日弁連新聞 第481号

法制審民法(債権関係)部会
審議状況と今後

債権法改正の審議は、中間論点整理(2011年5月)、中間試案(2013年3月)の公表と2回のパブコメを経て、本年7月までに要綱仮案を部会決定することを目標に急ピッチで進められている。いよいよ大詰めである。
(会員専用ページに関連情報を掲載。民法(債権法)改正の動きについて

 

改正項目は多岐にわたるが、注目される論点の審議状況は次のとおりである。

 

個人保証

個人の根保証については、「貸金等債務」に限定しないで、極度額規制と元本確定事由を適用することに異論はない。貸金等債務について経営者以外の第三者保証を禁止することは意見の一致を見ているが、経営者の範囲をどのように定めるか、自発的な保証について例外を認めるかが残された検討課題である。保証責任の制限ないし比例原則の導入には反対も強く、また解決すべき問題も多い。

 

約款規則

約款規制に対しては、経済界からの反対が非常に強い。しかし、約款の拘束力の根拠を明らかにしたうえで、不意打ち条項や不当条項規制、約款の変更手続を導入して、約款取引の適正化を図る必要性は高い。是非、実現したい改正項目である。

 

消滅時効

消滅時効の起算点と期間を改正する提案は、実務への影響が大きい。単純に10年を5年に短期化する案には賛成できない。主観的起算点から5年、客観的起算点から10年という併用型に賛成する研究者意見が強い。しかし、権利者の保護に欠けないか、起算点を巡る紛争が生じないか、時効管理コストが増えないか、慎重な検討が必要である。

 

その他の論点

暴利行為は、判例準則を明文化する方向で審議は進んでいるが、「著しく過大」を要件とする提案については、将来の判例形成を阻害する可能性もあり、賛否が分かれている。

債権譲渡の対抗要件を登記に一元化する提案は時期尚早としても、現行の通知承諾制度に対する批判も強く何らかの手当が必要ではないか。債務者に負担をかけず、優先関係が明確になる、使い勝手の良い制度構築が望まれる。

会員各位からの積極的な発言が、より良い民法を生み出す原動力となるであろう。今後とも審議状況に注目いただきたい。

(司法制度調査会委員・法制審議会民法(債権関係)部会委員 中井康之)


 

法制審議会民法(債権関係)部会の審議スケジュールと日弁連の取組

 

日弁連総合研修センターが本格始動
各地でツアー研修を開催

日弁連では、研修をより機動的かつ実践的に運営するため、2013年6月に「日弁連総合研修センター」を発足させ、今年度から新たに「ツアー研修」を開始した。ツアー研修では、全国各ブロックにおいてライブ講義(本年度は会員による相続分野に関する連続講座と開催地の裁判官による講義)を行い、講義後に各地域の研修の実情について意見交換会を実施している。

 

熱心に講義に聴き入る受講者ら(福岡会場)

第1回は、9月24日に札幌で行われ、冨永忠祐会員(東京)から遺産分割一(遺産範囲・相続人確定・調停手続論・前提問題)の講義、栗原壯太裁判官(札幌家裁部総括判事)から家事事件手続法に基づく手続等の解説を中心とした講義があった。

意見交換会では、弁連・弁護士会で実施する研修の問題点について、「多数回研修を実施するための講師確保が難しい」、「委員会ごとに研修を企画実施するため全体の把握が難しい」といった報告があり、日弁連が主催する研修については、「もっと広報すべき」、「研修のコースメニューを示すとよいのでは」等の意見が出された。

第2回は、12月5日に福岡で実施され、浦岡由美子会員(東京)から遺産分割二(家事事件手続法、特別受益、寄与分)の講義、岡田健裁判官(福岡家裁部総括判事)から代理人活動に関する要望等についての講義が行われた。

意見交換会では、弁連および各弁護士会における研修の実施状況報告のほか、日弁連が主催する研修について、「受講対象を若手に絞ってよいのでは」との意見がある一方、「思い込みの改善や知識補充の意味で、むしろ中堅・ベテランにも重要」との指摘もあるなど、さまざまな意見が交わされた。

今後は、第3回を2月21日に金沢、第4回を5月8日に広島で開催予定である。なお、会員による講義のeラーニングと裁判官の講義録要旨は、日弁連総合研修サイトにおいて無料で視聴できるので、ぜひご覧いただきたい。

(研修・業務支援室嘱託 吉岡祥子)


 

シンポジウム
司法試験と予備試験のこれから
12月14日 東京八重洲ホール

  • 司法試験シンポジウム「司法試験・予備試験のこれから」

5年3回の受験回数制限を5年5回に緩和し、短答式試験科目を憲法・民法・刑法の3科目に削減することが盛り込まれた司法試験法改正案が、今通常国会に提出される見通しだ。
また、2011年から始まった予備試験の結果が集積され、その問題点が明らかになりつつある。本シンポジウムでは、予備試験のあるべき制度運営を中心的なテーマに掲げて司法試験に関する問題点を議論した。

 

予備試験の現状
パネリストら

冒頭、日弁連法曹養成対策室から、2012年には7183人であった予備試験受験者が、2013年には9224人と激増し、その増加した内訳のほとんどが学部生、法科大学院生、法科大学院修了者であり、合格者もその三者で約九割を占めていたとの報告があった。

また、昨年日弁連と法科大学院協会が行った全法科大学院の2年次生を対象とするアンケートについて、全回答者中約37パーセントが予備試験を受験した経験があり、「実力を試したかった」との理由が多数を占めたという分析結果が報告された。

 

予備試験の問題点

後半は、土井真一教授(京都大学大学院法学研究科)、後藤昭教授(一橋大学大学院法学研究科)を招いて、パネルディスカッションを行った。

土井教授は、予備試験を「法曹への最短ルートとなっており、既に当初の目的とかけ離れた制度と化している」と厳しく批判した。後藤教授は、「法科大学院教育を充実させるほど、大学院生が予備試験に合格する」と予備試験の矛盾点を指摘した。他方、会場から、「地方の法科大学院がなくなった場合、予備試験も活用しながら、地方で法曹を養成することも考えていかなければならない状況になる」という声もあった。

丸島俊介会員(東京・元法曹養成制度検討会議有識者委員)は、「予備試験は、司法試験、法科大学院教育と表裏の関係にあり、司法試験の在り方、法科大学院の充実と切り離して考えることはできない」と語った。


 

ひまわり

振り込め詐欺が問題となって久しい。年末の警察庁の発表によると、前年度より認知件数レベルで七割増加となっている。口座振込に制限を設ける、口座の迅速な凍結を認めるなど、被害予防・被害回復措置がとられ、被害を防止するための広報活動も徹底されてきている▼しかし、被害が一向に減少せず、増え続けているのはどうしてだろうか。先日、ワイシャツにジャケット姿の中学三年生が詐欺未遂容疑で逮捕されたという報道があったが、最近は口座振込ではなく、「受け子」を使った手口や、レターパックや宅急便などを利用して現金を送らせる詐欺事案も増えている▼日弁連は、販売窓口での声掛けや、現にレターパックに表示されている注意喚起の文面を中央に大きく明示することなどを求める意見書を出しているが、巧妙化していく手口への対策や犯罪者の摘発がなされる努力が必要である▼被害者の多くは高齢者である。情報が届かない人、自分は被害に遭遇しないと思っている人、現実に遭遇するとパニックに陥ってしまう人が多い。日弁連意見書にもあるが、基礎自治体レベルで消費生活部門、福祉部門、警察が連携し、高齢者の消費者被害の見守りネットワークを構築する取組が必要である。地域社会の役割がより一層期待される。(H・S)

 

市民集会
司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を
12月4日 日比谷コンベンションホール

  • 司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を求める市民集会

司法修習生に対する給費が貸与制に移行し、修習生や新人会員からは、法科大学院時代の奨学金に加えた新たな負担に苦しむ声が多く聞かれる。貸与制への移行を理由に法曹志願を断念する者もいるという。本集会では、司法修習生を取り巻く現状の報告を受け、給費の実現と充実した司法修習の必要性について検討した。

 

政府の法曹養成制度改革推進会議での議論状況を踏まえ、司法修習費用給費制存続緊急対策本部の新里宏二本部長代行(仙台)は、「世間では司法研修所の座学のみをやっているという誤解があるが、修習生は実務家としていずれ司法権を担うために活動しているということの理解を得る必要がある」と述べた。

また、貸与制下での司法修習を経験した同本部の小竹克明事務局員(東京・65期)は、「第66期司法修習生への修習実態アンケート」結果を自身の経験も交えながら紹介した。その中では、「修習生の地位・身分についての不利益」の具体例として、収入はないのに健康保険が扶養から外れるなど、修習生が実際に直面した不都合が数多く指摘された。

給費の実現に向けた新たな取組として、同本部の釜井英法事務局長(東京)は、医師会や労働組合、生活協同組合を始めとする組合、市民団体等への団体署名活動の実施と50団体から署名を集めた実績を紹介し、今後も推し進めていくとの方針を示した。

市民の声として、労働者中央福祉協議会の大塚敏夫氏は、「借金まみれでは法の支配を十分に根付かせるための活動を行うことができない」とし、貸与制の継続に警鐘を鳴らした。

また、現役大学生の竹崎祐喜さんは、全国の法曹関係者に対し、「法曹を目指す後輩を後押ししてほしい」と、給費の実現に対してより一層の関心を持つよう訴えた。

 

日弁連短信
攻めと守り

大貫次長

 

弁護士法七二条に基づき弁護士は法律事務を独占している。これはきちっと守っていかなければならないものである。他方、法律事務の内容・種類は時代の流れに応じて多様化・拡大化しており、こちらについてはどんどん攻めていく必要がある。

現執行部は、まず、「守り」について、これまで不退転の覚悟で闘ってきた。行政書士に行政不服申立ての代理権を認めさせようとした行政書士法の改正運動に対しては、昨年春の通常国会、昨年末の臨時国会中の動きを徹底的に叩き法案提出を阻止した。弁護士に対し税理士登録の要件として会計に関する「試験」を課そうと試みた税理士法の改正運動についても、昨年末に沈静化させた。現時点で動いているものは、全国社会保険労務士連合会、日本弁理士会、全国サービサー協会等とのせめぎ合いである。もちろん、日弁連がやみくもに不合理な反対をしているというわけでなく、国民の権利・利益に資するか否かという点からの反論をしている。今後もきちんとした守りを継続していく。

次に「攻め」の点である。現執行部は、さまざまな攻めの布石を打ちかつ実行してきたが、本稿では、特に弁護士の国際業務対応のために行ってきたことを中心に述べる。まず、中小企業の海外展開をサポートできる弁護士を供給できる体制作りについては、WGを中心に確実に実行されつつあり、現在では多くの案件を受任し対応しているという状況になっている。

次に、特に海外経験のないあるいは少ない若手会員を対象とし、IBA年次大会等有益な国際会議に日弁連がその参加費用を一部負担することとし参加を募っている。これまで47人の会員がこの制度によって数々の国際会議に参加し、かつ参加した会員からは「非常に有益だった」とのコメントを頂いている。また、国際機関で勤務するためのアプローチへのサポートや、日弁連海外ロースクール推薦留学制度の対象校拡大のための活動および留学準備のサポート等も実施している。

その他、検討中の企画としては、専門機関と共同した会員向け英語研修の準備、日本の弁護士の東南アジア展開のための諸施策の検討、国内の外国人・外国法人を巡る渉外案件に対応できる弁護士の育成・供給の方法の検討等がある。さらには、アイデアレベルのものの検討も含め、日々国際化のための検討を行っている。

ボーダレスに各国を行き来し、なんの抵抗もなく英語(現時点でのメインの世界共通語)を駆使し、日本法に加え複数のローカルの法律を得意分野とするような弁護士が続々と出てくるような時代を夢見て、「今できることはなにか?」を常に追い求め頑張っていきたい。

(事務次長 大貫裕仁)


 

第66期司法修習終了者対象
就職・即時独立開業に関する相談会
12月20日 東京都港区

  • 【第66期司法修習終了者対象】就職・即時独立開業に関する相談会の御案内

12月19日、第66期司法修習終了者の一括登録が行われ、同時点での未登録者は570人、全体の約28%を占めた。依然として弁護士の就職事情が厳しい中、一括登録時以降に法律事務所や企業等への就職を希望する者や即時独立開業を検討する終了者への情報提供の機会として実施した相談会の相談担当者に話を聞いた。

 

本相談会は、来場者に個別に就職先をあっせんするのではなく、就職活動の進め方や独立開業へのアドバイスおよび情報提供を行い、相談に応じることを目的としている。会場には複数のブースが設けられ、若手法曹センターの委員・幹事が相談に当たった。

相談担当者の武田龍生会員(秋田)は、東京近郊に在住する相談者に、東京という大都市での就職事情だけでなく、弁護士過疎地域の実情を知ってもらう意味で本相談会は有意義と評価しつつも、「弁護士過疎地域での就職は、人脈やルートがないと、現実的に容易ではない」と語り、弁護士過疎地域での活動を希望する者に、情報収集を積極的に行うよう呼びかけた。

北條将人会員(横浜)は、「能力や来歴から申し分ない終了者が本相談会に訪れていることが現在の就職難を示している」と述べるとともに、未登録のまま67期修習生の就職活動時期を迎えた場合、ますます就職が厳しくなるとの懸念を示し、「どこかの段階で登録して就職活動を続けることも考えられるだろう」と語った。

また、藤原靖夫会員(東京)は、「相談者には即時独立を積極的に希望する者は多くはないが、本相談会をきっかけとして決断をする者も少なくない。志をもって法曹を目指した以上、就職・即時独立いずれを問わず、当初の志を全うできるようになってほしい」とエールを送った。

 

日弁連新聞モニターの声

日弁連新聞では、毎年4月に全国から71人のモニター(任期1年)を推薦いただき、そのご意見を紙面作りに活かしています。

本年度は、日弁連が重要課題として取り組んできた原発事故損害賠償請求権の消滅時効期間特例法、反対運動を継続してきた特定秘密保護法などの成立が相次ぎ、これらの関連記事について高い関心が寄せられました。また、刑事司法改革、法曹養成制度改革などの議論状況についての報告記事も、依然として注目されています。

4面の特集記事は広報室嘱託がタイムリーな情報発信を目指して毎号作成しています。6月号「面会交流支援事業の最前線」、8月号「弁護士とメンタルヘルス」、10月号「弁護士によるいじめ予防授業」などは特に人気がありました。

3面は主にシンポジウム等のイベント記事を掲載しています。多種多様なイベントから毎号5~6のイベントを厳選して取り上げていますが、紙面の制約もあって「内容が薄い」「説明が足りない」などのご意見もいただきます。リード文でイベントの意義を簡潔に説明し、なるべく具体的な議論を紹介するなど今後も工夫したいと思います。

掲載記事について、日弁連の政策関連情報のみならず、業務関連の記事をもっと取り上げてほしいとのご意見もあります。広報室としても、会員のニーズに応える紙面作りに今後とも努めていきたいと考えています。

(広報室長 勝野めぐみ)


 

新事務次長紹介

 

野口啓一事務次長の後任として、2月1日、松本敏幸前人権部長が事務次長に就任した。

 

松本 敏幸 まつもと としゆき (1992年入局)

松本 敏幸氏

 

日弁連の活動の重要性、日弁連の存在意義がますます大きくなっている中、職員の事務次長として会務を下支えする事務局機能のさらなる充実・強化に努めます。


 

掛金値上げのお知らせ
日本弁護士国民年金基金

本年(平成26年)4月1日から掛金が改訂(値上げ)されます(認可申請中)。加入や増口を検討中の方は早めにお申し出ください。

 

◇対象: 4月1日以降の新規の加入と既加入者 増口分(60歳以降に加入できる特定加入も値上げされます)
◇値上幅: 11・9%~1・2%(年齢や加入する型などにより異なります)
◇国民年金基金の特徴 ①国民年金法に基づく公的年金(日弁連が母体となって平成3年に設立)
②積立方式の年金制度(掛けた掛金は将来年金として給付)
③掛金全額が社会保険料控除の対象(所得税・住民税が軽減・年間最大81万6千円)
④受給する年金は公的年金等控除の対象
⑤口数制で自分のライフスタイルに合わせた設計が可能(増口や減口が自由)
◇お問合せ・資料請求先 TEL 03・3581・3739
FAX 03・3581・3720
icon_page.pngURL http://www.bknk.or.jp
※年金額などは当基金のHPでシミュレートできます

 

第1回
弁護士職務の適正化に関する全国連絡協議会
12月13日弁護士会館

各弁護士会における市民窓口および紛議調停制度の実情調査や改善等に関する意見交換を行うため、2002年から「市民窓口及び紛議調停に関する全国連絡協議会」が開催されてきた。その活動を引き継ぎ、さらに弁護士および弁護士会が市民から信頼され続ける存在であるために検討すべき実務上の課題について意見交換、問題意識を共有する目的で本協議会を開催し、各弁護士会の実務担当者が参加して活発な議論が行われた。

 

冒頭、早野貴文会員(東京)が「アメリカにおける弁護士規整の論理と機構」と題する講演を行った。

アメリカ法曹協会「弁護士懲戒制度の実効化のための『模範』規則」中の「包括的弁護士規整制度」について、弁護士の綱紀懲戒制度の他、依頼者保護基金、弁護士の業務過誤責任等の紛争の任意的仲裁・調停制度、弁護士業務の支援制度、弁護士制度を総体的に保障しようとするリスクマネジメントの発想から弁護士会が市民の苦情をワンストップで管理する「セントラル・インテイク・オフィス」制度の紹介があり、我が国での取組の方向性について示唆に富むものであった。

次いで、紛議調停制度および市民窓口について、事前に実施した各弁護士会での運用状況に関するアンケート結果の報告を踏まえ、意見交換を行った。その上で、紛議調停制度については、組織の在り方、手続の進め方、結果の取扱い等の制度全般に関する各弁護士会共通ルールを策定する必要性が、市民窓口については、市民と弁護士会とのコミュニケーションの窓口として機能すべきこと、窓口担当者の専門性を磨く必要性、その機能を果たすことにより不祥事発見の端緒としての機能と有することについて確認された。

最後に、2013年2月付で日弁連から各弁護士会宛に要請を行った「総合的な弁護士不祥事対策の取組について」を受けた各弁護士会の取組の実情とこれを踏まえた意見交換を行った。

 

全国外国人関連部会・委員会連絡協議会
情報共有と相談体制の強化を目指して
12月5日 弁護士会館

法改正による新たな在留管理制度の施行、難民申請者の激増、国際結婚の増加による渉外身分関係事件の増加など、全国的に外国人をめぐる法律問題が多数生起している状況のもと、各弁護士会・弁護士会連合会では外国人事件に関する委員会や相談窓口等の設置が進んでいる。そこで、外国人の権利救済を実効化するため、全国の弁護士会・弁護士会連合会から関連委員会の委員が集まり、情報共有等を目的とした協議会を初めて開催した。

 

外国人関連委員会の設置状況

事前アンケートの結果によると、会内に外国人事件に関連する問題を扱う何らかの組織がある弁護士会・弁護士会連合会は28会あり、その内19会は定例の会議を持ち、専門性強化に向けた取組や相談事業の企画・運営等について検討している。

また、外国人向けの法律相談を実施していない弁護士会・弁護士会連合会は36会にのぼった。これは、相談時の通訳の確保が困難であることなど、さまざまな背景によるものである。

 

層を厚く、交流を広く

全体ディスカッションでは、今後の目標、課題について、外国人事件に携わる実働層の若手や中堅層を厚くしたいとの声が上がった。東京弁護士会や第一東京弁護士会では、法律相談担当者の育成という観点で事例検討会を行い、情報、知識を共有している。また、過誤が起こらないよう、最初の1年目の相談は5年以上のベテランと一緒に行い、内容のチェックを行う弁護士会もあった。

通訳の確保には苦戦する会が多く、刑事事件の通訳人名簿から確保している弁護士会もあったが、大学や他団体との交流・連携から確保できないかとの議論が交わされた。中には国際交流協会との共催で法律相談を行っている会もあり、協会の方で通訳を確保しているとの興味深い報告もあった。

その後は、大谷美紀子会員(東京)による「外国人の人権の視点から」と題したハーグ条約の解説がなされ、参加者は熱心に耳を傾けた。

 

市民大集会
労働法制の規制緩和と貧困問題を考える
12月13日 日比谷野外音楽堂

  • 労働法制の規制緩和と貧困問題を考える市民大集会

12月12日、厚生労働省の労働政策審議会から、労働者派遣法の規制を緩和し、すべての業種で派遣労働者を継続的に使用できるとする報告書骨子案が提示された(1月29日には同審議会による改正建議)。派遣労働を臨時的・一時的な業務に限定する労働者派遣法の大原則の転換にとどまらず、限定正社員制度や労働時間法制の規制緩和も議論されており、現在、労働法制は大きな岐路に立っている。この問題の重要性を広く社会にアピールするため市民大集会を開催した。

 

労働法制規制緩和の流れ
2000人もの参加を得て会場は熱気に包まれた

冒頭、西谷敏名誉教授(大阪市立大学)は、労働者派遣法改悪のみならず、解雇の金銭解消制度の導入による解雇制限の緩和、残業代ゼロのホワイトカラーエグゼンプションの導入、大学などが研究者を有期雇用できる期間の上限を従来の5年から10年に延長する旨の研究開発力強化法改正による労働契約法一八条の5年ルールの骨抜き、職務・地域等を限定する限定正社員制度の普及を挙げて、「今ほど労働法制が危機的状況にある時はない」と語った。

竹信三恵子教授(和光大学)は、元新聞記者として取材にあたった経験から、「派遣社員は派遣先に文句を言いたくても雇用関係がない。派遣会社に言っても、お客様である派遣先には伝わらない」と間接雇用の問題点を指摘した。

 

労働法規制緩和を許すな

その後、マツダ派遣切り事件訴訟原告の佐藤次徳氏が、派遣社員と派遣先との間に黙示の労働契約を認め、未払い賃金の支払を命じた山口地裁の判決を紹介した。次いで、東京東部労組メトロコマース支部委員長後呂良子氏が、65歳定年制に反対してストライキを断行したことで、雇用半年延長を勝ち取ったと続けた。後半は、9つの団体から労働法規制緩和を許すなという呼びかけがあり、冷たい風が吹く野外音楽堂を熱くした。


 

セミナー
中小企業再生支援の実務
特定調停手続の活用を中心に
12月11日 弁護士会館

日弁連は、金融円滑化法終了への対応策として、特定調停手続を中小企業の事業再生に利用するための運用について最高裁判所および中小企業庁と協議を重ね、この度運用が開始されることとなった。
どのように中小企業の再生に活用できるのか、セミナーでは全国の弁護士が熱心に講師の解説に聞き入った。

 

経営改善計画策定のポイント

特定調停手続を利用した中小企業の事業再生スキーム(特定調停スキーム)とは、弁護士、公認会計士等の専門家が協力して経営改善計画案を策定し、各金融機関との事前調整を行った上で合意の見込みがあるものについて特定調停手続を申し立てるものである。金融機関との事前調整を経ているため、調停期日は1回から2回で終了することから、事前の準備が重要となる一方、比較的短期間での再生が可能となる。

前半、特定調停スキームの解説への導入として稲垣靖氏(公認会計士)により行われた講演では、通常の金融機関交渉における経営改善計画策定の際のポイントについて、①計画期間を10年以内とすること、②計画期間終了時においては債務者区分が要注意先であっても金融機関は了解するであろうことなどの指摘がなされた。

 

利用の手引を活用

後半は、日弁連中小企業法律支援センターの髙井章光事務局次長(第二東京)から、日弁連が最高裁らと協議して作成した「特定調停スキーム利用の手引き」に基づく解説がなされた。

本スキームでは、信用保証協会の求償権放棄も可能であり、負債総額や売上が比較的少なく、民事再生手続では予納金の準備が厳しいケースには有用そうだ。

髙井事務局次長は、「資金繰りに窮するような場合は特定調停申立前の段階で約定金利以上は支払えるよう、経営改善の支援が必要」として、本格的な再生処理が必要な場合、申立前から受任弁護士が経営改善策に基づいて金融機関と交渉することも必要と説明した。

(「特定調停スキーム利用の手引き」は会員専用ページからダウンロードが可能。金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム

 

全国冤罪事件弁護団連絡協議会第22回交流会
糸島放火事件を振り返って
12月5日 弁護士会館

  • 全国冤罪事件弁護団連絡協議会第22回交流会「糸島放火事件上告審決定~裁判員裁判による有罪判決に対する事実誤認審査のあり方について~」

今回は糸島放火事件を題材とし、その審理経過について、一、二審弁護人の知名健太郎定信会員(福岡県)、丸山和大会員(福岡県)、上告審弁護人の古賀康紀会員(福岡県)、九州大学の田淵浩二教授が報告を行った。

 

本件は、2009年某日の午前4時40分ころ発生の福岡県内の男性宅の放火事件で、不倫相手の女性が起訴された。

一審裁判員裁判は、①4時52分を含め5回、火災発生時近く、現場から約300㍍のコンビニの防犯カメラに被告人車両の走行が映っていた②被告人は男性の中傷ビラを貼り、無言電話を掛けており放火の動機とも矛盾しない、等から有罪と認定した。

控訴審は、①の5回の走行のうち、4時52分以外はその事実が認められないとしたうえ、一審認定の間接事実は被告人が犯人であることと矛盾しないが、被告人が犯人でないとしたならば説明しえない事実関係を含むとは言えない(最判平22・4・27)とし、原判決を破棄し無罪とした。

検察官は上告し、抽象的な可能性としては反対事実存在の疑いをいれる余地があっても健全な社会常識に照らしその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合は有罪認定が可能とする最判平19・10・16、裁判員裁判判決を破棄するには、原判決が論理則、経験則に違反することを具体的に指摘する必要があるとする最判平24・2・13に照らせば本件は有罪認定が可能であると主張した。 結局、最高裁は、検察官の上告理由は結局法令違反及び事実誤認の主張であり、適法な上告理由に当たらないとして棄却した。

報告に続く討論では、「検察官上告趣意は最判の誤読である」、「本件は、間接事実の総合評価で推認力が足りないとされたもので、有罪判決破棄のために、具体的な証拠にもとづく具体的な疑いを示す必要はない」、「最判平24・2・13は反面で裁判員裁判有罪のとき、破棄が難しくなることが心配されたが、射程がそこまで及んでいない」、等の意見が交わされた。

(全国冤罪事件弁護団連絡協議会座長 今村 核)


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.86

「弁護士情報セキュリティガイドライン」をご存じですか

日弁連は、2013年12月、「弁護士情報セキュリティガイドライン」を制定しました。これは、メーリングリストおよびインターネット上の掲示板における情報漏えい事件を受け、弁護士業務の中で情報漏えいリスクが高い場面での留意事項をまとめたものです。
今回は、ガイドラインの概要について紹介するとともに、ガイドライン案の策定に関わった、「弁護士業務における情報セキュリティに関するワーキンググループ」の稲垣隆一座長(第二東京)をはじめ、委員の方々に今後の課題や活動予定などについてもお話を伺いました。

(広報室嘱託 白木麗弥)

 

ガイドラインの位置づけ
弁護士情報セキュリティガイドライン

目次

  • 第1 本ガイドラインの目的と利用方法
  • 第2 定義
  • 第3 情報倫理
  • 第4 情報の受領
  • 第5 情報の作成及び変更
  • 第6 情報の保管
  • 第7 情報の発信・交付
  • 第8 情報の持ち出し・複製
  • 第9 情報の廃棄・返還
  • 第10 媒体の処分
  • 第11 会議・期日出席
  • 第12 組織的及び人的な体制
  • 第13 物理的な体制

 

弁護士法第二三条は、弁護士の秘密保持の権利と義務を規定し、弁護士職務基本規程第一八条は、事件記録中の秘密およびプライバシーの漏えい防止の注意義務を規定している。ガイドラインは、これらの規定に関する解釈指針を示すものとして位置づけられ、弁護士・法律事務所が行うべき最低限の情報セキュリティ対策を規定するものでも、十分な対策を規定するものでもない。このように、弁護士に対し、ガイドラインが定める取組を行う義務を新たに課すものではないため、綱紀・懲戒の直接の基準となることは想定されていない。

とはいえ、情報漏えいが顧客との信頼関係や弁護士全体の信用に問題を生じさせることは間違いない。このガイドラインを参考として、弁護士一人一人が適切な情報セキュリティ対策を構築、実施し、点検の上改善し続けることが望まれる。

 

場面に即したリスクを認識しよう

ガイドラインは、ノートパソコンやスマートフォンなどのIT機器等を利用する場合だけでなく、紙媒体の不適切な管理による事故をも想定している。また、情報の受領、作成・変更、保管、発信・交付、持ち出し・複製および廃棄・返還など、弁護士業務の過程で事件情報や個人情報の漏えいが危ぶまれる場合を想定し、それぞれの場面において考えられる対応策を定めている。

例えば、情報の受領という場面1つをとっても、FAXによる受信、郵便・宅配便、あるいは電子メールによる受領等、多様な形態が考えられる。ガイドラインでは、FAXによる情報の受領においては、「直ちに発信者および内容を確認し、発信者または内容に不審な点または間違いがあったときは、速やかに発信者または正しいと思われる発信者に電話等で連絡し、確認するのが望ましい」こと、電子メールにより事件情報等を受信した場合、「その電子メールを消去しないことが望ましい」ことなど、受領方法ごとに、情報を受領した弁護士が講ずることが推奨される情報漏えい防止策を規定する。

また、情報の発信という側面について言えば、近時、業務上作成する書面等を電子メールの本文に添付して送信するケースも多いと思われる。この場合、添付ファイルにパスワードを設定し、パスワードは別メールで通知するなどの措置を講じることが強く推奨される。また、複数の宛先に電子メールを送信するときは、各宛先同士がメールアドレスを不当に知られることがないよう配慮したい。

 

情報環境の変化に応じた対応策を

IT機器やウェブサービスの急速な進歩が弁護士業務を取り巻く情報環境を激変させている。例えば、今般ブログやFacebook(注1)などのSNSを利用する弁護士や、弁護士間の情報共有のためにメーリングリストやDropbox(注2)などの大容量ファイル保管サービスなど、第三者が提供するウェブサービスを利用する弁護士も少なくない。ガイドラインではこのようなサービス特有のリスクに着眼し、これらのサービスを利用する場合の情報漏えい防止のための留意点についても定めている。

まず、SNSにおいて事件情報等およびこれを推知させる情報を取り扱わないこと、ウェブサービスを用いてデータを取り扱うときは、その運営者が規約等で利用者に対し第三者への情報提供をしないことを保証していることを確認し、保証していない場合には当該サービスを利用しないこと、適切なログインIDやパスワードを設定するなど相当のアクセス制限措置を講じ、第三者が自己になりすまして当該サービスを利用できないように注意すること、同サービスの利用を停止するときは、当該サービスで保管しているデータを確実に消去することなどが強く推奨される旨定めている。

 

情報の内容・性質に応じた適切な措置を

業務に関する情報の中でも、その性質上漏えいにより深刻な結果を招く恐れがあるため、特に機密性の保持に留意しなくてはならないものがある。例えば、裁判員候補者や裁判員の個人情報、特定人の信仰や病歴などのセンシティブ情報、犯罪被害者の個人情報などがそれだ。これらにつきガイドラインは、事件記録や事件情報を保管した媒体の適宜の場所に注意喚起の表示を行う等の適切な措置を講じることが強く推奨される旨定めている。

 

今後は根付かせる活動を

ガイドライン策定後の今後の活動予定について、ワーキンググループの委員に話を聞いた。

平岡敦委員(第二東京)は、「IT機器についての知識が弁護士間で大きく異なることから、弁護士の情報環境に応じたマニュアルや支援ツールを作る予定です」とマニュアルの作成を計画の1つに挙げた。また、これとは別に、全会員にガイドラインの存在と内容を周知するため、リーフレットを作成・配布する予定であるとのことなので、こちらも活用してほしい。

さらに、ワーキンググループでは、eラーニングの研修コンテンツの制作にも取り掛かっている。視聴した会員が、ガイドラインを踏まえて講ずべき情報セキュリティ対策について具体的イメージを持てるようなコンテンツを目指している。

これに加え、葭原敬委員(第二東京)は、「将来的には研修を受講するインセンティブとして、講座の修了証のようなものを作ってはどうかと検討しています」と語る。修了証を掲示することでセキュリティ対策に関する研修の受講を顧客にも明らかにする仕組みだ。

研修について本田正男委員(横浜)は、「年代・地域等によって、ITに関する知識量や事情が異なると思われるので、今年は各地でキャラバン研修を行い、将来的には各地の弁護士が情報セキュリティ対策を先導してくれる存在になってくれればと考えています」と抱負を語った。

稲垣座長は、「このガイドラインの策定だけにとどまることなく、各々の弁護士にその内容を定着させることに力を注いでいきます。また、今後も日弁連に必要な情報セキュリティに関する提言をしていくつもりです」として、ガイドラインの周知、定着の必要性を語った。

 

ガイドラインは、会員専用ページからダウンロードできる(弁護士情報セキュリティガイドライン)。ぜひ全文に目を通していただきたい。

 

(注1) Facebookは、Facebook,Inc.の登録商標です。
(注2) Dropboxは、米国Dropbox, Inc.の商標または登録商標です。

 

ブックセンターベストセラー
(2013年10月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 平成24年改正 知的財産権法文集 平成25年10月1日施行版 発明推進協会 編 発明推進協会
2 Q&A 家事事件と銀行実務 ―成年後見・高齢者・相続・遺言・離婚・未成年 斎藤輝夫・田子真也 監修 日本加除出版
3 要件事実マニュアル 第5巻[第4版]―家事事件・人事訴訟・DV 岡口基一 著 ぎょうせい
4 慰謝料算定の実務[第2版] 千葉県弁護士会 編 ぎょうせい
新版 家庭裁判所における 遺産分割・遺留分の実務 片岡 武・菅野眞一 編著 日本加除出版
6 和解をめぐる法務と税務の接点 服部 弘・宮森俊樹 編集代表 大蔵財務協会
7 法人破産申立入門 三森 仁 監修 第一法規出版
労働審判実践マニュアル Ver.2 日本労働弁護士団 日本労働弁護士団
9 季刊 刑事弁護 No.76 特集 性犯罪事件を争う 現代人文社
10 逐条解説 家事事件手続法 逐条解説シリーズ 金子 修 編著 商事法務

編集後記

弁護士登録してから14年目になるが、あらためて今月号の紙面を概観すると、月日は流れたのだ、と感じる。債権法改正の議論が進み、この夏には要綱仮案が示される見込みだという。労働法制も規制緩和に向けて抜本的に変容しつつある。また、司法修習・修習生を取り巻く環境も激変した。修習生時代は「給費制」という言葉すら意識していなかった。登録直後、さんざん先輩弁護士の指導を仰いだ経験を振り返ると、即独を選択する新人弁護士の心中如何という気持ちになる。
今月号の特集では、弁護士情報セキュリティガイドラインを紹介した。弁護士業務を取り巻く情報環境も日々刻々と変化している。筆者はITには疎い人種だが、それでも多様なウェブサービスを利用する機会は少なくない。ガイドライン策定をきっかけに、今一度自らの情報管理を見直してみたい。(M・K)