日弁連新聞 第478号

第56回人権擁護大会を開催
10月3日・4日 広島市

  • 第56回人権擁護大会・シンポジウム(テーマ「原発問題」・「平和と憲法」・「不平等社会」)

大会前日には、放射能による人権侵害、日本国憲法における安全保障と人権保障、不平等社会の克服をテーマに3つの分科会によるシンポジウムを開催し、合計2400人を超える会員・市民が参加した。大会では、小野裕伸広島弁護士会会長が「世界で初めて原子力爆弾が投下された広島の地で憲法の基本理念等につき問題提起し、議論するのは意義深いこと」と挨拶し、1235人の会員が参加した議事においては、前日の各分科会の成果を踏まえ、4本の決議案が審議・採択された。次回大会は函館市で開催される(arrow_blue_1.gif各分科会の記事)。

 

立憲主義の見地から憲法改正発議要件の緩和に反対する決議

近時、日本国憲法第九六条の憲法改正発議要件を衆参両議院の総議員の過半数に緩和することを複数の政党が主張しているのに対し、国民の代表である国会での熟議による合意形成の機会を奪い、時々の国家権力による恣意的な憲法改正に道を開き、立憲主義の土台を揺るがすおそれがあるとして強く反対するもの。

 

福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議

国に対し、①本件事故の加害者であることを認識し、被害者が従来営んできた生活を原状回復することを基本に、継続的な被害調査を踏まえた損害賠償の指針の見直しを行うこと、本件事故の損害賠償請求権について、消滅時効に関する特別措置法を遅くとも本年末までに制定するなどあらゆる被害を完全に救済するための措置をとること、②放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないことを前提に、2011年3月11日以降の1年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以上であると推定される全地域に、避難する権利を認め、避難者に必要な支援を行うこと、同様に年間5ミリシーベルト以上であると推定される全地域に正当な補償を行った上で避難指示を出すことなどを検討すること、速やかに血液検査をはじめ内部被ばく検査を含む多角的な検査を無償で受ける機会を被害者に保障し、検査結果を被害者に全て直接開示することなど、健康被害を未然に防ぐあらゆる施策を講ずること、③我が国の原子力推進政策を抜本的に見直し、原子力発電と核燃料サイクルから撤退すること、を強く求めるもの。

 

恒久平和主義、基本的人権の意義を確認し、「国防軍」の創設に反対する決議

近時公表されている憲法改正草案等の中に、平和的生存権を憲法前文から削除し、「戦争の放棄」の表題を変更した上、戦力の不保持・交戦権の否認を定める第九条第二項を削除して国際的軍事協力をも任務とする「国防軍」を保持する規定を設けるとするものがあることを受け、このような「国防軍」の創設は、国民の平和的生存権をはじめとする基本的人権を危うくし、かえって我が国の安全保障を損なうおそれが強いとして強く反対するもの。

 

貧困と格差が拡大する不平等社会の克服を目指す決議

国に対し、①社会保障の権利性を明確にし、社会保険中心主義から転換した税財源による医療・年金・介護や住宅保障を内容とする社会保障基本法を早急に制定すること、②税と社会保障による所得再分配機能の重要性及び応能負担原則に基づく実質的平等の確保の観点から、担税力に応じた税制の再構築を行うこと、③政策形成への関係当事者の平等な参画と、憲法上の原則に基づいた議論の定着のための政策を実施することを求めるもの。

arrow_blue_2.gif決議全文は日弁連ホームページに掲載)

 

法曹養成制度に関する政府の検討体制スタート

政府は、本年6月の「法曹養成制度検討会議取りまとめ」を踏まえ、9月17日に新たな検討体制をスタートさせた。新たな体制では、関係閣僚を構成員とする「法曹養成制度改革推進会議」と、その下に、6人の有識者で構成される「法曹養成制度改革顧問会議」、事務局として内閣官房の下に「法曹養成制度改革推進室」がそれぞれ設置された。また、法務省には、「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会」が設けられた(別図参照)。

 

顧問会議は、推進室から検討状況の報告を受け、意見交換を行いながら審議し、推進室長に意見を述べるものとして位置付けられ、9月24日に第1回会議、10月10日に第2回会議が開かれた。

第1回顧問会議では、法曹養成制度全般について、各顧問から問題意識が述べられ、法曹人口については、現状の司法試験合格者の数の根拠についての質問や、今後の法曹人口の在り方について速やかに客観的な調査が行われるべき等の指摘があった。また、各課題について、プロセスとしての法曹養成課程全体を視野に総合的に検討すべきこと、早期にできることはスピーディに取り組むべき等との意見が出された。

第2回顧問会議では、予備試験を含む司法試験の在り方と司法修習に関する第1巡の議論が行われた。司法試験については、検討会議取りまとめで方向性が示された受験回数の緩和(5年5回)と短答式試験を憲法・民法・刑法に限定することについて議論された。また、検討会議取りまとめで指摘された論文式試験の試験科目の削減についても議論された。司法修習については、法曹三者が実施したアンケートについて説明され、事務局から導入的集合修習について提案があったが、具体的な議論は次回に持ち越しとなった。

さらに、顧問会議は、法曹有資格者の活動領域の拡大について議論する「有識者懇談会」の設置を決定した。第1回懇談会は10月11日に開催され、日弁連が共催する3つの分科会(国・地方自治体・福祉等、企業、海外展開)が設置された。各分科会については、10月中に第1回会議を開催する予定である。

第3回顧問会議は11月12日に開催し、司法試験と司法修習の第2巡の議論と、法科大学院および法曹有資格者の活動領域拡大についても検討される予定である。

(事務次長 鈴木啓文)

別図・法曹養成制度に関する政府の検討体制

 

12/6臨時総会開催へ

12月6日(金)12時30分から、弁護士会館クレオにおいて、主に以下の議案審議のため、臨時総会が開催される。多数の会員の参加による充実した審議をお願いしたい。

 

少年・刑事財政基金のための特別会費徴収の件中一部改正の件、法律援助基金のための特別会費徴収の件中一部改正の件

少年・刑事財政基金のための特別会費および法律援助基金のための特別会費の徴収期限を2014年6月から2017年5月まで延長し、延長後における徴収額を前者については月額4200円から月額3300円に、後者については月額1300円から月額1100円に減額することの決議をそれぞれ求めるもの。

 

会則中一部改正(第九五条の四・会費免除)の件、育児期間中の会費免除に関する規程制定の件

弁護士である会員が、子の育児をする場合は、所属する弁護士会を通じて申請することにより、育児をする子の出生日の属する月から当該子が2歳に達する日の属する月までの間における任意の連続する6カ月以内の期間(多胎妊娠により2人以上の子が出生した場合にあっては9カ月以内の期間)、本会の会費等の全部を免除するもの(成立の日から2年を超えない範囲内で理事会で定める日から施行し、理事会で定める月以降の育児について適用)。

 

会則中一部改正(第二三条・登録料改定)の件

弁護士名簿の登録に関して登録料6万円を3万円に(司法修習を終え引き続き登録する者について3万円を1万円に)、登録換えにつき1万円を5000円に、登録事項の変更につき5000円を2000円にそれぞれ減額し、請求による登録取消しに関する登録料5000円を無料とするもの(2014年4月1日から施行)。

 

ひまわり

この臨時国会でマスコミでもしばしば報道された2つの法案が審議される。原子力損害の消滅時効に関する特例法案と特定秘密保護法案である▼いずれの法案についても、日弁連は早い段階から意見を述べており、前者については推進の、後者については反対の立場をとった。ただ、いずれの法案も、その作成や審議の過程で日弁連の意見が一定の影響を与えている▼原子力損害の消滅時効に関しては、来年3月以降順次消滅時効が完成していくため、時効期間の延長を内容とする特別措置法の制定を求めた。政府は及び腰であったが、国会議員への働きかけを続けたことにより、議員立法として提案される見込みだ。日弁連の提言が実を結んだ形である▼一方、特定秘密保護法案については、反対の意見を表明し、問題点を指摘してきた。その結果、法案提出はなされたものの、法案作成段階で修正がなされ、また公文書管理法の改正など情報管理の見直しも表明された。マスコミはその問題点を指摘する報道を続けている▼このように日弁連の意見が立法に影響を及ぼすことも多い。それは、日弁連の意見が専門性と説得性を持つことによるものであろう。こうした意見表明を行っていくことは、法律専門家の団体としての重要な役割であると思う。

(H・T)

 

人権擁護大会シンポジウム
10月3日 広島市

 

放射能による人権侵害の根絶をめざして

第1分科会

ヒロシマからフクシマを考えるため、900人近くの参加者が7時間という長時間のシンポジウムに聞き入った。福島原発事故による被害とその完全救済、放射線被ばくによる健康被害、脱原発という難しいテーマに深く切り込んだ分科会となった。

 

損害賠償を考える

福島原発事故の発生当時を振り返る菅氏

第1部では、福島原発事故による損害賠償をめぐる問題点と、解決に向けた課題について検討した。

東京電力の取締役等を告訴した福島原発告訴団団長の武藤類子氏は、基調講演において、山中でカフェを営み自然と共にあった暮らしを事故によって失った経験と併せて、告訴を考えた理由について、「福島は災害関連死が多く、たくさん人が亡くなった。避難した人の中でも分断と対立が存在し苦しんでいる。責任の所在をはっきりさせたかった」と淡々と語った。

次いで「事故被害の回復と賠償・補償のあり方」と題して講演を行った除本理史教授(大阪市立大学大学院経営学研究科)は、被害者は避難生活そのものによる苦痛のみならず、「先行きの不透明さによる不安感」や「ふるさとを失った喪失感」を抱いていると指摘した。しかし、これらの損害への賠償問題にほとんど踏み込んだ議論がされていないのが現状だ。

 

放射線被ばくの影響を考える

第2部では放射線被ばくにつき、さまざまな分野の研究者が激論を交わした。

「放射線管理区域では18歳未満は働けない、飲食もダメ。それなのに、現在年間被ばく許容量とされている20ミリシーベルトは放射線管理区域の3・8倍の放射線量にあたる。そもそも、子どもが普通に暮らすところではない」と指摘するのは西尾正道医師(独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター名誉院長)だ。津田敏秀教授(岡山大学大学院環境生命科学研究科)も、「今の線量の基準に科学的根拠はなく、単に社会的、政治的に決められたものに過ぎない」と言う。

今中哲二助教(京都大学原子炉実験所)は低線量被ばくの危険性について、「LNTモデル(一定の線量値以下の低線量放射線でも人体に影響があるとする考え方)は世界の常識であり、低線量被ばくの影響を過小評価する日本の考えはむしろ非常識だ」と論じた。そして、国による本来の「健康調査」を被害者に対して行うべきと述べた。

 

脱原発を考える

第3部では福島原発事故の原因を含む課題について検討した。

インタビューで菅直人衆議院議員(元内閣総理大臣)は、「当時、私は福島で起きている状況を東京電力から直接聞くことができず、1号機の爆発もテレビで初めて知ったくらいだった。未曾有の事故に直面する中、わからないものについて判断するしかない。だからこそ私は現場に行ったんです」と生々しく当時を振り返った。

一方、「東京電力から情報を隠されたのは国会事故調も同じだ」と田中三彦氏(元国会事故調委員)は語った。当初、東京電力の発表では津波第二波が第一原発に到達したのは15時36分台であり、これにより1・2・4号機で全電源喪失が起きたとされた。後の同委員会の調査によると津波到達の3分前に全電源喪失が起きていたとされたが、この点について東京電力からの弁明はされておらず、同氏は情報開示の必要性を指摘した。

原子炉格納容器設計者だった後藤政志氏は、「福島原発事故の事故処理では現場感覚のない人が判断しているために、通常では考えられないミスが続いている」と現状の問題を指摘し、専門家の参加と現場との連携の必要性を説いた。

最後に、これらの発言を受け、青木秀樹実行委員長が、「今回の原発事故は発生原因すら未だ明らかでなく、必要な安全対策も取られていない。今こそ原発をゼロとする道筋を確定すべきだ」とまとめた。


なぜ、今「国防軍」なのか
日本国憲法における安全保障と人権保障を考える

第2分科会

近時公表されている憲法改正草案等の中に、憲法第九条第二項を削除して国際的軍事協力をも任務とする「国防軍」を保持する規定を設けるとするものがある。本分科会では、「国防軍」の創設により現実に何が起こりうるかを検証し、これによりわが国の安全保障と人権保障に資すると言えるか否かを議論した。

 

記念講演を行う青井教授

冒頭、青井未帆教授(学習院大学法務研究科)が「『国防軍』にすることの意味」と題して記念講演を行い、「自民党改憲草案における第九条『国防軍』の創設は、日本版NSC創設などこの秋憲法をめぐって予測される現政権の動きと同様、『外交のカードとして軍事力の行使ができる国にすること』が狙い」と指摘した上で、「戦争による惨禍を被るのは国家ではなく生身の人間。憲法第九条はこれまで人間の自由や人権保障の在り方を下支えしてきた。これを改正して『国防軍』を創設することは、軍事的な理論で人権保障を後退させるものであり許されない」と警鐘を鳴らした。

続いて行われたパネルディスカッションでは、半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)が、保有する武器や部隊からは攻撃的な軍事力を既に有しているものの、憲法第九条の存在により、災害派遣や国際平和協力活動といった非軍事的活動に徹底してきた自衛隊の現状を報告し、この自衛隊を「国防軍」とすることは、根本的・質的な変化であり名称の変更にとどまらないことを強調した。

また、浜矩子教授(同志社大学大学院ビジネス研究科)は、「自民党改憲草案は、国民と国家の関係性を完全に逆転させようとしているのではないか。この機会に国民が第九条を守れれば、それ自体が大きな成果」と述べた。李鍾元教授(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科)は、「アジア地域の緊張関係が取り沙汰されるが、諸国共通の目標は『戦争をいかに回避するか』ということ。そのためには軍事力を背景とする懲罰的な抑止力は必要ない」と述べ、これに孫崎享氏(元外務省国際情報局長)が「軍事力を使わずに外交問題を解決できる枠組みは既に存在している。『平和国家』という憲法的秩序をなぜみすみす捨てようとするのか。今こそ自ら持つリソースで有利な解決を図るとき」と同調した。


「不平等」社会の克服
誰のためにお金を使うのか

第3分科会

年収200万円以下で働く民間企業の労働者が6年連続で1000万人を超える状況が続く一方、年収5000万円以上の給与所得(報酬)を得ている人が、1999年の約8000人から8年間で2万7000人まで急増したとの報告がある。
不平等社会の克服には、税と社会保障による所得再分配が重要であるところ、折しも消費税率が来年4月から8%に引き上げられることとなった。本分科会では、このような現状を踏まえ、財政・税制にまで踏み込んだ議論を行った。

 

冒頭、ジャーナリストの斎藤貴男氏が、「消費税増税と法人税減税により、景気指数は上がるかもしれないが、国民全体の生活向上にはつながらないだろう」と述べた。消費税は逆進性を有するとして、エンドユーザーの税負担率ばかりが取り沙汰される中、同氏は、「受注がいつ減るかとビクビクしている下請業者が、増税分を値上げできずに結局は身を切ることにもなりかねず、格差はさらに広がる」と別の側面からの影響を指摘した。

基調講演を行う斎藤氏

続いて、実行委員会から、海外調査報告を踏まえ、わが国の不平等社会の克服には、生活費控除原則を踏まえた課税最低限の検討等、税制の再構築を通じた所得再分配機能の発揮が必要との基調講演があった。さらに、「税金はお上が徴収するもの」という考えを捨て、主権者として税金と財政支出を自ら考える姿勢が不可欠と指摘した。 後半のパネルディスカッションでは、アベノミクスを打ち上げロケットにたとえ、富裕層が乗るコックピットはどんどん上がっていくが、推進力のための貧困層は切り離されるようなものだとの厳しい意見が出た。

また、所得再分配以前に貧困者の賃金を上げることがまずは重要であるとの意見、社会保障については、普遍主義に基づく医療・年金・介護のみならず、住宅保障にも目を向けるべきとの意見があった。

さらに、今後日本は、格差が広がる米国型と、皆平等に社会保障を受けられる北欧型のどちらの方向をめざすのか主権者として考えることが重要であるなど、多岐にわたる意見交換が行われた。


弁護士任官者の紹介

10月1日付けで次の会員が裁判官に任官しました。

 

黒澤 圭子氏

黒澤 圭子氏

53期・元東京弁護士会所属(千葉県出身)

司法修習終了後、濱田広道法律事務所勤務。2008年10月~2012年9月まで、千葉簡易裁判所民事調停官。〈初任地東京高裁〉


山田 健男氏

45期・元第二東京弁護士会所属

2000年7月に弁護士登録し、TMI総合法律事務所等にて勤務。〈初任地大阪高裁〉

 

山本 健一氏

51期・元第二東京弁護士会所属

司法修習終了後、新橋レンガ通り法律事務所を経て、六番町総合法律事務所勤務。〈初任地名古屋高裁〉


 

第4回人権関連委員会委員長会議
10月2日 広島市

本会議は、日弁連の人権関連委員会の交流と、2009年に公表した「人権のための行動宣言2009」の推進を目的に人権擁護大会の前日に開催されており、第4回となる今回は、44の委員会等から委員長らが参加した。

 

秘密保全法制の危険性

今回は、①刑事司法改革への取組、②人権条約に基づく政府報告書審査の勧告と日弁連の取組、③障がい者差別解消法の成立および立法過程について、④婚外子相続分違憲決定と家族法改正のための取組、⑤東日本大震災・原発事故問題に関わる人権問題、⑥日弁連および各弁護士会における取組の各テーマについて報告・議論が交わされた。

概要は次のとおり。

①については、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会での議論状況が報告され、今後も会員への情報提供を継続していくこと、重要な方針は理事会で議論していくことが確認された。

②については、国連の総括所見で勧告された事項を国内において実施していくため、各委員会等がどのような体制で勧告内容をフォローアップしていくべきかが議論された。

日弁連の取組が一定の成果を挙げた③および④では、成果の要因を分析するとともに、これらの問題につき今後どのように取り組むべきか等が報告・議論された。

⑤および⑥では、被災者の置かれた現状やこれまでの日弁連の活動内容等が報告された。各委員会等からもさまざまな意見が出され、委員会間の連携を密にしていくことの重要性が再認識された。

なお、「人権行動宣言2009」は、今後各委員会等に意見を照会し、「人権行動宣言2014」として改訂する予定である。

(人権行動宣言推進会議事務局長 山﨑 健)


取調べの可視化を求める院内学習会
これが“新時代”の取調べの可視化?
ガラパゴス化する日本の刑事司法
10月8日衆議院 第二議員会館

  • 10.8 取調べの可視化を求める院内学習会 これが“新時代”の取調べの可視化?~ガラパゴス化する日本の刑事司法~

虚偽自白の強要や誘発によるえん罪被害が繰り返されているにもかかわらず、改革の進まない日本の刑事司法は、進化から取り残された「ガラパゴス」に例えられる。取調べの可視化を求める市民団体連絡会の主催、日弁連の共催により開催された本学習会では、改革が進まないことの背景について、日本の刑事司法全体が抱える問題点という観点から検討した。

 

取調べの全過程の録音・録画の必要性を説くパネリストたち

基調報告で、えん罪原因究明第三者機関WGの小池振一郎副座長(第二東京)は、国際社会から見た日本の刑事司法の問題点を解説した。国連の拷問禁止委員会は、2007年、第1回日本政府報告審査を受けて、代用監獄の廃止と取調べの規制等を勧告したが、これを日本政府が真摯に受け止めようとしないことに対し、今年5月の第2回審査の場で、委員の1人が「日本の刑事司法は自白に頼りすぎている。これは中世のものだ」と発言したことを紹介し、「日本の刑事司法は国際社会から恥ずかしいと見られていることを自覚すべきだ」と断じた。

パネルディスカッションでは、ジャーナリストの青木理氏が、「えん罪を防ぐために始まったはずの法制審で、なぜか警察による通信傍受範囲の拡大が議論されている」と疑問を呈し、警察組織の肥大化が進んでいると訴えた。また、寺中誠氏(東京経済大学非常勤講師)は、通信・会話傍受に対して一般市民の危機意識がさほど高くない現状を危惧し、「第三者のチェックがないままに行われると、証拠のねつ造ができてしまう。非常に危険な問題だ」と指摘した。

えん罪の根絶に取り組む市民団体代表の客野美喜子氏は、裁判所に対し、「供述調書の証拠能力については、録音・録画されたものなど事後的に検証できるものに限って認める体制とすべき」と主張した。また、司法取引について、捜査機関がこれまでも事件関係者に対して事実上の利益供与を図っていたことなどを指摘し、新たなえん罪の原因になることから、絶対に制度化を認めるべきではないと主張した。


第39回市民会議
法曹養成制度に関する政府の新しい検討体制等について議論
9月30日 弁護士会館

今回は、福島第一原発事故による損害賠償請求権の時効期間の問題を中心に、同事故に対する復興支援についての日弁連の取組および法曹養成制度検討会議取りまとめを受けた、政府の新たな検討体制について議論した。

 

復興支援に対する日弁連の取組

本年8月30日に復興庁が公表した、原発事故子ども・被災者支援法に基づく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」が有する問題点について、日弁連から9月11日に公表した意見書の内容等を説明した。これに対し、中川委員から「全国各地にいる避難者への支援を実効的に行うには、省庁横断的な体制が必要。また、施策実現に向け、自治体も関与した常設機関を設け、権限を持たせるべき」との発言があった。また、被害者の権利行使の機会確保のため、原発事故による損害賠償請求権の時効期間を延長すべきとの日弁連の意見に対しては、委員から全面的に賛同し、早期の立法措置を望む声が相次いだ。

 

法曹養成制度に関する政府の検討体制

日弁連から、法曹養成制度に関し、9月17日に政府が新たな検討体制をスタートさせたことを説明した(arrow_blue_2.gif関連記事)。これに対し、松永委員から、「法科大学院への入学志願者が激減するなど、制度開始時からの尻すぼみ感が否めない。弁護士の活躍が生きた事例として紹介される機会が少なく、法曹界として若い人へのアピールが足りないことが一因ではないか」との発言があった。また、北川議長からは、「行政との関係では、法の支配が行き渡っているとは言い難い。特に地方では法律家が圧倒的に足りない。日弁連は覚悟を持って行政の場に弁護士を送り込むべき」との強い要望も出された。

 

市民会議委員(2013年9月30日現在)

 

  • 長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
  • 北川正恭(議長・早稲田大学公共経営大学院教授)
  • 清原慶子(三鷹市長)
  • 古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
  • ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  • 中川英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
  • 松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
  • 湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)
  • 豊 秀一(副議長・朝日新聞東京本社社会部次長)

(以上、五十音順)


シンポジウム
死因究明の推進に向けて
検案・解剖等の制度整備を求めて
9月21日 弁護士会館

  • ~死因究明推進のための検案・解剖等の制度整備を求めて~死因究明シンポジウム

名古屋刑務所暴行死傷事件や、時津風部屋力士死亡事件など、死因が究明されることで明らかになった犯罪事実は少なくないが、わが国の死因究明に関するインフラは脆弱と言わざるを得ない。本シンポジウムでは、死因究明に関し、諸外国との比較の視点も交え、現制度の問題点の整理と、あるべき制度整備について検討した。

 

基調講演を行う福島教授

基調講演で、福島至教授(龍谷大学法科大学院)は、「2011年に警察が扱った約17万体の死体中、解剖対象となったのは2万体未満であり、犯罪死の見逃しが起きている可能性が否定できない」とわが国の現状を紹介し、死因究明の端緒が、市民からの通報および医師法に基づき医師が死体を「異状があると認めたとき」のみとされていることに加え、同法には「異状」の定義がなく、判断が医師の主観に左右されるのは問題だと指摘した。また同教授は、わが国で死因究明がなされる事案が少ないのは、死因究明の端緒となるべき情報が、死因究明の専門家ではない警察に集約されることをその理由として挙げた。これに対し、豪州では、「コロナー」と呼ばれる法曹有資格者による行政職的司法官が死亡に関する事実認定権限を有しており、死因究明について社会的インフラが整備されていることが紹介された。

パネルディスカッションでは、法医学教室の岩瀬博太郎教授(千葉大学大学院)が、死因を明らかにするための制度として、死体解剖保存法に基づき都府県知事が設置する監察医制度を紹介し、「同制度のない地域では、死因のほとんどが心不全と判断され、死因究明には地域格差がある」と問題点を説明した。

これらを受け、死因究明等推進会議専門委員でもある福武公子会員(千葉県)は、複雑すぎる現在の解剖制度を一元化し、公平かつ公正な死因究明を確立すべく、死因究明に関する第三者機関の設立を内容とする死因究明推進法の整備を訴え、法律家の死因究明への積極的関与や法医学研究者の養成を充実させることを求めた。


シンポジウム
地方における企業内弁護士の実際とその可能性
10月11日 弁護士会館

  • シンポジウム「地方における企業内弁護士の実際とその可能性」

近年、企業内弁護士の数は大幅に増加し、弁護士のキャリアパスにおける有力な選択肢となっている。しかしその数は、もっぱら大都市圏に集中している。本シンポジウムでは、地方で勤務する企業内弁護士や、地方の組織内弁護士養成事務所の所長弁護士が、地方における企業内弁護士の実際やその育成の課題等について報告した。

 

静岡の企業の現状を報告する佐野会員

法律事務所ではなく企業内弁護士を選択した理由について、株式会社島津製作所の竹本綾世会員(京都)は、「在学中から企業内弁護士に興味を持っていたため必然の選択だった」とし、弁護士募集と明記していない企業にも応募したエピソードなどを語った。また、株式会社北陸銀行の田中努会員(富山県)は、修習中に法律事務所経営の厳しさを実感したことから、既存ではない新たな弁護士像を模索し、幅広い人間関係を構築できる点に惹かれたと述べた。

次いで、スズキ株式会社の佐野晃生会員(静岡県)は、静岡県内の約60社の上場企業のうち、企業内弁護士を採用しているのはせいぜい2社に過ぎない現状を報告し、「企業内に弁護士が存在することにより業務の質が向上することが検証されれば、企業間の競争意識の高まりによってその数も増加する可能性がある」と指摘した。

企業内弁護士の育成について、岡山大学の法科大学院内に法律事務所を構える吉沢徹会員(岡山)は、弁護士研修センターを設置し、出身弁護士に研修の場を提供し、研修後には地域の自治体や企業等に派遣する同法科大学院の試みを紹介した。また、地方における企業内弁護士の雇用条件について、通常の従業員と同等であることが大半であるため会費負担が重くなるという問題を指摘し、問題解決のためには、勤務時間外の個人事件受任を認める等の方法があるのではないかとの考えを示した。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.83

法の日週間記念行事
東日本大震災を忘れない!
被災地再生に向けて私たちができること
10月5日 弁護士会館

  • 第54回「法の日」週間記念行事 法の日フェスタ~映画上映とトークイベントを行います~

今年の法の日週間記念行事は、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町の災害ラジオ局を追ったドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」を上映し、監督の梅村太郎さん、女優の東ちづるさんと被災地の復興支援に携わる弁護士とのトークイベントを行いました。当日は多くの方にご参加いただき、今一度震災復興について考える機会となりました。

(広報室嘱託 柴田亮子)

 

「ガレキとラジオ」誕生のきっかけ

被災者との触れ合いについて語る東さん(右)と梅村監督

司会(災害復興支援委員会副委員長杉岡麻子会員):まずは、監督の梅村さん、「ガレキとラジオ」誕生のきっかけを教えてください。

 

梅村:町内の60%以上の世帯が罹災し、8000人以上が避難生活を強いられることとなった南三陸町に、2011年5月、地元の人々のために防災や避難情報を届ける1年間限定の災害ラジオ局「FMみなさん」が開設されました。このラジオ局を追ったのが「ガレキとラジオ」です。町の臨時職員として運営に当たるスタッフは皆素人ながら、「1人でも多くの人をラジオを通じて笑顔にしたい」と試行錯誤しつつ自分たちにできることを模索していく。その姿が明るくて、そこに希望を見つけました。震災の記憶を風化させないためには、これを映画にするしかないと思いました。

 

司会:東さんが、「ガレキとラジオ」を応援するようになったきっかけは。

 

東:何度か被災地に行きましたが、東北の人は我慢強い方が多いです。なかなか弱音を吐かない被災者の方に、「最近泣いたことはありますか」と聞いたところ、「映画をみて泣きました」との返事があって、その映画が「ガレキとラジオ」だったのです。広く知ってもらいたいと思い、応援するようになりました。

 

被災地の弁護士として

司会:被災地支援に関わる弁護士から現地での活動についてお話しください。

 

工藤芳明会員(宮城県):宮城県岩沼市で弁護士をしています。赴任して1カ月で震災を経験しました。どうやって受け止めてよいかわからない中で、避難所を回りました。それまでは、依頼者が相談に来るのを待つという姿勢でしたが、自ら動いて被災者と向き合うことが重要だと思いました。

 

瀧上明会員(岩手):岩手の釜石市で開業しています。映画の舞台である南三陸町から100㎞ほど北に行ったところです。2011年8月から11月にかけて、釜石市と大槌町の仮設住宅約100カ所を弁護士2人で手分けしてすべて回って相談を受けました。

 

松本三加会員(福島県):福島のいわき市で開業しています。相馬で3年近く弁護士をしたあと、震災の半年前にいわきに移りました。映画の舞台である南三陸を含む被災地での法的ニーズの調査に関わりました。

 

それぞれの「支援活動」の形

被災地に寄せる想いを語る登壇者ら

司会:被災地で活動する中で、特に感じていることはありますか。

 

工藤:通常、既存の法制度の中で頑張るのが弁護士なのですが、東日本大震災のような想定外のことが起こった場合、被災地のニーズを掘り起こして法改正につなげるのも弁護士の重要な活動です。例えば、兄弟が弔慰金を受け取れないのはおかしいという被災者の声が法改正につながりました。

 

瀧上:弁護士というと、通常は相談者の話から法律問題を迅速かつ的確に取り出し解決することが仕事です。しかし、今回のような非常事態では、何よりも被災者が話してくれるのを「待つ」こと、そして法律問題の有無にかかわらずその話を「聞く」ことが重要だと思います。

 

松本:弁護士自らも被災者である場合は、うまくバランスをとることも大切です。映画の中でラジオ局のリーダーが自分の生活のためにしばらくラジオ局を休むシーンがありました。あのときのリーダーの悩みには共感しました。

 

東:家族を亡くしたボランティア仲間は最初は「生き残ったのだから頑張る」と。そのうち「生き残れてよかったのだろうか」に変わり、いろいろあって「怒りや悲しみと向き合ってちゃんと絶望した。これからは希望に向かう」と。何度も何度も連絡して本音を聞けたということがありました。今後も、被災者に寄せる想いをいかに持ち続けるかが重要だと思います。そして、さまざまな理由でこの場に来られない人もいます。色とりどりの人がいる「まぜこぜの社会」をつくりたいと活動しています。

 

梅村:この映画が、震災を「知る」きっかけになってくれればいいと思います。被災地のために実際に行動を起こすところまで至らなくても、「知る」ということそのものが支援活動につながるし、また次の災害時の備えになると思います。
誰かを助け、何かが生まれることに関わったという経験は、自分のためでもあるのです。まずは、被災地に行って見てください。誰しも、何かしらできることがあるはずです。


日弁連委員会めぐり 59

ハーグ条約に関するワーキンググループ

国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の発効が迫り、中央当局を通じて弁護士紹介を行う仕組み作りなど、日弁連にも迅速な体制整備が求められています。そこで、条約締結に向けた現在の準備状況と、今後弁護士に求められる対応などについて、ハーグ条約に関するワーキンググループの磯谷文明委員(東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大達一賢)

磯谷委員

-WGが発足した経緯は

2009年に、日本もハーグ条約に加盟するのではないかという動きが出てきた際、同条約を締結する場合に講ずべき処置や国内担保法の具体的な制度設計等について情報収集、検討し、日弁連の見解を取りまとめることを目的として設置されました。2010年7月には、条約加盟国の実務家を招いてセミナーを開催し、その成果を踏まえた意見書や、外務省からの委託調査報告書を取りまとめる等の活動をしてきました。現在は、条約加盟後の具体的な裁判手続等について、関係機関と協議を続けています。

 

-加盟後の手続のイメージは

ハーグ条約に基づく子の返還を求める申立ては、条約上迅速な審理が求められています。裁判所は原則として申立てから6週間以内の判断を目指しており、代理人を務める弁護士も迅速な対応を迫られるものと予想しています。管轄は東京家裁と大阪家裁の2庁に集中されることになっています。

 

-条約加盟が国内に与える影響

ハーグ条約は国境を越えた子の連れ去り等にのみ適用される関係で、国内実務に直接の影響を与えることはありません。しかしながら、条約の背景には一方の親の意思に反した子の連れ去り等は原則として許されないという考え方がありますので、そういった考え方自体が間接的にわが国の家族法の理論や実務に影響を与える可能性は十分にあると考えています。既に子の監護をめぐる国内裁判において、一方的な連れ去り等を考慮した判断が出ています。

 

-今後の活動予定を教えてください

外務省はなるべく早い時期からの運用開始を目指して準備を進めていると聞いています。そこで、日弁連としてもそれに対応できるように動いています。具体的には、ハーグ条約事件対応弁護士紹介制度の準備や、会員向けの研修の実施、マニュアルの作成などを進めています。

 

-会員に向けてのメッセージをお願いします

ハーグ条約は子どもの人権・利益を守るための法制です。積極的に関心を持っていただくと同時に、担当される際には、ビジネスライクな渉外事案としてとらえるのではなく、あくまで子どもの目線に立って、親身になって取り組んでいただきたいと願っています。


ブックセンターベストセラー
(2013年7月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 法律事務所の経営戦略 元榮太一郎 監修 学陽書房
2 破産管財実践マニュアル[第2版] 野村剛司・石川貴康・新宅正人 著 青林書院
3 別冊ジュリストNo.216 倒産判例百選[第5版] 伊藤 眞・松下淳一 編 有斐閣
4 新版 家庭裁判所における 遺産分割・遺留分の実務 片岡 武・菅野眞一 編著 日本加除出版
5 民法改正のいま ―中間試案ガイド 内田 貴 著 商事法務
6 法人破産申立入門 三森 仁 監修 第一法規出版
7 破産事件における書記官事務の研究 ―法人管財事件を中心として― 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会
8 弁護士職務便覧 ―平成25年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
9 医療訴訟の実務[裁判実務シリーズ5] 髙橋 譲 編著 商事法務
10 倒産処理と弁護士倫理 ―破産・再生事件における倫理の遵守と弁護過誤の防止― 日本弁護士連合会倒産法制等検討委員会 編 きんざい

編集後記

今月号は人権擁護大会を取材しました。今回印象的だったのが一般参加者の数。例年に比べるとどの分科会でも多かったのではないでしょうか。脱原発、国防軍、貧困問題とどのテーマも一般的にも関心の高い、タイムリーな問題だったということかもしれません。分科会においても、人権擁護大会においても、議論が活発になされ、まさに、平和都市広島で意義のある大会でした。
一方、人権擁護大会は記者泣かせのテーマでもあります。多くの人がじっくり時間をかけて研究した内容は、とても数十行の記事ではまとめきれないものばかりです。ひたすらに原稿を削る作業が続きます。
研究成果をじっくり知りたい方は実際に聞きに行くのが一番です。来年の人権擁護大会は函館市で開催されます。今まで参加したことのない方も是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
(R・S)