諫早湾干拓事業の請求異議訴訟福岡高等裁判所判決に関する会長談話

 


本日、福岡高等裁判所は、国が諫早湾干拓事業(以下「本件事業」という。)で建設された潮受け堤防の南北各排水門について常時開放(以下「開門」という。)することを命じる判決の執行力を排除するために提訴した請求異議訴訟において、国の請求を棄却した原判決を取り消して、開門を命じた確定判決に基づいて強制執行を行うことを認めない判決を言い渡した。


この判決において、福岡高等裁判所は、開門請求権の前提として認めた共同漁業権ないしこれを基礎とする漁業者らの漁業行使権が、いずれも判決確定時の共同漁業権の免許の終期である2013年8月31日の経過により消滅したことが請求異議事由になると判断した。


しかし、2013年9月1日以降に取得した共同漁業権は法的同一性を保っており、現在も同様の漁業が行われている。しかも、確定判決において、国が農業者等の利害関係者に被害が生じないような対策を行うために、判決確定から3年間の猶予期間が認められており、その履行期限は2013年12月20日までであったにもかかわらず、その後も国がその開門義務の履行を怠りながら、裁判所が開門義務を免れさせるような判断をするのは不合理であり、司法の役割を放棄したものと言わざるを得ない。


当連合会は、諫早干潟の貴重で自然的な価値を評価するとともに、「宝の海」と呼ばれ、生物多様性に富んだ有明海に、本件事業後、「有明海異変」と呼ばれる環境の悪化が発生したことを踏まえて、本件事業に関し、これまで意見を述べ続けてきた。すなわち、1997年5月以降、2度にわたる意見書及び8度にわたる会長声明(会長談話)を発表して、排水門を開放し堤防内に海水を導入することや、中・長期開門調査の実施、さらに、開門に際し漁業と農業の共存を可能とするよう農業者に対する十分な対策を実施することなどを求めてきた。


当連合会としては、引き続き、国に対して、漁業と農業の共存を可能とするよう農業者に対する十分な対策を実施するなど、開門に向けてあらゆる手段を講じ、有明海再生のために第一歩を踏み出すことを強く求めるものである。


2018年(平成30年)7月30日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎