日弁連新聞 第468号

日弁連臨時総会開催
弁護士過疎・偏在対策のための特別会費徴収など11議案を決議
12月7日 弁護士会館

弁護士過疎・偏在のための特別会費徴収の件、弁護士過疎・偏在対策事業に関する規程制定の件、依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程全部改正の件など11議案が審議され、いずれも可決された。

 

弁護士過疎・偏在のための特別会費徴収の件中一部改正の件(第1号議案)、弁護士過疎・偏在対策事業に関する規程制定の件(第2号議案)

 

弁護士過疎・偏在対策のための特別会費(ひまわり特別会費)の月額を700円から600円に減額し、徴収期間を2013年4月から2016年3月まで3年間延長するもの。併せて、2008年から実施されている弁護士偏在解消のための経済的支援制度を、ひまわり特別会費による基金を財源とする弁護士過疎・偏在対策事業に統合する(特別会計の統合を含む)ために規程を新設するもの。
討論においては、「会費の徴収ではなく、まず先に余剰金等の活用を検討すべき」、「厳しい経済状況のなか会員にさらなる負担を求めるべきでない」などの反対意見も出されたが、弁護士過疎・偏在対策の重要性から議案に賛成する立場が大勢を占め、賛成多数で可決された。

 

依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程全部改正の件(第4号議案)

 

「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯収法)は2007年に制定されたが、弁護士等に「疑わしい取引の報告義務」を課すことについては、日弁連・弁護士会をあげての反対運動により見送られた。そして、依頼者の身元確認及び記録保存等の義務は日弁連の自主規定に委ねられ、2007年3月の臨時総会で現行規程が制定された。本議案は、現行規程を犯収法の改正(2013年4月1日施行)に合わせ改正するもの。 討論においては、現行規程自体が弁護士と依頼者の信頼関係を阻害するとの反対意見が出されたが、賛成多数で可決された。

 

高齢者・障がい者権利擁護の集い
~地域の実情に根ざした連携体制を~
11月22日 金沢市

  • 第10回「高齢者・障がい者権利擁護の集い」

施設への入居という解決策に疑問を呈する井上教授今年で10回目を数える本集会は、「安心して地域に住み続けたい」と題し、高齢者・障がい者へのあるべき支援体制、行政・福祉機関との連携体制を模索した。

 

安心して住み続ける「権利」とは

基調講演を行った井上英夫教授(金沢大学大学院・人間社会環境研究科)は、安心して地域に住み続けたいという住民の希望を、人権の観点から考察した。スマトラ島沖地震の被害に遭ったバンダアチェ(インドネシア)や東日本大震災の被災地など、災害により地域が破壊された状態を「グラウンドゼロ」と定義し、地域に住み続ける権利は、グラウンドゼロの克服と社会保障によって実現されるべきと述べた。

 

法律家による積極的な施策を

後半のパネルディスカッションでは、事前のアンケート結果を踏まえ、石川県内の高齢者・障がい者に対する虐待事例とその対応が報告され、地域の行政・福祉機関と専門家の関わり方について議論がなされた。
皆川容德氏(司法書士・公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート石川)は、年金を子に搾取され1日に300円しか受け取れない高齢者が、「孫に会えなくなるから」という理由で法律家の介入を拒絶した例を挙げ、虐待案件への対応の難しさを指摘した。井上教授は、高齢者や障がい者の虐待は犯罪行為であり、それを免れるために施設に入所させるという解決策自体が、人権を矮小化していると批判した。
また、金沢市地域包括支援センターの中恵美氏は、生活保護の申請自体が困難な高齢者の実情を訴え、法律家による無料の出張相談を要望した。
粟田真人会員(金沢)は、無料電話相談窓口を設置するなどの弁護士会の取り組みを紹介しながらも、今後はより積極的な対応が必要との考えを示した。

 

新年のご挨拶
日本弁護士連合会会長 山岸 憲司

山岸会長

新年のご挨拶を申し上げます。


昨年は、激動の年でした。私自身、史上初の再選挙を経ての会長就任ということで、混乱の中スタートしました。そして、法曹養成制度の改革、司法修習生への経済的支援、法曹人口問題等重大な方向性が示される法曹養成制度検討会議への対応に追われながら、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)、全面的国選付添人制度の実現など、多くの政策課題が山場にさしかかっている中、全力で取り組んできました。


弁護士の不祥事も多発し、その対応にも追われました。

国政においては、政権交代が起きました。
様々な変化に的確に対処しつつ、会務に邁進しなければなりません。

まずは、決して風化させてはならない、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者への法的支援と復興への取り組みを続ける必要があります。
日弁連は、国の責任において原発事故被害者を救済するため、被害者援護法の実現に取り組んできましたが、「原発事故子ども・被災者支援法」として結実しました。今後は、具体的な施策をつくり、運用していくことが必要です。
また、原発ADRや二重ローン問題解決のための新しい制度を十分に機能させていくために、われわれ弁護士は担い手を送り出し、更に力を発揮していく必要があります。
新たな国づくりともいうべき将来を見据えた復興に、弁護士、弁護士会、日弁連も力を尽くしていかなければなりません。

 

法曹養成制度の改革においては、地域適正配置に配慮しながらの法科大学院の統廃合、定員削減といった困難な課題、法曹志願者への経済的支援策の実現など、具体的な取りまとめに入っていく法曹養成制度検討会議への対応に、年初から総力をあげていく必要があります。

 

昨年の、東電OL殺人事件再審無罪判決、パソコン遠隔操作による脅迫メール事件等によって、取調べの可視化・証拠開示の必要性については国民各層に浸透したと思われます。

 

新たな捜査手法などの議論もあり、決して容易ではありませんが、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)、全面的証拠開示制度、全面的国選付添人制度の実現に向けて会をあげて取り組んでいきます。

 

民事司法改革、行政訴訟制度改革も改めて議論を深め、大きく前に進めていかなければなりません。

 

そしてまた、有為な若者が法曹への道を志してくれるために、弁護士の活動領域を拡大し、企業や行政のコンプライアンス、内部統制が充実するよう、取り組みを拡げています。 

若手弁護士への支援、研修の拡充、さらには、TV会議システムのリニューアルを契機としてさらなる情報の共有化、法律相談センターの全国統一ダイヤル導入を契機とする市民向け広報などにもしっかりと力を注いでいきます。


会員の皆さまには、今年一年間、倍旧のご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

現新65期修習終了者
1370人が一括登録

400人超が就職未定の状況

2012年12月20日、前々日に2回試験の合格が発表された修習終了者のうち1370人が日弁連に一括登録した。本年の数字には、現行65期と新65期両方の人数が含まれているため前年までの人数と単純に比較はできないが、一括登録日時点での未登録者数は約540人と終了者全体の約2.6割を占め、前年同時期よりやや高い水準となっている。2013年1月の登録予定者や、当初より登録を予定していない人数を差し引いても、400人を超える終了者が就職未定の状況にあると推計される。
日弁連は、今後、法曹養成制度検討会議等において、このような就職難の状況も踏まえた検討がなされるよう働きかけていく。

 

修習終了者数 登録者数 未登録者数
新60期 979 839 32
新61期 1731 1494 89
新62期 1992 1693 133
新63期 1949 1571 214
新64期 1991 1423 404
現新65期 2080 1370 542

少年法改正への対応について
12月20日 理事会

法制審議会少年法部会で審議されている少年法改正に関する「要綱(骨子)」への対応について、12月20日理事会において議論がなされた。
 「要綱(骨子)」の内容は、①国選付添人制度の対象事件を被疑者国選弁護制度と同範囲(長期3年を超える懲役・禁錮の罪の事件)まで拡大する、②非行事実に争いがある場合に裁判所の裁量で検察官を関与させることができるという現行の検察官関与制度の対象事件も同じ範囲まで拡大する、③少年が逆送されて刑事処分が科される場合の有期刑について、犯行時18歳未満の少年に対する無期刑の緩和刑については上限を15年から20年に引き上げ、不定期刑については、長期、短期の上限をそれぞれ「10年、5年」から「15年、10年」に引き上げる、というものである。


日弁連は、本要綱に関し、各弁護士会および関連委員会に意見照会をしていた。
20日の理事会では意見照会の結果を踏まえ、協議を行い、国選付添人制度の拡大に向けてできる限りの取り組みを行っていくこととなった。
なお、③の少年刑については、12月17日に開催された少年法部会第3回会議において、法務省から事務局試案が示された。この試案は、少年刑の上限の引き上げの他、少年法52条の不定期刑について、アその適用対象を「長期3年以上の有期懲役・禁錮をもって処断すべきとき」という制限を撤廃して、より軽い処断刑の場合にも言い渡すこととすること、イ長期と短期の間に5年以内(長期が10年を超えるときは、長期の2分の1)という幅の制限を設けること、ウ短期については少年の改善更生の可能性等を考慮し特に必要があるときは処断刑の下限をその二分の一まで下回ることができること等が盛り込まれている。
(事務次長 鈴木啓文)

 

 

検証・司法試験と予備試験
12月1日 主婦会館

  • 司法試験シンポジウム「検証・司法試験と予備試験」

2012年司法試験の結果は、前年から導入された予備試験からの合格者58人を加え、過去最高の2102人が合格したが、特に予備試験組の高い合格率(68・2%)が注目される。

 

司法試験と予備試験の出題は適切か

冒頭、シンポジウム作業チームが2012年の司法試験の問題分析と予備試験の問題との比較について基調報告を行った。
司法試験論文式試験の分析のなかで、憲法は法科大学院教育に整合した適正な出題であると評価する一方、行政法は、受験者に問題点を発見させるのでなく設問中に誘導が見られるなど、法的思考力を問う出題として適切か疑問が呈された。
次に、予備試験の出題については、旧司法試験のように問題文が短く法律知識のみを問う傾向が見られ、法科大学院修了と同等程度のレベルとしては相応しくないとの指摘がなされた。

 

予備試験受験者の実情

続いて、予備試験からの合格者2人が報告した。
東大法学部在学中の合格者は、受験の動機について、法科大学院に進学した場合の経済的負担の問題もあるが、国家公務員等の他の進路の選択を考慮して予備試験を受験したと述べ、「難易度に差はあれ、司法試験と予備試験の出題やそのための勉強に本質的には違いは存在しない」と語った。
中大法科大学院在学中の合格者は、予備試験の準備と受験体験が本試験対策につながることを動機にあげた。また、両名とも教養科目については、(合格最低点がないため)殆ど準備しなかったとのことである。

 

司法試験と予備試験の在り方を議論

パネルディスカッションでは、司法試験や予備試験の出題について、松本恒雄教授(一橋大学)や中川丈久教授(神戸大学)が「旧試験への先祖返り現象が見られる」、「予備試験の水準は既修者認定試験に等しく、法科大学院修了よりも相当低い」との疑問を呈した。他方、森田憲右教授(筑波大学)からは「予備試験は基本的知識の理解を重視し、科目や論点を絞るべき」との異論が示された。
また、予備試験合格者の多くは学部生、法科大学院在学生であり、制度趣旨に反するばかりか、試験勉強のために法科大学院の授業を欠席するなどの弊害も生じていることが報告された。今後の方向として、予備試験の科目に展開先端科目を追加したり、受験資格や合格者数に何らかの制限を設けることなどの問題提起がなされた。

 

 

お悔やみ

12月22日、日弁連副会長で第一東京弁護士会会長の樋口一夫会員(第一東京)が逝去されました(享年64歳)。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

 

日弁連短信
 法曹人口、法曹養成問題の検討状況

中西次長

昨年8月に発足した政府の法曹養成制度検討会議は、年内にすでに6回の会議を開き急ピッチで検討作業を進めており、2013年3月には基本的方向の取りまとめがなされる予定であり、まさに正念場を迎えている。

 

法曹人口問題

法曹人口問題については一巡目の意見交換が行われた段階だが、まず司法試験合格者3000人を目標とする閣議決定の見直しが問題となった。これについては、現状は目標に遠く及んでおらず明らかに目標が過大であること、総務省の政策評価でも目標に見合う法的需要がないと指摘されたことなどから、見直しを求める意見が出ているが、改革推進の象徴としてなお維持すべきであるとの意見もある。
日弁連としては、昨年3月の提言に基づき、まず1500人に減員して急増から漸増ペースに転換すべきことを訴えているが、現状の2000人程度を定着させるべきとの意見も根強く、現状よりさらに減員する根拠をデータに基づき示す必要がある。
なお、法的需要については、企業、公務員、中小企業の海外展開の各分野に法曹の活動領域を拡大する可能性を、作業チームで検討している。

 

法科大学院の在り方

法科大学院の在り方については二巡目の議論に入っており、教育の質、統廃合と定員削減、未修者教育の改善、司法試験との連携等が議論された。 統廃合と定員削減をめぐっては、公的支援の見直しにとどまらない、より強力な方法を求める意見が大勢であり、考えられる手法の利害得失の検討作業が進められている。また、未修者教育の在り方については、適性試験の改善、共通到達試験の導入、法律科目の重視等の中教審の提言に沿った改革が議論された。 他方、司法試験については科目および出題範囲の見直し、5年以内3回の受験回数制限の緩和等が検討される(12月25日)。

 

司法修習生への経済的支援

給費制復活を含む修習生への経済的支援については、フォーラム第一次取りまとめを受けてすでに貸与制が実施されているため、厳しい議論が予想されるが、第一巡目の意見交換では修習生の負担や不公平感の大きさについて委員の理解は深まりつつある。また、修習専念義務の存在との関係についても問題提起がなされている。 ただ、この問題は多額の予算を必要とするため、支援の方法と金額等について十分説得力のある提案を行い、委員の理解を得るべく努力しているところである。

(事務次長 中西一裕)

 

法律相談センターの全国統一ダイヤル導入へ

通称は「ひまわりお悩み110番」

 

日弁連は、2013年3月1日から法律相談センターの全国統一ダイヤルを導入する。相談希望者がNTTコミュニケーションズ社のナビダイヤル番号0570-783-110(なやみ110番)に架電すると、最寄りの弁護士会法律相談センターの受付に対応する電話に繋がるというもの。

 

全国各地の統一番号ができることで、法律相談センターへのアクセスをより容易にし、市民にPRし易くすることをねらいとしている。各地の法律相談センターの電話番号も従前どおり使用できる。日弁連は、統一ダイヤル導入に向け、弁護士による法律相談に関するキャッチコピーの募集や開始記念イベントの開催などを通じ、市民への周知を図っていく

 

 

 

市民集会
~生活保護基準の引き下げを許さない~
12月4日 星陵会館

  • 市民集会 「生活保護基準引き下げ反対・市民大集会」

リレートークの司会を務めた作家の雨宮氏貧困がさらに深刻化している。特に所得水準の低い層はこの10年で年間26万円もの収入が失われた。しかし、このような状況を無視するように生活保護水準を切り下げようという動きが止まらない。本集会ではこのような状況に対し、生活保護に関わる市民から「切り下げ反対」の声があがった。

 

「SOSを出しにくい」社会

実際に不正受給として国が把握している数字は生活保護者全体の0.4%に満たない。しかし、針小棒大に不正受給が取り上げられた結果、多くの受給者は肩身の狭い思いで過ごす。「生活保護以外の方法で何とか助かりませんか」と、福祉事務所に相談に来る人も少なくないという。こうした生活保護への心理的抵抗や「水際作戦」などにより生活保護の捕捉率は2割と非常に低い。住江憲勇氏(全国保険医団体連合会会長)は「生活保護を受けられなくなった結果、本来必要な診療を受けられずに重症化する人も多い」と懸念する。
貧困問題に取り組む作家の雨宮処凛氏は「今の社会はSOSを出しにくい」と現状の問題性を指摘した。

 

貧困の連鎖を防げ

生活保護世帯の子どもへの学習支援を行う白鳥勲氏(さいたま教育文化研究所副所長)は「貧困の深刻化は貧困の連鎖を作り出している」と指摘する。生活保護世帯の15歳の少年のうち全日制高校に通うのはわずか7割。自身の教え子である高校生が「僕は母親の代わりに公共料金が払えない言い訳をしなければいけない。生活保護を受けることはみんなと別の世界に住んでるということなんだ」と語ったことが忘れられないという。教育に必要なお金すら支出できない現状がある。
会場には210人余りが集い、改めて生活保護の重要性を確認しあう機会となった。

 

シンポジウム
~家事事件手続法のもとで家事調停はどう変わるか
12月8日 弁護士会館

  • 家事法制シンポジウム「家事事件手続法のもとでの家事調停の在り方を考える-離婚関係紛争を中心に-」
当事者の手続保障の強化

前半は、30年以上裁判官を勤め、現在は公益社団法人家庭問題情報センター理事長を務める若林昌子氏の基調講演が行われた。
若林氏は、家事調停の重要性と国民の権利意識の高まりに鑑み、家事事件手続法は当事者の手続保障を強化したと説明した。具体的には、調停申立書の写しの送付、調停記録の閲覧謄写権制度の見直しを挙げた。また、子どもを権利主体と認め、多様でかつ刻々と変化する子どもの状況に的確に対応する必要性から、子ども手続代理人の果たす役割の重要性を指摘した。

 

家事調停の機能は根底において変わらない

後半は、矢尾和子氏(東京家庭裁判所部総括裁判官)、中島幸治氏(同総括主任家庭裁判所調査官)、伊藤誠子氏(同家事調停委員・参与員)を招き、離婚関係紛争を中心に、家事事件手続法のもとでの家事調停の在り方を検討した。 手続の透明性を図るという新法の趣旨を踏まえ、調停開始時および終了時に当事者立会いのもと説明等を行う運用も紹介されたが、DV事案等では柔軟な対応が必要との意見があった。
また、手続の透明性を重視するあまり、争点整理にばかり目が行き、話し合いによる柔軟な解決という調停本来の目的が損なわれないかとの懸念に対し、矢尾氏は、調停での争点整理と民訴での争点整理は異なると指摘し、従来どおり当事者から十分に話を聞き、解決を図るという根底は変わらないと回答した。伊藤氏も、調停は、争点のみならず周囲の問題点も一挙に解決できるところに良さがあると語った。
子どもをめぐる紛争においては、調査官だけでなく臨床心理士やケースワーカーも携わるべきではないかという意見に対し、中島氏は、現状でも共同調査やチームでの検討を行っているとした上で、多様な専門家の関与は今後の課題であると述べた。

 

首都圏弁護士会支部サミット
~支部の司法アクセスの充実を目指して~
11月17日 茨城県土浦市

寸劇を通じて支部問題の深刻さを訴えた各地で支部サミットが開催されるようになってから10年。関弁連、茨城県弁護士会等が主催する本サミットでは、これまでの成果を検証しつつ、地域住民にとって利用しやすい裁判所の在り方を議論した。

 

「遥かなる地」水戸

不当解雇された阿見市在住の男性が労働審判をしたいのに、申立てができるのは「遥かなる地」水戸だけ。土浦支部の若手会員がユーモラスに演じた寸劇は、支部の管轄に住む多くの人々の嘆きを表現した。実際、裁判員裁判、合議体での訴訟、少年事件など、支部で十分な対応ができない事件は多岐にわたり、その主たる原因は拘置支所などの司法関連施設の不足、裁判官や検察官の不足にある。
各弁護士会支部の実情報告では、数多くの事件を抱える支部が裁判官の不足や取り扱い事件の限定に苦悩する現状が伝えられた。司法改革の流れのなか、むしろ司法の中央集権化が進み、支部はさらに置き去りにされているという。

 

「支部問題解消のための立法を

小林泰明氏(読売新聞水戸支局元記者)は「裁判員裁判対象の凶悪事件が発生しても地域で解決することができず、治安の悪化につながりかねない」と指摘した。鹿嶋市に事務所を構える細田はづき会員(茨城県)は「麻生支部は週に3日しか裁判官が来ない。このままでは成年後見などの業務がきちんと機能するのか不安」と語る。大泉ひろこ氏(元衆議院議員)は「労働審判のような好評の司法サービスをどこでも受けられるようにするのは国の責務」と訴えた。
支部問題の解決が見えない背景について、間部俊明会員(横浜)は予算の制約を指摘し、この問題解消のために地域司法計画を国の事業と位置づけ、安心安全な社会に役立つ司法作りのための「司法充実基本法」の制定を提案した。

 

 

死刑制度に関する世論調査についての講演会
「国民の八割が死刑容認」は本当?
11月27日 弁護士会館

アンケートの設問や分析方法に疑問を呈する山田教授社会調査のデータ解析を専門とする静岡大学情報学部の山田文康教授を招き、内閣府が行った死刑制度に関する世論調査の問題点について講演会を開催した。

 

内閣府は「基本的法制度に関する世論調査」(2009年12月)の結果について、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」(5.7%)、「場合によっては死刑もやむを得ない」(85.6%)と報告し、マスコミは、「国民の8割以上は、死刑制度を容認している」と報じた。しかし、山田教授は「場合によっては死刑もやむを得ない」とのカテゴリが被調査者に受け入れられ易いものであるため、過去の調査に比べて死刑賛成者が増加したと考えるのが自然と分析した。この設問自体が誘導的であることが明らかにされたといえる。

 

また、主設問での回答結果のみを取り上げるのは分析として不十分であり、主設問に続く補助設問の回答を考慮する必要があるという。具体的には、死刑反対の補助設問に対する「すぐに、全面的に廃止する」35.1%、「だんだん死刑を減らしていき、いずれ全面的に廃止する」63.1%、死刑賛成の補助設問に対する「将来も死刑を廃止しない」60.8%、「状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよい」34.2%という回答結果を踏まえると、「国民の8割以上は、死刑制度を容認している」との一般化には無理があり、「死刑存続が五割前後、廃止+将来廃止が三割強」と結論づけるのが自然との指摘がなされた。

 

日弁連としても、この講演内容を踏まえ、従前と同様の世論調査が行われ、誤った分析結果がマスコミで報じられないよう、内閣府、マスコミなどに対し働きかける必要がある。

(死刑廃止検討委員会事務局長 小川原優之)

 

都市型公設事務所等連絡協議会
公設事務所の役割とは?~現状と課題について
11月26日 弁護士会館

弁護士過疎・偏在地域に赴任する弁護士の養成など、都市型公設事務所の役割はいまだ重要といえる。他方、クレサラ事件の減少等の影響で経営環境が厳しさを増している。九回目となる本協議会では、このような公設事務所の現状を踏まえた今後の課題について考察した。

 

経営難への対策は

各地の公設事務所の経営者弁護士からは、弁護士不足地域に赴任する弁護士の養成や採算性の低い事件の受任を含む公益的活動と経営を両立することの困難さに、クレサラ事件の売上減少等の影響が加わって、経営に苦戦している現状が報告された。その対応として、地域の自治体との連携や、成年後見・外国人事件対応など新しい分野開拓の報告があった一方、新人採用弁護士の初任給の削減などの方策をとっているとの報告もあった。他方、新人弁護士が法科大学院での奨学金や、貸与制による借金を抱えている現状や、仕事のモチベーション維持なども考えると、給与の削減には消極的にならざるを得ないという意見もあった。

 

指導担当弁護士の負担は重い

大町英祐会員(札幌)は、すずらん基金法律事務所の現状について、事件数の減少に伴い、公設事務所でのOJTが不足している現状を報告し、実務経験チェックシートの活用などの対策を説明した。他の経営者弁護士からも、指導担当弁護士の負担の重さが指摘された反面、若手弁護士からは、それでもなお若手の指導は長い目で見てほしいとの要望が出された。

 

公設事務所の重要性は変わらない

渋谷パブリック所長の蛭田孝雪会員(東京)は、国学院大学キャンパス内で展開するリーガルクリニックを例に挙げ、公設事務所が法科大学院教育と実務の連携を担っていると述べた。弁護士任官等推進センター委員長の木津川迪洽会員(第一東京)は、公設事務所は弁護士任官促進のためにも重要と述べた。これらの議論を踏まえ、今後も公設事務所の円滑な運営に向けた取り組みを進めていくことが確認された。

 

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.74

修習生の「弁護導入講義」を実施
司法修習の新たなカリキュラム

2012年11月30日および同年12月3日の2日間にわたり、第66期司法修習生を対象とする初めての「弁護導入講義」が実施されました。これは司法研修所の協力を得ながら、弁護実務修習の中で、全国統一のカリキュラムとして、すべての修習生を対象に全国の弁護士会で一斉に実施されるものです。
2日間とはいえ、日弁連が求めてきた「統一的な導入修習」の一環として位置づけられる重要な試みであり、ぜひご注目いただきたいと思います。
(司法修習委員会幹事 藤田尚子[第二東京])

 

東京会場での講義を全国にライブ配信した事前課題の検討と起案提出

講義の実施に先立ち、修習生には民事弁護と刑事弁護の事前課題を与え、解答を提出させた。
民事弁護の事前課題は、不動産登記の絡む事案について弁護士が相談を受けた設定で、複数の設問を設け、弁護士がなすべきことや注意すべきこと、必要資料の入手方法、取り得る紛争解決手段等を検討させ、訴状を起案させるものである。刑事弁護の事前課題は、強盗致傷の否認事案の記録を与え、弁論要旨を起案させるものである。いずれも課題と講義を通じて弁護士・弁護人の役割や活動をイメージさせ、当事者法曹の視点を意識させることを主な目的としている。

 

1・2限目は東京での講義を全国の会場にライブ配信

事前課題の提出を前提に、1日目は民事弁護、2日目は刑事弁護の講義が実施された。1・2限目(計200分)は、弁護実務修習のガイダンスと事前課題の解説であり、東京の会場で実施される講義の映像を、インターネット回線を用いて全国の会場にライブ配信した(ただし、一部の弁護士会では通信がうまくいかず、事前に収録したDVDによる講義となった)。講師は、民事は司法研修所の弁護教官経験者、刑事は現役の弁護教官が担当し、いずれもパワーポイントを多用した中身の濃い講義となった。

 

3限目は弁護士会ごとの講義

3限目(120分)は、全国統一の講義ではなく、弁護士会ごとに、講義の内容と講師を定めて実施された。もっとも、日弁連から各弁護士会に、3限目用の教材を提供しており(民弁は民事保全、刑弁は模擬接見)、多くの弁護士会はこの教材を利用したようである。第二東京弁護士会でも、これを利用し、配属修習生を6つに班分けして(1班約15人)、双方向の講義(民弁)と演習(刑弁)を実施した。

 

理論的学習と実務の繋がりを学ぶ機会に

受講した配属修習生の感想としては、課題の負担や講評時間の短さ等への不満の声があったものの、全体として「修習に臨む意識の改善に役立った」、「これまでの理論的な学習と実務との繋がりを適度に学べた」など積極的な評価が多く、総じて好評であった。講義の方法については、一方的に映像を配信する1・2限目に比べ、3限目の双方向の講義は「質問も出来て理解が深まる」、「主体的に考えることができる」など、明らかに評価が高かった。 なお、終了後に懇親会を催した会も多く、第二東京弁護士会でも1日目の終了後、配属修習生約80人(司法修習委員を入れると総勢約120人)の大懇親会となった。実務修習開始直後に各弁護士会に配属される修習生が一堂に集まり横の繋がりを得る貴重な機会になったようである。

 

望ましい導入的修習に向け柔軟な改善を

弁護導入講義については来年度の実施が既に予定されているが、今後、使用する教材の確保や、司法研修所とのさらなる連携、安定したライブ配信の実現など、検討すべき課題は多い。より根本的な問題として、「2日間のライブ配信」という実施形態が定着することへの懸念もある。望ましい導入的修習の在り方とはどのようなものか、今後も検討を続け、柔軟に改善を図っていく必要があると思われる。

 

 

弁護導入講義のカリキュラム
11月30日 1限目10時00分-11時50分 民事弁護修習のガイダンス
2限目12時50分-14時40分 民事弁護 事前課題の解説
3限目15時00分-17時00分 弁護士会ごとの講義(日弁連教材は民事保全)
12月3日 1限目10時00分-11時50分 刑事弁護修習のガイダンス
2限目12時50分-14時40分 刑事弁護 事前課題の解説
3限目15時00分-17時00分 弁護士会ごとの講義(日弁連教材は模擬接見)

日弁連委員会めぐり 50

国内人権機関実現委員会

日比谷公園を臨む弁護士会館15階ロビーでお話を伺った先の国会に人権委員会設置法案が提出されましたが、衆議院解散により廃案となりました。これまでの経緯、そしてこれからについて藤原精吾委員長(兵庫県)からお話を伺いました。
(広報室嘱託 白木麗弥)

 

 

独立した機関の設置を

遡ること14年前、国連の自由権規約委員会から要請を受けたのを始め、政府から独立した国内人権機関の設置が国際的に強く求められている。しかし、2002年に提出された政府案は、国内人権機関の独立性が確保されていないこと、報道の自由を制約する内容であったこと、差別や虐待に対象を制限したことなど、多くの問題があった。
2002年に「政府から独立した人権救済機関の設立に関するワーキンググループ」として発足した委員会では、あくまでも政府とは独立した機関を設立すべきとして、再度の自由権規約委員会からの勧告を踏まえ、2008年に具体的な要綱案を作成し、政府の内外に働きかけを行ってきた。藤原委員長は「例えば韓国は国家人権委員会が設立され、多彩なルートから選出された11人の委員が、約160人の職員と共に人権侵害に対する実効的な救済をしている。政府から独立していることもあるので、軍における人権侵害からの救済もできているようだ」と語り、政府からの独立性が実効性ある人権救済のために不可欠であることを強調した。

 

弁護士会のノウハウ活用を

局面が変わったのは民主党政権となった2009年、当時の法務大臣が国内人権機関の設立を実現三本柱の一つとした。与党や法務省と根気強く意見交換を続けた後に作成された政府案では、国内人権機関はいわゆる三条委員会として一定の独立性が保たれた組織となったが、組織の事務局に法務局の職員を充てるなど問題もあり、日弁連としては、必要な改善を求めながらも、早期の発足に向け協力するというスタンスであった。この政府案は、2012年の臨時国会に提出されたが、衆議院解散により廃案となってしまった。自民党への政権交代により国内人権機関設置の動き自体が先行き不透明となっているが、日弁連としては、今後も設置に向けた運動を進めていく。
藤原委員長は「弁護士会は人権救済のためのノウハウがある唯一の組織と言っていい。国内人権機関が発足した場合、こうしたノウハウをぜひ活用したい。弁護士も、裁判所による救済だけではなく、こうした機関で働くことによって人権を救済できる道があることを意識してもらえれば」と語った。

 

ブックセンターベストセラー
(2012年9月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
1 東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情 第3版 東京家庭裁判所家事第6部 編著 判例タイムズ社
2 破産管財の手引[増補版] 東京地裁破産実務研究所会 著 きんざい
3 民事訴訟マニュアル(上)~書式のポイントと実務~  岡口基一 著 ぎょうせい
4 民事訴訟マニュアル(下)~書式のポイントと実務~  岡口基一 著 ぎょうせい
5 コンメンタール民事訴訟法5 第2編/第5章~第8章 秋山幹男・伊藤眞・加藤新太郎・高田裕成・福田剛久・山本和彦 著 日本評論社
6 労働関係訴訟の実務 [裁判実務シリーズ1] 白石 哲 編著 商事法務
Q&A ハンドブック交通事故診療[新版] 羽成 守 監修/日本臨床整形外科学会 編 創耕舎
8 逆転無罪の事実認定 原田國男 著 勁草書房
9 具体的手法から学ぶ 法律事務所のマーケティング&マネジメント ―事務所の成長・発展のための実戦的手引書 柿沼太一 著 日本加除出版
10 弁護士のためのマーケティング マニュアル2 [分野別実践編] 出口恭平 著 第一法規出版

編集後記

家事事件手続法のもとでの家事調停についてのシンポジウムを取材した。離婚・相続は、多くの弁護士が携わる事件でもあることから、およそ150人の参加者があり、その関心の高さがうかがわれた。
同法の施行に伴い、必要書類ならびに書式も変わる。申立書の上部には、「相手方に送付されます。相手方送付用のコピーを提出してください。」との記載がある。非開示を希望する書面には、「非開示の希望に関する申出書」が必要となる。証拠説明書もどきの「資料説明書」の提出も求められる。1月からは、家裁のホームページを参照する機会も増えるだろう。
ただし、手続がどのように変わろうとも、家事調停が、法律で一刀両断されるものではなく、当事者の心情も汲み取り、納得のできる解決をめざすものであることには変わりがない。今後の運用を注視していきたい。(R・S)