東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から8年を迎え、「人間の復興」の実践と被災者支援を継続する会長談話


東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から8年が経過した。人々の暮らしも一見平穏を取り戻しつつある一面があるものの、被害の事実が年々風化しつつあることに危惧を抱かざるを得ない。


被災地の復興事業の進捗には、地域間で相当な格差が見られ、被災者一人ひとりの生活再建にはなお様々な困難が存在し、復興はいまだ道半ばである。災害援護資金貸付の償還が本格化していることや、災害公営住宅の家賃引上げなど、一部の被災者の生活は困窮を深めている。


原発事故からの復旧・復興も、いまだ十分ではない。避難指示が解除された自治体への帰還率も高いとは言えず、帰還した被害者もインフラが十分に整わない環境での不便な生活を強いられ、避難を続けざるを得ない被害者も多数存在する。また、避難を続けている被害者は、避難の長期化による孤立・差別・いじめの問題や公的支援の打切り等により、精神的にも経済的にも厳しい状況に置かれている。事業者についても、いまだ商圏も十分に回復しない中、営業損害賠償の打切りが通告されるなど、今後の事業継続に大きな不安を抱えている。


さらに、将来の災害対策という観点からは、東日本大震災における災害関連死の実態調査等が十分に行われておらず、教訓が客観化・総合化されていないことも問題である。


このように、東日本大震災及び原発事故の被害は個別化・深刻化しており、それぞれに適した支援がなされなければならない。具体的には、様々な支援施策や福祉施策を組み合わせ、それに応じた個別の生活再建の計画を立て、人的支援も含めて総合的に被災者を支援する仕組み(災害ケースマネジメント)の実現が急務である。


他方、昨年は、大阪府北部地震、平成30年7月豪雨、平成30年台風21号、平成30年北海道胆振東部地震等の大規模な災害が相次いだ。当連合会は、平成30年7月豪雨災害に対し、直ちに対策本部を設置して支援を行うとともに、他の災害を含め、法律相談等の法的支援、実態調査、政策提言等に全力で被災者支援に取り組んできた。


当連合会は、被災地における「人間の復興」を目指し、東日本大震災及び原発事故をはじめ一人ひとりの被災者に寄り添った支援を、全国各地の経験と英知を結集して継続していく所存である。



 2019年(平成31年)3月11日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎