面会室内での写真撮影等に関する国家賠償請求訴訟の福岡高裁判決についての会長談話

 


本年7月20日、福岡高等裁判所第3民事部は、面会室内での写真撮影等に関する国家賠償請求訴訟について、原告の控訴を棄却するとの判決を言い渡した。

本件は、弁護人である原告が佐賀少年刑務所の面会室内で被疑者と接見した際、被疑者が逮捕時の有形力行使により負傷したとの訴えを受け、負傷箇所を所携の携帯電話で写真撮影したところ、職員から接見を妨害され、撮影した写真の消去を求められたこと、及び後日被疑者の負傷箇所を撮影するためデジタルカメラを持参して接見を申し入れたところ、カメラを携帯しての敷地内への立入りを拒絶され、接見を拒否されたこと等に対し、これらの行為が接見交通権を侵害すること、及び接見内容が聞き取れる場所で職員が待機していたことが秘密交通権を侵害するとして国家賠償を求めていた事件である。

同判決は、刑事訴訟法39条1項にいう「接見」は被疑者・被告人(以下「被疑者等」という。)と弁護人とが面会する行為であるとし、これとは別に「面会を補助する行為」も刑事訴訟法39条1項による保障を受けるとしたが、面会室内で写真撮影を行うことは「接見」にも「面会を補助する行為」にも当たらず、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律117条、113条1項1号ロを根拠として写真撮影行為がなされたことを理由に接見を制限することは適法であるとして、写真撮影行為を理由とした接見の制限、及び撮影機器を所持していることを理由とした接見の拒否が適法であるとした第一審判決を支持している。

しかしながら、刑事訴訟法39条1項のいう「接見」は、身体を拘束された被疑者等が弁護人からの助言を受け、有効に防御権を行使するための大前提であり、弁護人にとっても弁護活動の出発点となるものである。かかる観点からは接見の際に得られた情報の記録化も接見交通権ないしはこれを補助する行為(又は密接不可分な行為)として保障するとともに、有効な防御権の行使のためにいかなる方法で記録するかは原則として弁護人の裁量に委ねられるべきであるところ、本判決はこの点を看過していると言わざるを得ない。

また、刑事訴訟法39条1項の規定について、大阪地方裁判所平成16年3月9日判決(控訴審である大阪高等裁判所平成17年1月25日判決も同旨)は、「被告人等と弁護人とが口頭での打合せ及びこれに付随する証拠書類等の提示等を内容とする接見」の秘密性を保障するものであると判示しており、過去の裁判例でも「接見」を口頭での意思連絡に限定しないとしているものが存在するが、本判決はこれらの判断と実質的に相違するものであり、問題があると言わざるを得ない。

現実の弁護活動においては、接見は単に口頭での意思疎通にとどまらず、接見の際に得られた情報を記録することも重要であって、これも接見の一態様である。また、接見で得た情報の記録化を否定することは、情報の取得行為を否定することにも等しく、被疑者等の弁護人依頼権という憲法上の権利をも危うくしかねないものである。実務上も被疑者等との接見の際に写真撮影や録音録画が行えなければ、接見における情報収集及び記録化を前提とする公判廷等への顕出が極めて制限される結果となり、被疑者等や弁護人の防御権は大きく制限されることになる。ましてや、単なる刑事施設の内規に抵触することのみを理由に接見それ自体を制限できるとすることは、刑事施設において事実上接見交通権の内容・行使を自由に制約することに等しく、被疑者等の防御権の保障を形骸化させるものである。

当連合会は、2011年1月20日付け「面会室内における写真撮影(録画を含む)及び録音についての意見書」、2013年9月2日付け「面会室内における写真撮影(録画を含む)及び録音についての申入書」及び2016年6月17日付け会長談話のとおり、本判決を受けて、改めて関係各機関が弁護人と被疑者等との間の自由な接見交通を保障することを強く求めるものである。

 

  2017年(平成29年)7月20日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋