工事監理者の独立性確保及び中間検査制度の充実等の抜本的改革を求める会長談話

本年2月、株式会社レオパレス21(以下「レオパレス21」という。)が施工した共同住宅のうち、少なくとも1324棟において準耐火構造又は防火構造違反等の重大な瑕疵が存することが発覚した。これにより、サブリースオーナーの資産価値が毀損されただけでなく、1万人を優に超える賃貸アパート入居者が転居を求められるなど、その被害は極めて甚大なものとなっている。


この問題について、同社に設置された外部調査委員会は、本年5月29日に「施工不備問題に関する調査報告書」を公表した。同報告書によれば、今回発覚した施工上の問題点は、①小屋裏等界壁(建築基準法違反)、②界壁発泡ウレタン(同)、③外壁仕様(同)、④天井(設計図書違反、告示違反)であるところ、いずれにおいても、確認申請図書その他の設計図書の内容には問題がなかったにもかかわらず、設計図書の内容とは異なった施工(不適合施工)が行われていたとのことである。外部調査委員会は、上記のうち①②③について、施工する意思のない仕様を確認申請図に記載して確認済証をだまし取ったに等しい旨の指摘を行っている。また、同委員会は、レオパレス21の工事監理が同社の社員たる建築士によって行われ、第三者性や独立性が確保されない仕組となっていた上、その建築士自身が工事監理にほとんど関与していなかったことをも明らかにした。


当連合会は、2006年2月に「安全な住宅を確保するための提言―構造計算偽装問題を契機として―」を公表し、設計図書や建築基準関係法令その他の施工に当たって遵守されるべき基準に適合しない施工が繰り返される背景には、建築士法が予定する建築士による工事監理が適正に機能していないことや、施工現場で施工者の工事を適正に監視する検査制度が不十分であるという建築生産システムの問題点があることを指摘した上で、工事監理者の施工業者からの独立性確保及び中間検査制度の充実等の抜本的改革を求めてきた。しかし、これらの抜本的改革はいまだ実現していない。


レオパレス21の今回の問題は、これまでに繰り返されてきた不適合施工の問題と同様に、工事監理者が施工業者から独立して適正な工事監理を行い、充実した中間検査が実施されていれば防止できたものと考えられる。


当連合会は、今回のレオパレス21の不適合問題を契機として、国に対し、工事監理者の施工業者からの独立性確保及び中間検査制度の充実等の抜本的改革を速やかに実現するよう、改めて求める。


 2019年(令和元年)6月27日

日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎