労働訴訟改革

バブル経済の崩壊以降、厳しい経済・雇用事情が続く中、リストラや企業組織の再編が進むとともに、企業の労務管理の多様化、就業形態・就業意識の多様化が進展し、このような状況の下、解雇や未払い賃金等をめぐる企業と個々の従業員間の紛争(個別的労働紛争)は増えつづけています。


そこで、司法制度改革の一環として、このような個別的労働紛争を速やかに、かつ紛争の実情に即した解決を図るための新しい紛争解決制度の構築について審議が重ねられました。その結果、2004年4月28日に「労働審判法案」が可決成立、同年5月12日に平成16年法律第45号として公布され、「労働審判制度」が誕生しました。同法律は2006年4月1日に施行されました。


労働審判制度の概要(一部要約)は以下のとおりです。


1. 制度の趣旨

  • 個別労働関係事件について、3回以内の期日で、裁判官と雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者が、当該事件について審理し、調停による解決の見込みがある場合にはこれを試みつつ、合議により、権利義務関係を踏まえて事件の内容に即した解決案を決すること(労働審判)によって事件の解決を図る手続(労働審判手続)で、あわせて、これと訴訟手続とを連携させることにより、事件の内容に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。

2. 労働審判手続の主体

  • 裁判官である審判官1名、労働者及び使用者として労使関係の専門的知識経験を有する労働審判員各1名。
  • 決議要件は過半数の意見による。

3. 対象

  • 個別労働関係に係る権利関係をめぐる紛争。

4. 手続

  • 相手方の意向にかかわらず手続を進行させ、調停による解決及び労働審判を行う。
  • 調停による解決の見込みがある場合にはこれを試みつつ、速やかに争点及び証拠の整理等を行って、審理をすすめ、調停が成立しない場合には権利関係を踏まえつつ手続きの経過を踏まえて審判を決する。
  • 3回以内の審理を原則とする。
  • 申立又は職権により民事訴訟の例による証拠調べ等をすることができる。
  • 手続の指揮は労働審判官が行う。
  • 調停が成立した場合には、裁判上の和解と同一の効力を有するものとする。
  • 手続は公開しないが、労働審判委員会は相当と認める者の傍聴を許すことができる。

5. 労働審判

  • 権利関係及び労働審判手続きの経過を踏まえて労働審判を行う。原則として、主文及び理由の要旨を記載した書面で行う。
  • 不服のある当事者は、2週間以内に異議の申立てができ、その場合、労働審判は効力を失う。
  • 確定した労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
  • 労働審判委員会は、事案の性質上、労働審判を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判を行うことなく労働審判手続を終了させることができる。

6. 訴訟手続との連携

  • 訴え提起の擬制…労働審判に対し異議が申し立てられた場合、労働審判手続の申立時に、労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。労働審判を行うことなく手続を終了させた場合も同様とする。
  • 労働審判の申立があった事件について訴訟が係属するときは、受訴裁判所は労働審判手続が終了するまで訴訟手続きを中止することができる。

7. その他

  • 管轄…相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所を管轄する地方裁判所、労働者が事業主との間の労働契約に基づいて現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の所在地を管轄する地方裁判所、又は、当事者が合意で定める地方裁判所。
  • その性質に反しない限り、非訟事件手続法及び民事調停法等を必要な範囲で準用する。

以上