2018年度会務執行方針

はじめに

1948年12月、多くの犠牲をもたらした第二次世界大戦への深い反省に立って、全ての人間が等しく享有すべき権利と自由を高らかにうたった世界人権宣言が第3回国連総会で採択されて、本年で70年を迎えます。
しかし、残念ながら、世界は相変わらず戦火が絶えず、テロが頻発し、領土と支配をめぐって暴力が繰り返されています。
そして、社会に生じた大きな歪みや亀裂が、格差を拡大させています。
我が国は、このような世界の潮流にどう立ち向かおうとしているのか。
憲法第9条の改正論議は、戦後70年を過ぎ、日本国憲法の下で立憲主義・恒久平和主義に依拠してきた我が国の在り方を国民に問いかけるものです。
日弁連は、これまで憲法の理念である立憲主義を堅持し、国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義という基本原理を尊重する立場から、多くの宣言・決議を採択し、運動を展開してきました。そして、そのことは社会的に大きな影響を及ぼしてきました。日弁連・弁護士会は、今後とも、法律家団体として、国民の理解と判断に資する議論の深化に努めることが必要です。そして、会内の多様な意見を踏まえながら、日弁連としての到達点を探るべく、慎重かつ丁寧なプロセスをたどっていかなければなりません。我々執行部としては、この困難なプロセスを、心を合わせて歩んでいきたいと考えます。


格差社会が国民の分断を招き、国民としての連帯感を失わしめると言われています。経済の低成長時代における超高齢化・少子化社会において、基本的人権を尊重し、社会的セーフティネットである福祉をより充実させることが求められています。高齢者・障がいのある人・子どもなど法的保護を求める方に寄り添い、貧困や様々な差別に立ち向かい、労働者・消費者・犯罪被害者・外国人そして刑事被疑者・被告人などの権利を擁護するなど、これまで日弁連の果たしてきた人権擁護活動を更に推進する必要があります。また、死刑制度の廃止を実現するために、一層の運動強化に取り組みます。

業務基盤の拡充と活動領域の拡大は焦眉の課題であり、各関係委員会の力を結集して総力を挙げて取り組みます。その方向性には多面的・多角的な展開が必要であり、執行部として横断的にその取組の進捗状況を検証していきます。
弁護士の国際展開にも力を入れていきます。
若手会員への支援については、これまでの活動に新規性を凝らすなどして、更に充実したものにしていきます。

現在、文部科学省中央教育審議会で議論がなされている法科大学院制度の見直しに対し、「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」(2016年3月11日臨時総会)等に基づき対応し、法科大学院の規模の適正化、教育の質の向上、法科大学院生の多様性の確保と時間的・経済的負担の軽減に資する制度の実現に向けて建設的な活動を進めていきます。
また、修習給付金制度が創設されましたが、その一方で、新65期から70期のいわゆる谷間世代の問題が生じました。谷間世代がその経済的負担等によって法曹としての活動に制約が極力生じないよう、この問題に取り組みます。
法曹人口問題に関しては、上記決議に沿って、司法試験合格者数が1,500人となった場合の影響度につき、検証するための継続的なデータ収集を引き続き行います。法曹志望者の増加を図るための一層の取組を継続します。

改正刑訴法に基づき、被疑者国選弁護制度の勾留全件への拡大(いわゆる第三段階)や捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引制度)が開始され、弁護実践の真価が問われる年でもあります。また、更なる刑事司法改革の諸課題に引き続き取り組みます。
民法(債権関係)の施行も再来年に迫ります。民法(相続関係)の改正法案が今通常国会に提出され、会社法制(企業統治等関係)等の改正に向けた審議もまた行われています。労働法制・消費者法制の対応も喫緊の課題です。また、民事司法改革を前進させ、民事裁判の活性化を目指さなければなりません。行政事件・行政手続関与などの法整備も必要です。裁判手続のIT化に伴う制度設計やAI(人工知能)関連の様々な新しい法整備に向けた検討が急務です。
日弁連は、法制度の改善とその適正な運用のために、これまで集積した知的資産をタイムリーに、そして実効的に活用していかなければなりません。

その他、日弁連が果たすべき重要課題は山積しています。担当副会長15名そして事務総次長、職員が一丸となって、日々数多く開催される会議・協議・イベント等を通じて、委員会の意見・会員の声をいち早くキャッチし、会務に反映させていきます。
そして会員の団結を強く訴えるとともに、強制加入制団体として認められた弁護士自治をしっかり護り抜く強い覚悟を持ち、そのための不断の努力をしていきます。会務執行の基本方針の根底にあるのは、弁護士自治の制度保障であり、そこにいささかの綻びもないよう会務を執行していきます。


第1 平和と人権 

1 憲法の基本理念・原理を守る

(1) 憲法改正問題の取組

立憲主義と憲法第9条の恒久平和主義を含む日本国憲法の基本理念・原理を堅持する立場から、憲法改正問題に取り組みます。改正案が国会等で審議される状況においては、国民的議論において、憲法への理解が深まるよう、日弁連は、法律家団体としての責務を果たすため、憲法審査会等における議論を検証しながら、改正案の課題や問題を明らかにしていきます。全国の弁護士会と連携して行ってきた、立憲主義、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義に関する市民・社会の理解を深め拡げる活動も継続します。また、憲法改正の前提として最低投票率や有料広告規制等の憲法改正手続法(国民投票法)の整備の重要性を訴えていきます。


(2) 特定秘密保護法の抜本的見直しと報道・表現の自由

特定秘密保護法については、国民の知る権利に重大な制約を加えるおそれがあることから、引き続き、その廃止を含めた抜本的見直しに向けた取組を進めます。併せて、同法の運用状況を厳しく監視します。また、報道・表現の自由を守る活動を続けるとともに、情報自由基本法の制定を求めます。


(3) いわゆる共謀罪法の廃止

2017年、いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法が成立しました。日弁連は、共謀罪の創設は市民の人権や自由を侵害するおそれが強いものとして、本法律の成立に一貫して反対してきました。今後は、本法律が恣意的に運用されることがないように厳しく注視し、全国の弁護士会と共に、本法律の廃止へ向けた取組を行っていきます。


 

2 人権擁護活動の実践

(1) 国際基準による人権保障

我が国は、自由権規約委員会等の国際人権条約機関から、長年にわたり、多くの厳しい改善の勧告を受けており、国際水準による人権保障がなされているとは言い難い状況です。国際水準による人権保障を早急に実現するため、引き続き取組を進めます。

 

(2) 個人情報の保護と報道による人権侵害

公権力などによる違法・不当な個人情報の収集・利用が行われないよう、個人情報保護法の改正を求めるほか、マイナンバー制度の運用状況等を厳しく監視・検証し、必要な改善提言をしていきます。
報道される人の名誉・プライバシーを守り、報道による人権侵害を救済するための取組を継続します。

 

(3) 高齢者・障がいのある人の権利

高齢者や障がいのある人が人として尊重され、安心して自分らしい生き方を選択できるよう、一専門家として積極的に制度構築と運用改善に努めます。併せて、弁護士後見人による不祥事根絶に向けた取組を継続します。行政を含む福祉関係者との連携を構築し、成年後見制度を充実させ、「ホームロイヤー制度(家庭弁護士・かかりつけ弁護士)」の普及等に努めます。

 

(4) 子どもの権利

児童虐待防止のための取組を強め、全国の児童相談所に弁護士の配置等がなされるよう態勢を構築します。
さらに、子どもの権利基本法の制定を目指し、いじめや体罰等の根絶のための取組、無戸籍解消のための取組、「スクールロイヤー制度」の整備を求める取組を強め、子どもの手続代理人の費用が公費から支出されることを求めます。
少年法の適用年齢については、少年の立ち直りや再犯防止に有効であるかという観点から判断されるべきであり、その引下げに反対します。国選付添人制度については、身体拘束事件全体への対象拡大の実現を目指します。

 

(5) 両性の平等と女性の権利・性の多様性と平等の保障

公平な社会を実現するために、個人の尊重、男女の平等の見地から、あらゆる分野での両性の実質的な平等を図り、女性の地位・権利を確立するための取組を継続します。選択的夫婦別姓制度の導入、再婚禁止期間の廃止等、女性を差別する民法の規定の改正を求めます。
また、いわゆるLGBTなど性的少数者に対する偏見・差別を無くし、性の多様性を尊重し、個人の尊厳を確保するための活動にも取り組みます。

 

(6) 外国人の権利

ヘイトスピーチに象徴される排外的差別意識は根強く、非正規在留者の社会保障や行政サービスが保障されず、さらには0.17%という極端に低い難民認定率など、我が国の外国人の人権保障は極めて貧しい状態です。差別意識解消とともに、これら不平等な取扱いの撤廃等に向けた取組を強化していきます。
なお、10月の人権擁護大会では「『外国人労働者100万人時代』の日本の未来~人権保障に適った外国人受入れ制度と多文化共生社会の確立を目指して~」をテーマにシンポジウムを開催します。

 

(7) 消費者の権利

消費者の権利を確立・充実させるため、消費者基本計画への適時適切な対応、消費者契約法の改正、消費者教育の推進、地方消費者行政の強化などの課題に取り組みます。また、民法の成年年齢引下げについては、なお慎重に判断することを求めるとともに、引下げによって生じる消費者被害防止のための保護施策の拡充を提言していきます。
さらに、いわゆる「カジノ解禁推進法」の廃止に向け全力で取り組むとともに、ギャンブル依存症の対策にも取り組みます。

 

(8) 労働者の権利

迅速な労働紛争解決のために有益な役割を果たしている労働審判制度の充実と発展のための取組を継続します。また、全国の労働局及び労働基準監督署との連携強化等、労働問題に悩む労働者の救済策の充実にも取り組みます。さらに、学齢期から高齢期までの各段階に応じたワークルール教育を推進する法律の制定を支援する諸活動を推進するとともに、現在も行われているワークルール教育の教材作成、教育の担い手の供給、学校関係者その他の教育実施主体との緊密な連携等を継続していきます。

 

(9) 貧困問題の取組

生活保護基準の引下げや非正規従業員の増加、低賃金などによる貧困層の拡大等によって、子ども、高齢者、障がいのある人などの社会的弱者へのしわ寄せが深刻です。特に、子どもの貧困は格差社会の中で深刻化しており、公正・公平な社会の実現を阻害する人権問題です。
10月の人権擁護大会では「日本の社会保障の崩壊と再生―若者に未来を―」をテーマにシンポジウムを開催するなど、貧困の解消に引き続き取り組みます。

 

(10) 犯罪被害者の人権

各地で設置されている性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの更なる充実を求め、各自治体・相談センターの取組に関する情報収集、情報提供、協力、支援等を行うとともに、政府に対し財政的な支援や基盤の整備を求めます。また、犯罪被害者を総合的に支援するための被害者庁の創設等、将来にわたる一元的・継続的な被害者支援態勢の在り方について検討していきます。さらに、犯罪被害者法律援助制度の国費化に向けた取組も一層強めます。

 

(11) 民事介入暴力の根絶

暴力団対策法をはじめとする法律、条例や制度を利用し、あるいは違法収益などの剥奪等に関して新たな制度を提言するなどして、市民や企業、行政に対する暴力団等による被害の防止、救済を図るとともに、潜在化、匿名化、不透明化する暴力団等の活動の排除に取り組みます。

 

(12) 死刑制度廃止と刑罰制度改革の実現に向けての取組

2016年の人権擁護大会で採択された「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を実現するために、昨年発足させた「死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部」を中心に、犯罪被害者・遺族の方々の実情に配慮しつつ、人の生命の尊さ、誤判えん罪の可能性など、なぜ死刑制度は廃止されるべきであるかについて、市民やマスコミに理解してもらう努力を続けるとともに、各弁護士会での取組を促進し、2020年までに死刑制度を廃止することを目指して活動します。

 

(13) 罪に問われた高齢者・知的障がいのある人の支援

高齢者・知的障がいのある人の刑事弁護において、社会福祉士等と連携し、接見同行や更生支援計画書を作成するなどの活動を、研修等を通じて全国に広めていく取組を進めます。さらに、関係諸機関への要望等を通じて、更生支援計画書を矯正の現場につなげるとともに、更生支援計画書の作成等環境整備のために弁護人が支弁した適正な経費について、国選弁護に伴う費用として支払われるよう求めていきます。

 

(14) 犯罪者処遇の在り方

法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会において、諮問事項である非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方が議論されています。犯罪者処遇の制度が大きく変わる可能性があり、積極的に意見を述べていく必要があります。

 

(15) 公害・環境問題と持続可能な社会の実現

現在及び将来の世代が等しく自然環境の恵沢を享受し、健康で文化的な生活を確保できるようにするため、公害・環境破壊の根絶を目指すとともに、環境権及び自然享有権が確立する持続可能な社会の実現に向けて取り組みます。また、国に対しオーフス条約への加入を働きかけるとともに、同条約にうたわれている、市民が権利として国や地方公共団体の意思決定に参画し、かつ環境保全のための司法手続にアクセスできる制度の実現を目指します。さらに、所有者不明土地の取扱いや空き家問題などに積極的に取り組み、環境問題に対処する弁護士の活動領域を広げます。

 

第2 弁護士の業務拡充と活動領域の拡大

 

1 権利保護保険(弁護士保険)の拡充

市民の司法アクセスを弁護士費用の面から改善する権利保護保険(弁護士保険)のより一層の拡充を図ります。保険の対象事件の拡大や中小企業等事業者向け保険の企画・商品化等に積極的に協力するとともに、紹介弁護士への研修を充実させ、新たに設置したADR機関によって、保険から支払われる弁護士費用をめぐる紛争を迅速に解決していくこと等により、権利保護保険制度の信頼性を高めていきます。そして、未締結の保険会社に対し、協定締結を積極的に働きかけます。

 

2 国・自治体との連携

弁護士の任用促進、公金債権の管理・回収や包括外部監査人の就任促進、条例制定支援等、行政との連携の取組を一層推進します。また、子ども、高齢者、障がいのある人、生活困窮者等の福祉分野における法的支援を継続的・安定的に行うことができるよう事業化を推進し、弁護士による継続した権利擁護活動ができる取組を推進します。

 

3 企業法務、企業活動のモニタリングなどの活動

2011年の国連人権理事会決議「ビジネスと人権の国連指導原則」を受け、企業活動をめぐる法制度・実務は大きく変化しつつあります。コンプライアンス、CSR、ESG(環境・社会・ガバナンス)等の視点に基づき、人権や環境への配慮を含むより広い意味での企業活動の適法性の確保に、弁護士が重要な役割を担うことができるよう、積極的な取組を推進します。

 

4 中小企業に対する法的支援、積極的なアプローチ

事業者向け相談受付専用ダイヤル「ひまわりほっとダイヤル」や全国各地での中小企業支援団体等との意見交換会等を通じて、近時、大きな社会問題となっている事業承継への対応のほか、事業再生、創業支援、海外展開支援等、中小企業が抱える現状の課題を把握し、中小企業支援の取組を推進します。

 

5 組織内弁護士の拡大と支援

任期付公務員である弁護士は国と地方公共団体を合わせて198人(2017年6月1日現在)、企業内弁護士は2,104人(2018年1月5日現在)に達しており、弁護士にとって新たな活躍の場になっています。今後も、法の支配の担い手である弁護士が組織内において活躍できるよう、弁護士や企業等の関係者への情報提供や、関係機関に対する働きかけを行うとともに、組織内弁護士をサポートするため、必要となる研修等を実施していきます。

 

6 国際展開

中小企業や個人でも海外との契約や紛争で弁護士の力を必要としており、国際的な業務に関する弁護士のニーズは飛躍的に高まっています。これらの法的ニーズに応えるため、弁護士の国際的な活動をより一層推進する施策に戦略的に取り組むとともに、国際的に活躍できる弁護士の育成・支援の活動を推進していきます。

 

7 インターネットによる業務広告の適正化と促進

インターネットは、市民が弁護士に関する情報等を入手するための主要な手段ですが、業者が運営する広告サイトの中には、不適切な運営が疑われる広告サイトも散見されるとの指摘があります。会員が、適正に、広告サイトを利用した業務広告ができるように、本年1月に制定された「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」を会員や業者に周知し、適正な業務広告による市民の弁護士へのアクセス向上に努めます。

 

8 ニーズに応えられるスキルの養成

価値観の多様化と経済のグローバル化は、紛争の多様化、特殊化を招来し、これまでにない複雑で解決困難な紛争を増加させています。それに伴い弁護士に求められる知識・技術も専門化・高度化しています。会員がこれらの複雑困難な紛争の解決に的確に対処することができるように、会員に対し、市民のニーズに合致した高い専門的知識の習得を目的とした体系的な研修制度の在り方について検討します。

 

9 業務妨害対策

近年、事件相手方による弁護士刺殺事件、インターネットの普及に伴うネット上の弁護士業務妨害等、弁護士に対する業務妨害行為は多様化する傾向にあります。弁護士や法律事務所事務職員が脅迫や暴力等によって不当に業務を妨害されることがないよう、事務所のセキュリティ確保の方策や警察との連携を含む対策を検討し、推進します。

 

第3 法曹養成制度の改革

 

1 法科大学院制度の見直し

法曹養成制度をめぐる諸課題に関し、「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」(2016年3月11日臨時総会)等を踏まえた取組を進めます。とりわけ、法科大学院を中核とする法曹養成制度は、試行錯誤を重ねながらも10数年にわたって多くの法曹を輩出してきた実績は十分評価すべきものであり、今後も改善見直しを重ねて、制度を成熟させるべく努力を続けていくべきと考えます。2018年度までの法科大学院集中改革期間に際し、文部科学省中央教育審議会等における議論の動向を注視しつつ、日弁連は積極的に関与して必要な取組を進めていきます。

 

2 司法修習の充実

法曹の実務に必要な能力を習得させるという司法修習の重要な役割に照らし、司法修習の充実に引き続き取り組みます。また、司法修習生に対する経済的支援については、修習給付金制度が創設され、一定の成果が上がりましたが、司法修習生が安心して修習に専念できる環境整備について引き続き取り組みます。

 

3 いわゆる「谷間世代」の問題への対応

修習給付金制度が創設されましたが、新65期から70期までの、いわゆる谷間世代の問題は解決されていません。また、7月には新65期の修習資金の返還が始まります。この問題を放置することなく、引き続き取り組んでいきます。当事者の声を真摯に受け止め、支援策について、会内の意見を集約して検討します。また、国費による是正・救済については引き続き検討します。

 

4 法曹人口

法曹人口は、法曹養成制度の成熟度、現実の法的需要、司法基盤の整備状況とのバランスの中でその適正数が検証されなければなりません。司法試験の合格者数は、2年連続で1,500人台となっており、法曹人口の増員ペースが一定程度緩和されていますが、この傾向が継続するかを注視しながら、その影響度につき検証するための継続的なデータ収集を引き続き行い、今後の適正数を基礎付ける根拠事実を集積していきます。  併行して、関係諸機関・諸団体とも協力しながら、司法基盤整備の推進、司法アクセスの拡充、弁護士の活動領域の拡大のための取組とともに、法曹養成制度をめぐる諸課題を克服すべく必要な取組を行います。

 

5 法曹志望者増加の取組

法曹志望者増加のための取組を最重要課題の一つとし、そのための具体的活動として、弁護士会から各地の中学校・高校・大学等に出向いて法曹という仕事の意義・魅力や法曹養成制度の概要等について発信する取組を継続します。また、市民向けシンポジウム等イベントの開催を含め、各種広報媒体を活用しながら、弁護士の魅力や多方面での活動の姿を「見える化」して、広く社会にアピールします。そして、何より私たち弁護士一人ひとりが弁護士の魅力を実感し、自ら発信していくことが大切であり、それを実現できる日弁連になるべく、努力します。


第4 民事司法改革等の推進

 

1 裁判所支部機能の拡充と司法予算

司法予算は、国家予算の0.3%程度で、国家予算の伸びに比べて伸び率が低い傾向にあります。また、ここ10年で弁護士は約1万6000人増であるのに対し、裁判官は定員ベースでも425人しか増えていません。市民にとって身近で利用しやすく、頼りがいのある民事司法を実現するためには、司法予算を充実させ、裁判所の人的・物的基盤を整備することが重要と考えます。とりわけ市民の司法アクセス改善のためには、裁判所支部機能の拡充が求められます。日弁連は、引き続き、非常駐支部の常駐化、開廷日の拡大、合議事件取扱支部拡大、家庭裁判所出張所の増設・運用改善、労働審判実施支部の増加などの課題に取り組んでいきます。

 

2 民事執行法の改正

法制審議会における民事執行法改正の議論は、主に、財産開示、不動産競売からの暴力団排除、子の引渡し執行の三つの分野について、強制執行制度の実効性の強化のために充実した議論が行われています。とりわけ第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設については、いわゆる過酷執行への一定の配慮をしつつ、対象範囲の拡大等を目指して取り組みます。

 

3 証拠収集制度の拡充

市民の権利救済を実効的なものにするためには、弁護士会照会制度、当事者照会制度及び文書提出義務の強化など、証拠収集制度の拡充が必須と考えます。また、証拠・情報の開示制度の整備・拡充によって審理の適切さを確保することにより、民事裁判を活性化するための議論・検討を進めます。

 

4 依頼者と弁護士の通信秘密保護

依頼者が弁護士の法的助言を受けるための弁護士との間の通信内容の開示を強制されない権利(依頼者と弁護士の通信秘密保護制度)は、欧米において、司法制度の原則として確立しています。一方で、我が国では、民事・刑事・行政の各種手続において弁護士との相談が秘密でないことから、依頼者が防御を十分に行うことができない、あるいは弁護士に相談することを躊躇するなどの弊害が指摘されています。
日弁連は、2016年2月の「弁護士と依頼者の通信秘密保護制度の確立に関する基本提言」を受け、本制度を確立するための活動を行っています。とりわけ独占禁止法の分野において議論が進んできていることから、本制度が適切に採り入れられるよう重点的に取り組みます。

 

5 改正民法とその他改正法への対応

民法(債権関係)の改正については、2020年4月1日施行に向けて、会員への周知、研修の実施などの諸準備を加速させます。また、民法(相続関係)についても、配偶者の居住権保護や相続分見直しを中心とした改正案に対する調査研究と対応を進めます。
その他、焦眉の課題である労働法制の改正や、法制審議会において議論されている会社法制(企業統治関係)の改正等についても、日弁連意見の実現に向け、必要な取組を行います。
また、急ピッチで検討が進められている民事裁判手続等のIT化を始め、国民にとって利用しやすい司法制度及びシステムの構築に向けて、最高裁判所、法務省等の関係機関と鋭意協議し、引き続き積極的に取り組んでいきます。


6 行政訴訟改革と行政手続への関与

現行行政訴訟制度を国民にとって利用しやすいものとするために、差止訴訟、非申請型義務付け訴訟などの各訴訟類型の訴訟要件の緩和や、違法性審査、裁量に関する司法審査の在り方などの行政訴訟制度の改革に取り組みます。
また、改正行政不服審査法により新たに導入された審理員による審理手続と行政不服審査会等への諮問手続について、実務上の様々な課題を解決するための方策の実現に取り組みます。
さらに、調査の適正化、被調査者の防御権の保障のために、行政処分の前提となる行政調査に弁護士が立ち会う機会を確保するなどの改善を目指します。

 

第5 司法アクセスの拡充

1 日本司法支援センター(法テラス)事業の取組

(1) 民事法律扶助の拡充と適切な運用

本年1月、改正総合法律支援法が施行されました。認知機能が十分でない高齢者・障がいのある人やDV・ストーカー・児童虐待の被害者が利用しやすい制度となるよう、適正な運用の実現を目指します。


(2) 法テラス事業の拡充と連携強化

法テラスと連携し、法律扶助対象事件の拡大、弁護士業務の実情に見合った立替基準の適正化、DV事案などの困難案件加算や償還免除の活用・拡大等に取り組みます。


(3) 法律援助事業の国費・公費化

本年6月、勾留されている全被疑者に対し国選弁護が拡大され、これまで法律援助事業として実施していた弁護援助制度の一部が国費化されることとなります。さらに、逮捕段階における公的弁護制度の実現、国選付添人制度の対象拡大や、人権分野の法律援助7事業の本来事業化等を目指します。


2 司法過疎・偏在の対応

司法過疎・偏在解消に向けた取組として、法律相談センターの設置(全国で約300か所)、ひまわり基金法律事務所の全国展開(累計で118か所。現在稼働中の事務所は47か所)、偏在対応独立弁護士や養成事務所等に対する経済的支援等の施策を実施しています。地方裁判所の支部単位で弁護士が1人又は0人の、いわゆるゼロワン地域は解消されていましたが、残念ながら、本年3月1日時点で弁護士ワン地域が一つ発生しました。今後も取組の成果を検証しながら、弁護士ゼロワン地域の解消への取組をはじめ、地域の実情に応じた司法過疎・偏在解消に向けた施策を推進します。

 

3 公設事務所の支援

ひまわり基金法律事務所については、支援委員会による人的支援や開設費・運営費等の経済的支援を行っており、今後もこの支援を推進します。都市型(過疎地派遣型)公設事務所については、これまで司法過疎地に赴任する弁護士の養成等の実績を上げている一方で、財政上の課題があるため、司法過疎地に赴任する弁護士の安定的な確保・養成を継続する観点から施策を検討し、実施します。


4 各種法律相談の活発化

近年、弁護士会の法律相談センターにおける法律相談件数が減少しているところ、その要因の分析と対策について日弁連公設事務所・法律相談センターが取りまとめた提言に基づき、「ひまわりお悩み110番」や「ひまわり相談ネット」の認知度向上のための広報活動を展開し、弁護士会と連携しながら法律相談の活性化に取り組みます。


 

第6 憲法の理念に基づく刑事司法の実現

1 新たな刑事司法の対応

(1) 取調べの可視化への対応

取調べの全件・全過程の録画の実現のために、改正刑訴法施行後3年後見直しに向けて、取調べが録画されなかったことによって問題が生じた事例や、録画の存在及び内容が判決等に影響を与えた事例など、立法事実となるべき事例の収集分析が不可欠です。併せて、被疑者にフォーカスした録画の撮影方向を公平なものとするよう働きかけるとともに、実質証拠として用いるなどの捜査機関側の動きに対応すべく、弁護実践の充実強化を図ります。


(2) 捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる「司法取引制度」)への対応

改正刑訴法の成立により、捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引制度)が本年6月から新たに導入されます。引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないよう、その運用を注視するとともに、協力者及び標的者の弁護人の弁護活動について検討を深め、会員向け研修の充実に努めます。


(3)拡大された被疑者国選弁護制度の実践

勾留された全ての被疑者を対象とする国選弁護制度が実現し、被疑者国選弁護事件が大幅に増大することが見込まれています。そのための人的・物的な態勢や、とりわけ夜間・休日接見の態勢など即応的な国選弁護の態勢が整備されているかを確認します。また、3年後に予定されている制度の見直しを念頭に置いて、全国から詳細な被疑者弁護活動の実践的なデータを収集します。


2 裁判員裁判の更なる改革と充実

裁判員にとって分かりやすい弁護を目指して、実演型の研修を更に積極的に行うとともに、当該研修受講を裁判員裁判の国選弁護人候補者名簿の登載要件とするなどの取組を進めます。公判前整理手続の長期化の指摘に対して、その事例把握や原因分析を行い、同制度の目的に沿った適切な弁護活動の在り方を検討する必要があります。

 

3 更なる刑事司法の改革を目指して

(1)活動内容に見合った国選弁護報酬基準の整備

国選弁護人の活動が報酬面において正当に評価されるよう、2017年に実施した会員へのアンケートを参考にしながら、国選弁護報酬基準の改訂について継続的に検討し、法テラス・法務省との対外折衝に努めます。また、弁護活動の独立性に配慮しつつ、裁量的評価の検討も視野に入れ、国選報酬の増額に向けて様々な取組を推進します。


(2) 弁護人立会権の実現

取調べにおいて、個人の尊厳を守り、供述の強要ひいてはえん罪を防止するためには、憲法第38条の黙秘権の実質的な保障、すなわち、捜査機関の圧力に屈することなく、自由に黙秘権を行使できる状況を確保することが必要です。そのためには弁護人立会権の確立が欠かせません。弁護人立会権の実現に向けた取組を進めていきます。


(3) 再審を含む全面的証拠開示制度の実現

全面的証拠開示の立法事実となるべき事例を収集分析することが必要です。再審が無辜の救済のための制度であることに鑑み、再審請求審における証拠開示制度の法的整備も喫緊の課題です。


(4) 人質司法を打破するために

刑事司法改革において放置された「人質司法」を打破するためには、これまで以上に立法事実を集めなければなりません。裁判官が被疑者又は被告人の身体の拘束に係る判断に当たり、否認又は黙秘をしていることを不当に不利益に扱っていないかなど、事例の収集分析に取り組んでいきます。


(5)逮捕段階の公的弁護制度の実現

当番弁護士出動後の継続的弁護態勢に関する各弁護士会との間のブロック別意見交換会(キャラバン)や、「第14回国選弁護シンポジウム」(2017年開催)における制度論に関する議論を基に、逮捕段階の公的弁護制度に関する具体的構想(日弁連試案)を策定します。


(6) 全面的な国選付添人制度の実現

被疑者国選弁護制度の対象拡大にもかかわらず、国選付添人制度の対象はいまだ一定の範囲に限定されています。そこで、身体拘束された全ての少年の事件を対象とした全面的国選付添人制度の実現を目指します。



第7 被災者支援と災害対策

1 災害復興法制の改正と生活再建支援施策の見直し

弁護士の頼りがいを市民の目に焼き付けた活動が、震災の際の活動です。
東日本大震災・原発事故及び熊本地震の復旧・復興にかける弁護士の姿は、市民の信頼を十分に勝ち得ました。しかし、震災の爪痕は深く、今なお約7万人もの方が避難生活を続けるなど復興も途半ばです。また、昨今の集中豪雨や台風・竜巻など、自然の猛威は予断を許しません。
日弁連としては、各地の弁護士会等と連携しながら、被災者等の救済が完全に達成されるまで災害復興支援活動に取り組んでいきます。

 

2 原発被害者への早期かつ完全な賠償と被災地の復興の実現

福島原子力発電所事故による損害の完全な賠償と被災地の復興を実現するため、被害者への支援、賠償基準等についての意見表明、原子力損害賠償紛争解決センターの運営への協力などの活動に引き続き取り組みます。また、同センターが提示する和解案を東京電力が尊重するよう引き続き求めていきます。

 

3 脱原発への取組

広範な地域に深刻な放射能汚染の被害をもたらした福島第一原子力発電所事故を踏まえ、我が国の原子力推進政策を抜本的に見直し、原子力発電と核燃料サイクルから撤退し、再生可能エネルギーの推進、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化と低炭素化を中核とするエネルギー政策の実現に向けて取り組みます。


4 防災・減災に向けた取組

防災に備えて弁護士会が地元自治体と協働することができるよう対策を検討します。そして、これまで弁護士会が実践で蓄積してきた経験値を集大成し、万一災害が発生した際に直ちに対応できる態勢を平時から構築していきます。


 

第8 若手会員への支援

1 弁護士業務支援ホットライン・チューター弁護士制度

若手会員の業務支援対策として、本格事業として開始した、経験豊富な弁護士に事件処理を含む業務全般の悩みを電話で相談できる「弁護士業務支援ホットライン」を会内で周知し、その利用を推進します。また、チューター弁護士制度の利用を促進するとともに、各弁護士会で実施しているクラス制等の新規登録弁護士への支援策の情報を集約し発信していきます。

 

2 研修の充実、情報提供

急激な弁護士数の増加により、会員の扱う事件数も相対的に減少する傾向にあり、従前のように経験年数の経過とともに弁護士に求められる十分な知識・経験が蓄積されることが困難となる傾向があります。そこで、経験の乏しい登録間もない会員が早期に経験不足を補う知識・情報を獲得することができるような、効果的で充実した研修を企画することによって、会員にとり有益な情報を提供することを目指します。とりわけ、法科大学院による教育、司法研修所における修習との連続性にも配慮した、市民の期待に応えられる幅広い知識、より深い能力を有する弁護士を育成するための体系的な研修システムの構築に取り組みます。

 

3 就業支援・独立開業支援・孤立化防止

就職相談会の開催やひまわり求人求職ナビ等の各種広報媒体による求人情報の提供を通じて、司法修習生や若手会員の就業及び独立開業支援を継続して行います。また、弁護士業務支援ホットラインやチューター弁護士制度を通じて、若手弁護士が経験豊富な弁護士の助言を受けられる体制を整え、若手会員の孤立化を防止します。


 

第9 男女共同参画の推進

副会長に占める女性会員の割合を高めるためのクオータ制が本年度から実施されましたが、引き続き、日弁連の政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大を目指し、理事者に占める女性会員の割合を計画的に高める方策を検討します。
本年度から第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画が実施されますが、日弁連・各弁護士会での取組・進捗状況をフォローアップするなど積極的に推進していきます。
さらに、社会のダイバーシティを推進するために、内閣府男女共同参画局の「はばたく女性人材バンク」(女性役員登用促進事業)に引き続き関与するなどし、弁護士会内と社会の両面から男女間格差を解消する取組を進めます。

 

第10 法教育の充実

法の支配が国民に浸透し、民主的で公正な社会を実現するためには、早い年齢のうちからの基礎的な法教育が重要ですが、我が国では法教育の実践が十分とはいえません。
若年層の法教育の充実のために、法教育に携わる、又は法教育に携わろうとする教員の助けとなるような、教員向けセミナーなどを実施して、法教育の担い手を多数養成するとともに、高校生模擬裁判選手権の企画運営や、会員による法教育授業の支援などを通じて、多くの人に広く法教育が浸透するような活動を続けていきます。

 

第11 司法及び弁護士の国際化の推進

1 日弁連の国際交流の推進

日弁連が加盟している国際団体は6団体、友好協定を結んでいる諸外国弁護士会・国際法曹団体は14に上り、これらの団体及び弁護士会の会議への参加など、近年ますます国際交流活動が盛んになっており、これを一層進めていきます。


2 中小企業の海外進出支援

日本貿易振興機構(JETRO)や東京商工会議所等と連携し、海外展開に取り組む中小企業に対して、国際的な企業法務の経験を有している弁護士による法的支援を推進します。また、連携機関の拡大を推進するとともに、研修の実施等により全国に海外展開に対応できる弁護士を育成し、支援を強化します。


3 国際仲裁

欧米やアジア諸国と比べて国際仲裁の活用が立ち後れている日本が国際紛争解決地として選定され、日本の弁護士が実務家として関与できるよう、国際仲裁を活性化するための施策及び体制整備が求められています。本年度から大阪・中之島で始まる国際仲裁のパイロットプロジェクトに協力し、東京にも国際仲裁の拠点を設置するための活動を支援します。セミナー等の実施による国際仲裁の実務の周知や、法制度上・運用上の方策に関する調査研究も進めていきます。


4 海外における立法・法制度支援

基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とするNGOとして、「日本弁護士連合会による国際司法支援活動の基本方針」に沿って、主としてアジア諸国に対して実施している国際司法支援活動を、独立行政法人国際協力機構(JICA)等と連携しながら継続していきます。


5 ハーグ条約事件等渉外家事事件についての取組

社会の国際化に伴い渉外家事事件に関する相談が増加していることを踏まえ、裁判所に翻訳文を備え付けたり通訳者を確保するなどの運用の改善や、渉外家事事件の当事者のための支援体制の整備に、家庭裁判所の協力を求めながら取り組みます。
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)については、現行制度の実効的な運用のための調査研究を重ね、関係機関との協議などを通じて、円滑な執行や弁護士紹介制度の効果的な運用に向けた対策に取り組むとともに、必要な環境整備に取り組みます。


6 国際分野で活躍する人材の育成

国際分野で活躍できる人材を拡充するため、海外ロースクールへの推薦留学制度や国際会議への若手会員の派遣制度の実施を続けます。国際機関等の国際公務分野でのキャリア構築に関心を持つ会員に対して、研修やキャリアセミナーの開催を継続して行うほか、昨年運用を開始した国際公務相談窓口と国際公務メーリングリストの活用により、個々の会員のキャリアパスに即した個別具体的なサポートに取り組みます。


7 国連犯罪防止会議への対応

第14回国際連合犯罪防止・刑事司法会議(コングレス)が2020年4月に京都で開催されます。政府が準備を進めるコングレスに向けて、引き続き情報収集を行い、弁護士の団体としての関与の仕方について検討を進めます。


 

第12 広報の充実

2018年2月に策定された「日本弁護士連合会広報中長期戦略」に基づき、弁護士の敷居を下げて市民に身近な存在として感じてもらい、さらに職業としての弁護士を知ってもらうためのイメージアップ広報を継続します。また、弁護士の仕事を市民や企業に知ってもらうとともに、弁護士会との連携・支援を通じて、会員の利益にも資する広報に取り組みます。
さらに、市民や企業が必要とする情報が「伝わる」広報のために、これまで以上に情報の受け手である市民や企業のニーズに配慮したコンテンツ及び媒体を活用していきます。

 

第13 弁護士自治を堅持する方策等

1 不祥事対策

日弁連は、弁護士不祥事が市民の信頼を大きく揺るがすものであることを踏まえ、多角的な観点から対策を講じてきました。昨年10月には預り金等の適正管理の強化策及び依頼者見舞金制度がスタートし、不祥事対策が更に前進しました。
さらに、弁護士会の市民窓口及び紛議調停の機能強化、懲戒制度の運用面での工夫(会請求や事前公表等)並びに懲戒事例データベースの整備検討など、実務面の対策を推進するとともに、会員への支援策(メンタルヘルスカウンセリングや会員サポート窓口等)の充実を図ります。


2 弁護士職務基本規程の見直し

弁護士の倫理と行為規範を定めた弁護士職務基本規程は、施行後13年を経過しました。弁護士の存在と役割が広く社会に認識され、弁護士が活動の場を多種・多様な分野へと広げつつある中で、組織内弁護士をめぐる規範の在り方などを含め、同規程制定後に出された弁護士倫理をめぐる判例や懲戒議決例を踏まえつつ、十分な会内論議を行った上で、必要な改正に向けた検討を進めていきます。


3 適正な会財政と組織改革の検討

積極的な施策を進めるべきところには十分な予算を充て、合理化すべきところは可能な限り圧縮するなどして、健全かつ適正な会財政を目指します。併せて、委員会等の数が無限定に肥大しないよう、統廃合を含む組織改革につき本格的検討を始めます。


4 弁護士法第72条と隣接士業との協働

弁護士法第72条が、厳格な資格要件や誠実適正な職務遂行のために必要な規律に服することが要求される弁護士に法律事務の独占を認めた趣旨に鑑み、同条が他の法律により不当に浸食されることがないよう注意を払うとともに、その解釈適用問題については、引き続き検討・議論を進めます。また、市民の権利保護や利益に資するか否かという観点に基づいて、隣接士業との協働に取り組みます。


5 FATF第4次相互審査の対応

2019年に予定されているFATFによる第4次相互審査に向けて、会員が提出する年次報告書の統計データを踏まえ、依頼者の本人特定事項の確認義務と記録保存義務等の会員による履行状況を把握し、課題を検討します。会員が容易に依頼者の本人特定事項を確認できるツールの提供及び研修の実施も進めます。


6 会務の合理化と会務参加の促進

会員の会務参加を促進するために、会務の合理化は必須です。今後も、効率的な会議運営や会員の移動時間の負担を軽減するテレビ会議システムの拡充等、会務合理化のための施策を推進します。


7 法曹一元と弁護士任官

法曹一元を実現するための重要な施策として、裁判官の供源の多様化・多元化を図り、弁護士が持つ健全な市民感覚を裁判に反映していくために、弁護士任官の拡大は極めて重要です。今後も、質・量ともに着実に弁護士任官を推進します。また、関係機関と連携して、判事補及び検事の弁護士職務経験制度を継続することで、健全な市民感覚を裁判に反映させていくことを目指します。




「障がい」の表記について
「障害」を「障がい」と表記することについては、これを相当とする意見、これを不相当とする意見があり、そのいずれかに統一することができません。当連合会の文書では、各方面の意見に基づき、「障がい」の表記を使用することがありますが、これに統一するものでも、その使用を推奨するものでもありません。