日弁連新聞 第473号

原発事故損害賠償
短期消滅時効規定の適用排除を求める意見書を採択

5月29日、福島第一原発事故に基づく損害賠償請求権の消滅時効に関する特例法案が可決、成立した。日弁連は、同法案では被害者救済には十分ではないとして、4月18日付け意見書を採択し、この問題を解決する手段について提言していたところ、参議院文教科学委員会の附帯決議では、同事故の被害の特性に鑑み「平成25年度中に短期消滅時効及び消滅時効・除斥期間に関して、法的措置の検討を含む必要な措置を講じる」と明記された。日弁連としては、今後も引き続き立法措置に向けて全力で取り組んでいく。

 

特別の立法措置が必要

今回成立した特例法は、原子力損害賠償紛争解決センター(原紛センター)への和解仲介申立てについて、和解が成立しなかった場合には打ち切りの通知を受けた日から1カ月以内に訴訟提起すれば、和解仲介申立時に訴えを提起したものとみなすというものだが、これだけでは被害者救済には十分とは言えない。

第1に同法は原紛センターへの和解仲介申立を行うことを要件とするが、相当の審理期間を要するなどの理由から同手続の利用を躊躇する被害者もおり、手続申立をした被害者は避難地域の住民の1割程度にとどまる。反面、原紛センターへの和解仲介申立を行っていない被害者の時効問題について、同法では全く触れられていない。

第2に、損害の全容が判明していない現状のもと、ほとんどの和解仲介手続において、申立内容が損害の一部にとどまるのが実情だ。成立した特例法では、請求がされていない損害項目について時効中断効が生じないという不都合が多発するおそれがある。

同法のこれら問題点に加え、原発事故被害者については消滅時効制度の趣旨が必ずしも当てはまらないなどの理由から、日弁連は、福島第一原発事故に基づく損害賠償請求権の消滅時効について、①早急に3年の短期消滅時効の適用を排除する立法措置を講じるべきこと、②その上で今回の事故による原子力損害についての消滅時効・除斥期間全般について、今後、被害の特殊性を踏まえて検討すべきことを骨子とする意見書を公表した。

 

院内学習会開催~被害者を安心させる措置を~
すべての被害者の救済を求める福島県弁護士会の小池会長

日弁連は、原発事故被害者のより広い救済を目指し、5月1日に院内学習会を開催して、出席した国会議員やマスコミ等に前掲の意見書への理解を求めた。

浪江町から出席した檜野照行副町長は、原発事故の被害者が、事故から2年以上経過してもなお、日々の生活と住まいの安定を求めて腐心している現状を報告したうえで、「今は震災直後の混乱期でもなく、請求権を失うかもしれない被害者を想定した立法は十分可能。目の前にある請求権は消滅しないことを示して被害者を安心させてほしい」と訴えた。また、小池達哉福島県弁護士会会長は、「原発事故被害者の中には、仮払金を受領したら賠償は終わりと思っている人がいる。また、自分の抱える問題について相談にすら来られない人も多い。これらの被害者を拾い上げるのに3年ではとても足りない」と述べ、短期消滅時効規定の適用を排除すべきとの考えをあらためて表した。

 

東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効について特別の立法措置を求める意見書(意見の趣旨全文)

2013年4月18日

1 平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により生じた原子力損害(原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)第2条第2項にいう「原子力損害」をいう。)の賠償請求権については、民法第724条前段を適用せず、短期消滅時効によって消滅しないものとする特別の立法措置を早急に講じるべきである。

2 前項の原子力損害の賠償請求権については、民法上の除斥期間及び消滅時効の規定(民法第724条及び同法167条第1項)は適用されず、別途、一定の期間を経過した後に消滅するものとする特別の立法措置を講じることの検討に着手すべきである。ただし、その期間については、慎重に検討するべきである。


 

第22回憲法記念行事
国会は民意を反映しているのか
5月11日 弁護士会館

  • 第22回憲法記念行事「国会は民意を反映しているのか?」

衆議院選挙に小選挙区制が導入されて20年近くが経過したが、得票率と獲得議席数との乖離や死票の多さなど、さまざまな問題点が指摘されている。東京三会と共催したシンポジウムでは、選挙制度を切り口に、憲法の定める国民主権、代表民主制の意味を検証した。

 

九六条の改正には憲法に対面するに足る民意が必要
樋口名誉教授

樋口陽一名誉教授(東北大学・東京大学)は、基調講演の中で「民意」・「反映」の意味について、国会議員を全国民の代表、もしくは部分代表のいずれと捉えるのか、反映させるべきは「意見」と「意思」のいずれか、などさまざまな見解がありうることを指摘した。

また、「民意」について、昨今改正の是非が議論されている憲法九六条に触れ、「民意には憲法の枠組みの中で捉えられるものと、枠組みを超えて憲法そのものに対面するものとが考えられるが、九六条は後者の問題である」と指摘し、「国会において、3分の2以上の多数を形成できる程度に議論をして、その上で国民に発議することこそが国会の職責である」と述べた。

 

望ましい選挙制度とは

後半はパネルディスカッションが行われ、大石眞教授(京都大学大学院法学研究科)が、現在の選挙制度の是非に関連し1票の格差問題について触れ、「格差の問題は選挙区の管内人口ではなく、有権者数を基準として論じるべきではないか」との意見を表した。また、五十嵐仁教授(法政大学大原社会問題研究所)は、現在の選挙制度について、「過去の選挙事例で得票率と獲得議席数との逆転現象が生じたことは不当」と指摘し、「民意の『集約』は困難。集約と反映を混同せず、選挙制度設計はあくまで『反映』に徹するべき」と主張した。

これに対し、加藤秀治郎教授(東洋大学法学部)は、「現在の小選挙区制は、国会を国民の意思によって一方向へ向けるための強い制度であり、それは制度発足時から求められていたことであって、容易に変えるべきではない」と主張した。

ジョナサン・ソーブル氏(フィナンシャル・タイムズ東京支局長)は、英国を例に挙げ、「最も影響力を行使した故サッチャー首相ですら過半数得票の経験はないものの、同国では比例代表という制度そのものが望まれておらず、政権の安定が重視されている」と外国との比較論からの観点を提示するなど、多様な観点から議論が行われた。


ハーグ条約担保法案衆議院通過

担保法の審議状況に着目を

 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)を国内で実施するために必要な手続等を定めた担保法案が5月9日衆議院で可決され、参議院に送られた。法案の内容は、昨年3月に民主党政権下で国会に提出されたものと実質的に変更はないが、施行から3年をめどに見直しの要否を検討すること、および法の運用状況を毎年国会に報告することが附帯決議で盛り込まれた。

条約の加盟は5月22日に国会で承認されたが、これと併せて担保法案が今通常国会で成立すると、返還手続のための最高裁判所規則や、外務省令の制定等、同法の施行に向けた準備がさらに進められ、来年には条約の実施が現実に始まると予測されている。

 

来年の条約実施に向けて準備を本格化

日弁連では、日本の裁判所における返還手続・面会交流手続の代理人の紹介を求める当事者からの要請が中央当局(外務省)を通してなされた場合に弁護士を紹介する制度の構築や、代理人予定者向けの研修(11月20日に実施予定)等、条約の実施に備え、同条約に関するワーキンググループの設置期限を延長し、委員・幹事を拡大して、返還手続の管轄が置かれる予定の東京・大阪の各弁護士会をはじめ、全国の弁護士会との情報・意見交換を進めながら、準備を急ぐ。

同条約の概要や実務については、「自由と正義」本年11月号掲載予定の特集を参照されたい。

(ハーグ条約に関するワーキンググループ副座長 大谷美紀子)

 

ひまわり 

   

ゴールデンウィークを利用して出雲大社を訪れた。出雲大社は、縁結びの神と慕われる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をまつるとされることから、近時、老若男女問わず良縁祈願に訪れる参拝客が後を絶たない。加えて今年、出雲大社では60年ぶりの「平成の大遷宮」が行われるとあって注目を集めた。「遷宮」とは神体や神座を本来あったところ(国宝である本殿)から移し、社殿を修造して再び本殿に戻す儀式だ。5月10日には、2009年から行われた修造工事を終え、神体を本殿に戻す「本殿遷座祭」が厳かに執り行われた▼ところで、5月19日、この出雲大社で福島県浪江町に約300年前から伝わる豊作祈願の伝統芸能「請戸(うけど)の田植踊」が奉納された。踊りを披露したのは原発事故で避難生活を送る浪江町出身の6~15歳の少女たち。避難先の宮城県や新潟県で練習に励んできたそうだ。出雲大社には同じ日、大津波の被害に遭った岩手県山田町の「大浦大神楽」も奉納された▼出雲の神の「縁結び」とは、男女の縁にとどまらず、社会が明るく楽しいものであるようにとお互いの幸栄えのための諸々の縁が結ばれることを意味するとのこと。被災地の祭りが人々の心を結びつけ、幸せへと連なることを祈ってやまない。(M・K)

 

原発事故子ども・被災者支援法福島フォーラム
5月11日 福島市
支援策の具体化を求める声相次ぐ

2012年6月に成立した原発事故子ども・被災者支援法に基づく基本方針の策定を訴えるため、いまだ被害のさなかにある福島県にて、関連諸団体とともにフォーラムを開催し、250人以上が参加した。

 

子どもの権利実現のため法律の実施の必要性を説くヤンギー・リー氏

冒頭、海老原夕美日弁連副会長が、「同法に基づく基本方針の策定が急務であり、また福島第一原発事故に伴う賠償請求権の消滅時効について特別立法が求められている」と挨拶した。

続いて木田光一医師(福島県医師会副会長)が基調講演を行い、「原発事故による住民の健康管理については、国が直轄事業として行うべきである」との提言がなされた。その後、原発事故の被害住民から、「同法に基づく支援策の具体化を待っていたが、実現されないまま避難先から福島に戻ることになってしまった」等の悲痛な声が寄せられた。

パネルディスカッションでは、崎山比早子氏(元国会事故調委員)が、「100ミリシーベルトを下回る放射線量でも健康影響が報告されている」と指摘し、栗田暢之氏(愛知県被災者支援センター所長)は、県とNPOとが創意工夫しながら避難者支援に取り組んでいる現状を報告した。

最後に、本フォーラムの実行委員長である熊坂義裕医師(前宮古市長、社会的包摂サポートセンター代表理事)から、「災害は人を選ばない。つらい立場の隣人は実は明日の自分である」との発言があり、特別ゲストとして参加したヤンギー・リー氏(国連子どもの権利委員会前委員長)の、「子どもの権利実現に重要なことは、1に法律の実施、2に法律の実施、3に法律の実施である」との力強い発言で、フォーラムは締めくくられた。

(東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部原子力プロジェクトチーム委員 福田健治)

 

「ワンストップ支援センターの設置に関する意見書」取りまとめ
性犯罪・性暴力被害者に必要な支援を

性犯罪・性暴力の被害者は誰にも相談せず、医療、カウンセリング、弁護士などの支援に繋がることなく1人で問題を抱え込んでいる―そのような現状からワンストップ支援センターの必要性が叫ばれて久しい。日弁連は、4月18日の理事会において「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの設置に関する意見書」を取りまとめた。

 

国の全面的支援のもと全国に設置を

ワンストップ支援センターは、2010年、大阪に民間の運営で開設されたのを皮切りに、これまで全国で9か所(2013年5月現在)設置されているが、全国どこで被害にあっても利用できるという状況には程遠い。

国もワンストップ支援センターの必要性を認識し、昨年、開設・運営のための手引を作成、公表しているものの、現実的には地方自治体、民間任せの姿勢にとどまっている。

しかし、ワンストップ支援センターの開設・運営には資金面、人材面等で高いハードルがあり、民間や地方自治体単独での設置には困難を伴うのが現状である。

そこで日弁連は、①国が地方公共団体と協同して責任主体となりワンストップ支援センターを設置すべきこと、②総合病院内に拠点を持つセンターを都道府県に最低1か所設置すべきこと、③国が設置について全面的に財政的支援を行うべきこと等を求める意見書を取りまとめた(意見書全文は日弁連ホームページに掲載)。

 

弁護士の連携も必要

ワンストップ支援センターでは、弁護士も刑事・民事手続の支援のため連携していくこととなる。今後、日弁連では、弁護士が各地で支援センター開設の準備に関わっていくことを促進するため、全国的な情報交換を考えているところである。

(犯罪被害者支援委員会委員 長谷川桂子)

  

日弁連短信
 刑事司法改革「基本構想」後の議論状況

法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」は、本年1月に「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」を取りまとめた。3月以降、基本構想に基づき、研究者・実務家の委員・幹事で構成される2つの作業分科会が具体的な制度案の作成作業を行っている。テーマによっては、具体的な制度案を見た上で、特別部会において採否の議論を行うことになる。

「取調べの録音・録画制度」の制度設計については、基本構想で、①「一定の例外事由を定めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける制度」と、②「録音・録画の対象とする範囲は、取調官の一定の裁量に委ねるものとする制度」の「2つの制度案を念頭に置いて具体的な検討を行う」とされ、これに基づく議論が続いている。

証拠開示については、公判前整理手続における証拠リスト開示制度の導入を含む具体的制度案の検討がなされている。

被疑者国選弁護制度の拡大については、いわゆる第3段階(勾留された被疑者の全事件)に加え、第4段階(逮捕段階)の弁護人の援助についても検討がなされる可能性がある。

また、被疑者等の身体拘束に関し、住居等制限命令制度の創設および身体拘束の適正な運用を担保するための指針規定について日弁連から具体的な制度提案を行った。

このほかにも多くの論点がある。通信傍受の要件緩和などのほか、あまり知られていないが、「被告人の証人適格」導入が検討対象となっている。これまでの被告人質問の制度をやめ、公判廷で被告人が宣誓をして証人となり、偽証をした場合には制裁を受けるという制度である。

自己または他人の犯罪事実を明らかにするために重要な協力をした場合には刑が減免されうる旨の実体法上の規定を設けること(刑の減免制度)、検察官が弁護人との間で、被疑者が他人の犯罪事実を明らかにするための協力をすることと引換えに、処分上の恩典等を付与することに合意できるとする制度(協議・合意制度)、裁判所の命令で証人の自己負罪拒否特権を消滅させて証言を強制でき、その代わりに証人を免責する制度(刑事免責制度)も検討されている。

作業分科会の議事録および配布資料は法務省のウェブサイトに掲載されているので、引き続き特別部会の動向に関心をお寄せいただきたい。

(事務次長 二瓶 茂)

 

第11回公設事務所弁護士協議会
4月25日 弁護士会館

全国の弁護士常駐型公設事務所から所長弁護士が集まり、研修会を実施して業務の質の向上を図るとともに、公設事務所に関するさまざまな問題を議論するため、協議会を開催した。

 

第一部の研修会では、鬼頭治雄会員(愛知県)を講師に迎え、農地法に関する研修を行った。

研修会に引き続く協議会では、公設事務所を取り巻くさまざまな問題についての報告や意見交換を行った。中でも、ここ数年、公設事務所が設置される管内地域に一般の法律事務所が開設されるケースが増えており、ゼロワン解消後の公設事務所の意義と一般事務所とは異なる役割について議論され、会場からは、「不採算事件を積極的に受任する公的役割を担っている点に独自の意義がある」という意見が出された。

公設事務所の中には、弁護士数の増加や債務整理案件の減少等により、経営に苦労する事務所が出てきており、このような事態への対応策や、効果的な広報活動についての意見交換も行われた。日弁連では公設事務所のリーフレットを作成し、その意義や役割について広報に努めているが、このリーフレットの活用も今後の課題であるとの意見が出された。

また、公設事務所運営改善の方法についての意見交換では、会場から、「民生委員に講演の提案を行ったり、自治体の研修講師を積極的に受けるなどして、地域住民に公設事務所の存在を知ってもらうべきではないか」などと活発な意見が出されていた。

(日弁連公設事務所・法律相談センター二部会事務局 宮原一東)


新事務次長紹介

5月31日をもって、中西一裕事務次長(東京)が退任し、後任には、兼川真紀事務次長(東京)が就任した。

 

兼川 真紀 (東京・48期)

兼川 真紀事務次長

 

1カ月の見習い期間を経て、6月1日から就任いたしました。
自治の重みをかみしめる毎日です。微力ながら、お役に立てるよう努力したいと思います。よろしくお願いいたします。

 


国際セミナー
世界に広がる若手弁護士の活躍の場
業務拡大のチャンスとヒント
4月15日 弁護士会館

  • 世界に広がる若手弁護士の活躍の場 ~業務拡大のチャンスとヒント~

世界各国の45歳未満の弁護士によって構成される組織であるAIJA(若手法曹国際協会)との共催で、若手弁護士のキャリア形成および業務拡大の展望等をテーマとした国際セミナーを開催した。

 

各スピーカーがキャリア形成や顧客獲得方法などについて語った

本セミナーには、スピーカー兼パネリストとして、AIJAに所属して国際的に活躍する弁護士(インド、ブラジル、ドイツおよび日本人弁護士)が参加した。

第1部は、各国の弁護士のキャリア形成、顧客獲得方法や海外における日本の弁護士の活躍の場等をテーマにした、モデレーターとスピーカー間の一問一答形式のスピーチが行われた。興味を持った業種等の分野において迷わず道を切り拓くこと、国際的にも積極的に人脈を築くことなど、スピーカー自身の経験から、キャリア開拓のヒントを得ることができた。

第2部では、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカにおける国際企業間の交渉についての比較をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。例えば、待ち合わせ時間について、ドイツでは原則15分間以上の遅刻は許されないが、インドでは、所定時間から数時間遅れることもありうるなど、文化の違いがビジネス面でも如実に現れることを感じさせられた。

平日にもかかわらず参加者は109人にも上り、スピーカー間で活発な議論が交わされるだけではなく、一般参加者からも質問があがるなど、充実したセミナーとなった。

国際的な舞台での弁護士の活躍が注目されていることがあらためて実感されたことから、今後もこのようなセミナーをはじめとするさまざまな国際交流活動をきっかけに、日本の弁護士が国際的にさらなる活躍をすることが望まれる。

(国際交流委員会幹事 春日 舞)


給費制復活に向けて
法曹養成制度検討会議
中間的取りまとめを受けた動き

  • パブコメに向けてキックオフ~給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める市民集会~

政府の法曹養成制度検討会議が4月11日に公表した「中間的取りまとめ」では、司法修習生への経済的支援の在り方について、貸与制を前提とした上で、必要となる措置をさらに検討する必要があるとされた。この中間的取りまとめに対するパブリックコメントに向け各地で市民集会が開催されるなどの動きが活発となったが、このうち4月16日に開催した「給費制の復活を含む司法修習生への経済的支援を求める市民集会」の模様を中心に、この間の動きを報告する。

 

市民集会を開催
現役の法科大学院生が紙芝居を上演して修習生の苦境を訴えた

冒頭、検討会議での議論状況について、日弁連司法修習費用給費制存続緊急対策本部副本部長の市丸信敏会員(福岡県)が報告し、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないよう、最終取りまとめにおいて具体策を提言するよう求めた。

続いて、新65期司法修習生への生活実態アンケート結果をもとに、「貸与制の不都合な現実」と題する紙芝居を上演した。紙芝居では、貸与制利用者の平均借入額が340万円余りに上ることや、この借入で法科大学院の奨学金を返済する者もいること、修習辞退を考えた者が28.2%に上ることなど、修習生が置かれている過酷な状況が紹介された。

本集会には弁護士や司法修習生のほか、一般市民や関連団体も多数参加し、参加者の中にはその場でパブコメに対する意見を提出する者も相当数見られた。

 

実情の改善を求める動き活発に

日弁連は、昨年11月27日に「給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明」を、本年4月12日には「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめに関する会長声明」を公表している。また、6月5日には修習生への経済的支援についての検討会議の議論状況やパブコメの結果を報告するため、院内集会の開催を予定している。 

その他にも各弁護士会では給費制および法曹養成制度に関し、多くの市民集会やシンポジウムを開催し、修習生への経済的支援の必要性に対する理解を求めている。日弁連としては、これらの動きを引き続き拡げていきたい。


第66期採用問題・若手支援・偏在解消に関する全国担当者連絡協議会
4月24日 弁護士会館

司法修習生の採用問題については年々厳しさを増しており、2013年に司法修習を終了する予定の第66期についても予断を許さない状況にある。また、即時・早期独立弁護士や事務所内独立採算弁護士(いわゆる「ノキ弁」)を含む若手弁護士に対する支援策のさらなる充実や、弁護士過疎・偏在地域の解消も重要な課題だ。これらの問題について、各弁護士会の担当者による協議を行った。

 

66期司法修習生の採用問題対策

冒頭の基調報告では、3月末時点の66期司法修習生の進路内定状況として、未定率が約55%(注:回答率は42.4%)であり、同時期における現新65期の未定率(約50%)と比べても、依然として修習生を取り巻く就職状況が厳しい実情が報告された。

続いて、各弁護士会での新規登録弁護士の採用活動・採用形態について、65期の受入等に関するアンケート結果を踏まえて報告があった。ノキ弁形態での採用が増加傾向にあることが指摘され、チューター制度やクラス別研修制度(東京弁護士会)、若手弁護士の指導委託制度(大阪弁護士会)、会費の軽減措置(島根県弁護士会)など、各弁護士会が独自に採用している方策が紹介された。

 

若手弁護士に対する支援態勢

次いで、即時・早期独立弁護士の開業支援態勢等について協議を行った。基調報告では、4月22日現在日弁連の独立開業メーリングリスト登録者が281人、即時独立弁護士およびこれに準じる弁護士の中で希望する者に対し、チューター弁護士を配置して一般的なアドバイス等を行う「独立開業支援チューター制度」の利用者が72人に上るなど、日弁連の行う支援態勢が若手弁護士に活発に利用されている現状が報告された。

各弁護士会が実施する支援策について、大西英敏会員(東京)が同会蒲田法律相談センターにおいて若手に執務スペースを提供し、概ね好評を得ていることを報告するなど、さまざまな取組が紹介された。

 

偏在解消のための経済的支援制度

この問題に関する基調報告では、経済的支援制度として、偏在解消対策の対象地区で独立開業する弁護士や常駐従事務所を開設する弁護士法人に対する無利息貸付制度、過疎・偏在地域に赴任する弁護士の養成事務所に対する経済援助制度が紹介された。また、2007年度から2012年度までのこれら制度による支援実績は、、合計約6憶1779万円に上ることも併せて報告された。

質疑応答では、今後の過疎・偏在対策の具体的方針について質問が飛び交うなど、活発な意見交換が行われた。

 

研修会
専門職後見人として後見信託の適否を判断する際の注意点
5月17日 弁護士会館

2012年2月から、被後見人の財産のうち、日常的な支払に必要な金銭を後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する後見制度支援信託(後見信託)の試行的運用がなされている。本研修会では、集積された事例の分析結果を踏まえ、後見信託の利用の適否を検討する専門職後見人に選任された場合の注意事項を中心に解説を行った。

 

十分な調査・検討の必要性

後見信託では基本的に固定された金銭給付がなされるため、後見信託を利用することで、柔軟かつ円滑な財産活用が阻害され、適切な身上監護がなされない可能性がある。そこで、専門職後見人は、本人の財産面のみならず、身上監護面、例えば、老健施設やグループホームが、本人にとって継続的に安定した住まいとなりうるかなどの事情について十分に検討し、制度利用の適否を判断することが必要となる。

 

不相当との判断が必要な事案も

運用開始からこれまで、全国の家庭裁判所において約160件の事案について本制度の適用の可否が検討されてきた。従前、預貯金以外の財産が多数ある場合や訴訟を抱えている場合等には、後見信託に適さないと言われていたが、実際には、制度利用案件のうち不動産を有するケースが半数近くを占めた。訴訟については、専門職後見人による解決後に信託利用が想定されているようだ。

このように多様なケースが存在する中、専門職後見人の業務は、本人の置かれた状況に応じて本制度利用の適否を的確に判断することであると言える。本人の財産が少ない場合、財産中に不動産・株式等がある場合、遺言が存在する場合等、事案の特性に照らし、専門職後見人が本人の権利擁護の観点から、後見信託不相当との判断をすべき場合も十分考えられ、合理性があればこの判断は家裁においても尊重される。

 

債権法改正シンポジウム
個人保証規制・債権譲渡制限特約等の制度の行方
4月23日 弁護士会館

  • シンポジウム「民法(債権法)改正における個人保証規制と債権譲渡の譲渡禁止特約等の制度の行方」

法制審議会民法(債権関係)部会は、2月26日に「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」を公表し、6月17日までのパブリックコメントに付した。中間試案では、保証人保護の方策の拡充や債権譲渡制限特約の効果の明確化など、実務に多大な影響を及ぼす可能性がある事項が多く盛り込まれている。これら改正が、実務にいかなる影響を及ぼすのかを検証した。

 

山野目教授

山野目章夫教授(早稲田大学大学院法務研究科)は、保証人保護の方策拡充に関する改正の現状と問題点について基調講演を行い、「個人保証の無効は必ずしも確定したわけではない」と述べて、改正の行方に対する注意を促した。また、中間試案中、保証人の責任制限に関し、①裁判所による裁量減免、②保証人の財産状況に応じた比例原則という選択肢が挙げられていることなど、最新の議論状況を紹介した。

パネルディスカッションでは、改正により金融機関と事業会社が受ける影響について議論した。事業会社の代表取締役を務める中村高明氏は、金融機関が中小企業代表者個人の資力を基準に融資判断をしてきた現状を踏まえ、金融機関に対し、事業価値に着目した融資慣行の確立を求めた。また、中井康之会員(大阪)は、「融資に際して、動産・債権譲渡担保制度の活用とそのための対抗要件制度の見直しが必要」と述べた。山野目教授も、2004年民法改正時の法制審議会において、牧場を担保とする可能性が議論されたことを紹介し、事業価値をもとに担保価値を把握することの必要性を強調した。

また、消費者問題対策委員会委員の千綿俊一郎会員(福岡県)は、保証被害に関するアンケート結果として、破産原因のうち保証債務や債務肩代わりを原因とするものが全体の4分の1以上に上ることを報告し、保証人保護に関する抜本的対策の必要性を訴えた。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.78

面会交流支援事業の最前線
ひとり親家庭支援センター「はあと」・家庭問題情報センター(FPIC)

家事事件手続法の制定により子どもの手続代理人制度が創設されるなど、子どもの権利や利益があらためて注目されています。さまざまな事情により親と離れて生活する子どもにとって、面会交流は自身の親と接点を持つための貴重な機会です。
今回は、そんな面会交流の支援事業を行う2つの施設を訪ね、「はあと」の相談員の方とFPICの永田秋夫事務局長、山口恵美子面会部長にお話を伺いました。(広報室嘱託 大達一賢)

 

東京都ひとり親家庭支援センター「はあと」

面会交流は子ども中心に。支援事業施設の活用も積極的に検討しよう
―はあとの設立経緯を教えてください

2002年の母子及び寡婦福祉法、児童扶養手当法の改正に伴い、母子家庭等就業自立支援センターとして設置されました。もともとは生活相談と養育費相談を受けていたものが、2012年の民法改正で離婚時に面会交流と養育費の取り決めを行うよう定められたことに伴い、面会交流支援事業を開始しました。

 

―利用することのメリットは何でしょうか

利用者は、はあとから支援決定を受けることで、無料で子と別居親との面会実施までの連絡調整や当日の子の受渡し、付添いなどの支援を受けることができます。はあと自体は、面会交流支援の申込み受付窓口として機能しており、実際の支援業務はFPICや、同種の事業を営んでいるNPO等が担っています。

 

―利用者への周知はどのようにしているのでしょうか

ホームページや母子自立支援員などの自治体職員、弁護士などから聞かれる方が多いようです。母親から、父親と子との面会交流支援を求める事例が多いように思います。発足してまだ間もない事業であるため、今後周知がなされれば、利用が増えるのではないでしょうか。

 

家庭問題情報センター(FPIC)

―FPICの設立趣旨などについて教えてください

FPICは、元家庭裁判所調査官が、その豊富な経験や人脈と専門知識や技法を広く活用し、健全な家庭生活の実現に貢献することを目的として設立した公益法人です。現在は東京・大阪・名古屋・福岡・千葉・宇都宮・広島・松江・横浜・新潟に相談室を設けています。

 

―利用者の傾向などはありますか

利用者は弁護士や家庭裁判所から情報提供を受けてくることが多く、利用実績は増加傾向にあります。今は昔よりも、父親からの面会交流申込みの事例が増加しており、そのことも件数増加の一因と思われます。

ただ、FPICは、面会交流を支援するにとどまり、面会交流そのものの可否を判断する立場にはありません。そのため、あくまでも監護親と別居親等が面会をすることに合意している事例のみを取り扱っています。

 

―具体的にどのように面会交流を行うのですか

FPICでは、別居親に子どもを会わせる際の付添い、父母が顔を合わせられない場合の子どもの受渡し、父母が連絡を取り合うことが困難な場合の連絡調整などの支援を行います。付添型の支援では、原則として外部で、できるだけ会話中心ではなく行動中心の面会になるように心がけています。子どもには会話中心の面会は苦痛になりかねないからです。親には、あくまで子どものための面会交流を旨とすることを周知徹底しています。また、面会交流の際は、子どもから無理に普段の生活の様子等を聴きだすことのないように助言しています。子どもが自然と話をしてくれるようになるのを待つことが重要です。実際の面会交流にあたっては、子どもが別居親と普段の生活について屈託なく話をして、褒められたり笑ったりなどの楽しい時間を作ることを目的としていますが、中でも小学校低学年の子らの意思を汲むことが最も難しく、慎重かつ計画的に支援を行うようにしています。子どもはどちらの親の信頼も裏切りたくないと考えるため、別居親と交流することに対する罪悪感を払拭してあげたいと思っています。

 

―弁護士・弁護士会に求めることは

面会交流について、弁護士の皆さんには、あくまで子ども中心という立場から、FPICが面会当事者に対してどのような指導や教育を行っているのかを知ってほしいと思います。弁護士が一方当事者の代理人という立場であることは理解していますが、子ども中心という立場に立ち返れば、自身が何をすべきなのかは必然的に見えてくるはずで、柔軟な対応をしていただくことを望んでいます。


日弁連委員会めぐり 54

法曹養成制度改革実現本部

4月11日、政府の法曹養成制度検討会議は中間的取りまとめを公表し、これを5月13日までのパブリックコメントに付しました。この中間的取りまとめでは、法曹有資格者の活動領域、法曹人口、法曹養成制度の在り方についての検討がなされ、司法試験の年間合格者数3000人という数値目標を事実上撤回することとなったことは、記憶に新しいところです。

法曹養成制度改革実現本部(実現本部)は、この検討会議に対し日弁連として対応するために、約120人の委員により組織されていますが、その活動はあまり知られていません。そこで、今回は、宮崎誠本部長代行(大阪)、橋本副孝副本部長(第二東京)、岡田理樹事務局長(第二東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 柴田亮子)

実現本部は「黒子」

左から岡田事務局長、宮崎本部長代行、橋本副本部長

実現本部は、検討会議において日弁連の方針に沿って多くの方の賛同を得るべく、執行部と協力して、委員・政治家との意見交換や、法務省・文科省等関係省庁との事務折衝を行っているが、どうしても水面下の活動になりがちで、宮崎本部長代行は「黒子の役割を担っている」と言う。それ以外にもマスコミとの懇談会、市民集会等での世論形成にも力を入れ、会内的には、検討会議での議論を周知し、会内の意見の取りまとめを行う。

 

法曹の活動領域拡大へのインフラ整備が必要

法曹の新しい活動領域としては、地方自治体、企業、海外展開業務等が挙げられる。

岡田事務局長は、「活動領域の拡大を政府として政策的・積極的に推進することを求めていくことが重要だが、弁護士会の側でも、例えば組織内弁護士として、あるいは企業等の海外進出の場で活躍できる弁護士の育成等、新しい活動領域に対応できる体制を整備していくことも課題だ」と指摘した。

 

オブザーバーとしての日弁連

法曹養成という会員の最大の関心事項の一つであるにもかかわらず、日弁連は検討会議にオブザーバーとして参加しているにすぎず、当然に発言権が認められているわけではない。有識者委員の中に弁護士資格を持つ委員も何人かいるが、必ずしも日弁連の考え方と同じ立場ではないという。宮崎本部長代行は、「今後も、日弁連や弁護士にかかわる重要問題について、第三者が主役の審議会で決まるというスタイルが多くなるだろう。こうした審議会においても、いかに日弁連の方針に共感いただくか、今は、試行錯誤している時期」と日弁連と実現本部の立場を説明した。

 

地道な努力が必要

最後に、橋本副本部長が、「活動にあたっては、日弁連とは異なるご意見を持つ方に対しても、そのご意見を傾聴し、学ぶべきは学んで可能な限り意見の調整を行い、客観的資料を示しつつ時間をかけてご理解をいただくように努めるといった地道な作業の積み重ねが大切」と語った。

検討会議での議論を踏まえ、法曹養成制度関係閣僚会議においては、本年8月までに一定の結論を得るものとされている。


ブックセンターベストセラー
(2013年2月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
1 弁護士報酬基準等書式集[改訂版] 弁護士報酬基準書式研究会 編 東京都弁護士協同組合
2 会社法コンメンタール5 ―株式(3)§§199~235 神田秀樹 編 商事法務
3 過払金返還請求・全論点網羅2013 名古屋消費者信用問題研究会 監修 瀧 康暢 編著 民事法研究会
4 条解家事事件手続規則 最高裁判所事務総局家庭局 監修 法曹會
5 別冊ジュリストNo.214 金融商品取引法判例百選 神田秀樹・神作裕之 編 有斐閣
6 Q&A 離婚実務と家事事件手続法 小島妙子 著 民事法研究会
7 破産管財の手引[増補版] 東京地裁破産実務研究所会 著 きんざい
入門 労働事件[解雇・残業代・団交・労災]~新人弁護士 司君ジョブトレ中~ 東京弁護士会 労働法制特別委員会 若手部会 編 法律情報出版
9 弁護士 独立のすすめ 北 周士 編著 第一法規出版
10 30問30答 証人尋問ノート 大塚武一 著 東京図書出版

編集後記

今月号の校了間際、関東地方で例年より早い梅雨入りとなった。4月に記録的に遅い雪と寒さという報道を目にしたかと思えば、5月には各地で観測史上最高の暑さを記録した。新緑、五月晴れ…5月の時候の言葉は爽やかで、活力溢れるイメージがあるが、寒暖の差が激しく、肉体的にはなかなか厳しい季節でもある。進学・就職等環境が大きく変わると、新しい生活に慣れるために精神的にも疲れが出る頃である。五月病、新入社員の場合は六月病というそうだ。やる気が出ない、イライラする、眠れない等に気付いたら、まずは十分な休養を。早めの対応が結局は一番の近道だ。

私と言えば、天気がいいとじっとしていられず、取材の合間でも、原稿締切間際でも、ちょろちょろと散歩に出る。いつもの道でも新しい発見があり、手軽な気分転換方法である。これからは梅雨の合間を見つけて散歩に出よう。(R・S)