女子差別撤廃条約実施状況 第4回報告 (仮訳)

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はじめに

1 本報告は、我が国が1985年に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「女子差別撤廃条約」又は「本条約」と略称)の第18条の規定に基づき国連事務総長に提出する第4回報告である。


2 我が国は第1回報告(CEDAW/C/5/add.48)を1987年3月に提出し、同報告は、1988年2月に第7回女子差別撤廃委員会において審議された。更に、第2回報告(CEDAW/C/JPN/2)を1992年2月に、また第3回報告(CEDAW/C/JPN/3)を1993年10月に提出し、これらの報告は1994年1月の第13回女子差別撤廃委員会において、同時に審議された。


3 本報告は、第3回報告の審議終了時点(1994年1月29日)から1998年5月末までの約4年間の我が国における女子差別撤廃条約の実施に関する進展を中心に報告している。


4 本報告の作成にあたっては第2回及び第3回報告に対する最終コメントに留意し、第3回目の報告作成時よりもより一層広範囲の非政府機関へ照会を行い、報告に反映させるよう努めた。
 すなわち、1997年7月には、各都道府県・政令指定都市及び男女共同参画宣言都市、女性団体を始めとする各種団体、女性国会議員、男女共同参画審議会委員等有識者に「女子差別撤廃条約第4回報告書に我が国の現状として盛り込むべき事項」及び「女子差別撤廃条約第4回報告書に関連するNGO等の活動報告」について書面で照会したほか、更に同年8月には本報告書の取りまとめ事務局である内閣総理大臣官房男女共同参画室のインターネットホームページを用いて、広く一般国民に同様の照会を行った。また同年8月26日には、我が国の女性の地位向上のためのナショナルマシーナリーの機関である、男女共同参画推進連携会議(えがりてネットワーク)が本報告書に盛り込むべき事項について聞く会を開催し、出席した約110名のNGO等から直に意見聴取を行った。本報告書の執筆にあたっては、これらの回答結果を参考とした。


5 NGOから提出された回答・意見は、総件数215件(内 団体83件、個人132件)であった。政府としては、件数が多く寄せられた項目については、特に記述するよう努めた。


6 我が国政府は、今後とも、本条約の締約国として女性に対するあらゆる差別を取り除き、男女共同参画社会の実現に向けて努力する決意である。


第1部 日本女性の現状

1 人口及び人口動態

 1996年の我が国の人口は約1億2,586万人、うち女性が約6,418万人である。
女性は男性に比べ約249万人多く、総人口の51.0%を占めている。
 我が国では平均寿命の伸長と少子化の進行により、21世紀半ばには、国民の約3人に1人が65歳以上という、超高齢社会が到来することが予測されている。特に65歳以上の老年人口に占める女性の割合は、1996年では58.7%であり、この割合は21世紀に向けて今後大きく増加すると予測されている。平均寿命は、1996年現在、女性83.59歳、男性77.01歳であり、男女ともに世界トップクラスである。1996年の出生数は約120万7千人、出生率(人口千対)は9.7で、出生数及び出生率共に前年に比べ上昇した。この結果、1996年の合計特殊出生率(一人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとした時の子ども数で、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は現在の人口を将来も維持するのに必要な2.08を大きく下回る1.43となっている。前回の報告にも触れたように、出生率の低下は女性の晩婚化の進行と生涯未婚率の上昇によるものであり、その要因として、特に女性の社会進出が進み育児の負担感、仕事との両立の負担感が増加していること、また男女共に結婚に対する価値観が変化してきたこと等が挙げられている。
 1996年の婚姻件数は79万5,080件、婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)は6.4で、婚姻件数及び婚姻率共に、前年(1995年は79万1,888件、率は6.4)並みである。平均初婚年齢は妻26.4歳、夫28.5歳で両者共に一貫して上昇傾向となっている。
 離婚については、1996年には20万7千件、離婚率(人口千人当たりの離婚件数)は1.66で、離婚件数及び離婚率共に、上昇している。各年齢層とも離婚率は上昇してきており、特に20歳代の離婚率の上昇は急速である。世帯規模については、一般世帯の平均世帯人員は減少傾向にあり、1995年には2.82人となった。一般世帯をその世帯員相互の続柄によって家族類型に分類してみると、1995年では、世帯主と親族関係にある世帯員のいる「親族世帯」が一般世帯の74.1%を占め、単独世帯が25.6%を占めている。また65歳以上の高齢の親族がいる世帯は一般世帯の29.1%を占めており、一貫して増加傾向にある。
 1996年の妊産婦死亡率は出生十万対6.0であり、減少傾向にある。
 身体障害児・者数は1996年には約320万人であり、そのうち女性の在宅身体障害者数は約130万人、男性の当該数は約150万人である。また精神薄弱児・者数は1995年には約41万人であり、そのうち女性の在宅精神薄弱児・者数は約12万人、男性の当該数は17万人である。


2 教 育

 1997年の女子の高等学校等への進学率は97.0%(男子94.8%)であり、1969 年以来男子のそれを上回っている。女子の大学・短期大学への進学率も年々上昇しており、1997年には女子48.9%、男子45.8%と1989年以来男子のそれを上回っている。大学のみの進学率は1997年には女子26.0%、男子43.4%といまだに男女間で開きがあるが、第3回政府報告書に記載した1992年(女子17.3%、男子35.2%)に比べると男女差が縮小している。
 1997年の大学の学部における関係学科別の女子比率を見てみると、女子が過半数を占めている学科は家政96.5%、芸術67.8%、人文科学67.4%、教育58.3%などとなっている。一方、女子の占める割合が低い学科について1992年と比較すると、伸びているのは、社会科学23.9%(1992年は17.4%)、農学38.6%(同26.9%)、理学25.2%(同19.8%)、工学9.0%(同5.5%)などである。
 1997年には、短期大学における女性教員数は8,163人(1992年8,141人)、教員総数の中で女子の占める割合は41.1%(同38.5%)となっており、1992年と比較すると人数、割合共に増加の傾向にある。大学における女性教員数は16,564人(同12,380人)、教員総数の中で女子の占める割合は11.7%(同9.6%)となっており、1992年と比較すると人数、割合共に上昇している。
 1996年の短期大学卒業者の就職率は、女子が66.5%、男子が56.1%で女子の方が高い。大学卒業者の就職率においては女子が63.5%、男子が67.1%と男子がわずかに上回っている。進学者等を除いた卒業生の中で就職する者の割合でみると、1991年を頂点に男女共に減少傾向にあり、短期大学卒業者については女子70.5%、男子67.2%、大学卒業者については女子68.3%、男子76.7%となっている。
 第3回報告書提出以降、上述の通り、教育分野、特に高等教育分野における女子の進学率は、上昇傾向にある。また、専攻分野については、従来女子の占める割合が低いとされていた学科における女子の占める割合が増加している。
 さらに、教育の場における男女の地位について、「男女共同参画に関する世論調査」(総理府:1995年7月実施)では、学校教育において男女の地位は平等であると考えている者は、女性62.3%、男性69.1%、となっている。これを職場において男女の地位が平等と思う女性19.2%、男性32.3%、家庭生活において男女の地位が平等と思う女性31.5%、男性49.0%といった項目と比較すると、学校教育は他の場と比較して男女平等感が最も高い場となっている。
 全体的に、教育面においては、男女間の格差は、依然として存在するものの、徐々に縮小する傾向が見られる。


3 就 業

 1997年の女性の労働力人口(就業者+完全失業者)は2,760万人で、増加傾向 にあり、労働力人口総数に占める女性の割合は、40.7%であった。1997年の女性労働力人口のうち就業者は2,665万人、完全失業者は95万人、完全失業率は3.4% (男性も3.4%)であった。
 また、女性の労働力率は50.4%と3年ぶりに上昇し、男性の労働力率は77.7%で前年と同率であった。女性の労働力率を年齢階級別にみると、20~24歳層(73.4%)と45~49歳層(72.2%)を左右のピークとして、30~34歳層(56.2%)をボトムとするM字型の曲線を描いている。
 これを10年前(1987年)と比べると、進学率の上昇の影響で20~24歳層で低下しているほかは、いずれの年齢層においても労働力率は高まり、M字型曲線は全体的に上方にシフトしている。特に、25~29歳層では大幅に上昇しているほか、50~54歳層及び55~59歳層の中高年層での上昇が大きくなっている。
 配偶関係別に女性の労働力率を見ると、未婚では61.2%、有配偶では51.3%、死別・離別では31.7%となっている。
 従業上の地位別に女性就業者数の割合をみると、雇用者が2,127万人(女性の就業者総数に占める割合79.8%)、家族従業者が308万人(同11.6%)、自営業主が223万人(同8.4%)であった。自営業主及び家族従業者は減少傾向が続く一方で、雇用者は増加を続けており、就業者に占める雇用者の割合は年々高まってきている。
 雇用者数全体に占める女性雇用者の割合も年々増加しており、1997年には39.5%となっている。
 1997年の女性雇用者数を業種別にみると、サービス業が737万人(女性の雇用者総数に占める割合34.6%)で最も多く、次いで卸売・小売業、飲食店が586万人(同27.6%)、製造業が451万人(同21.2%)となっており、これら3業種で女性雇用者の83.4%を占めている。元々女性比率の高いサービス業での増加傾向が顕著であり、卸売・小売業、飲食店でも増加している。これに対し、製造業では5年連続で減少しており、金融・保険業でも2年連続で減少した。
 1997年の女性雇用者数を職業別に見ると、事務従業者725万人(女性の雇用者総数に占める割合34.1%)、技能工、製造・建設作業者371万人(同17.4%)で過半数を占めている。また、専門的・技術的職業従事者326万人(同15.3%)も増加してきている。
 職業別の女性比率を見ると、事務従業者が59.7%、保安職業・サービス職業従事者が53.9%と半数を超え、次いで専門的・技術的職業従事者が45.2%、労務作業者が43.1%となっており、女性比率を10年前(1987年)と比較すると事務従業者の上昇幅が最も大きい。また、管理職従事者の女性比率は、1992年の7.9%から1997年の9.5%へと、水準は低いものの上昇している。
 また、1997年の女性の平均勤続年数は8.4年で、男性の13.3年に比較すると短いものの、1992年の7.4年に比べて1.0年伸びている。女性雇用者の中高年齢化も進んでおり、35歳以上の者の割合は1997年で60.1%となった。女性雇用者に占める既婚者の割合も増加しており、1997年には67.0%に達した。
 賃金については1997年6月のパートタイム労働者を除く雇用者の賃金で見た場合には、女性の所定内給与額は男性を100とすると63.1となっている。このような男女間の賃金の差は、勤続年数、学歴、就業分野、職階、労働時間等の諸要因によってもたらされている。そこで、勤続年数、年齢、学歴について条件を同一にした標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職して同一企業に継続勤務している労働者)所定内給与額を見ると、1997年において、大卒の場合、20~24歳では男性を100とした場合、女性は95.1であり、もっとも差の大きい45~49歳においては男性を100とした場合、女性は81.8である。
 労働時間について見ると、1997年の女性常用労働者1人平均月間総実労働時間は事業所規模30人以上で142.9時間となっており、うち所定内労働時間は137.0時間、所定外労働時間は5.9時間であった。一方、男性の総実労働時間(事業所規模30人以上)は166.8時間で、うち所定内労働時間は150.7時間、所定外労働時間は16.1時間であった。
 女性の労働組合員数については、1997年には346万人で1992年(352万人)よりやや減少している。一方、組合員総数中に占める女性の割合は28.4%であり、1992年(28.2%)よりわずかながら上昇している。
 パートタイム労働者は近年著しく増加し、1997年には週間就業時間が35時間未満の雇用者数(非農林業従業者)は1,114万人となっている。このうち女性の占める割合は67.0%であり、女性雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は35.9%である。また、パートタイム労働者の就業実態を見ると、職種、職務内容や就業意識の面において多様化が進んでいる。


4 農林漁業に従事する女性

 農林漁業に従事している女性は、1995年には286万人で、男性204万人と比較 してわずかに多い。うち、農業に関しては、1997年には222万7千人で、全農業従事者の56.7%を女性が占めている。労働報酬についてみると、1996年の農業従 事者で、報酬、給与等を受け取っていない女性は26.7%である。女性の社会活動への参加、地域の農林水産業に関する方針決定の場への参画等については、依然として低調ではあるものの、近年徐々に状況が改善されてきている


5 男女共同参画に関する世論調査結果

 政府が1995年7月に行った男女共同参画に関する世論調査によると、各分野で男女の地位は平等になっていると思うかどうか聞いた結果は、男女とも半数以上が「平等」と答えた分野は、学校教育の場(女性62.3%、男性69.1%)のみであり、他の分野においては、男性の方が優遇されているというものが男女ともに多く、特に社会全体(女性79.8%、男性70.0%)、社会通念・慣習・しきたりなど(女性78.7%、男性74.9%)、政治の場(女性71.2%、男性61.6%)で多くなっている。(統計資料38参照)。
 また、政府が1997年9月に行った男女共同参画社会に関する世論調査によると、男性は家庭よりも仕事を優先する方が望ましいとする考えが過半数を占めるのに対し(仕事を優先62.4%)、女性は仕事よりも家庭を優先する又は家庭と仕事を同じように両立することが望ましいとする考えが大多数であり(家庭を優先45.0%、家庭と仕事を両立41.2%)、また、「女性は仕事をもつのはよいが、家事・育児はきちんとすべきである」という考えに賛成する者が依然として多数を占める(賛成86.4%)。性別にみると、女性は仕事よりも家庭を優先する又は家庭と仕事を同じように両立すると答えた女性は男性よりも多く、女性自らが家庭責任を感じていることが表れている。
 一方、1992年11月に行った男女平等に関する世論調査の結果と比較すると、「女 性は結婚したら、自分自身のことより夫や子どもなど家族を中心に考えて生活した方がよい」という考え方に賛成と答えた者は男女ともに減少し、また、「一般に、今の社会では離婚すると女性の方が不利である」と答える者が増えてはいるものの、「結婚しても相手に満足できない時は離婚すればよい」と考えている者は増えるなど、考え方が従来より柔軟になり、家庭観は大きく変化している。
 (統計資料39 1)2)3)参照)


6 民間女性団体(NGO)等の活動

(1)国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会
 1975年の国際婦人年以降、女性の団体の活動は多様な分野にわたって活発に行われており、さらに、1995年の第4回世界女性会議を契機に全国各地に数多く誕生した女性の様々な団体、グループが草の根的な活動を展開している。
 全国的な規模を持つ女性の団体としては、国際婦人年を契機に41団体が初めて連絡協議会組織を結成し、1975年11月、「国際婦人年日本大会」を開催して、我が国における行動計画の策定などに関する決議を行った。その後、これらの団体は「国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会」(以下、「国際婦人年連絡会」という。)を組織し、女性の地位向上を目指して積極的な活動を展開している。国際婦人年連絡会は、1998年4月現在、51団体により構成されている。
 国際婦人年連絡会は、北京会議の後、1995年11月に、「21世紀に向けて-NGO日本女性大会」を開催し、6分野から成る民間行動目標を採択した。1996年4月 には、「七婦人団体議会活動連絡委員会」との共催により、女性参政権行使50周年記念集会を開催し、一層の女性の政治参画の促進を訴えた。
 また、1997年10月には連絡会代表から、内閣官房長官(男女共同参画担当大 臣)に対し、あらゆる分野への女性の参画の確保、総合的な女性施策を推進するための内閣総理大臣直属の組織と機能強化及び男女共同参画推進の実現を促進するための基本的な法律の制度についての要望を提出した。


(2) その他のNGOの動き
 上述のNGOのほか、女子差別撤廃条約の研究・普及活動を行っている国際婦人の地位協会など、各地で活動を展開している多数の女性団体やグループが存在している。また、北京会議参加を機に新たな団体、北京JACが結成されるなど、日本のNGOをはじめグラスルーツの人々の間には、女性の地位の向上について更に一層の関心が深まっており、近年では都道府県・市町村のレベルにおいて、女性問題に携わる官民の連絡会議形式の組織が作られるなどの動きも出てきているほか、女性問題に関するネットワーク型組織が新たな活動形態として誕生しつつある。また、北京宣言及び行動綱領に基づく政府や地方公共団体の男女共同参画社会づくりのための諸施策や活動に対し様々な意見・要望も出されている。


7 男女共同参画推進本部機構

 男女共同参画社会の実現に向けて、広範多岐にわたる関連施策の総合的な推進に当たる男女共同参画推進本部、内閣総理大臣及び関係各大臣の諮問機関である男女共同参画審議会を中心に国の取組が進められており、これらの組織に加えて、国民各界各層との連携を図る男女共同参画推進連携会議が男女共同参画社会づくりを全国民的な運動として展開している。本部、審議会及び連携会議の活動が有機的に行われるよう、内閣官房、総理府(男女共同参画室)その他の関係行政機関が相互に緊密な連携を保ちつつ、事務的なサポートを行っている。(男女共同参画推進本部機構図は次の通りである。)
 第3回報告審議以後の機構の変遷等については、第2部各論の 2 第3条参照。



8 国内行動計画

 1996年7月、男女共同参画審議会(男女共同参画審議会令(1994年6月24日政令第190号)に基づき設置)は、広く国民各層の意見を求めつつ、第4回世界女性会議の成果を踏まえ、内閣総理大臣に対して「男女共同参画ビジョン」を答申し、男女共同参画社会実現のため、我が国の経済・社会の変化を踏まえつつ、おおむね2010年までを念頭に、目指すべき方向とそれに至る道筋を提示した。
 そこで、前回(第3回)報告において報告した「西暦2000年に向けての新国内行動計画」(1987年策定)の改定に当たっては、このビジョンにおいて示された方針を踏まえつつ、新国内行動計画第1次改定(1991年)の成果や課題を継承しつつも、これを抜本的に改正した新たな国内行動計画を策定することとし、1996年12月に、西暦2000年(平成12年)度までに推進すべき計画として「男女共同参画2000年プラン-男女共同参画社会の形成の促進に関する平成12年(西暦2000年)度までの国内行動計画-」と題する国内行動計画を決定し、北京行動綱領(パラグラフ297)の要請にも応えた。
 プランの策定に当たっては、団体や個人から寄せられた約1,100件の意見・要望を参考にするなど、国民各界各層の声の取り入れを図った。またその構成は(1)男女共同参画を推進する社会システムの構築、(2)職場・家庭・地域における男女共同参画の実現、(3)女性の人権が推進・擁護される社会の形成、(4)地球社会の「平等・開発・平和」への貢献、という4つの基本目標と、11の重点目標から成っている。なお、今回、新たな課題として、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し」、「女性に対するあらゆる暴力の根絶」、「メディアにおける女性の人権の尊重」、「生涯を通じた女性の健康支援」が重点目標として掲げられた。政府は、現在、このプランに従い、男女共同参画社会づくりのための諸施策の推進に努めているところである。


9 地方公共団体等の活動例

 地方公共団体においても男女共同参画に関する行政が積極的に推進されており、全47都道府県・12指定都市に男女共同参画施策の企画・調整のための部・課(室)が置かれ、男女共同参画施策推進のための行動計画が策定されている(1998年4月現在)。また、市区町村(指定都市を除く。)における行動計画策定率は、3243市区町村中382(11.8%)(1997年4月現在)となっている。


10 主な法令改正

 本報告書該当期間に行われた主な法令改正の概要は次の通りであり、詳細は各論において報告する。


(1)児童手当法の一部を改正する法律 (1994.3.31公布)
 各種育児支援サービス等の拡充に要する財源を確保するため、児童手当の現金給付に要する費用の一部に充当する事業主からの拠出金に加え、新たに児童育成事業に要する費用に充てるための拠出金を事業主から徴収することとするもので、1994年4月1日から施行された。
 (詳細については各論 10 第11条2(c)参照)


(2)一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(1994.6.15公布)
 週40時間勤務制の原則の明示、介護休暇制度の新設等を目的とした一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律が1994年9月から施行された。


(3)男女共同参画審議会令(1994.6.24公布・施行)
 内閣総理大臣の諮問に応じて、男女共同参画社会の形成に関する基本的かつ総合的な事項を調査審議し、及び当該諮問に関連する事項について、内閣総理大臣に意見を述べることを所掌とする男女共同参画審議会が、1997年3月31日までの期限で設置された。
 (詳細については各論 2 第3条参照)


(4)総理府本府組織令の一部を改正する政令(1994.6.24公布・施行)
 内閣総理大臣官房に男女共同参画室を置くこと、またその所掌業務、更に総理府本府に男女共同参画審議会を置くこととした。
 (詳細については各論 2 第3条参照)


(5)雇用保険法等の一部を改正する法律(1994.6.29公布)
 育児休業制度の義務化を踏まえ、育児休業を取得する労働者の雇用の継続を図るため、育児休業給付を行うこととし、1995年4月1日より施行された。


(6)育児休業等に関する法律の一部を改正する法律 (1995.6.9公布)
 従来の「育児休業等に関する法律」に、介護休業制度及び介護のための勤務時間 の短縮等の措置並びに育児や家族の介護を行う労働者のために国等の行う支援措置を新たに盛り込むことを内容とし、1995年10月1日から一部を除き施行されている。(1999年4月1日全面施行)
 (詳細については各論 10 第11条2(c)参照)


(7)外務公務員法の一部を改正する法律(1996.5.9公布・施行)
 外務公務員の欠格事由を定めるため改正された。
 (詳細については、各論 8 第9条で参照)


(8)優生保護法の一部を改正する法律(1996.6.26公布)
 不良な子孫の出生を防止するという優生思想に基づく部分が障害者の差別となっていること等にかんがみ、人工妊娠中絶等に関する諸規定のうち優生思想に基づく諸規定を削除し、母体保護法と改名し、1996年9月26日施行された。
 (詳細については、各論 11 第12条で参照)


(9)男女共同参画審議会設置法(1997.3.26公布)
 男女共同参画社会の形成の促進に資するため、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を調査審議する機関として、総理府に男女共同参画審議会を置くものであり、1997年4月1日から施行された。
 (詳細については各論 2 第3条参照)


(10)児童福祉法の一部を改正する法律(1997.6.11公布)
 近年の少子化の進行、夫婦共働き家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下等児童と家庭をとりまく状況の変化を踏まえ、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う児童の健全な育成と自立を支援するため、児童家庭福祉制度の再構築を行い、1998年4月1日から施行された。
 (詳細については、各論10 第11条2(c)参照)


(11)男女雇用機会均等法等の一部を改正する法律(1997.6.18公布)
 男女雇用機会均等法の強化、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制の解消、母性保護措置の充実等を盛り込んだものであり、1999年4月1日から施行される予定(一部は施行済)である。
 (詳細については、各論 10 第11条 1(a)~(c)(f)参照)


(12)雇用保険法等の一部を改正する法律(1998.3.31公布)
 1999年4月から介護休業制度が義務化されることを踏まえ、介護休業を取得する労働者の雇用の継続を図るため、介護休業給付を行うこととし、1999年4月1日から施行される予定である。


(13)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(1998.5.8公布)
 風俗営業等に関して行われる売春を防止するための規定、性を売り物とする無店舗型の営業に対する規制等を盛り込んだものであり、公布の日から1年以内(一部については公布の日から半年以内)で政令で定める日から施行されることとなっている。
 (詳細については、各論 1 第2条(a)、5 第6条 参照)


第2部 各 論

第2条

(1)女性に対する暴力
 本条では、女性に対する暴力に関する我が国の取組み及び被害女性への救済を中心に報告する。


1)性犯罪
 (i) 法制・対策
 女性の性的自由を侵害する行為については、強制わいせつ罪(刑法176条、6月以上7年以下の懲役)、強姦罪(刑法177条、2年以上の有期懲役)、及び強姦致傷罪(刑法181条、無期又は3年以上の有期懲役)等の処罰規定が設けられており、これらの処罰規定を的確に運用している。


 (ii) 強姦及び強制わいせつの現状
 1996年中の強姦の認知件数は1,483件で、1967年の6,393件に比べ4分の1に減少している。その推移をみると、1967年以降1990年まで減少傾向が続き、同年以降1,500件前後となっている。1996年中の強制わいせつの認知件数は4,025件で、1967年の3,416件に比べ約2割の増加となっている。その推移をみると、1986年まで減少傾向が続き、1987年以降増加傾向にあり、1996年は前年比約1割の増加となっている


 (iii) 性犯罪被害者への適切な対応
 女性に対する暴力の根絶に向けて、我が国は、関係規定の厳正な運用を図り、強姦や強制わいせつ等の性犯罪の徹底した取締りを推進しているところである。
 性犯罪は、身体的な被害にとどまらず精神的にも極めて重い被害を与える犯罪であり、しゅう恥心等から被害者が警察に対して被害申告をためらいがちになるため、被害が潜在化する傾向がある。
 そこで、1996年以来、性犯罪被害者の立場に立った適切な対応により被害者の精神的負担の軽減を図るとともに、従来以上に適切かつ強力な性犯罪捜査を推進するため、各都道府県警察の警察本部等に「性犯罪捜査指導官」及び「性犯罪捜査指導係」を設置したほか、女性の警察官による事情聴取や鑑識活動、病院への付添い等精神的負担を緩和する施策や、専門職員等によるカウンセリング体制を強化して被害者の精神的回復を助ける施策を進めている。
 また、公判段階においても、検察官において公判の公開停止、特定傍聴人や被告人の退廷等の措置を裁判所に対して申し出ることにより、被害女性が証言しやすい状況を整えるほか、不適切な質問に対する異議申立て等を行うことにより、被害女性に対する保護を図っている。


 (iv) 被害が潜在化しないための未然防止策
 女性が性犯罪の被害の届出や相談を行いやすいよう、各都道府県警察の警察本部等に「性犯罪被害110番」等性犯罪相談窓口を設置しているほか、刑事手続や各種の救済制度について分かりやすく解説してあるパンフレットを被害者に交付したり、捜査状況や被疑者の処分状況等を適切に連絡し、被害者からの照会に対しても確実に対応するなどの適切な情報提供を行うことによって、被害女性の援助を行っている。
 法務省の人権擁護機関においては、人権相談などで女性に対する暴力が行われているとの情報を得た場合には、人権侵犯事件として調査し、その事実が認められた場合には、行為者に対して人権思想の啓発を行い、暴力行為の中止や再発防止を図るなど被害者の救済に努めている。
 特に1996年7月からは、人権が侵害された場合における被害者の実質的な救済を図る制度として「人権調整専門委員」制度を導入し、被害者に対する救済策の一層の充実を図っている。


2)セクシュアルハラスメント
 女性の性的自由を侵害する行動によるセクシュアルハラスメントに関しては、上記の女性に対する性的暴力に関する処罰規定を的確に運用している。またその他の形態のセクシャルハラスメントに関しては、事案に応じて、暴行罪(刑法208条、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)、脅迫罪(刑法222条、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)、強要罪(刑法223条、3年以下の懲役)、名誉毀損罪(刑法230条1項、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)、侮辱罪(刑法231条、拘留又は科料)等の処罰規定の適用が可能であり、これらの処罰規定を的確に運用している。
 警察では、性犯罪相談窓口等においてセクシュアルハラスメントに関する相談を受けた場合、刑罰法規に触れるものについてはこれらの処罰規定を的確に運用して、加害者の検挙を図り、これ以外についても被害者等の支援を目的とする関係機関・団体を必要に応じて紹介するなどして被害者のニーズに応えるよう努めている。
 また、法務省の人権擁護機関においては、セクシュアルハラスメントが人権侵害行為であるとの認識の普及を図るとともに、人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じてこの問題への取組を推進している。
 教育機関におけるセクシュアルハラスメントについても、近年認識が高まってきており、ガイドラインを作成し、相談窓口を設ける大学が増えるとともに、情報交換や防止に取り組む民間団体のネットワークが形成されている。
 なお、職場におけるセクシュアルハラスメントについては、第11条で記述する。


3)メディアにおける人権の尊重
 (i) 性・暴力表現に対する法制
 性・暴力表現に関しては、事案に応じて、公然わいせつ罪(刑法174条、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)、わいせつ物頒布等罪(刑法175条、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料)のほか、都道府県で制定されている青少年保護育成条例の適用が可能であり、これらの処罰規定を的確に運用している。


 (ii) 性・暴力表現出版物の取締まりの現状
 最近5年間のわいせつ物頒布事犯等の検挙状況は、統計資料44のとおりであり、近年、概ね横ばいで推移している。
 わいせつ物頒布事犯等については、わいせつビデオテープを販売する事犯が主流を占めているが、最近では、パソコン通信やインターネットを利用して不特定多数にわいせつな画像を送信したり、わいせつな画像情報を記録させたCD-ROM等を販売するという新たな形態の事犯が増加している。
 最近4年間のインターネット等のコンピュータ・ネットワークを利用したわいせつ物頒布事犯等の検挙状況は、統計資料45のとおりである。


 (iii) 青少年の保護
 性・暴力表現は、特に青少年の健全育成に悪影響を与えることから、全国46都道府県において制定されている青少年保護育成条例により、性・暴力表現を含む書籍やビデオ等が「有害図書類」として指定され、青少年への販売等について罰則を含んだ規定がある。政府、地方公共団体においては、有害図書類として指定された図書類については、地域住民等と協力して関係業界に対し区分陳列等の徹底を要請しており、その自主的措置の促進を図っているほか、悪質な業者に対する取締りを行っている。また、これらの対策の一層の推進に資するために、その実態や諸外国における取組の動向等について調査研究を行っている。


 (iv) 児童ポルノ
 児童ポルノは、被写体となった少女の人権を侵害するばかりでなく、その後の健全育成に悪影響を与えるおそれがあるので、違法事案に対して厳正な取締りを行っている。


 (v) メディアにおける取組
 「多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会」では、テレビ放送が青少年等に与える影響及びその対策について、自動的に視聴を行わないようにする機能(ペアレンタルロック機能)が有益なものと報告している。
 1996年6月に開始された衛星デジタル放送においては、ペアレンタルロック機能のサービスが自主的に導入され、現在8社がその提供を行っている。
 さらに、1998年度視聴者政策の在り方に関する調査研究を行い、今後の一層の視聴者政策に関する施策について検討しているところである。
 衛星デジタル放送では、性表現等に関する成人向け番組の放送を行う事業者が、倫理に関するガイドラインを自主的に策定し、その規定・基準を守ることを目的としたCS放送成人番組倫理委員会を1996年9月に設立した。
 また、インターネット上の情報流通については、郵政省の研究会において、1997年12月に取りまとめられた「インターネット上の情報流通ルールについて」の報告書において、違法な情報発信に対する現行法の適用やプロバイダーによる自主的対応等、インターネット上の違法・有害情報の流通に関するルールの在り方について、とりまとめられた。
 また、民間団体の取組みとしては、インターネット・プロバイダーを含む通信事業者の団体である社団法人テレコムサービス協会が、郵政省の支援のもと、自主規制やガイドラインの策定に向けて検討作業を重ねた上、1998年2月16日に「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン」を公表した。
 さらに映画については、映倫管理委員会(1956年映画界によって設立され、第3者によって運営されている自主規制機関)が社会の倫理水準を低下させるような映画の提供をきびしく抑制することを目的として、1959年8月に作成した映画倫理規程、1994年5月、1998年5月に改訂した映画倫理規程に基づいて、担当審査員が審査判定している。年少者(18才未満)の鑑賞に適さないものには、その程度に応じて「PG-12」(12歳未満は保護者同伴が望ましい)、「R-15」(15歳未満入場禁止)、「R-18」(18歳未満入場禁止)の指定を実施し、入場を制限している。


4) 性を売り物とする風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)に対する規制
 個室ビデオ、アダルトショップ等の性を売り物とする営業に対しては、風営適正化法により届出制を導入するとともに、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するための年少者の従事制限、年少者の営業所への立ち入らせ禁止等の規制が設けられており、違反行為等に対しては、営業停止処分等の行政的な措置をとることができることとされている。
 また、1998年4月にコンピュータ・ネットワーク上で専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業に対する規制(18歳未満者を客とすることの禁止、街頭における一定の方法での広告宣伝の禁止等)を新設するため、風営適正化法の一部が改正された。


(2)いわゆる従軍慰安婦問題
 いわゆる従軍慰安婦問題については、本条項と直接関連があるわけではないが、1994年1月の第13回女子差別撤廃委員会の審議及び日本の報告書に対する最終コメントに留意し、日本政府の取組について述べることとする。日本政府は、いわゆる従軍慰安婦問題について、1991年12月以降政府として全力を挙げ調査を行い、これまで、1992年7月及び1993年8月の2度にわたって調査結果を発表し、資料 を公表するとともに、機会あるごとに元慰安婦の方々に対するお詫びと反省の気持ちを表明している。また、日本政府は、この問題についての道義的な責任を果たすという観点から、1995年7月のアジア女性基金(以下「基金」)の創設を支援するとともに、「基金」の運営経費の全額負担、募金活動への協力等を通じ「基金」事業を全面的に支援している。日本政府による具体的な支援内容は以下の通り。


1)総理の手紙
 総理は、日本政府を代表して、「基金」による国民的な償いの事業が行われる際に、この問題に関して改めて心からのお詫びと反省の気持ちを表す手紙を直接元慰安婦の方々にお届けすることとしている。


2)国民的な償いの事業
 日本政府は、いわゆる従軍慰安婦問題について、国民の啓発と理解を求める活動を行い、「基金」が行ってきた国民的な償いを行うための民間からの募金活動に最大限協力してきた。
 その結果、国民個人、民間企業、労働団体さらには、政党、閣僚等からの共感を得て、1998年5月現在で、約4億8,300万円の募金が「基金」に集まっており、その額はなお増え続けている。
 「基金」は、1996年7月、韓国、フィリピン、そして台湾における元慰安婦の方々に対して、一人当たり200万円の償い金をお渡しすることを決定し、これまで合計100件以上の申請があり、70名以上の方々に償い金をお届けしている。
 償い金をお渡しするに際しては、「基金」理事長の手紙及び国民から寄せられたメッセージを併せ届けている。


3)政府資金による医療、福祉支援事業
 政府は道義的責任を果たす事業の一つとして、韓国、フィリピン、台湾における元慰安婦の方々に対する基金による医療、福祉支援事業(①住宅改善、②介護サービス、③医療、医薬品補助等、元慰安婦の方々のおかれている実情・希望に沿うものとすべく実施)に対して、5年間を目途として、総額約7億円規模の財政支出を行うこととしており、上記「国民的な償い事業」とあわせて本事業が実施されつつある。


4)インドネシアにおける事業
 インドネシアにおいては、「基金」は元慰安婦個人を対象とした事業ではなく、同国政府から提案のあった高齢者社会福祉推進事業(身寄りのない高齢者で病気や障害により働くことのできない高齢者を収容する施設の整備事業)への支援を行うこととし、政府からの財政支出を受け、事業を実施している。同施設の入居者については、元慰安婦と名乗り出ている方や女性が優先され、また、施設の設置も、元 慰安婦が多く存在したとされる地域に重点的に設置されることとなっている。


5)女性の名誉と尊厳に関わる今日的な問題への積極的な取り組み
 日本政府は、女性に対する暴力などの今日なお存在する女性問題を解決すべく積極的に取り組んでいくことも、将来にむけた日本の責任であると考えており、「基金」が行っている今日的な女性問題の解決に向けた諸活動に資金拠出等の協力を行っている。
 このような活動例としては、今日的な女性問題に関わる国際フォーラムの開催、NGOへの支援事業、各種調査研究事業等がある。


6)歴史の教訓とする努力
 「基金」は、このような問題が二度と繰り返されることのないよう、歴史の教訓として未来に引き継いでいくことを事業の柱の一つとして進めており、慰安婦問題に関連する資料の収集・刊行等を行っている。


7)教育の分野における努力
 日本政府は、いわゆる従軍慰安婦問題について、特に、我が国の次代を担う若者たちが、学校教育を通じて、我が国の近現代史にわたる歴史を正確に理解することを重視しており、中学校及び高校の教科書において、本問題が取り上げられている。


(3)オンブズパーソンの検討
 先に第1部8で述べた答申、「男女共同参画ビジョン」では、「国内本部機構の新たな機能として、男女平等に係わる問題の解決に当たるオンブズパーソンについても、検討すべきである。」と提言され、このビジョンを受けた国内行動計画「男女共同参画2000年プラン」では、「男女平等に係わる問題の解決に当たるオンブズパーソンについて、諸外国における活動実態、関連法制、我が国への導入可能性等に関する調査研究を行う。」こととしている。




2 第3条

 先に本報告第1部7において、我が国の現在の男女共同参画推進本部機構のあらましについて述べたが、ここでは第3回報告審査以降の同機構充実のための我が国の取組みを報告する。


(1)国内本部機構の充実
1)男女共同参画推進本部の体制
 我が国は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の円滑かつ効果的な推進のため、1994年7月に男女共同参画推進本部を設置した。この本部は、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官(男女共同参画担当大臣)を副本部長とし、本部員は全閣僚で構成する。これは、従来総理府に置かれていた婦人問題企画推進本部を改組し、内閣に置いたものであり、構成員も事務次官から閣僚へ格上げした。また、1994年6月に総理府に男女共同参画室を設置した。
 なお、1997年9月に発足した第2次橋本改造内閣において、従来の女性問題担当大臣に代わり男女共同参画担当大臣が置かれることになり、村岡兼造内閣官房長官が指名された。


2)男女共同参画審議会
 1994年6月、政令に基づき、内閣総理大臣の諮問に応じて、男女共同参画社会の形成に関する基本的かつ総合的な事項を調査審議し、及び当該諮問に関連する事項について、内閣総理大臣に意見を述べることを所掌とする男女共同参画審議会が設置された。この審議会は1997年3月31日までの時限の審議会であったが、1997年3月に男女共同参画審議会設置法が成立し、同年4月には、この法律に基づき、存置期限を付さない男女共同参画審議会が設置された。この審議会は、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を調査審議すること、それら諮問に関連する事項について、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。
 1997年6月、男女共同参画審議会は内閣総理大臣より ①男女共同参画社会の実現を促進するための方策に関する基本的事項について、②男女共同参画社会の実現を阻害する売買春その他の女性に対する暴力に関し、国民意識の変化や国際化の進展等に伴う状況の変化に的確に対応するための基本的方策について、の2つの諮問を受けて、「基本問題部会」「女性に対する暴力部会」を設け、それぞれ調査審議をしているところである。
 現在、「基本問題部会」では、男女共同参画社会の実現を促進する基本的な法律について、調査審議中である。
 なお、この審議会は男女のいずれか一方の委員の数は、委員の総数(25人以内)の十分の四未満であってはならないと法律上定められており、現在、女性の委員は約6割を占めている。


3)男女共同参画推進連携会議
 1996年9月には、男女共同参画社会づくりに関し広く各界各層との情報及び意見の交換並びにその他の必要な連携を図り、もって男女共同参画社会づくりに向けての国民的な取組を推進するため、男女共同参画推進連携会議が発足した。同会議は、内閣官房長官が依頼した13名の有識者と、女性団体、経済界、教育界、メディアなどの団体を代表する67名から構成されている。
 同会議の企画委員会は1997年8月26日に、本報告書に盛り込むべき事項について、広くNGO等から直接意見を聞く会を主催し、また女子差別撤廃委員会の報告会を毎回開催するなど、NGOとの連携を図っている。


4)行政改革会議最終報告
 1996年11月、複雑多岐にわたる行政の課題に柔軟かつ的確に対応するため、必要な国の行政機関の再編・統合の推進に関する基本的・総合的な事項を調査審議するため、行政改革会議が設立された。本会議が1997年12月に提出した最終報告では、男女共同参画の推進に関する機能は、新たに置かれる内閣府に位置づけられた。現在の男女共同参画審議会に替えて、内閣官房長官を会長とする男女共同参画会議が内閣府に置かれ、自ら必要な意見を述べるとともに、施策の実施状況を調査、監視する機関となるとされた。また、内閣府の調整部局のうち男女共同参画に関する施策の総合調整に当たる部門が会議の事務局となる。この部門は、会議事務局の機能を担うほか、総合調整及びこれに伴う事務を行うこととされた。
 なお、ナショナルマシーナリーの充実・強化については、各種の団体等から多くの要望及び署名が寄せられた。


(2)地方公共団体における施策の充実
 我が国には、女性に対する情報提供、女性グループ、団体の自主的活動の場の提供、相談、調査研究等を行う総合的な施設、いわゆる「女性センター」が1998年4月現在、都道府県又は政令指定都市によって全国に39施設、設置されており、地域の女性団体の活動の拠点となっている。


(3)障害を持つ女性のための施策
1)障害者プランの策定
 政府は、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の「アジア太平洋障害者の十年」に呼応して、1993年3月に「障害者対策に関する新長期計画」を策定し、さらに、1995年12月に同計画の具体化を図るための重点施策実施計画として「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」を策定した。「障害者プラン」は、1996年度から2002年度までの7か年計画で数値目標の設定等の施策の具体的目標を盛り込んでおり、同プランに沿って、障害を持つ女性に対しても男性に対してと同様に、全員参加の社会づくりを目指して総合的な施策を推進している。
 具体的施策としては、住まいの確保(グループホーム・福祉ホーム)、働く場の確保(授産施設・福祉工場、障害者雇用支援センターの指定)、介護サービスの充実(ホームヘルパー・ショートステイ等の在宅サービス、身体障害者療護施設等の施設サービス)等多くの分野で具体的な数値目標を明示し、計画期間中の達成に向けて関係省庁で取り組んでいるところである。
 また、バリアフリ-化を目指して、幅の広い歩道の整備や、駅等におけるエレベーター等の計画的な設置・整備についても、具体的な施策目標を明記し推進し、進捗状況については、定期的にフォローアップを行っていくこととしている。
 なお、住民により身近な行政主体である都道府県や市町村にも障害者施策に関する基本計画を策定するよう、1995年5月に政府として指針を示し、地方公共団体においても障害者計画に基づき施策の積極的な推進が図られるよう努めている。


2)障害者週間
 障害を持つ女性も男性も共に自らの自立と社会参加への意欲と国民の障害者問題に対する理解と認識を高めるための運動を展開する期間として、1995年度から毎年12月3日から9日までを「障害者週間」として設定した。


(4)高齢者女性のための施策
 高齢者においては、女性の占める割合が高く、高齢者が直面する問題は女性により大きな影響を与える。
 21世紀初頭の本格的な高齢社会を目前に控え、経済社会の健全な発展を図りつつ、高齢者が健康で、経済的にも自立し、社会の一員として充実した暮らしができる環境の整備をすることが、我が国の最重要課題となっている。このため、1995年に施行された高齢社会対策基本法の規定に基づき、政府が推進すべき基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針として、高齢社会対策大綱が定められ、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたる高齢社会対策が策定され、現在それに基づき様々な施策が展開されている。


1)介護保険制度の創設について
 今後、高齢化の進展に伴い介護を社会的に支える仕組みの創設が必要であることから、1997年12月、介護保険法が成立し、これに基づき準備期間を経て2000年4月から介護保険制度が導入される。この制度により、65歳以上の寝たきりや痴呆の高齢者、40~64歳の老化に伴う疾病で介護が必要な人等に対し、在宅・施設両面にわたる介護サービスが総合的に利用できるようになる。サービス利用については、保険給付の対象費用の1割を利用者が負担する。また、施設入所者については1割負担に加え、食費のうち平均的な家計において負担する額は利用者負担となる。
 今後は、2000年度からの制度の実施に向け、引き続き、新・高齢者保健福祉推進十ヶ年戦略(新ゴールドプラン)に基づき、介護サービス基盤の整備を推進するとともに、保険者である市町村が円滑に介護保険制度を運営できるようにするための、要介護認定のための体制づくり、介護保険事業計画等の策定のための国の基本方針の検討、保険者としての事務処理体制の細部にわたり医療保険福祉審議会等の意見を聞きながら検討を行っていくこととしている。
 なお、家族介護に対する現金給付については、必ずしも適切に介護に結びつくものではなく、家族介護が固定化され、特に女性が家族介護に拘束されるおそれがあることや、現金給付を行うためにかえって介護サービスの拡大が十分図られないおそれがあること等から、介護保険制度においては当面は実施しないこととしている。




3 第4条

(1)国の審議会等委員への女性の登用
 第3回報告で報告したとおり、国の審議会等委員の女性の割合については、おおよそ1995年度までに15%とする目標を設定し鋭意取り組んできたが、1995年度末である1996年3月末には15.5%となり、目標を達成したところである。
 そこで1996年5月に、男女共同参画推進本部は、国際的な目標である30%をおよそ10年程度の間に達成するように引き続き努力を傾注するものとし、当面、2000年度末までのできるだけ早い時期に20%を達成するよう鋭意努めるものとする新たな目標を設定し、現在その目標達成に向けて努力しているところである。なお、1997年9月末現在の女性の割合は、17.4%となっている。


(2)地方公共団体の審議会等委員への女性の登用に関する協力要請
 都道府県・指定都市においても審議会等における女性の登用に係る取組が進められており、それぞれ目標値及び達成年を設定しながら努力しているところである。
 なお、法律により設置されている審議会等における女性委員の割合は、1996年6月1日現在で12.8%となっている。


(3)女性労働者の能力発揮を促進する取組(ポジティブ・アクション)
1)ポジティブ・アクションの促進
 労働省では1996年度に女性労働者の能力発揮促進に関する研究会を開催した。 同研究会は企業が女性の能力発揮を促進し、その活用を図る積極的な取組を行う上で参考となる考え方及び具体的方法の例を示す「女性労働者の能力発揮促進のための企業の自主的取組のためのガイドライン」をとりまとめ、同ガイドラインを活用して、ポジティブ・アクションの重要性、手法について事業主の理解を深め、各企業における取組を促している。
 なお、1997年6月に成立した男女雇用機会均等法の改正法には、ポジティブ・アクションを行う企業に対し、国が相談その他の援助を行うことができる規定が新設された。


2)女性起業家に対する支援
 労働省では事業を起こすことを希望する女性のニーズや起業した女性が遭遇している問題点を把握し、今後、起業を希望する女性のための支援事業を計画的に実施するため、1996年度に研究会を開催し、施策の検討を行った。この結果を踏まえ、1997年度において、女性起業マニュアルの作成等女性起業家の支援施策を展開した。


4 第5条

(1)男女の固定的役割分担意識是正のための広報・啓発活動
 政府は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等を通じ、女性の地位の向上及び男女共同参画社会の形成に向けて、様々な広報活動を行っているほか、1996年10月より、インターネット上にホームページを開設し、国の男女共同参画に関する施策等を国の内外に広く紹介している。
 また、男女共同参画社会づくりに向けて、国民の一層の理解と協力を得るための「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」、地域における諸活動が一層促進されるよう気運を醸成するための「男女共同参画推進地域会議」、自治体を挙げた男女共同参画社会づくりに取り組む「男女共同参画宣言都市」を奨励する「男女共同参画宣言都市奨励事業」を行っているほか、公的機関の策定する広報・出版物を男女共同参画の視点からより望ましいものとするためのガイドラインを策定することとしている。このようなガイドラインについては、既に一部の地方公共団体においても策定されている等、積極的な取組が進められている。なお、1998年度からは新たに全国各地で活躍している女性ヤングリーダーの会議を開催し、地域への浸透を図ることとしている。
 更に、1949年より毎年12月4日から10日までを「人権週間」と定め、各関係機関及び諸団体の協力の下、広く国民に人権意識の高揚を呼びかけている。
 人権週間中には、全国の法務局、地方法務局及び人権擁護委員(1998年1月1日現在13,806人)が集中的に啓発活動を行っている。特に、1975年からは週間中の強調事項の一つとして「女性の地位を高めよう」を掲げ、全国各地で、①講演会・ 座談会・映画会等の開催、②特設人権相談所の開設、③テレビ・ラジオ等による啓発、④新聞・雑誌等による啓発、⑤ポスター・リーフレット・パンフレット等による広報その他各種行事を実施し、女性に関する人権問題についての啓発に努めてい る。
 なお、「婦人週間」については第3回報告で紹介したところであるが、1995年からはそのテーマを「21世紀に向けて自分らしい生き方ができる社会を創ろう」として、全国的にキャンペーン活動を行っている。
 また、男女雇用機会均等の実現を図る上でも、男女の固定的役割分担意識の解消は不可欠であることから、毎年6月の「男女雇用機会均等月間」においても、広報啓発を行っている。


(2)女子差別撤廃条約の普及
 第3条で報告した通り、NGOに毎回女子差別撤廃委員会の報告を行っているほか、政府では本条約を普及させるべく、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(和文)のリーフレット、ポスターを作成し各都道府県、各種女性団体へ配布した。
 また総理府男女共同参画室のホームページへも掲載し、本条約の周知徹底に努めている。


(3)メディアにおける女性の人権尊重
 放送メディアにおいては、放送番組審議機関の設置、視聴者対応窓口の設置、視聴者対応番組の放送等により視聴者と放送事業者との間で意見交換を行う機会を設けることにより番組の適正化を図っており、近年さらに拡充しつつある。


(4)家庭生活への男女の共同参画
1)家庭教育
 家庭教育については、ともすれば母親に責任がゆだねられ、父親の存在感が希薄であるとの指摘がしばしばなされるところである。政府は、1994年度から、父親と母親が協力して家庭教育を行うことの重要性について親や家庭教育関係者などに考えてもらうきっかけ作りの場として「フォーラム家庭教育」を年2回開催している。
 また、1995年より家庭教育資料「明日の家庭教育シリーズ」を作成しており、シリーズ第3 号では、「父親を考える」をテーマに取り上げて、父親も仕事だけでなく家庭や地域社会の活動に積極的に参加することを提案した。
 このほか、1997年度から、都道府県において、地元の企業関係者などを集めて家庭における父親の重要性などについて協議する研究会や、「父親」をテーマにしたフォーラム等を開催するとともに、市町村において、子どもたちが自分の父親の働く姿を見学する「父親の職場参観」を実施したり、父親に家庭教育の意義を理解してもらう家庭教育講座を職場内で開設する事業を支援している。
 また、男女労働者が育児や介護といった家族の一員としての役割を担いながら充実した職業生活を営むことができるよう、職業生活と家庭生活との両立支援のための施策を積極的に推進している。(詳細については、10 第11条2を参照。)


2)育児相談
 家庭や地域の子育て機能の低下がみられる中、子育てに関する不安の増大、子育ての孤立化といった問題がみられる。このため、保育所の育児の経験・知識を活用して地域の子育て家庭に対して幅広く育児相談を行うため、地域子育て支援センター事業を実施しているが、さらに1997年の児童福祉法改正により、保育所が地域住民からの乳幼児等の保育に関する相談に応じ、助言を行うよう努めることとしている。


5 第6条

(1)売買春の現状
1)売春関係事犯の検挙実態、対策法
 売春関係事犯については、売春防止法、児童福祉法、刑法、青少年保護育成条例等の規定の適用が可能であり、これらの規定を的確に運用している。
 最近5年間における売春関係事犯の検挙状況は、統計資料50のとおりであり、増減はあるものの、概ね減少傾向にあるとみることができる。売春防止法違反の検挙状況についても、ほぼ同様の傾向がみられるが、これを態様別にみると、検挙件数は周旋が最も多く、次いで契約、勧誘の順、検挙人員では周旋、勧誘、契約の順となっており、これらの事犯が売春防止法違反の検挙総数全体の90%以上と、その大部分を占めている。
 売春事犯の中でも周旋・契約が特に多くを占めており、これら事犯の多くは、デートクラブ等客の求めに応じて売春婦を派遣する形態のものであるとみられることから、売春の形態は、派遣型売春が主流をなしていることがうかがわれる。また、派遣型売春の手口については、公衆電話ボックス等に売春誘引ビラを貼付するなどの方法で公然と客を求めたり、客との連絡に転送電話や携帯電話を使用するなど、悪質・巧妙化が目立っている。
 これら売春事犯に暴力団が介入するケースは、依然として後を絶たず、1996年中の売春防止法違反の検挙人員に占める暴力団員等の割合は、18.5%(264人)であり、売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。
 また、1998年4月に、風俗営業等に関して行われる売春事犯等を防止するため、不法就労助長罪を犯したことを風俗営業の欠格事由とし、また、接待飲食等営業を営む風俗営業者や、いわゆるブローカーが、接客従業者に対して高額の債務を負わせたり、旅券を保管したりする等の行為の規制を内容とする風営適正化法の一部改正が行われた。


2)性教育及び啓発活動等
 学校教育においては,児童生徒が発達段階に応じ,性に関する科学的な知識を身に付け,生命の大切さを理解し,人間尊重,男女平等の精神に基づく異性観を持ち,望ましい行動がとれるよう,「体育」「保健体育」「理科」「家庭科」「道徳」や「特別活動」などを中心に,性に関する指導の一層の改善・充実に努めている。このため,教師用指導資料の作成や,各種研修会の開催等,各種施策を推進している。
 社会教育においては,市町村が開設する子どもを持つ親を対象とした家庭教育学級では,家庭での性教育や性に関する学習活動が行われているほか,親になる前の新婚・妊娠期の男女を対象にした講座では,妊娠・出産にかかわる問題など,リプロダクティブ・ヘルス・ライツに関することも取り上げられるようになっている。


3)外国人女性の売春
 最近5年間における売春関係事犯に係る国籍別・稼働先別の外国人女性の状況は、統計資料52のとおりである。これら外国人女性の多くは、短期滞在、興行等の在留資格で入国し、バー・キャバレーを始めとする風俗営業店で働き、不法残留等の違法な状態下で売春関係事犯に関与している。こうした状況は、近年は地方都市にも広がりを見せており、その背後には、外国人女性の供給ブローカーとこれを受け入れる国内の暴力団や悪質雇用主の介在が認められ、中には、外国人女性がこれらブローカーに騙されて我が国に連れてこられ、多額の借金を背負わされて、売春を強要される例や本来受領すべき報酬から法外な額を天引きされている例もみられる。
 このような状況を受けて、外国人芸能人の出演先施設を主たる対象として、その活動状況に関する実態調査を全国的に実施した結果、接待行為等の違反状況が認められたことから、外国人芸能人の興行活動を適正化し、業者による人権侵害を防止するため、出入国管理及び難民認定法に基づき定められている法務省令の一部を改正し(1996年9月3日施行)、例えば、外国人芸能人の出演先施設がいわゆる風俗営業店である場合には、専ら接客に従事する従業員が5名以上確保されていることに加え、当該芸能人が客の接待に従事するおそれがないと認められる場合に限って、その受入れを認めることとし、また、その他にも招へい機関及び出演先施設の経営者、常勤職員に関する欠格事項の明確化を図る等の措置も併せて行った。
 また、 「1)売春関係事犯の検挙実態、対策法」のとおり、外国人女性に係る売春事犯を防止するため、風営適正化法の一部が改正された。


4)児童買春
 少女を相手方とする買春行為は、少女の健全な育成を著しく阻害する行為であるばかりでなく、人権を侵害する行為にも当たることから、現行の関係法令(条例を含む)を最大限に活用した取締りに努めている。また、児童買春を許さない社会づくりに向け、児童の権利保護を図るための広報啓発活動についても、関係機関と協力した取組みを行っている。一方、児童買春の被害に遭った少女が安心して警察に相談したり届け出ることができる環境や体制を整備して被害の潜在化の防止を図るとともに、精神的打撃を受けた被害少女については、その打撃を軽減し、早期立ち直りを図るため、専門の職員がカウンセリングの実施等により継続的な支援を行う体制を整備している。
 また、長野県を除く全都道府県で制定されているいわゆる青少年保護育成条例においては、「青少年に対するみだらな性行為又はわいせつな行為」を規制する淫行処罰規定を盛り込んでいる。最近では、東京都で「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を改正し、1997年12月16日から施行した。改正の大きな特徴としては、青少年との金品等の供与等を伴う性交又は性交類似行為(性交等)及び周旋による性交等(買春等)を禁止し、違反した大人を処罰すること等である。
 「援助交際」とは、もともと金銭的対価を受けることを目的とした性的な交際を意味していたが、最近では、特に少女によるこうした行為を指す言葉として使用されており、いわゆる「援助交際」は近年急速に拡大し、少女の側の低年齢化の傾向もみられる。
 警察では、相手方等の大人に対する取締りの徹底を図るとともに、こうした行為の温床となっているテレホンクラブ営業に係る規制条例の適切な運用、被害少女に対する継続的な指導等の実施、売春の誘引行為の厳正な取締り等を行っているほか、少女による性非行を防止するため、少女の規範意識の啓発と非行防止の世論形成を目的とした広報啓発活動を行っている。


5)テレホンクラブ
 近年、電話回線を利用して不特定男女間の通信を媒介するテレホンクラブ、ツーショットダイヤル営業等が増加しており、女子少年が広告チラシを観る等により興味本位に電話をし、淫行等による性的被害、売春等の性的な問題行動の温床となるなどの問題が生じており、青少年に及ぼす影響が憂慮されている。このため、警察では、46都道府県においてテレホンクラブ営業を規制する条例が制定されたのを受け、その適切な運用に努めるとともに、各種違法行為の取締りの強化、関係機関・団体及び地域住民と連携したテレホンクラブの広告物の撤去活動、テレホンクラブに係る性的被害防止のための広報啓発活動等を行っている。


6)途上国へのセックス観光
 本条項は国外における状況について措置をとること締約国に求めるものでは が、我が国としては途上国へのセックス観光との関連で次の措置をとっている。旅行業法第13条第3項においては、旅行地の法令に違反する行為を行うこと及び旅行地の法令に違反するサービスの提供を受けることに旅行業者が関与することを禁止しており、更に、政府においては、日本人海外旅行者の不健全な行動に関与したことが明らかな旅行業者については業者名等を公表すること等を内容とした通達を発出している。
 しかし、近年、日本人旅行者が東南アジア等の途上国において、児童買春のために逮捕されたり、帰国後告訴された例がみられる。1996年8月、スウェーデンのストックホルムで「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」が開催されたことをきっかけに、政府は各省庁連絡会議を開き、児童買春、児童のポルノの 防止を目的として啓発活動を取り進めることとした。この一環として、日本ユニセフ協会の協力を得て、児童買春根絶を訴えるポスターを作成し、空港、港湾、旅券業務窓口等に広く配布し、旅行業協会においても、旅行業者及び旅行者に周知徹底を図っている。
 政府としては、今後とも、日本人海外旅行者の不健全な行動に関与した旅行業者があった場合には、法令に基づき厳正に対処していくこととしている。


(2)売春をめぐる諸状況
1)性を売り物にする風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)について
 我が国では、1980年代前半、性を売り物とする新しい形態の営業が次々と出現し、善良の風俗及び少年の健全な育成に多大の悪影響を与えるようになった。このため、1984年に風俗営業取締法(現、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)を改正して性を売り物とする5種類の営業(統計資料56参照)を風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)と定義し、届出制を導入するとともに、従前からの営業禁止区域等の規制に加え、18歳未満の者等に関する各種行為及び客引きを禁止し、広告、宣伝及び営業時間の制限等の規定を設けるなど規制を大幅に強化した。また、無店舗型の性を売り物とする営業が増加し、かつ、多様化している現状に鑑み、1998年4月、無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗営業に対する規制の新設を含む風営適正化法の一部改正が行われた。
 さらに、パソコンの普及等科学技術の進歩に伴う最近の風俗環境等をめぐる状況の変化に対応して、1996年に政令を改正し、アダルトショップで販売される専ら性的好奇心をそそる物品に、CD-ROM等の電磁的方法による記録に係る記録媒体を追加した。
 最近5年間の風俗関連営業(風営適正化法改正後の店舗型性風俗特殊営業)の営業所数は、統計資料56のとおりである。
 また、風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)として法で規制されているもの以外で、いわゆる性を売り物としている営業のうち、専ら売春を目的とした営業については、売春防止法等の規定を活用して徹底した取締りを行っている。


2)多様化する売春形態
 売春事犯の形態は、その主流をなしているデートクラブ等に係る派遣型売春をはじめとして、個室付浴場での売春、いわゆるピンクバー等における売春等の各種接客業を仮装した売春、さらには外国人女性等が飲食店等に稼働しながら行う売春や娼婦など多様なものがみられる。


3)売春に従事した女性に対する保護
(i) 婦人保護施設等について
 売春防止法の第4章では、性行又は環境に照らして売春を行うおそれのある女子(要保護女子)の保護更生に関する事項を規定している。
 具体的には、売春防止法第34条に基づく婦人相談所、同第35条に基づく婦人相談員及び同第36条に基づく婦人保護施設がある。
 この婦人保護事業においては、昨今の社会経済状況等の変化を踏まえ要保護女子の範囲について、売春経歴を有する女子のほか、家庭関係の破綻、生活の困窮、性被害等社会生活を営むうえで困難な問題を有しているなどの女子が、将来売春を行うことがないよう、その未然防止の見地から保護、援助している。
 婦人相談所では、相談者に対し、婦人保護施設への入所、就職、家庭への送還、福祉事務所への移送等の指導・援助を講じており、要保護女子について、附属する一時保護所における一時的な保護を実施している。
 婦人相談員は全47都道府県や市に設置され、婦人相談所と同様に指導・援助を行っている。
 婦人保護施設は、全国に52ヶ所設置されており、入所者に対し、職業訓練等のサービスを提供している。また保護された女子は、就職・自営、帰宅・帰郷、結婚、他機関・施設への移送等の理由により退所している。


(ii) 少女被害者の保護
 心身ともに未熟な少女が売春に従事することは、少女の人権の侵害につながるばかりでなく、少女に大きな精神的打撃を与え、その後の健やかな成長に悪影響を及ぼすおそれがあることから、警察・法務省では、その精神的打撃を軽減し、早期の立ち直りを図るため、専門の職員がカウンセリングの実施等により継続的な支援を行う体制の整備を図っている。


(iii) 外国人女性の保護
 1996年中、我が国が退去強制手続を執った不法就労外国人女性のうち、売春に従事していた者の数は484人である。
 不法就労外国人問題については我が国及び周辺諸国の経済情勢等から、今後もなお売春に従事する外国人を含め不法就労外国人の流入が継続すると思われるところ、これら外国人の人権に配慮しつつ、その定着化を防止し減少を図っていくとの基本方針の下に所要の体制を整備しつつ、厳正な入国審査の実施、関係機関との連携による悪質事案を中心とした摘発の強化、国内・国外に対する広報活動の強化等の対策を推進している。
 また、売春行為が有する反道徳性や反社会性、風俗・社会・公衆衛生上の影響にかんがみ、その防止に努めるほか、売春を強要されている等の人権侵害事実が判明したときは所要の措置が執られるよう関係機関に通報するなど、その人権の保護に配慮を行っている。
 なお、このような状況により危機に陥った女性を緊急に一時保護する目的で、民間の女性団体が設立したシェルターがあり、外国人女性も多く利用している。
 (日本キリスト教矯風会が開設している「女性の家HELP」など)


4)売春対策審議会の男女共同参画審議会への発展的統合
 1997年3月に成立、同年4月より施行された、男女共同参画審議会設置法に基づき設置された男女共同参画審議会は、従前の売春対策審議会を発展的に統合したものであり、男女共同参画審議会においては、売買春その他の女性に対する暴力に関する事項について、男女共同参画社会の実現という幅広い観点から調査審議を行っているところである。


6 第7条

(1)公的分野における女性の参画状況
 女性が政策・方針決定の場へ参画することは、民主主義の要請であるだけでなく、各種の政策に女性の関心が反映されるための必要条件でもある。しかしながら、我が国では、公的分野でも、私的分野でも、女性の政策・方針決定の場への参画は大変後れた状態であるとかねてから指摘されており、政府としても「男女共同参画の現状と施策」において、UNDP(国連開発計画)のHDI(人間開発指数、GDI(ジェンダー開発指数)、GEM(ジェンダー・エンパワーメント測定)を基に日本の現状を紹介している。それによると日本は、HDIが世界第7位(測定が可能であった175か国中)であるが、GEM(ジェンダー・エンパワーメント測定)では第34位(同94か国中)に後退することから、この現状をとらえて周知し、女性の政策・方針決定過程への参画を更に促すよう努力している。


1)女性国会議員
 我が国の女性国会議員の割合は、増加傾向にあり、参議院では1989年7月以降10%を超えている。1998年3月時点での女性国会議員の数と国会議員全体に占める女性の割合は、衆議院24名、4.8%、参議院36名、14.3%、衆参合計で60名、8.0%となっている。しかし、国際的には低い水準にあり、女性候補者に係るクウォータ制の導入を検討している政党もある。
 また、参議院では創設50周年記念事業の一環として、1997年10月4日、全国の女性有権者を対象に「女性国会」を開催した。1609名の応募者の中から抽選された252名の1日女性議員が、身近な問題から国政に至る諸問題について討議を行い、最後に女性国会宣言がまとめられた。


2)女性閣僚の就任
 第3回報告書提出(1993年10月)以降、5名の女性の閣僚、7名の女性の政務次官が就任した。(1998年5月末日現在)


3)女性地方議会議員、首長等
(i) 地方議会における女性議員の割合
 地方議会における女性議員は、漸増しているものの、1996年12月現在、都道府県議会、市議会、町村議会及び特別区議会の全議員6万4,260名中、女性議員は2,849名で、その割合は4.4%(1992年12月現在3.3%)と依然として女性の参画が低い


(ii) 都道府県及び政令指定都市、市区町村における首長に占める女性
 全国3,255の市区町村の首長については、市長1名、町長1名及び村長1名の計3名が在職している(1997年12月31日現在)。しかし、現在まで47都道府県及び12指定都市の首長はひとりも誕生していない。


(iii) 都道府県の副知事及び指定都市の助役に占める女性
 47都道府県の首長が任命する副知事については、1998年5月現在、女性が7名任命されている。また、12政令指定都市の助役については、1998年5月現在、女性が1名在職している。


4)司法における女性
 女性初の最高裁判事が1名誕生した(1994年2月~1997年9月)。また1997年4月現在、6名の女性裁判所長が在職している。裁判官、検察官、司法試験合格者とも、近年、女性の割合が増えている。


5)女性国家公務員
 第3回報告書で報告した通り、国家公務員(一般職)のうち、1989年度においてすべての職種について女性の受験の制限が撤廃された。毎年度、人事管理官会議の議決を経て総務庁長官が決定する「人事管理運営方針」において、時代の要請である社会の各分野における男女共同参画の推進に適切に対応した国家公務員の人事管理を推進する旨を定め、これを各省庁の人事管理における男女共同参画の推進のための取組の基本方針としている。女性管理職の割合は依然として低い状況にあるが、国家公務員全体及び管理職に占める女性の数、割合は引き続き増加している。
 1997年7月には我が国で初めて、労働省において女性事務次官が誕生した。また、女性の文化庁長官(1994年7月25日~1996年1月19日)、社会保険庁長官(1994年9月1日~1996年7月1日)は既に誕生している。


6)女性地方公務員
 地方公務員(全地方公共団体)に占める女性の数、割合は引き続き増加しており、また、管理職の女性職員(一般行政職)も、その数、割合も全体としては増加の傾向にある。


7)女性の警察官の積極的採用と職域の拡大
 警察においては、複雑多様化する警察事象の中で、女性の警察官の積極的な採用とその職域の拡大を推進しているところである。
 1994年度からは全ての都道府県警察で女性の警察官が誕生し、1997年4月1日現在、約7,800人が勤務している(前年比約630人増、1993年度比約2,400人増)。
 活躍する分野も、次第に拡大され、交通指導取締り、少年補導、女子の留置、広報等のみならず、犯罪捜査、鑑識活動、情報分析、警衛、警護、警備等様々な分野に及んでいる。
 特に、女性に対する性犯罪への対策においては、犯罪被害者の精神的負担の軽減等のために、捜査担当部門や交番、相談室等に女性の警察官を多数配置するなど、女性が主体的に活躍できる分野を拡大している。
 また、1994年2月には、警視庁において初の女性警察署長が、1994年8月には滋賀県警察本部において初の女性課長が誕生するなど、女性の上級幹部の登用も進んでいる


7 第8条

(1)国際分野における政策決定への参画状況
1)国際会議への女性の参加
 各種国際会議への政府代表団等の女性メンバーは増加傾向をたどっているが、我が国の女性が参加した主な国際関係会議の例(1994年度以降、代表又は代表代理、顧問)は次の通りである。
・ 国際労働機関第81回総会(顧問)
・ 国際連合アジア・太平洋経済社会委員会主催 第4回世界女性会議のための地域準備会合閣僚会議(代表)
・ 国際人口・開発会議(顧問)
・ 国際労働機関理事会(常任)(代表代理)
・ 第38回国際原子力機関総会(代表)
・ 国際連合第49回総会(代表代理)
・ 日米環境保護協定に基づく第10回合同企画調整委員会(代表代理)
・ 第5回日米科技協定合同高級委員会(代表)
・ 社会開発首脳会議(顧問)
・ 核兵器の不拡散に関する条約再検討延長会議(代表)
・ 第4回世界女性会議(代表、代表代理)
・ 国際連合第50回総会(代表、代表代理)
・ 児童の商業的性的搾取に反対する世界会議(代表)
・ 国際連合第51回総会(代表、代表代理)
・ 環境と開発に関する国連特別総会(代表)
・ 国際連合第52回総会(代表代理)


2)第4回世界女性会議への参加
 我が国政府は、国連の指針に基づいて「第4回世界女性会議に向けての日本国政府ナショナル・レポート」を1994年6月に作成し、同年9月、英文版レポートを国連に提出し、本会議に向けて日本の女性施策、女性の現状について各国の理解を得るために各種資料を作成し、政府間会議やこれと並行して開催されたNGOフォーラムの参加者へ配付した。また、これらの会議の参加者の我が国女性及び社会全般に対する正しい理解を促進するため、男女共同参画社会の形成に向けて様々な分野で活躍している我が国女性の現状等を図表とパネルで紹介する展示会を開催するとともに、NGOとの交流会を開催し互いに連携・協力関係を築くことに努力した。
  「女性NGOフォーラム北京'95」には、日本のNGOから約5000人が参加し、エンパワーされた女性達が帰国後、さらに全国で活動を展開している。


3)国際機関等への女性の参加
 国連事務局における日本人職員に占める女性の比率は、1997年6月末には57.5%となっている。
 また、国連を含む主な国際機関においては、専門的な事業に携わる日本人の女性職員の数は1994年 には180人であったが、1997年には230人となっており、増加している。1997年10月末現在活躍している日本人の女性幹部職員としては、国連の緒方貞子難民高等弁務官を始め、ILO事務局長補、UNESCO人事局長、国連公共経済行政部長、ESCAP事務局次長等が挙げられる。


4)女性の大使
 我が国の女性の大使は、歴代6人であり、うち1人が現在駐トルコ大使として在任中である。


5)WID(Women in Development:途上国の女性支援)
 我が国は、従来、国連や経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)等をはじめとする国際社会における動向を踏まえながらWIDを推進してきており、また、政府開発援助大綱(1992年6月30日閣議決定)において、援助の効果的実施のための方策のひとつとして、「開発への女性の積極的参加および開発からの女性の受益の確保について十分配慮する」と明記している。
 このような基本的な考え方にたち、我が国は1995年9月に北京で開催された第4回世界女性会議において「WIDイニシアティヴ」を発表した。
 このイニシアティヴは、我が国が開発援助の実施に当たり、就学、就業、出産、経済・社会活動といった女性の一生のすべての段階を通じて、女性の地位の強化と男女格差の是正に配慮し、女性の「教育」、「健康」、「経済・社会活動への参加」の3つの分野を中心に、開発途上国及び他の援助国、国際機関、NGOとも協力しつつ、WID分野の開発援助の拡充に努力していくというものである。
 我が国は、個々の援助案件について、その形成、実施、評価といったすべての段階において、また、技術協力、無償資金協力、有償資金協力、NGO事業補助金など援助形態に応じて女性の参加と受益に配慮するよう努めている。特に、草の根レベルで女性を支援し、きめの細かい援助を実施するために、草の根無償資金協力、NGO事業補助金の活用、青年海外協力隊員の派遣などを実施している。
 なお、「WIDイニシアティヴ」の3つの重点分野の具体的な目標と協力の例は次のとおり。


(i) 教育
 2005年までに、開発途上国における6歳から11歳までの男女格差をなくし、また、2010年までに開発途上国の6歳から11歳までの女子のほぼ全員が男子と同様に学校教育を受けられることを目指す努力を支援する。


(ii) 健康
 2010年までに、妊産婦死亡率(出生10万人当たりの妊産婦の死亡者数)を200以下に下げることを目指す努力を支援する。また、出産に対する圧力を軽減するという観点から、2015年までに、乳児死亡率(出生1000人当たりの1歳未満の子供の死亡者数)を35以下に下げることを目指す努力を支援する。


  (例)基礎保健医療体制の整備、強化/基礎衛生栄養教育の促進/母子保健サービスの強化(乳幼児の健康診断、予防接種、栄養相談)/家族計画の普及/基礎データの整備能力の向上


(iii) 経済・社会活動への参加
 女性のための適正技術の研修・訓練の場の提供、女性の労働環境の改善、女性問題関連の法律、制度の整備のための協力を行う。また、経済活動への女性の参加を促進する上で、女性の起業家が多い零細企業の育成を支援していくことが有益であり(我が国は、女性の経済的自立を支援する事業として、既に、インド・小企業育成計画に対する円借款供与、バングラデシュ・グラミン銀行に対する円借款供与等の実績あり)、かかる女性に対する支援制度の導入を支援し、また、資金協力等の積極的支援を行う。


  (例) >組織化のための助言、指導(例:機材供与や貸付の対象となり得る同業組合の設立)/零細企業の育成、その他経済・社会活動への参加に資する機材供与(例:縫製業支援のためのミシンの供与)/零細企業に対する支援制度への資金協力


8 第9条

(1)外務公務員法の改正
 1996年5月、外務公務員の欠格事由を定める外務公務員法第7条が改正された。従来、外国人等を配偶者とする者は外務公務員となることができず、また、外国人等と婚姻をした外務公務員は、婚姻後4年間の内に配偶者が日本国籍を取得しない場合には失職することになっていたが、この改正により、外国人等を配偶者とする者も外務公務員となることができるようになった。
 外務公務員については、その勤務の特殊性から、配偶者が外国人等であることによって種々の支障・不利益を受けることがあり得ると考えられたことから、従来は外国人等を配偶者とすることを外務公務員の欠格事由としていたものであって、現在この支障・不利益を受けるおそれが全くなくなったということではないが、他方で、我が国の国際化が進み、また国際的にも外国人と婚姻する外務公務員が増加しているなどの国際社会の変化に代表される諸要素を比較考量の上、総合的見地から判断して、改正したものである。


9 第10条

(1)男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
1)初等中等教育の充実
 学校教育全体を通じて、人権の尊重、男女の平等、相互協力・理解についての指導の充実、教科書や教材における配慮、教員の養成・研修面での充実等を推進するよう、文部省から都道府県の教育委員会等に対して情報提供、指導、援助を行っている。
 第3回報告に既述のとおり、現行学習指導要領(1989年改訂)において、家庭科教育は、男女とも必修とされ、男女同一の教育課程となり、中学校については1993年度から、高等学校については1994年度から適用されているところであり、教育課程の改善方法や研究成果の発表などの様々な研修等を通じて、その趣旨の徹底を図っており、現在,中学校・高等学校のそれぞれにおいて円滑に実施されている。
 なお、一部の社会科教科書には女子差別撤廃条約に関する記述がなされているものがあり、また、家庭科の教科書を中心に多様な家族像や男女の平等、相互理解・協力の重要性を踏まえた記述が見られる。


2)高等教育機関における男女平等の推進
 高等教育機関においては、女性の視点から従来の学問体系を再構築しようとする女性学について、男性研究者の育成も視野に入れつつ、教育・研究をさらに振興するとともに、教育・研究活動において、ジェンダーに敏感な視点が組み込まれるよう努めている。
 最近、女性学に関する研究機関が大学等に設けられつつある。国立では、1996年5月に、お茶の水女子大学にジェンダー研究センターが設けられた。このジェンダー研究センターは、ジェンダーに関する学術研究及び調査、教育研修、情報の提供などを主要な目的として設立されたもので、女性学やジェンダー研究に関する多彩な研究プロジェクトや研究生や学部・大学院生の研究指導も行っているほか、自由参加の月例研究会や公開シンポジウムを開催する一方、研究の推進を意図して「ジェンダー研究センター年報」を刊行している。
 このほか、例えば、公立では大阪府立女子大学に、私立では愛知淑徳大学に女性学あるいはジェンダー研究所が設置されるなど研究が徐々に広まりつつある。


3)社会教育の推進
(i) 家庭教育に関する学習機会の充実
 子どものいる親等を対象とした家庭教育学級、親になる前の新婚期、妊娠期の男女を対象とした学級等において、男女が相互の人格を尊重し、相手の立場を尊重し助け合うような人間形成に関する内容をテーマに取り上げたり、婦人学級等の学級・講座においても家庭生活における男女共同参画に関するテーマを取り上げるなどの学習が行われている。文部省では、市町村が行うこれらの学級・講座等のうち、先導的・モデル的な事業に対して助成している。


(ii) 青少年男女の相互理解・協力等の促進
 青少年の男女が、男女平等、男女相互の理解・協力、家庭・地域・職場への共同参画促進について学習する機会として、教育委員会、公民館等の社会教育施設、婦人団体、PTA等が実施する学級・講座等がある。市町村が行うこれら学級・講座のうちモデル的な事業に対して助成している。
 また、1996年度より、青年を対象とした「男女共同参画セミナー」を委嘱事業として実施している。これは、高等教育機関等を拠点として青年が男女共同参画について学習する機会を提供するものであり、1997年度は16の事業を実施した。


4)生涯学習の推進
 我が国では、人々が生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される生涯学習社会の構築を目指して施策を推進している。このことは、女性が男性と同様に社会のあらゆる分野に参画するためにも重要な意義を持つ。


(i) 地域における生涯学習推進体制の整備
 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律に基づき、 「地域生涯学習振興基本構想」制度の活用を推進するとともに、地方公共団体において、生涯学習審議会など行政組織の整備、生涯学習振興計画の策定、生涯学習推進センターの整備などが促進されるよう奨励している。


(ii) リカレント教育の推進
 近年の科学技術の急速な進展や産業構造等の変化などに対応するため、社会人・職業人を再教育するリカレント教育の重要性はますます高まってきており、大学・専修学校等における編入学の受け入れ、社会人特別選抜の実施、昼夜開講制の推進、夜間大学院の設置、公開講座の実施等に努め、大学や専修学校等の生涯学習機能の拡充を図るとともに、専修学校における開放講座の充実を図っている。


(iii) 放送大学等の整備
 テレビ・ラジオを利用して高等教育の機会を提供する放送大学の放送エリアを、1998年1月から衛星放送により全国に拡大した。また、単位制高等学校や専修学校の整備を推進し、多様な学習歴や生活環境を持つ学習者に対する学習機会の提供を促進している。


(2)女性の多様化・高度化した学習需要に対応した教育・学習機会の充実
1)女性の社会参加、生涯学習の促進
 1990年より、身近な生活課題を解決し、豊かで住みよい社会を実現するために、女性の持つ能力を発揮できるよう、女性の社会参加促進のための学習・実践のモデル事業を、婦人教育団体等に委嘱している。1997年度には、地域において18事業、全国的団体において8事業を委嘱した。そのうちの一つには、女子差別撤廃条約をやさしく学べるような教材として紙芝居や漫才の台本を作成したり、フォーラムを行ったりすることにより、同条約の積極的な広報に努めているところもある。
 また、1994年度より、女性の能力の開発・向上やこれを支える地域の人々の男女平等意識の涵養を図るための「女性の生涯学習促進総合事業」を実施する各都道府県の事業に助成し、高度で専門的な学習機会の充実を図っている。


2)国立婦人教育会館の開館20周年
 国立婦人教育会館は、日本における唯一の国立の婦人教育施設であり、婦人教育及び家庭教育のナショナルセンターとして、全国の婦人教育施設、女性センター等に対して指導的・先導的な役割を果たしている。
 国立婦人教育会館では、1996年度から、情報機能の充実の一環として、インターネット上のホームページの開設や、ジェンダーにとらわれない教育・学習リーダー研修のアドバンストコースを開設しているほか、家庭教育に関するマルチメディアデーターベースの構築や家庭・地域の教育機能についての調査研究を行っている。
 また、1996年から「女性学・ジェンダー研究フォーラム」を開催し、男女共同参画社会の形成に向け、全国各地の女性学・ジェンダー研究について研究・教育・実践活動を行っている団体・グループ・個人の日頃の活動の成果の発表や交流、ネットワークづくりの場を提供している。さらに、社会教育における女性学教育に関する内容と方法に関する調査研究の成果をとりまとめている。
 さらに、1997年度からは、女性の生涯学習推進を図るため、各地域の教育委員会・女性の生涯教育に関連のある施設と連携して「女性の生涯学習のための地域セミナー」を開催している。
 1997年11月には、開館20周年を迎え、「女性の交流フェスティバル」及び記念式典を行うとともに、「21世紀に向けての女性ネットワーク」をテーマとした「女性と生涯学習国際フォーラム」を開催した。さらに、20周年を記念して、ジェンダーの視点に立った生涯学習に関わる国際的、学際的研究ならびに実践的研究に寄与する論文、投稿、事例研究等から構成される「国立婦人教育会館研究紀要」を創刊した。


(3)進路・就職指導の充実について
 女性の就業分野や大学における専攻分野をみると、男性と比較して事務職や、人文科学専攻に集中する傾向がみられることから、学校における進路指導については、男子向き女子向きといった固定的な考え方にとらわれず、生徒一人一人が主体的に進路を選択する能力・態度を身に付けることができるよう指導の一層の改善・充実に努めており、このための各種施策を推進している。
 就職指導については、各大学において学生に対するキャリア・ガイダンスの開催等を推進するとともに、1995年度から、大学等の就職担当者及び企業の採用担当者の参加を得て情報交換・協議等を行う全国就職指導ガイダンスを実施している。また、就職関連情報を学生に迅速に提供するほか、大学への就職指導担当専門員の配置等を通じ、女子学生への就職指導の充実を図っているとともに、各経済団体等に対し、女子学生の均等な就職機会の確保等について協力要請を行っている。
 更に女性が固定的な考え方にとらわれない進路決定を行うよう、労働省では、高等学校の女子生徒やその親、学校の進路指導担当者に対する意識啓発セミナーを1995年度より実施している。


(4)教育改革プログラム
 1997年1月、日本政府が掲げる6つの改革の一つである教育改革に具体的かつ積極的に取り組むため、 文部省において「教育改革プログラム」を策定した。
 この「教育改革プログラム」では、その一項目として,男女平等の意識を高める 教育の充実を掲げており、男女共同参画社会の実現に向けて、男女の固定的な性別役割分担意識を是正し、人権意識に基づいた男女平等観の形成を促進するため、教育関係者の研修の充実や教材の開発などを通じ、学校教育及び社会教育において、男女平等を推進する教育・学習の充実を図ることとしている。


10 第11条

1 男女雇用機会均等確保対策の推進


(1) 男女雇用機会均等法の施行状況
 男女雇用機会均等法の施行状況を見ると、募集・採用については、法施行前は一般的であったいわゆる男女別求人が減少するなど、男女の均等取扱いが進んだといえる面もある一方、近年の厳しい雇用情勢の下、女子学生が就職に当たって男子学生に比べて均等な機会を与えられない事案が多発した。例えば、企業が募集・採用情報を女性には提供しない場合や、女性について採用数が制限されている場合などが多く見受けられた。配置・昇進については、従来男性のみを対象に配置することが多かった職務に女性を配置する例が増加し、係長相当職を中心に女性の登用が進んでいる。その一方で、女性の配置の基本的考え方としては、「能力や適正に応じて男性と同様の職務に配置」するとする企業が最も多いものの、ここ数年「女性の特質・感性をいかせる職務に配置」するとする企業が増加する傾向が見られた。教育訓練については、ほとんどの企業で男女均等な取扱いとなっている。福利厚生制度については、ほとんどの企業が男女双方を対象に実施している。定年・退職・解雇についても、男女別定年の是正等制度面での改善は進んだものの、妊娠や産前産後休業の取得、一定の年齢に達したことなどを理由として、女性のみを対象とした退職の強要や勧奨が行われ、結婚退職慣行も残っているなど、実態面ではなお問題が見られる。
 労働省の地方支分部局である都道府県女性少年室では、男女雇用機会均等法に関し、企業、労働者双方から年間約2万件の相談を受け、同法に基づき年間3000件にのぼる個別の行政指導を展開している。その相談の傾向を見ると、近年は、景気の後退等を反映して、女子学生からの募集・採用にかかる相談や、解雇・退職の強要にかかる相談が増加している。
 職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる相談・問い合わせも、年々増加し、悪質・深刻な事案も見られる。近年、セクシュアルハラスメントに係る訴訟も目立っている。
 労働基準法の母性保護を除く女性のみに対する時間外・休日労働、深夜業に関する規制については、男女の均等取扱いを一層進める観点から、これまでにも一定の規制の緩和がなされてきたが、その撤廃を求める企業からの要請はより強まり、女性の側からも見直しを求める声が挙がってきていた。


(2)男女雇用機会均等法等の改正
 このような10年余にわたる法施行の状況とその間の社会・経済環境の変化、さらには少子・高齢化をはじめとする将来展望を踏まえ、政府は、雇用の分野における男女の均等取扱いをより実効あるものとするとともに、女性労働者の職業選択や能力発揮の場の拡大を図るため、男女雇用機会均等法の強化、労働基準法に残された女性労働者に対する時間外・休日労働及び深夜労働の規制の解消等を内容とする男女雇用機会均等法、労働基準法、育児・介護休業法等の改正法(案)を1997年2月、第140回国会に提出した。同法は、同年6月11日に成立、同月18日に公布された。
 この改正法は、1999年4月1日から施行される予定であるが、母性保護の充実に関する部分(妊産婦に対する健康管理措置の義務化、多胎妊娠の場合の産前休業の延長)については1998年4月1日から施行されている。
 主な改正点は、以下の通りである。


1)男女雇用機会均等法の強化
(i) 募集・採用、配置・昇進における女性に対する差別の禁止規定化
 事業主に対し、女性を均等に取り扱うよう努力する義務を課している募集・採用、配置・昇進の分野について、女性に対する差別を禁止することとした。併せて、現在一部について女性差別を禁止している教育訓練について、すべての教育訓練において女性差別を禁止することとした。これにより、募集・採用から定年・退職・解雇にいたる雇用の全ステージおいて女性差別が禁止されることとなった。
 また、これまで均等法上は関与しないこととされてきた「女性のみ」「女性優遇」の措置についても、実質的な男女の雇用機会均等が実現されていない状況を改善するために行う措置以外は「女性に対する差別」として禁止することとした。


(ii) 法の実効性を確保するための措置の強化
  a)行政指導に従わない企業の企業名公表制度の導入
 女性労働者に対する差別を禁止する規定に違反している事業主に対して、労働大臣又は都道府県女性少年室長は助言、指導、勧告という形で是正を求める行政指導を行うが、労働大臣の勧告に従わない場合には、その旨を公表することとした。


  b)調停制度の改善
 現在は一方の当事者が調停申請を行った場合、他方の同意がなければ調停が開始できないこととなっているが、これを当事者一方のみからの申請で調停開始を可能とすることとした。


(iii) ポジティブ・アクション促進規定の創設
 社会に根ざす性別役割分担概念に基づく慣行・通念や、過去からの経緯で女性が活躍しにくい企業内の状況・慣行などにより男女労働者の間に事実上生じている差を解消し、女性の能力発揮を促進するため、体制整備、現状分析、計画作成・実施など積極的な取組(ポジティブ・アクション)を行う事業主に対し、国は相談その他の援助を行うことによってこれを促進することとした。


(iv) セクシュアルハラスメント防止規定の創設
 職場における対価型及び環境型双方のセクシュアルハラスメントを防止するために、事業主は雇用管理上必要な配慮をしなければならないこととした。


(v) 妊産婦に対する健康管理措置の義務化
 現在は事業主の努力義務となっている、妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する措置(保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保、指導事項を守るために勤務の軽減等必要な措置を講じること)を事業主の義務とした。


2)労働基準法の改正
(i) 女性に対する時間外・休日労働、深夜業の規制の解消
 満18歳以上の女性労働者にかかる時間外及び休日労働並びに深夜業の規制を解消することとした。


(ii) 多胎妊娠の場合の産前休業の延長
 現在は事業主の努力義務となっている、妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する措置(保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保、指導事項を守るために勤務の軽減等必要な措置を講じること)を事業主の義務とした。


3)育児・介護を行う労働者に対する深夜業制限の措置の創設(育児・介護休業法の改正)
 労働基準法の女性の深夜業規制が解消されたことで、子を養育する両親がともに深夜業に従事するケースや、深夜に介護を要する家族の世話をする者がいなくなるケースも生じうることから、育児又は介護を行う一定の範囲の労働者が請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、深夜業を行わせてはならないこととした。


(3)男女雇用機会均等確保のための取組
1)改正法の周知啓発
 労働省では、これまでも男女雇用機会均等法の趣旨を一層定着させ、男女の均等取扱いの確保が図られるよう、その周知徹底に努めてきたが、1999年に向けて、改正男女雇用機会均等法等の内容に沿った雇用管理が円滑に実現されるよう、6月の男女雇用機会均等月間を始め、あらゆる機会をとらえて事業主、労働者等に対し改正法の周知啓発活動を展開している。


2)行政指導と個別紛争解決の援助
 男女雇用機会均等法の遵守を図るため、都道府県女性少年室においては、同法に基づき、企業に対する行政指導を事業所訪問により計画的に実施している。
 また、都道府県女性少年室長の適切な助言・指導・勧告、機会均等調停委員会の円滑な運営等により、女性労働者と事業主の間の均等取扱いに関する個別紛争の迅速かつ円滑な解決を図っている。


3)女性労働者の能力発揮促進のための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)の促進
 制度上のみならず事実上の男女雇用機会均等を実現するには、企業によるポジティブ・アクションの取組が重要であることにかんがみ、労働省ではポジティブ・アクションを進めるためのガイドラインとワークシートを作成し、企業トップを集めたセミナーを行うなどして、その普及を図っている(3 第4条 参照)。今後は、法の趣旨を個々の企業に浸透させ雇用管理の改善を自主的に進めてもらうために1988年度から実施している自主点検促進事業(詳細は第2回報告書において報告済み)をさらに発展させたものとして、社会への定着を促していくこととしている。


4)グラス・シーリング解消のための取組
 男女雇用機会均等法の施行以来、女性の雇用管理の改善、女性労働者自身の意識の向上や雇用の場における男女平等についての社会一般の理解の進展が見られたが、個々の企業、労使団体等の意思決定の場への女性の参画は依然として少なく、これが、職場、団体等における女性の活用についての意識が遅れている要因ともなっている。
 このため労働省は、1995年度より3年間、我が国の公労使の代表と先進諸国の関係者の交流を図ることにより、企業における女性管理職の登用、あるいは労使団体における方針決定の場への女性の登用について、関係者の理解を促す「グラス・シーリングの解消のための国際交流事業」を実施した。


5)コース別雇用管理制度の適正な運用のための行政指導
 コース別雇用管理制度とは、企画的業務、定型的業務等の業務の内容や転居を伴う配置転換の有無等を基準にいくつかのコースを設定し、コースごとに異なる配置・昇進、教育訓練などの雇用管理を行う制度のことである。
 労働省では、コース別雇用管理に藉口して、事実上男女別の雇用管理を行うものなど適当でないケースが一部に見られたことから、1991年に「コース別雇用管理の望ましいあり方」を示し、コースの定義と運用方法を明確にすること、各コースにおいて男女公平な採用、選考等を実施すること、各コースが男女ともに開かれていること、コース間の転換を認める制度を柔軟に設定すること、各コースにおいて男女公平な雇用管理を行うことといった基準を示したところであり、これに沿った雇用管理が行われるよう行政指導を行っている。


(4)女性の職業能力開発の推進
 国際化の進展等を背景とした経済・産業構造の転換、情報通信技術をはじめとした技術革新の進展等の中で、女性が専門職・管理職等幅広い分野へ進出していくためには、個々の女性が力をつけていくことが必要であり、女性の職業能力開発の重要性が一層高まっている。その際、多様なニーズを持つ個々の女性が自らの能力に関心を持ち、その向上を図っていくという主体的取組を積極的に推進することが重要である。
 このため、労働省では、各人の個性をいかしつつ変化への的確な対応を図るため、①ホワイトカラーの段階的・体系的な職業能力開発を支援する「職業能力習得制度(ビジネス・キャリア制度)」の実施、②労働者の自主的な能力開発の取組を促進するよう労働時間面での配慮等の環境を整備する事業主に対する助成等の支援策の充実等の施策を男女を差別することなく積極的に推進している。


(5)女性の社会参加の支援のための事業の推進
 働くことを中心に女性が社会参加することを支援するため、女性の能力発揮を促す研修、セミナー、相談、展示及び情報提供等の事業を総合的に実施することとし、これらの事業を行う拠点施設を1999年度開館を目途として現在建設中である。


(6)男女間賃金格差解消のための取組
 労働基準法第4条では、賃金について女性であることのみを理由とした差別的取扱いが禁止されているが、実際に支払われている平均賃金(パートタイム労働者を除く。)の男女間格差を見ると、徐々に縮小してきているものの、1997年において女性は男性の63.1%となっている。こうした男女間賃金格差は、前述の通り、職務(職種、職位・職階)、勤続年数、学歴構成等のちがいによるところが大きいと考えられる。
 男女間の就業分野の違いについては、これまで女性に対し、男性と均等な機会が必ずしも与えられていなかったことにより生じている面もある。このため、募集・採用、配置・昇進における女性差別の禁止、女性の職域の固定化や男女の職務分離といった弊害が認められる「女性のみ」又は「女性優遇」の措置の禁止、男女労働者の間に事実上生じている差を改善するためのポジティブ・アクションの規定の新設などを含む男女雇用機会均等法の改正、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制の解消等を行うなど、男女の均等取扱いと女性の職域の拡大が着実に実現されるよう努めている。
 男女の勤続年数の差異については、男女労働者が育児や介護といった家族の一員としての役割を果たしながら働き続けることができるよう、育児休業制度、介護休業制度の定着をはじめとする職業生活と家庭生活との両立支援対策や、労働時間の短縮を積極的に進めている。
 また、こうした男女の差異の解消を図るためには、その背景にある男女の能力や役割に対する固定的な考え方を改めることが重要であり、そのための広報啓発活動に取り組んでいるところである。
 さらに、労働基準法については、従来からその履行確保につき指導を努めているところである。


(7)無償労働(アンペイドワーク)
 経済企画庁では、家庭内での家事や社会的活動といった対価を要求しない無償労働についての貨幣評価額を推計し、1997年5月及び1998年5月に結果を公表した。
 その最新時点の結果によると、1996年における無償労働の貨幣評価額(機会費用(OC)法*による)は、総額116兆円であり、国内総生産(GDP)比23%となった。このうち、女性が行った無償労働の評価額は98兆円で、総額の85%を占めている。
 これを、無償・有償のそれぞれの労働時間でみると、女性一人1日当たりの無償労働時間は3時間50分、有償労働時間は2時間48分であるのに対し、男性一人1日当たりの無償労働時間は31分、有償労働時間は5時間36分と、女性の無償労働時間は男性の7.4倍となっており、かつ、男性は有償労働時間が長い反面、無償労働時間は極端に少なかった。
 また、無償労働の一人当たりの年間評価額(OC法)は、女性が180万円で、男性35万円の5倍となっている。労働時間の男女差に比べ、評価額での格差が縮まるのは、OC法で使用する男女別平均賃金の格差が反映されるためである。


*機会費用(OC)法とは、無償労働を行うことにより、当該無償労働者が市場に労働を提供することを見合わせたことによって失った賃金(逸失利益)で評価する方法である。


(8)育児・介護期における条件整備の充実
1)育児休業法の改正
 介護休業制度の創設等を内容とする「育児休業等に関する法律の一部を改正する法律」が、1995年6月5日に成立し、6月9日に公布された。この改正法により、育児休業法は、育児や家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援することを目的とした総合的な内容の育児・介護休業法となった。


この法律の概要は、以下のとおりである。


(i) 介護休業の権利の創設
 労働者は、事業主に申し出ることにより、連続する3月の期間を限度として、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族(配偶者、父母及び子(これらの者に準ずる者として、労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む)、配偶者の父母)1人につき1回の介護休業をすることができる。事業主は、労働者が介護休業の申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者を解雇することはできない。


(ii) 勤務時間の短縮等の措置
 事業主は、介護休業期間と合わせて連続する3月の期間以上の期間において、勤務時間の短縮の措置その他の労働者が就業しつつ一定範囲の家族を介護することを容易にするための措置を講じなければならない。


(iii) 育児又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置
 政府は、育児又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続、再就職の促進を図るため、事業主等に対する相談・助言及び給付金の支給、労働者に対する相談・講習、育児又は介護により退職した者に対する再就職支援その他の支援措置を講ずる。


(iv) 女子船員対策
 女子船員についても同様の改正がなされ、1999年4月から施行される介護休業の申出の方法、事業主が講ずべき措置等を定めた運輸省令が1995年9月に公布された。


(v) 施行期日
  (i)及び(ii)のうち介護に関する部分については、1999年4月1日から施行される。それ以外の部分については、1995年10月から施行されている。ただし、事業主は、介護に関する部分の施行前においても、可能な限り速やかに、介護休業制度を設けるとともに、勤務時間の短縮等の措置を講ずるよう努めなければならない。
 また、毎年10月を「仕事と育児を考える月間」として啓発活動を行って きたところであるが、育児休業法の改正に伴い、1995年より「仕事と家庭を考える月間」と改め、集中的に広報啓発活動を行っている。


2)育児休業給付の創設
 1995年4月より、育児休業を取得した者が雇用保険法に定められた要件を満たしている場合には、育児休業取得前の賃金の20%の育児休業基本給付金が支給される。また、育児休業基本給付金の支給を受けることができる者が、育児休業終了後、引き続き同じ事業主に6ヵ月以上雇用された場合には、育児休業取得前の賃金の5%に休業月数を乗じた育児休業職場復帰給付金が支給される。


3)介護休業給付の創設(1999年4月より実施予定)
 1999年4月より、介護休業を取得した者が雇用保険法に定められた要件を満たしている場合には、介護休業取得前の賃金の原則25%の介護休業給付金が支給される予定である


4)介護休業制度の早期導入の促進
 政府は、事業主、労働者に対する相談・指導や、介護休業制度導入奨励金(育児・介護雇用安定助成金)及び介護勤務時間短縮等奨励金(育児・介護雇用安定助成金)の支給により、介護休業制度及び介護のための勤務時間の短縮等の措置の早期導入を促進している


5)育児休業制度の定着促進
 労働省が、1996年度に実施した「女性雇用管理基本調査」によると、育児休業制度の規定がある事業所における出産者に占める育児休業取得者は、女性で44.5%、配偶者が出産した男性で0.16%で、育児休業取得者の男女比は女性99.2%、男性0.8%であった。
 政府は、事業主、男女労働者に対する相談・指導や、育児休業給付の支給により、育児休業制度及び育児のための勤務時間短縮等の措置の定着を促している。


(9)子育て支援対策の充実
1)保育所の整備
 児童福祉法により、保育所の創設、増築、改築などの施設整備費及び運営費に国庫補助を行うとともに、事業所内に設置する保育施設についても、児童手当法により、その整備について国庫補助を行っている。この結果、一部の地域では待機児童の数が入所児童の数を大きく上回るところも見受けられるが全国的に見ると、施設数はほぼ必要な水準に達しているものと思われる。


2)保育需要に対応した保育対策の充実
 女性の社会進出、就労形態の変化に伴う保育需要の多様化に対応して、子育てと就労の両立を支援するため、政府は1994年に「当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方」(緊急保育対策等5か年事業)を策定し、これに基づき、1995年度から乳児保育(0歳児を保育すること)、延長保育(概ね午後6時以降の保育を行うこと)等を推進している。


3)児童保育施策の見直し
 児童と家庭を取り巻く環境の変化等を踏まえ、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う児童の健全な成長と自立を支援するため、児童保育施策等の見直し、児童の自立支援施策・母子家庭施策の充実を内容とした児童福祉法の改正を1997年に行った。
 保育所については、夫婦共働き家庭の増加により保育所利用が一般化するとともに、就労形態の多様化等により、低年齢児の保育、保育時間の延長や一時的保育(緊急時や一時的な保育を行うこと)など多様な保育需要に応じることが求められている。このため、多様な保育需要に即応して質の高い保育サービスが柔軟に提供されるような保育制度を確立することとしている。
 また、これまで保護者が前年に支払った所得税額等に応じた応能負担の保育料負担方式を改め、保育料は保育費用を基礎として保育費用を徴収した場合の家計に与える影響を考慮して児童の年齢等に応じて定める額とした。


(10)職業生活と家庭生活との両立支援事業
 政府は職業生活と家庭生活との両立を支援するため、以下の施策を実施している。


1)育児休業、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境の整備
 育児休業取得者に対し、休業前賃金の25%相当額の育児休業給付金を支給する(育児休業給付の創設については10 第11条 2(c) 2)を参照)他、第3回報告において報告した「育児休業者職場復帰プログラム奨励金」制度を、介護休業の法制化とともに「育児・介護休業者職場復帰プログラム奨励金」と改め、育児休業、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境の整備を図っている。


2)育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備
 第3回報告において報告した「事業所内託児施設助成金」の活用を図るとともに、1995年10月より、育児や家族の介護を行う労働者の雇用の継続を図るため、労働者の育児・介護サービス利用に要する費用を援助する事業主に対し、「育児・介護費用助成金」を支給している。
 また、「フレーフレー・テレフォン事業(育児、介護を行う労働者のための相談援助事業)」を拡大し、1997年現在25地域で実施している他、仕事をしながら育児又は介護を乗り切ることに役立つ知識や心構え等を身につけるため、今後、育児や介護と仕事との両立の問題に直面する可能性のある労働者を対象とした両立支援セミナーを1995年より実施している。さらに、急な残業や子供の病気の際など、既存の保育施設では応じきれない変動的、変則的な保育需要に対応するため、育児の援助を行う者と育児の援助を受けたい者からなる会員組織による地域における育児の相互援助活動を組織化する「ファミリー・サポート・センター」事業を1994年度より実施している。


3)育児、介護等のために退職した者の再就職に対する支援
 妊娠、出産、育児又は介護の理由で退職した労働者を再雇用した事業主に対し給付金を支給することにより、再雇用制度の導入を引き続き促進している。
 また、再就職希望者に対する支援としては育児、介護等のために退職し将来的に再就職を希望する者が円滑に再就職できるよう、これらの者に対するセミナー、情報提供、自己啓発への援助を実施している。
 さらに、女性の職業紹介を取り扱う公共職業安定所(レディースハローワーク)において、きめ細かな職業相談・職業紹介により再就職を援助している。


(11)母性保護
 女性労働者が妊娠中、出産後の期間を通じてその健康が保持できるよう、労働基準法の母性保護規定の遵守を徹底している。また、男女雇用機会均等法では母子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保ができるようにすることや、医師等の指導事項を女性労働者が守ることができるようにするために事業主が配慮すべき措置について定めている。
 1997年6月に男女雇用機会均等法を改正し、これらの規定を従来の努力義務規定から義務規定とした。また、労働基準法の改正により、多胎妊娠の場合の産前休業期間を現行の10週間から14週間に延長した(1998年4月1日より施行)。


11 第12条

(1)女性の生涯を通じた健康支援
 政府では、女性の生涯を通じた健康を支援するため、思春期から妊娠・出産まで一貫してサービスの提供が受けられるような母子保健の推進を図る一方、中年期以降の女性に対しては、更年期障害の軽減、肥満の予防などを重点とした健康教育、健康相談、健康的な食生活の確立や適切な運動習慣の普及などの推進、乳がん、骨粗鬆症検診の一層の推進などを図っている。
 さらに、1996年度から女性の生涯を通じた健康管理のための「健康教育」、女性特有の健康問題に対応するための「一般相談」、不妊に悩む夫婦に対し的確な相談指導を行う「不妊専門相談」からなる「生涯を通じた女性の健康支援事業」が保健所、女性センター、医療機関等で実施されている。


(2)妊娠と出産に関するサービスの提供
 母子保健活動は、結婚前から妊娠、分娩周辺期、新生児、乳幼児期を通じて一貫した体系のもとに総合的にすすめられることを目指しており、それぞれの時期に最もふさわしいサービスが提供されるよう、体系化が図られている。
 母子保健法の改正によって、1997年4月より、住民に身近な市町村が、妊娠の届出から就学前まで一貫して基本的母子保健サービスを実施することとなった。これによって市町村では、従来から実施している学校保健、労働衛生、老人保健との連携を図っていくことで、生涯を通じた健康づくりの体制の整備が可能となっている。


(3)周産期医療の充実
 1996年の妊産婦死亡数は72人、死亡率は6.0(出生10万対)とこの数年横ばいである。乳児死亡率は3.8、乳児死亡の53.6%を占める新生児死亡の率(出生千対)は2.0、また周産期死亡率(妊娠満22週以降の死産数+早期新生児死亡数/出生数+妊娠満22週以降の死産数×1000)は6.7と、年々低下している。
 少子化、35歳以上の妊婦の増加、出生体重1500g未満児の増加のなかで、安心して子供を産み育てる環境づくりの一環として、妊娠時期から出産、小児期にいたるまでの高度な医療を提供するための周産期医療施設(PICU)、小児医療施設(NICU)を全国的に整備しつつ、1996年より都道府県単位で妊婦及び新生児に対する周産期医療についてのシステム体制の構築を推進している。


(4)家族計画
 我が国の出生率は、1975年以降急激に低下し、1996年の合計特殊出生率は1.43と将来人口の減少が予測され、さまざまな少子化対策が講じられている。そのような中で家族計画の考え方及びさまざまな利用可能な方法については、性に関する学習の一環として学校教育や家庭教育学級においてその充実が図られているとともに、地域保健サービスとしても専門的な相談指導が行われている。1996年に行われた調査によると、既婚女性の56.3%が現在避妊を実行しており、過去に実行した者も合わせると77.8%であった。また、未婚女性の避妊実行率は42.2%、うち性交渉経験者の実行率は90.7%であり、既婚者の場合と同じく未婚者の間でも避妊が普及している。
 人工妊娠中絶は母体保護法によって、妊娠の継続または分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがある場合、あるいは暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶できない間に姦淫されて妊娠した場合で、本人及び配偶者の同意によって、妊娠22週未満に限り行うことができる。その件数は、1955年の117万件をピークとして年々減少し、1980年には60万件を下回り、1996年は約33.8万件であった。年齢階級別の実施件数をみると、20歳未満は28,256件(8.3%)であるが、女子人口千対実施率は1980年以降横ばいで推移し、1996年は前年に比べ数、率ともに増加している。1996年の20歳未満の母親からの出生数は15,621(全出生の1.29 %)と年々減少傾向にある。20歳未満の妊娠は、6割強が人工妊娠中絶という結果である。


(5)HIV/エイズ
 1994年度を初年度とする「エイズストップ7年作戦」を策定し、西暦2000年までの目標として、①特効薬及びワクチンの開発、②我が国におけるエイズの流行阻止、③アジア地域におけるエイズの流行阻止のための支援を掲げ、施策の推進に取り組んでいる。具体的な取組みは次の通りである。


1)エイズストップ7年作戦
(i) 医療体制の充実
 エイズ患者・HIV感染者の増加に伴い、エイズ患者等が安心して医療を受けられる体制を整備するため、各都道府県においてエイズ治療の拠点病院を、また、全国を8つのブロックに分け、それぞれにブロック拠点病院を整備するとともに、国立国際医療センターに設置したエイズ治療・研究開発センターを中心に医療関係者への研修等を実施している。


(ii) 相談指導体制及び検査体制の充実
 エイズに関する各種相談事業を実施するとともに、医療機関やNGO(非政府組織)における相談等の充実を図るため、カウンセラーの養成研修、ボランティア指導者の育成事業等を実施している。また、全国の保健所で無料・匿名検査を実施するとともに、検査前後のカウンセリングの充実を図っている。


(iii) 研究の推進及び国際協力の推進
 国内の大学、研究機関等を中心としたエイズ対策の研究、エイズ医薬品等の開発の研究を推進するとともに、海外との研究協力を進めている。
 また、国連合同エイズ計画への拠出、国際エイズ会議への参加等を通じ、世界のエイズ対策への協力を行っている。


(iv) 正しい知識の啓発普及
 国民に対してポスター、リーフレット等によるエイズに対する正しい知識の普及啓発、患者・感染者に対する偏見の除去に努めるとともに、12月1日の「世界エイズデー」に合わせて街頭キャンペーン事業を実施し、エイズ予防対策の推進を図っている。


(v) 都道府県等によるエイズ対策促進
 地域の実情に応じたきめ細かな施策を総合的に推進するため、都道府県等におけるエイズ対策推進協議会等の設置や、医療従事者の実地研修事業及び各種広報活動、検査・相談事業等を推進するための費用に対する補助を行い、地域における総合的なエイズ対策の促進を支援している。


2)学校教育・社会教育における取り組み
 学校教育において、HIV/エイズに関して若年期から正しい理解を深めるとともに、患者・感染者に対する偏見や差別を払拭する教育が極めて重要であることから、①エイズに関する小・中・高校生用教材の作成・配布を1992年度から、②教師用指導資料の作成・配布を1992年度に、③教職員の研修を1993年度から、④エイズ教育推進地域の指定による実践研究を1993年度から行うとともに、エイズ教育情報ネットワーク整備事業を1995年度から実施し、エイズ教育情報の全国的な普及と活用を図るなど、エイズ教育の充実を図っている。 社会教育においては、地域におけるHIV/エイズ問題に関する学習機会の充実とHIV/エイズの正しい知識の普及、啓発の促進を図っている。


(6)女性に特有な疾病に関する予防対策
 骨粗鬆症検診、乳がん検診、子宮がん検診については、いずれも老人保健事業の一つである健康診査であり、市町村が実施している。費用は、国、都道府県、市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担している。


1)骨粗鬆症検診
 骨粗鬆症は骨折等の基礎疾患であり、高齢化の進展によりその増加が予想されることから、骨量が減少している者を早期に発見し、骨粗鬆症を予防することが必要である。
 1995年より、閉経前後である40歳、50歳の女性に対する骨粗鬆症検診を老人保健法の総合検診のなかに位置づけ、骨粗鬆症の早期発見に努めている。1996年度の骨粗鬆症検診受診者の総数は、10,624人であった。


2)乳がん検診
 1996年の我が国における女性の乳房の悪性新生物による死亡者数は7,900人であり、年齢調整死亡率の推移をみると、昭和40年代より上昇しており、女性の悪性新生物による死亡数全体に占める割合は、同年で7.4%となっている。 乳がん検診は、1987年から老人保健法によるがん検診の一つに加えられた。対象者は、30歳以上の女性で、年1回を原則としている。1996年度の全国の受診者の総数は3,187,084人、要精密検査者は134,244人で、2,921人の乳がん患者が発見された


3)子宮がん検診
 1996年のわが国における女性の子宮の悪性新生物による死亡者は4,963人であり、年齢調整死亡率の推移をみると、1955年頃から低下しており、当時のおよそ4分の1になっている。女性の悪性新生物による死亡者数全体に占める割合も1950年には26.3%であったが、1996年には4.7%になっている。
 子宮がん検診については、子宮頸がん検診が1983年度から、体がん検診は1982年から老人保健法によるがん検診の一つに加えられた。子宮頸がん検診の対象者は、30歳以上の女性である。子宮体がん検診の対象者は、子宮頸がん検診の対象者のうち、問診等の結果、一定の条件に該当するものである。
 1996年度の子宮頸がん検診の受診者の総数は、3,847,779人、要精検者数は38,012人で、2,538人の子宮頸がん患者が発見された。また、子宮体がん検診の受診者(頸部の再掲)の総数は、247,264人、要精検者は4,476人で259人の子宮体がん患者が発見された。


12 第13条

(1)育児休業期間中の被用者保険の保険料の免除
 従来は、育児休業期間であっても、被用者保険の適用を続けるとともに、休業前の標準報酬に基づいて保険料の徴収が行われてきた。これについて、1994年の制度改正において被用者保険においても、女性が働きやすく、次代を担う子どもたちを産み育てやすい環境づくりに配慮するため、育児休業期間中については、被用者保険の保険料の本人負担分を免除することとされた。
 なお、給付については、従来通り保険料を拠出したものとして計算することになっている。


(2)児童扶養手当の支給
 未婚の母を含め、離婚した母子家庭などに支給されている児童扶養手当については、1998年8月より、未婚の母の子が認知を受けた後も引き続き手当を受給できる扱いとすることとしたところである。


(3)未婚の母に対する各種サービス
 未婚の母を含め母子家庭の母及び寡婦にあっては、母親自らが生計の中心者であると同時に児童の養育者であることから、経済的にも精神的にも不安定な状況に置かれている場合が多いため、母子及び寡婦福祉法を中心として、関連施策との有機的な連携を保ちながら、事業開始資金等の低利又は無利子での母子寡婦福祉資金の貸付けや、法律上の問題や事業経営上の問題を抱える母子家庭及び寡婦に対する弁護士等の専門家による特別相談などの各種施策を推進している。


13 第14条

(1)農村における政策方針決定過程への参画状況
 農村における政策方針決定過程への参画状況は、依然として低調ではあるものの、状況の改善はみられる。例えば、女性の農業委員は1985年には0.06%(6万4千80人中40人)にとどまっていたものの、1996年には0.66%(6万1010人中403人)となった。また、農業協同組合の正組合員(個人)については1985年には10.4%(553万6千人中57万4千人)にとどまっていたものの、1996事業年度では13.3%(541万9,580人中71万8,955人)となった。
 さらにこのような問題を改善するには、男女を問わずに政策決定等に参画するパートナーシップの確立が重要である。そのため、1997年から、男性を含めた家族及び地域社会での意識啓発等を促進するとともに、農協の理事における女性の割合等の指標・目標の策定及びその到達度合いの調査等を実施している。


(2)農業者年金
 従来、農業者年金制度においては農地の権利名義をもつ農業者しか加入できなかったが、農業者年金基金法の改正により、1996年4月から、農地の権利名義をもたない女性でも「家族経営協定」を締結し、農業経営に参画していることなど一定の要件を満たせば加入できるようになった。
 この改正により、女性も年金を受給出来るようになったことのみならず、農業に専従する女性を農業経営者の一員として認めるなど、女性の地位向上が図られた。


(3)農林水産業の技術経営指導
 改良普及員は、地域農業改良普及センターを拠点として、直接農業者に接して、技術や経営などに関する相談、情報の提供、展示圃の設置、研修・講習会の開催などの活動を総合的かつ体系的に行っている。
 具体的には、新たに就農する農村女性に必要な農業技術、経営、資金などに関する情報の提供・相談、起業をめざす女性グループに対する幅広い情報の提供や経営指導による支援、作業日誌、簿記などの記帳指導と記帳結果に基づく経営分析・診断、就業条件の改善への支援などを行っている。
 また、1995年度から農林水産省の女性対策事業の一環として、農村女性を対象とした通信講座を実施する民間団体に助成を行っている。1997年度は、「グリーン・ツーリズム専門家養成講座」、「農業労働管理専門家養成講座」を開設している。


(4)女性の経済的地位の向上
 女性の経済的地位の向上を見る目安として、労働に対する報酬や給与を正当に受け取っているかどうかが挙げられる。実際に受け取っている人は1996年には農業専従女性の72.6%、漁業専従女性で61.0%となっており、依然として受け取っていない女性が約3割をしめている。女性の労働が正当に評価され、経済的地位を向上させるためには、正当な報酬・給与の受領が望ましい。
 このための有効な方法として、家族経営協定の締結を普及している。家族経営協定とは、農業経営に携わる家族員間で給与や休日等の就業条件、役割分担等を話し合い取り決めたものをいう。


(5)農村の無報酬女性労働者の状況
 1996年の労働報酬を受け取っていない農業専従女性は26.7%、漁業専従女性は39.0%である。女性の労働を正当に評価するために、今後とも、この数値を引き上げていくための努力が必要である。


(6)地域社会活動への参加促進
 農山漁村地域における女性の地域社会活動への積極的な参加を促進するためには、男性を含めた家族及び地域社会での意識啓発とともに、男女を問わずに意思決定に参画するパートナーシップの確立が重要である。そのため、パートナーシップを確立できるよう、農業協同組合や農業委員、土地改良区等の女性の参画状況を調査し、その目標値を設け参画を促進する「パートナーシップ推進事業」等を行っている。


(7)女性に対する融資
 農村女性グループが安定的に経営を行えるように、経営管理等の情報の提供、農産物加工等の起業を支援する事業等を実施している。また、農業及び沿岸漁業の婦人・高齢者グループの活動を支援するため、無利子の農業改良資金及び沿岸漁業改善資金の貸付を行っている。


(8)生活に関する総合的な普及指導
 生活に関する普及指導の分野についてはすでにかなりの成果がみられ、農村と都市の生活水準の格差が解消している。このことから、現在は、農業労働の改善、営農計画と生活設計の調和、地域の活性化等、より生産の場面と密着した生活問題や地域全体の生活問題への取り組みに重点を置いた普及指導を行っている。


14 第16条

(1)民法改正の検討
 法務大臣の諮問機関である法制審議会は、1991年1月から、民法の婚姻制度等に関する規定の見直し作業を進めてきた結果、1996年2月、同大臣に対し、「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した。この要綱に掲げられた改正事項のうち、男女の平等に関連するものは、次のとおりである。
 この問題については、国民の意見が分かれており、1996年6月に総理府が実施した「家族法に関する世論調査」の結果をみると、民法の改正についてはいまだ大方の支持が得られたとは、言い難い状況にあるが、従前の調査に比べると、例えば3)の選択的夫婦別氏制度の導入を支持する意見が比較的若い世代を中心に増えているなどの特色もみられるところであるので、今後の世論の動向等も見据えつつ、政府において引き続き検討することとしている。


1)婚姻最低年齢
 現行法が男子については満18歳、女子については満16歳としているのを改め、男女とも満18歳とする。


2)婚姻の解消又は取消し後の女性の再婚が禁止される期間
 現行法が6箇月間としているのを改め、再婚後に生まれる子の父性の混乱を回避するために必要な最低限の期間である100日間とする。


3)夫婦の氏
 現行法が夫婦は婚姻の際に定めるところにより夫婦のいずれかの婚姻前の氏を夫婦共通の氏として称するものとしているのを改め、夫婦は、婚姻の際に、夫婦のいずれかの氏を夫婦共通の氏として称するか、又は各自の婚姻前の氏を引き続き称するか選択することができるものとする。


(2)家庭内暴力
1)夫婦間暴力
 夫による妻への暴力等の家庭内暴力については潜在化しやすいので、警察では、当該暴力についてはもちろんのこと、暴力に至る前の夫婦間の問題についても相談があれば、指導、助言等を行っている。
 家庭内の暴力であっても、暴行罪、傷害罪、逮捕監禁罪、強制わいせつ罪、強姦罪等の処罰規定の適用が排除されるものではなく、これらの処罰規定を的確に運用している。
 なお、夫婦間暴力などにより、危機に陥った女性を緊急に一時保護する目的で、民間の女性団体がシェルターを開設している例が全国で約20ヶ所見受けられる。


2)児童虐待
 少女に対する児童虐待については、警察において相談や被害申告の受理を女性職員に担当させる体制を充実するなど、相談や被害申告を行いやすい環境整備を図っている。さらに、事案を把握した場合には、事件化を含め適切な対処を行うとともに、関係機関と連携を図りながら、被害少女の救出に努めている。


統計資料一覧

(日本女性の現状)

1. 総人口(1980年から1996年まで:総務庁、2000年から2030年まで:厚生省推計)
2. 老齢人口(同上)
3. 世帯主の年齢階級別にみた女性の単独世帯数の構成割合(厚生)
4. 平均寿命(厚生省)
5. 死亡率(厚生省)
6. 出生数、出生率及び合計特殊出生率(厚生省)
7. 婚姻件数及び婚姻率(厚生省)
8. 平均初婚年齢(厚生省)
9. 離婚件数及び離婚率(厚生省)
10. 平均世帯人員及び世帯構造別世帯構成割合(1980年から1995年まで:総務庁、2000年から2010年まで:厚生省推計)
11. 妊産婦死亡率・数(厚生省)
12. 乳児、新生児、周産期死亡率・数(厚生省)
13. HIV感染者及びエイズ患者報告件数(厚生省)
14. 障害者数(厚生省)
15. 種別学校数、在学者数(文部省)
16. 進学率(文部省)
17. 大学、短期大学への進学者の構成(文部省)
18. 大学在学者の関係学科別学生数・構成比(文部省)
19. 学校管理職への女性の登用状況(文部省)
20. 新規学卒就職者数、構成比及び就職率(文部省)
21. 労働力人口等、就業者数等(総務庁)
22. 年齢階級別労働力率(総務庁)
23. 配偶関係別女子労働力率(総務庁)
24. 従業上の地位別就業者数及び構成比(総務庁)
25. 産業別就業者数及び構成比(総務庁)
26. 業種別女子雇用者数(総務庁)
27. 職業別雇用者数(総務庁)
28. 平均勤続年数の推移(労働省)
29. 1人当たりきまって支給する現金給与額及び所定内給与額(労働省)
30. 標準労働者の年齢階級別所定内給与額の男女間格差(労働省)
31. 新規学卒者の初任給額(労働省)
32. 一人平均月間実労働時間数(労働省)
33. 労働組合員数及び推定組織率(労働省、総務庁)
34. 短時間雇用者数(非農林業)(総務庁)
35. 農林業における従業上の地位別就業者数(総務庁)
36. 農業就業人口等に占める女性の割合の推移(農水省)
37. 農業委員会、農協、漁協への女子の参画状況の推移(農水省)
38. 男女共同参画に関する世論調査(男女の地位の平等感)(総理府)
39. 男女共同参画社会に関する世論調査(総理府)

  1) 仕事と、家庭生活又は地域活動について男女の望ましい生き方
  2) 結婚、家庭、離婚についての考え方
  3) 「女性は仕事をもつのはよいが、家事・育児はきちんとすべきである」という考え方について

(第2条関係)
40. 強姦、強制わいせつの認知件数(警察庁)
41. 刑法犯(強制わいせつ、強姦)通常受理・処理人員(法務省)
42. 通常第一審事件の終局総人員(罪名男女区分別)(最高裁判所)
43. 通常第一審事件の有罪(懲役)人員(最高裁判所)
44. わいせつ物頒布事犯等の検挙状況(警察庁)
45. コンピュータ・ネットワークを利用してわいせつ物頒布事犯等の検挙状況(件数)(警察庁)
46. 人権擁護委員数(過去6年)(法務省)

(第4条関係)
47. 国の審議会等における女性委員 (総理府)
48. 地方公共団体の審議会等委員における女性委員(労働省)
49. 男女別生活時間の配分(週全体)-平均-、共働き(総務庁)

(第6条関係)
50. 売春関係事犯の検挙状況(件数、人数)(警察庁)
51. 売春防止法違反事件通常受理・処理人員(法務省)
52. 売春関係事犯に係る外国人女性の国籍・稼動別状況(人員)(警察庁)
53. 退去強制手続きを執った不法就労外国人のうち売春に従事していた者の数(法務省)
54. 性の逸脱行為で補導・保護した女子少年の学職別状況(警察庁)
55. テレホンクラブに係る福祉犯の検挙人員の推移(警察庁)
56. 風俗関連営業(風営適正化法woman_report-4th_gov_m2.html#改正後の性風俗特殊営業)の営業所数の推移(警察庁)
57. 婦人相談所・婦人相談員に関する統計(厚生省)
  1) 婦人相談所・婦人相談員・婦人保護施設の数
  2) 婦人相談所・婦人相談員の受付件数(新規・再来別)
  3) 婦人保護施設の入所人員・退所人員・在所人員・入所延人員・職業訓練の状況

(第7条関係)
58. 衆参両議員選挙における女子の参加状況(自治省)
59. 衆参両議院における女性議員数の推移(衆議院・参議院事務局調べ)
60. 政党における女子の参加状況(各政党事務局調べ)
61. 女性の大臣(歴代の女性の大臣)(総理府)
62. 女性の政務次官(1993年以降)(総理府)
63. 統一地方選挙における投票率(自治省)
64. 地方議会における女性議員数(自治省)
65. 地方公共団体の女性の首長(自治省)
66. 都道府県の女性副知事及び指定都市の女性助役数(総理府)
67. 女性裁判官数(最高裁判所)
68. 女性検察官数(法務省)
69. 司法試験合格者数(法務省)
70. 国家公務員の在職者数に占める女性の数、割合(人事院)
71. 国家公務員の課長クラス以上への女性の登用状況(人事院)
72. 地方公務員の職種別・男女別職員数(全地方公共団体)(自治省)
73. 地方公務員の課長級以上への女性の登用状況(一般行政職)(自治省)

(第8条)
74. 国際機関等への日本の女性の参画状況(外務省)

(第10条)
75. 本務教員総数に占める女性の割合(初等中等教育)(文部省)
76. 本務教員総数に占める女性の割合(高等教育)(文部省)
77. 社会教育関係施設数(文部省)
78. 放送大学の在学生数及び卒業生数(文部省)
79. 教育委員会における社会教育学級・講座数(学習内容別)(文部省)
80. 設置者別の婦人教育施設数(文部省)

(第11条)
81. 女性の配置についての企業の基本的な考え方(労働省)
82. 女性の活用に当たっての問題点(労働省)
83. 公共職業能力開発施設数及び入校者の男女別構成比(労働省)
84. 勤労者福祉施設数(労働省)
85. 1人平均産前産後休業日数(労働省)
86. 機会均等推進責任者の選任状況(労働省)

(第12条)
87. 保育所及び定員数(厚生省)
88. 人工妊娠中絶実施件数・率(女子人口千対)(厚生省)
89. 妊産婦健康診査実施状況(厚生省)
90. 妊産婦保健指導実施状況(厚生省)
91. エイズ患者及びHIV感染者の感染原因別数(厚生省)
92. 老人保健事業報告(厚生省)
  1) 子宮がん(頸部)
  2) 子宮がん(体部)
  3) 乳がん
  4) 骨粗鬆症

(第13条)
93. 母子世帯に関する統計(厚生省)
  1) 母子世帯になった理由別 母子世帯数及び構成割合の推移
  2) 住居取得状況
  3) 母の就労状況
  4) 母の就労状況及び転職希望の有無
  5) 1992年の年間収入状況
  6) 離婚した場合の養育費の受給状況
  7) 子どもについての悩みの内訳
  8) 困っていることの内訳
94. 父子世帯に関する統計(厚生省)
  1) 父子世帯になった理由別 父子世帯数及び構成割合の推移
  2) 住居取得状況
  3) 父の就労状況
  4) 年間収入の一般世帯との対比
  5) 子どもについての悩みの内訳
  6) 困っていることの内訳

(第16条関係)
95. 離婚申立て事件の終局件数の総数及び夫からの暴力・精神的虐待を理由とする妻の離婚申立て事件の終局件数(最高裁判所)
96. 婚姻関係事件における申立人年齢別申立動機(最高裁判所)