民法の成年年齢引下げ法案の国会上程に対する会長声明

 

政府は、本年3月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正法案(「本法案」という。)を閣議決定し、国会に上程した。


本法案は、日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)の制定や選挙年齢の引下げを踏まえたものと考えられるところ、そもそも成年年齢を選挙年齢と一致させる必要はなく、法律における年齢区分はそれぞれの法律の立法目的や保護法益ごとに個別具体的に検討されるべきであり、成年年齢の引下げをあえて行わなければならない意義に乏しい。加えて、未成年者取消権(民法5条2項)の喪失による消費者被害拡大のおそれ、親権の対象となる年齢の引下げによる、自立困難な若年者の困窮の増大や高校教育での生徒指導の困難化、養育費支払終期の繰上げのおそれなど多くの問題点が指摘されているが、その対策は不十分である。  


2009年10月に民法の成年年齢の引下げを答申した法制審議会「民法の成年年齢の引下げについての意見」においてさえ、「引下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要」と述べているのであって、この答申以降、これらの条件整備がほとんど進んでいない状況で本法案が上程されることは、法制審議会の意見にも沿わないものである。


なお、今通常国会に提出されている消費者契約法改正案では、消費者が抱いている不安や勧誘者に対して恋愛感情等を抱いていることにつけ込んだ勧誘を理由とする取消権の導入が提案されているが、未成年者取消権の喪失に対応する施策としては全く不十分である。消費者被害の拡大のおそれに対する施策としては、2017年1月に内閣府消費者委員会が公表した「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」において「望ましい対応策」と明記されている「事業者が、若年成人の知識・経験等の不足その他の合理的な判断をすることができない事情につけ込んで締結した不当な契約を取り消すことができる規定」の創設が最低限必要と考えられるところであるが、この点の立法的手当てすらなされていない。  


以上のとおり、民法の成年年齢の引下げについては、なお慎重に検討すべきであって、成年年齢引下げの法改正を拙速に行うべきではない。


  2018年(平成30年)3月15日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋