豊洲市場の地下空間設置問題を踏まえ公文書管理条例の制定を求める会長声明


東京都の豊洲市場地下空間に関する調査特別チームは、本年9月30日に「豊洲市場の地下空間設置と盛土がなされなかったことに関する自己検証報告書」、11月1日には「第二次自己検証報告書」を公表した。

豊洲市場に地下空間が設置され盛土がなされなかった問題について、これらの報告書は、部内資料等を精査等して事実経過を検証している。しかし、いつ、どの時点で誰が決定して盛土をしないことになったのかについては、文書資料に乏しく、関係者の言い分に食い違いが残るままとなっている。これでは市民に対する説明責任が果たされたとは評価できない。

このような結果を招いた大きな要因は、適時適切な文書が作成されなかったことにある。すなわち、意思決定をする際に意思形成過程が判明するような文書が作成されていれば、より的確に事実経過を検証することができたはずである。そして、意思決定に際してその意思形成過程が判明するような文書を作成することが義務付けられていれば、各担当者はより慎重に責任感を持って意思決定を行い、いつの間にか当初計画が変更されていた等という事態もなかったと考えられる。

二度と同じ過ちを繰り返さないためには、東京都において速やかに公文書管理条例を制定し、その中で、公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)第4条が定める「経緯も含めた意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう(中略)文章を作成しなければならない」と定めているのに倣い、意思形成過程に関する文書の作成を義務付けるべきである。

ただし、このことは東京都だけにとどまる問題ではない。公文書管理法第34条は、地方公共団体に対し、公文書管理法の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、実施することの努力義務を定めているが、他の地方公共団体においても公文書管理条例を有しているものはごく少数である。

当連合会は、東京都を含めた全国の地方公共団体において、行政の意思形成の適正化を図るとともに、市民に対する説明責任を果たし、もって市民の知る権利を保障するため、速やかに公文書管理条例を制定することを求める。

 

 

  2016年(平成28年)11月2日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋