民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議開催に関する会長談話

本日、内閣総理大臣補佐官を議長とする民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議(以下「連絡会議」という。)が開催された。連絡会議は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)において、「司法制度改革推進法の理念に則り、総合法律支援など利用しやすく頼りがいのある司法の確保、法教育の推進などを含む民事司法改革を政府を挙げて推進する」ことが盛り込まれたことを受けて開催されることになったものである。関係行政機関等の連携・協力の下、民事司法制度改革に向けた喫緊の課題を整理し、その対応を検討することを目的とする。当連合会も最高裁判所とともにオブザーバーとして参加する。


2001年(平成13年)6月の司法制度改革審議会意見書は、「『国民の期待に応える司法制度』とするため、司法制度を利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとする」ことを改革の基本的な方針の一つとしていた。しかし、民事司法の分野はいまだ多くの手つかずの問題や積み残しの課題が存在し、国民の期待に応える制度の構築は十分とは言えない。とりわけ、社会・経済の国際化の進展、更にはIT化・AI技術の発展により、人々の暮らしも大きく変わりつつある。これに伴い、紛争も複雑・多様化し、民事司法分野の専門化、国際化が急速に進んでいる。時代の変化に合わせた民事司法制度の改革が急務である。


民事司法改革の実現のためには、制度改革に相応の予算措置を必要とする課題、国際的な観点から検討を必要とする課題、更に司法の在り方などにつき広く国民的議論を必要とする課題が存在する。連絡会議においては、裁判手続のIT化などの喫緊の課題を含むこれらの民事司法改革の課題の中から国民の期待に応えるために必要な課題を取り上げ、具体的な制度化に向けた検討がなされるものと考えられる。


当連合会は、2011年(平成23年)5月の定期総会において「民事司法改革と司法基盤整備の推進に関する決議」を採択し、更にicon_pdf.gif民事司法改革グランドデザイン (PDFファイル;938KB)を策定するなどして民事司法改革実現に向けた取組を進めてきた。2018年(平成30年)7月からは、上記骨太の方針を受けて設けられた最高裁、法務省との「民事司法の在り方に関する法曹三者連絡協議会」において、主として民事裁判の証拠・情報収集の拡充のための協議も進められている。


今般の連絡会議の開催を受けて、当連合会は、有識者からの意見聴取等を踏まえ、連絡会議で取り上げ、立案すべき改革課題について適時に意見を述べていくとともに、連絡会議との連携・協力の下に、速やかな民事司法改革の実現を目指していく所存である。


 2019年(平成31年)4月12日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎