2017年度会務執行方針

はじめに

2017年の世界を見渡すと大きな変化の兆しが見られます。米国で新たに誕生したトランプ政権は、その新しい政策によって世界各国に大きな影響を与えています。ヨーロッパ各国では大統領選挙や総選挙が実施され、アジアにおいても韓国では大統領選挙が実施されます。アフリカの各地では依然として内乱や戦闘状況が続いています。このような世界の中にあって、いつまでも日本に平穏な日々が続く保証はなく、我々には平和と人権を守るための不断の努力が求められています。

一方、国内においては、様々な分野で制度改革が求められる中で、司法の役割、とりわけ日弁連を中心とした弁護士及び弁護士会の役割は益々重要なものになっています。

日弁連は、本年、会員数が39,000人を超え、そのうち半数程度は直近の10年で弁護士登録をした会員で占められています。また、組織内弁護士も年々増加してきており、既に企業や自治体等で働く弁護士も2,000人を超えています。会員数が増えるに伴い、世代間や地域間で、また業態や業務分野の違いによって弁護士会に対する意識や要求も多様なものとなってきています。

しかし、我々弁護士は、強制加入制度の下で自治権を有するとともに、法律事務を独占的に行うことができる弁護士制度の中にあります。つまり、全ての弁護士は、強制加入制度という同じ船に乗り、人権擁護と社会正義の実現という弁護士法に基づく使命を担うという点で同じ方向を目指しているということができます。

日弁連は、会員の中の様々な意見を集約し、合意形成を図って、以下に述べる課題について一つひとつ取り組み、改善・改革していかなければなりません。そして、市民の皆様に利用しやすく頼りがいのある司法を築き、希望と活力にあふれる司法の実現を目指して、全力で取り組んでまいります。

 

第1 平和と人権を守る

弁護士の最大の使命は人権の擁護にあります。立憲主義を堅持し、基本的人権の尊重、国民主権、恒久的平和主義を基本原理とする憲法を護り、そのような憲法の下、多方面にわたる人権擁護の取組を継続します。

 

1 平和を守る、立憲主義を守る

戦争は最大の人権侵害であり、人権は平和の下でこそ守ることができます。憲法第9条が規定する恒久平和主義は、堅持されなければなりません。一昨年9月に国会で採決されたいわゆる安保法制については、立憲主義と恒久平和主義の立場から、安保法制の廃止に向けた取組を行います。憲法改正については、憲法審査会における議論を広く会内外に共有し、国家緊急権の創設等の問題点をわかりやすく発信していく必要があります。また、立憲主義、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義について、市民・社会への理解を更に深め、拡げる活動を、全国の弁護士会と連携して継続します。

 

2 人権を守る

(1) 両性の平等と女性の権利

両性の実質的な平等と女性の権利の確立を目指し、選択的夫婦別姓制度の導入、再婚禁止期間の廃止等、女性を差別する民法の規定の改正を求めます。また、司法におけるジェンダーバイアスの解消、慣習の中の性別役割分担意識の解消等に取り組みます。

 

(2) 子どもの権利

少年法の成人年齢については、選挙権年齢や民法の成年年齢と一致させる必要はなく、少年の立ち直りや再犯防止に有効であるかという観点から判断されるべきであり、その引下げに反対します。対象事件が拡大された国選付添人制度については、改正法の趣旨に沿った適正な運用を求めるとともに、身体拘束事件全体への対象の拡大実現を目指します。また、2016年の児童福祉法一部改正に沿って全国の児童相談所に弁護士の配置等がなされるよう態勢を構築するほか、児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の適切な在り方について議論・検討を進め、児童虐待防止のための取組を強めます。

さらに、子どもの権利基本法の制定を目指し、いじめや体罰等の根絶のための取組、無戸籍解消のための取組を強め、子どもの手続代理人の費用が公費から支出されることを求めます。

 

(3) 高齢者・障がいのある人の権利

昨年、成年後見制度の利用の促進に関する法律が成立しました。これに基づき、高齢者や障がいのある人が住み慣れた地域で人とつながり、安心して自分らしい生き方を選択できるよう制度構築と運用改善に努めます。併せて、弁護士後見人による不祥事根絶に向けた取組を継続します。行政を含む福祉関係者との連携を構築し、成年後見制度を充実させ、「ホームロイヤー制度」の普及等に努めます。

 

(4) 外国人の権利

外国人に対するヘイトスピーチをはじめとするあらゆる人種差別を解消し、その基本的人権を確立するため一層の取組を行います。外国人技能実習制度については、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律が制定され当面の改善策が規定されたものの、技能実習制度の構造的問題は放置されており、引き続き同制度の早急な廃止を求めていきます。廃止までは、技能実習生の人権のために、同法が規定する当面の改善策が十分に機能するよう求めます。難民認定がほとんど認められない現状に対し、独立した難民認定機関の設立、適正手続の保障、難民申請者への法的支援の充実や地位の改善を目指します。

 

(5) 消費者の権利

消費者の権利を確立・充実させるため、消費者基本計画への適時適切な対応、消費者契約法、特定商取引法及び割賦販売法の改正、インターネット取引被害の救済・防止と決済システムの規制、詐欺的投資勧誘対策などの課題に取り組みます。また、民法の成年年齢引下げについてはなお慎重に判断することを求めるとともに、引下げによって生じる消費者被害防止のための保護施策の拡充を提言していきます。

さらに、昨年10月に施行された集団的消費者被害回復訴訟制度の適正な運用に取り組みます。

 

(6) 労働者の権利・貧困問題への取組

労働者の権利については、労働時間法制の不当な規制緩和に反対し、長時間労働の規制の実現を求めるとともに、派遣労働の固定化の見直しを求めます。また、最低賃金の時給1,000円以上への引上げも求めます。

市民が健康で文化的な生活を送ることができるよう、生活保護基準の切下げに反対し、生活保護に関する取組を進めます。貧困の連鎖を断ち切るため、奨学金制度の充実を求めるとともに、子どもの貧困対策、女性の貧困対策、自殺対策に取り組みます。

 

(7) 犯罪被害者の人権

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターが全国で設置されるよう、各自治体・相談センターの取組に関する情報収集、情報提供、協力、支援等を行うとともに、政府に対し財政的な支援を求めます。また、犯罪被害者を総合的に支援するための被害者庁の設立を視野に入れ、調査・研究を深化させます。犯罪被害者法律援助制度の国費化に向けた取組も一層強めます。

本年10月に開催する人権擁護大会シンポジウムにおいては、被害者支援の根拠を被害者の権利から改めて問い直し、具体的な課題について検討を加えるとともに、犯罪被害者庁の創設等、将来にわたる一元的・継続的な被害者支援体制の在り方についても検討していきます。

 

(8) 民事介入暴力の排除と暴力追放

暴力団対策法をはじめとする法律、条例や制度を利用し、あるいは違法収益などの剥奪等に関して新たな制度を提言するなどして、市民や企業、行政に対する暴力団等による被害の防止、救済を図るとともに、潜在化、匿名化、不透明化する暴力団等の活動の排除に取り組みます。

 

(9) 個人情報の保護と報道による人権侵害の救済

公権力などによる違法・不当な個人情報の収集・利用が行われないよう、個人情報保護法の改正を求めるほか、マイナンバー制度の運用状況等を厳しく監視・検証し、必要な改善提言をしていきます。

報道される人の名誉・プライバシーを守り、報道による人権侵害を救済するための取組を継続します。

本年10月に開催する人権擁護大会シンポジウムにおいては、情報は市民のものであるという視点のもとに監視社会化の歯止めと情報公開の推進をテーマとして取り上げ、上記を含め情報問題全般につき様々な角度から検討を深化させます。

 

(10) 国際基準による人権保障

国際基準による人権保障のため、国際人権規約(社会権規約・自由権規約)をはじめとする人権諸条約(女性差別撤廃、子どもの権利、人種差別撤廃、拷問禁止など)に附帯する、国連の各人権条約機関への個人通報制度の導入に取り組みます。また、政府から独立した国内人権機関の設立について、国連諸機関から再三勧告を受けているところであり、早急な実現に向けて引き続き取り組みます。

 

(11) 特定秘密保護法の抜本的見直し

2014年12月に施行された特定秘密保護法は、国民の知る権利に重大な制約を加えるおそれがあることから、今後も引き続き、その廃止を含めた抜本的見直しを実現するための取組を進めます。併せて、同法の運用状況を厳しく監視して問題点を指摘するとともに、公文書管理法の見直しや、公的情報の公開・保存・取得に関する基本理念等を定める情報自由基本法の制定を求めていきます。

 

(12) 共謀罪法案への反対

共謀罪法案はこれまでに3回廃案となりましたが、政府は、「共謀罪」という名称や法案の内容を変更した新たな法案を閣議決定し、本通常国会へ上程しました。共謀罪は、現行刑法の体系を根底から変容させる点など大きな問題があります。全国の弁護士会及び弁護士会連合会と共に、共謀罪法案の問題点を広く社会に共有するとともに、廃案に向けた取組を強化します。

 

(13) 死刑制度の廃止とそれに関連する刑罰制度の改革の実現

昨年10月に開催された人権擁護大会では「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」が採択されました。同宣言は、国に対し、刑罰制度全体を改革する中で、死刑制度とその代替刑についても検討し、「日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきである」としました。

同宣言の実現に向けて、犯罪被害者・遺族の方々の実情に配慮しつつ、国民の理解を得るための努力をしながら取組を進めます。

 

(14)犯罪者処遇の在り方に関する検討

今般、法制審議会に「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会」が設置され、近時の犯罪情勢、再犯防止の重要性等に鑑み、少年法の適用年齢引下げとともに、非行少年を含む犯罪者に対する処遇の在り方等に関する議論が開始されました。

日弁連は、少年法の適用年齢引下げに反対する立場を前提としつつ、刑罰制度全体が罪を犯した人の真の改善更生と社会復帰を志向するものへと改革できるよう関連委員会を中心に検討を行い、同部会での議論に的確に対応していきます。

 

(15) 公害・環境破壊の根絶と持続可能な社会の実現

公害と環境破壊を根絶し、現在及び将来の世代が等しく自然の恵沢と良好な環境を享受するために、また、環境権、自然享有権が確立する持続可能な社会を建設するために取り組みます。

本年10月に開催する人権擁護大会シンポジウムでは、琵琶湖における生物多様性の問題を検討する中で、総合的な観点から自然環境政策と法制度について考察するとともに、原発や化石燃料に頼らない持続可能なエネルギーの活用等から地域経済へのつながりと市民が実質的に参加する自律的な地域社会の実現について考察します。

 

第2 利用しやすく、頼りがいのある民事司法の実現

民事司法の改革は、司法の役割を大きくし、弁護士の活躍の場を拡げ、市民にとって身近で利用しやすい司法を実現するために重要な課題です。2011年5月の「民事司法改革と司法基盤整備の推進に関する決議」に基づく取組を継続します。

司法に助力を求める者が利用しやすく頼りがいのある民事司法制度を実現するために、とりわけ以下に掲げる諸課題につき、会内議論を深めて意見集約を図りながら、必要な取組を進めていきます。また、急速なグローバル化の進展により、司法、弁護士の国際化が重要な課題となってきていることから、民事司法の国際競争力強化を目指し、国際的な視点を持って各種取組を進めていきます。

家庭裁判所・簡易裁判所の機能拡充、IT技術活用による裁判の利便性の促進、利用者視点でのアクセス改善等、運用で改善できる改革課題については、最高裁判所と協議をすることも視野に入れて検討を進めます。

 

1 証拠収集制度の拡充

市民にとって身近で利用しやすく、頼りがいのある民事司法を実現するためには、弁護士会照会制度、当事者照会制度及び文書提出義務の強化など、証拠収集制度の拡充が必須と考え、日弁連の立法提言に基づき、取組を進めます。

 

2 被害回復と再発防止に役立つ損害賠償制度

損害額が低額に過ぎるために「費用倒れ」をおそれて訴訟提起を躊躇したり断念したりしてしまうことがないよう、抑止的付加金制度の導入を含め、司法に助力を求める者が報われるような損害賠償制度の構築に向け、議論・検討を進めます。

 

3 実効性のある強制執行制度

昨年11月から法制審議会において、財産開示制度の実効性の向上(第三者から財産情報を取得する制度の創設を含む。)、不動産競売からの暴力団排除、子の引渡し執行の主に3つの分野について、民事執行法改正の議論がなされています。

日弁連は、いわゆる過酷執行への一定の配慮をしつつも強制執行制度の実効性を高めるよう提言しており、日弁連の意見も踏まえた充実した議論が法制審議会でなされるよう、更なる検討を進めます。

 

4 頼りがいのある家庭裁判所に

近時、家事事件は増加傾向にあり、今後、更なる高齢化、家族や親子関係の在り方の変化、国際化の進展に伴って、家事事件の多様化・複雑化、国際的な要素を持つ家事事件の増加が一層進むと考えられます。このような変化に応えるため、家事事件手続法の適正な運用を見守るとともに、家庭裁判所の裁判官・調査官の増員、家事調停官制度実施庁の拡大、独立簡易裁判所への家庭裁判所出張所の併設、子どもの手続代理人制度の公費負担の実現などの人的・物的基盤の充実に向けて取り組みます。

 

5 行政訴訟の改革

行政訴訟は、年間約2,500件と、諸外国と比べて極端に少ない状況です。これは、勝訴率の低さ、原告適格の狭さ、広範な行政裁量などが訴訟提起を躊躇させているためと考えられます。行政による許認可審査に対して容易かつ実効的に不服を申し立てることができる手続制度を整備することは、国民の実効的な権利救済には不可欠であるのみならず、国内企業はもとより、海外企業を日本に誘致する際にも重要であることから、司法による行政チェック機能を実効あるものとするよう、行政訴訟制度の改革に向けた検討を進めます。

 

6 提訴手数料の低額・定額化

我が国の提訴手数料は、諸外国と比較してあまりにも高額であり、その傾向は訴額が高額な事件において顕著です。民事裁判を利用しやすくするために、提訴手数料を抜本的に低額・定額化するために、日弁連の提言に基づき取組を進めます。

 

7 権利保護保険(弁護士保険)の拡充

利用しやすい民事司法の要となる司法アクセスを弁護士費用の面から改善する権利保護保険(弁護士保険)の拡充を図ります。交通事故から個人の紛争に対象が拡大している状況を踏まえ、中小企業向け保険を保険会社等に働きかけます。また、権利保護保険制度の信頼性維持のため、日弁連LACシステムを通じた紹介弁護士名簿を整備し質の確保を図るとともに、保険を巡る紛争を防止・解決するため、LACマニュアルを改訂し、ADR機関設置に向けて取り組みます。

 

8 依頼者と弁護士の通信秘密保護

依頼者が弁護士の法的助言を受けるための弁護士との間の通信内容の開示を強制されない権利を確立し、民事・刑事等訴訟手続、行政手続等のいずれの手続においてもそれを保障する適切な措置を講ずるための取組を行います。とりわけ本年度は、議論が進んでいる独占禁止法の分野において採り入れられるよう重点的に取り組んでいきます。

 

9 民法改正への対応

民法(債権法関係)改正については、国会での審議状況を見据えつつ、調査研究、会員への周知、研修の実施など、改正法に対応した諸準備を進めます。そのほか法制審議会で議論されている相続法制の改正問題等についても、議論・検討を進めます。

 

第3 法曹養成制度の改革

昨年3月11日の臨時総会において成立した「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」に基づき、政府の法曹養成制度改革推進会議決定(2015年6月30日)で示された諸課題につき、その改革の進展状況を厳しく注視しつつ、それにとどまらない法曹養成制度を巡る改革諸課題全般について、これを自らの後継者育成に関わる最重要の課題と捉え、関係諸機関・諸団体とも協力しながら、主体的かつ積極的に取り組みます。

 

1 法曹人口

昨年の司法試験合格者数は1,583人となり、法曹人口の増員ペースが一定程度緩和されたと言える状況となりましたが、今後の推移を引き続き注視していく必要があります。

日弁連は、昨年3月11日の臨時総会決議に基づき、まず年間司法試験合格者数1,500人の早期実現に努め、並行して、関係諸機関・諸団体とも協力しながら、司法基盤整備の推進、司法アクセスの拡充、弁護士の活動領域の拡大のための取組とともに、法曹養成制度を巡る諸課題を克服すべく必要な取組を総合的に行います。さらに、法曹志望者確保のための取組を最重要課題の一つとして、各地の実情を踏まえつつ、法曹の意義・魅力や法曹養成制度の概要等について発信する取組を積極的に進めます。

 

2 法科大学院制度について

法曹養成制度改革推進会議決定において2018年度までの期間が法科大学院集中改革期間とされています。法曹養成の中核としての法科大学院制度については、法曹志望者の減少を真摯に受け止め、地域適正配置に配慮しつつ法科大学院の規模を適正化し、その教育の質を向上させ、法科大学院生の多様性の確保、経済的・時間的負担の軽減を図るなど、同制度の改善のための取組を進めます。

併せて、予備試験については、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための途を確保するとの制度趣旨を踏まえた運用となるよう、取り組みます。

 

3 司法修習の充実・司法修習生に対する経済的支援

法曹の実務に必要な能力を習得させるという司法修習の重要な役割に照らし、司法修習の充実に引き続き取り組みます。また、司法修習生に対する経済的支援については、新たな修習給付金制度が創設され、一定の成果があがりましたが、司法修習生が安心して修習に専念できる環境整備と貸与制が適用された世代の問題について引き続き取り組んでいきます。

 

第4 弁護士の業務拡充と活動領域の拡大

法の支配を社会の隅々に広げ、希望と活力にあふれる司法を実現するためには、弁護士の業務拡充と活動領域の拡大が喫緊の課題であり、以下に掲げる諸課題を含め、制度面、態勢面、運用面それぞれにおいて取組を強化します。各課題において、市民のニーズに有効に応えるにはどうすべきか、弁護士にとって持続可能な仕組みとするにはどうしたらよいか、という検討を踏まえ、またどのような時間軸で実現することを目指すかということを意識して、取組を進めます。弁護士の業務の在り方やルールも、弁護士の業務拡充と活動領域拡大を見据えて、変えていくべきものがないかどうか、併せて検討を進めます。

 

1 国、自治体に対する法的支援等

国、自治体への弁護士の任用促進、行政連携、公金債権の管理・回収や包括外部監査、条例制定支援等の各分野における弁護士、弁護士会による法的支援の拡充に向けた各種の取組を進め、連携を深めます。

併せて、高齢者・障がいのある人、生活困窮者、子ども等に関する福祉の分野においても、自治体等への法的支援の拡充、ひいてはこれらの人々の権利擁護を目指して、取組を進めます。

 

2 中小企業に対する法的支援

中小企業においては、弁護士による処理が必要な法的課題を抱えているにもかかわらず、問題が法的課題であることを認知できず、弁護士に相談することなく問題の処理をしようとした結果、適切な解決が得られず、かえって問題を深刻化させることが少なくありません。

そこで、日弁連では、これまで、弁護士の有用性をアピールする広報、事業者向け相談受付専用ダイヤル「ひまわりほっとダイヤル」の普及活動、全国キャラバンによる各地の中小企業団体や支援団体と弁護士会との交流などを行ってきましたが、今後も、これらに関する検証も踏まえつつ、弁護士の利用を促進する取組を進めます。

また、中小企業のニーズに応えるべく、事業再生、事業承継、創業支援、海外展開支援等、現在指摘されている中小企業の課題やその解決のためのスキームの研究を行うとともに、経営の実情を踏まえた研修を、 日弁連自体あるいは各弁護士会との共催で実施します。

 

3 企業活動のモニタリングの役割

会社法改正やコーポレートガバナンス・コードの策定等、企業活動を巡る法制度・実務は大きく変化しつつあります。弁護士は、企業の諸活動及びコーポレートガバナンスにおいて、企業活動の適法性を確保するにとどまらない重要な役割を果たし得るものと考えられます。

今後、例えば、上場企業の社外役員として弁護士を選任することの推奨等、国等に対して、法律・制度の改正を積極的に働きかけていきます。

 

4 組織内弁護士の拡大・支援

任期付公務員である弁護士は、2016年6月1日現在、国と地方公共団体を合わせて200人、企業内弁護士は、2017年1月5日現在、1,874人に達しており、弁護士にとって新たな活躍の場になっています。

日弁連は、今後も、法の支配を社会の隅々まで浸透させるべく、その担い手である弁護士が組織内においても活躍できるよう、弁護士、司法修習生や法科大学院生への情報提供とともに、関係機関に対して活用に向けた働きかけをしていきます。また、組織内弁護士を支援する態勢を整えるとともに、弁護士が採用側の組織が求める資質・能力を身に付け、活躍するために必要となる研修等を実施します。

 

5 国際的な業務の推進

日弁連は、関連機関・団体と連携し、中小企業の海外展開支援、在留邦人・在日外国人への法的支援等の拡充や、こうした分野にふさわしい人材養成を進めるなど、国際業務を推進するための総合的なプログラムに幅広く取り組んでいきます。

 

6 会員によるインターネットを用いた情報発信の適正化

現在、インターネットは、市民が法的情報や弁護士に関する情報を入手するための主要な手段となっています。そこで、日弁連では、弁護士に対する市民のニーズに応えるため、会員からインターネットを用いた情報発信が適正に行われるよう、「業務広告に関する指針」の改訂等も視野に入れて、その環境整備を進めます。

 

7 ニーズに応えられるスキルの養成

弁護士のスキルの向上のためには研修が重要であることに照らし、会員の要望に応え、市民の弁護士に対する信頼を高めるため、研修を更に充実させます。また、ライブ実務研修やeラーニングのみならず、各弁護士会にて日弁連の研修コンテンツを利用した会場研修を実施できるよう、DVD貸出等の支援を行います。

また、市民が専門性のある弁護士に相談することができるよう、特に専門的な研修を充実させるとともに、弁護士会の研修態勢を整備します。

 

第5 司法アクセスの改善及び司法基盤整備

1 法律相談の活性化

法律相談は、紛争や法律問題を抱えた市民に法的な解決の道筋を提供するものであり、市民の司法へのアクセスを保障する重要なチャンネルです。弁護士・弁護士会は、市民が全国であまねく法律相談を受けることができるよう法律相談センターの設置などの取組を進めてきました。

近年、弁護士会の法律相談件数が減少していますが、その要因の分析と対策について2015年5月に取りまとめた提言に基づき、弁護士会と連携して、「ひまわりお悩み110番」や「ひまわり相談ネット」の認知度向上のための広報活動を推進しながら、法律相談の活性化・再生に取り組みます。

 

2 ひまわり基金法律事務所、都市型公設事務所の支援

ひまわり基金法律事務所と都市型(過疎地派遣型)公設事務所は司法過疎対策として設けられ、実績を上げてきたものですが、都市型公設事務所の多くが財政上の問題を抱えています。引き続き弁護士過疎・偏在対策を進めるために、事務所の在り方や支援策について検討します。また、都市型公設事務所については、弁護士任官を支援する事務所を募集し、一定の要件で弁護士任官希望者を執務させた場合に補助金を支給する制度を導入し、弁護士任官推進のためのモデル事業を推進していきます。

 

3 裁判所機能の充実と司法予算の拡大

あらゆる地域の人が平等な司法サービスを受けることができるよう、裁判所支部における裁判官の常駐化、労働審判をはじめとする裁判所支部機能を充実させる取組を進め、弁護士任官を推進するとともに、裁判所の人的・物的態勢の強化に必要な司法予算の増額を訴えていきます。

 

第6 えん罪を生まない刑事裁判の実現

1 裁判員裁判制度の更なる改革

従前から、裁判員裁判における弁護人の活動が、検察官の活動に比べて分かりにくいとの指摘を受けています。実演型の研修を更に積極的に行い、当該研修受講を裁判員裁判の国選弁護人候補者名簿の登載要件とするなどの取組を進めます。公判前整理手続の長期化については、長期化事例や争点整理に問題があった事例を把握して、的確にその原因や改善策を検討する必要があります。また、裁判員裁判における直接主義・口頭主義は、裁判員裁判対象外事件においても実現されなければなりません。

 

2 取調べの全件・全過程の録画及び弁護人立会権の実現

昨年5月の改正刑事訴訟法の成立を踏まえ、取調べの録画に関する施行後3年後見直しに向けた立法事実となるべき事例を収集分析します。録画媒体を実質証拠として用いるなどの捜査機関側の動きに対応して、新たな弁護実践の充実強化を図ります。また、取調べの録画の運用の拡大に伴い、初回の取調べ前に弁護士の助言を受ける必要性が大きくなっています。逮捕された被疑者が公費による弁護士の派遣を請求できる制度を創設するとともに、弁護人立会権の実現に向けた取組を強化する必要があります。

 

3 全面的証拠開示の実現

改正刑訴法が成立し、昨年12月に類型証拠開示の対象の拡大及び証拠の一覧表交付制度が施行されました。しかし、えん罪を生まない刑事司法制度を確立するためには、全面的証拠開示の実現が不可欠です。度重なる再審無罪事件をはじめ、全面的証拠開示の立法事実となるべき事例を収集分析することが必要です。また、再審が無辜の救済のための制度であることに鑑み、再審請求審における証拠開示制度の法的整備も喫緊の課題です。

 

4 努力が報われる国選弁護制度

国選弁護報酬の基準の改定に関しては、弁護活動を適切に評価しきれていない問題が残されています。弁護活動の成果が正当に評価されるように、弁護活動の独立性への配慮を行いながら、裁量的評価の検討も視野に入れた国選報酬の増額に向けた取組を行います。

 

5 いわゆる「司法取引」制度への対策

改正刑訴法の成立により、2018年6月までに新たに導入される予定である捜査・公判協力型協議・合意制度については、引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応しなければなりません。そこで、合意をする可能性のある被疑者の供述経過を正確に記録するため、身体を拘束された被疑者であるか否かにかかわらず、取調べの全過程を録画するよう捜査機関に求めることなど、弁護実践が重要になります。協力者の弁護人の活動の在り方を含め、研修、経験交流等を充実させることが必要です。

 

6 「人質司法」を打破するために

今般の刑事司法改革においても「人質司法」の実態は放置されたままです。裁判官が、被疑者又は被告人の身体の拘束に係る判断に当たって、否認や黙秘をしていること又は検察官請求証拠について不同意とすることについて、不当に不利益な扱いを行った事例を収集分析するなどの取組を行うことが必要です。

 

第7 自然災害等により被害を受けた人々の生活の回復

1 これまでの災害復興支援活動

東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の発生から6年が経過した現在においてもなお、多くの人々が避難生活を送るなど、生活再建への道筋を見出せないまま過酷な生活を強いられています。

それに加え、昨年は熊本地震、台風による水害、鳥取県中部地震、糸魚川大規模火災など多数の災害が発生しました。特に熊本地震に関しては、発災当日に災害対策本部を立ち上げるなどして支援活動を開始し、電話相談件数は本年2月末日までの間に7,000件を超えています。

また、災害復興のために必要な施策に関しては適時に意見書や提言を公表し、その結果、改正総合法律支援法の一部早期施行により昨年7月以降の法テラス無料相談が実現したほか、糸魚川大規模火災については自然災害であるとして被災者生活再建支援法が適用されることになりました。

今後も被災者・被害者が迅速かつ適切な支援を受けられるよう、震災関連死や二重ローン問題等の課題について必要な法制度の創設を提言し、積極的にその役割を担っていきます。

また、各地の弁護士会等と連携しながら、東日本大震災の被災者、原発事故の被害者等の救済が完全に達成されるまで災害復興支援活動に全力で取り組んでいきます。

 

2 被災者・被害者への支援活動の充実・強化

(1) 災害復興法制の改正と生活再建支援施策の見直し

復興の主体は被災者・被害者であり、復興は人々の失われた基本的権利を回復する「人間の復興」でなければなりません。この理念に基づき、災害復興法制の改正や生活再建支援制度の抜本的改善に向けた取組を更に強化します。

また、今後起こりうる災害時の二重ローン問題(個人向け)救済策の立法化や、住居・就労・健康などの側面における十分な支援施策の策定を求め、更には被災者生活再建支援法の改正や恒久法としての復興基本法の制定に向けた検討を行います。

 

(2) 原発被害者への早期かつ完全な賠償の実現

原発事故による損害の完全な賠償を実現するため、被害者への支援、賠償基準等についての意見表明、原子力損害賠償紛争解決センターの運営への協力などの活動に引き続き取り組みます。また、同センター仲介委員の提示する和解案を東京電力が尊重するよう引き続き求めていきます。

さらに、健康調査の対象者及び調査項目の双方を大幅に拡充して健康被害の正確な把握を求めるとともに、事故再発防止及び損害賠償実現のためには事故状況及び事故原因の徹底的な究明が必須であると考え、継続的な取組を求めます。

 

(3) 自治体、隣接士業などとの緊密な連帯関係の構築

被災者・被害者の救済のため、自治体その他関係諸機関や隣接士業などの専門家団体、更にはNPO団体などとの連携・協働を図るべく、緊密なネットワークを構築するよう努めます。

 

3 放射能被害の拡大を防ぐための制度整備と脱原発への取組

広範な地域に深刻な放射能汚染の被害をもたらした福島第一原子力発電所事故を踏まえ、我が国の原子力推進政策を抜本的に見直し、原子力発電と核燃料サイクルから撤退し、再生可能エネルギーの推進、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化と低炭素化を中核とするエネルギー政策の構築に向けて行動します。

 

第8 日本司法支援センター(法テラス)事業に関する取組

1 民事法律扶助の拡充と適切な運用

昨年、総合法律支援法が改正されましたが、その本格的な施行に向け、認知能力が不十分な高齢者・障がいのある人やDV・ストーカー・児童虐待の被害者が利用しやすい制度となるよう、その周知を図るとともに、適正な運用の実現を目指します。

 

2 法テラスの事業の拡充

法テラスと連携し、法律扶助対象事件の拡大、弁護士業務の実情にも見合った立替基準の適正化、DV事案などの困難案件加算や償還免除の活用・拡大等に取り組みます。

 

3 法律援助事業の国費・公費化に向けた取組

この度、勾留されている全被疑者に対する国選弁護制度の拡大が実現することになりました。これにより法律援助事業として実施していた一部の弁護援助制度が国費化することとなりました。さらに、公的弁護制度の逮捕段階への拡大、国選付添人制度の対象範囲拡大や、人権分野の法律援助7事業の本来事業化等を目指します。

 

4 法テラスと弁護士会の適切な関係の維持

総合法律支援の理念の実現のため、法テラスとの適切な関係を維持しながら、弁護士会とともに引き続き十分な連携・協議を行っていきます。

 

第9 若手会員への支援

1 OJTの実践例の拡大と支援体制の強化

事務所内外で先輩弁護士に相談できる機会を得にくい若手会員が増加していることに鑑み、一部の弁護士会において実施されている若手会員向けの相談窓口やチューター弁護士(弁護士として活動する上で一般的なアドバイス等を行う先輩弁護士)制度等を全国に広めるために有用な情報の収集と共有化に努めます。さらに、パイロット事業として、「弁護士業務支援ホットライン」を継続し、若手会員の業務支援を行います。

 

2 若手会員向け研修の充実、実践基本ゼミの開催などへの支援

若手会員の要望に応じて基礎から応用までの研修コンテンツを充実させ、eラーニングの利用等の促進を図ります。

 

3 経験や情報交換のためのネットワークの拡充と支援

若手会員にとって、先輩会員の経験、業務に必要なノウハウや情報を速やかに得られるためのネットワークの構築が有用です。そこで、このようなネットワーク構築に向けて情報を提供し、支援を行います。

 

4 就業支援・独立開業支援、孤立化防止

司法修習生・若手会員に対する就業支援及び独立開業支援を継続して行います。また、会員数の増加により、他の会員との関係が希薄化しつつある若手会員の孤立化を防止すべく、一部の弁護士会で実施されている独立開業支援のチューター制度や指導委託弁護士制度、クラス別研修制度、グループ別交流会制度などの情報を提供し、総合的な支援を行います。

 

5 若手会員の経済的支援、業務拡大支援の方策の検討と実践

各弁護士会でも会館負担金の減額や延納制度を実施・検討しているところですが、日弁連会費の更なる減額を検討します。また、柔軟性に富み活力に満ちた若手会員と共に、生活困窮者自立支援事業に関する取組など、社会の変化に対応した人権擁護活動を経済的裏付けのある形で実施する事業モデルを発案し、その実現に向けて諸制度を整備します。

 

第10 男女共同参画の推進

第二次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画に基づき、具体的な施策を進めます。

例えば、男女共同参画の推進のためには、会員各自が男女共同参画の意識を高めることが不可欠であり、そのための研修・啓発活動に積極的に取り組みます。

また、日弁連の政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大を目指し、理事者に占める女性会員の割合を計画的に高めていくため、まずは副会長に占める女性会員の割合を高めるために、クオータ制を導入する提案を取りまとめるなど、検討を進めます。

さらに、社会のダイバーシティを推進するために、企業に対して女性会員の社外役員などへの登用を積極的に働きかけるなど、男女間格差を解消する取組を進めます。育児期間中の会費免除制度が活用されるよう、引き続き周知に努めるとともに、ワーク・ライフ・バランスを支援する制度の検討に取り組みます。

 

第11 法教育の充実

市民に自由で公正な民主主義社会の担い手としての法的な考え方を身につけてもらうための法教育は、学習指導要領に一部取り入れられるなど、徐々に広まりつつあるものの、未だ全国あまねく実施されているとは言えません。一方、選挙権年齢が18歳以上へと引き下げられたことに伴い、法教育や、教育現場における弁護士の関わりの重要性が高まっています。さらに、市民、とりわけ子どもたちとの接点が多い法教育の活動は、将来の司法基盤を支える活動とも言え、司法アクセスの促進などにもつながり得る、重要な取組です。

このような問題意識のもと、教員向け・学生向けの各種イベントの企画、教材の開発、政策提言や学校派遣事業といった各種の取組を推進します。

 

第12 司法及び弁護士の国際化の推進

1 日弁連の国際交流の推進

国際司法支援活動、国際交流活動、国際法律業務の発展に向けた活動など幅広い国際活動を積極的に展開しています。昨年2月には日弁連の国際戦略を策定し、グローバル化・国際化の中で、個々の会員が効果的に公益活動を行うとともに、法律サービスを展開できるよう制度的な支援を行っていきます。

本年夏から秋にかけてはLAWASIA(アジア太平洋法律家協会)年次大会、AIJA(若手法曹国際協会)年次大会がそれぞれ日本で開催されることから、日弁連の国際的プレゼンスの更なる向上を目指し活動します。

 

2 中小企業の海外進出支援

中小企業の海外展開については、法的なトラブルに直面するリスクが高い上、紛争が生ずるとそのための費用も高額となる傾向にあります。そこで、中小企業が不測の損害を被らないようにするため、前もって弁護士による法的な助言等を受けることの重要性について、広く周知をしていきます。

また、日弁連は、日本貿易振興機構(JETRO)、東京商工会議所、日本政策金融公庫、国際協力銀行、信金中央金庫と連携し、全国の高等裁判所所在地に神奈川県、京都府、新潟県を加えた11か所を拠点として、中小企業海外展開支援弁護士紹介制度を運営していますが、これを今後も拡充するなどして、中小企業の海外展開におけるリスクの軽減に向けて活動します。

加えて、多くの弁護士が中小企業の海外展開に対応できるようにするため、eラーニングやライブ実務研修といった日弁連自体の研修、あるいは各弁護士会との共催による研修を充実させていきます。

 

3 国際紛争解決ADRのインフラ整備

グローバル化の進展により国際取引が増加する中、取引を巡り紛争が生じた際に、日本企業が裁判外で国際的紛争を迅速適正に解決し得るような制度的・人的・物的インフラ整備についての検討を、関係機関と連携しつつ進めます。

 

4 ハーグ条約事件等渉外家事事件についての取組

2014年に国境を越えた子の連れ去りに関するハーグ条約が我が国において発効し、国際結婚の離婚に伴う子どもの引き渡しなど、様々な渉外家事事件の増加が見込まれます。こうした渉外家事事件に対応できる人材を育成するとともに、渉外家事事件の相談窓口の整備や、在外公館における情報提供などの支援を検討します。

 

5 ABS (Alternative Business Structure)について

2011年頃からイギリス等で新たに弁護士以外の者に、持分や議決権を認める法律事務所の形態であるABSが認められるようになりました。

ABSは非弁護士の影響下にあり、依頼者の利益を第一に、何者からの掣肘も受けずに業務を行うという弁護士のコアバリューを害するおそれがあるとの指摘もあります。

このため、ABSに所属する外国弁護士が日本で外国法事務弁護士として登録することの意味や影響について分析した上で、ABSの所属を規制する外国法事務弁護士の制度的対応を進めるべく、提案を行います。

 

第13 広報の充実

昨年度に続き、新聞、テレビ等のメディアで日弁連の意見や活動を報道していただくため、適時、適切な発信を行うことに力を注ぐとともに、日弁連ホームページ等の媒体を一層充実させ、各種の意見書、活動、イベント等を効果的に広報することに努めます。

また、昨年度に企画したテレビ等を活用した弁護士・弁護士会のイメージアップ広報を展開するとともに、各地の弁護士会との連携・支援をより一層強化し、日弁連の広報戦略を全国に共有する努力を進めます。

さらに、各種パンフレットの活用、出版企画などを進め、より分かりやすい媒体を通じて、弁護士の仕事や役割、弁護士が身近な相談相手であることについて広く社会に理解をいただくことを目指します。

 

第14 弁護士自治を堅持する方策

1 不祥事対策

日弁連は、弁護士不祥事が市民の信頼を大きく揺るがすものであることを踏まえ、多角的な観点から対策を講じてきました。特に昨年度は、預り金等の適正管理の強化策(現行規程の一部改正)及び横領被害に対する事後的対策として依頼者見舞金制度の導入を臨時総会において承認し(いずれも本年10月施行)、不祥事対策を制度面から更に一歩前進させました。

また、弁護士会の市民窓口及び紛議調停の機能強化、懲戒制度の運用面での工夫(いわゆる会請求や事案の事前公表等)並びに懲戒事例データベースの整備検討など、実務面の対策を推進するとともに、会員への支援策(メンタルヘルスカウンセリングや会員サポート窓口等)の充実を図ります。

今後も不祥事の予防、拡大防止及び救済の各時点における総合的な不祥事対策の適正かつ実効的な運用を目指す取組を継続します。

 

2 弁護士職務基本規程の見直し

弁護士の倫理と行為規範を定めた弁護士職務基本規程は、施行後12年を経過しました。弁護士の存在と役割が広く社会に認識され、弁護士が活躍の場を多種・多様な分野へと拡げつつある中で、組織内弁護士を巡る規範の在り方などを含め、同規程制定後に出された弁護士倫理を巡る判例や懲戒議決例を踏まえつつ、十分な会内論議を行った上で、必要な改正に向けた検討を進めていきます。

 

3 適正な会財政と組織改革の検討

日弁連が基本的に会費によって運営されていることを踏まえ、会務の発展と弁護士会・会員への支援の充実を図りつつ、財政の見直しと経費削減を行うとともに、組織の合理化を進めます。

 

4 弁護士法第72条と隣接士業との協働

弁護士法第72条は、高い法的素養と倫理観を備えた弁護士に法律事務を独占させる制度を採用することで、市民の権利保護を確保するものです。同条の趣旨が他の法律により浸食されることがないよう注意を払うとともに、その解釈適用問題については引き続き検討・議論を進めます。また、同条の違反事例についての情報を収集・集約し、違反に適切に対処する仕組みを検討します。

隣接士業と適切な連携を図ることに関しては、それが市民の権利・利益に合致するか否かという観点に基づいて対応します。

 

5 FATF第4次相互審査に向けた対応

日弁連は、弁護士が採るべき犯罪収益移転防止(いわゆるマネー・ローンダリング対策)のための措置として、国際機関であるFATF(金融活動作業部会)の勧告に基づき、「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程及び同規則」を定めており、引き続き職務の適正の確保を図っていきます。

また、2012年にFATFで採択された第4次勧告に基づく第4次相互審査(勧告の遵守状況及び有効性の審査)が各国に対して順次実施されており、日本に対しては数年後に実施される予定です。日弁連は、会員の理解・協力を得ながら、第4次相互審査に適切に対応できるよう準備を進めていきます。