日弁連新聞 第479号

弁護士業務改革シンポジウム開催
7分科会において活発な議論
11月8日神戸市

  • 第18回弁護士業務改革シンポジウム

第18回弁護士業務改革シンポジウムを開催し、7分科会に分かれて弁護士業務に関する課題等を議論した。このうち4つの分科会の模様を報告する。その他の分科会では、弁護士紹介制度、弁護士保険、民事信託がテーマとされた。なお、各分科会の詳細な報告は、「自由と正義」2014年4月号に掲載予定である。

 

地方自治体の課題と弁護士の役割

第1分科会

福岡市職員の久保健二会員(中央)

パネルディスカッション冒頭、パネリストとして職員が登壇した福岡市こども総合相談センター(児童相談所)における、シンポジウム前日の出来事が紹介された。児童虐待によって病院に搬送された子どもに緊急手術の必要が生じ、両親からの承諾が得られないことから、急きょ親権停止の申立を行うこととなったが、担当課長が弁護士であったことから円滑に申立を行うことができ、シンポジウムに予定どおり参加することができたとのこと。弁護士が自治体内職員として関与することの意義が実例をもって示された。

続いて、地方分権改革推進法、情報公開法などにより、自治体が自ら考え行動することが求められるようになり、ゼネラリストの職員のみでは多様な問題に対応できなくなっているという自治体を取り巻く状況変化と課題が挙げられた。それを受けて、迅速かつ日常的に相談できる専門家がトータルに自治体に関わり、政策を立案し、法的紛争の予防に努めることの必要性が述べられた。

また、自治体における弁護士の活用方法として認知されつつある任期付公務員の弁護士を増やすためには、自治体に対し、費用対効果(いくらかかり、何をするか)を明確にすることが必要であること、任期付公務員として自治体内で働こうとする弁護士には、法的知識はもとより組織の中で働くことに対する理解が必要との指摘があった。

 

スポーツ基本法と弁護士の役割

第2分科会

元アスリートとして登壇した溝口紀子氏(左)と福田正博氏

前半は、オランダ国内外でスポーツ法に関する多数の会議やセミナーを開催するロバートC.R.シークマン教授(エラスムス・ロースクール)による、スポーツ界におけるドーピング防止活動の現状や不正・腐敗行為の撲滅に向けた潮流等をテーマとした基調講演に引き続き、海外調査の報告や、スポーツ団体の全国組織115を対象に実施したアンケートの集計結果が報告され、スポーツ団体が弁護士に相談できる窓口へのニーズがあることなどが紹介された。

後半は、道垣内正人氏(公益財団法人日本スポーツ仲裁機構機構長)が基調講演を行い、同機構が現在扱う紛争類型とそれぞれに応じた仲裁規則を紹介するとともに、スポーツ界で不祥事が頻発している現実を考えると、従前のような行政訴訟型の仲裁の仕組みではなく、ルール違反行為に対しては、第三者のイニシアティブにより違反者が制裁を受けるという刑事訴訟型の仲裁の仕組みが必要であると指摘した。

続くパネルディスカッションでは、元アスリートやスポーツ団体関係者らをパネリストに迎え、各パネリストが関与する競技での現状報告や問題提起がなされ、アスリート個人の権利擁護、スポーツ紛争防止のために相談窓口や紛争解決機関の設置が必要であることなどが議論された。

 

Facebook(注1)などSNSと弁護士の関わりと、情報漏えい対策

第3分科会

冒頭、コンサルタントの成松広持氏からSNSの基本的な知識についての解説がなされた。同氏によれば、Facebookは名刺交換が発展したツールである一方、Twitter(注2)はチラシ配布の発展系であるという。その上で同氏は、「弁護士業務で活用しやすいのはFacebookであろう」との考えを述べた。また、SNSの活用が顧客の獲得に繋がるのかという点については、まずは使ってみて人との繋がりを楽しむ中で、人柄をわかってもらえると業務に繋がることがあるという説明があった。

座談会では、弁護士の人柄をわかって法律相談にくるので受任率が高い、事件終了後もFacebookで依頼者と繋がっていることで紹介事件が多くある等のSNSの有用性が紹介された。

SNSを利用することのリスクとしては、匿名だと事件の相手方である可能性が排除できない等が挙がった。

情報漏えいに対しては、現在日弁連で弁護士に対する情報セキュリティガイドラインを策定中であることが紹介された。

 

(注1) Facebookは、Facebook,Inc.の登録商標です。
(注2) Twitterは、Twitter,Inc.の登録商標です。


 

弁護士による中小企業の海外展開支援

第7分科会

前半、2013年7月に日弁連中小企業法律支援センターが国内の企業を対象に行った、海外展開における国内弁護士の活用状況に関する実態調査の結果が報告された。これによると、企業が海外事業を行う上で、法規制・制度の違い、代金・投資の回収方法や知的財産の管理などを障害と感じているのに対し、とりわけ従業員の少ない企業ほど、国内の弁護士にこれらの問題に関する助言を求めた経験がないという実態が明らかになった。

弁護士登録当時、国内民事事件を主に扱う事務所に就職しながら、その後留学を経て、主として中小企業の海外展開支援業務に携わるようになったという樋口一磨会員(東京)は、日本の弁護士として渉外業務を扱うのに必要な素養について、一定の英語力のほか、現地弁護士とのネットワークが重要であると指摘し、IBAなどの国際団体に積極的かつ継続的に参加しているとの自らの体験談を語った。

後半は、中小企業の海外展開支援に関し、中小企業庁、日本貿易振興機構(ジェトロ)などや弁護士会からの報告やパネルディスカッションが行われ、中小企業がその拠点の近くで気軽に海外展開に関して法的サービスを受けられるようにする必要性や、海外展開を行う弁護士の裾野拡大、諸団体との連携の重要性があらためて確認された。

 

福島第一原発事故による損害賠償請求権の消滅時効期間特例法案
衆議院で可決される

11月28日、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案」が衆議院本会議において全会一致で可決され、今臨時国会で成立する見通しである。

 

この法案の主な内容は、東日本大震災に伴う原発事故による原子力事業者に対する賠償請求権に関する民法第七二四条の規定の適用については、①「3年間」とされている消滅時効の期間を「10年間」とし、②「不法行為の時から20年」とされているいわゆる除斥期間を「損害が生じた時から20年」とするものである。なお、対象となる賠償請求権は原子力事業者(東京電力)に対するものに限られている。

日弁連は、本年7月18日付けで「東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の時効期間を延長する特別措置法の制定を求める意見書」を取りまとめ、2013年中の立法を求めていたが、本法案は、日弁連意見書の内容と異なる点はあるものの、その目的、方向性については軌を一にするものであり、評価することができる。

原発事故の賠償については、今後も算定と支払いが続く状況であり、この法律が成立することにより、時効完成の不安が払しょくされることになる。

これを1つの契機として、すべての被害者が、速やかに適切な賠償を受けられるよう、また併せて、賠償だけではカバーできない生活再建のための十分な支援が受けられるよう、その被害の完全回復のために今後も全力を尽くしていきたい。

(事務次長 谷 英樹)


 

ひまわり

12月16日は電話創業の日。1890年のこの日、東京市内と横浜市内および両市間で電話サービスが始まった。市内通話の年額使用料は東京が40円、横浜が35円の定額制で、現在の貨幣価値に換算すると約10万円という高価なものだった。今は天気予報を伝える177が、大隈重信の電話番号だったのは有名だ。加入数は東京と横浜合わせて200件ほど。電線から病気がうつると恐れられたり、火事を起こすと心配されたという▼それから130年。今年3月には、固定電話契約数は約5700万件、携帯電話・PHSの契約数は約1億4100万件になり、通信は格段に便利になった。他方、心配事も電線から病気がうつるなどという絵空事から、盗聴による情報漏えいや、憲法の保障する通信の秘密、プライバシー権、言論・表現の自由の侵害に変化した▼11月26日には特定秘密保護法案が衆議院本会議を通過した。同法案には共謀に対する罰則も含まれている。共謀の容疑を理由に、犯罪捜査の過程で日常的な会話が盗聴される危険性がある。米国の諜報機関による盗聴が次々と発覚し、盗聴による情報漏えいが国際的にも問題となっている今、盗聴、プライバシー権、言論・表現の自由、知る権利について今一度考えたい。

(R・S)


 

法曹養成制度改革
第3回顧問会議開催

11月12日、法曹養成制度改革顧問会議第3回会議が開催され、司法修習、司法試験・予備試験、法科大学院、法曹人口、法曹有資格者の活動領域の拡大について議論が行われた。

 

司法修習

導入的集合修習の創設について最高裁から司法修習委員会等における議論状況が報告され、法曹養成制度改革推進室からは、1カ月程度の導入的集合修習の創設が提案された。

 

司法試験・予備試験

推進室から、試験科目について法科大学院関係者へのヒアリングを実施したところ、司法試験の負担軽減にはほとんどが賛成で、司法試験の論文式試験の選択科目の廃止については賛成4反対3、予備試験の短答式削減については賛成2反対5であったこと等が報告された。

選択科目の廃止について、法科大学院協会のアンケートで多くの関係者が反対し、知的財産や環境等に関わる団体も反対意見をあげていること等を指摘した上で反対する意見、選択科目を仮に廃止するとしても、法科大学院の履修における担保措置が必要との意見、基本科目をきちんとやることが重要として選択科目の廃止に賛成する意見があった。

予備試験については、顧問から、太いバイパスになっていることへの懸念が示され、短答式科目の削減に反対する意見、科目削減だけ先行することへの疑問が示された。

 

法科大学院の公的支援見直し強化策

文科省が公表した公的支援見直しの更なる強化策について、司法試験の合格率・入学定員充足率等の指標によって、法科大学院を3グループに分類し、公的支援の配分を決定することの説明があった。また、推進室からは、裁判官・検察官教員の派遣についても、文科省の分類に従い見直すことの説明がされた。

 

法曹人口

推進室から、現在検討中の法曹人口に関する調査の視点・考慮要素に関する説明があり、今後、専門家と協力しながら準備を進めていくとの報告があった。

これについては、推進室説明の視点・考慮要素に「就職状況」が入っていないとの指摘があり、ほかにも、法廷外実務の需要の把握を求める意見があった。

 

法曹有資格者の活動領域拡大

最後に、推進室から、法曹有資格者の活動領域拡大について、2回にわたり開催された有識者懇談会を始めとしたこれまでの議論状況の報告があった。

(事務次長 鈴木啓文)


 

日弁連短信

本当に必要なのは事務総長の国際化?

 

荒事務総長

本年9月18日から22日までドイツのベルリンで開催された世界弁護士会事務総長会議に出席してきました。参加団体は49団体、総参加者数は54人でしたが、通訳(竹内千春国際室嘱託)を同行したのは私1人でした。私本人は勿論のこと、日弁連全体の国際化の遅れを痛感させられた瞬間でした。会議は実質3日間にわたり、合計11セッションが開催されました。

1日目は前年に引き続き、弁護士会が規制者と利益代表者の2つの役割を併有することの相当性と今後の弁護士会の役割について意見交換がなされました。驚いたのは前年にあれほど議論されたはずのABS(非弁護士による法律事務所の所有)について思ったほど拒否反応がなくなっていたことです。2日目は未来の法律家像について論じられ、そのような中で弁護士が公共の役割を重視するのか、依頼者の利益を追求していくのか、あるいは訴訟費用保険をどのように発展させていくのか等についてかなり厳しい意見交換が行われました。3日目は、事務総長が対会長、対職員・スタッフ等との関係において果たすべき役割について、自らの体験に基づき意見交換が行われました。

全体的な総括としては、弁護士自治が極めて流動化している時代の中で、弁護士自治の在り方をどう模索していくかということが、喫緊の課題として突きつけられているという実感を持ちました。併せて2030年という未来の国際・経済的情勢等の予測結果に基づいて、われわれ弁護士が果たすべき役割をすでに真剣に議論している人たちが多数いることに驚かされました。

国際化を重要課題の1つとして位置づけている日弁連としては、近い将来事務総長が1人でこの会議に出席できるようにすることが必要だと思いながら帰国しました。

(事務総長 荒 中)


 

民事司法を利用しやすくする懇談会
「最終報告書」を公表

経済団体、労働組合、消費者団体、学識経験者らを委員として設立された民事司法を利用しやすくする懇談会(民事司法懇)は、本年1月の設立から9カ月余り、利用者に身近な民事司法の在り方について討議を重ねてきたが、10月30日に開催した第5回懇談会で、最終報告書を取りまとめ公表した。

 

最終報告書では、民事司法制度を安全・安心と成長・発展の基盤をなす公共インフラと捉え、経済成長戦略を支える一環としてその整備拡充が喫緊の課題であると位置づけている。その上で、わが国の民事裁判の件数が各国と比較して極端に少ないこと、その要因は制度の利用のしにくさ、即ち、公共インフラとしての整備状況に大きな問題があることを民事司法の各分野と段階において実証的に明らかにし、解決のための課題を具体的に提起している。さらに、最終報告書の冒頭において、例えば、内閣直属で総理大臣を長とするような強い権限をもった検討組織の設置を関係機関に働きかけ、民事司法の利用者である納税者・国民に理解と支持を呼びかけるとしている。

また、法曹関係者は、弁護士も含めて、民事司法制度の運営の担い手であるとともに、利用者と制度の間をつなぐ架け橋であり、その意見と実情は適切に反映されるべきであるが、改革は利用者の視点で進められるべきであることが基本的視座とされている。「裁判所、法務省、そして日本弁護士連合会など司法関係機関の権限、努力だけでは、改革はほとんどが実行できないのではないか」とも言及している。

民事司法懇の提起した検討組織設置について、いかに会内合意を形成し、民事司法改革にどのように取り組んで行くかが今後の日弁連の課題となる。

最終報告書の内容は、民事司法懇のホームページから見ることができる。icon_page.pnghttp://minjishihoukon.com/

(立法対策センター事務局長 鈴木善和)


 

消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案
衆議院通過

先の通常国会からの継続審議となっていた「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」の審議が今臨時国会で再開され、自民・公明・民主の三党による修正案の内容で、11月1日、衆議院本会議において可決された。

 

三党提出の修正案は、本制度の内容に大きな変更を加えるものではなく、以下の事項につき、附則への追加を求めるものである。すなわち、①濫用防止のための方策を検討し、必要な措置を講ずること、②財政面も含め、提訴権者である特定適格消費者団体への支援の在り方等を検討し、必要な措置を講ずること、③施行3年での見直しの検討(5年から3年に短縮)、④見直しの検討対象には、被害回復関係業務の適正な遂行を確保するための措置と、本制度の対象となる請求・損害の範囲も含めること、⑤本制度が適用されない事案について、ADRの利用促進等、必要な措置を講ずること、⑥本制度の周知を図ることの六点である。

法案は、参議院消費者問題特別委員会に付託されたものの、森雅子消費者担当大臣が特定秘密保護法案の担当大臣にもなっている関係で審議入りも危ぶまれたが、11月27日、29日と審議が行われ、法案可決・成立が目前となっている。

なお、衆議院での審議再開に先立つ10月29日には、本制度の早期創設に賛同する日弁連ほか54団体の主催で、院内集会を開催した。同集会には与野党から20人の国会議員の参加を得て、満場の参加者を前に本制度の早期実現に向けた力強い決意表明がなされた。消費者被害回復のための制度の拡充は、喫緊の課題であり、今臨時国会での法案成立が強く望まれる。

(集団的消費者被害回復訴訟制度ワーキンググループ委員 本間紀子)


 

院内学習会
汚染水漏えいどうすれば止められるか
問題点の整理とあるべき方向
10月29日衆議院第一議員会館

  • 院内学習会「汚染水漏えい どうすれば止められるか~問題点の整理とあるべき方向」

福島第一原発事故による汚染水の漏えいが大きな問題になっている。この汚染水問題について、実情の正確な把握と漏えいを止めるための方策等を検討するため、院内学習会を開催した。

 

汚染水漏えい問題への対応策について説明する報告者ら

東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の海渡雄一副本部長(第二東京)が、日弁連では事故直後の2011年6月23日に「さらなる海洋汚染を未然に防止するため、福島第一原子力発電所に地下遮蔽壁の速やかな設置等を求める会長声明」を公表するなど、この問題について警鐘を鳴らしてきたこと等を紹介した。

元プラント技術者である川井康郎氏は、今回の問題の根本的な原因は、装置産業特有の定型的・反復的作業体質を有し、かつ事故当事者である東京電力に対応を任せきりにしてきたことにあるとした上で、「汚染水問題の解決のためにはプログラムマネジメント(活動全体を複数プロジェクトの結合体ととらえ、相互に関連する複数のプロジェクトの連携・調整を通じて状況変化に対応し、組織戦略に対応する統合マネジメントの手法)を導入し、政府が予算、人事をはじめとする広範な権限を有し、東京電力の実務組織の上位に位置する体制を責任を持って構築することが必要である」と強調した。

同様に元プラント技術者の筒井哲郎氏は、「現在検討されている凍土壁には過去の実績が無く、技術として未確立である。こうした新規技術ではなく、すでに十分な実績がある技術を用いて対処すべきである」と指摘し、すぐにでも実行可能な具体的手法を紹介した。

経産省の汚染水処理対策委員会では、広く技術提案の募集をした結果、「予想を超える約780件」の提案が寄せられたという。

本学習会には、与野党から30人近くの国会議員・議員秘書が参加し、活発な意見交換が行われ、この問題に対する関心の高さがうかがわれた。内外の知見を総動員して、抜本的な汚染水対策を進めることが今求められている。

(東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部原子力PT委員 只野 靖)


 

生かそう!いじめ防止対策推進法
真のいじめ防止対策をめざして
11月9日弁護士会館

  • シンポジウム「生かそう!いじめ防止対策推進法~真のいじめ防止対策をめざして~」

大津市のいじめ自殺事件を発端に社会問題化したいじめ問題に対処するため、いじめ防止対策推進法が今年6月に成立、9月28日から施行され、同法に基づく国の基本方針も公表された。各地で取組が開始されるこの時期に、実際の運用に当たっての課題を明らかにし、真のいじめ防止対策はいかにあるべきかを考えるため、シンポジウムを開催した。

 

基調講演を行った桜井教授

子どもと教師との信頼関係の構築が肝要

「いじめの原因とその対処法」と題して基調講演を行った桜井智恵子教授(大阪大谷大学教育学部)は、過当な競争が子ども同士のあつれきやストレスを生み、いじめを引き起こす要因となっているのに加え、多忙等の理由で教師と子どもとの対話が十分図られず、教師がいじめなどの学級内のトラブルを掌握していないことで対処が遅れているとの問題点を指摘した。

続いて、実際に学校で行われているいじめ予防授業の内容等について、平尾潔会員(第二東京)が報告した。同会員は「どうしていじめはいけないか、『いじめられる子が悪い』など、子どもたち自身が抱いている誤解を解く必要がある」と予防のための授業の必要性を訴えた。

 

みんなで関わるいじめ防止

後半に行われたパネルディスカッションでは、教育現場での経験を有する者やいじめ問題に関する第三者調査委員会委員の歴任者らによる議論が行われた。「いわゆる『加害者』に表面的に謝罪をさせても真の解決にはならない。いじめのあるクラスはみんなが影響を受けている。安心してものが言える環境を作ることが担任の役割だ」と長年公立中学校の教諭を務めた宮下聡氏は語った。

山田由紀子会員(千葉県)からは、同法や国の基本方針は、学校が講ずべき基本的施策の1つとして、いじめ対策の基本方針を定めるとともに、その措置を実効的に行うため、専門的な知識および経験を有する第三者が関与した組織を設置するよう求めているとの説明があった。全国の弁護士および弁護士会がこの「専門家」としていじめ問題防止に積極的に関与できるか否かが今問われている。

 

共謀罪創設反対を求める院内学習会
10月29日衆議院第二議員会館

  • 共謀罪創設反対を求める院内学習会

政府が導入の必要性を主張している「共謀罪」の規定は、わが国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高い。そこで、院内学習会を開催し、「共謀罪」の創設を含む組織犯罪処罰法改正案を提出すべきでないことへの理解を求めた。

 

房川樹芳副会長が「諸外国が特に国内法整備を経ることなく国連越境組織犯罪防止条約に批准している例をきちんと学べば共謀罪の創設が不要であることが理解できるはず」と開会の挨拶を述べたのに続き、共謀罪法案が三度廃案になった経過が説明された。併せて、今臨時国会に提出された特定秘密保護法案には共謀罪に関する規定が含まれており、この法案が成立すると、共謀罪法案提出の露払いとなるおそれがあることなどが報告された。

その後、共謀罪等立法対策ワーキンググループ委員でもある新倉修教授(青山学院大学法務研究科)が、「フランスにおける組織犯罪防止条約への対応に見る共謀罪立法の在り方」と題する講演を行った。フランスは歴史的に結社罪を持っている国であり、合意だけで処罰する共謀は処罰範囲も広くて受け入れられないと考えており、国連条約に沿ってテロ対策立法はとられたが、共謀を法制化することには反対してきたという歴史的経過を説明し、一挙に600もの共謀罪を新設するという日本の立法の在り方を批判した。

続いて、同ワーキンググループの海渡雄一委員(第二東京)が、「処罰の早期化と厳罰化という点で共謀罪法案と本質を同じくする特定密保護法案の臨時国会での成立阻止に注力し、共謀罪法案が提出されることがないように監視したい」と述べた。

(共謀罪等立法対策ワーキンググループ副座長 山下幸夫)


 

死刑廃止を考える日
11月11日 弁護士会館

  • 死刑廃止を考える日

日弁連は、2011年の第54回人権擁護大会において宣言を採択し、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかけている。
また、2008年から毎年「死刑を考える日」、2012年から「死刑廃止を考える日」を開催し、死刑をテーマにした映画の上映と報告等を行って、多くの方々とともに死刑の問題点について考える機会としている。

 

死刑廃止検討委員会の加毛修委員長(第一東京)は冒頭の挨拶で、死刑問題は刑事司法制度全体の問題として捉える必要があること、日弁連は死刑のない社会が望ましいことを見据えて、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかけていることを述べた。

続いて1970年代初頭のスペイン、フランコ独裁政権の末期に不当な裁判で死刑判決を受けた青年の実話に基づく映画、「サルバドールの朝」(2006年)を上映。主人公の青年は、スペインで最後に死刑が執行されたうちの1人である。スペインでは、独裁政権の終了、新憲法の制定とともに、民主主義と一体のものとして、死刑が廃止された。最後の執行から4年、1978年のことであった。

駐日スペイン大使館のフェルナンド・アロンソ参事官は上映後のスピーチで、「スペインでは『国は犯罪者と同じ立場になってはいけない』という考えのもと、死刑制度を拒絶するとともに、凶悪犯罪による被害の救済として、被害者および被害者遺族をサポートしている」と紹介した。また、「この映画を契機として日本でも死刑制度に関する議論が行われることを望んでいる」と述べた。

最後に、河田英正副会長が、既に死刑を廃止したEUが、世界に向けて死刑廃止を呼びかけていることを紹介し、わが国でも死刑廃止についての全社会的議論を開始することの重要性を訴えた。


 

2013ボストンから2014東京へIBA年次大会開催
10月6日-11日 ボストン

国際法曹協会(IBA)は、1947年に設立され世界の200の弁護士会、5万人を超える弁護士の会員を擁する世界最大の国際法曹団体で、人権、公益活動から最先端のビジネス法まで広範囲の分野を対象に活動している。今年はボストンで年次大会が開催され、5500人を超える参加者を得て、各分野の200近いセッションが繰り広げられた。

 

東京大会への参加を呼びかけた、昼食会でのプレゼンの様子

大会は、IBA会長の挨拶に続き、女性初の米国国務長官を務めたオルブライト元長官の基調講演で開会された。外交での経験を踏まえ法の支配の重要性を強調し、会場からの質問に真摯に回答する姿が印象的であった。

セッションは、ビジネス法、人権、公益活動、弁護士業務等多岐の分野に渡り、各分野の最先端の問題が討議された。また、参加者の交流、ネットワーキングが重要視されており、数多くの昼食会、レセプションが開催された。米国の古都である特徴を生かし、多くのレセプションは美術館、博物館で行われた。特に由緒あるボストン公共図書館内にある荘厳な雰囲気の大閲覧室でワインや食事を楽しむという心憎い演出が思い出に残った。

2014年10月には年次大会が東京で開催される。そのため、日弁連は国際活動に関する協議会内にIBA東京大会プロジェクトチーム(PT)を創設した。ボストン大会は東京大会に向けてのPTの活動の貴重な機会でもあった。昼食会では東京の魅力をアピールし、夜は「ジャパン・ナイト」と銘打ったレセプションで参加の勧誘に努めた。特にIBA理事会で冒頭に東京大会への参加呼びかけ、協力要請の発言をする機会を与えられたことは、PTの活動に対するIBA執行部の高い評価、期待を感じさせた。

日弁連会員には東京大会に積極的に参加していただき、世紀に一度ともいえる国際交流の絶好の機会を活用していただきたい。

(国際活動に関する協議会議長 内田晴康)


 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.84

日弁連の広報は今!?
弁護士は「あなたの応援団」

今年度、日弁連では会務執行方針として「市民向け広報の抜本的充実」を重点課題として掲げ、弁護士、弁護士会をもっと市民のみなさんに身近に感じていただくための広報活動を進めています。 今回は、この方針に基づき今年度日弁連が行ってきた活動内容と成果物を一挙にご紹介します。

(広報室嘱託 大達一賢)

 

広報ビデオ「あなたの応援団」(60秒CM)

広報ビデオ「あなたの応援団」の一場面

全国の弁護士会から出演した54人の会員がオリジナルソング「あなたの応援団」を歌いつなぎます。「市民のみなさんにとって、気軽に相談できる身近な存在でありたい」というメッセージを、出演した弁護士の親しみやすい表情や歌声から感じ取っていただき、「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭できればと考えています。この広報ビデオは、11月中に、BS朝日で計5回CMとして放映されたほか、日弁連ホームページ(CMギャラリー)およびYouTubeにて公開中です。是非ご覧ください。

 

ミニ番組「リーガル魂!~笑顔を守る法のアドバイザー~」

法廷活動以外にも弁護士が多様なフィールドで活躍していること、このような弁護士の活動が市民のみなさんの暮らしにつながるものであることをアピールするため、五分番組を制作し、11月10日からBS朝日で4週連続放映されました(放映スケジュールは別表のとおり)。

この番組動画は、日弁連ホームページでご覧いただけます。

 

  • #1 「小さな街の人々の力になりたい」 (11月10日放送)
    ■上原千可子会員 (福井・小浜ひまわり基金法律事務所)
    司法過疎地で活躍する弁護士を紹介
  • #2 「子どもたちの未来を支えたい」 (11月17日放送)
    ■川村百合会員 (東京)
    子どもの人権問題に取り組む弁護士を紹介 
  • #3 「被災者の笑顔を取り戻したい」 (11月24日放送)
    ■在間文康会員 (岩手・いわて三陸ひまわり基金法律事務所)
    震災復興のために働く弁護士を紹介
  • #4 「ママさん弁護士の活躍」 (12月1日放送)
    ■北村聡子会員(東京)
    育児と弁護士業務との両立をしながら働く弁護士の活躍を紹介

番組は日弁連ホームページでご覧いただけます


朝日新聞全面広告「わかるわかる運動」

上:朝日新聞全面広告 下:ひまわり型ミニリーフレット

11月2日の朝日新聞(全国版)朝刊に全面広告「わかるわかる運動」を掲載しました。「どんなときに弁護士に相談すればいいの?」という問いに対して、高齢者、中小企業、子どもを対象とした相談事例などを挙げ、相談者の視点から弁護士の活動をわかりやすく説明したものです。

 

雑誌「AERA」山岸会長インタビュー記事

11月18日発売の雑誌「AERA」に「社会の発展と暮らしの安心に貢献する専門職として、身近になってきた弁護士を活用しよう」というタイトルのインタビュー記事を掲載しました。山岸会長自ら、高齢者支援、中小企業支援、企業・行政で活躍する弁護士の姿などを例に弁護士業務の多様性と弁護士活用の有用性を訴えています。

このインタビュー記事は、朝日新聞全面広告とともに、日弁連ホームページでご覧いただけます。

 

街頭PR活動

11月28日、山岸会長、副会長のほか広報ビデオに出演した会員らが銀座の街頭に立ち、ひまわりの種と、オリジナルソングの歌詞や弁護士への相談の流れを分かりやすく解説したひまわり型ミニリーフレット「なるほどナットク弁護士のこと」を通行人に配布しました。日弁連広報キャラクター「ジャフバくん」のお披露目の機会ともなったこのイベントは、弁護士が自ら街頭に立つことで、市民のみなさんに親しみやすさを体感していただこうとするものです。街頭には多数の人が足を止めて、ミニリーフレットを手に取る様子がうかがえました。


 

日弁連委員会めぐり 60

共謀罪等立法対策ワーキンググループ

特定秘密保護法案が国会に提出され、11月26日に衆議院を通過しました。同法案には、特定秘密の取り扱いの業務に従事する公務員等による故意の情報漏えい行為および市民やジャーナリストを含む第三者による特定取得行為に対する共謀罪が盛り込まれており、今、共謀罪の問題性がクローズアップされています。
共謀罪等立法対策WGは、前身となる組織が2004年に設置された後、法案提出の動きに対応して2011年に新組織として設置され、現在30人ほどの委員で構成されています。今回は、山下幸夫副座長(東京)、新倉修委員(東京・青山学院大学大学院法務研究科教授)、海渡雄一委員(第二東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 柴田亮子)

左から海渡委員、山下副座長、新倉委員

 

今、共謀罪が危ない!

山下副座長は、「合意だけで行為がなくても処罰されるのが共謀罪」と予備罪の前の段階で処罰される共謀罪の危険性を説明する。

自衛隊法、国家公務員法、地方公務員法等には今でも共謀行為の処罰規定があるが、特に問題なのは、特定秘密保護法案。特定秘密の定義が曖昧な上、一般市民を含む第三者も広く処罰の対象となり、法定刑が最高で懲役10年と重いことから、その問題性は他とは比較にならないという。

さらに政府が求めているのは、一般的な処罰規定である。政府原案では、法定刑が長期4年以上の犯罪すべてを対象とし、600以上の共謀罪が新設されることとなる。

共謀罪法案は、これまで数度にわたり提出され、いずれも廃案となったが、政府は今もその制定を求めている。「特定秘密保護法の成立が露払いになり、一挙に共謀罪が成立しないとも限らない。今こそが危ない」(海渡委員)。

 

共謀罪は必要か?

政府は、国連越境組織犯罪防止条約の批准に際し、国内法整備として600以上の共謀罪の新設が必要とする。しかしWGの海外調査によると、条約の批准に際し共謀罪を創設した国はほとんどなく、共謀罪の創設は不要という。

他方、共謀罪法案が成立すると、特定秘密を知ろうとする行為を共謀した、という理由で逮捕されないとも限らない。海渡委員は、「弁護士が、事案の解明のために秘密に近づくこともできなくなっては、弁護活動ができない」と力説する。

 

関心を持ってもらいたい

新倉委員は、「私は、学者としても共謀罪法案が厳罰国家を導く危険性があると学生にも伝えている。100年の禍根を残すような法律を作ってはいけない。そのためにも、会員にまずは関心を持ってほしい」と語った。

WGでは、パンフレットの配布、院内学習会、市民集会の開催などを通じて、今後も共謀罪法案制定に反対する日弁連の姿勢について広く賛同を求めていく。


 

ブックセンターベストセラー
(2013年8月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 弁護士職務便覧 ―平成25年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
2 最高裁判所判例集 第66巻 第12号(平成24年12月分) 最高裁判所事務総局 編 法曹会
3 別冊判例タイムズ No.36 後見の実務 東京家裁後見問題研究会 編著 判例タイムズ社
4 新版 家庭裁判所における 遺産分割・遺留分の実務 片岡 武/菅野眞一 編著 日本加除出版
5 破産事件における書記官事務の研究 ―法人管財事件を中心として― 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会
6 法人破産申立入門 三森 仁 監修 第一法規出版
弁護士の仕事術1 法律相談マニュアル 藤井 篤 著 日本加除出版
弁護士の仕事術2 事件の受任と処理の基本 藤井 篤 著 日本加除出版
9 国選弁護活動の手引き 上訴審編 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
破産管財実践マニュアル[第2版] 野村剛司・石川貴康・新宅正人 著 青林書院

編集後記

今月号では、今年度日弁連が取り組んでいる一連の広報活動を紹介しました。初夏の頃より始動した企画も気づけば晩秋を迎え、ひと山越えることができました。
一連の企画で実感したことは「プロに委ねること」の大切さと危うさです。もちろん依頼する以上、プロの意見は容れる必要がありますが、すべてを委ねることは、当方の意向と乖離しかねない危うさもあり、できません。その線引きは難しく、広報チーム内でも議論を重ねました。しかしそれは弁護士業務も同じです。依頼者に対しプロとして意見を述べつつ意向は尊重する。そのすべては良い仕事をし、良い結果を生むためにほかなりません。
季節は早くも秋から冬となり、12月号をお届けする時期になりました。今年もあっという間の1年でしたが、来年もご愛読をよろしくお願いいたします。
(K・O)