日弁連新聞 第472号
法曹養成制度検討会議
中間的取りまとめを公表
4月9日に開催された第12回法曹養成制度検討会議では「中間的取りまとめ(案)」を検討し、一部修正の上、4月11日に公表。同12日、5月13日までのパブリックコメントに付した。この中間的取りまとめに対して、日弁連は既に会長声明を発表しているが、検討会議での議論の要点は次のとおり。なお、次回以降の検討会議では、パブリックコメントで提出された意見の検討を行い、これを踏まえ、最終案が取りまとめられる予定だ。
法曹の活動領域拡大
法曹有資格者の活動領域が司法制度改革の想定に反し限定的なものに止まっていることを重視し、企業内、公務員、海外展開業務等の各分野で活動領域の拡大に向けて積極的に取り組むべきことが指摘された。議論の中では、この点に関する国の役割と責任の明確化を求める意見が複数出たが、取りまとめには十分反映されていない。
なお、活動領域の拡大への取り組みを推進する組織をつくるべきとの議論があり、体制の整備について検討する必要があるとされた。
今後の法曹人口の在り方
司法試験合格者年間3000人をめざすとした目標は現実性を欠くとして事実上撤回されたが、これに代わる数値目標は設けないこととした。これは「現状の年間2000人程度の合格者数を尊重すべき」、「法曹需要の現状に合わせ現状より相当数減員すべき」、「法科大学院入学者の急減で志願者の層が薄くなっているという厳しい現実を共有すべき」といった意見の分布を受けたものである。
より重要な点は、数値目標を掲げることではなく、活動領域の拡大状況や司法アクセスの進展状況等の現実の需要を勘案して法曹人口の在り方を検討するとしたことである。
法科大学院の統廃合
法科大学院については、文部科学省が進める公的支援見直しによる自主的撤退に任せる以上に、法的措置を含む大幅な統廃合・定員削減を行うことの是非が議論となったが、法的措置を設けることは検討課題とされ、パブコメ後に再び検討される。
また、法曹養成期間の長さが志願者減少の一要因とされたことから、飛び入学などの法学部教育を含めた養成期間短縮の検討の必要性が指摘された。
司法修習生への経済的支援
司法修習生については、地方配属者の経済的負担過重への配慮や実費的費用の一律的支援などの議論がなされたが、具体的な支援策はまとまらず、修習生の位置づけや修習専念義務の在り方についても議論が不十分である。そこで、必要となる措置をパブコメ後の検討会議で検討することとされた。なお、貸与制を前提とした点については、「給費制とすべき」との意見があったことを明記した。
(事務次長 中西一裕)
「預り金等の取扱いに関する規程案」を定期総会に付議
不祥事の再発防止策を強化
弁護士による不祥事が相次ぐ事態を受け、4月19日に開催された理事会において、預り金等の出入金記録の義務化と弁護士会への調査権限の付与等を内容とする規程案を定期総会(5月31日開催予定・東京都)に諮ることを全会一致で承認した。
昨年秋以降、複数の弁護士会で、後見人に就任した弁護士が被後見人の金員を横領するなど、弁護士が業務上預り保管する預り金の横領事件等が相次いで発覚した。これら不祥事により、弁護士・弁護士会に対する市民の信頼が根底から揺るぎかねないという非常事態を受け、日弁連は弁護士不祥事対策検討プロジェクトチームを設置して再発防止策を検討してきた。その一環として、全国で統一的な預り金等の取扱いに関する規程を制定することとし、全国の弁護士会、関連委員会等に意見照会を行った。
意見照会への回答を踏まえ、議論を重ねた結果、総会に付議される規程案では、①預り金等の適正な管理のため、自己の金員と区別して保管すべきことを定め、預り金等の出入金記録を会員に義務づけたほか、②特定の会員に対する弁護士会への苦情申出が重なるなど「相当の理由」がある場合には、弁護士会に、預り金等の保管状況全般について規程案に列挙する事項の調査権限を付与する一方、対象会員に回答義務を課した。さらに同規程案は、弁護士会による調査の結果、相当と認めるときは、当該会員に対する助言、懲戒手続のいずれか、または双方の措置を講じることを定めている。
今後、同規程の制定により、弁護士による預り金等の管理が明確化され、市民の弁護士に対する信頼回復の契機となることが期待される。
被災地の相談拠点3カ所新たに開設
被災者支援の基盤がさらに充実
南相馬市に原発事故の賠償請求支援拠点がオープン
4月1日、福島第一原発事故の賠償問題に対応するため、「原町ひまわり基金法律事務所」が福島県南相馬市に開設された。県内では相馬ひまわり基金法律事務所(2005年4月開所)に続く2カ所目。
開所に先立ち開かれた披露祝賀会では、所長に就任した石川裕介会員(福島県)が「あらためて小高地区を見ると、震災は終わっていないと感じる。今後は被災者支援に努力する」と抱負を述べた。
「法テラスふたば」「法テラス気仙」が相次ぎ開設
3月17日、福島県双葉郡広野町に「法テラスふたば」が、3月24日、岩手県大船渡市に「法テラス気仙」がそれぞれ開設され、法テラスの被災地出張所は全7カ所となった。
「法テラスふたば」は、福島第一原発から30キロ圏内にあり、福島県双葉郡からいわき市にかけての被災者支援に取り組む。「法テラス気仙」は、大船渡市、陸前高田市、住田町を含む気仙地域の支援拠点を目指す。
「法テラス気仙」の開所式では、谷垣禎一法務大臣が「弁護士、自治体、福祉機構等が密な連携を取り、被災地のさまざまな問題に取り組んでほしい」と挨拶し、気仙地域での復興の拠点として大きな期待を寄せた。
6/12 POLAオープンセッション
中小企業のアジア域内展開と弁護士会
申込受付中!
第24回アジア弁護士会会長会議(POLA)が東京で開催されます。POLAは、豪州等大洋州を含むアジア各国地域の弁護士会会長同士の率直な討議を通じ、認識の共有と相互協力を促すことを狙いとして毎年開催されているものです。原則非公開ですが、今回は「中小企業のアジア域内展開と弁護士会の関わり」と題するセッションが公開されます。当該セッションでは、中小企業のアジア域内展開に関する、弁護士会としての法的支援と施策の現状と展望について意見交換される予定です。日本の弁護士にとっても、海外展開支援のために必要な現地弁護士や現地情報へのアクセス強化の機会となることが期待されますのでぜひご参加ください。
日 時 6月12日(水) 10時20分~12時20分
場 所ホテルオークラ東京 曙の間
概 要 各国の制度紹介、意見交換
参加方法事前申込必要(定員70人)
※ホームページ掲載の申込書にてお申し込みください
問合せ 日本弁護士連合会企画部国際課
TEL:03-3580-9741
ひまわり
今年度から来年度にかけて、弁護士の参加する大きな国際会議が日本で開催される。今年の6月にはPOLA、来年10月にはIBA年次総会が開催され、さらに当該IBA東京大会に向けてのプレ大会が本年11月に開催される。日弁連はこれまでも多くの国際会議等に積極的に参加してきたが、このような重要な国際会議が日本で開催される意義は極めて高い▼日弁連は、この機会を各種国際法曹団体における日弁連のプレゼンス高揚のチャンスととらえ積極的に関与している。個々の会員の方々におかれても、国際会議参加の絶好の機会ととらえ、ぜひ、積極的に参加していただきたい▼国際会議においての公用語は英語がほとんどである(同時通訳がつくこともあるが)。これをきっかけとして、英語力アップ計画を立てることも一考である。手頃な方法としてお勧めなのは、①CNNやBBCのTVニュースを毎日一定時間聴視すること、②英字新聞(日本に関する記事が多く載っているものが望ましい)1日分を1週間かけて(無理しないことが肝要)読むことを継続することである。身近な出来事について映像や写真とともに英語に触れることで効果的に学べる。とくにこれまでの英語学習で挫折経験のある方は、ぜひこの方法を試してほしい。(Y・O)
鬼丸最高裁判事を訪ねて
2月6日付けで、弁護士出身では初の女性最高裁判事が誕生しました。今回、鬼丸かおる最高裁判事を訪ね、現在の執務の状況や今後の抱負等を伺いました。(広報室嘱託 柴田亮子)

―就任して1カ月半が経ちましたが、現在の執務状況や1日の過ごし方等についてお聞かせください
審議室で打合せをすることもありますが、1日中部屋にこもって、記録や文献を読むことが多いです。
―弁護士として記録を読むのと裁判官として読むのとでは違いはありますか
書面作成の面から言えば、弁護士の時は、事件の筋である骨に依頼者の思いを込めて肉付けし、間接事実も裁判官に理解してもらおうとしました。任官後は逆で、弁護士が作成した書面から肉をそぎ落として、骨を見る作業をしています。
―裁判官の立場から弁護士の仕事ぶりを見て感じることはありますか
最高裁では、当事者の生の顔・声に触れられません。それだけに、代理人の活動の良し悪しの影響が大きいことは否定できません。
そういう意味では、実現可能性はさておいて、修習の中に最高裁研修というのがあってもいいのかもしれません。下級審での有効的な争い方、上告や上告受理申立作成のポイントがよくわかると思います。
―これまで、司法研修所教官、日本女性法律家協会、内閣府国民生活審議会委員など、さまざまなご経験をされてきました
弁護士として多様な事件を扱うのに、社会の具体的事象を知っていることは力です。主張・立証に説得力が出ます。いつも、何でもやってみようと思ってきました。
私の嫌いな言葉の1つに「鶏口牛後」があります。「牛後」なら「牛口」になる可能性があるのに、「鶏口」になってしまうと、鶏以上にはなれません。新しい世界に入れば、最初は「牛後」は当たり前、そこから頑張っていけばいいと思っています。
―女性の最高裁判事が3人となり、3つの小法廷すべてに女性判事が関わることになりました。特別な意気込み等ありますか
特に、女性だからということで気負ってはいません。3人の女性判事と言っても、そのバックグラウンドは学者、行政官、弁護士と違いますし、女性であることも個性の1つと考えています。
ただ、これまでの女性先輩法曹の頑張りが私をここに導いて下さったことに敬意を表し、感謝の心で頑張っていきたいと思います。
―裁判官の立場から、弁護士に一言お願いします
依頼者の意向も書面に反映させなければならないのはわかりますが、この頃、依頼者の言うがままの書面かと思われるものが目に付きます。依頼者の話から要件事実を抽出し、法的構成をするのが弁護士の役割なのに、役割を果たしていないことがあります。
インターネット等の普及により、昔より依頼者対応が難しくなっています。まずは依頼者との間に信頼関係をしっかり築くことが大切ですが、築けなかった場合は、辞任する覚悟も必要だと思います。
―弁護士、妻、3人の子の母親という三足の草鞋をうまくはきこなしてこられました。育児中の女性弁護士にアドバイスをお願いします
たしかに、子どもが幼い時は、仕事か、家事・育児で精一杯で、自己研鑽の時間がありません。でも、焦らなくて大丈夫。子育ても経験です。
子どもの問題、障がい児の問題、母親の置かれている状況を肌で知ることは、視野や仕事の幅を広げます。今は栄養を蓄える時期だと割り切り、子育てを一生懸命にすることが大切だと思います。
―趣味や気分転換の方法を教えてください
実は、今、仕事が面白くて、面白くて。弁護士の時は、「こういう風に解決したい」と思っても、実現は困難でした。ところが、ここでは自分が正しいと考える理論を貫けるので楽しくて、気分転換なんて必要ないような状態です。
1973年 東京大学法学部卒業、同年 司法修習生
1975年 弁護士登録(山梨県弁護士会のち東京弁護士会に登録換)
1994年 司法研修所民事弁護教官
1998年 日本女性法律家協会副会長、日弁連法曹養成センター委員
2001年 日弁連高齢者・障害者の権利に関する委員会委員
2005年 東京弁護士会法曹養成センター委員長代行
2006年 東京弁護士会高齢者・障害者の権利に関する特別委員会委員長
2007年 内閣府国民生活審議会委員
2013年 最高裁判所判事
弁護士任官者の紹介
山田 兼司氏

54期・元第一東京弁護士会所属(東京都出身)
54期・元第一東京弁護士会所属(東京都出身)
司法修習終了後、検事任官。
2007年4月に弁護士登録し、小林総合法律事務所にて勤務。
〈初任地大阪高裁〉
2013年度会務執行方針(要約)
密度濃く意見交換し、決定し、実行する
震災・原発事故の被災者・被害者の法的支援、法曹養成・法曹人口問題、刑事司法改革、全面的国選付添人制度の実施などの重要課題が正念場を迎える本年度、日弁連は弁護士会等と連携しつつ、忌憚のない意見交換のうえ、適切な時期に必要な決定を行い、その実現に向けた活動を展開する。
第1 東日本大震災・福島第一原発事故の被災者・被害者の支援に引き続き全力を尽くす
1 被災者と被害者に対する法的支援
迅速かつ適切な法的支援のために必要な法制度の創設やその運用改善を提言し続けるとともに、積極的にその役割を担っていく。各地の弁護士会等と連携しながら、復興支援活動に取り組む。
2 原子力損害賠償問題への対応
(1)原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)
引き続きセンターの運営に積極的に協力し、紛争解決機能の更なる強化に取り組んでいく。財物損害について、適切な賠償がなされるよう求めていく。
(2)消滅時効問題
民法第724条が本原発事故の損害賠償において適用されることなく、すべての被害者が救済されるよう、抜本的な救済措置を講じることを求めていく。
3 原発事故子ども・被災者支援法への対応
昨年6月に成立したいわゆる「原発事故子ども・被災者支援法」による被災者救済が迅速かつ適切になされるよう、政府や国会議員等に働きかけていく。
4 被災ローン問題への対応
日弁連等の提言により創設された「被災ローン減免制度(個人版私的整理ガイドライン)」や、事業者の被災ローンに対応するために設置された東日本大震災事業者再生支援機構及び産業復興機構について、更なる利用促進のため、関係機関と連携しながら周知徹底を図り、運用改善を求めていく。
5 復興まちづくりへの対応
真に被災者本位のまちづくりが行われるよう、行政と住民との橋渡し役として積極的に貢献していくとともに、弁護士の職員採用を進める被災自治体との協力関係を構築する。
第2 法曹養成制度の改革を実現する
1 法科大学院制度・司法試験の改革
法科大学院がプロセスとしての法曹養成の中核としての役割を果たすために、教育の機会の確保及び地域司法の充実の観点から一定の配慮を行いつつ、法令上の措置を含む実効的な手段によって統廃合を実施することを求めるとともに、定員の上下限を設定するなどの定員削減の実施を求める。
2 日弁連の法曹人口政策の実現
現実の法的需要や司法基盤整備の状況を踏まえた着実な法曹人口の増加を目指し、司法試験合格者数をまず年間1500人に減員し、現在の法曹人口急増ペースを転換するよう関係諸機関に働きかける。今後の法曹人口の在り方については、現実の法的需要や司法基盤整備の状況、法曹の質などを定期的に検証しつつ検討していく仕組みをつくる。
3 法曹志望者に対する経済的支援の充実
社会的インフラとして位置づけられるべき法曹を志望する法科大学院生の経済的負担を軽減するための措置を検討すべきである。司法修習生の経済的支援については、給費制復活を含む経済的支援の実現に向けて、法曹養成制度検討会議等を通じて全力を尽くす。
4 新人・若手法曹の就職難の解消、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの充実
新人を対象とした就職支援、開業支援を推し進めるとともに、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの代替となり得るような研修やチューター制度の充実、業務支援に取り組む。
第3 日弁連の目指す刑事司法改革を実現する
1 新たな時代の刑事司法を築き上げる
法制審議会に置かれている「新時代の刑事司法制度特別部会」において、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の制度化、身体拘束制度の改革、証拠開示制度の改革、被疑者国選弁護制度の改革を着実に実現する。
2 裁判員制度の更なる進化に向けて
裁判員裁判における弁護人の弁護能力向上のため、研修や経験交流などの取組を更に強化していく。また、昨年3月の理事会で採択された「裁判員法施行3年後の検証を踏まえた裁判員裁判に関する改革提案」の実現に取り組む。
3 死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける
第54回人権擁護大会宣言を踏まえ、死刑のない社会が望ましいことを見据えて、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける。
第4 市民のための民事司法・行政訴訟の改革の実現に向けて
法律扶助の飛躍的拡充、給付・一部負担金制の実現を求めるとともに、家事事件・労働事件等での利用が進まない原因を把握し、必要な対策を講じる。日弁連委託援助事業の本来事業化を求める。
本年1月に設立された「民事司法を利用しやすくする懇談会」を支援し、民事司法改革の実現に向けた取組を推進する。行政訴訟、行政不服審査制度の改革に向けた活動を行う。
司法が市民にとってより身近で頼りがいのあるものとなるように、司法過疎・偏在の解消の努力を継続していく。市民がアクセスしやすい民事・行政裁判制度の改革を進めるとともに、裁判所へのアクセス拡充のため、裁判所支部数の増加等を求めていく。また、民法(債権法)改正が真に国民のためとなる改正として実現するよう求めていく。
第5 人権擁護活動を前進させる
全面的国選付添人制度の早期の実現を求める。
両性の平等の推進のため、婚外子差別の撤廃や選択的夫婦別姓制度の導入を含む、民法改正の実現に向けた取組を強化する。
秘密保全法制反対の取組を推進し、憲法改正議論を注視し、憲法原則を擁護する観点で対応を強める。
貧困問題の解消を目指し、必要な対応策の提言、調査研究、対外的諸活動に取り組む。
いじめ・体罰問題について、弁護士として果たすべき役割を早急に検討する。
パリ原則に基づく真に政府から独立した国内人権機関の設置を求め、国際人権(自由権)規約、子どもの権利条約などにおける個人通報制度の導入を求めていく。
高齢者や障がいのある人が直面する課題の解決のため、差別を禁止する法律の制定等の取組を行う。
第6 弁護士の活動領域の拡大
法律相談センター全国統一ナビダイヤル「ひまわりお悩み110番」を中心に、弁護士による法律相談の広報と、弁護士のイメージアップを図るための市民向け広報の抜本的充実を図る。
中小企業支援の推進、組織内弁護士増大のための取組を行う。
本年6月に発足する日弁連総合研修センターを中心に、会員研修の充実を図り、国際化に対応できる会員の養成も強化する。
第7 市民から信頼される弁護士に
昨年度中、複数の弁護士会で相次いだ預り金の横領などの不祥事に対して厳正な処置を執り、原因を究明して、再発防止に全力を尽くす。「預り金等の取扱いに関する規程」を制定するとともに、市民の期待と信頼に応え続ける弁護士、弁護士会の在り方について検討を進める。
隣接士業問題への的確な対応、業務妨害対策を強化する。
法教育、消費者教育の取組を強化するとともに、各地で学校に弁護士を派遣し、出張授業等を行うことに取り組む。
第8 日弁連の国際化の促進
本年6月にアジア弁護士会会長会議(POLA)が、また、来年10月には国際法曹協会(IBA)年次大会がそれぞれ日本で開催されることから、国際的な日弁連のプレゼンスを高める絶好の機会であることに鑑み、かかる会議の成功に向けた活動を行う。
第9 弁護士会への女性会員、若手会員の更なる参画のために
第二次日弁連男女共同参画推進基本計画の初年度として、今後5年間の工程表を具体化しつつ、検討・取組を進める。
育児期間中の会費免除制度の導入や、若手会員の負担軽減の見地から、登録料等の減免に取り組む。
全文は日弁連ホームページをご覧ください。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/policies/policy_2013.html
シンポジウム
民事司法改革オープンミーティング
~利用者の声を聴く~
3月16日 東京都千代田区
- 民事司法改革オープンミーティング~利用者の声を聴く~
本年1月、民事訴訟等の見直しを議論するため、日弁連の呼びかけにより「民事司法を利用しやすくする懇談会(民事司法懇)」が設立されたが、その実現には何が必要なのか。各界からの参加者が出席した本シンポジウムでは、利用者の生の声を聴くことができた。
冒頭の基調報告では、日弁連が描く「民事司法改革アクションプラン」の概要を報告した。続いて、民事司法懇の委員でもある山本和彦教授(一橋大学大学院法学研究科)が、最高裁が公表した裁判迅速化検証報告書について説明し、菅原郁夫教授(早稲田大学大学院法務研究科)からは、民事裁判制度利用者への調査結果をもとに「民事司法の各手続について肯定的な評価を得られている反面、全体的な制度評価の点では、必ずしも理解を得られているとまでは言えない」との報告があった。
パネルディスカッションでは、弁護士で明石市長の泉房穂氏が、市長の立場から、「市職員を含む市民が裁判に対して極めて高いハードルを感じており、弁護士の側から歩み寄る必要性がある」と訴えた。
利用しやすい民事司法を整備するための方策についての議論では、冨山和彦委員(経済同友会企業・経済法制PT委員長)が、「現在は裁判官の数と質の基盤が脆弱と言わざるを得ない」との感想を述べ、「裁判官が現場を知らないままに、大きな影響を及ぼす法規範を、判決を通じて形成することには疑問がある」との問題提起をした。労働界からは、新谷信幸委員(日本労働組合総連合会総合労働局長)が、労働審判の拡充の実現、特に裁判所側のインフラの整備の必要性を訴えた。山根香織委員(主婦連合会会長)は、「裁判員裁判の実施により刑事裁判については多少身近に感じるようになったものの、民事司法はこれからの制度改革の実現が重要である」と評価し、民事司法改革の必要性を強調した。
市民集会
PC遠隔操作事件が明らかにした取調べの実態
無実のあなたも自白する
3月25日 弁護士会館
- PC遠隔操作事件が明らかにした取調べの実態 無実のあなたも自白する
東京、大阪、福岡、三重で誤認逮捕が相次いだPC遠隔操作事件。被疑者とされた男性4人のうち2人が虚偽の自白をさせられた。この事件を題材に、自白に追い込む取調べの実態を検証し、可視化の実現を目指して集会を開催した。

まず、大阪事件の弁護人である土橋央征会員(大阪)が登壇し、「被疑者とされた男性は、連日の取調べにより、自分が実はやってしまったのではないかとの錯覚に陥りかけた」と語り、連日の取調べに対して否認を続けることの難しさを指摘した。
続いて、元検察官の落合洋司会員(東京)が、検察官の取調べ教育は先輩の個別体験談に依拠するところが大きく、体系的なノウハウの整備が十分でない現状を報告した。また、法心理学の観点から、高木光太郎教授(青山学院大学大学院)は、虚偽自白に至る心理を「被疑者が置かれた異常な環境に対する正常な反応だ」と説明し、「このような環境にこそ目を向けるべきで、可視化は不可欠」と指摘した。
後半のパネルディスカッションで、布川事件の冤罪被害者である桜井昌司氏は、逮捕後5日目の取調べで心が折れて虚偽の自白をしてしまった自身の経験を踏まえ、「可視化されていれば、そもそも自分は起訴されなかったと思う」と述べるとともに、「捜査機関も裁判所も、自白を重視し過ぎ。韓国では、可視化せずにとられた供述調書は証拠と認めないそうだ。可視化は人権にかかわる問題なので、政治家にもがんばってほしい」と関係機関への強い期待を表した。
取調べの録音・録画制度について、各パネリストからは、全過程を対象とすべきで、録音・録画の範囲を取調官の裁量に委ねるような制度には反対であり、従来の取調べの在り方を抜本的に変える必要があるとの意見が出された。
小和田国際司法裁判所判事講演会
日本の弁護士が国際的に活躍するには
3月27日 東京都千代田区
小和田恆氏(国際司法裁判所判事・2012年まで所長)を招き、国際司法裁判所の概要や日本の弁護士が国際的に活躍するための条件等に関する講演会を開催した。(本講演会の一部は、会員専用サイト内日弁連オンデマンドで視聴することができる。)
グローバル化した法秩序の維持が法律家の課題

講演の前半では、国際裁判の歴史と、国際司法裁判所の機能や問題点が説明された。国内法の法体系につなぐ措置がとられないと、国際法を国内で実現できない事態も生じ得る。小和田氏は、「多数国間の人権条約など国際社会の法規範は、各国で適用した結果に違いがあってはならない。グローバル化した法秩序を1つの形で維持することが、国際法、国内法の専門を問わず、法律家の課題である」と指摘した。
大志を抱いて、他流試合で鍛えよ
後半は、山岸憲司会長がインタビュアーとなり、小和田氏の歴史観・世界観について質問した。同氏は、国際社会における普遍的価値を体現する現代国際法が正義と平和の実現に果たし得る役割を示しつつ、「今日の世界は過渡期の苦しみを味わっており、その中でわれわれが何をしていかなければならないかが問われている」と説いた。
さらに、国際的に活躍する日本の弁護士が不足している点について、「方法は留学に限らないが『他流試合』で訓練してほしい。外のよいところを吸収して実力をつけることが重要で、大きな志でチャレンジする癖をつけてもらいたい」と述べ、ロールモデルとして、新渡戸稲造、安達峰一郎(常設国際司法裁判所所長)、朝河貫一(イェール大学歴史学教授)の3人を挙げた。
最後に、小和田氏からは「実現しようという意思を強く持ち、それを実行に移すことが大事で、必ず結果として出てくる」とのメッセージが語られた。
(国際室嘱託 山口 雄)
民放連との懇談会
震災報道・裁判員裁判と報道の在り方等について意見交換
3月22日 弁護士会館
今回で23回目を迎える日本民間放送連盟(民放連)との、人権と報道に関する懇談会では、原発報道を含めた「東日本大震災報道について」、「裁判員裁判と報道の在り方について」、再審無罪となった「東電OL事件について」をテーマに意見交換をした。
震災報道について、まず民放連から、実際に放映された番組DVDを用い、「除染の対象となること」の報道にも苦情が寄せられる実情や、放射性物質に汚染された食品の報道とあわせて販売店の映像まで報道すべきかなどの現場の苦悩が報告された。日弁連からは、災害復興支援委員会委員長の中野明安会員(第二東京)が、被災地支援に関する日弁連の具体的取り組みについて詳細な報告を行い、原発事故の被害者である福島住民への偏見が未だ存在することなどを指摘した。
裁判員裁判と報道については、裁判員本部事務局長の幣原廣会員(第二東京)が、2011年6月に日弁連が公表した「裁判員法における守秘義務規定の改正に関する立法提言」の内容を中心に法施行3年後の見直しでも改正の動きがないことを指摘し、民放連からは、裁判員会見の在り方の検討も含め、刑事裁判の「可視化」に向けて積極的な努力を続けていることが報告された。
東電OL事件については、民放連側から、一審判決前に事件の問題点を指摘していた番組DVDを題材に、後に判決結果が異なった事件での当初報道の難しさを含め、冤罪と報道の在り方について問題提起がなされた。日弁連からは、同事件の弁護人であった神田安積会員(第二東京)が、「関心を持ってもらいたい時には取材に来ず、そっとしておいてもらいたい時にカメラが殺到する」と指摘し、同時に、「現在日弁連が支援している再審事件をぜひ各局で取り上げて議論してもらいたい」と要請した。
(人権擁護委員会人権と報道に関する特別部会部会長 坂井 眞)
シンポジウム
面会交流を考える
面会交流は誰のためのものか?
4月6日 弁護士会館
- 面会交流を考える 面会交流は誰のためのものか?
面会交流について間接強制が可能かが争われた事案で、最高裁は3月28日、日時・頻度などが具体的に定められている場合は、間接強制も可能との判断を示した。しかし、子の福祉の観点から面会交流が相当でない場合もあるのではないか。本シンポジウムでは、面会交流の在り方を検討した。
最も優先されるべきは「子の利益」
冒頭、両性の平等に関する委員会特別委嘱委員の角田由紀子会員(静岡県)が、DV・虐待のために子ども自身が面会交流に対し消極的であっても、調査官が子への影響を過小評価する場合があることを報告し、「最も優先されるべきは『子の利益』」と指摘した。
「引き離し」を疑う前に、虐待の事実の確定を
アメリカでは、虐待を理由に面会交流を拒否した場合、しばしば、非監護親から監護親が故意に面会交流を拒否している(引き離し)との主張がなされる。ジョアン・S・マイヤー教授(ジョージワシントン大学)は、講演の中でこのような主張に関し、「虐待する非監護親との面会交流だけは避けなければならない」と明確に述べた上で、「まずは虐待の事実を確定することが肝要で、虐待の事実が認められる場合には、『引き離し』は検討不要」と論じた。
表面的な「いい子」は注意
渡辺久子氏(慶應義塾大学医学部小児科専任講師)は、良好でない夫婦関係が子どもの心を抑圧し表面的な「いい子」を作り出すこともあると指摘し、「大人は子どもの表面だけを見るのではなく、子どもの話を子どもの目線で聞くことが重要。日本では離婚にあたって子どもの話を聞く環境がない」と、豊富な臨床経験を踏まえて厳しい意見を述べた。
現場での研修の実施を
後半は、小川富之教授(近畿大学法学部)を加え、パネルディスカッションを行った。小川教授は、「単独親権の下でも、離婚後も父母が協力して子どもの養育に関わることは可能であり、そのための環境作りが重要である」と述べた。
最後に、渡辺氏から「論ずるより、まずは子どもの置かれている現場に来てほしい。人間を扱う仕事であるから、人間を見る研修が必要ではないか」との提案があった。
山岸会長が被災地を視察
3月24日 岩手県沿岸部
3月30日・31日 福島県南相馬市
山岸憲司会長は、3月下旬に被災地を相次いで訪問し、復興への緒に就いたばかりの被災各地を視察しました。また、大船渡市および南相馬市の両市長と被災自治体での弁護士の活用などについて積極的な意見交換を行いました。
なお、南相馬市への訪問の様子については、同行した的場美友紀会員(東京)に報告いただきました。(広報室長 勝野めぐみ)
大船渡市長と意見交換
戸田公明大船渡市長は、「復興へのプロジェクトが本格化し、今後、相続や二重ローンへの対応といった法律問題が表面化してくる」と述べ、新たに同市に法律相談拠点(法テラス気仙臨時出張所)が開設したことへの期待を表した。大船渡市は、今後2020年度までを復興計画の計画期間とし、防災集団移転促進事業等を進める予定だ。また、住宅のみならず「なりわい」の復興にも力を入れることにしている。山岸会長は、弁護士の活動領域が法廷活動にとどまらず、行政分野での積極的活用が進んでいる現状を指摘し、弁護士が被災者の生活再建に向けてのコーディネーターとして寄与できる環境づくりに取り組む決意を表明した。
いわて三陸ひまわり基金法律事務所を訪問
大津波による壊滅的な被害を受けた陸前高田市では、同市に昨年3月開設された、いわて三陸ひまわり基金法律事務所を表敬訪問した。初代所長の在間文康会員(岩手県)は、「最近の相談傾向として、被災ローンの相談件数の減少がある」とし、「債権者の積極的同意を必要とすることが一因と考えられ、立法手当が必要」と指摘した。また、「相続登記が未了の不動産が多数あるなか、住宅復興の進展に伴い、今後、権利関係が複雑化した相続問題対策が必要となるが、対応できる弁護士の数が不足している。また、地域住民との継続的な信頼関係を構築することが被災地支援においては重要だ」との考えを述べた。
南相馬市小高区市街地を視察
3月30日、山岸会長は、米村俊彦会員、石川裕介会員(いずれも福島県)と小高区長会の方々の案内で、その大部分が原発から20キロ圏内の地区である小高区に向かった。「道の駅」から車で15分程走り避難指示解除準備区域に入ると、とたんに車の通りが少なくなる。
最初に見学した小高病院の内部は、2年前の3月11日のまま、時間が止まっていた。乱れたままのベッド、雑然とした事務室。東京電力への賠償請求のため必要となったカルテが整然と置かれている受付だけが、病院内でわずかに時間の流れを感じることができる場所であった。市職員によると「医者をはじめとするスタッフの多くが南相馬を離れてしまっている」ということであり、病院を再開するまでの道のりは遠く険しい状況である。
未だ電車の運行が再開されない小高駅前は閉鎖されたままであり、駅前の自転車置き場には、通勤、通学客の自転車が原発事故前のまま置かれていた。駅前通りは静まり返り、土曜日の昼間とは思えない。車も人も通らないのに、信号機だけが規則正しく作動している光景に違和感を覚えた。車窓から見た小学校、幼稚園の校庭は、雑草が生い茂り、除染作業が行われていないことは一目瞭然である。
この地域が警戒区域から避難指示解除準備区域に再編されてから1年近くが経過した。しかし、現地で目の当たりにしたのは、この地を豊かな自然に囲まれ、豊かな時間を送ることのできる在りし日の姿にするのは、まだこれからである、という現実であった。
南相馬市長と意見交換
翌日面談した桜井勝延南相馬市長は、地元で盛んだった伝統的な祭りが事故後はかつてのように開催できなくなったという実例を挙げながら、「原発事故は日本の文化を否定したに等しい」と述べた。その上で、住民の流出によって被災地区の荒廃が進んでいるのに加え、事故後も停電による燃料プールの冷却停止などトラブルが相次いでいることにより、帰還が一層困難な状況が生じていることへの強い危惧を表した。これに対し、山岸会長は「物理的には残っていても、住めない、田畑に種を蒔くことも苗を植えることもできない不条理を感じた」と自ら被災地を視察しての感想を語り、行政とも連携して被災地支援に取り組む意向を伝えた。
日弁連委員会めぐり 53
弁護士任官等推進センター
弁護士任官等推進センターは、司法制度改革における裁判官給源の多元化・多様化の要請に応えるべく、2002年に設置されました。それ以降の弁護士から裁判官への任官者数は56人(2013年4月1日現在)で、1992年から現在までで、延べ105人、弁護士職務経験制度を利用した判事補・検事は延べ134人に上ります。今回は、木津川迪洽委員長(第一東京)と今川忠事務局長(大阪)にお話を伺いました。
(広報室嘱託 柴田亮子)
多様な支援活動
センターの活動としては、裁判官への任官希望者の募集・支援、非常勤裁判官の募集、弁護士職務経験者の支援等が挙げられる。
裁判官への任官希望者の募集・支援に関する活動として、毎年4月に会員に対するアンケートを実施し、任官希望者を募るだけではなく、任官予定者・経験者との情報交換会を開催している。また、最高裁と、弁護士任官を推進するために具体的な問題点の解決に向けた協議の機会を適宜に設けている。このほか、任官推進活動を展開するために全国任官担当理事者連絡会議、弁護士任官推進ブロック大会を開催している。
採用率は応募者の60%
ここ数年の採用率は応募者の60%程度。「最高裁との協議等を通じ、弁護士任官の適格性評価について、最高裁下級裁判所裁判官指名諮問委員会と東京三会および各弁護士会連合会の弁護士任官選考委員会との間の認識の不一致をなくすことが任官意欲を喚起するためにも必要」との話があった。
なお、非常勤裁判官の場合は、これまで、任官の意思の明白な欠如や高齢を理由に若干の不採用があるのみとのことである。
弁護士職務経験者受入事務所の減少
弁護士職務経験制度の支援もセンターの主要な活動だ。現在、弁護士職務経験者は、年間15人程度にとどまる。近時の受入事務所の減少は、受入事務所が判事補・検事の勤務時とほぼ同等の待遇を求められることのほか、4月からの弁護士職務経験者の採用に備え、受入事務所となるかどうか不確定な状況で、12月に新人弁護士の採用を控えなければならないことのリスクも要因の1つに挙げられる。このため、センターとしては、これらの要因の解消のために、最高裁・法務省との協議が必要と考えている。
さらなる支援体制強化の必要性
木津川委員長は、「今後、弁護士任官希望者を増やすには、養成型の任官支援事務所のみならず、退官時の受入れや、任官に当たり事件・職員の引き受けを積極的に支援する事務所が必要ではないか。各地の公設事務所には任官支援を期待している。また、任官に興味をもつ会員に対し、絶えず情報発信することも必要」と述べた。
また、今川事務局長は、「これからは、ロースクール出身者を対象とした任官運動を推進していかなければならない」と、今後の抱負を語った。
ブックセンターベストセラー
(2013年1月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター
順位 | 書籍 | 著者・編者 | 出版社 |
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1 | Q&A 離婚実務と家事事件手続法 | 小島妙子 著 | 民事法研究会 |
2 | 破産実務Q&A200問 ―全倒ネットメーリングリストの質疑から | 全国倒産処理弁護ネットワーク 編 | きんざい |
3 | Q&A 家事事件手続法と弁護士実務 | 増田勝久 編著 | 日本加除出版 |
4 | 労働法[第十版] 法律学講座双書 | 菅野和夫 著 | 弘文堂 |
5 | 概説 家事事件手続法 | 秋武憲一 編著 | 青林書院 |
6 | 東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情 第3版 | 東京家庭裁判所家事第6部 編著 | 判例タイムズ社 |
7 | 破産管財の手引[増補版] | 東京地裁破産実務研究所会 著 | きんざい |
8 | 実務必携 預金の差押え | 一般社団法人 金融財政事情研究会 編 | きんざい |
9 | 一〇六〇の懲戒事例が教える 弁護士心得帖 | 飯島澄雄・飯島純子 著 | レクシスネクシス・ジャパン |
10 | 労働関係訴訟の実務 [裁判実務シリーズ1] | 白石 哲 編著 | 商事法務 |
編集後記
締める、切れるという言葉があるが、これだけを見ると、言葉に少し殺伐とした雰囲気が感じられる。しかし、兜の緒を締める、頭が切れるなどと付け加えれば、その意味合いはぐっと変わってくるだろう。
言葉とは不思議なもので、同じものでも使用方法や組み合わせによってその本質部分すら意味を変えることがある。記事原稿を作成するときもまた然り。同じ「言った」という意味の言葉も、語った、述べた、指摘した、と書くだけで微妙なニュアンスの違いが出てくるもの。それを踏まえ、われわれは言葉を選び、組み合わせ、読者の顔を思い浮かべながら新聞編集に心砕くのである。
さて、冒頭の締める、切れる、これら2つの言葉を組み合わせた「締め切り」は、どのようなニュアンスとなるのだろうか。そんなことを考えながら、今まさに締め切りに追われ、編集後記を書く自分がいる。(K・O)