「松橋事件」再審無罪判決に関する会長声明

 

本日、熊本地方裁判所は、宮田浩喜氏に係る再審請求事件、いわゆる「松橋(まつばせ)事件」の再審公判において、殺人事件について無罪判決を言い渡した。


本件は、1985年(昭和60年)1月6日、宮田氏が、熊本県下益城郡松橋町(現在の熊本県宇城市)所在の被害者宅において、切出小刀で被害者を殺害したとされた事件である。宮田氏は、長時間にわたる任意取調べの末、否認から自白に転じて逮捕、起訴されたものの、一審の途中で全面的に否認するに至り、その後は一貫して無罪を主張してきた。


しかし、一審の熊本地方裁判所は、宮田氏の自白の信用性を認め懲役13年の有罪判決を言い渡し、その後控訴、上告がなされたが、一審の有罪判決が確定した。


これに対して再審請求がなされ、熊本地方裁判所は、自白によって凶器とされた小刀と被害者の創傷が矛盾していることや、自白によれば、小刀に布片を巻きつけて、犯行後に燃やしたことになる布片が、実際には燃やされずに残っていたことなどから、自白の信用性を否定して再審開始決定を出し、福岡高等裁判所もこの再審開始決定を維持し、昨年10月10日、最高裁判所第二小法廷は、検察官の特別抗告を棄却して、再審開始決定が確定した。


そして本年2月8日、第1回の再審公判が開かれ、熊本地方裁判所は、宮田氏の自白調書や凶器とされた小刀について検察官の証拠調べ請求を全て却下して、殺人事件について宮田氏を犯人とする有罪証拠がない状態で、論告、弁論が行われ、即日結審した。


その結果、本日、再審公判において無罪判決が言い渡された。当連合会は、検察官の証拠調べ請求を却下して、速やかな無罪判決を言い渡した熊本地方裁判所の判断を高く評価する。


しかし宮田氏は、現在85歳の高齢であり、事件発生から34年が経過していることを踏まえると、権利救済にはもはや一刻の猶予も許されないのであって、当連合会は、検察官に対し、無罪判決に対する上訴権を放棄するよう強く求める。


当連合会は、宮田氏のようなえん罪を防止・救済するため、取調べ全過程の可視化、再審請求事件における全面的証拠開示をはじめとした制度改革の実現を目指して、全力を尽くす決意である。


 2019年(平成31年)3月28日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎