国選付添人選任の職権発動を求める「申入書」を提出する必要がある。

 

三 付添援助制度の利用要件および申込書の変更

国選付添人対象事件における少年保護事件付添援助制度の利用については、原則として前記の「申入書」を提出したにも関わらず、国選付添人に選任されなかったことが利用要件となり、利用申込書の書式もその要件を満たすことをチェックするように変更されるので、新書式を利用して申し込む必要がある。詳細は会員専用ページ(HOME ≫ 書式・マニュアル ≫ 法律援助事業関係 ≫ 法律援助事業のご案内 ≫ 2014年5月12日 少年保護事件付添援助における運用の変更について)を参照。

(全面的国選付添人制度実現本部事務局長 須納瀬 学)


 

総合法律支援法
有識者検討会の議論状況

法務省は、本年3月、「充実した総合法律支援を実施するための方策についての有識者検討会」を設置し、総合法律支援法の改正を含めた見直しのための検討を開始した。

 

検討会は10人の有識者委員で構成され、日弁連からは渕上玲子会員(東京)および田邉宜克会員(福岡県)が委員として参加している。座長は伊藤眞教授(早稲田大学大学院法務研究科)である。

検討会の会議は6月6日までに既に7回開かれており、次の課題を検討している。

①民事法律扶助業務における高齢者・障がい者、大規模災害の被災者、ADR利用者に対する法的支援、②DV・ストーカー等深刻な被害に進展するおそれの強い犯罪被害者に対する法的支援、③受託業務の在り方、④常勤(スタッフ)弁護士の役割等である。

高齢者・障がい者と犯罪被害者に対する法的支援については、初回相談の資力要件撤廃の可否、その後の法的支援の在り方等が、また、ADRに関しては、特に斡旋型ADRを扶助の対象にすることの可否が検討されている。

大規模災害の被災者に対する法的支援については、東日本大震災における特例法のような形ではなく、恒久法とすることの要否などが課題となっている。

スタッフ弁護士については、司法ソーシャルワークの展開などを背景に、スタッフ弁護士に期待される役割とそれを十全に果たすための方策等が検討されている。この関係では、総合法律支援法へのスタッフ弁護士の明文化の可否等も議論されている。

受託業務に関しては、その要件を緩和して、受託できる範囲を広げることの必要性、妥当性が検討課題となっている。

今後、6月中または7月には検討会としての取りまとめがなされる予定になっており、これを受けて、臨時国会への改正法案の提出も予想される。日弁連として適切な対応を行うべく、日本司法支援センター推進本部等で検討している。

(事務次長 谷 英樹)


 

日弁連短信
金融円滑化法の終了対応としての特定調停スキーム

吉岡次長

 

中小企業の資金繰りを支援するために制定された「中小企業等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」が2013年3月末で終了した。また、政府も、本年1月に、中小企業の事業再生や廃業の円滑化等によりその新陳代謝を活発化させる、との方針を打ち出した(産業競争力会議「成長戦略進化のための今後の検討方針」)ことから、今後、特に、中規模以下の中小企業の経営状態が悪化し、その事業再生の必要性が増大すると予想されている。

ところが、これら中規模以下の中小企業の事業再生については、中小企業再生支援協議会のような公的なプラットフォームが存在せず、適切な処理が困難な状況にあった。

そこで日弁連(日弁連中小企業法律支援センター)は、最高裁判所、中小企業庁等と協議を重ね、中小企業の再生支援のため、簡易裁判所の特定調停制度を活用したスキームを策定し、「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム利用の手引き」を取りまとめた(会員専用ページ、HOME ≫ 書式・マニュアル ≫ その他弁護士業務 ≫ 金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム、からダウンロードが可能)。

この特定調停スキームは、主に中規模以下の中小企業について、受任した弁護士が、調停申立前に、税理士・公認会計士等と協力して財務・事業に関するデューデリジェンスを実施するなどして再生計画案を策定し、金融機関等と調整して同意の見込みを得た上で、特定調停の申立てを行う、というものである。

これにより、これまで困難であった信用保証協会による求償権放棄が可能となるほか、金融機関により債務免除がなされた場合の税務について、債権者側としては損金処理が、債務者側としても債務免除益について期限切れ欠損金の充当等が、それぞれ可能となり、加えて、中小企業庁の「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」の利用により専門家の報酬の3分の2(ただし、200万円が上限)が国から支給されるなど、事業再生の処理の幅が一層拡大することとなる。

さらには、2013年12月に策定された「経営者保証に関するガイドライン」にも応用が可能である。

日弁連としては、会員諸氏に、この特定調停スキームを活用して中小企業の再生支援を推進していただきたいと考えている。

(事務次長 吉岡 毅)


 

第12回公設事務所弁護士協議会
4月24日 弁護士会館

弁護士過疎地で活躍しているひまわり基金法律事務所の所長弁護士が全国から集まり、協議会を開催した。協議会では、司法ソーシャルワークに関する研修会が実施されるとともに、ベテラン会員も交えた事務所運営に関する意見交換会が実施された。

 

司法ソーシャルワークの研修会

前半は、元法テラス佐渡法律事務所の水島俊彦会員(東京)を講師に迎え、昨今注目を集めている司法ソーシャルワークと成年後見拡充活動に関する研修会を開催した。福祉関係者と連携するための基礎となる関係構築ステップが具体的に紹介されるとともに、個別案件での連携から地域課題への連携に展開させる方法、法人後見センターを設立、運用するための自治体の予算獲得手法など、具体的な実践例に基づく解説が行われた。さらに、具体例を題材にした模擬ケース会議を行い、ケース会議の効果や進め方、その際に用いられる書式の有用性が示された。

全国各地で同種の課題を感じ、これに取り組んでいる参加者からは、「担当者が無関心な場合」や「担当者が人事異動で変わってしまう場合」など、具体的な質問が活発に寄せられた。

 

事務所運営に関する意見交換会

後半は10人程度のグループに分かれ、事件処理や労務管理、公的機関との連携や弁護士会との関係など、各グループに設定されたテーマについて意見交換を行った。

現役所長からは、普段抱えている疑問や悩み、自分の事務所で行っている例が、所長OBからは、過去の経験に基づく助言や自らの失敗談等が語られた。

 

任期終了後の選択肢の紹介

協議会の最後に、公設事務所所長任期終了後、定着しない場合の選択肢の1つとして、弁護士任官や任期付き公務員への応募など、多彩な選択肢が紹介され、任期終了後の活躍についての期待も示された。

 

公害対策・環境保全委員会発足45周年記念シンポジウム
災害復興と持続可能性
防潮堤問題から考える
5月10日仙台弁護士会館

  • 日本弁護士連合会公害対策・環境保全委員会発足45周年記念シンポジウム「災害復興と持続可能性~防潮堤問題から考える~」

震災復興が進む中で、防潮堤の在り方を巡る議論が広がっている。防潮堤を巡る問題は、単に防災だけではなく、海岸を含む被災地の自然環境や公共事業の在り方など、これまで公害対策・環境保全委員会が取り組んできた問題とも密接に関連することから、委員会発足45周年を記念して、仙台弁護士会および東北弁護士会連合会の共催を得て、被災地・仙台でシンポジウムを開催した。

 

熱心に報告に聴き入る参加者ら

冒頭、鶴見聡志委員(仙台)による問題提起を受けて、清野聡子氏(九州大学大学院工学研究院准教授)、室崎益輝氏(神戸大学名誉教授)、長峯純一氏(関西学院大学教授)、久保田裕氏(宮城県土木部次長)および菅原茂氏(気仙沼市長)からの報告、現地の声として三浦友幸氏(気仙沼市防潮堤を勉強する会発起人)、瀧上明会員(岩手県)からの報告がなされた。この中では、生態系を生かした総合的な防災対策や、自然と調和する防潮堤計画の必要性等を指摘する声が聞かれた。

その後、報告者と幸田雅治会員(第二東京)をパネリストとして、防潮堤と環境保全の関係、防災の観点、合意形成の在り方などを巡るパネルディスカッションを行い、活発な議論がなされた。

県とそれ以外の参加者の認識には、目指すべき防潮堤の機能に関してはいまだ大きな開きはあるものの、県の担当者が本シンポジウムに参加して議論に加わったことの意義は大きい。特に、議論の中で「防潮とまちづくりは一体として考えるべき」「合意形成には行政と住民との信頼関係が不可欠」などの発言が見られるなど、まだ合意形成に至っていない地域における新たな合意形成に向けた可能性を感じることができた。なお、当日の参加者は250人を超え、会場は超満員の盛況であった。

(公害対策・環境保全委員会委員 日置雅晴)


 

市民集会
派遣法改正案に反対
5月15日 弁護士会館

  • 派遣法改正案に反対する市民集会

今国会に提出されている労働者派遣法改正案は、直接雇用の原則や、常用代替防止の理念を根底から覆し、派遣制度を拡大・固定化する内容となっている。この改正案の問題点を明らかにし、反対意見を表明するため、市民集会を開催した。

 

日弁連や弁護士会の動き

法案の問題点について語る緒方教授

冒頭、貧困問題対策本部の中村和雄事務局員(京都)から、派遣法改正に関する日弁連と弁護士会の活動が報告された。日弁連は、既に昨年11月21日に「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」に対する意見書を公表しており、また全国27の弁護士会も、改正に反対する内容の会長声明を発表している。中村事務局員からは、「国会議員への要請も幅広くやっていきたい」との意気込みが示された。

 

派遣法改悪案の問題点

続いて緒方桂子教授(広島大学大学院法務研究科)から、法案の審議状況について、成立見送りとの報道もあったが、今国会で押し切られる可能性も残されており、「あらためて派遣労働についての考え方、捉え方を考え直さなければならない」と問題提起がなされた。その上で、派遣法改正案について、「直接雇用の原則は十分に尊重されるべきなのに派遣法が直接雇用の可能性を奪っている」「派遣期間の延長により永続的に派遣が行われるのであれば、それはもう、派遣元というより職業紹介に過ぎない」「今回の派遣法改悪は派遣元の職業紹介化を拡張させるものだ」と、問題点が次々と指摘された。

 

当事者の声

日産自動車横浜事件の原告である阿部恭氏から、派遣労働者に行われた一連の差別行為と、結論ありきの判決に対する声が寄せられた。また、派遣会社からパルシステム生活協同組合連合会に派遣され、雇い止めにあった酒井桂氏からは、「重要なのは労働者が将来を見通して働けること。これは、雇用形態に関わらず誰にでも平等に与えられるべき」と自らの体験に基づく意見が述べられた。


 

秘密保護法国際シンポジウム
米安全保障専門家が語る
知る権利と秘密保護のあり方
5月10日 弁護士会館

慎重審議を求める多数の意見にもかかわらず、昨年12月に強行採決により成立した特定秘密の保護に関する法律(秘密保護法)。あらためて同法の抱える問題点について検討するため、約400人の参加を得てシンポジウムを開催し、アメリカの安全保障専門家に知る権利と秘密保護の在り方について語ってもらった。

 

  • 秘密保護法国際シンポジウム-米安全保障専門家が語る 知る権利と秘密保護のあり方-

西山氏(左)とハルペリン氏

冒頭、日弁連秘密保護法対策本部の海渡雄一副本部長(第二東京)が、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則。オープン・ソサエティ財団の呼びかけで、国際連合等の特別報告者を含む、70カ国以上の500人を超える専門家により作成された、立法者に対するガイドライン)と同原則に照らした秘密保護法の問題点などを解説した。海渡副本部長は、「ツワネ原則では、秘密指定は無期限であってはならないと定めているのに対し、秘密保護法では、秘密指定についての最長期間の定めがない」とし、その他、同原則から見た秘密保護法のさまざまな問題点を指摘した。

続いて、アメリカ国家安全保障会議メンバーなどを歴任した政治学者のモートン・ハルペリン氏の講演が行われ、同氏は、秘密保護法について、「内容が内容なだけに、多段階にわたりじっくりとディスカッションをすべきだった」と述べた。

その後、ハルペリン氏と元毎日新聞政治部記者の西山太吉氏との対談が行われた。

西山氏は、沖縄密約(沖縄返還の際に日米間で交わされた、財政支出等の三つの密約)について触れ、「沖縄密約の解明もきちんと進めていないのに、秘密保護法を成立させたことは、秘密の上に秘密を重ねるようなものだ」と強く批判した。

ハルペリン氏は、日本政府の財政支出に関する沖縄密約について、「開示すると国民はきっと支持しないだろうと恐れて秘密としたのであろうが、それは安全保障上の理由とはいえない」と指摘した。


 

夢実践シンポVol.5
なるほど、なっとく!業務運営・顧客獲得等の黄金のルール
5月13日 弁護士会館

ほとんどの会員にとって、事務所運営や顧客獲得手法は、最大の関心事ではないだろうか。本シンポジウムでは、全国5カ所の法律事務所への調査から探り出された、事務所運営や顧客獲得のためのノウハウが紹介された。

 

調査は、札幌、山形、名古屋、大阪、福岡の全国5カ所で行われ、若手会員が先輩会員に1週間密着する方法で、事務所運営手法や顧客獲得方法等の「コツ」を探った。

本シンポジウムの前半では、実際に密着調査を行った5人の若手会員から、調査結果が報告された(調査レポートは会員専用ページ、HOME ≫ 出版物・報告書 ≫ 各種報告書 ≫ 若手法曹センターに掲載)。

後半のパネルディスカッションでは、密着調査を通じて若手会員が体感したノウハウが、「26の黄金ルール」として披露されるとともに、各地で目にした「黄金ルール」の実践例ともいうべき、先輩会員の活動が具体的に報告された。

示された「26の黄金ルール」は、顧問開拓、事務所運営、新規分野開拓、スキルアップ、宣伝広告戦略、弁護士のマインドの6分野で構成されている。

例えば、顧客開拓に関する黄金ルールとしては、「誠実に業務を遂行することで、顧客が顧客を紹介してくれる」や「弁護士の敷居を下げ、相談し易い環境を作るべし」という基本的なものから、「業務開始は午前9時!」や「報酬金取得時を顧問契約締結の好機とすべし」という具体的なものまで多種多様。

他にも、事務所運営については「朝一番に事務局とミーティングを行い、当日実施することを確認せよ」などが、スキルアップについては「自分にとって好きな分野を深耕せよ!」「弁護団に加入せよ!」などが、弁護士のマインドについては「挨拶を受けるのではなく積極的に挨拶する弁護士に!」や「夢や目標を持つ」などが黄金ルールとして紹介された。

 

IBA東京大会連続セミナー第1回
IBAを活用して実り多き未来を
5月14日 弁護士会館

  • IBA東京大会企画・連続セミナー 第1回「アジア地域での国境を越える法律サービス~プレ大会から本大会へ~」

IBA(国際法曹協会)年次大会がいよいよ本年10月に東京で開催される。会員にIBA大会をより身近に感じ、存分に活用してもらうため、大会で取り上げられるテーマについて解説する連続セミナー(全3回)の第1回を開催した。今後は、7月および9月に、今回とは異なるテーマを取り上げたセミナーを開催する予定である。

 

興味あるテーマが目白押し

大会では多数のセッションが同時開催される。人権問題、企業法務、家事、若手弁護士向けプログラムと多彩なラインナップが用意され、中には著名人がスピーカーを務めるものもある。大会への参加申し込みをすれば、自身の興味のあるセッションに参加することができる。

今回のセミナーは、「アジア地域での国境を超える法律サービス」や「世界が取り組む多国籍企業の人権の課題」などをテーマとし、多国籍企業の活動を発端に、利益追求ばかりではなく会社や工場が設置される場所での人権擁護にも配慮すべきというユニバーサルスタンダードという最先端の問題について、IBA東京プレ大会共同議長の東澤靖会員(第二東京)が説明を行った。同じくIBA東京プレ大会共同議長で国際活動に関する協議会の内田晴康議長(第二東京)は、「事前にその分野について予習すれば英語は大きな障壁にはならない。同時通訳がないセッションでも積極的に足を運んで」とアピールした。

 

気負わず話しかけてみよう

IBAおよびIBA東京大会に関する紹介の中で「セッションに参加するなら、ぜひ手を上げてコメントしてみて」とアドバイスするのは前IBA会長で国際活動に関する協議会の川村明委員(第二東京)だ。川村委員は「世界各国から参加する6000人もの弁護士と交流することは、自分の研究やキャリアにとってもかけがえのない財産になる」と大会への参加を呼びかけた。

8月1日までに申し込めば大会登録費用(参加費用)の早期割引サービスもあるので、ぜひ多数の会員の参加をお願いしたい。

(IBA東京大会の詳細および申込は、IBAのホームページをご覧ください。http://www.ibanet.org/Conferences/Tokyo2014.aspx

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.89

座談会
非常勤裁判官に聞く

 

非常勤裁判官(民事・家事調停官)制度が開始されてから今年で10年、これまでに就任した会員は延べ377人を数えます。今回は、現役調停官として活躍する上田淳史会員(50期・第一東京)、砂川祐二会員(53期・東京)と寺林智栄会員(60期・東京)にお話を伺いました。
(広報室長 勝野めぐみ)

 

―現在の執務先と担当する事件の概要は
上田 淳史 会員(50期・第一東京)

(上田)所属は東京地裁民事第22部です。原則的に週1回、特定の曜日に終日勤務しています。民事調停官は合計11人おり、常勤裁判官と分担して調停事件を担当しています。建築紛争、明渡しや賃料増減額請求等の借地借家紛争を中心に、常時10件前後担当しているでしょうか。

(砂川)東京簡裁で三室ある調停係のうちの第二室に所属し、第二室では常勤裁判官11人、調停官5人の体制で調停事件を担当しています。あらゆる分野の調停事件が持ち込まれますが、医療過誤事件、比較的簡易な建築紛争が多いのが特徴です。手持ち事件の件数は15件前後で、執務時間は上田さんと同じです。

(寺林)東京家裁で、後見事件と遺産分割事件以外を扱う部に所属し、特定の曜日に週1回、終日勤務しています。守備範囲は広いはずなのですが、圧倒的に夫婦関係調整調停とこれに付随する事件が多いです。ちなみに直近の手持ち事件数を数えてみたら38件ありました。

 

―具体的な執務の様子を教えてください
砂川 祐二 会員(53期・東京)

(上田)担当事件全件につきすべての期日に立ち会う前提で事件が配点されます。2人の調停委員とともに期日をこなす傍ら、別の事件の記録を検討したり、調停委員と事前評議を行ったりします。事件の性質上、現場に赴くことも多く、執務日以外に時間を費やすこともあります。総じて事件への関与度合いは強いと言えるでしょう。

(砂川)私の場合は全件全期日立会いというわけではありませんが、第1回期日には必ず出て、法律解釈が主要な争点となる事件を中心に立ち会うようにしています。その他の事件は、調停委員からの申送り事項を確認したり、必要に応じて協議の機会を持ったりして補完しています。

(寺林)家事調停はとにかく事件数が多く、担当する事件の期日が1日に12から13件入ることもあります。期日の前に事件記録や調停委員からの申送り事項を確認し、必要に応じて調停委員と協議を行い、重要な場面では期日に立会います。

 

―執務する中で工夫されていることはありますか

(寺林)事件数も多いので、調停官・調停委員・書記官が適切に役割分担をし、協働できるよう、円滑なコミュニケーションを心がけています。

(砂川)弁護士ならではの視点、即ち法律的な論点が主要な争点となる事件かどうかを適切に見極めるようにしています。

(上田)地裁ということもあってか、代理人が就いている事件が多いのですが、本人だけが出頭している事件については、聞く姿勢・不公平感のない丁寧な手続を特に心がけます。

 

―執務していて感じる「調停官の醍醐味」とは
寺林 智栄 会員(60期・東京)

(上田)代理人もさじを投げてしまうような困難な事件でも粘り強く当事者を説得することで解決に至ったときは達成感があります。調停委員の先生から得た専門的知見や、鮮やかな代理人の活動に接することも多く、日々の弁護士業務に活かせる点が多いのも醍醐味の1つです。

(寺林)自分の一言で当事者の気持ちが前向きに変わったり、解決に向けて条件を受け入れたりしてくれると嬉しいですね。調停官になってから、より一層家事事件の処理に自信がつきました。

(砂川)経験値が飛躍的に上がりました。それだけ、経験のない事件に当たることも多く、解決に頭を悩ませることにもなるのですが。

 

―最後に、会員へのメッセージをお願いします

(砂川)裁判所や裁判官の文化を肌で感じることのできる、またとない機会だと思います。

(寺林)裁判所の仕事というと堅苦しいイメージがありますが決してそんなことはない。個性や自分なりの工夫が活かせて楽しいです。ぜひ多くの会員に経験していただきたいと思います。

(上田)同感です。多様な事件に関与することで、裁判所の物の見方、考え方を知り、それが自分の代理人としての活動にも深みを与えているように思います。弁護士としてのスキルアップにも役立つ経験であることは間違いないですね(一同うなずく)。

 

―本日はどうもありがとうございました。ますますのご活躍を期待します。

 

日弁連委員会めぐり 65

刑事法制委員会

今回の委員会めぐりは、実に40年の活動実績を誇る刑事法制委員会です。岩田研二郎委員長(大阪)と山下幸夫事務局長(東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)


刑事法制委員会の成り立ちを教えてください
岩田委員長(左)と山下事務局長

(岩田)刑事法制委員会の前身である「刑法改正阻止実行委員会」は、改正刑法草案に基づく刑法全面改正に反対する運動組織として、1974年に設置されました。日弁連が特定の運動のために組織をつくり、全国の弁護士会と連携し、市民集会を開催するなど市民への働きかけを展開していくことは今や珍しくなくなりましたが、その運動の先駆けと言えます。その市民との連携で刑法全面改正を阻止した活動が、当委員会の活動の礎となっています。

 

委員会の特徴を教えてください

(山下)ベテラン・中堅の委員と若手の委員で期を超えた活発な議論が交わされています。当委員会には、原理原則を大切にすること、思想的・政治的な立場を超えて在野弁護士のおおかたの賛同を得られる意見を会内で合意形成していくという伝統があります。

また、刑法改正反対運動で培われた進歩的な刑事法学者との連携は日常的に続いており、研究者の理論的な問題指摘や外国法制の紹介などの助言を取り入れ、委員会意見の理論水準を保つことができているのも当委員会の特徴の1つです。

他の委員会と協力して運動を展開することが多いことや、法制審議会刑事法部会の委員・幹事を多く輩出していることも、歴史と伝統のある当委員会ならではの活動です。

 

現在、特に力を入れて取り組んでいる活動を教えてください

(岩田)現在行われている法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会での、可視化、通信傍受拡大について原則的な対応を求める意見のほか、「裁判員制度検討部会」「捜査問題部会」で、被告人の選択権、裁判員の量刑判断排除など裁判員制度の見直しに関する提言や全面証拠開示の前提となる捜査の全過程の記録化を義務付ける法律の提言等を行っています。

また、「医療観察法部会」で、全国付添人交流集会を実施しています。三省堂から近く「Q&A心神喪失者等医療観察法解説」第2版を発刊予定です。弁護士会への付添人の研修講師派遣も行っていますので、興味のある会員はぜひ研修会に参加してください。


 

ブックセンターベストセラー
(2014年2月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 破産・民事再生の実務[第3版]破産編 東京地裁破産再生実務研究会 編著 きんざい
2 民事訴訟における事実認定 ―契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)― 司法研修所 編 法曹会
3 最高裁判所判例解説 民事篇 平成二十二年度(下)(7月~12月分)
法曹会
4 最高裁判所判例解説 民事篇 平成二十二年度(上)(1月~6月分)
法曹会
5 実践 訴訟戦術 ―弁護士はみんな悩んでいる― 東京弁護士会春秋会 編 民事法研究会
6 破産・民事再生の実務[第3版]民事再生・個人再生編 東京地裁破産再生実務研究会 編著 きんざい
7 インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル 中澤佑一 著 中央経済社
8 裁判例に見る特別受益・寄与分の実務 第一東京弁護士会 司法研究委員会 編 ぎょうせい
9 弁護士・弁理士・司法書士の確定申告と税務[平成26年対応] 天賀谷茂・呉尚哲・熊澤直・名取勝也・吉川達夫 著者代表 レクシスネクシス・ジャパン
10 外国人事件Beginners 大谷美紀子・山口元一・渡邉彰吾・指宿昭一+大阪恭子 著 現代人文社

編集後記

秘密保護法国際シンポジウムを取材しました。同シンポジウムでは、いわゆる沖縄密約について、当時のアメリカ側の担当者のハルペリン氏をお招きし、同密約を国家機密としたことの是非等が議論されました。
沖縄返還交渉の日本側の担当者(密使)であったのが若泉敬です。若泉は、沖縄返還から20余年経った1994年、著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」を世に出し、沖縄密約の舞台裏を明らかにしています。恥ずかしながら、このシンポで初めて若泉を知り、著書を早速購入したのですが、冒頭の謝辞で、若泉は、沖縄慰霊の日などに夜半に目を醒まし、鋭利な刃で五体を剔られるような気持ちに襲われると告白しています。1996年、若泉は、与那国島で、服毒自殺しました。沖縄の基地問題や秘密保護法に関する問題に思いを馳せながら、著書を読み進めていきたいと思います。(Y・K)