再犯の防止等の推進に関する法律案に対する会長声明

 


本年11月17日、衆議院本会議において、与野党の議員提出による「再犯の防止等の推進に関する法律案」(以下「本法案」という。)が全会一致にて可決され、参議院に送付された。その提案理由としては、再犯の防止等に関する施策を、国を挙げて推進するための法律を制定する必要がある旨説明されている。

当連合会は、本年10月7日付け「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」において、刑罰制度は、犯罪への応報であることにとどまらず、罪を犯した人を人間として尊重することを基本とし、その人間性の回復と、自由な社会への社会復帰に資するものでなければならず、政府の矯正・保護部門と福祉部門との連携を拡大強化し、罪を犯した人の再就職、定住と生活保障等につながる福祉的措置の内容の充実を求め、自ら出口支援・入口支援に積極的に取り組むことを宣言した。よって、当連合会は、本法案の成立を期待するものであるが、以下の点については、参議院において修正又は法案の審議を通じて確認されるべきであると考える。

第1に、本法案第1条は、その目的について、「国民が犯罪被害を受けることを防止する」「安心安全な社会の実現に寄与する」ことのみを規定する。しかし、前記宣言に述べた刑罰の目的に照らし、「犯罪をした者等の人間性の回復と円滑な社会復帰を促進すること」を第一の目的として定めるよう修正する必要がある。

第2に、本法案第2条第1項の定める「犯罪をした者等」の定義が不明確であり、本法案第3条第2項は、犯罪をした者等に対して、拘置所や少年鑑別所等未決拘禁段階の施設に収容されている間のみならず、社会に復帰した後も途切れることなく必要な指導と支援を受けられるようにすることを定める。この「指導」の趣旨は、仮釈放された者等に対して保護観察を通じて指導することと解されるが、未決の者や刑を終えた者も対象として「指導」を行う余地があるように解釈し得る。

また、本法案第21条の「指導」についても、「矯正施設における処遇を経ないで、(略)社会内において指導」を受ける対象者は保護観察付執行猶予者を、「一定期間の矯正施設における処遇に引き続き、社会内で指導」を受ける対象者は仮釈放された者を意味するものと考えられるが、読み方によっては家裁送致前の少年、起訴猶予処分を受けた者や満期出所者にも指導がなされるように解釈され得る。

未決の者に対する「指導」は明らかに無罪推定を受ける地位と矛盾し、刑を終えた者等に対する「指導」は満期出所者まで社会内で監視を行う制度につながりかねず、無用な誤解を生まないよう、未決の者と家裁送致前の少年、刑を終えた者等に対しては「指導」は行わず「支援」にとどめるよう法案を修正すべきである。

本法案第9条は、政府に対して「この法律の目的を達成するため、必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置」を講ずることを求めているが、当連合会は、とりわけ犯罪をした者等の円滑な社会復帰のための諸施策について、しっかりとした財政上の措置が図られるように求めるものである。

そのためにも、当連合会は、本法案が我が国の再犯防止に関わる基本的な制度を定め、刑罰の在り方について定める重要な法案であることに鑑み、特に上記の点について、参議院において十分な審議が行われ、法案の趣旨・目的に疑義を残さぬよう、必要な修正又は確認がなされるよう要望するものである。

 

  2016年(平成28年)11月24日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋