割賦販売法の一部を改正する法律の成立に対する会長声明


本日、クレジットカード決済に伴う悪質加盟店の排除並びにカード番号情報の漏えい及び不正利用の防止を図るため、割賦販売法の一部を改正する法律が成立した。

カード発行会社(イシュアー)と加盟店契約会社(アクワイアラー)の加盟店に対する調査・措置の責任を明確化するため、加盟店契約を締結する加盟店契約会社及び決済代行業者について登録制とするとともに、新たに加盟店調査義務を規定したこと、同調査義務の対象として加盟店におけるカード番号情報の漏えい防止及び不正利用防止に関する体制整備状況(悪質加盟店の是正・排除に関する事項を含む。)を規定したこと、これらの調査の結果、体制整備基準に適合しないと認められる場合には解除等の措置を講じる義務を課したこと、さらに加盟店に対してもカード番号情報の漏えい防止及び不正利用防止を義務付けたことは、いずれも評価できる。

しかし、クレジットカード決済に関する消費者トラブルが発生したとき、消費者にとって苦情の通報先は自らのカードが発行されたカード発行会社しかないため、カード発行会社から加盟店契約会社等に対する苦情の迅速な伝達等の処理が実行されなければ、加盟店契約会社による加盟店調査及び悪質加盟店排除の措置に結びつかず、消費者被害の防止目的は達成されない。また、このような構造上の特徴は包括クレジット取引とマンスリークリア取引で異なるものではない。この点は、当連合会の2015年1月14日付け意見書においても指摘したとおり、翌月一括払い(マンスリークリア取引)のクレジットカード決済を行うカード発行会社に対し消費者からの苦情の適切処理義務及び消費者被害の救済を図る抗弁接続等を規定すべきところであり、これが明記されなかったことは悪質加盟店排除及びカード情報漏えい等防止の実効性の確保に大きな不安を残すものである。

よって、政府に対し、改正法によって消費者被害防止の効果が確保されるか否かを検証し、改めてマンスリークリア取引のカード発行会社に対する苦情の適切処理義務及び抗弁対抗規定等の適用について見直すことを要望する。

また、クレジットカード情報の漏えい・不正利用防止の実効性を確保するためには、カード会社及び加盟店に義務付けるだけではなく、消費者がカード番号情報のセキュリティ対策の重要性を学ぶこと並びに加盟店のセキュリティ対策の実情を消費者が把握できるように情報開示をすることが不可欠である。

よって、政府に対し、クレジットカードのセキュリティ対策に関する消費者啓発及び情報提供の推進を要望する。

 

  2016年(平成28年)12月2日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋