災害救助法の一部を改正する法律の早期成立及び被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求める会長声明

政府は、本年5月8日、大規模災害時の避難所運営や仮設住宅整備などの都道府県の権限を指定都市の中から指定された救助実施市に移すことなどを内容とする「災害救助法の一部を改正する法律案」(以下「改正案」という。)を閣議決定し、国会に改正案を上程した。この改正により、全国20指定都市の総人口である最大2、700万人の被災者の救助を迅速かつ円滑に行えるようになるなどの効果が期待できる。


当連合会は、2012年4月20日付け「防災対策推進検討会議中間報告に対する意見書」の中で、市町村の「地域防災計画の独自性の尊重」を提言している。現場主義の見地に鑑みれば、市町村が災害救助の実施権限を持つことは支持されるべきであり、改正案は、上記意見書中に述べている内容と同趣旨の内容となっており、高く評価できる。早急にかかる改正を果たした上、次なる抜本的な制度改革の作業に着手すべきである。


また、被災者生活再建支援法は、公布から本日で20年が経過した。同法は阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた被災者の生活再建に資する法律として成立し、災害救助法及び災害弔慰金の支給等に関する法律と共に、被災者支援の基本的な法制度として定着している。


しかし、これらの法制度には課題も多い。当連合会は、東日本大震災発生直後から、多数の法律相談から浮き彫りになった問題を解決するために、上記3法の制度改善を求める意見書を公表するとともに、2016年2月19日付けの「被災者の生活再建支援制度の抜本的な改善を求める意見書」では、一人ひとりの被災者に対する災害ケースマネジメントの実施を提言したところであるが、今なお抜本的な制度改善は行われていない。被災者生活再建支援法は5年ごとの見直しが行われないまま既に6年以上経過している。災害関連死や災害援護資金に関する諸問題を改善するため、災害弔慰金の支給等に関する法律についても見直しを図らなければならない。


当連合会は、被災者支援制度が改善されないまま首都直下地震や南海トラフ地震などの大災害が起きると、被災者が制度の不備による無用の苦難を背負う事態が繰り返されるのではないかとの懸念を抱いている。制度改善の取組に一刻の猶予もなく、被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求めるものである。



  2018年(平成30年)5月22日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎