民法の一部を改正する法律案及び同整備法案について本年の臨時国会での成立を求める会長声明

2015年3月31日、民法の一部を改正する法律案(閣法63号)及び同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(閣法64号)(以下両法案を一括して「本改正法案」という。)が閣議決定され、同日、第189回国会(常会)に提出され、以後継続審議となっている。


言うまでもなく、民法は市民の日常生活や経済活動を規律する基本法であるところ、民法(債権法)については約120年もの間、実質的な改正がされていない。したがって、約款に関するルールを定め、あるいは保証人保護の拡充を図るなど、民法(債権法)について現代化を図る必要がある。また、民法(債権法)の規定を国民一般に分かりやすくするための改正を行う必要もある。本改正法案は、2009年11月以来99回にわたる法制審議会民法(債権関係)部会での慎重審議の末に取りまとめられた要綱を適切に反映したものであるところ、基本的には、これらの改正の必要性を踏まえたものと言い得る。

のみならず、保証人保護の拡充や約款(定型約款)ルールの新設、消滅時効の規定の改正などを見ても明らかなように、本改正法案は、利害の対立する複数の契約当事者間の適正な利益調整を図り、かつ、健全な取引社会を実現するために、必要かつ合理的なものであると評価できる。


それゆえ、日本弁護士連合会は、本改正法案が、現在開会中の第192回国会(臨時会)において可決成立されることを要望する。


もっとも、本改正法案のうち、個人保証の制限については「主たる債務者が行う事業に現に従事している配偶者」に関する例外条項があるところ、個人保証人の保護の徹底を図る観点からの審議がなされるよう求める。また、本改正法案において採り上げることができなかった論点、とりわけ暴利行為、相手方惹起型の動機の錯誤及び保証人の責任制限の各明文化については、今後、実務においてそれらの論点を支える法理の具体化・精緻化を図るとともに、遅滞なく順次改正すべきである。


日本弁護士連合会は、本改正法案が国会に提出されてから1年半が経過していることに鑑み、時を移さず、法制審議会民法(債権関係)部会における5年以上に及ぶ多岐にわたる検討内容を活かして、今国会で充実した迅速な審議を行い、重要法案である本改正法案の早期成立を求めるものである。


 

 2016年(平成28年)9月30日

日本弁護士連合会
  会長 中本 和洋