内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会報告書(平成30年12月)に関する会長声明

2018年12月27日、内閣府消費者委員会から公益通報者保護専門調査会報告書(以下「本報告書」という。)が公表された。本報告書は、内閣総理大臣からの諮問を受け、公益通報者保護法の規律の在り方や行政の果たすべき役割等に係る方策に関する事項についての審議を経て、取りまとめられたものである。


当連合会は、2018年10月18日付けで「内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会『中間整理』に対する意見書」を、同年11月9日付けで「内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会『中間整理』に対する追加意見書」をそれぞれ取りまとめ、多くの論点について意見を表明してきた。


これに対し、本報告書は、通報窓口担当者等の守秘義務、解雇を含む不利益取扱いに関しての立証責任の転換、通報者の範囲に元役員、現在過去を含めた取引先事業者等を含めること、通報を裏付ける資料の収集行為の刑事責任免責など、幾つかの重要な論点については今後検討すべき課題とするにとどめている。また、不利益取扱いに対する行政措置としての命令・罰則や刑事罰の導入を否定し、一元的窓口の権限を限定的に解するなど、当連合会の意見に比して不十分な側面は否めない。


しかしながら、本報告書は、①通報者の範囲に退職者及び役員等を含める、②通報対象事実に行政罰や行政処分の対象となる行為を追加する、③行政機関への通報における真実相当性の要件を緩和する方向で検討する、④行政機関以外の外部への通報の特定事由による保護要件を一部広げる、⑤民間事業者及び行政機関に対し、内部通報体制の整備を義務付ける、⑥行政通報の一元的窓口を消費者庁に設置する、⑦通報を理由とする不利益取扱いに対する行政措置を導入することなど、全体として公益通報を進める方向性の提言をしており、この点は当連合会の意見に沿うものであって、評価できる。


公益通報は、事業活動を健全化し、安心・安全な社会を構築するものであり、通報者が安心して必要な通報を行える体制作りは、事業者のみならず社会のために有益かつ必要不可欠といえる。にもかかわらず、公益通報者保護法は、通報者保護が不十分であることが指摘され続けながら、施行後12年が経過した今日まで改正が先送りされてきた。現在においても企業不正の抑止や解決に対して十分な効果を発揮できていないことは、大企業による不祥事について被害拡大後に発覚する事例が見られることからも明らかである。


当連合会は、真に通報者を保護して健全な社会を実現するため、今後の課題とされた論点については引き続き議論を深めるとともに、本報告書で通報者保護の方向性が示された論点については、更なる先送りをすることなく速やかに公益通報者保護法を改正するよう求めるものである。


        

 2019年(平成31年)1月9日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎