働き方改革を推進するための労働基準法の一部改正案の国会提出に反対する会長声明

 

政府は、2017年9月、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」において、労働基準法の改正に関する考え方(以下「要綱案」という。)を示し、今後、これに沿った改正案が示される見込みである。要綱案には労働者の健康確保に対する一定の配慮は見られるものの、それはなお不十分であり、以下に述べるとおり、むしろ長時間労働の実態を助長しかねない内容が含まれる点において問題が多い。


第一に、要綱案は、時間外労働の上限規制を設けるとしているものの、臨時的な場合に、1か月100時間未満、1年720時間を超えない範囲での例外を認め、また1年のうち6か月については当月及び前1か月ないし5か月の累計の全ての平均が月80時間を超えない範囲での例外を許容している。さらに、休日労働を含めると月80時間、年960時間までの時間外労働が可能とされている。かかる例外として許容される時間外労働の限度時間は、厚生労働省が過労死の認定基準として定める時間外労働時間数(いわゆる過労死ライン)に匹敵する時間数であり、かえって過労死ラインまでの時間外労働を許容することになりかねない点で極めて問題である。また、自動車運転業務従事者、建設業務従事者及び医師について規制を5年間猶予した上で規制内容を緩和している点も問題である。


第二に、要綱案は、企画業務型裁量労働制の拡大や特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設を含んでいる。しかし、前者は、実態において事実上裁量があるといえない就労についてまで、労働時間規制が及ばなくなりかねない点で問題がある(2013年7月18日付け当連合会「『日本再興戦略』に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書」)。後者は、労働者の命と健康の確保の視点からして、年収の多寡によって労働時間の規制緩和が認められることは不合理であること、今後適用対象者が拡大することへの実効的な歯止めがないこと等の点で問題が大きい(2014年11月21日付け当連合会「労働時間法制の規制緩和に反対する意見書」)。


当連合会は、労働法制に関しては、労働者の命と健康の保持を何より重視すべきであることを繰り返し求めてきた。特に長時間労働の防止に関しては、2016年11月24日付け「あるべき労働時間法制」に関する意見書において、1日8時間・1週40時間の労働時間規制の原則を維持しつつ、段階的に1週・年間等の延長限度の各基準を厳格化するとともに、将来的には、1日2時間、1週8時間、年間180時間程度を時間外労働の延長限度とすべきであることを表明したところである。


要綱案は、長時間労働の歯止めとしては極めて不十分である。一方で、企画業務型裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の創設等により長時間労働を助長しかねない内容を含むものであり、労働者の命と健康の保持の視点からすれば、これをそのまま法制化すべきではない。


以上から、当連合会は、要綱案のうち上記第一及び第二に関する改正案が国会に提出されることに反対する。



 



 

  2017年(平成29年)11月22日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋