ハンセン病家族訴訟判決に関する会長声明


本年6月28日、熊本地方裁判所において、500名を超えるハンセン病病歴者の家族らが国を被告として提起していた国家賠償請求訴訟の判決が下された。


本判決は、国による「らい予防法」に基づくハンセン病隔離政策により、ハンセン病病歴者の家族らも、憲法13条が保障する社会内で平穏に生活する権利(人格権)などが侵害されたとして、国家賠償法上の違法性を認めた。


国が90年の長きに渡り遂行してきたハンセン病隔離政策は、ハンセン病に対する社会の差別偏見を形成・維持し、強固にし続けてきた。その中で、ハンセン病病歴者とその家族らは、家族関係を破壊され、また、社会生活上のあらゆる場面で深刻な差別偏見により人生そのものに重大な被害を受け、人格と尊厳が冒されてきた。


2001年の熊本地裁違憲判決は、ハンセン病病歴者が国による隔離政策の被害者であると認め、本判決では、その家族らについても、隔離政策の被害者であることを正面から認め、家族らが受けた差別偏見による人権侵害の責任は国が負うことを明らかにしたものであり、当連合会も本判決を重く受け止める。


ハンセン病病歴者の家族らが、国による憲法違反の隔離政策によって、長年にわたり、社会の中で激しい差別偏見を受け続け、家族関係の形成が阻害されてきたという人権侵害の重大性からすれば、一刻も早く家族らの被害回復を図るため、国は控訴を断念すべきであり、その上で、ハンセン病病歴者の家族らに対して、法的責任を認めて直ちに謝罪した上、名誉回復、損害賠償・経済的支援、差別偏見除去・家族関係回復のための啓発活動等の政策を早急に策定し、強力にこれを実行すべきである。


当連合会も、ハンセン病病歴者の家族らの差別問題に正面から取り組んでこなかったことに対する責任を自覚して、ハンセン病病歴者の家族らに対する被害回復、差別偏見除去等の人権救済活動に全力で取り組み、ハンセン病問題の全面解決に向けて、今後も一層の努力をしていくことを改めて決意し、表明するものである。


 2019年(令和元年)7月1日

日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎