日弁連新聞 第475号

日弁連総合研修センター発足!

日弁連では、研修をより機動的かつ実践的に運営するため、本年6月、新たに「日弁連総合研修センター」を発足させ、従来の日弁連研修センターは研修委員会に改組した。主な活動予定は次のとおりであり、今後も研修の充実に取り組んでいく。

 

日弁連総合研修センター発足記念研修 「ツアー研修」

従来のライブ実務研修(旧特別研修)やeラーニング等に加え、各弁護士会連合会に赴き実施する研修で、2014年6月までに全4回の連続講座(相続分野。実施予定は別表のとおり)を行う(後日eラーニング配信)。研修と併せて意見交換会を行い、今後の研修に活かしていく予定である。

 

研修総合サイトのリニューアル

本年12月から新研修総合サイト(仮称)の運営を開始する。日弁連会員専用ページへのログインと連動したシングルサインオン機能や、新たに研修動画の倍速再生機能が追加され、より使いやすいサイトとなる予定である。

 

若手会員への研修
パスポート料金優遇

若手会員へのスキルアップ支援として、現在年間1万円の研修パスポート料金を、研修総合サイトのリニューアルに併せて本年12月以降(予定)、登録1~2年目の会員は無料、登録3~5年目の会員は5千円に変更する(6年目以降の会員は1万円)。ぜひ活用いただきたい(詳細は会員専用ホームページを参照)。

(日弁連総合研修センターセンター長 菰田 優)

 

【ツアー研修 実施予定】

  • 第1回 2013年9月24日(札幌)
    遺産分割1
  • 第2回 2013年12月5日(福岡)
    遺産分割2
  • 第3回 2014年2月(中部弁連管内)遺言執行・遺言書作成
  • 第4回 2014年5月(中国地方弁連管内)遺留分減殺

 

民事司法を利用しやすくする懇談会
「中間報告書」を公表

利用者に身近な民事司法の実現を目指し、法曹関係者に加え、経済団体、労働団体、消費者団体や学識経験者をメンバーとして本年1月24日に設立された「民事司法を利用しやすくする懇談会」(議長:片山善博・慶應義塾大学教授)。民事司法分野の課題を整理した上で、関係諸機関に対する問題提起と提言を行うべく活動を続けてきたが、6月29日、第3回懇談会を開催し、中間報告書を取りまとめた。

 

中間報告書は、「民事・家事・商事部会」「行政部会」「労働部会」「消費者部会」「基盤整備・アクセス費用部会」の5つの部会における検討を踏まえ、現時点での共通課題を整理して取りまとめられた。中間報告で共通認識に至らなかった課題については、10月の最終報告までに議論の集約を目指す。

また、中間報告書は、各課題を実現するための方策として、(1)最高裁、法務省、日弁連などの司法関係機関、行政機関、地方自治体等の運用または規則、条例の制定でできるもの、(2)従来の法改正のプロセスで実現できるもの、(3)政府に新たな検討組織を設置して法改正を含む対応を検討するもの、の3つの選択肢を提示した。今後は、わが国における民事司法改革の重要性を広く訴えながら、中間報告書で明らかになった諸課題の実現の方策を検討し、最終報告を取りまとめる予定だ。

中間報告書の内容は、民事司法懇のホームページから見ることができる。

 

(事務次長 大貫裕仁)


 

シンポジウム
弁護士は自治体で何ができるか?何が求められているか?
7月8日 仙台弁護士会館

  • 地方自治体における弁護士の役割に関するシンポジウムin宮城

今年に入って、被災自治体である宮城県庁、岩手県庁および石巻市役所で3人の法曹有資格者の常勤職員が誕生した。本シンポジウムでは、この3人の法曹有資格者を含む自治体職員を招き、弁護士が自治体職員として活躍することの意義、有用性、今後の課題等について検討した。

 

自治体職員らが法曹有資格者の活用の有用性について語った

採用に至る経緯

宮城県総務部私学文書課副参事兼課長補佐の大庭豪樹氏は、「職員の法務能力の育成という目的もあったが、何よりも震災により生じた多くの法的問題に迅速に対応するため、法曹有資格者の雇用が必要だった」と言う。これに対し、同課に勤務する大岩昇会員(第一東京)は、「行政の立場で復興に携わることができる。初めてのポストだから自分で考えて業務を行える」と応募の動機を語った。

 

具体的な業務内容

岩手県総務部法務学事課特命課長の菊池優太氏(元会員)は、自身の業務内容として国に対する立法提言を挙げた。同課主査千葉博和氏は、「市から県に対する相談にも法曹有資格者ならではの視点が有意義」と語った。

石巻市総務部総務課課長の及川伸一氏は、「住民からの要望に迅速に対応するだけでなく、集団移転の問題等、法曹有資格者と共に解決すべき問題も多い」と述べた。同課に勤務する野村裕会員(仙台)も「政策決定、条例制定に関与するだけではなく、今後はまちづくりにも携わりたい」と意欲を語った。

 

法曹有資格者の採用効果

3自治体とも、同僚等からの職務執行上の法律相談件数の増加を挙げた。及川氏は、「これまで法的側面からの検討を必ずしもしてこなかった事柄が、正確性をもって進められるようになった」と語った。最後に、大庭氏は、「内部に法曹有資格者がいることで、予防法務が容易にできるようになった。また、弁護士に対するイメージが変わり、敷居が低くなった」と感想を述べた。


全弁協
「保釈保証書発行事業」の運用を開始
事務態勢の準備状況に合わせ順次運用開始

 

全国弁護士協同組合連合会(全弁協)は、刑事被告人の保釈のための保証書(刑事訴訟法94条3項)の発行に関する事業を、全国に先駆け、東京(地裁本庁のみ)、山梨、長野、福井、金沢、函館において7月1日から開始した。

 

保証書は、所定の審査を経た上で、被告人の家族や知人等の保証委託者と全弁協が「保証委託契約」を締結し、発行する。保証書の発行には、保証料(事務手数料)として保証金額の2%(最低金額は1万円)と自己負担金(保証金が没取されることなく勾留状が失効すれば返金される)として保証金額の10%が必要となる。保証金額の上限は300万円。没取決定がなされた場合には、全弁協が保証金を納付し、自己負担金を充当するとともに、保証委託者に求償する。

本事業を利用するには、各地の弁護士協同組合の組合員である弁護人からの申込みが必要となる。弁護人以外や組合員でない弁護人からの申込みは受け付けられないから注意が必要だ。 本事業は、全国に先駆けて東京ほか合計6都道府県で運用が開始されたが、各地の弁護士協同組合の事務態勢が整った地域から順次運用を開始する予定である(制度の概略図については下図のとおり)。

 

制度の概略図

 

ひまわり

海外の法廷ドラマをよく見る。「グッドワイフ」では子育てブランク後に復帰した女性弁護士が胸のすくようなたんかを切り、「王室弁護士マーサ・コステロ」では、刑事専門弁護人が当意即妙の弁論で無罪を勝ち取る。「ロー・アンド・オーダー」は前半が警察の捜査、後半は検察官が主人公の法廷シーンという構成だが、テンポのよさとほろ苦い結末が切ない▼制度の違いも興味深いが、テーマがすごい。グアンタナモの強制収容所問題と人種差別を絡めてあったり、複雑な同性愛を扱っていたり、ホットな時事問題も多い。金絡みと人情話が多い日本の番組とは随分違う。彼我の差はどこからくるのか▼この話をしていたら、向こうは表現の自由が徹底して守られているから、と友人が言ったので驚いた。有形無形の圧力、自粛、行き過ぎた気配り。番組制作者にはいろんなことがあるそうだ。知らなかった。日本は基本的人権を享受できている国だと思っていた▼だが、そういう目で見てみると、各種人権の指数も最高レベルではないし、国連拷問禁止委員会の勧告は多岐にわたり、内容も厳しい。われわれは思ったより不自由な社会で生きているのかもしれない。安全清潔で均質なこの国のそれなりの日常に時折さすそういう影にも敏感でいたい。(M・K)

 

第38回市民会議
自治体で弁護士が活躍するための課題等について議論
6月18日 弁護士会館

今回は、被災自治体への弁護士派遣に対する日弁連の取組および派遣弁護士の活動状況と、預り金をめぐる弁護士倫理に関する最近の問題について議論した。

 

弁護士の被災自治体派遣等について

日弁連は、要望のあった被災地沿岸部に、任期付職員として採用する弁護士を推薦する試みを本年2月から続けており、これまでに同制度を利用して3人の弁護士が被災自治体の任期付職員として執務を開始している。こうした職員の人件費は、国から自治体に対する震災復興特別交付税の措置で対応でき、自治体の負担を軽減している。

三鷹市長である清原委員は、この制度について、被災自治体における司法の専門家の必要性を国が確認したものとして評価するとともに、派遣された弁護士が直面した問題点を他の地域の派遣弁護士も共有し、派遣先全地域の復興のヒントにする仕組み作りの重要性を指摘した。他の委員も概ねこの指摘に賛同し、派遣された弁護士の個々の資質だけに頼るのではなく、日弁連が横断的なサポート体制を構築することが重要であるとの発言が相次いだ。

 

弁護士の一連の不祥事に関して議論

日弁連から、5月に開催した定期総会で預り金等の取扱いに関する規程を制定した経緯について説明したのに対し、委員からは、一連の不祥事に対して強い警告が示されるのと同時に不祥事の再発防止策として同規程への期待が示された。同時に、弁護士個人に規程の遵守を求めるだけでなく、メンタルヘルス面の相談体制の確立や事務所経営に関する研修の実施などの会員に対するサポートが両輪として検討されるべきであるとの指摘がなされた。

 

市民会議委員(2013年6月18日現在)

長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
北川正恭(議長・早稲田大学公共経営大学院教授)
清原慶子(三鷹市長)
古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
松永真理(テルモ株式会社社外取締役)
湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)
豊 秀一(副議長・朝日新聞大阪本社社会部次長)
(以上、五十音順)


 

メーリングリスト利用時の留意点
グループ設定を今一度ご確認を!

報道によると、7月10日、インターネットのメーリングリストサービス(「Googleグループ」)で設定を誤ったために省庁等の内部情報の一部が誰でも閲覧可能な状態にあったことが明らかになった。弁護士業務等でもメーリングリストが多用される昨今、今一度メーリングリスト利用時の情報管理を徹底したい。

 

弁護士職務基本規程における事件記録の管理(一八条)や秘密保持(二三条)の規定については、弁護士業務でパソコン等の情報通信機器およびインターネット等を利用する場合でも同様に遵守が求められる。

そのため、弁護士が秘密として取り扱うべき義務を負う情報(秘密情報)をメーリングリストサービス(掲示板機能を持つものを含む)を利用して送信または投稿する場合には、弁護士にはそのサービスの利用規約によって守秘義務が保持できるか、情報が漏洩しない設定となっているかの確認を行うべき注意義務がある。

多くのサービス運営会社の利用規約上では、電子掲示板の掲載内容について秘密保持義務が担保されない可能性が高いため、サービスの選定には十分注意が必要である。また、そもそもメーリングリストには機微情報や個人情報等を投稿しないよう注意したい。

会員各位は、グループ設定の過誤による情報漏洩が起こることのないよう、今一度設定内容を確認されたい(「Googleグループ」の設定方法については、別図のとおり)。

 

Googleグループの設定方法

(Google Inc.のガイドラインに従って画面写真を使用しています。)

※Googleアカウントにログインしていることが前提です。
※メーリングリストの管理者権限を有する人が設定する必要があります。

1 「https://groups.google.com/forum/#!myforums」をアドレスバーに入力する。
2 管理者権限があるメーリングリストを選択した後、上図のような画面が表示されるので、①、②(グループ設定)、③(権限→基本的な権限)の順でクリックし、④で設定変更する。(以下のとおり設定を変更してください。)

  • 「トピックを表示」 → グループのすべてのメンバー
  • 「投稿」      → グループのすべてのメンバー
  • 「グループに参加」 → 招待されたユーザー(又は誰でも申し込み可能)

 

【Yahoo!グループの設定方法についてはこちらをご覧ください】

会員専用ホームページ>会員向けのお知らせ>2013年7月11日「重要 日弁連からの緊急要請」

link_arrow.gif https://w3.nichibenren.or.jp/member/index.cgi?loginscr.a=contents:3485886

 

日弁連短信
給費制復活を含む経済的支援の実現に向けた取組

検討会議取りまとめ、座長発言

法曹養成制度検討会議の取りまとめでは、司法修習生への経済的支援について、可能な限り67期司法修習生から実務修習地への移転費用、集合修習中の寮の問題等の具体的措置がとられることになった。これは貸与制を是とする委員が多数であった検討会議においても、司法修習生に対する経済的支援の改善の必要性を認めるものであったといえる。なお、取りまとめでは司法修習生の修習専念義務に関し、その維持を前提としつつ、兼業許可基準の緩和を行うとしている。これを経済的支援の1つとして論じることは、本末転倒であり、安易な見直しが行われぬよう注視していく必要がある。

本年6月19日に行われた検討会議において、佐々木毅座長は冒頭の発言として、経済的支援に関しては、中間的取りまとめに対する意見が2400件寄せられ、うち大多数が給費制の復活を求める意見であったこと、取りまとめは「司法修習の在り方について検討する中で、必要があれば、司法修習生の地位及びこれに関連する措置の在り方や兼業許可基準の更なる緩和の要否についても検討することが考えられる」という形で整理していること、この問題は司法修習生の地位や司法修習の在り方と密接に関連すること、この点に関する意見や提言は真摯に受け止め、これを踏まえ、新たな検討体制の下で検討いただけると考えていることを述べ、今後の検討に期待を示している。

こうした取りまとめや、座長発言の背景には、検討会議委員から司法修習生への積極的な経済的支援を求める声が上がっていたこと、自民党の司法制度調査会の中間提言、公明党の法曹養成に関するPTの提言が、いずれも司法修習生への積極的な経済支援の必要性を提言したこと、なにより、中間的取りまとめに対するパブリックコメントでこの問題への指摘が多数あったことが挙げられる。

 

今後の取組

日弁連としては、今後の検討体制においても、司法修習のさらなる充実について検討が行われ、給費制復活を含む司法修習生へのさらなる経済的支援が実現するよう議論をリードしていく必要がある。現在、司法修習の在り方を考えるためのデータとして、修習の実態に関するアンケートを弁護士会および個別指導担当弁護士にお願いしている。ぜひとも御協力いただきたい。

(事務次長 鈴木啓文)

 

シンポジウム
災害時における個人情報の適切な取扱い
要援護者に対する適切な支援のために
6月17日 高知市

  • シンポジウム「災害時における個人情報の適切な取扱い~高齢者・障がい者等の安否確認、支援、情報伝達のために~」

災害発生時、自治体において高齢者・障がい者等の要援護者の個人情報をいかに取り扱うべきか。昨年7月以降、この問題を検討するため、東京、大阪、愛知で順次開催してきたシンポジウムを今回は高知市で開催した。

 

250人以上が参加し、関心の高さがうかがわれた

東日本大震災では、自治体が有する高齢者や障がい者等要援護者の個人情報が、本人の同意が得られていないという理由で支援活動を行う民間団体に適切に提供されず、支援に支障を来すケースがみられた。

基調講演では、被災地で起きたこのような弊害について、青田由幸氏(NPO法人さぽーとセンターぴあ代表理事)が、「住民の生命が最優位であり、被援護者の安否確認・避難支援のためには自治体から個人情報の提供を受けることが必要」と主張した。他方、震災当時仙台市職員として対応にあたった鳥井静夫氏(東京都産業労働局)は、「提供した情報の不適切な管理・不正利用の可能性を考えると誰にでも無制限で提供できるわけではない」との問題意識を示した。

これらの議論を踏まえ、災害法制に詳しい岡本正会員(第一東京)は、「災害直後は『緊急かつやむを得ない』等個人情報の目的外利用に関する法令の例外規定を積極的に活用すること、また、災害後ある程度時間が経過した後は、個人情報を適切に取り扱える支援団体を的確に選定することが重要」との見解を述べた。また、災害法制を専門とする山崎栄一准教授(大分大学)からは、平時から自治体と民間支援団体との間で信頼関係を構築しておくことの重要性も指摘された。

南海トラフ地震が想定されている高知県において、県、市町村、警察・消防、社協、民生委員、民間支援団体、弁護士など258人が参加し、テレビ・新聞でも報道されるなど、本シンポジウムは多方面の関心を集めた。

(高齢者・障害者の権利に関する委員会委員 重松健二郎)


 

シンポジウム
若手弁護士独立の実践論
7月1日 弁護士会館

  • シンポジウム「若手弁護士独立の実践論」 

弁護士の業務環境が多様化する中、若手弁護士が「夢」を語り追求する機運に乏しいとも言われているが、厳しい環境下でも独立開業して業務を軌道に乗せている若手弁護士もまた相当数いる。本シンポジウムでは、既に独立開業を果たした若手弁護士を迎え、独立と業務開拓のためのノウハウや実体験を聴いた。

 

「人との縁を大切に」と語る北会員

北周士会員(60期・東京)は、独立開業後の心得として、興味を持った場所にはとりあえず顔を出すこと、特に他士業からの紹介案件が多いことから、他士業との関係性を重視することをポイントに挙げた。企業の不祥事対応のコンサルティング会社勤務を経て独立開業した清水陽平会員(60期・東京)は、不祥事対応という専門性の高さを強みとして挙げたのに対し、札幌での勤務弁護士経験を経て東京で独立開業した望月宣武会員(60期・東京)は、幅広い仕事を受けるワンストップサービスを目指すという点で対照的だった。

開業費用について、野田隼人会員(62期・滋賀)および高橋辰三会員(62期・東京)は、事務所の備品の組み立てを自分で行うなどして低く抑えるための工夫を凝らしたとの体験を語った。開業後の経費管理について、柴田幸正会員(61期・愛知県)は、配偶者を事務員として経費を抑えるとともに、円滑な金銭管理を実践している。

自ら法律事務所を開設した会員と異なり、鈴木秀昌会員(64期・第二東京)は、弁護士会が運営する新人弁護士支援施設での独立開業を経て、現在は弁護士法人の東京事務所責任者に就任しており、新たなキャリアパスを示している。

パネリストたちは、「独立開業には相当の覚悟が必要」と述べるとともに、「前向きな気持ちで独立開業に向けて進んでほしい」と語った。

 

セミナー
なぜ国際機関は法律家を求めるのか?
国際機関へのキャリアパスの作り方
6月5日 弁護士会館

  • 一般社団法人広島平和構築人材育成センター・日本弁護士連合会主催 セミナー「なぜ国際機関は法律家を求めるのか?」~平和構築人材育成事業や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の経験から語る~

渉外事件に普段縁がない弁護士は国際機関の仕事にはつけない、そう思う弁護士は多いかもしれない。法律家がキャリア形成過程において、どのような国際機関・職種で働いているかを参加者に紹介し、国際分野でキャリア形成途上の中堅法律家を交えてグループディスカッションを行い、法律の実務経験や知識を国際機関などの平和構築分野で活用することの意義を検討するため、本セミナーを開催した。

 

求められるのは応用力
グループディスカッションでは参加者の今後のキャリア形成について議論した

「今は社会の在り方を考える支援が重要。だから法の支配を広く及ぼすよう、その担い手となる法律家の支援が必要」。外務省の「平和構築人材育成事業」の事業委託先機関である一般社団法人広島平和構築人材育成センター副理事の篠田英朗氏は語る。実際に各国の弁護士と一緒に働いた経験を持つデスモンド・モロイ氏(同センター・コースメンター)は、「国連ではリーガルに限らず多くの分野で弁護士が活躍している。ぜひチャレンジしてほしい」と熱いメッセージを送った。 コソボで難民支援等に従事していた大川秀史会員(東京・同センター2011年研修員)は、国際機関での勤務に必要な資質として「応用力、想像力を持ち、柔軟な人生設計が出来る人」を挙げた。

 

弁護士業務がキャリアに

弁護士業務そのものとは異なるポストへの応募でも弁護士業務の経験はキャリアとして評価されている。後半のグループディスカッションで、「ひまわり公設事務所での事務所経営経験が、国連開発計画でのプログラムアナリストのポストにおいて評価されるのではないか」と篠田氏は指摘した。国際機関でのキャリアを目指す人にとって今後必要な要素は何かを考えるよい機会となった。

 

シンポジウム
公共事業と私たちの未来
自立的な地域経済の実現のために
7月6日 弁護士会館

  • シンポジウム「公共事業とわたしたちの未来vol.2~「国土強靭化」と「被災地復興」のいま、「新しい」公共事業と「地域経済」のこれから~」

政府は「国土強靭化」を看板政策とし、五月には「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」を国会に提出したが、「国土強靱化」は真に「防災・減災」につながるのか。本シンポジウムでは、「国土強靱化」政策を検証し、今後必要となる公共事業とは何かを検討した。

 

今後必要な公共事業の在り方とは

基調講演を行った五十嵐敬喜教授(法政大学)は、公共事業が市民のために実施されるべきであるという前提のもと、「公共事業の計画・実行の過程で、より一層市民が参加できる方策が講じられるべき」と強調した。続く講演で、畠山信氏(NPO法人森は海の恋人副理事長)は、被災直後の沿岸地域の自然環境について、被災前には見られなかった豊かな生態系が形成されていることを報告し、復興計画で設置が予定されている防潮堤が、この生態系の循環や繋がりを断ち切る危険性を指摘した。

また、環境カウンセラーのつる詳子氏は、熊本県・球磨川の荒瀬ダムを撤去した事例を「つくらない公共事業」として紹介し、ダム建設により水質悪化などの環境破壊が生じたが、撤去後は自然豊かな干潟が形成され漁獲高が増加したと報告し、撤去に向けた活動内容の詳細を説明した。

 

日弁連試案を提案

これらの報告を受け、公害対策・環境保全委員会委員の鈴木堯博会員(東京)は、基調提言として、日弁連が2012年6月に取りまとめた「公共事業改革基本法(試案)」をあらためて提案した。同会員はさらに、試案では、「国土強靭化法案は民主性が欠如し、地方分権化に逆行している」との問題意識に基づき、情報公開・市民参加の保障、環境保全の優先を基本理念とし、費用対効果の分析方法の確立や公共事業中止に伴う補償措置、争訟手続の確立など具体的施策を設けていることを説明した。

 

シンポジウム
生活を破壊しない金利を求めて
利息制限法等の上限金利の見直しを考える
6月28日 弁護士会館

  • シンポジウム 「生活を破壊しない金利を求めて!~利息制限法等の上限金利の見直しを考える~」

借入総額を年収の3分の1まで、上限金利を20%とする改正貸金業法が完全施行されて3年。多重債務者の激減など成果を上げてきたにもかかわらず、一部の議員から、総量規制の撤廃や上限金利の引き上げ等の法改正の動きが出ているという。改正貸金業法の見直しは必要なのか。金利規制について検討するため、シンポジウムを開催した。

 

改正貸金業法は中小企業の経営を悪化させたか

冒頭、木村裕二氏(元消費者問題対策委員会委員)が以下の内容の基調報告を行った。まず、貸金業法改正前は5件以上の借入者が230万人いたが、本年3月には29万人と、その数は激減している。弁護士会のヤミ金相談件数もピーク時の20分の1となり、改正法はヤミ金の温床とはなっていないことが実証されている。さらに、金融庁の「中小企業の業況等に関するアンケート調査結果の概要」でもわかるとおり、改正法は、決して中小企業の資金繰りを圧迫するものではない。

 

生活を破壊しない上限金利とは?

鳥畑与一教授(静岡大学)は、返済能力を無視した貸出は、中長期的には借り手を破綻に追い込むことから、「返済能力に応じた金利こそが経済市場を育てる」と指摘し、「仮に支払能力を超えた貸出が不可避でも、リスク担保のために上限金利を引き上げるのではなく、セーフティネット貸付等の別の手段によるべきである」と述べた。

三好祐輔准教授(佐賀大学)は、「金融業者の利益も考慮すると、15%位が妥当な金利」との考えを示した。需給バランスからは、これを超えると貸出額が減少し、金融業者の利益にもならないと言う。

これに対し、税理士の柴田昌彦氏は、家計調査の統計を基に3年で返済できる利率を計算し、「6~8%程度が妥当である」との意見を述べた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.80

弁護士とメンタルヘルス

今回の特集はメンタルヘルス。長時間勤務、強いストレスと弁護士業務はハードです。依頼者の心配ばかりでなく、ご自身のメンタルヘルスにも気遣いを。今回の特集はぜひご家族にもお見せください。(広報室嘱託 白木麗弥)

 

心のサインを見逃さない

まずは、最近の2週間について、図のチェック項目を確認してみてほしい。

AからCのうち少なくとも2つと1)から6)のうち2つ以上が同時に当てはまったあなたは、軽症のうつ病に罹患している可能性がある。

弁護士が、心のサインを見逃さずに早期にメンタルヘルスに対処するメリットは大きく2つある。1つは弁護士に限った話ではないが、早期に対処すればそれだけ早めに治る可能性が高いこと、もう1つは、重症化を防ぐことで業務遅滞などのリスクを未然に防ぐことができることだ。

早めに異常に気づいたら、休養のための環境作りを心がけたい。1人事務所は事件を1人で抱えがちで、どうしても休養をとるのが難しいだろうが、普段から事件を共同受任したり相談できる弁護士ネットワーク作りを意識しておけばメンタルヘルスのみならず急な事情の変化にも耐えられる。複数で経営する事務所であれば、同僚や上司の弁護士に協力を仰ぐことも重要だ。

今はメンタルヘルス上の問題はない、という人も普段からの精神面での健康管理は重要だ。なるべく朝には日光を浴び、適度な運動を心がける。仕事上のクライアントとの距離を上手にとる。ストレスを発散させるためのスケジューリングも仕事のうちとして考えるのもよいそうだ。

 

ICD-10(国際疾病分類第10改訂版)から抜粋

うつ病エピソード

 

  • 典型的な抑うつのエピソード
    A. 憂鬱な気分が続いている
    B. 何に対しても興味や喜びの気持ちがおきない。
    C. 疲れがとれない。疲れやすい。

 

  • 他の一般的な症状
    1)集中力と注意力が落ちた
    2)「生きている価値がない。」「まわりに迷惑かけている。」などと無価値観や罪責感がある
    3)将来に対する希望のない悲観的な見方
    4)自分を傷つけたり自殺したくなる考えや実際に行為をおこなうこと
    5)睡眠がとれない
    6)食欲がない

 

広がる相談窓口
~東京都弁護士国保組合の試み~

吉成理事長(左)と菅野所長2008年4月から東京弁護士会が臨床心理士等による「こころの相談“ほっと”ライン」を開設、昨年8月からは大阪弁護士会がメンタルヘルス電話相談を開始している。

 

これらの取組に続き、東京三会、横浜、埼玉および千葉県の弁護士の多くが加入する東京都弁護士国民健康保険組合では、本年6月から株式会社法研と提携し、組合員と家族向けにメンタルヘルスカウンセリングサービスを開始した。理事長の吉成昌之会員(第二東京)は、「これまで国保のデータ上、うつ病に悩んでいる弁護士が相当数いることがわかっていましたし、弁護士の不祥事の背景としてメンタルヘルスの問題もあるのではと考えていました」と開始の経緯を語る。組合員と家族専用のフリーダイヤルでは、完全匿名で相談できる電話カウンセリングや面接でのカウンセリングの予約などを行うことができる。また、ウェブでも相談が可能だ。当然、誰がどんな相談をしたのかについてはいずれのカウンセリングでも組合や弁護士会に明かされることはない。相談料も年に5回までは無料だ。

実際にこのサービスでカウンセリングを行う臨床心理士の菅野泰蔵氏(東京カウンセリングセンター所長)は、「電話カウンセリングでは育児等で外出が難しい方や相談していることを知られたくないという方からのご相談が多く、面談では医療機関を紹介したり、家族がうつ病で悩んでいるがどうしたらよいかなど、突っ込んだ内容のご相談があります」とそれぞれのカウンセリングの特徴を説明してくれた。また、一般の企業と異なり、多くの弁護士は一緒に働く人が少ないため、周囲が異変に気づくきっかけが少なく、メンタルヘルスも自己管理に任せきりになりやすいので、対応が遅れがちなのだという。「弁護士さんは相談される側だからか、相談することに慣れていないということも手遅れになりがちな理由です」と菅野氏は指摘する。

カウンセリングでは、自分は今ちょっとおかしいのではないか、普段と違うような気がすると相談する人もおり、その場合には必要に応じて医療機関を紹介してもらうこともできるという。カウンセリングを行うのは、すべて臨床心理士資格を持ち、豊富な経験を有するカウンセラーで、面接では基本的には毎回同じ人が対応してくれる。1割ほどの人が無料回数を超えた後も有料でカウンセリングを継続するそうだ。

 

家族や同僚についての相談も可能

自分自身にメンタルヘルス上の問題がなくても、家族や同僚、部下がメンタルヘルスの問題を抱えているような場合に、どのように接したらよいか、仕事への復帰の考え方などについてのアドバイスを受けることもできる。中には子どものいじめの問題を相談するケースもあるそうだ。

「カウンセリングの持つ柔軟性はこういう場面で生かされます。まずは相談することを恐れないで、ぜひ活用してみてください」と菅野氏は語る。カウンセリングの専用ダイヤルは9月にも全組合員にお知らせを発送する予定で、それまでは東京都弁護士国民健康保険組合(電話03―3581―1096)に問い合わせをすれば番号を教えてもらえる。先進的な取組として注目したい。


日弁連委員会めぐり 56

若手法曹センター

弁護士数が急増する中、若手の就職難やOJTの不足などが懸念されています。法曹にふさわしい多様な人材を確保するため日弁連が行う若手会員向けサポートやさまざまな取組について、栃木敏明副本部長(第二東京)と小林哲也事務局長(第二東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 大達一賢)

-若手法曹センター発足の経緯は
小林事務局長(左)と栃木副本部長

(小林)2006年に若手弁護士の支援等のため発足した弁護士業務総合推進センターを母体に、その後、何度か組織の改編を経て昨年6月に若手法曹センターが設置されました。若手弁護士の支援は、就業支援のみにとどまらず、若手弁護士の会務離れを防ぐことにもつながり、弁護士自治強化の一場面ととらえることができます。

 

-就業支援策にはどのようなものがありますか

(栃木)東京三会の合同就職説明会に日弁連ブースを設置し、就職活動のノウハウなどを伝えるための相談会を行っています。また、会員専用ホームページにひまわり求人・求職ナビを設置して情報提供しています。さらに、活動領域拡大策として、各地で地元弁護士会との合同シンポジウムを開き、自治体の方を招いて弁護士を任期付公務員として採用することのメリットをアピールする活動をしています。任期付公務員の採用ニーズは増えていると感じます。

 

-女性会員・女性修習生向けの就業支援策はありますか

(小林)出産・育児により業務を中断せざるを得ないことへの対策として、教職員の産休補助教員のような、産休弁護士制度を設けることができないかを検討しています。今後アンケートを実施するなどし、検討を進めたいと考えています。

 

-採用推進・就業支援以外の活動は

(栃木)夢実践PTという、若手弁護士の夢の実践を支援するための活動をしています。若手弁護士は、目の前の経済問題ばかりにとらわれ、夢を持つことが容易ではないのが現状です。弁護士を目指したときの理想の実現を目指し、頑張ろうという気持ちを後押ししたいと思っています。今後は、若手もできるマーケティング講義や、たとえば1票の格差問題など新たな問題を取り上げ、社会的耳目を集めた先人たちと交流する機会を設けるなどの方策を考えています。私たちは、このような取組を含め、今後も積極的な若手支援を続けていきます。

 


ブックセンターベストセラー
(2013年4月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 ジュリスト臨時増刊 No.1453 平成24年度重要判例解説 - 有斐閣
2 弁護士会照会制度[第4版]活用マニュアルと事例集[CD-ROM付] 東京弁護士会調査室 編 商事法務
3 弁護士研修ノート ―相談・受任~報酬請求 課題解決プログラム 原 和良 著 レクシスネクシス・ジャパン
4 別冊判例タイムズ No.36 後見の実務 東京家裁後見問題研究会 編著 判例タイムズ社
5 労働契約法・高年法・派遣法 2012年改正と実務対応[新・労働事件法律相談ガイドブック 2013年追補] 第二東京弁護士会労働問題検討委員会 編 LABO
6 未払賃金立替払制度 実務ハンドブック 吉田清弘・野村剛司 著 きんざい
7 労働相談実践マニュアル Ver.6 ―改正労基法、派遣法、高年法対応 日本労働弁護団 著 日本労働弁護団
8 実務裁判例 交通事故における過失相殺率 ―自転車・駐車場事故を中心にして 伊藤秀城 著 日本加除出版
9 別冊NBL No.142 非典型契約の総合的検討 椿 寿夫・伊藤 進 編 商事法務
10 実例 弁護士が悩む家族に関する法律相談 ―専門弁護士による実践的解決のノウハウ― 第一東京弁護士会法律相談運営員会 編著 日本加除出版

編集後記

今回の特集は、弁護士業務とメンタルヘルスという少し変わったテーマを取り上げてみました。私自身カウンセリングというものを受けたことがなく、インタビュー中に「電話をしても何から相談したらいいのかわからないかも」とつぶやいたところ、「カウンセリングに来られる方の中にはメモを予め作られる方もいらっしゃいますよ」とのこと。そういえば、法律相談に詳細なメモを持って来られる方もいらっしゃるような…。「やっぱり、弁護士さんは相談され慣れていても、相談することに慣れてないのですね」と言われてしまい、自分でも苦笑してしまいました。

まさか自分が、という人でもメンタルヘルス上の問題が突然降り掛かってくることはあります。弁護士業務を長く健康的に続けるためにも、身体だけでなく、心も後回しにしないで目を向けてくだされば幸いです。(R・S)